コウモリ男の夏 (2)

(2)

 蝉と太陽と戦隊ヒロインの夏。

「怪人めッ……こんなこと許さないぞ……ボクを解放しろ……!」

 シグエレメンツ・イエローは、不自由な体を芋虫のようにくねらせ、フローリングの上を這っていた。
 黄色いスーツから伸びた華奢な手足は力を失っている。
 彼女が使えるのは体幹だけ。大きな声も出せない。あらゆる通信手段も使えない。
 僕は彼女からたくさんの自由を奪った。でも、この絶望的な状況でも彼女の正義は決して折れてはいなかった。
 大きな瞳は激しい怒りに燃えている。真っ赤になった頬を床に擦り、それでも彼女は懸命に僕らに迫ってきていた。

「ボクがお前たちを倒してやる……正義は必ず、悪に勝つんだ……っ」

 僕たちは、棒アイスをかじりながら、そんなイエローを見てた。
 いくら正義のヒロインを名乗っていても、たった1人で、しかも体の自由を奪われてしまえば無力な女の子でしかない。
 それでも屈しない態度は立派だとは思うけど、愚かな抵抗しかできない彼女は惨めで、滑稽だった。

「がんばれがんばれ、イエローっ。がんばれがんば、れイエローっ。ほら、あなたにも扇風機の風をあげる。悪い怪人まであと少しだよ!」

 僕の隣で、カプリが棒アイスを旗のように振って声援を送っている。彼女が電気代がもったいないというので、クーラーは我慢して扇風機だ。
 僕もカプリも悪の組織の幹部なのだから、自由に使えるお金は相当あるんだけど、カプリは根っからの貧乏性なのか、生活レベルは前と全然変わらない。
 カプリが量産してる麦茶とソーメンが僕らの主食で、扇風機の前に置かれた凍ったペットボトルがこの部屋のオアシスだ。
 日々の暮らしなんてそれで十分だった。別に僕らは裕福な生活がしたいわけじゃない。裕福なヤツらを、不幸にしてやりたいというだけで。
 じめじめしたワンルームマンションで、僕らはローソファに並んで座り、捕まえたばかりの正義の味方をイジメて遊ぶという、堕落した夏休みを過ごしている。

 まるでカブトムシみたいなシグエレメンツ・イエロー。
 
 僕らがアイスをかじっている間も、彼女はじりじりと迫ってきている。僕のだらしなく伸ばした足まで、もう少しだ。
 そして僕は、超音波催眠で彼女に次の命令をする。

「シグエレメンツ・イエロー。君の倒すべき敵はここにいる。よく見ろ。これが君の敵だ」

 僕はハーフパンツを下げてペニスを取り出す。すでに固くそそり立っているそれを見て、カプリは粋な口笛を鳴らした。

「こいつが怪人チンポだよ。君をさらって閉じ込めている犯人だ。こいつを倒さないと君はここから脱出できない」

 イエローは、怒りの視線を僕の顔からペニスに移して、ぎりりと歯を剥いた。

「よくもボクをこんな目に遭わせてくれたなッ。絶対に許さないぞ、怪人チンポッ!」
「ぷはっ……あーっ!?」

 カプリがたまらず吹き出して、アイスを床にこぼしてしまう。僕は騒がしいカプリを無視して、イエローに命令を続ける。

「こっちに来て、怪人チンポと戦うんだ。君の強力な武器、イエローリボンはそこにある。君の口の中だ。ぬめぬめしたものが入ってるだろ? 君のリボンだよ。それを使って怪人を倒してやるんだ」

 イエローは、「えう?」と舌を突き出して、レロレロ回す。
 そして、武器さえあれば勝てると確信したのか、その表情に輝きを戻す。
 少年みたいに、きりっとした顔立ちだ。男子よりも女子に人気がありそうなタイプ。
 でも、決して女の子としての魅力がないわけじゃない。
 華奢な体にも小ぶりな胸が成長を始めている。今は少年っぽさに隠れてるけど、その長い睫毛や柔らかそうな唇だって、すでにフェミニンな魅力を十分に発揮していた。
 きっと自分の魅力に気づいたら、彼女はあっというまに美少女に化けてしまうだろう。
 正義の味方なんていう、くだらないことにうつつを抜かしてなかったら。

「ほら、もう少しだよ。頑張ってイエローリボンで攻撃するんだ」
「えぅ……あぅぅ、うぅ……」

 重い体を引きずり、懸命に首を伸ばすイエロー。彼女のピンク色の舌が僕の茎に触れる。
 ぞくりとした。
 無理やり伸ばして固く尖った彼女の舌は、それでも十分に柔らかい快楽を伝えてきた。

「えぅっ、えぅっ、んっ、んっ、えいっ、このっ、このっ」

 チロッ、チロッと小さな舌先が僕の陰茎をなぎ払う。彼女の武器は強烈とは言い難いけど、なかなか心地の良いのくすぐったさだ。
 射精までには程遠いけど。

「ダメダメ、イエローちゃん。そんなリボン捌きで倒せるのは中学生男子までだよ。もっとねっちりもっちり攻撃しないと、悪の怪人は倒せない!」
「んっ…あなたは、黙っててよ……ッ!」
「いや、彼女の言うとおりにするんだ、イエロー。この人はカプリ博士。怪人の研究家で、前からシグエレメンツにはいろいろアドバイスしてくれてただろ? 君はそのことを忘れてたけど、今思い出したんだ」
「あ……すみません、博士! ボク、失礼なこと言っちゃってごめんなさい!」
「いいのよ、イエローちゃん。あたしも急に変な設定ふられて焦ったけど、そういうことならこのあたしがエロバイスしてあげるから、よく聞いて」
「はい!」

 カプリは、掛けてもいないメガネを押し上げる仕草をして、先生ぶった顔でイエローにアドバイスを聞かせる。

「まずは、下から上へゆ~っくりとリボンを這わせて」
「はい! えぅぅぅ……」
「そう、そして怪人の首のあたりで細やかにリボンを振るの。そこが弱点の一つよ。しつこく攻撃して」
「えううう」

 僕のカリ首のあたりで、イエローの舌が左右に振られる。僕の腰が、ぞくぞくって震える。
 目を寄らせて、懸命に舌先で怪人と戦う少女は、かなり間抜けで、そして可愛らしかった。
 もっと下品に穢してやりたいと心から思えるほど。

「イエローちゃん、怪人がビクンビクン暴れ始めたっ。急いでお口の中に閉じ込めて。生け捕りにするんだから歯を立てちゃダメよ!」
「はい、ぅあ……あー……」

 大きく口を開けて、背筋を使って体を反らせ、僕のを先端から咥えてきた。
 彼女の口はとても熱くて狭い。僕のを逃がすまいと締め付けるようにして、ぬーっと飲み込んでいく。先っぽが喉の奥につかえるまで飲み込んで、むせてた。

「そのまましっかりホールドだよ。次に、全身を締め上げて。唇を使って締め付けて、上下にゆっくり擦り上げておやりなさい!」
「んっ、ふっ、んーっ……んーっ……」

 首と背筋だけを使って、イエローは顔を苦しげに上下させる。手足はだらりと投げ出されたままだというのに、しっかりとした体幹が彼女を支える。

「んぷっ、んむっ、んっ、んー、ぅえ、んっ、んぐっ、んー」

 さすが正義の味方は体もしなやかに鍛えられていて、この不自然な体勢にも関わらず、彼女は一定のリズムを保ってしゃぶってくれた。
 時々、飲み込みすぎてむせ返っているけど、それでも真面目にカプリ博士の指示に従い、フェラ攻撃をいつまでも続ける。

「いいわよ、イエローちゃん。オットセイみたいでベリキュートよ。でも今は必要なのは、もっと早く、たくましい動きよ!」

 じゅぶじゅぶじゅぶじゅぶじゅぶ。
 イエローの動きが激しくなって、唾液の音が彼女の喉に混じり、僕に与えられる刺激もより淫靡なものとなっていった。

「んーっ、んーっ、んーっ」

 速度を増した吸引と、たまに当たる歯の刺激が僕を昂ぶらせる。じりじりと腰が浮いていく。

「今よ、イエローちゃん! あなたの必殺技で怪人にとどめを刺しておやりなさい!」
「んんっ、ふぁいっ、んっ、えぅっ……ふ、ふふぁいある、ええろーっ」

 リボンで敵を捕らえ締め付けるというイエローの自慢の必殺技、「スパイラル・イエロー」が、彼女の口の中で小さく炸裂した。
 ペニスにくるくるとまとわりつく彼女の舌。僕の先端にひっかかる不器用な動きが逆にちょうど良い刺激となり、僕のペニスも限界を迎える。

「んぶっ!?」

 イエローの口の中で射精した。驚いた彼女は慌てて口を離すが、その幼い顔に容赦なく飛びかかる僕の精液は、あっという間に彼女の顔をベトベトに汚した。

「んくっ、けほっ……え……は?」

 喉の奥の精液を飲み込み、キョトンと大きな瞳を丸くして、イエローは口から精液を垂らす。そして、自分の髪や顔にかかった液体に首を傾げる。
 カプリは、かけてもいないメガネを持ち上げて、真顔で言った。

「それは怪人が断末魔に放ったトロロ汁ね。これで悪は滅び去り、あたしたちのおかずが一品増えるよ。やったね、イエローちゃん」

 イエローは、顔をパアっと輝かせ、満面の笑みを浮かべた。

「へへっ、やった!」

 無邪気な笑顔のイエローに、僕は超音波で答える。

「嘘だよ。君がしてたのはただのフェラチオで、今飲んだのは僕の精子だ」

 表情が笑顔のまま固まって、顔色が青や赤に変わり、やがて大声の出せない彼女が、精一杯の掠れた声で悲鳴を上げた。
 僕とカプリは2人揃って爆笑する。そして、冷蔵庫のブタさんのキッチンタイマーが25分の経過を告げる。

「お前の手足は動かない。大声も出せない。あらゆる通信手段が使えない」

 僕の命令は高い周波で複雑な波を描き、シグエレメンツイエローの脳を揺さぶった。それは彼女にとっては小さな目眩でしかないが、僕の命令は彼女の脳を高次で制圧し、行動をコントロールする。
 肉体も、思考も、感情も記憶も感覚も。
 この超音波を言語と組み合わせることで、ある程度複雑な条件付けや行動を指示することも可能。ようするに、相手が理解できる言葉であれば、僕はたいていの命令で支配することができる。
 ただし、期間はわずか30分。
 悪の代表の地位を奪ったといっても、僕は基本的にザコ怪人のままだった。

「けほっ、けほっ……うぅ、気持ち悪い……き、君たちは、何者なんだよ! ボクの体に何をしたんだ! 今すぐボクを自由にしろ。シグエレメンツにこんなことをして、ただじゃすまないぞ!」

 喉に張り付く精液を咳にして、残った精液は顔に付けたまま、気丈にもイエローは僕を怒鳴りつけた。不自由な手足はだらりと伸ばしたままだけど、正義の精神を背負うヒロインは、屈せぬ心を鋭い眼光にして睨んでいる。
 いきなり凌辱してやればパニックになるかと思ったけど、意外にも持ち堪えた。
 しかも最初は僕らのことを「怪人」と呼んでいたのに、僕に性行為をされてその認識を覆したようだ。
 その判断は正しい。
 なぜなら、通常、怪人なら人類に対する攻撃に性行為を含めない。
 その行為自体は悪ではなく、益もないからだ。さらに言えば、普通の怪人には繁殖システム自体が存在しない。
 人間は原材料であり、怪人は単なる製品。交尾繁殖などという非効率な製造ラインは不要なんだ。
 彼女は怪人のことをよく知っているからこそ、僕らが怪人であることを否定したんだろう。
 直情的なタイプだと思ったが、きちんと頭も使えるらしい。性的な侮辱を受けたことで、彼女は逆に冷静になって警戒レベルを落とした。今の警告も「一般人向け」だった。
 心が強くて、頭も悪くない。
 かつての代表が言っていた正義や悪の「素質」というのが、少し僕にも理解できるようになっていた。
 彼女にあるそれも確かに「素質」だ。正義にも悪にも必要なものだ。
 ただし、彼女の知っている知識はもう古い。

「言ったはずだよ、シグエレメンツ・イエロー。僕は怪人、コウモリ男。君たちに先週殺された怪人だ。まあ、いちいち殺した怪人のことなんて覚えてられないだろうけど」
「うそだ…ッ、お前たちは人間じゃないか!」

 キッチンタイマーをセットし直して、ついでに新しいアイスを咥えて戻ってきたカプリが、暑苦しいパーマ頭を包んでいたタオルを外して、イエローに角を突き出して見せる。

「山羊怪人だおーん。ぱおんぱおーん」

 イエローは目を丸くして固まった。
 僕は食べ終えたアイスの棒を、ゴミ箱に放って捨てる。

「見たろ? 僕たちは怪人だよ。たとえ見た目が何であろうと、人間なんかじゃない」
「……で、でも、それじゃ、どうしてボクをお前たちのアジトに連れて行かないんだ? ここはお前たち2人の家か?」
「あぁ、確かにここは組織のアジトじゃない。そして、君は場所について質問するふりをして、この場の人数を探ってるね? よく回る頭だ。そういうの嫌いじゃないよ」

 せっかく褒めてやったのに、イエローは不愉快そうな眉間のしわを深めるだけだ。
 僕は、汗ばんだ髪を再びタオルに包むカプリを指して言う。

「別に隠す気はないよ。ここは彼女のワンルームで、僕はただの居候。そして、君をさらったメンバーはここにいる2人だけだ。組織もまだこのことを知らない。僕たち2人だけで行動している」
「はぐれ怪人なのだー」

 カプリは手をふにゃふにゃと動かし、はぐれ系モンスターらしさを演出する。
 イエローは目を驚愕の色に変え、僕とカプリの顔を交互した。
 
「倒すと経験値高いのよ?」

 カプリは、山羊の角以外はどこから見ても普通の少女。しかも肉感的な美少女だ。
 その笑顔には悪意どころか邪気すら無い。タンクトップにショートパンツというラフな格好で、夏休みをダラダラと過ごす女子高生にしか見えない。
 僕も、見た目は普通の高校生だ。細っこい体とおとなしい顔。どこにでもいる、地味な高校生男子にしか見えないだろう。
 それでも僕らは怪人だ。人の形をした怪人だ。

「……目的は、何?」

 イエローは困惑している。
 顔に張り付いた僕の精液は、扇風機の風に当てられて乾きそうになっていた。
 僕はその滑稽な様子を笑いながら、あえて復讐の意志をぼかす。

「夏休みだから、シグエレメンツでも捕まえて観察日記でも書こうと思っただけだよ」
「なんだと……ッ!」
「僕たちは退屈なんだ。せっかくの夏休みなのに、お金もないし行くところもない。カプリはケチだから、小遣いもあんまりくれないんだ」
「あっ、やん、アイス取っちゃダメー。んぷっ、れるっ」

 言いながら、僕はカプリの棒アイスを取り上げて引っ張る。
 カプリはアイスを咥えたまま、僕とイエローの間で艶めかしく舌を動かす。見せつけるように、ジュルジュルと音を立ててアイスをしゃぶる。「ふぱいあるええろー」とか言って、さっきのイエローを小馬鹿にしながら。

「……だから、することないから、セックスばっかりしてる」

 カプリの口の中で、アイスをぐじゅぐじゅ動かして溶かす。
 カプリはべろりと舌なめずりして、イエローに蠱惑的な笑みを向ける。

「あたしたち、セックスが大好きなのよ」

 イエローの表情が固まった。
 僕たちは彼女に襲いかかり、俯せになってた体をひっくり返す。カプリは動かない彼女の手を頭の上に持っていき、僕はその細いお腹の上にまたがった。

「いや……いやっ!」

 のしかかる男の体重。途端に怯える女の子の顔になったイエロー。
 僕は軽蔑に眉をしかめた。
 イエローは、ハッとなり、僕を鋭く睨みつける。

「や、やるならやってみろよ……そんなことで、正義の心は折れない。お前たちのやってることは無意味だ!」

 そうだろ。そう言え。
 たとえ死にたいくらいの屈辱でも、正義の仮面は簡単に外すな。ピーピー泣くな。
 でないと、それこそ犯す意味がない。僕が穢したいのは「女」ではなく、「正義の味方」なんだよ。

「イエロー、年はいくつだ?」
「んっ!」

 僕は黄色のスーツの上から、彼女の小ぶりな胸を掴む。張りのある弾力が心地よく、機能性の高いスーツの下にある素肌の質の良さが伺われた。
 下着などという無粋なものは、戦闘中の動きを悪くする。などというもっともらしい理屈はつけられるかもしれないが、じつは彼らのスタッフの中に少女趣味のデザイナーでもいるのだとしたら笑える。
 だがこの水着のような肌触りと体のラインを正直に浮かび上がらせる戦闘服は、悪の代表として正式に賞賛の言葉を贈ってやってもいいくらいの出来だ。
 彼女の体はまだ華奢で、そして肌には張りがあった。

「いくつだ?」
「お、お前なんかに……関係あるか!」

 僕より年下なのは間違いないだろう。超音波で尋ねれば早いのだが、いちいち聞くのも面倒だ。

「シグエレメンツ・イエロー。お前の意識は沈む。しばらくそこで無意識の海を漂え。僕の言葉だけを聞いて、質問には無条件に回答するんだ」

 目の色が、抜け落ちるように消えた。
 あれほど強固な意志を宿した瞳が、まるで作り物のように眼窩に沈んだ。

「答えろ。年はいくつだ?」

 彼女の年齢を聞いて、カプリは「若ーい」と言った。確かに見た目どおりの年齢だ。

「お前の本名を言え」
「……横島季依」

 普段は都内の公立学校に通っている。クラス委員長で、体操部に所属している。
 後でネットで調べたら、彼女はオリンピックの強化選手にも選ばれているらしい。中性的で魅力のある容姿と高い実力のおかげで、掲示板サイトにスレッドが立つ程度の注目はされているようだ。
 紀州さんと同じように、学校でも華やかな立場で輝いている彼女の姿が目に浮かぶ。
 僕はそんな少女の胸を、鷲づかみにしてスーツの上からべろりと舐めた。
 無味で滑らかな感触。汗はスーツの内側で吸収されるらしい。外に漏らせば、そこからどんな情報を取られるか分かったものじゃないからな。

「他のメンバーの本名と普段の顔を教えろ」

 ブラック。黒崎曜子。20歳。舞踊家。
 ブルー。伊達清香。19歳。大学生。
 ピンク。紀州桃代。16歳。高校生。
 レッド。赤城烈士。22歳。無職の何でも屋。
 メンバーは全員、警視庁所管の官舎で一般人として生活している。5人で同居だそうだ。

「光機とは何か説明しろ」

 シグエレメンツの装備や能力の基幹となっている技術。
 それは僕らの組織とは異なるテクノロジーで、どうやら光エネルギーを固定し、そのまま物質化して運用しているらしい。
 発祥はイエローも知らないようだが、聞いた限りでは別の世界か地球外から来た技術のようだ。
 応用性といい、エネルギー効果といい、かなり優れた技術だが、それを体内にまで纏って運行できる適性を持った人間は限定される。発見されているのは、今のところこの5人だけだそうだ。
 彼らは同じ孤児院で育った子供たちだ。その施設は今は無くなっているらしい。光機テクノロジーと彼らの関係については、結局、学者でも分かってないという話だ。
 ということは、彼らがいなくなれば、シグエレメンツを継ぐ者はいなくなるわけか。
 希少な女たちを、この手に堕とす自分を想像して、にやけてしまいそうになった。

「……スーツとフェイスマスクは、左手のブレスレットのスイッチで発現。ボクたちの体内にある光機エネルギーと外界の光を結合して“イリュージョン”を作成。それを固体化して体に装着し……」
「はいはい、次はそっち向いてねイエローちゃん。精液、べっとりだねー。かわいそうねー」

 カプリに顔を拭かれている間にも、イエローは僕の命令どおり、光機とシグエレメンツの装備について説明を続ける。
 僕の彼女の細い腰をなで回し、脇腹に舌を這わせる。
 戦闘スーツのこの感触は好きになった。肌の感触を正直に伝えてくる。胸もお尻も柔らかくて気持ちいい。
 邪魔なスカートをめくる。タイツの股間に顔を近づけても匂いはしないが、舌で舐めると、そこにも下着は存在しないようで、少女の形が気の毒なくらいハッキリと浮き上がってきた。
 本当にいいスーツだ。出来ればこのまま犯してやりたいけど、僕の怪人の指でも破けそうがないので、それはまた別の機会にする。
 彼女は、僕らにイタズラされてる間も、大事な機密をぺらぺらと説明してくれていた。

「……イリュージョンをスーツに変換後は、暗闇でも数時間は活動は可能。ただし装着時には絶対に外界の光が必要で、暗闇ではシグエレメンツに変身できない。メンバーはライトを必ず携帯し……」

 催眠状態のイエローには、シグエレメンツの弱点も住み処も、全て言わせた。
 それを聞きながら、僕はスーツの継ぎ目を発見し、彼女の肌を剥いていく。

「レッドと他のメンバーの関係は?」
「……仲間」

 仲間、ね。
 僕はレッドに向けられる他の女性たち熱い視線を、この目で見ている。
 紀州さんの、うっとりとした表情も、彼に甘える仕草も。
 僕は、イエローの肩を勢いよく剥いた。
 彼女の細い鎖骨は少女そのもので、よくこんな細い体で悪の怪人たちと戦えるものだと感心する。鎖骨に舌を這わせても、肌の質感もカプリよりも薄い感じで、性をあまり感じさせなかった。
 ひょっとしたら、彼女は本当にまだレッドに抱かれていないのかもしれない。
 
「ただの仲間か? 肉体関係は?」
「……ない。ボクたちは、そんなこと……」
「君だけ知らされてないだけじゃないのか? ブラックやブルーや、ピンクは彼と性関係がある。そうじゃないか? よく考えてみろ?」
「ない……烈兄ぃは、そんな人じゃない」

 僕に首筋をちゅうちゅう吸われながら、イエローはレッドを庇う。
 本当に、彼はメンバーに手を出していないのか?
 まあ、こいつらの関係がどうであれ、それは必ず僕が粉々にする。どうだっていいさ。
 その手始めが、手付かずのままでいたこの子だというだけで。

「イエロー、君は処女だね?」
「はい」

 僕はイエローのスーツをさらに剥く。
 彼女の控えめな胸が、ぷるんと揺れる。
 
「かぁいいー」

 カプリがその先端を突いて遊ぶ。薄い色をした突起は、仰向けになっても形を崩さない小さな脂肪の塊の上で、小さな乳輪の花と一緒に楚々と立っていた。
 僕はイエローのスーツを剥ぎ取る。スーツと一体になってるスカートも取れて、細い太ももにぴったりしたタイツ一枚だけの体だ。

「君はレッドのことを愛してるんだよね」
「はい」
「初めての男は彼がいい。そう思ってるんだろ?」
「はい」

 迷いもなく答えるイエローのタイツの継ぎ目も、僕は外して脱がせていく。
 彼女の秘められた想いと、秘められた場所をこの手で丸裸に。
 イエローのそこは、まだ無毛だった。

「……ヤバいねぇ、これ」

 子供みたいな形をしたイエローのそこを、カプリは指先でぷるぷる弄ぶ。
 かまわないだろ。どうせ彼女はこれから起こることから逃げられない。
 彼女が大人だろうが子供だろうが、僕のすることは同じなんだから。
 全てを脱がせた彼女から、イエローのブレスレットも奪う。そして、適当に床に転がす。

「カプリ、少し静かにしてて」
「あいあーい」
「イエロー、目を覚ますんだ」
「う……」

 彼女の頬に手を添えて呼び起こす。目に光が戻る前に、さらなる超音波を彼女の頭に当てる。

「俺だ。烈士だ。助けに来たぞ」
「え……あ……」

 イエローの瞳がまん丸になって、みるみる朱がさす。じわりと涙を浮かべて、子どもみたいな泣き顔に変わる。

「烈兄ぃ、ボク、ボク……ッ!」
「何も言うな。もう大丈夫だ。安心しろ」
「うぅ~……体、動かないよ烈兄ぃ……」
「いいんだよ、そのままで。俺に任せろ」
「え、れ、烈兄ぃ?」

 僕はイエローに顔を近づけ、唇を奪った。

「んん~~ッ!?」

 目を大きく見開くイエローの唇をさらに深く、絡めるように挟んで、ぢゅうと強く吸い込む。
 吐息と一緒に彼女の体温が僕の口の中に入ってくる。
 イエローの体はとても火照っていた。おそらく、キスも初めてだったんだろう。

「んっ、はぁ……烈兄ぃ……」

 一撃で瞳を潤ませたイエローが、僕に息を絡ませてくる。

「ど、どうして……キスなんて」
「お前が好きなんだよ。いいだろ、イエロー?」
「ボ、ボクのこと? う、うそだよ、そんなの! からかわないでよ、烈兄ぃ……」
「からかってなんかいない。好きだぜ、季依」
「んっ」

 再び唇を吸う。イエローは鼻にかかった声を出して、僕の唇を吸い返してきた。

「……そ、そんなことしちゃ……ボク、みんなに怒られちゃうよ……」
 
 困惑と喜びの混じった顔で、イエローは唇を尖らせる。僕は彼女の胸をいきなり鷲づかみにした。

「んんっ」

 さらに、彼女の喉からキスを降らしていって、胸の先端まで彼女の体をくすぐりながら下っていく。

「やっ! ダ、ダメだよ、烈兄ぃ。ボクのおっぱいなんて吸っちゃ……ひゃあ!」

 先端を甘噛みすると、彼女の背中が大きく跳ねて反応を返す。唇に挟んでコリコリと転がすと、子犬のような声を出した。

「ダメ、だよぉ、烈兄ぃ、烈兄ぃ……ボ、ボク、どうして裸んぼなの……ひゃぅ!」
「季依、お前が欲しいんだ。俺の気持ちに応えてくれ」
「れ、烈兄ぃ……ダメ、烈兄ぃにそんなこと言われたら……ボク……ボク……」

 彼女のつるりとした股間を撫でる。面白いくらいに彼女を顔色は変わり、可愛らしい悲鳴を上げる。
 僕はキスしながらイエローの体を下っていった。お腹、おへそ、イエローの無毛の体は何の邪魔もなく股間へと繋がっているから、まるで人形に口づけしているみたいだ。
 股間を舐めると、イエローは恥ずかしがって大きな声を上げた。不自由な体で逃げようとしてたけど、僕は腰を押さえつけて無理やり舐め続けた。
 やがて、彼女も抵抗をやめて声を甘くしていった。

「烈兄ぃ……ホントに、汚いってばぁ……あぅっ、うっ、ボクのそこ、あんまりイジメないでぇ……」

 イエローの未熟な性がトロトロと溶け出し、中にいる「女」が露出されていく。舌先にカプリと同じメスの味を感じ取る。
 愛する男性に愛撫され、彼女は急いで自分の体を変化させている。受け入れようとしている。
 女の子の体というのは本当に楽しい。神秘的だ。
 どうしてここまで美しくなれるんだろう。どうせ、男に汚されるだけなのに。

「季依、いくぞ」
「……え?」

 僕のペニスが股間に当たっている。イエローは顔を真っ赤にして、僕を見つめた。

「……烈兄ぃ……本当に僕のこと好き?」
「あぁ」
「曜子姉や、清香姉や、桃代姉よりも好き?」
「あぁ。だからいいだろ?」
「……ボ、ボク」

 目をあちこちに泳がせて、やがて決心したように僕の顔を見返し、とても真剣な顔でイエローは頷いた。

「ボク、烈兄ぃが好き! 世界で一番好き。大好きだよ」

 そう言って、目をギュッとつむった。
 僕は彼女の決意を内心で笑いながら、腰を浮かせて体勢を整える。
 イエローは歯が軋むほど口を食いしばる。僕に静かにしてろと言われたカプリは扇風機の前で膝を抱えて「退屈なり」と呟く。僕はイエローの中にペニスを差し込む。

「うぅ…ッ!」

 イエローはさらに体を強ばらせ、きつく僕を締め付けてくる。僕はそれでも突き進む。イエローはますます固くする。
 やがて彼女を突き破る。イエローは口を大きく開けて、声にならない悲鳴を上げた。
 正義のヒロイン対悪の怪人の対決は、まずは怪人の勝利というわけ。
 僕のペニスは彼女の最奥へと届き、彼女のとても狭い入り口を押し上げ、か細い体をピクンピクンと痙攣させた。
 じわりと滲み出てくる血。パクパクと酸素を求めて喘ぐ口。真っ赤な顔は今にも破裂しそうだ。

「れ、烈兄ぃ……ッ!」

 うだるような暑い部屋で、僕はまず一人目のシグエレメンツを抱いた。

 彼女の体はとても軽く、おもちゃで遊んでるみたいだった。腰を持ち上げ、もっと深く刺さるようにして腰を動かす。
 イエローは、おとなしく僕の乱暴なセックスを堪えている。痛々しいほど膨れあがった股間からは生暖かい鮮血が流れ、真っ白になるほど噛みしめられた唇は切れてしまいそうなほどだけど、僕にされるがまま、小さな体を揺らしていた。

「烈兄ぃ……ッ、ッ、きもち、いいっ?」

 震える口で、イエローが囁く。

「あぁ、気持ちいいぜ」

 僕がそう囁くと、「本当?」と弱々しくイエローは笑った。
 その幸福そうな顔を壊してやるつもりで乱暴に突き入れると、「ひぐッ」と悲鳴を上げてイエローの顔が仰け反った。

「季依、お前も動いてくれよ」
「ボ、ボクが……動くの?」

 体を切り裂かれるような激痛を味わっている彼女に、僕はさらに残酷な願いを突きつける。
 イエローは、わずかに自由になる体幹を無理に動かし、腰をゆるやかに波立たせた。

「もっとだ。もっと出来るだろ?」
「うぅ……うんっ、んんっ」

 自棄になった速度で、イエローの腰が動く。よほど痛むのか、泣き顔になって唇を噛む。
 不器用な運動の快楽は弱いけど、彼女のこの表情はとても僕は気に入った。
 とても愚かで美しい彼女の純情。

「ど、どう? きもち、いい? ボク、ちゃんと、出来てる?」

 この必死の愛情表現が、愛する男にこれっぽっちも届いていないなんて、とてもかわいそうで笑えてくる。
 僕は超音波の口を開いた。

「あぁ、最高だ。お前はすごくいい女だぜ、季依」
「ほんと、烈兄ぃ?」
「嘘だよ。僕はコウモリ男だ。君のアカレンジャーなんかじゃないよ」

 イエローの腰の動きが、徐々に緩くなり、止まって、その表情が変わった。

「いやあああああッ!?」

 大声の出せない彼女の、精一杯の掠れ声。
 僕を包み込む彼女の膣が、さらに収縮して締め付けてきた。
 驚愕と恥と絶望の初体験を迎えた少女が、必死の抵抗を開始する。息苦しいほどの閉塞が僕のペニスを包む。吐き出そうと彼女の膣が蠢く。
 僕はそれでも突き進む。一度入ってしまえば男が絶対有利のゲームだ。濡れてしまった体はどんなに拒んでも男が動くのを止められない。
 もっと乱暴にイエローを揺する。

「やめっ、やめぇっ! やめろ、気持ち悪い!」
「そんなこと言う? さっきまであんなに愛してくれたのに?」
「お前…ッ! うっ、うぅっ、お前、よくも、よくもォ!」

 ボロボロと涙を零し始めるイエロー。でも、気丈にも僕を睨みつけることは忘れない。

「こ、こんなことしても、んっ、何にもならないぞっ。ボクは、絶対にお前たちなんかに、屈しない…ッ! んっ、うっ」

 揺する。揺する。
 むしろ甘い微笑みよりも、怒りに燃える彼女の方がずっとそそる。その調子で頑張ってくれ。
 たった一度のセックスで折れるような女なら、今すぐ殺してやるよ。まだ勝負は始まったばかりなんだから。

「正義の、心はッ、こんなことぐらいで、痛っ、んんんっ、ま、負けないぞ! ボクが、絶対にお前らを……ぶっ殺してやる!」

 彼女の飛ばした唾が僕の頬に当たる。
 気持ちいい。それは本当だよ、シグエレメンツ・イエロー。
 僕は彼女の頬に張り手を与える。イエローは屈せず僕を睨み返す。
 その調子だ。折れるな。まだ壊れるな。
 お前のその鋼の精神は、僕がゆっくりねじ曲げてやるから、それまで絶対に壊れるな。
 強く腰を突き入れるとイエローは苦痛に顔を歪める。声を立てまいと、歯を食いしばって僕を睨む。
 初めてのセックスをこんな形で奪われ、さぞや悔しいことだろう。でも負けないと必死で心を奮い立たせる彼女は美しい。
 もっとだ。もっと汚らしいセックスでお前を穢してやりたい。
 僕は、扇風機の前で「退屈なりイイイイィィィ」と声を震わせて遊ぶカプリに声をかける。

「カプリ、こっちに来て手伝ってよ」
「しょうがねぇなぁ、ったくよォ!」

 嬉々とした顔でカプリは這ってきて、イエローの上に覆い被さる。そして舌で彼女の短い髪をかき分け、耳の中をなめ回す。

「ひゃっ、やめぇ、んんっ、気持ち、悪い、やめて!」
「つれないこと言うなよーん。一緒に楽しもうぜ、ベイベー」

 カプリの手で小ぶりな胸を愛撫される。耳の中でくちゅくちゅと舌を動かされる。体をなで回す手は、男の手よりもはるかに優しい。

「かぁいいよ、イエローちゃん」
「んんんっぷっ!?」

 舌同士の絡む音。ぞわぞわとイエローの肌が泡立つ。
 僕は腰の動きをゆっくりと落ち着かせる。痛みよりも愛撫が勝ち始めて、イエローは困惑したように首を振る。

「ひ、卑怯者! ボクと、ちゃんと勝負しろ! ひぅん! バカ、そんなとこ舐めるな……あっ、ダメ! もう、ダメぇ!」

 ぐちゅぐちゅ、アソコが柔らかい水音を立て始める。イエローは顔を真っ赤にして、たどたどしく憎まれ口を叩く。
 痛みには正面から向き合えても、快楽はどう処理していいのかわからないらしく、「うぅぅ」と唸って、唇を固く閉ざしてしまった。

「セックス、気に入ったかい?」
「ふざけるな…ッ! 誰が、こんな気持ち悪いこと…ッ!」
「もうすぐ僕は射精するよ。もちろん、君の中に出すつもりだ」
「な、やめろ!? お前、か、怪人のくせに、そんな…ッ!」
「怪人と正義の味方の間に出来る子供って、どんなの何だろうな。10ヶ月後が楽しみだね」
「バカ! 誰がお前なんかの子供、絶対に産むもんか!」
「生まれる子供に正義も悪もないよ。君は自分の子を殺せるか?」
「妊娠なんてしない! 正義は、悪の子なんて……や、やめろ! 痛ッ、くぅ、もう動くなぁ!」
「出すぞ、イエロー。妊娠しろ!」
「やぁぁぁぁッ!」

 実際のところ、怪人の細胞を持った僕と、光機などという不可思議なものを宿す彼女に、子供が出来る可能性は低いだろう。
 でもそんなことはたいした問題ではない。正義の味方が怪人に膣出しされるという事実が大事だ。
 ドク、と最初の一撃で大量の精液が飛び出し、イエローの子宮にびちゃりと飛び込んだ手応えを感じた。
 ドクドクと、何度も発射される精液がそれに続き、彼女の幼い膣内をすぐに満たしていった。

「……ぁ……あぁ……」

 イエローは涙を流し、僕のペニスの脈動に合わせて体をかすかに痙攣させる。女の肉体は嫌でも男の精を受け入れ、彼女の熱となる。
 絶望のようなセックスを終え、絶望の種を腹に宿した彼女。だが、すぐに彼女は涙で滲む目で僕を睨む。

「……満足したなら、さっさと離れろよ……! ボクは、こんなことで負けたなんて思ってないぞ!」

 ブタさんのキッチンタイマーが25分を告げる。僕はカプリに頼んでそれを持ってこさせる。
 イエローを組み敷き、彼女の中に入ったまま、僕はそれを彼女に見せる。

「君に良いことを教えてあげるよ。僕の能力についてだ」

 25分で止まったままのタイマー。
 イエローは、まだ涙を浮かべてそれを見る。

「僕の能力は超音波催眠。口から出した超音波で、君の体や認識を操作する。止まってる物なら音波で壊すことも出来る」

 かつて怪人の姿をしていたとき、シグエレメンツと戦ったことがある。彼女もそれを覚えているのか、何かを言いかけたが、すぐに口を閉ざした。

「ただし、知ってのとおり僕はザコだからね。能力もとても弱い。催眠はたったの30分しか有効期間はないんだ。それを過ぎれば、どんな命令も解除される」

 イエローは何も言わない。僕にペニスを挿入され、アソコを僕の精液に汚したまま、じっと僕の目を見て、言葉の真偽を判断している。
 正義の味方の顔で。

「君を殺そうと思えばいつでも殺せる。でも、それは僕らにとって勝利じゃない。僕らの目的は、君にシグエレメンツをやめさせることだ」

 イエローの眉がおかしな形に歪められる。
 信じられないという顔。当然だ。本当の目的じゃないからな。でも構わず説明を続ける。

「僕らは、君と命がけの勝負してるんだよ。君とまともに戦えば負けるのは僕らだ。だから、30分以内に君の自由を奪う命令をしなきゃならない。僕らが隙を見せれば、君の勝ちだ。タイマーは25分にセットしている」

 ブタさんのキッチンタイマーを、イエローの前で傾ける。これが僕らの命綱。間違いなくそれは真実。

「これはそういう勝負なんだよ、シグエレメンツ・イエロー」

 僕らは悪だから、嘘をつくのはすごく得意だ。でも能力に関してだけは、正直に彼女に言った。
 イエローは押し黙る。彼女は考えるフリをして、窓を見て部屋の高さを測り、玄関の位置と自分のブレスレットを探した。

「……正義は絶対に負けない。ボクが必ず、お前たちを倒す」

 僕は彼女の鋭い瞳に、冷笑で返す。
 彼女がやる気になってくれたのなら結構だ。
 敵に自分の能力をバラすなんてバカのすることだが、あえてそれをした理由は、僕の能力の欠陥が、僕にとって有利で、とても愉快に働くからだ。
 ただの催眠で洗脳が終わるほど万能でもなく、だからといって中途半端に弱くもない。わずか30分間の絶対支配だからこそ、素晴らしい僕の能力。
 カプリと過ごした間、一度も眠ることなく数日間セックスばかりしていても、僕らは平気だった。光機エネルギーを体内に持つ彼女も、おそらく僕ら以上の体力を持つ。
 いくらでも凌辱は出来る。
 だが、それだけでは惰性に慣れるだけだ。むしろ30分ごとに繰り返されるチャンスと絶望が、彼女の心を痛めつけ、正義の炎を腐らせていく。
 僕たちは絶対に油断しない。2対1の監視で、弱っていくのは彼女の方だ。
 この熱い瞳が曇っていく課程を、じっくりと見せてもらおう。

「説明は終わりだ。お前の手足は動かない。大声も出せない。あらゆる通信手段が使えない」

 タイマーのスイッチを入れる。カプリにそれを渡して、僕はイエローの細い膝を持ち上げ、大きく足を広げさせる。

「25分開始だ。セックスを楽しませてもらうよ」

 イエローの目が大きく見開かれる。そしてすぐに鋭く細められる。

「……勝手にしろ。ボクはそんなの全然平気だ」

 恥ずかしい格好をされているせいか、頬が赤い。すぐにバレる強がりを言う可愛い彼女を、僕は乱暴に突き動かす。

「うっ、うっ、正義は、負けないッ、うっ……悪には、屈しない!」

 カプリよりも軽いお尻は、簡単に跳ねて刺激的な角度に揺れる。
 とりあえず、今日はこのまま朝まで幼い正義の味方の体を楽しませてもらおうか。
 どうせ夏休みは長い。

 僕はイエローの髪を洗ってやりながら、彼女の口の中にペニスを突っ込む。

「歯を立てるな。舌を絡めろ」

 壁に背をもたれさせ、シャワーは彼女の頭から降り注ぐ。
 髪から流れてくる泡に目を閉じ、イエローは僕の超音波に命令されたとおり、口をもごもごと動かしている。
 結局、あれから一晩中イエローとカプリと3人でセックスをした。
 次の日の昼過ぎまでセックスして、今は汗や精液でべとべとになったイエローを、シャワーで洗ってあげているところだ。
 手足が動かないかわいそうなイエローのために、僕らは食事や排泄の世話も、こうして洗身の世話までしてやっている。
 介護の仕事もやってみると大変だ。でも相手は肌のきれいな女の子だから、やり甲斐は十分あるんだけど。

「すっごーい。あんだけやりまくったのに、あそこも全然きれいだよ。処女みたい」

 イエローの股間にスポンジをあてて、カプリは驚いた声を出す。
 光機のエネルギーは全身の抗体を強くし、回復力も高めるそうだ。ひょっとしたら、しばらく置いておけば彼女の処女まで元に戻るかも。
 そうだったら面白いのに。また、あの苦痛に顔を歪めるイエローを犯してみたい。
 イエローは、おとなしく体を投げ出している。
 セックスのときも、食事のときも、排泄をやらせたときも無理な抵抗をしていたが、30分のリミットを超えなければどんな抵抗も無駄と悟ったか、浴室に入れてからもされるがままだった。
 僕は彼女の髪を流しながら、乱暴に腰を動かす。舌を押しつぶすように、喉を深く突くように。そして、奥を目掛けて大量の精液を発射する。

「ンッ…グッ……」

 飲め、なんて命令はしない。喉の奥に絡んだ精液は、嫌でも飲むしかない。残した精液を口から垂らして、イエローは俯いていた。

「―――お前たちは、惨めなやつらだ」

 そして、唇に白濁したものを絡ませながら、僕を睨む。

「ボクを犯していれば、いずれ言いなりになると思ってるのか? それでボクに勝てるつもりか? シグエレメンツをなめるな。正義は心だよ。いくらボクをイジメても、ボクの正義はキズ一つ付かないよ!」

 僕の顔とペニスと、交互に見比べてイエローは笑う。

「なんだよ、こんなの。へっちゃらだよ。えっちしたいなら好きなだけすれば? これが何? ボクがこんなのに負けると思ってんのかよ。バーカ。お前たちは勘違いしてるよ!」

 イエローが、僕らにこんなに喋るのは初めてだ。カプリもぽかんと口を開けてる。

「シグエレメンツの正義は、お前たちみたいな弱者には壊せない! ボクは1人じゃない! みんながいる! 大勢の仲間がボクの心を支えている! 正義はボクだけのものじゃないんだ。お前たちが見ているものより、もっと大きな力だよ! みんなで支える力だよ! たとえボクが死んでしまっても、正義は何も変わらない!」

 彼女は僕の命令で大きな声は出せないけど、それでも少女特有の甲高い声は浴室に反響してキンキンと耳に障る。
 カプリは耳を塞いで「うるさーい」とぼやいた。

「聞け、愚かな怪人どもっ。こんなことしかできない弱虫に、シグエレメンツが負けるもんかッ。悔しかったら、ボクを殺せ! それでも、ボクの仲間がいつかきっとお前たちを倒す! お前たちみたいな卑怯なやつらに、ボクたちシグエレメンツが―――」

 まるで、気が触れたかのようなイエローの豹変。でも、僕は彼女の狙いはもうわかっている。
 壁にもたれる彼女に覆い被さるようにして、僕は耳元で囁く。

「お前の手足は動かない。大声も出せない。あらゆる通信手段が使えない」

 イエローの表情が固まった。
 カプリは、「え? もうタイマー鳴った?」といって、裸のままキッチンへ向かった。
 狭い浴室で、シャワーの流れる中で、イエローは自分の出せる精一杯の声を響かせて、無意味なことを叫んだ。
 ちょうど25分のタイマーが鳴る頃に。
 でも、僕のコウモリの耳はがその程度で音を聞き漏らすようなことなんてない。
 きっと、彼女は僕らに犯されながら、ひたすら「25分間」を数える訓練に集中していたんだろう。
 僕らがタイマーを忘れる可能性も、聞き漏らす可能性もとても低く、たとえそこまで辿り着いても、僕らが気づく前に逃げられる可能性はもっと低い。
 でも、彼女はその可能性に賭けた。自分でその状況を作ろうとした。
 たった一晩で、かなり正確に時間を計れるようになるほど真剣に。
 そして失敗してしまっても、「25分間」を自分のモノにしたという自信は、彼女の中に生まれる。

「……僕は君のことをなめたりなんてしてないよ。尊敬すべき敵だと思っている」

 僕はイエローの髪を撫で、彼女の機転と努力を賞賛する。

 もちろん嘘だけど。

 そういう無駄な抵抗を続けても、心が疲弊するだけなのに、バカなやつだと思ってる。
 強制的な支配力を持った敵に捕まった時点で、どんな抵抗も無駄だと悟らなければならない。
 唯一、出来ることがあるとすれば、助けが来ることを信じて、大人しくセックス人形に徹することだけだ。
 僕が弱点だと自分で言った30分のことを忘れるとすれば、それは、よほど気持ちの良いセックスを君がさせてくれたときくらいだろう。
 その作戦には、せめて僕らの油断を待つくらいの慎重さが最低でも必要だったのに。
 僕に抱かれるのが少しでも我慢できないって、言ってるようなものじゃないか。下手な小細工を弄しても、君の正義が寿命を縮めるだけだよ。
 イエローは、下向いた視線を持ち上げ、気丈に僕を睨み返す。
 まったく、ハラハラさせる。たった一度の失敗で折れてしまわれたら、つまらないのはこっちだよ。

「頑張ったご褒美をあげるよ。こっちへ来い」
「いたっ!?」

 僕は短い髪を掴んで、浴槽のふちに手をつかせて、そのまま動くなと命令する。
 そして、タイマーをセットし直したカプリと一緒に、新しい命令をイエローに与える。

「今からの25分は、君の体は汚さないよ。勝手にイキまくればいい」
「え?」
「性感がどんどん上昇する。体の中から快感が湧き上がり、絶頂するまで高まる。僕がいいと言うまで、ずっとその状態だ」
「あぅ…ッ!?」

 ビクンとイエローのお尻が跳ねた。全身の肌がみるみる赤くなり、震えだす。

「あっ……あンっ……」

 痙攣する唇が艶めかしい。必死で絶頂を堪える少女の顔は、僕にかなりの劣情を与えた。
 でも、イエローには触らないと約束したので、代わりにカプリの豊かな体を抱き寄せる。
 くちゅくちゅと絡む唇。その音を聞いて、イエローは「ひんっ」と体を震わせる。
 その表情にたまらなくなって、僕はイエローのアソコに息を吹きかけた。そうすると彼女は体を震わせ、汁を飛ばして絶頂した。

「あぁぁぁッ!?」

 僕とカプリは笑ってセックスを始める。その間にもイエローはずっとお尻を震わせている。

「せ、正義は、負けない……あ、こんな、こんなことじゃ、負け、られ、られ……」
「もう、イエローちゃんのお尻、かぁいすぎー。チュっ」
「ひああぁぁぁんッ!?」

 彼女の甘い悲鳴が可愛くて、僕らは何度もイかせてあげる。

 ―――セックスと扇風機の音。

「正義は……負けない……悪には屈しない……」
「あんっ、あんっ、チンポいい! チンポいいよぉ!」

 だらりと横たわるイエローをまたいで、彼女の顔のすぐ上で僕らは交わっている。
 カプリの豊かな尻を僕の腰がパンパンと叩きつけ、彼女のアソコから飛び散る愛液は、イエローの顔にびしゃびしゃと降り注ぐ。

「みんなが……心にいる……ボクは、1人なんかじゃない……」

 イエローの顔はもうびしょ濡れだけど、彼女はじっと目を塞ぎ、呪文のように正義の言葉を繰り返す。

「ね、ね、イエローちゃん、イっていい? カプリお姉ちゃん、イエローちゃんのお顔の上でお漏らししていい? イク! イク! イクぅ!」

 ぷしっと、炭酸を開けたみたいにカプリが潮を吹く。遅れて僕の精液が彼女の子宮に届き、あふれてイエローの顔に降り注いだ。

「……ッ……くっ……」

 だらりとイエローの顔が白濁する。彼女は唇を固く結んで震わせる。
 何度もかけられてるはずなのに、いちいち腹を立てて紅潮する頬が僕は好きだ。

 シグエレメンツ・イエローを捕まえて3日目の夜。

 あれからずっと、僕らは休まず様々なセックスを彼女に試みた。
 イエローはすっかり壊れたレコーダーのようだ。
 どんな凌辱を与えても、同じ言葉を繰り返し、会話にも答えない。いよいよ人形じみてきたと思う。
 それはおそらく正しい反応なんだろうけど、最初の強気なイエローが好きだった僕としては、少し物足りない気もする。

「次はイエローを抱いてあげるよ」

 イエローを後ろから抱きかかえて、耳元でアソコを濡らすように指示する。
 そしてそのまま、子どもにおしっこをさせるような格好で、彼女の中に挿入する。

「ンンン…ッ」

 歯を食いしばり、僕の侵入を堪えるイエロー。僕はそんなつれない反応にも慣れたもので、その小さな耳たぶを甘噛みする。
 彼女の首がしなやかに仰け反る。僕たちはもう彼女の体を隅々まで知り、どこか性感帯かも熟知している。
 この小さな乳房が、日に日に反応を良くしていくかも。

「せ、正義は……心の中に、ある…ッ」

 なのに、彼女はまるでおかしな宗教みたいだ。
 少しだけ辟易した思いで、僕はイエローの中に射精するまで腰を動かした。
 

「……少し休もうか」

 僕は、イエローの柔らかいほっぺたを突いて遊ぶカプリに言う。

「え~、まだ眠くない~」

 夏休みの子どもみたいにカプリは頬を膨らませる。
 3日3晩、寝ずにセックスばかりしていて尽きない体力と肌はさすがに怪人と正義のヒロインだが、それだけだと飽きがくるのも当然だ。

「少しだけ眠ろうよ。僕はもう疲れてきた」
「なっさけねーの。ソーメンばっかり食ってるからだよ」

 ちなみにうちの食卓がソーメンばかりなのはカプリのせいだ。安いからってソーメンしか買ってきてくれない。

「少し寝るだけだよ。イエロー、君も眠れ」

 僕は超音波でイエローに命令する。そして眠りに落ちたイエローにタオルケットをかけてやる。

 やがて、イエローが目を覚ます。
 時計を見て、そしてまだ眠っている怪人たちを見て、息を乱す。
 だけどそれも一瞬だ。ゆっくりと首を回して、冷蔵庫のキッチンタイマーと、カプリのメイクセットと一緒にドレッサーに置かれたブレスレットを確認する。

「……ッ」

 自由になるのは体幹だけだ。タオルケットを口に咥え、音を立てないように、細い体に巻いて転がり、床を這う。ゆっくりと慎重に、でも、時間はわずかしかない。
 冷蔵庫に辿り着き、疲れ切った体に鞭打ち、腹筋と背筋を駆使して壁に体を預ける。じりじりと、壁を伝って這い上がっていく。そしてキッチンタイマーに向かって、桃色の舌を伸ばす。
 残りわずかにして、タイマーを止めることができた。
 大きく息を吐きそうになり、それも途中で堪える。
 まだ怪人たちは起きてこない。時計を見る。タイマーを見る。自分が解放されるまでのカウントダウンを数えて、その時を待つ。
 そして、時を迎えて立ち上がり、駆けた。
 久しぶりに自由を取り戻した手足は、伸びやかに主の意志に従い、ブレスレットに手を伸ばす。
 だがその寸前、黒い怪人の頭が起き上がり、にこやかに両手を広げた。

「うっそぴょ~ん!」

 途端にイエローの手足は力を失い、崩れ落ちた。
 カプリは「大成功!」と頭の上で丸を作ってケラケラ笑った。
 人が眠ってる間も脳は寝ていない。僕は眠りに落ちたイエローに催眠を上がけしただけだ。
 15分眠って、25分後には体に自由が戻る。ただし、カプリの声を聞いたら再び自由を失う。
 あとはキッチンタイマーの残り時間を5分だけ細工した。実際にはまだ、僕の30分の支配時間の中だ。

「お前の手足は動かない。大声も出せない。あらゆる通信手段が使えない」

 もちろん、こんなのに意味なんてない。ただの遊びだ。
 子供だましみたいな単純な罠にひっかかるほうがバカなんだ。
 イエローは、表情を殺したままつぶやく。

「正義は……絶対に……」

 気丈さを取り戻そうとして、いつもの呪文を口にする。
 でもたった今、わずかに味わった勝利の予感と絶望は、彼女に幼い感情を思い出させるには十分だったようだ。

「れ、烈兄ぃ……」

 顔をぐにゃりと崩して、イエローは子どもの声を出す。

「曜子姉ぇ、清香姉、桃代姉……早く助けにきてぇ……」
 
 僕らは立ち上がり、イエローのお尻を持ち上げる。
 きれいな球面を描く白い肌は、白桃を思わせた。

「ねえ、そろそろここの穴を試していいかな?」
「ひゃぅ!?」

 僕は彼女の小さな肛門を、軽くひと撫でする。
 ビクビクっとお尻を震わせて、イエローは悲鳴を上げる。

「カプリ、ローションか何かなる?」
「おっけー」
「え……いや、そこは、いや…っ」

 まだ動揺の残るイエローは、いつもの無表情も忘れて、普通の女の子みたいにか弱い声を出す。
 僕らは当然そんな彼女の制止など聞かずに、お尻の穴と僕のペニスにローションを塗り、その小さな蕾に押し当てる。

「いやっ、あっ、ダメ、うっ、うっ、無理、やめッ……」
「おー……メリメリいってるー」

 きつくて固い、全力で僕のことを拒む括約筋。僕は容赦なく体重をかけて、その防壁を崩していく。
 カリ首を突き抜けてしまえば、あとは真っ直ぐだ。僕は一気に彼女の腸内に潜る。

「ぅあぁーッ!?」

 突き抜けると、意外にゆとりのあるスペースだ。でも、僕の根元あたりを締め付ける力は前の穴よりはるかにきつい。
 ゆったりと、大きなストロークで往復する。全体的にきついイエローのヴァギナは小さく速い動きの方が気持ちいいが、こっちは大きく揺すってやった方が具合を楽しめる。
 女の子の体というのは、いろんな手段で男を喜ばせてくれる。
 まだまだ僕は、セックスに飽きそうもない。

「あぁッ、あぁッ、ダメ、壊れるッ、ボク、壊れちゃう!」
「大丈夫だよ。女はここでもセックス出来るようになってるんだ。そのうち気持ちよくなるよ」
「マジすか? あたしは絶対やだなぁ。変態じゃん」
「うぅっ、やだ、もう、やめ……ッ」

 さらにローションを垂らして、滑りを良くして激しく揺する。深く、角度をいろいろ試して、気持ちいい場所を変えていく。

「…ハァッ……ハァッ……」

 イエローはやがて大人しくなり、乱れた呼吸を聞かせ、時折、ビクンと喉を仰け反らせて熱い息を吐いた。開きっぱなしの唇からは、赤い舌の先が覗いてきた。
 カプリが、頬杖ついた小首を傾げてイエローに言う。

「ねえ、ひょっとしてイエローちゃん、お尻の穴で感じてる?」
「ッ!?」
「うっそ、マジ? 変態さんだー!」

 背中まで真っ赤にして、イエローは泣きそうな顔になる。僕は腰の速度を上げて、ガンガンとイエローの腸壁を叩く。

「いやッ、いやッ、あーッ、あぁーッ!?」

 全身を激しく痙攣させて、イエローが絶頂に達する。僕は彼女の中に大量の精液を放つ。
 ずるりとそこから引き抜くと、緩んだお尻の穴が弱々しく震えて、少しばかりのお釣りを返すみたいに、僕の精液を逆流させた。

 4日目。
 相変わらず暑さの下がらない部屋で、カプリが僕のペニスをしゃぶり、僕はイエローの顔を舐めて遊んでいる。
 つけっ放しのテレビは、どこかの国で銃が乱射されてどうとか、どうでもいいニュースを流している。

「おかしいな。シグエレメンツのメンバーが攫われたっていうのに、どこもニュースにしてくれない」
「ねー、あふぁしひゃちのお手柄なのに、つれないおねー」

 イエローは、昨夜から心を閉ざしたみたいに無言だ。正義の呪文も唱えなくなったし、僕とのセックスの時も、ずっと無表情だった。
 アナルセックスで絶頂に達したのが、そんなにショックだったのかな?
 彼女の悲鳴はとても耳に心地よい。何度でも聞きたいと思う。

「ひょっとして、イエローのこと探してないんじゃないの?」

 ピクン、とイエローの頬が引きつる。
 表情を殺してるつもりでも、彼女はこうして軽く突いてやるだけで、簡単に感情をバラしてしまうんだ。
 正直で直情的。正義の味方にふさわしい、じつに好感の持てる性格だ。

「えー、イエローちゃん、いらない子だったのぉ?」
「確かに、戦闘中もみんなに『活躍の場を作ってもらってる』感じだったもんな」

 実際にどうかは知らない。でも、イエローが前線で活躍できているのは、他のメンバーが彼女の後ろとレッドの前と、両方を守っているからだというのは確かだ。
 サッカーで言えばFWの位置に彼女がいるわけで、それは純粋に彼女の戦闘力の高さによるものだとは思う。
 だが、自分が一番年下だということを、一緒に過ごしていて実感することも多々あったはずだ。
 現にレッドは、僕にとどめを刺すとき、僕の自由をブラックとブルーで奪ってから、3番目の位置で彼女を使っていた。
 それがレッドに恋心を抱く彼女にとってコンプレックスである可能性も十分に考えられる。
 自分がいなくても、いない方が上手くいくのかもしれないと、疑い始めるとそれは出口のない迷路だ。
 イエローの瞼が、忙しなく動き始める。

「そうだ。もしかすると彼らはイエローがもう殺されてると思ってるかもしれない」
「なるほろー、らったら探ひにはこないおねー」
「それじゃ、イエローが元気に過ごしているところを、彼らに見せてやろうよ」
「いいねー」

 僕らはイエローの両脇を抱えて、浴室へ引きずっていく。そして、そこにイエローをしゃがませ、顔の横にダブルピースを作るように命令する。

「え、な、なに……やめて……」

 当然、彼女は全裸だから大事なところもぱっくり開かれて見えている。カプリがオモチャみたいなデジカメを構えて、シャッターを切った。

「やめ…ッ!」

 ギュッと目をつぶって、顔を必死で背ける。でもその滑稽なポーズは僕の命令で崩すことは出来ず、ばっちりとファインダーに収まる。

「へぇ、可愛いよかなり。これならシグエレメンツのみんなも、イエローが元気に過ごしてるってわかってくれるんじゃない」
「やめてよ、そんなの…! みんなには教えないで!」
「だって、このまま死んだと思われても悲しいだろ? 僕らだって、シグエレメンツに宣戦布告するつもりで君を攫ったのに、無視されっ放しじゃ寂しいし」
「だからって、こんな…ッ、もう、いいかげんにしろ…!」
「いいねー、イエローちゃん。その切ない表情、そそるよー」
「でも、あんまりインパクトはないかなあ。久しぶりの便りなんだから、彼らにもっとサービスしてやった方がいいんじゃない?」
「やっぱ、そっちいっちゃうー? お風呂場で撮るっていう時点で、あたしはもうスカトロの予感だったんだけどー」
「え…いや、何するつもり……?」

 イエローは青ざめて僕らの顔を見る。
 いくら彼女でも、これだけセックスを経験したら、僕らがいやらしいことをするつもりだってくらいは想像がつくんだろう。
 僕は超音波で命令する。

「おしっこしろよ、イエロー」
「いやっ!? いやあッ!」

 プシッ、と最初の滴が飛び出すと、あとはジョロジョロと黄色い液体が勢いよく出てきて、浴室の床をビシャビシャ叩く。

「かぁいいー! イエローちゃんのイエローちゃんがマジイエローちゃんだよー! これ絶対、レッド兄さんボッキングだね!」
「やだ、やだぁ……!」

 真っ赤になって泣き喚くイエローを、カプリが容赦なくシャッターを切る。
 泣き顔とダブルピースと放尿。とても間抜けで、可愛い写真だ。

「んー、まあ、わりと良い写真が撮れたかも」
「カメラマンの腕がいいからね。てへへ」
「表情とかすごくいい」
「カメラマンの腕がいいからね。てへへ」
「本当に、きれいなおしっこだな」
「おしっこよりもあたしを褒めろよー!」
「でも、まだ何か足りない気がするなあ」
「やっぱり? じゃ、ウンチいっちゃう、ウンチ?」
「ッ!? 絶対、やだ!」

 イエローの顔が再び青ざめる。さすがに本気で嫌らしく、歯まで震わせている。

「おしっことウンチじゃ迫力が違うじゃん。絶対、ヤツらの度肝を抜くと思うよー」
「やだ! そんなの、死んでも嫌!」
「いいっしょやー。あたしたち、もうイエローちゃんのウンチシーンなんて見慣れたもんよ?」

 僕らは身動きのできない彼女の世話は全部してやってる。もう4日もそれをやってるんだから、気心の知れた家族みたいなもんだ。

「でも、僕は正直、見ても楽しくないから」
「え、そうなの? アナルセクロスまでしたのに、そんなこと言われてイエローちゃんかわいそー」

 あれはあれで楽しかったけど、そこから出てくるものを見たいかと言われれば、あまり見たくはない。たぶん多くの男性も思うだろう。
 どちらかと言えば、僕は潔癖な方だった。

「おしっこで十分だよ。そこまでやったらシグエレメンツのみんなも引いちゃうって。もう撮影は終わり」
「むむー、カメラはいつも戦場だというのにー」

 イエローはホッと息を吐いて、疲れた顔を見せた。緊張してしたダブルピースも、心なしか緩んで見える。
 僕は、彼女に超音波で微笑みかけた。

「嘘だよ。ウンチ出せよ、イエロー」

 今年の夏は、本当に暑い。
 うだうだと部屋の中で転がって、気が向くままイエローを犯して、ソーメンとアイスで食いつないで、またうだうだと転がる。
 しばらくは変化のない毎日だ。
 イエローはすっかり大人しくなった。
 例の写真を撮ったとき、下の部屋のババアに床ドンされるくらい泣き喚いたのを最後に、本格的な無表情になってしまった。
 写真は、「シグエレメンツ・イエロー見参!」と書いて、彼らの本部宛に郵送してる。
 彼らがどんな表情でそれを見たのか、想像すると少し愉快な気持ちになれた。
 浴室や消印は彼らにとって重要なヒントになったはずだ。彼らがこれでもっと必死になってくれると、こちらとしてもありがたい。
 どうせ僕らは見つかりっこない。彼らにはもっともっと絶望と疲弊してもらった方が、今後も戦いやすくなる。
 
「あー、全然こないね、シグエレメンツの人たち」
「来ないねー。あんだけイエローちゃんも頑張ったのにねー」

 大好きなシグエレメンツの話題なのに、僕らに背を向けて横たわるイエローに変化は見られない。追い詰めすぎて、ちょっと疲れさせたかもしれない。
 壊れるにはまだ早いのに。

「君って、ひょっとして本当にいらない子だったの? 僕ら、君を攫った意味あるの?」

 ピク、と彼女の背中が揺れる。応答あり。

「ババ引いちゃったのかな、あたしたち」

 イエローは何も答えず、鼻をスンとすすった。
 僕とカプリはニヤニヤと笑みを交わらせ、テレビに視線を戻す。
 じつは昨日、私服警官が「家出中の女子中学生を捜している」と言って、わざわざ戸別訪問に回ってきた。
 彼らの探しているという中学生の似顔絵もイエローまんまだった。あまりにもわざとらしい極秘調査に、笑っちゃいそうになったぐらいだ。
 でも、他にも集金や宅配なんかが訪れてきたときも、必ずイエローは眠らせて浴室に放り込んでいるので、彼女は僕らの家に誰が来たのかわかっていない。
 それに、警察の人たちもただの高校生にしか見えない僕らを、『正義の味方を攫った極悪怪人』だなんて、想像だにもしないで帰っていった。
 僕は部下に命じて、この周辺を見張らせている。もちろん、イエローのことは彼らにも秘密にして。
 隠密作戦のために潜伏しているからと言って、耳や目の利く怪人数名に警察の動きを見張らせ、メールで報告させていた。
 外へ出て行くための準備だ。
 いつまでも部屋の中にいたら、僕たちもイエローも、いい加減腐ってしまいそうだから。

「探しに来ないっていうなら、こっちから出てやろうよ。イエロー、散歩に行こうか?」

 意外というか、案の定というか、イエローは外に出るのを嫌がった。
 数日前の強気な彼女はもういない。彼女は自分の汚れを、周りの裏切りを、孤独を、本当に怖がっている。
 正義の味方は、世間の目に怯えるただの気弱な女の子に変わろうとしていた。
 もちろん、僕はそんなこと許しはしないけど。

「お前の足は歩くことしかできない。何もしゃべれない。僕らから3メートル以上離れたら、その辺の誰かを殺すぞ」

 まぶしい太陽から隠れるように深くハットを被り、イエローは僕らの後ろをトボトボと付いてくる。
 カプリはいつもの黒ずくめの服装。おかしな耳の付いた黒いパーカーに黒いミニスカート。絶対領域を作る長いソックス。
 彼女の服を借りているイエローも、黒い帽子に黒の短いワンピースだ。少し胸元が余っていて、頼りなく見える。

「コンビニでも寄ろうか」

 僕とイエローは、近所のコンビニエンスストアに入った。
 カプリは、たまたまコンビニの前にいた女性の抱いている赤ん坊に、ベロベロと変顔を披露している。
 アイスコーナーの前で僕はイエローに命令する。超音波はなしで。

「イエロー、アイス万引きしろよ」

 彼女は目を丸くして僕を見上げる。並んで立ってみると、やっぱり彼女は背が低い。

「そこのアイスを3人分取れ。やらないと、カプリがあの赤ん坊を電柱に叩きつけるぞ」

 カプリは赤ん坊を抱かせてもらって、無邪気に笑っていた。その子の小さな手を僕らに向かって振っていた。
 母親は知らないだろうが、あのパーカーのフードの下には怪人の角が生えている。イエローは顔色を変えて唇を震わせた。

「やれ」

 自分が操られていないことは彼女も自覚している。これからやることは、自分自身でやらなければならない。
 震える手でアイスを3本掴む。店員を確認する。まだ、手はそれ以上動かない。
 目をつぶって、口の中でモゴモゴと謝罪の言葉を言って、イエローはカプリから預かったバッグの中にアイスを入れた。
 その途端、後ろからの声に驚かされる。

「おい、お前! 何やってんだ!」

 店長と思われる中年男性に腕を掴まれ、イエローは恐怖に顔色を変える。そして、とっくに店の外に出てニヤニヤ笑う僕を見つけて、さらに目を丸くする。

「ったく、お前は商品をなんだと思ってんだ! 事務所に来い!」

 しゃべれないイエローはパクパクと口を動かし、バッグの中のアイスを差し出す。だがそんなことしても、僕の超音波により攻撃的になっている店長の逆鱗に触れるだけだ。

「返せばそれでいいと思ってんのか! ふざけるな、この悪党!」

 イエローの頬が叩かれる。彼女の目が驚きに見開かれる。
 そして、僕の催眠で劣情も催している店長は、イエローの幼い体を見下ろして舌なめずりをする。

「まったく、なんて生意気なガキだ。おじさんが、たっぷり説教してやるからな……」

 顔色を変えて、イエローは暴れ出す。だが「万引き犯のくせに抵抗するな!」と怒鳴られ、体をすくませる。
 たかが万引き程度の罪悪感で、こんな親父の言いなりになってしまうとは、脆いものだな正義の味方というのは。
 僕らはコンビニの中に入って、店長に向かって超音波を発する。

「このアイスは買ったんだよ。お前はひっこんでろ」

 そうして僕らはアイスを食べながら、白昼の散歩を続ける。

「イエローちゃんが奢ってくれたアイス、美味しいよん」

 カプリは大好きなアイスを囓ってご機嫌だ。
 後ろからトボトボ付いてくるイエローのアイスは、袋に入ったまま彼女の手の中で溶けていた。

「……じゃ、次はコーラが飲みたいな」

 僕は別のコンビニの前でつぶやく。イエローは肩を震わせる。

「今度は1人で行ってこい。失敗したら、そうだな、そこのファミレスの屋根を僕の超音波で破壊する」

 コーラを飲んで、散歩を続ける。
 イエローの目は泣き腫れて真っ赤になっていた。正義の味方というのは、いちいち大げさだ。

「夏休みといえば万引きデビューだよ。夏の風物詩だよ。イエローちゃんはよくやった! あたしらの仲間にしてやってもいいぜ?」

 カプリは脳天気にイエローの肩をポンポン叩く。あれで慰めてるつもりらしい。
 ダラダラと歩いているうちにもうすぐ渋谷だ。結構、汗もかいてきた。
 でも僕もこんなつまらない遊びのために、わざわざ危険を冒してまで外に出てきたわけじゃない。人と待ち合わせしているんだ。
 通りのファーストフード店に入る。2階の席に上がったとき、イエローは慌てて帽子を深く被り直した。

「どうかした?」

 僕はわざとらしくイエローの顔を覗き込む。「誰か知り合いでもいた?」と尋ねると、イエローは首を横に振る。とても分かりやすい反応だ。

「あそこの窓際にいる子たちを見て、顔色変えたね。もしかして学校の友達かな?」

 イエローが委員長をしているというクラスの、ギャルっぽい子たちだ。女子3名が退屈そうにポテトを囓っている。
 今日のために、部下に命じてイエローと同じクラスの子を適当に攫わせ、教室の中のことをいろいろと聞き出させていた。今回の作戦に使えそうな子たちを選んで、行動をマークしておくようにも命令していた。
 彼女たちが今日、連れだって出かけていることも知ってた。そして、さっきイエローに万引きさせている間に、見張らせていた部下に居場所を聞き出しておいたんだ。
 
「せっかく夏休みに会えたんだから、挨拶くらいしとくべきじゃない?」

 イエローは首をぶんぶん振って、必死で自分と無関係だと主張しているように見えた。
 自分を守るためというより、彼女たちを巻き添えにするのが嫌なんだろう。
 市民の味方はまだ続けているつもりか。健気すぎて笑えてしまう。
 彼女たちの正体を、早く教えてやりたいよ。

「じゃ、君は後ろで隠れていろよ。挨拶は僕だけでするから」

 なおも抵抗しようとするイエローに、「邪魔すればわかってるな?」と念押しの脅しを加えて、僕は自分のトレイを持ってにこやかな笑顔を浮かべる。

「こんにちは」
「あ、誰だお前?」
「ここに座って、一緒におしゃべりしていい?」
「……どうぞ」

 超音波で彼女たちに近づき、空いてる席に座った。僕の背後にカプリと並んで座ったのがクラス委員長であることに、彼女たちは気づいてない。

「君らさ、シグエレメンツって好き?」
「は、何いきなり?」
「ヒーロー系? ウケるんだけど」
「正義の味方って、かっこよくない?」
「むりむり。ないわ」
「絶対ないから」
「怪人系の方がマシじゃん。ま、どっちもないけど」
「どっちもないね」

 典型的な一般人の意見。
 正義の味方も悪の怪人も、等しくウザい。自分たちとは関係ない。
 よくわかるよ、僕はそういうの。

「同じクラスにシグエレメンツとかいたらどうする?」
「ウケる。学校に着てきて欲しい、あれ」
「いっぺん着てみたいかも、ネタで」
「あ、でもあのちっこい人なら、うちらくらいの年じゃないの。黄色だっけ?」
「いるいる、ちっこいの。でもあれ男子じゃないの?」
「男は赤だけだよ。あとは全員女なんだ」
「うえ、それなんかやばくね。肉食戦隊じゃん」
「あー、でもうちのクラスのあいつそれっぽくない? 横島季依」
「あるー!」

 びくり。
 僕の背後で、イエローが震えるのが分かった。

「横島って誰?」
「いいんちょ。うちらのクラスの」
「ちょー真面目。んで何かスポーツ関係やべぇの」
「有名人だよ。なんかネットとかでペロペロされてるもん」
「ペロペロうける。キモい」
「へぇ、可愛い子なんだ?」
「男にもウケてんのかなー。むしろ学校じゃ女モテしてるよね」
「やばいよね。取り巻きとか完全にあっちの趣味の人たちだもん」
「そそ、男なんて興味なーい。横島ひとすじ! みたいな」
「近寄る気になれないわー」

 思ったとおり、イエローは学校でもヒーロータイプか。そして、その対極にいるのが彼女たちみたいな子だ。

「あいつ、いかにもシグエレとか好きそうな感じじゃん」
「あたし知ってる。あいつ、ケータイの裏にシグエレレッドのシール貼ってんの。雑誌の付録みたいなやつ」
「ガキかっつの。ウケる」

 後ろでイエローはどんな顔して聞いてるんだろう。カプリが「ぷはっ」と吹き出し、イエローの背中をバンバン叩いてる。

「……あたし、あいつ嫌い」

 そして金髪の子がぼそっと呟いたのを発端に、イエローへの不満を彼女たちは爆発させる。

「うちもー。なんかさ、絶対うちらのことバカにしてるよね」
「あるある。自分は勉強もスポーツも何でもできますっつって、あたしら庶民を見下してる」
「ボランティアんときとかさ、まじウザいじゃん。うちらだって真面目にやってんのに、もっとちゃんとやれとか、何様って感じ」
「正しいこと言ってりゃ、いばっても許されると思ってんだよね」
「うちらの気持ちとか死んでもわかんないんだろうなー」
「ないよ。あたしらのことなんて、ゴミと思ってんじゃない」
「ひでぇよ、あいつ」

 勝手なことを言って盛り上がる少女たち。
 僕は大人しく聞き役に徹している。

「独善的っつーの、あれ」
「何それ? どういう意味?」
「横島的って意味」
「わかるー」
「地球回しちゃってるよね、自分中心に」
「こないださー、なんか『相談箱』みたいなの教室に置いてなかった?」
「あった。誰がお前に個人情報渡すかっつの」
「マジきもい。あれ、ホント邪魔くさい」
「かっこいいことしてるつもりなんだろうねー」
「何なの、あいつ。政治家にでもなりたいの?」
「まともなやつなら誰も相手にしないよ」
「なんか取り巻きにちやほやされて、わかんなくなってんじゃない? 1人でよがってるだけだっつーの」
「完全、オナ中だよね」
「ウケるー」

 とめどなく、とても楽しそうにイエローの悪口を言う彼女たち。
 もちろん、僕の超音波のせいだ。
 いつものように言葉によって命令しなくても、ガキの頭をネガティブな快感に酔わせるくらいのことは、音波だけで出来る。
 でも、イエローの前でそれを見せたことはないし、わざわざ説明したことはない。僕は「超音波」で催眠をかけているということは言ってるけど。
 彼女たちが悪口ばかりに盛り上がるのはそのせいだ。いくら劣等生の彼女たちにだって、頑張り屋のクラス委員長を尊敬したり友情を感じたりする部分が、少しはあってもおかしくない。
 イエローは、彼女たちにだって公平な友情と正義を注いできたはずだから。
 だから、絶対にそんな言葉が出てこないように僕が調節している。万引きのショックを引きずってる彼女は、これも僕の悪巧みだなんて、気づきもしないんだろう。
 背後で、イエローの肩がどんどん丸まっていくのがわかる。彼女は今、自分の守っているもの、信じていたもの、心の拠り所だったものから、全力で攻撃されている。
 それはきっと、僕らによるレイプよりも深く、彼女の心を傷つけている。

「てかさ、これ言っちゃっていい?」
「なになに?」
「自分のこと“ボク”って、ありえなくね?」
「あっはははははっ!」

 僕らは、そのまましばらく彼女たちの女子トークで耳を楽しませてもらった。
 若く、小綺麗で、そして頭の悪い女の子たちの会話というのは、どうしてこんなに楽しいんだろう。
 コーヒーと一緒に彼女たちに相づちを打ちながら、僕はケータイで部下にメールを送った。

「ここでしばらく待ってよう」

 彼女たちより先に店に出て、その出口で佇む。イエローはさっきから鼻をグスグス鳴らすだけで、顔を上げようともしない。
 でも、まだだ。まだ今日のイベントは終わりじゃない。
 さっきの女の子たちが店を出てくる。
 その瞬間、黒塗りのワゴンから、うちの戦闘員Aたちが飛び出してくる。

「ッ!?」
「ちょっ、何!?」
「やだ、やだ、離して!」

 彼女たちを捕らえて、車の中に引きずり込もうとする。
 キッドナップだ。
 うちの組織の戦闘員Aたちは、怪人たちと同じように、こうして地味な誘拐により人数を増やしている。
 家出や行方不明なんて、それこそ年に何千人といるんだから、多少がこんな道に進んでたとしても、一般人が知らないのも無理はない。
 まあ、それでもこんな人前でそれをやるのは、滅多にないことだけど。

「助けて、シグエレメンツ!」

 相手が怪人であることを知って、女の子の1人が叫ぶ。
 突然のことに戸惑っていたイエローも、ビクリと体を震わせ、拳を握る。
 そして足を動かした瞬間に、僕は後ろから言う。

「……助けるの、あんな連中を?」

 誓って言うけど、僕は超音波を使ってない。でも、イエローは足を止めた。とても簡単に立ち止まってしまった。

「君は彼女たちに何て言われた? 正しいことを正しく行っていた君のこと、彼女たちは何て言った?」

 小さな背中が怯えている。彼女の中で、正義が怯えている。
 とても弱い生き物のように。

「見なよ、周りを」

 あふれんばかりの人混みで、目の前で行われている誘拐に、一般人たちの反応もとてもわかりやすく、テンプレ的だった。

「え、なにあれ、マジ?」
「おー、すげ。待って今、写メ撮っちゃうわ」
「やだ、こわーい」
「け、警察呼んだ方がいいかな?」
「やめとこうよ。そのうちあれ来るから、シグエレ。変に首突っ込まない方がいいよ」
「そうそう。こういうときは素人は引っ込んでようぜ。そのうちプロ来るんだし」
「どうせやらせなんだから、マジにするなよ」
「そうなの? なーんだ」
「誰か警察呼んだ?」
「知らね。こんだけ人いるんだから、呼んだんじゃない?」
「お、パンツ撮れた。ラッキー」

 最初の悲鳴で関心を持っても、すぐに目を逸らすか、たいしたことないと勝手に自己完結する。
 それくらいならまだしも、泣きじゃくる女の子の顔をケータイで撮ってるやつらは、その画像をどうするつもりなのかな。

「僕もそうだったよ。怪人に改造されるまでは、万引きすらしたことない善良な一般市民ってやつだった。目の前で事件が起きても、何もしない善良な一般市民さ。それが、ああやって誘拐されて、怪人にされて、言われるがままに行動したら、君たちに殺された」

 イエローは、誘拐されていく同級生の前で固まっている。僕はかまわず続ける。

「君たちはいずれ、彼女たちも殺すんだろ。お友達の息の根を止めるのは君らさ。でも、それは間違ってない。彼女たちは悪だからな。次に君の前に現れたときは、遠慮なく殺すといい。次に現れる怪人も、その次の怪人も。それでも君たちの敵が尽きることなんてないけどね」

 女の子たちの悲鳴。素通りしていく人混み。
 ひとりぼっちで立ち尽くすワンピースの少女。

「この世の悪が敵だというなら、ここにいる全員が君たちの敵なんだよ。シグエレメンツ」

 僕は、彼女の小さな背中にきっぱりと言い切った。
 もちろん、笑っちゃうくらいの拙い詭弁だ。
 こんな連中に善も悪もない。
 ただのクズだよ。悪などと呼ぶにも値しないさ。
 正義も悪も、確たる意志でそれを行わなければならない。だが彼らは何も持ってない。自分たちがクズであることに気づいてもいない、本物のクズだ。
 価値がないから、こうして切り捨てられるというだけだ。
 正義がそれを救ってやるというなら、正義が勝手に決めて行動すればいい。
 普段の彼女だったら、僕の言葉も彼女たちなりの言葉で両断していただろう。
 でも、弱り切った彼女の心は、もう動きを止めた。
 何を信じていいのか、何を守るべきなのか、正義は踏みにじられ、考える力すら失っている。

「ふざけんな! 早く助けろよ、シグエレぇーッ!」

 金髪の子が叫んだのを最後に、彼女たちは車に押し込まれ、連れ去られていく。
 正義の味方は、何も出来ずにそれを見送ってしまった。
 騒ぎが収まって、いつもの賑わいを続ける渋谷で、イエローはずっと同じ場所で立ち尽くす。
 僕には、彼女の鋼の精神が、ぐにゃりとねじ曲がるのが見えるようだった。

「……雨らー」

 ぽつりと頬を叩く雨に向かって、カプリが長く舌を伸ばした。
 夏の雨だから、きっとこのあと強くなる。

「濡れるよ。どこかで雨宿りしよう」

 僕は彼女の肩を抱き、近くのホテルへ連れて行った。

「しゃぶってよ」

 イエローは、無言で僕のペニスを握ると、自分の口の中に入れた。
 超音波は使ってない。さっきから、僕は一度も。

「もっと吸って」

 言われるがままに僕のを吸い、顔を前後に揺する。
 セックスの作法はもう、彼女の体に染みついていた。

「寝て、足を開け」

 僕は彼女の体にのし掛かり、挿入する。ほとんど濡れてない感触に彼女は痛そうに顔をしかめたけど、でもその表情もすぐ消えた。
 口を閉ざして、天井を見てる。僕はかまわず、彼女の体を揺さぶり、中に精を放った。

「次、カプリ」
「わんわーん!」

 僕は四つん這いになってお尻を振るカプリの中に挿入する。
 すでに濡れそぼってるソコは、僕のを気持ちよく締め付けて、柔らかいお尻の感触とともに楽しませてくれた。

「……バカみたい」

 アンアンとうるさい声を出すカプリの横で、イエローがぼそりと呟いた。

「バカみたいだな……私」

 僕はそんなイエローのことは無視して、カプリとのセックスを楽しむ。
 ますます激しくなっていく犬のような交尾の横で、イエローは子どものように泣きじゃくり続けた。

 それから、部屋に帰っても僕はしばらくイエローのことを抱かなかった。
 彼女は心を塞いだように押し黙り、僕とカプリがセックスをする横で疲れたような顔をするだけだ。
 もう拘束の催眠はかけていない。でも、彼女は外に出ようともしなかったし、仲間に連絡しようともしなかった。
 彼女にはもうそんな強さは残っていない。
 だから僕は、彼女をしばらく1人にして、次の計画を密かに進めていた。

「イエロー、僕らの仕事を手伝ってもらうぞ」

 銀行を襲うと、僕はイエローに言った。
 イエローは項垂れるだけで、何も言わなかった。ただ、僕らの指示には従った。
 昼下がりの銀行。現金の多い時間。仲間は僕とカプリとイエローの3人。
 僕らは、ハンドスピーカー1つで銀行に押し入った。

「僕たちの指示に従え」

 一言で銀行制圧完了。
 僕は支店長と見回りに来た警官に表と裏口を見張るように命じて、さらに、監視カメラの先にいる人間も呼び寄せるように命令する。

「僕たちの命令は絶対だ。常識だ。何も考えずに命令を受け入れろ。ここでの映像も記憶も、必ず消去するんだ」

 そして、命令待ちになる数十名の一般人たち。僕の横で、カプリが嬉しそうに顔を寄せてくる。

「隊長、これからどうしやす?」
「そうだな……まずは、そのお堅い制服にセクシーさが必要だ。下だけ脱がせよう」
「らじゃ! 聞いたか、お前ら。殿は半裸をご所望じゃ。とりあえず脱げ!」

 女性行員のスカートを脱がせ、さらに下着も脱がせる。涼しそうな格好になった彼女たちは、僕らの命令が「常識」だと思っているから、表情を変えることもない。
 お金を奪いに来たと思っていたイエローだけが、目を白黒させて、そして真っ赤になった。

「挨拶の仕方も悪い。女性行員はカウンターの上で雲竜型になってお客様をお迎えしろ。椅子に座って待つとは何事だ」
「そのとおり! しっかり聞いとけ、お前ら!」
「客も客だな。ここは大手銀行だぞ。客の方こそ失礼のないように、四つん這いになってワンワンと言え。お前たちは経済社会に飼い慣らされた犬だ」
「そのとおり! 上手いようで上手くないありがたいお言葉だぞ! ありがたく頂戴しろ!」
「男性行員は、挨拶代わりに客の顔に水をかけろ」
「銀行の水ってうまいよなー!」
「警備員はその水を舐めろ」
「お仕事ごくろうさーん!」
「順番待ちの発券機を、カプリに好きにめくらせろ」
「それ、やってみたかったー!」

 カプリは嬉々として、発券機の紙をどんどん引き出していく。その間に、僕は適当な命令を下して、業務を再開させる。
 
「……875番でお待ちの方、どうぞー」
「あ、それもあたしじゃ~ん。じゃ、おっさんこれ使っていいよ」

 束にして持ってる紙を一枚、サラリーマン風の男にカプリが渡す。
 男は四つん這いになって、ワンワンと尻を振り、券を咥えて窓口に向かう。

「お待たせしましたー」

 雲竜型で四股を踏む女性行員の下で、男性行員が窓口カウンター越しに、客の顔に水をかける。

「どのようなご用件でしょうか?」
「……新規で預金お願いしますワン」
「ありがとうございますー」

 また、紙コップの水が客の顔にかけられる。

「それでは、お呼びするまでお待ちください」

 バシャと、また水をかけられ、男は這ってベンチに戻る。そこを警備員に捕まり、ベロベロと顔を舐められる。
 他にも、机の上でM字開脚してパソコンを叩く行員や、融資コーナーで抱き合って相談しあうおっさんたちや、印紙を濡らす水代わりに股を広げる女性行員や、とりあえず全裸で立ってるだけの人や、半裸や、マガジンラックになってお尻に雑誌を挟む人たちの中で、業務は通常どおりに行われている。
 オロオロそれを見ているだけのイエローだったが、やがて融資相談が熱くなってキスしそうなくらい顔が近づくおっさん達に耐えきれず、「ぷふっ」と吹き出してしまった。
 そのままお腹を抱えて笑っているところで、僕と目が合う。
 慌てて取り繕おうとする彼女に、僕はわざとらしいほど優しい笑みを見せる。

「よし、ミッション終了だ。そろそろ撤収するぞ」
「え?」

 まだ現金には手もつけていない僕に、イエローは首を傾げる。

「こんなの、ただの暇つぶしだよ。イエローが笑ったらどんな顔になるのか、見てみたかっただけだ」

 イエローは、ぽかんと口を開けて、そしてすぐに真っ赤になった。
 僕は奥の方にいったカプリに「帰るぞ」と声をかけて、さっさと銀行を出る。
 イエローは少し遅れて、パタパタと僕の後ろに付いてきた。
 どうしていいのか、困ったような顔で。

 もちろん、作戦がそれだけだというのは嘘だ。
 カプリは遊んでるふりをして、支店長に命令してあるだけの現金を裏口から運ばせ、待機していた戦闘員に渡させていた。
 わざわざ銀行まで行ったんだから、お金くらいは下ろすよ。

 その夜、カプリとセックスを終えて、いつものように蒸し暑い部屋で3人で寝た。
 イエローは相変わらず抱いていないので、僕ら2人からは少し離れたところで1人で寝ている。
 彼女がいつまでも眠れずに、もぞもぞと落ち着かないのにも僕は気づいてる。
 やがて、彼女は身を起こして、僕のところに近づいてきた。
 僕の隣に横になり、タオルケットを被る。僕がそちらを見ると、慌てて目を閉じて眠ってるふりをする。
 僕は、彼女に覆い被さってキスをした。彼女は拒まなかった。
 ツンと不器用に尖らせた唇を、何度もついばむ。優しくキスを繰り返す。
 カプリのTシャツは彼女には大きくて、手を差し込むのも簡単だった。
 胸に触れると、イエローは「はぁ…」と甘い息を吐いた。
 キスを首筋へ。「くぅん」と子犬の声を出して、イエローは体を捻る。
 その体を抱きしめると、くたっと簡単に力が抜けた。寝間着代わりのTシャツとショートパンツも、彼女は脱がせるのに協力的だった。
 僕らは久しぶりにセックスをした。
 だけどそれは、今までしたことのない柔らかい繋がりだった。
 キスの延長のように互いの陰部を擦り合い、快楽を打ち明けあうように、優しいキスで会話する。
 イエローの目に浮かんだのは、悲しさではなく、喜びの涙だった。
 彼女の腕が僕の背中に回る。そして僕の目をしっかり見つめて、彼女は絶頂に達した。
 終わったあとも、僕らは繋がりを求めていた。
 僕は彼女の胸を撫で、彼女は僕のペニスを握った。
 照れくさそうにイエローは顔を伏せていた。彼女は何か言いたそうにしていた。
 僕らはそのまま、黙って互いの愛撫を続ける。
 やがて僕のペニスが完全に復帰したとき、イエローは再び覆い被さろうとする僕の体を、優しく押し戻した。
 そして自ら床に伏せ、お尻を上に突き出して、自分の手でその小さな肉丘を広げた。

「……こ、こっちで、いい?」

 真っ赤な顔を自分の肩に埋めて、さらにお尻をグイと広げる。
 あのとき、一度しかしてないアナルを、やはり彼女は気に入ってたみたいだ。
 僕は、その場所に自分を埋め込む。
 我慢できずに声を出してしまうイエローに、カプリも目を覚ましてしまった。

 そして、僕ら3人でセックスした。

 カプリが再び寝静まって、僕とイエローは窓際で月を眺める。

「……私、またあなたたちの仕事を手伝ってもいいよ」
「そう?」
「でも、勘違いしないで欲しいんだけど、あなたたちの仲間になるって意味じゃないの。『正義の味方』を、やめるってだけ」
「やめるんだ?」
「うん。私は、今日からただの横島季依。正義でも悪でもない、普通の女の子になる。だから私のことイエローって呼ぶのはもう禁止。ただの、季依、だからね?」
「わかったよ。季依」

 ふふっ、と柔らかく彼女は笑う。
 そして僕の肩に頭を乗せてくる。

「私ってさ、いろんなこと知らないまんま正義の味方してたんだなって思う。あなたのことも、まだよくわかんないけど、どういうことを、どんな風に考えてるのかくらいは、ちょっと興味あるよ。だから、もうしばらく……ここにいてもいいかなって思うんだけど」
「あぁ。好きなだけいればいいよ」
「……ねえ、コウモリ男さん?」
「なに?」
「コウちゃんって呼んでいい?」
「絶対だめ」
「えー。じゃあ……お兄ちゃんは?」
「ま、それぐらいなら」
「へへー、お兄ちゃん!」

 僕の腕にしがみついて、季依はずっと笑ってた。僕はその頭を撫でてやって、これからのことを考える。
 でも、考えるまでもなかった。僕が特に育ててやる必要もなく、季依は勝手に僕らに染まっていくだろう。

 正義の味方をやめちゃった横島季依なんて、ただのクズだから。

 案の定、季依はどんどんハマっていく。
 僕らの仕事を少し手伝わせるだけで、悪というものへの抵抗感を捨てていき、積極的に僕らに加担するようになった。
 やがては作戦会議にも加わり、自分からアイディアを出すようにもなった。
 彼女はよく笑った。他人の不幸を喜んだ。
 もう心の拠り所はこちら側にしかない。正義をなくした彼女は、何かにすがらなければ生きていけない弱い女の子だ。
 あのとき僕に占拠された銀行で、「自分よりもみっともない人間」を笑ってしまった時点で、彼女はもう二度と正義には戻れなくなったんだ。
 だから僕に体を委ねた。自分の方から、積極的に僕と緊密な関係を求めた。
 自分のことを誘拐してあれだけ凌辱した男なのに、他にすがるものがなければ、ちょっと優しくしてやるだけで簡単に信頼してしまう。
 季依はもう、完全に僕らの仲間になっていた。
 
「カプ姉、お小遣いちょうだーい」
「まあまあ何でしょう、この子ったら。お小遣いなら昨日あげたばっかりでしょ」
「あんなの全然足りないってば。だってカプ姉、メイク道具貸してくんないじゃん。私だって自分のお化粧セット欲しいのっ」
「うっわ、急に色気づいちゃって。あんたなんてまだ肌ツルツルなんだから、お化粧とかいらないの。もったいない」
「けっちー。お小遣いちょうだいよ~」
「いけません。わがままばっかり言ってるとママは野獣化しますよ。ぱおーん!」
「……ねえ、カプ姉。前から言おうと思ってたんだけど、山羊の鳴き声って『ぱおーん』じゃないよ?」
「マジで!?」

 姉妹のようにじゃれ合う2人を見てると、この部屋も平和になってしまったなと思う。
 カプリが買い物に行ってる間、季依とセックスする。彼女はすっかりセックスにもハマって、積極的に僕の体を愛撫してくれるようになった。

「ね、お兄ちゃんからもカプ姉に言って? 私、自分のメイクセット欲しい。私がきれいになったらお兄ちゃんだって嬉しいもんね?」

 少女というのはたいがい、夏休みの間に女になるものだ。
 彼女を攫ってきて2週間近く。これだけサボったらもう体操選手には戻れないと、季依はあっけらかんと言った。

「だって、私はお兄ちゃんの仕事手伝わないとなんないし」

 僕は「そう」とだけ言って、財布の中から紙幣を数枚出して、季依に渡した。
 帰ってきたカプリと3人でソーメンを食べて、3人でセックスして、3人で裸のままゴロゴロとテレビを見る。
 気がつくと今日はもう夕方で、近づくお盆に向けた旅行プランをわざわざニュースで特集してて、蝉の声が音色を変えていた。
 だらだらと過ごす時間が自然と長くなってしまう。

「……私、こいつ嫌い」

 テレビでは、何かの世界競技で優勝したとかいう若い女が、記者に囲まれていた。
 確かに終始ドヤ顔で、コメントだけは謙虚なことを言っていたが、腹の中では天狗になってるのが透けて見えるような、そんな感じだった。

「ね、こいつとそのへんのチャラ男とやらせてさ、写真バラまいてやろうよ?」

 そして季依が本当に嫌っているものが何なのかも、僕には透けて見えていた。
 だけど、そのくだらなさをいちいちあげつらうほど、無駄な時間の過ごし方もないだろう。
 他人の成功を妬むくらいのことは、クズでも出来る。
 悪とは、もっと明確な意思をもって実行されなければならない。

「それよりもっと面白いことをしよう」
「え、なになに?」
「シグエレメンツを攫ってくる」

 季依は、一瞬驚いた顔をしたが、すぐに目を細めて薄く笑った。

「うん……私も、あいつらが一番嫌い」

 僕らは裸のまま膝をつき合わせて、悪だくみを開始する。

「ンッ、ンッ、あっ、お兄ちゃんっ」

 よくある採掘場で怪人と戦う4人のシグエレメンツを見学しながら、季依とセックスしていた。
 久しぶりにシグエレメンツのスーツとマスクを装着した季依を、彼らの戦闘ぶりがよく見える小高い場所で、四つん這いにさせて抱いている。
 戦隊ヒロインを犯しながら、戦隊ヒロインたちの活躍を眺めるというのは、少しシュールな気持ちだ。
 
「あっ、あっ、いいっ、お兄ちゃん、そこ、いいっ」

 マスクの中でくぐもった声を出し、自分からお尻を振る季依。
 タイツを太ももまで下げただけだから、スーツ越しの背中や胸の感触も懐かしく、あらためてシグエレメンツのメンバーを抱いている感覚を思い出させる。

「みんな、堪えろ! こいつらは、かつて倒した連中ばかりだ! 落ち着いて1人ずつ撃破しろ!」

 レッドが他の3人に檄を飛ばす。
 僕らの用意した怪人は、どれも一度は破れた怪人たちのリサイクルだ。
 捨て駒なのに新品はもったいないと言って、カプリが再生させた怪人たちの死体だった。
 全部で4体。それに戦闘員が15名。
 結構な戦力に見えて、じつはそれほど出費をせずに済んでいる。カプリは便利な子だ。
 4人の怪人を同時に相手にするシグエレメンツは、かなり疲れているように見える。

「堪えろ、みんな…! 必ずイエローは戻ってくる! それまで、俺たちで平和を守るんだ!」

 僕に腰を揺すられてるイエローが、「ぷふっ」と笑った。

「なんか言ってるね、お兄ちゃん?」

 あぁ、なんか言ってるなと僕も笑って、セックスの速度を上げる。

「あぁッ、もうイク! 私イっちゃうよ、お兄ちゃん! イク、イク……イックぅ!」

 すべすべしたスーツの感触を楽しみながら、僕はシグエレメンツ・イエローの膣内に射精した。

「……んで、誰を攫うつもりなの、お兄ちゃんは?」

 お尻を突き上げた格好のまま、ティッシュで股間を拭う季依が言う。
 僕は子どもにクリスマスプレゼントを渡す父親のような気持ちで、季依に答える。

「季依の一番嫌いなやつでいいよ」
「ホント?」

 マスクの中で声を弾ませ、僕の精液を拭いたティッシュを握った手で、季依は1人のメンバーを指した。

「じゃ、あいつ」

 それでは、作戦開始だ。

 4人の怪人のうち、2人が戦闘から距離を取る。シグエレメンツはすかさず残った2人の怪人を倒す。
 そして残りの2人の怪人を倒すために、追撃の態勢になった。
 僕はさらに怪人を二手に分ける。採掘場でケリをつけたい彼らは、自分たちも二手に分けた。
 レッドとブルー。ピンクとブラック。
 一度は倒した怪人なので、攻撃方法も弱点も攻略している。先の2人もそうだったから、彼らはその戦力でも勝てると判断したのだろう。
 正義の味方というのは、悪の敵のことすら信用してしまうほどバカなのか、それとも僕らの前の代表がよほどの間抜けだったのか。
 簡単に散らばってしまったメンバーの1チームを、僕らは後ろから追跡する。
 そして、頃合いを見計らって隠していた別の怪人を登場させる。動揺する彼らを分断させるのは簡単だった。
 隠してた怪人はこの1人だけだ。もちろん、カプリが「もったいない」というから、これでも最低限の人数だ。
 だから、彼らを分断させた後は急いで回収しなければならない。
 僕らの怪人はリサイクル品だ。1対1でも、おそらくすぐ負ける。
 採掘場の事務所の中に逃げ込むよう、怪人に指示した。そちらを追いかけてきたシグエレメンツが、慎重に事務所の中に侵入してくる。
 彼女の武器は飛び道具だから、念のため、狭い場所を捕獲場所に僕は選んだんだ。

「ハァ、ハァ……早く倒してレッドと合流しないと……ッ」

 シグエレメンツ・ブルーは、慎重な足取りで事務所内を探索する。
 雑多に散らかったプレハブの中では、少しの風でも大げさな物音が立って、彼女の神経を逆撫でる。
 ゆっくりと進むブルー。僕は窓の向こうから、適当な小石を拾って投げた。
 ライフル並の速度で、それは窓ガラスを叩き割った。

「ッ!」

 ブルーは咄嗟にそちらに銃を構える。反対側から現れた怪人が彼女の背中を突き飛ばす。
 銃を取り落として倒れるブルー。熊のような巨体で雄叫びをあげる怪人。もう片方のホルスターから銃を取り出す前に、その爪はブルーに向かって振り上げられる。

「スパイラル・イエロー!」

 そのとき、怪人の背後からリボンが伸びて、巨体を絡め取った。
 怪人の雄叫びは悲鳴に変わる。ギシギシと軋む骨の音。少女の声が唖然とするブルーに叱咤する。

「早く! 今だよ、ブルー!」
「ッ!」

 慌てて自分を取り戻し、ホルスターから抜いた銃口を怪人のアゴに押し当てる。超至近距離から撃ち出される弾丸は、怪人の固い頭蓋を撃ち抜いた。

「―――イエロー?」

 崩れ落ちる怪人を振り向きもしないで、ブルーはおぼつかない足取りを動かす。

「本当に……本物の、あなたなのね……?」
「当たり前じゃん。もう、清香姉ったら、油断しちゃダメだよー」

 イエローはリボンをくるくると回収しながら、チッチと気取って指を振る。
 ブルーがよくやる仕草だそうだ。ブルーの震えるため息に涙が混じって、膝を震わせる。

「探してたんだよ、もう……。よかった。本当によかった、イエローが無事で……」

 ゆっくりと、疲れ切った足取りでイエローに近づいていく。そして、イエローを抱きしめようとする寸前、その体に黄色いリボンが巻き付けられる。

「…え?」
「だから、油断しちゃダメだって言ってんじゃん。バーカ」
「きゃあああああッ!?」

 ギリギリと体を締め付けられ、ブルーの体が床に倒れる。リボンをそのままにして、季依はブルーのフェイスマスクを解除し、明るい声で僕を呼ぶ。

「捕まえたよ、お兄ちゃん!」
「…お、お兄ちゃん……?」

 マスクの下の素顔は、確かに前に見たときよりも疲れて見えて、季依のことを探しながら怪人と戦ってきた彼女らの苦労を思わせた。
 僕のことを見ても当然、誰かも分からないみたいで、隣にいる怪人スーツのカプリとの間で視線をうろつかせている。
 何より、季依が懐いている男が何者なのかと。

「―――はじめまして、の方がいいよね? 僕らは以前にも会っているけど、今の姿とは違いすぎるし」

 あらためて彼女の体をじっくりと見回す。
 大人の体。胸もお尻も季依とは違ってふくよかで、そして細く締まっている。
 短めのボブカットから覗く瞳も大きく、唇も柔らかそう。すっきりとした美人の顔。

「はじめまして、シグエレメンツ・ブルー。僕の名前はコウモリ男だ」
「女房のカプリだー」
「違うもん、お兄ちゃんの女房は私!」

 キャイキャイやかましい2人に挟まれる僕を、ブルーはますます鋭い眼光で睨む。
 季依の瞳から失くなって久しい懐かしき正義の光が、彼女の中で激しく燃えていた。

 僕は、その視線だけでもう勃起していた。

< つづく >

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