SNS 後編

後編

Offline Part

 あの後、リーボに戻ったあたしはタツヤさんにいっぱい気持ちよくしてもらった。
 タツヤさんも他のみんなも、あたしがすぐ戻ってくるのがわかってたみたいだった。

 そして、あたしはそれからも毎日リーボに行き続けた。
 もちろん、あそこには他にもたくさん女の子がいるから毎日タツヤさんとしてもらえるわけじゃないけど、女の子同士でエッチなことをするのも気持ちいいし楽しかった。
 だって、あたしはタツヤさんだけじゃなくて他のみんなのことも大好きだったし。

 だから、夜だけじゃなくて学校から帰るとすぐにリーボに行くようになった。
 その時間にログインしてる子と街に出ていって、人のいない路地裏や公園の片隅でキスしたり、いやらしいことをしたりするのもいけないことをしてるみたいで刺激的だった。

 そして、あたしが初めてリーボに行ってからあっという間に2ヶ月が経ったある日。

「さ、帰ろうよ、カナ」
「うん!」

 いつものように、リサちゃんとふたりで学校を出る。
 だけど、その日リサちゃんはあたしたちの家とは反対方向に歩きはじめた。

「どこいくの、リサちゃん?」
「ちょっとね。いいからカナもついてきて」

 あたしが訊いても、リサちゃんは話をはぐらかすばっかりだった。

 そして、大通りに近い場所まで来たとき。

 いきなり、リサちゃんが手を振って駆けだした。

 リサちゃんが走っていく先を見ると、淡いグレーのスーツを着た女の人が立っていた。
 って、あれって……。

「マナミさん!?」

 そこにいたのは、リーボでいつも会ってるマナミさんだった。

「こんにちは、カナちゃん。リアルの世界で会うのは初めてね」

 あたしが駆け寄っていくと、マナミさんが笑顔で挨拶してくれた。

「え? どうしてマナミさんがここにいるんですか?」
「あなたを迎えに来たのよ」
「あたしを?」
「そう。タツヤさんがカナちゃんを招待したいって」
「タツヤさんが!?」

 その名前を聞いた瞬間に、心臓が高鳴った。

 リーボでいつも会ってるからとか、そんなの関係ない。
 タツヤさんに会えるって思うだけでドキドキが止まらなくなる。

「今日、タツヤさんがカナちゃんを自分のところに招待したいって言ってね、リサちゃんにここまで連れてきてもらったの」
「もうっ! リサちゃんもそれならそうって言ってよ!」
「だって、ビックリした方が嬉しいのも大きいでしょ」
「それはそうだけど……意地悪だよ~」
「はいはい、それくらいにして。タツヤさんが待ってるんだから」
「あっ、そうだった!」

 唇を尖らせてリサちゃんをなじってると、マナミさんが笑顔で止めに入ってきた。

 そうだよね、こんなことしてる場合じゃないや。
 早くタツヤさんのところにいかないと。

「さあ、こっちに車が停めてあるから乗ってちょうだい」
「はいっ!」

 あたしとリサちゃんは、元気よく返事をしてマナミさんの後について行く。

* * *

 マナミさんの運転する車に乗ってあたしたちがたどり着いたのは、オフィス街にある一軒のビルだった。
 地下にある駐車場に車を停めると、エレベータに乗って上にあがる。

 11階で降りてまず目に飛び込んできたのは……あれ? これ、リーボのロゴマークだよね?

「さあ、中に入って」

 マナミさんに促されてリーボのロゴのついた扉を開けると、その中に入る。

 そこは、かなり大きめのフロアになっていて、たくさんの人が端末のヴァーチャルモニタを開いてなにか作業をしていた。
 みんな女の人ばかりで……って、あそこで手を振ってるのユキさんだ!
 いや、ユキさんだけじゃなくてよく見たらみんなリーボで会ってる人たちばっかりだった。

 お姉さんっぽい人が多いなって思ってたけど、みんなここでお仕事してたんだ……。

 みんなが仕事の手を止めて笑顔で挨拶してくれる中を、あたしも笑顔で返しながら奥に進む。

「この中でタツヤさんが待ってるわよ」

 そう言うと、マナミさんがフロアの奥にあるドアを開ける。

 その部屋の中に、あの人がいた。
 リーボで会うのと全く同じ姿のタツヤさんだ。
 って、リーボは実名制のSNSだから、リアルの姿と同じなのが当たり前なんだけど。

「よく来てくれましたね、カナさん」

 ジーパンを穿いたラフな格好のタツヤさんがあたしを見て立ち上がる。

 さっきから、胸のドキドキが止まらない。
 毎晩のようにリーボで会ってるはずなのに、リアルの世界で会うのはなんか特別な感じがする。
 タツヤさんの笑顔を見てるだけでなんだかすごく興奮して、アソコの奥がきゅうって疼いてくる。

「タツヤさん、ここって……?」
「ああ、ここはね、リーヴォルの運営をしている場所なんだよ。もともと、リーヴォルは僕が開発したものでね、今はこうやって運営会社の社長をしてるんだ」
「そうだったんですか」

 そっか、タツヤさんってリーボの社長さんだったんだ。
 だから、リーボで会ったみんながタツヤさんのことをここで一番偉い人って言ってたんだ。

 タツヤさんがリーボの社長だって聞かされても、あたしはごくごく自然にそれを受け止めていた。
 それよりも、こうやって現実のタツヤさんと会えてお話しできるのが嬉しかった。

「ところで、今日ここに来てもらったのは、きみに大切な話があるからなんだ」
「……えっ? なんですか?」

 いきなり、タツヤさんが真剣な顔で話し始める。
 だからあたしも背筋を伸ばしてタツヤさんの話に耳を傾けた。

「リーヴォルにはひとつ特別なシステムがあってね。それが、きみも受け取った特別招待アカウントなんだ。きみの時はリサが勧めてくれたんだけど、そもそもあれは僕のものになった子が推薦してきて、僕が許可した相手にしか出されないものなんだ」

 いつも通りの、柔らかな口調でタツヤさんが話を進めていく。

 ……って、タツヤさんのものになった子って?
 それって、リサちゃんがそうだってことだよね?

「特別招待アカウントはね、それを起動させた端末を瞬間的にハッキングして、その端末を身につけている相手の脳にアクセスする機能を持ってるんだよ。そして、そこから情報を読み取って本人のアバターを自動的に作成してリーヴォルにログインさせるんだ。それと同時に、端末経由でその子の情報をリーヴォルの運営専用のサーバに送り、ここの端末を使ってアバターと本人の体のリンク率を操作することができるようになる仕組みになってるんだ」
「あっ、それでリーボに行ってる時に体とのリンク率がって……」
「そうだよ。でも、体とアバターとのリンク率を操作するだけだときみがリーヴォルで経験したこと、感じたことが少しずつリアルの体に反映されていくだけで、まだまだアバターや現実でのきみ自身に直接干渉することはできないんだ。だから、きみの体とアバターのリンク率を上げた状態でみんなといやらしいことをしてもらって、きみ自身がいやらしいことを好きになるように仕向けた。もちろん、ちょっとした小道具も使ってね。きみがあそこで飲んだあのジュースは、快感を感じやすくなるようになって、しかもその快感を受け容れやすくなるようにアバターを仕向ける特殊なものでね。毎日あれを飲んでいやらしいことをしたきみのアバターを通じて、現実世界のきみも少しずついやらしくなるようにさせていたんだ」
「そうだったんですか……」
「そうやって、僕を受け容れるのに抵抗を感じないくらいにきみがいやらしくなってから、やっときみ自身への干渉に取り組むことができるようになるんだけど、最後にひとつ難関があってね。きみのアバターにより深く干渉するためには、管理者を交代しなくちゃいけないんだ。もちろん、きみのアバターに対する最高のアクセス権限を持っている管理者はきみ自身だから、その交代のためにはきみの同意を得ることがどうしても必要だったんだ」
「あ……それがあの時の?」
「そう。これはシステム上どうしても必要なことでね。自分のアバターの管理者としての権限を持っているきみからそれを受け取るには、きみ自身の同意がいるんだよ。まあ、きみも新しいゲームやアプリを利用する時に規約を見て同意をするよね? あれと同じような手続きだと思ってくれたらいいよ」
「はぁ……」
「そうやってきみのアバターへの全アクセス権限を手に入れることできみのアバターは僕の思うままになるし、きみの体とアバターとのリンク率を極限まで上げることで、アバターと現実のきみとを同期することができるようになる。つまり、その状態できみのアバターを操作することで生じた変化を、現実のきみの精神にフィードバックさせることができるようになるってことだよ。そうしたら、アバターを洗脳することで現実のきみ自身を洗脳することができるようになるんだ」
「洗脳……ですか?」
「そうだよ。だから今、きみはこうして僕のところにいる。アバターへのアクセス権限を手に入れてしまえば、きみが僕のことを好きになるようにさせるなんて簡単なことだからね。これが、僕がきみにしたことの全てさ。どうかな? このことについて、どう思う?」

 そう言うと、タツヤさんはあたしの返事を待つように口をつぐんだ。

 どうって言われても、ホントのところはタツヤさんの話はちょっと難しくて、よくわからないこともたくさんあった。

 ただわかってるのは、あたしはタツヤさんに洗脳されたんだってこと。
 でも、それに対してどうかって訊かれても……。

 今までは、洗脳って言葉に対してなんだかよくわからないけどちょっと怖いものってイメージを持ってた。
 だから、本当はこんなの酷いって言って泣きじゃくったりしなくちゃいけないのかな? とか思ったりもする。
 でも、全然そんな気になれないんだよね。
 それどころか、すごく嬉しいかもって思ってる。
 だって、そう思うのが当たり前じゃない。
 洗脳してもらったからこそ、あたしはこうやってタツヤさんと一緒にいることができるんだもの。

 だから、あたしはその気持ちを素直に伝えることにした。

「あたしを洗脳してくれてありがとうございます、タツヤさん」

 そう言ってタツヤさんに抱きつく。

 すると、耳許でタツヤさんが囁いた。

「うん、合格だよ」
「……えっ? 合格って?」
「僕がきみをどうやって洗脳したか説明して、自分が洗脳された事実を突きつけられて、その上で洗脳されたこと自体をきみが喜びとして受け止める。それでやっとこの洗脳は完了したってことだよ」
「じゃあ……?」
「ああ。カナは僕のものだよ。この先もずっとね」
「あたしが、タツヤさんのもの……はいっ!」

 自分がずっとタツヤさんのものだっていう響きが嬉しくて、ぎゅっと抱きしめる。
 それに、今までカナさんってなんだか他人行儀な感じで呼ばれていたのが、カナって呼び捨てにされたのも嬉しかった。
 ホントに、自分がタツヤさんのものになったんだって思えるから。

 そんなあたしを抱き返してくれて、タツヤさんが言った。

「それじゃあ、僕のものになった記念にセックスしようか?」
「セックス……はいっ、しますっ!」

 タツヤさんとセックスするっていう言葉にアソコがきゅうって反応して、勢いよく頷いていた。

「でも、わかってるのかい? ここはヴァーチャル・リアリティーの世界じゃなくて、現実の世界だってこと」

 もちろん、そんなことはあたしだってわかっていた。
 でも、だからこそ現実のあたしの初めてをタツヤさんに捧げたかった。
 他の男の人に初めてをあげるなんて考えられなかった。

 だってあたしは……。

「あたし、タツヤさんとセックスしたいです。あたしの初めてをタツヤさんにもらって欲しいです。だって、あたしはタツヤさんのものなんですから」

 そう、あたしはもうタツヤさんのもの。
 この先もずっと。

 あたしの返事に、タツヤさんは柔らかい笑顔で応えてくれる。

「じゃあ、こっちに来て」
「はい」

 タツヤさんがあたしの手を取って、部屋に置いてある大きなソファーの方に誘う。

「それじゃあ、まずはリーヴォルでやってるようにしてもらおうかな」
「わかりました。それじゃ、失礼します」

 あたしはその場で膝をつくと、タツヤさんのズボンのベルトに手をかけて脱がせていく。
 そして、現れたおちんちんに手を伸ばすと、そっと握って扱き始める。
 そうやってタツヤさんのおちんちんを大きくさせるのはリーボで何度もやっているから、もうすっかり慣れっこになっていた。

「ふぅ……ちゅっ、ちゅむっ……んふぅううう……」

 目の前のおちんちんが愛おしくてときどきキスをしながら扱いていくと、手の中でむくむくと元気になっていく。

「ああ……はぁああああ……タツヤさんのおちんちん、もうこんなに大きくなりましたぁああ……」

 息を吐くと、自分でも驚くくらいにいやらしい声が出てくる。
 でも、しかたないよね。
 目の前で大きくなるおちんちんを見てるとアソコが疼いて、この大きいのを早く入れて欲しくてたまらなくなってきてたんだもの。

「我慢できないって顔だね、カナ。いいよ、せっかくリアルの世界での初めてだから、お互いの顔がよく見えるようにしようか。ほら、自分から跨がってきてごらん」
「はい」

 言われるままに立ち上がると、タツヤさんの足を跨いた。
 その体勢でスカートの中に手を伸ばすと、指先に冷たく湿った感触が当たった。
 
「さあ、いつでもいいよ、カナ」
「はい。……んんっ!」

 ぐっしょりと濡れたショーツをずらしておちんちんの先をアソコに当てると、期待で動悸が速くなるのを感じる。
 そしてそのまま、あたしは迷いなく腰を沈めていった。

「くふぅっ……んふぅあああああああっ!」
「大丈夫? 痛くないかい?」
「だいっ……じょうぶですっ……! 全然痛くなんか……はぅううううんっ!」

 心配そうに訊ねてくるタツヤさんにそう答える。

 あたし、嘘ついちゃった。
 ホントはけっこう痛かった。
 でも、それ以上に気持ちいい方が大きい。

 この、おちんちんがアソコの中をいっぱいにしながら内側を擦って奥まで入ってくる感触。
 現実のあたしの体は初めてだけど、あたしはこの快感を知っている。
 まるで初体験じゃないみたいに。
 うん、実際にそうだよね。
 リーボで何度も何度も経験したんだから。
 タツヤさんといっぱいセックスして、この気持ちよさはあたしの中にしっかりと刻みつけられてるんだから。

 だから、痛みなんか本当に最初だけで、すぐに気持ちいいのでいっぱいになっていった。

「ああんっ、ああっ、気持ちいいっ! タツヤさんのおちんちん、気持ちいいですっ!」

 タツヤさんに抱きついて、夢中になって腰を動かし始める。
 うん、いつもリーボでしているのと同じように、ちゃんと体も動いてくれる。

「ふああああっ! タツヤさん、すごくいいですぅっ! ふあっ、タツヤさぁあああんっ!」
「すごいね、カナの中、すごく熱くてトロトロになってるよ」
「だってぇ、タツヤさんのおちんちんが欲しかったからぁっ! あたし、ホントはここにきてタツヤさんの顔を見た時からおちんちんを入れて欲しくて、あそこがきゅんきゅん疼いてたんですぅうううっ!」
「ふふっ、カナはホントにいやらしいね」
「はいいいいぃっ! あたしはいやらしいですぅうううっ! いやらしいことが大好きな、えっちな女の子ですぅうううっ!」
「でも、それでこそ僕のものにふさわしいよ、カナ」
「ああっ、嬉しいっ! タツヤさんっ、タツヤさぁあああんっ! あふっ、ふぁあああああああっ!」

 やだ……あたしもうイッちゃった……。

 でも、タツヤさんにしがみついて腰を動かすのは止まらない。
 タツヤさんとのセックスが好きすぎて、自分の体を抑えることができない。

 たしか、こうやって少し斜めに入るようにしてアソコの少し左側を擦るようにすると……。
 ……ふわああっ! またっ!

「ふわぁっ、ここっ、すごいっ……やあっ! くるっ、またきちゃうっ! あんっ、はきゅううううううううんっ!」

 また……またイッちゃった。

 あたし、リアルの世界でセックスするの初めてなのに、アソコの中のどこにおちんちんが当たると一番気持ちいいか知ってる。
 そのために、どういう風に動いたらいいのかも知ってる。
 ちゃんとおちんちんがそこで擦れるように、体が動いてくれる。
 そして、いつもと同じように感じすぎてイッちゃう。

 もう、ヴァーチャル・リアリティーの方がすごいのか、現実の方がすごいのかわからない。
 リーボでタツヤさんとセックスしてるのと同じように、今、こうしてセックスしてるのが気持ちいい。

「ひゃうううっ、おちんちんすごいっ! おちんちんアソコの中いっぱいに擦れて、すごくきもひいいのっ! あっ、あっ、はぁっ、きもひいいっ! はうんっ、あひゃっ、らめぇっ、まらイクっ! あたしっ、まらイッひゃぅううううううううっ!」

 頭の中で、何度も何度も爆発が起きてるみたい。
 目の前がクラクラして、舌がもつれてうまくしゃべれなくなってくる。
 アソコが引き攣ってるみたいにヒクヒクしてるけど、それすらも気持ちいい。
 気持ちよすぎて、タツヤさんに抱きついてがむしゃらに腰を上下させるのを止められない。

「あひゃうっ、しゅごいっ! おひんひんしゅごいのっ! きもひいいっ、きもひいいようっ! ふぁああああっ、らめっ、まらイクぅっ、イッひゃうっ! イクイクイクぅううううっ!」
「カナっ……そんなに激しくしたら、僕ももうっ……!」

 タツヤさんの声が、どこか遠くで聞こえるような気がする。

 もう、頭の中が真っ白でなにもわからないよ……。
 アソコの中がタツヤさんのおちんちんでいっぱいに擦れて、とにかく気持ちいい。
 感じるのは、ただそれだけ。

 ああっ!
 タツヤさんのおちんちんがビクビクしてる!
 お腹の中でおちんちんが今にも爆発しそうに跳ねてる!

「だひてっ! あひゅいのいっひゃいっ、なかにだひてぇええええっ!」

 タツヤさんもイキそうなのを感じたあたしは、そう叫んでさらに激しく腰を動かしていた。

 ふぁあああっ、また来るっ、気持ちいいの来ちゃうっ!
 今までで、一番すごいの来るっ!

 これまで感じたことがないような絶頂の予感にタツヤさんの体をきつく抱きしめた瞬間、アソコの奥に熱いものが叩き付けられた。
 まるで、アソコの中でおちんちんが破裂したんじゃないっかて思うくらいに熱いものが溢れ出してるのを感じる。
 ものすごく大きな快感の波に飲まれて、全身の筋肉が突っ張ったみたいにきゅうってなる。

「ひゃあああっ! しゅごいしゅごいしゅごいいいいいっ! あついのがっ、ぴゅぴゅってっ……! らめぇっ、イッひゃぅうううううううううううっ……!」

 タツヤさんに抱きついて喉から声を振り絞る。
 熱に浮かされたような頭で覚えてるのは、そこまでだった。

「……カナ……もう、カナったら!」
「……ん? ふぇええ……リサちゃん?」

 ほっぺたをぺしぺしとはたかれて目を開けると、リサちゃんがこっちを覗き込んでいた。

「もう~、カナってば飛ばしすぎよ。大丈夫」
「う、うん……だいじょーぶ……」

 そっか……。
 あたし、タツヤさんとセックスしてて、何度もイキすぎて意識が飛んじゃったんだ……。

 さっきまで、タツヤさんとセックスしてたことを思い出す。
 まだ、頭は少しふらふらするし体もすごく重たい感じがするけど、リサちゃんに向かって笑顔を返す。

 ……って、どうしてリサちゃんったら裸なのよ!?

「……リサちゃん、なんで裸なの?」
「もうっ! 今度は私とマナミさんも一緒に楽しもうと思ったのに、カナがなかなか目を覚まさなかったんじゃないの!」
「……え?」

 頭を起こしてリサの視線の先を見ると、同じように裸になったマナミさんとタツヤさんが微笑みながらあたしを見ていた。
 その姿を見ただけで、また胸が高鳴ってくる。

 ……あれ?
 なんでこんなに嬉しいんだろう?

 あ、そうか……。

 いつもリーボから強制ログアウトされて、ひとりで部屋にいる自分に気づいた時のあの寂しさ。
 あれと比べたら、こうやって目が覚めても好きな人と一緒にいられるのって、なんて幸せなんだろう。

 意識がなくなるまでイッても、ここから強制ログアウトされることは絶対にない。
 目が覚めたら大切な人たちが一緒にいて、まだまだ気持ちいいことができる。

 そう思うと、現実の世界もやっぱりいいよね。

「もう~、なにぼうってしてるの? したくないんだったらあたしたちだけで先にやっちゃうよ~」
「あっ、待ってよリサちゃん!あたしももっと気持ちいいことしたい!」

 慌てて起き上がると、着たままだった制服を脱いでみんなと同じように裸になる。
 そして、あたしを迎えるように両手を広げたタツヤさんの胸に飛び込んでいった。

* * *

 ――それからまた少し経って。

「そういやカナってヴァーチャトピアだったよな? 俺、結局DNLにしてみたんだけどなんかいまいちなじめなくてさ。ヴァーチャトピアってどうなんだ?」

 放課後、前にSNSをどうするかで迷ってた男子がそんなことを訊いてきた。

「あ、ごめん。あたし、最近はリーボ派なの」
「なんだよ。おまえもリーボにしたのかよ?」
「そうだよ。このところずっとリーボにしか行ってないかな」
「へえぇ……リーボってそんなにいいのか?」
「ん~……あたしの場合はリサちゃんに紹介してもらったお友達と仲良くなったからそっちに行ってるってだけだよ。やっぱり、慣れないうちはDNLでもヴァーチャトピアでも、大きなところでじっくりとお友達になれそうな相手を探した方がいいと思うよ」
「そっか……やっぱり、俺がまだ慣れてないだけなのかな……」
「まあ、あたしはもともとヴァーチャトピアに行ってたから言えるんだけど、やっぱり大きいところの方がいろんな人と出会えるから、きっと自分に合う場所も見つけやすいと思うよ」
「そうか……じゃあ、もう少し根気よくやってみるかな……」
「後はさ、リアルの友達でDNLに行ってる子から誰か紹介してもらうとかさ」
「うん、そうだよな……」

 鞄を持ってその子と立ち話をしてると、先に出ようとしていたリサちゃんの声が聞こえてきた。

「もう~、カナったらなにしてるの~? 先に行っちゃうよ~!」
「あっ、待ってよ、リサちゃん! ……じゃあ、また明日ね!」
「おう、ありがとな」
「いいのいいの!」

 手を振ってバイバイをすると、急いでリサちゃんの後を追いかける。

「まあ、あの子にはリーボの楽しさはわからないわよね……」

 ……あれ?
 あたし、あの時のリサちゃんと同じこと言ってる。
 でも、そうだよね。
 男の子にあそこの良さがわかるわけないもん。

「もうっ! 待ってよ、リサちゃん!」
「待たないよ! 今日は私が先にしてもらうんだから!」
「ずるいよっ! この間だってリサちゃんの方が先にしてもらってたじゃない!」
「でも、カナは初めての時はあんなにいっぱいしてもらってたじゃないの!」

 あたしの前を駆けていくリサちゃんの後から校門を出ると、家とは反対方向に曲がる。

 そう、今日はタツヤさんのところに招待されてる日だ。
 初めてのあの時から、もう何度もタツヤさんのところに呼ばれてるし、もちろん毎日リーボに行ってタツヤさんに会ってるんだけど、こうやって現実の世界でタツヤさんとセックスできるって思うと心が弾んでくる。
 だって、自分がタツヤさんのものだって実感できるんだもの。

 だから、早くタツヤさんに会いたい。
 タツヤさんとセックスしたい。

「あっ、マナミさん! こんにちは~!」
「もうっ、待ってよリサちゃん!」

 リサちゃんを追いかけて走りながら、あたしは向こうに姿が見えてきたマナミさんに手を振っていた。

< 終 >

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