現実乖離 1

時にそれは時計のように

「はぁ」

 俺は、理科準備室でため息をついた。

 隣で山内乖離(やまうち かいり)不気味な笑いを口元に浮かべながらフラスコを振っている。

「おまえ、幸せそうだな」

「そういう、良はいつも通り面白くなさそうだね」

 俺の名前は滝田良(たきた りょう)。

 冴えない高校生だ。

 中学時代も冴えない日々を送っていたのだが、きっと高校では何もかもが上手くいくと思い込んでいた。

 まぁ、しかし、現実は現実。

 何も変わりはしない。

 高校デビューなんて夢だ。

 幻想だ。

「そりゃ、そうだ。何も面白いことなんてねぇ」

 俺には友達がいなかった。

 奴も同様。

 だから、いつも二人でいる。

 ただ、ただ、そんな関係。

 別にお互いの事を友達だと思っているわけではない。

 ただ、利用し合っているだけなのだ。

 感謝はしている。

 そんな関係。

「なぁ、良。これをやるよ」

 乖離が渡したのは、小型の注射器。

 中には何も入っていないように見える。

「なんだ、これ。俺にヤクでもやれってか?残念ながらそんな度胸はないぜ」

 格好つかない。

 仕方ない。

 これが俺なのだから。

「それを自分の血管に注入してごらん。いいことが起こるよ。ひひひひひ」

 乖離は気持ち悪い声で笑う。

「君が思うような世界が現れるかもしれない。ひひひ」

 骸骨のように気持ち悪く顎が上下に揺れていた。

 俺は、とりあえず家に帰った。

「ただいま」

 家に帰ると、姉がソファーに寝転んでテレビを見ていた。

「うるさい」

 姉は俺よりも三つ上。

 大学生だ。

 目つきは鋭く、色白。

 髪はロングのストレートで、最近、髪を暗い茶色に染めていた。

 性格は見ての通りだが、俺が言うのは何だが美人らしい。

 確かに、白くて長い形のいい脚を持ってはいる。

「母さんは?」

「しらない」

 姉のそんな態度に俺は日頃から少しストレスを感じていた。

 部屋に入ると鞄を投げ捨てた。

 イライラする。

 気がつくと、足元に乖離からもらった注射器が転がっていた。

「俺の思い描いた世界」

 それが何なのか、俺自身にもわからない。

 俺の望みはなんなのか。

 どんな世界なら、俺は満足するというのか。

 わからないし、わかるはずもない。

 だから、乖離の言葉は俺の頭に残り続ける。

 未知。

 それは未知だった。

 それ故に知りたくなる。

 自分が思い描く世界とは何なのか。

 気がつくと自然に注射器を握りしめていた。

 そして、俺は何かに操られるように注射針を自分の腕に差し込んでいた。

「うっ」

 痛みが右腕に走る。

 身体の中を何かが這い回る。

 何も入っていない注射器から何かがはい出してきた。

 そんな錯覚を覚える。

 気持ち悪い。

 おぞましさが身体中を駆け巡り俺を支配していく。

 俺じゃない俺が、俺を壊していく。

 世界が一変した。

 脳が暴走している。

 身体が熱い。

 思考が上手くコントロールできない。

 頭が痛い。

 俺は部屋を出ると、リビングへ向かった。

 姉はまだテレビを見ていた。

 俺は姉の前に立つ。

「何よ!私がテレビ見ているでしょ!邪魔よ!!」

 そんな姉の両頬に手を当てる。

 顔をこちらに向けた。

 姉の目が俺の目を捉える。

「あっ……」

 それと同時に、姉の目から意志の光が抜け落ちた。

「水希(みずき)、俺の事が好きになる」

 姉、水希の顔が恋する少女のように赤らむ。

「お前の全ての欲求は、性欲に変わる。そして、お前の性欲の対象は俺だけだ」

 俺がしゃべったのではない。

 俺の口が勝手に動いたのだ。

 怖いほど朧げな世界。

 夢遊病者のような感覚。

 それは現実だとは思えない。

 理性のない自分がいた。

 正気に戻ると俺は姉から押し倒された。

 姉の顔は蕩け、俺をむさぼり食うような目で見つめている。

「……りょう」

 間延びした、声が姉の口から漏れる。

 姉の顔が俺の顔に近づく。

 熱い吐息が俺の頬にあたる。

 グロスののった、綺麗なアヒル口。

 テカテカとした輝きが魅惑的に迫る。

 唇と唇が触れあった。

 ちゅっ

 そのまま、貪り食うように姉の口が俺の口を犯す。

 姉の舌が俺の口内に強引に入ってくる。

 ちゅっちゅっちゅっ

「はぁぁぁぁあああん」

 姉の両手が俺の背中に回り、しっかりと抱きつかれる体勢なる。

 白い脚が俺の下半身に巻き付く。

 形のいい胸が俺の心臓付近で形を変えている。

 柔らかい太ももがヘビのように俺の脚を絡めとる。

 完全に密着していた。

「しよぅ。交尾。したい。ねぇぇ、私と交尾しよ」

 姉は、目の前の男が自分の弟だということが本当にわかっているのだろうか。

 密着した寝間着の上からでもわかるほど、姉の股間はビチョビチョに濡れていた。

 姉の乳首は立っていた。

 身体が反応している。

 俺という存在を求めているのだ。

 理性さえも飛んでいってしまうほどに。

 姉は無理矢理、俺の服を剥ぎ取っていった。

 彼女自身も下着だけの姿となっていた。

 白い肌く柔らかい肌が俺を興奮させる。

 下半身が素直に反応する。

 姉は嬉しそうに腰を沈めた。

「ああぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁっぁあん!」

 姉は俺を犯す。

 気持ち良さそうに必死に腰を振り続ける。

「あんっあんっあんっあんっあんんんんん」

 涎が垂れ、目は快楽で染まっていた。

「ひぃもちいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃいいい!」

 リズムよく腰を前後に振り続ける。

 快楽の中に沈む姉は嬉しそうに声を上げる。

「いいっいいっいいぃぃぃいいいぃぃっ!!!」

 俺は姉の太ももを、脚を、尻を、胸を、撫で回す。

 姉の白く形のいい脚がお気に入りだった。

 それを、まるで自分のものであるかのように弄ぶ。

 柔らかく気持ちいい。

「いいいっいいのっ、りょうぅぅぅうう、もっと、もっと私を」

 その姿は自分の姉でありながら、淫らで美しかった。

 あぁ、気持ちいい。

 見ると、姉が俺の乳首に吸い付いていた。

 嬉しそうに。

 無邪気に。

 妖艶に。

 俺は腰を突き上げる。

 姉がはねるように、身体を反らせた。

「ひゃあっ、ああぁあん」

 腰を振る。

 お互い、貪るように打ち付け合った。

 獣のようにお互いを求め合う。

 愛し合う。

「あんっあんっあんっあんっあんっあんっあんっあんっ」

 交尾する。

 姉は妖艶で興奮した。

 嬉しそうに腰を振っている。

 眼はほとんど虚ろで。

 ギラギラとした欲望に満ちあふれていた。

 「いこう。水希」

 激しく、深く腰を打ちつけた。

「ひゃあああああああぁぁぁっぁぁあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっっ!!」

 その夜、俺の世界が一変した。

< 続く >

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