まえがき
ここで描かれている心理学は、適当です。雰囲気づくりだけです。
それっぽく書いているだけなので、内容を信じないようにお願いします。
あるラブホテル。
甘い声が響くその部屋では、化粧が濃い目の美人を、なかなか整った顔立ちをした男が、組み敷いて腰をリズミカルに動かしていた。
「ねえ、りっちゃん、彼女いるんでしょ~。こんなことしてていいの~?」
律の下で突かれている女は、そう言いながらも、本心から案じているわけではないようだった。
むしろ、そのことによって、背徳的な快感を得たい、という思いがにじみ出ているかのようだ。
「いや、よくはないけどさ。まあ、浮気も男の甲斐性って言うじゃん? つーか、俺の性欲じゃ一人じゃ我慢できないんだよね」
「あはは、りっちゃんサイテー。女の敵だわ~。あんっ!」
「その女の敵のチンポでよがってる女はだれだっつーのっ!!」
ぐいっ、と力強くペニスを叩きこむ。
それなりにセックスに自信はある。経験人数は二ケタだし、体力もあるつもりだ。
「ひゃうっ! だ、だってぇ、りっちゃんのオチンポ、すごいんだもんっ……」
「強いセックスができる雄に、雌が惹かれるのは、当然だろ? いっぱい気持ちよくしてやるよ……」
「うん、して……いっぱい気持ちよくしてっ! ああんっ!!」
今日もいっぱい楽しめそうだ。律は、にやりと笑った。
セックスをしてホテルを出ると、すぐに家に帰る。
翌日は、恋人の莉緒と会う約束があったからだ。
セックスの疲れで、すぐに寝てしまう。
朝すっきりと目が覚めると、昨日の女の名前を忘れていることに気づいた。
どっかのOLで、逆ナンされたはずだが、メールが来てもだれだかわかんねーな。
まあ、いいか、と律は気楽に考えて、大学に向かった。
今日が最後の授業で、これから夏休みだ。
「ねえ、お願い。この治験に協力してほしいの」
律が、恋人の莉緒から、そんなことを言われたのは、まさにその日のことだった。
「ちけん? あの薬とか飲んでテストする、みたいな?」
「そう。ちょっと変わったバイトなんだけど、報酬は破格なの。一週間の実験とアフターケアこみで、十万円。でも、完全拘束で研究施設に缶詰だけど……」
「おいおい、それ、やばいバイトじゃねーだろーな? ちょっとやることに対して値段が高すぎないか?」
「いや、報酬は安すぎるかもっておじさんから言われたよ。わたしのおじさんが関わっている治験だから、大丈夫だと思う」
「あー、あの心理学をやっているおじさんか」
前に、話を聞いたことはあった。
別に興味なかったのでろくに覚えちゃいないが、そのおじさんが書いた本を見せてもらったこともある。
あの若さで学術書を出せるのはすごいとかなんとか言っていた気がするが、あまり律は勉強に興味はないのだ。
ちらり、と莉緒を見る。
いまどき染めていない黒髪が、肩あたりで切られていて、切れ長の目が涼しい。
それでいて、白いブラウスやパステル調のスカートなどを履いているから、全然クールな感じはない。
むしろ、清楚や清純といったイメージだ。控えめな胸や、きれいな肌もあって、相当モテていたはずだが、律が初めての彼氏らしい。
俺、なんでこんないい女がいて浮気しちゃうんだろーねー?
自分でも、たまにそう思うことがある。悪いと思う気持ちもあるのだが、そして一番に好きなのは間違いなく莉緒なのだが、どうしても他の女も試してみたくなってしまうのだ。
「まあ、夏休みだしな。そういうバイト、してもいいかもな」
「本当? じゃあ、参加申請しておくね? スケジュール、いつが空いてる? ある程度、調節は効くってさ。あと、事前にしてもらうこともいくつかあるみたいだから」
「あー、えっと、じゃあ……」
律は、実験をする時間を指定した。
一週間で十万円は、悪くないなとも思っていた。
しかし、これから自分を待ち受けるものを知っていたら、あるいは、律はこの実験に参加しなかったかもしれない。
もろもろの準備を終え、事前レクチャーも受け、治験の実地場所として二人が到着したのは、山の中の別荘みたいなところだった。
別荘といっても、レジャーを楽しむというよりは、何かの施設に使われていたもののようで、研究所といったほうがしっくりきそうだった。
それなりに古い年月が経っているらしい。
車がすでに何台か止まっている。
二人は、入り口から入ろうとするが、先に扉があいた。、
「ようこそ。莉緒くんに、律くんだね」
厳格そうな顔をした男が、一人。
「こんにちは」
「こんにちは、おじさん」
鈴木悟、たしかそういう名前だった。
莉緒から聞いた名前を、律は思い出す。
「ここでは、精神異常者の治療研究および、一般人が治療に参加できる可能性について研究をしている。守秘義務契約の紙には、二人からサインをもらっているが、あらためて確認しておく。ここであったことは、誰にも話さないこと。そして、一週間の治験の間、帰ることはできないこと。体調が悪くても、基本的にこちらで対処させてもらう。医者もいるからね。大丈夫だね?」
「はい、大丈夫です」
いつもおとなしい莉緒の、即座の返事に、多少意外に思いながらも、律も大丈夫だ、と答えた。
「では、こちらへ」
がたん。ガチャ。
扉の閉まる音と、鍵がかけられる音。
律は、その二つの音に、まるで刑務所に入るみたいだ、と連想した。
しばらく歩くと、莉緒とは離れ離れにさせられて、律だけ別室で説明を受ける。
服や携帯はあずからせてもらって、金庫に厳重に管理する。金庫の鍵は律が自分で持つ。
新しい服は、白衣に、白いシャツに、黒いスラックス。これは皆同じ。実験の期間中は、常にこれを身に着けていなければならない。
精神異常者への治療、事前に聞かされていた説明では、マゾヒストの治療であったが、ここで初めて、律は莉緒がマゾヒストであると聞かされた。
全然そんな風には見えなかったので、驚いたが、まあ、専門家が言うのならばそうなのだろうし、言いにくかったのかもしれない、と思った。
だが、マゾという言葉がはらむ卑猥な雰囲気が、いつもの清楚な莉緒とギャップを感じさせて、律の背筋にぞくりと甘い刺激が走ったのも事実だ。
「君には、もちろん、佐藤くんを担当してもらう。ああ、君の苗字も同じ佐藤なんだね。つまり、佐藤莉緒が君の担当だ。四番という名前で呼んでくれ」
四番、というのはどういうことか、と聞いたが、すぐにわかるから、と説明を先に続けられてしまう。
治験の内容とは、ここの地下にある施設で、一週間「治療者」として生活し、実際に「患者」の容体にどのような変化があるのかを見る、というものだった。
「君は専門家でないから、意味のわからない研究もあるかもしれないが、したがってほしい。もちろん、命の危険はない。それは絶対だ」
力強い言葉に、律は安心する。
「精神異常の治療ということで、見慣れないこと、やりなれないこともあるかもしれないが、すべて意味のある実験だ。彼らの社会復帰につながる大事な研究なのだし、それは君のこれからの働きにかかっている。がんばってほしい」
「はい」
昔、運動部で、先生や先輩に何かを期待されたときのことを思い出した。
律は、割と体育会系で先輩にかわいがられる性質だったから、年上の先生から、そのように言われると、がぜんやる気がわいてくるのだった。
また、先輩の言うことには黙って従う空気のある部活も多かったので、鈴木の言うことに、特に疑問はもたなかった。
それから、一時間近く、一通り説明を受けて必要なものをもらうと、次の部屋に案内される。
この施設は、やたら扉が多く、しかも、いちいち鍵で開けたり閉めたりを繰り返している。
少し不気味に思ったが、次に見た光景が、そんな感情を一瞬で吹き飛ばしてしまう。
囚人服を着た女たちが、四人、一列に並んでいる。
しかも、顔はマスクでおおわれていて見えない。
口だけが開いているマスクに、1番から4番までの番号が額に書いてある。
マスクは、顔の前面を覆っており、誰が誰なのかわからないようになっている。
さすがに、口元だけでは、どんな顔なのか、まったく判断できない。
髪もマスクに収納されているので、雰囲気が全然わからない。仮にマスクを取った人間と面とむかって話しても、わからない自信が律にはあった。
そして、自分と鈴木以外にも、二人の白衣の男がいる。あとで聞いたところによれば、鈴木と同じ研究者だそうだ。
4番。
そう書かれた女の前に鈴木が立つと、「来なさい」と言って、律と一緒にその部屋の外に連れ出す。
そして、ある部屋の前まで来ると、4番をそこに入れた。
そして、律は、4番の鍵を見せられる。
「先ほども説明したが、繰り返す。必ず、患者のことは、番号で呼ぶこと。これはプライバシーのためでもあるし、実験の趣旨でもある。いいね?」
「はい」
「君が考えずに番号で呼べるよう、三日間は、4番と君が一緒にいるときは、わたしか他のものが付きっきりで監視する。この鍵は、四日後に君に受け渡す」
「了解です」
「君の役職は研究助手だ。君以外の男のことは、先生と呼ぶこと」
「わかりました」
「それから、ここでは、我々の指示に1番から4番までの人間は黙って従うことになっている。基本的にコミュニケーションをとってはいけない。実験の大事な条件だ。忘れないように。このことは、四番にも伝えてある」
四番。莉緒のことだ。
一瞬、忘れそうになって、律は焦った。
「では、手始めに、食事から、練習してみよう。やってみなさい」
鈴木は、鍵を開け、部屋に入ると、扉をまた閉め、鍵をかける。
「四番、食事の時間だ」
律はそう言って、先ほど渡された鞄から、パンと水を出す。
莉緒が、まるで莉緒でないかのような錯覚に、一瞬とらわれる。
まるで、莉緒が、四番という名前の実験動物になり、自分が本当に先生になってしまったかのような。
莉緒も、黙ってそれを受け取る。
マスクで目が見えないから、本当にこいつが莉緒なのか、一瞬、律はわからなくなる。
もしかして、こいつは莉緒じゃないんじゃないか?
四番という名前で呼ばれる、別の女なんじゃないか?
ぼうっと突っ立っている莉緒を、律も見つめていると、横からマニュアルを出される。
そうだ、命令をして、食事をしていい、と言わなければならないのだ。
「食べろ」
一礼して、四番が食事を始める。
黒いマスクで、表情は全然見えない。
もしかしたら、完全な視界ではないのかもしれない。だが、見えていないわけではないようで、きちんとパンと水を食べていた。
「いただきます」
ぼそり、と小さな声で四番が言ったときだ。
「ペナルティ。しゃべってはいけない」
横から鈴木先生が声を出した。
「佐藤先生。パンを半分没収してください」
一瞬、躊躇する。
「没収しなさい」
重ねて言われて、律はパンを半分没収する。
ごめんな、と心の中で謝って。
そうだ、意味のある言葉を出したものには、罰を与えなくてはならないのだ。
「食べなさい」
鈴木先生が命令する。
今度は、四番が言葉を発することはなかった。
律は、ほんの少しだけ安心した。確かに、あの声は、莉緒のものだったから。
先ほどの部屋に戻ると、もう誰もいなかった。
「さて、もちろんだが、食事はきちんと与えなくてはならない。あのように、食事を半分にできるのは、一日一回だけと決まっている。覚えているね?」
「はい」
「では、次の段階に入ろう」
そう言うと、隣の部屋に案内される。
そこには、モニターと、何に使うのかよくわからない、ものものしい機械たちがたくさんある、部屋だった。
実に機械的な部屋で、その機械についている赤いダイヤルがよく目立った。
1番のマスクをかぶった女が、ボンデージを着て、ボールギャグをはめられて、ヘッドフォンをつけられ、椅子にしばられているのが、モニターに映っていた。
「さて、では治験をはじめよう」
「治療?」
「ショックを受けたかもしれない。これは、刺激鈍麻療法といって、刺激を与えることで、かえってそれに興味をなくさせるというものだ」
そうして、律を機械の前に座らせる。
「ほら、このダイヤルを回すんだ」
律がダイヤルを回すと、ヴヴヴ……と音がする。
モニターからだ。
「彼女の身に着けているブラジャーとパンティには細工がしてあってね。このダイヤルに連動して動くようになっている」
1番の女が、身もだえしているのが、テレビに見えた。
ボンデージで締め付けられているスタイルのいい体が、快感で痙攣する。
「君もやってみたまえ」
「でも、鈴木さん……」
「違う」
思いがけずきつい声で否定されて、びくっとする。
「先生だよ、ここでは」
「わかりました、先生。でも、やって大丈夫なんでしょうか?」
「全く問題ない。やりなさい」
半信半疑ながらも、ダイヤルを回す。
おそるおそる回すが、そのたびに、ぴくぴくと女が痙攣するのがわかる。
「あの、本当に大丈夫なんでしょうか」
「続けて」
「でも……」
「大丈夫。実験責任者である私が保証する。続けなさい」
さらに強くする。
さらに、女が身もだえる。
いや、身もだえるというよりは、暴れまわっているというのに近い。
くぐもった声も聞こえてくる。快感と苦痛が混じったような声だ。
本当に、大丈夫なのだろうか?
「心配ない。バイタルサインもチェックしている。続けて。もっと強く」
ダイヤルを、さらに回す。
汗がじっとりと出てくる。
「でも、本当に、苦しそうで……」
「マゾとはそういう病気だ。多少の痛みが快感になってしまう。だから、それがつまらないものと認識するために、たくさんこういう経験をしないといけないんだ。続けなさい」
「はい……」
ダイヤルを回すと、その目盛りが、緑から黄色、そして赤になっていく。
「あの、この色って……」
「ああ、強度を示している」
「赤は、危ないんじゃ……」
「大丈夫、彼女は、すでにこの実験を何度もやっているよ」
すでに狂ったように体をよじらせている1番を見て、ぎゅっと目をつぶって、一気にダイヤルを回しきった。
獣のような叫び声が聞こえたような気がして、静かになった。
「ダイヤルをゼロに戻しなさい」
その言葉にしたがって、ダイヤルをゼロに戻す。
「よくやった。あれくらいでないと、意味がないから。とてもいいよ。君が助手でよかった」
律がモニターを見ると、ちょろちょろと何か液体が、椅子から流れ落ちているところだった。
快感で、尿が漏れるという話は聞いたことがあるが、まさか―――。
罪悪感と背徳感を感じながら、律は実験室から出た。
翌日。治験二日目だ。
朝ごはんを、4番に出す。
鈴木先生も一緒だ。
「食べろ」
パンと豆と林檎。
少し、心配になる。
今日の4番は、無言で、食べ終える。
長いワンピースのようになっている囚人服から、きれいな足が見える。
もしかしたら、この下は、裸なんじゃないだろうか。
そう思うと、ぞくりとしたものが律の背筋に走る。
患者は、治療者の指示には服従しなければならない。
そうマニュアルにも書いてあったし、今までのところ、それでうまくいっているようだ。
ならば、自分が「脱げ」と言ったら―――。
ごくり、とつばを飲み込み、鈴木先生をちらっと見る。
鈴木先生がいなくなれば、そんな命令を出すことだって、できるはずじゃないか。
それに、莉緒は自分の彼女なわけだし、そういうことをしても、何の問題もないはずだ。
4番が、手早く食事を終える。
鈴木と律は、部屋を出る。
「これは、マジックミラーなんだ。向うからは見えない。昨日と同じようにやりなさい」
1番の女が、椅子にM字開脚で縛られている。
昨日は、モニターごしに見ていたのに、今度はマジックミラーごしだ。
向うからは、こちらが見えないので、向うからすると、あまり変わらないんだろうけれど。
昨日と同じように、徐々にダイヤルを回して、与える刺激を上昇させていく。
ぴくん、びくん、と震えていく1番。
「ああ、緩急をつけてもいい。連続してあげていくだけでは、ちゃんとデータが取れないからね」
強く。弱く。また強く。弱く。弱く。どんどん強く。もっと強く。ちょっと弱く。強く。弱く弱く弱く、強く。
ぴくんっ、だんっ、だんっ、びくんっ、と体が痙攣する。
刺激が弱まると、体がくったりとするが、その油断したところに、快感をまた送り込む。
ボールギャグをしているので、声はよく聞こえない。
だが、快感を感じているのはわかる。
「よし、それでは、一気にいこう」
昨日と同じように、ぐんぐんダイヤルの指数をあげていく。
もっと大きな声で1番が鳴き、体もびくんびくんと動き出す。
そして、最後の最後までダイヤルをまわしきり―――そこで止める。
声にならない悲鳴があがって、ちょろちょろと何かが漏れるのがわかる。
やっぱり、おしっこを漏らしているんだ。
だんだん、コツをつかんできた。
ダイヤルを「切」にして、先生の指示にしたがって、律は部屋を出た。
治験自体は、そんなに難しいことでもなかった。
決まった時間に、このような実験を行うこと、それ以外の時間は部屋から出ないこと、三日目まではオナニーをしてはならないこと、部屋には監視カメラがつけられていてオナニーをしたかどうかがわかること。オナニーをしてしまったら、報酬は出ないこと。
こういう基本的なスケジュールやルールさえ守っていれば、そんなに苦痛でもない。
ちゃんと食事も出るし、この部屋には、ランニングマシンが備え付けてあって、体を動かすのが好きな律は、積極的に使わせてもらっていた。
ああいう心理学実験以外にも、きちんと相手を番号で呼べるように、4番をきちんと4番という練習や、4番に命令する練習などをしていて、飽きない。
4番立て、4番座れ、4番歩け……。
練習を思い出すと、自然とペニスが大きくなってしまうのを感じた。
まるで、莉緒という人格が消失して、4番という自分の命令を聞く奴隷にすり替わってしまったかのような感覚。
それが、心のどこかを刺激して、性的な興奮を呼び起こしてしまう。
それにしても、一日オナニーをしないだけで、けっこうやりたくなるもんだな、と律が思ったそのとき、ドアにノックの音が響いて、そのままドアが開けられる。
ここにある扉は、基本的に、外からは鍵をかけられるが、中からはかけられないつくりになっているようだった。
現れたのは、昨日の鈴木とは違う二人だった。
確か、昨日、鈴木以外にもいた研究者だ。たしか、高橋と田中。
「今日は、私たちも実験を担当させてもらうよ」
りりりり……と優しいベルの音がなると、二人の白衣を着た人物と共に、律はある部屋に案内されて、中へ入る。
そこには、4番だけでなく、2番と3番の女がいた。
二人とも、1番の女と同じように、ボンデージを着ている。
1番とくらべると、2番も3番も二人とも胸が大きい。
2番は、外人モデルのようにかっこいいプロポーションを持ち、形よく張り出したおっぱいが魅力的だ。
あれがロケットおっぱいというべきものなのかと感じる。
3番は、むっちりとした肉付きで、とてもスケベに見える。男なら誰しもがむしゃぶりつきたくなるような、とろけた体だ。
厚ぼったいくちびるも、卑猥な感じがしてしまう。
「奉仕の時間だ」
そう、高橋が言うと、2番の女が、高橋にひざまずいて、ペニスを取りだして、舐めはじめる。
3番の女も、同様に、田中の腰に手をまわし、じゅぽじゅぽと性器をすすりはじめた。
「じゅるるっ、じゅぷっ、ちゅっ、じゅるるっ、じゅぷっ、じゅぞぞぞぞっ、じゅぷぷ」
「ちゅっ、ちゅ、ちゅるるっ、れろろおおおおお、りゅりゅうう、じゅずぷりゅううう」
二人のフェラチオの音が、耳に響く。
オナニーを昨日していない律は、瞬く間に股間を大きくしてしまう。
ぴちゃぴちゃとペニスを舐める音や、じゅっじゅっとペニスをすする音、れろれろと下品にペニスを舐める音が響いていく。
一瞬、これが実験なのか、とも思うが、二人の女が当然のようにフェラチオをしている光景は、あっさりとそのような思惟を押し流す。
「君もどうぞ」
「し、しかし……」
「これは実験だよ。問題ない。みんなやっている」
高橋の声に、一瞬否定したものの、
「それに、詳しくは知らないが、そういうことをしても大丈夫な関係のはずだ」
田中からも言われ、律は躊躇する。
確かに、二人ともふつうにフェラチオしてるんだから、これがふつうなのかもしれない。
なるほど、実験なんだから、そしてこのプロジェクトは治験なんだから、そんなに変なことにはならないはずだ。
だが、それでもまだぐずぐずしている律に対して、これ以上何かを言うのをあきらめたのか、田中はあっさりとその命令をくだす。
「4番、なめてあげなさい」
躊躇する律をよそに、田中の自信たっぷりな声に、4番は、ひざまずいて、律のペニスを舐めようとする。
スラックスを外し、下着をおろし、すでに勃起したペニスを取り出す。
目がよく見えていないのだろう、勢いよく飛び出したペニスが、4番の顔を叩くが、唯一見えている口元が、にやりとうれしそうに笑った。
それが信じられなくて、だが、同時に興奮と、田中へと嫉妬を感じ、思わず、
「4番、ストップ」
一時停止した4番に、律は再び命令する。
ぐいっ、とペニスを突き出して、4番のくちびるにくっつける。
律のペニスと4番のくちびるがキスをした形だ。
「4番、なめなさい」
ゆっくりとくちびるが開いて、その開いたくちびるの穴に、ゆっくりとペニスが吸い込まれていく。
ぬぷっ、という感触がして、ペニスが4番の口につつみこまれる。
「おおっ……」
思わず、快感にうめき声が出る。
そのまま、ゆっくりと顔を動かして、たっぷりと唾液をつける。
まだ、舌は動かさず、あたたかい感触を律に楽しませてくれる。
そうやって、口の中のあたたかさにペニスが慣れてくると、ゆっくりとくちびると離した。
いったん、ペニスを口から出すと、れろれろと下品に舌を動かして、ペニスをなめしゃぶる。
「れろっ、れろれろっ、れろろろろろっ、れろっ、れろっ、れろろろろろろろ……」
そうやって、ペニス全体に唾液をまぶし、舌で食感と感触を味わうと、再び、自分の口の中にペニスを招き入れる。
こんなにフェラチオがうまかっただろうか。
しかし、いつもはペニスをすぐに挿入してしまうし、フェラチオだって、自分がペニスをつっこんで腰を動かすことが多く、イニシアティヴを取られたことがなかったので、よくわからない。
もしかして。
もしかして、だれかに命令されて、フェラチオを教え込まれたとか―――
ちらり、と高橋と田中に目をやる。二人は、熱心な2番と3番の奉仕を堪能しているようだ。
高橋が2番の担当で、田中が3番の担当か。だが、先ほど4番にも命令をして、4番がその命令に従ったということは、もしかしたら、二人のうちどちらかが……
いやいや、それは自分が彼氏だからすんなり言っただけだ……でも……
そんなことを考えていると、嫉妬と不安で胸がぐしゃぐしゃになる。
なる、というのに……ペニスが勃起してきてしまう。
鬱勃起、という言葉を聞いたことがあるが、それかもしれない。
「出すぞ。飲みなさい」
その言葉に、はっとすると、高橋が腰を震わせているところだった。
腰の動きにあわせて、2番の頭も小刻みに動き、胸もぷるぷると揺れる。
しばらく、ペニスを口にふくんでいたかと思うと、きゅぽんっ、と口を離し、口を開けて、精液が入っていることを見せる。
ごくり、と喉が動いて、その精液が、のどを通っていくのが、律にも見えた。
その官能的な姿に、自分のペニスもより大きくなり、4番から受ける奉仕も、さらに気持ちよさを増す。
2番は、射精したペニスを丁寧にフェラチオし、綺麗にする。
俗にいうお掃除フェラだ。
丁寧に掃除をして、精液をきちんと舐めとると、頭をさげる。
「よくできた。食事を豪華にする」
高橋の言葉に、少しだけびっくりする。
そんなこともできるのか。
高橋も、こちらを向いて、
「奉仕の出来栄えによって、食事の内容を変えるといい。よい仕事にはよい報酬を」
律は、自分のペニスに意識を集中させる。
いつもよりも熱心で、テクニックもあるようなフェラチオに、律はもう爆発寸前だった。
「出すぞ、4番」
びゅるるるるっ!!
勢いよく精子が4番の喉の奥へと流し込まれていく。
ずずずっ、と音をたてて、尿道に残っている精子も啜ると、4番は2番がやったように口を開ける。
昨日ためたからだろうか、どろどろの、黄ばんだザーメンがゼリーのように口の中に浮かんでいる。
いったん、4番が口を閉じ、開くと、その黄ばんだ汚い生殖液は、きれいさっぱり、4番のおなかの中へと消えていた。
その光景に興奮して、また少し勃起したペニスを、4番は丁寧になめる。
そして、きれになめきって、すべての精液を口にいれると、ぺこりとお辞儀をした。
律は、興奮した。
「よくできた。食事を豪華にする」
田中も、3番の口の中にしっかり射精して、同じように食事を豪華にした。
自分の患者の食事の用意は、鈴木さんがしてくれる。
あとできちんと連絡しておこう。
このような実験が一日に二回くらいはあるし、4番に命令する練習もあるが、それ以外は、治療者の役割は、基本的には暇だ。
食事も豪華ではないが用意される。実際に実験にかける時間よりは、一人でいる時間の方がずっと多い。
だが、大量のアダルトビデオや官能小説や漫画が用意されていて、これは好きなだけ見ていいと言われていた。
マゾヒズムに対する論文もあったのだが、律は勉強が好きではないので、最初からそれを読む気はなかった。
特に、何のタイトルもついていないビデオで、どこかの流出かホームビデオのようなものが、律のお気に入りだった。
仮面をつけた男女が、夫婦交換をするものだったが、それが、背徳的な興奮を律に与えた。
こんな性癖があったとは、知らなかったな。
あまり長いこと見ていると、むらむらしてくるので、さっさと寝ることにする。
そういえば、三日目までは4番と一緒にいるときは、鈴木先生が一緒にいると聞かされていたが、そのあとは鍵を渡す、と言われていた。
ちらり、と机の引き出しに、視線をやる。
そこには、コンドームの箱が入っていた。それも、「女の子を気持ちよくさせるために開発された特殊ジェル加工のコンドームの試作品アフロディテ」などという説明書きまでついていた。
もしかしたら、こういう製品の実験もしているのかもしれない。
とりあえず、今日は寝よう。
いろいろエッチな光景を見て、このまま起きていたらオナニーしてしまいそうだ。
三日目。
ダイヤルを回して、1番をいかせる実験は、最終段階に入ったようだった。
「さて、今日は、もっと近くに行く」
縛られた1番が、大きく足を広げて、縛られている。
しかし、モニター越しでも、マジックミラー越しでもない。
マジックミラーごしの部屋に、律と鈴木はいた。
律の手には、ダイヤルのついた機械が握られている。
「ダイヤルをあげなさい」
慣れてきた律は、ためらうことなく、ダイヤルを回していく。
ギャグボールをはめられた口から、くぐもった声が聞こえる。
「どうやら、快感を感じているようだね」
「そうですね」
律は、冷静に答える。
「君には才能がある」
「ありがとうございます」
どこかくすぐったい。
偉い人から褒められるというのは、なかなかうれしいものだ。
律の服従心が、喜びの溜息をつく。
「もっと感じるか試してみよう。緩急をつけて刺激をあたえなさい」
「はい」
律は、ダイヤルを器用にまわして、刺激に強弱をつけて、1番に与える。
「~~!! ~~~~~!!! ~~~~~!」
声にならない声が、1番からもれる。
なんだか楽しい。
律は、そう感じ始めていた。
慣れてきた律は、何度もリズミカルに1番を絶頂へと押し上げる。
じょろじょろと尿がもれ、あの独特のにおいがする。
ちらり、と鈴木を見る律だが、今回鈴木は律を止めない。
そのまま、律はダイヤルをいじり、1番に快感を与え続ける。
どれくらい経ったのだろうか。
自分でもよくわからない、とても長いと感じた時間。
しかし、実際はとても短かったかもしれない時間。
ぽん、と肩を叩かれ、ダイヤルのスイッチを切るように言われる。
ぐったりとした1番を見て、律は満足感に浸った。
昨日と同じように、4番にフェラチオをさせ、口の中に遠慮なく出した。
とても上手なフェラチオだったようにも思ったが、状況が与える興奮がもたらした錯覚かもしれない。
夜ごはんのあと、しばらくしてから、一緒に来なさい、と田中と高橋に言われた律が向かった先は、今まで行ったことのない部屋だった。
頑丈そうな部屋だ。部屋の奥には手錠がかかっているなどして、まるでSMプレイの部屋にも見えた。
そこには、2番と3番がいた。
二人とも、やはりボンデージを着ている。
そこで、田中は、3番ではなく、2番の前に行った。
逆に、高橋は、2番でなく、3番。
いつもの担当とは違う。入れ替わっている。
「しゃがみなさい」
二人の言葉で、2番と3番は、しゃがみこむ。
大きく股を開いているので、うんこ座りやそんきょのことを律は連想した。
「2番、もし君が望むなら、これに奉仕してもかまわない」
そう言って、田中はペニスを2番の前に突き出した。
「3番、もし君が望むなら、これに奉仕してもかまわない」
高橋も同じようにする。
声で、いつもの担当とは違うことは、それぞれの女たちもわかっているはずだ。
2番は、躊躇する。
しかし、3番は、よろこんで奉仕をしはじめた。
「れろっ……にちゃっ、くちゅっ」
一回、ペニスを舌でなめると、音をたてて、口の中につばをためこむ。
そして、そのまま、すぼめた唇で、ペニスを飲み込んだ。
「じゅじゅっ、じゅるるっ、じゅぽっ、じゅずっ、じゅるるるるっ!」
大きな音で、フェラチオがはじまる。
2番は、その音を聞いて、腰をぷるぷるさせる。
「じゅるるるるっ、じゅるっ、じゅぷぷっ、じゅるっ、じゅるるっ!!」
2番の口が、開いたり閉じたりする。
律は、その口の中で、舌がちらちらとうごめくのが見えた気がした。
「じゅぷぷっ、じゅるっ、じゅるるっ、じゅるっ、じゅぷっ、じゅぞぞぞぞおぞぞぞ!!」
律のペニスも勃起してしまうくらいの卑猥な音に、2番も刺激されたのだろう。
そのまま、ペニスをくわえこんでしまう。
そのあとは、早かった。
じゅっぽ、じゅっぽと、3番顔負けの、大きな音をたてるフェラチオで、相手をどんどん気持ちよくしていく。
だが、我慢したせいか、フェラチオだけでは、すぐに我慢できなくなったのか、2番は、後ろを向いて、おしりを大きく広げた。
「おや、それは入れてほしいという合図なのかな?」
無言で、2番は、横にゆっくり、フリフリとお尻をふる。
まるで、男を誘っているようだ。
その声を聞いて、3番もフェラチオをやめ、男にむけて尻を突き出して、同じようにお尻をひろげ、秘所がよくみえるように広げる。
3番は、2番のように横に横にフリフリとお尻を大きくふるのではなく、小刻みに上下運動させた。
肉付きのよい尻が、ぷるぷると震える。
その動きの卑猥さに、律はズボンの中で射精しそうになってしまい、あわてて目をそらす。
あの二人、犯したい――――そう律が本能的に思ってしまった。
心を落ち着けて視線を戻すと、田中も高橋も、白衣のポケットから、何かジェルのようなものを取り出したところだった。
ボンデージのパンティ部分を取り外して、中身をあらわにすると、そのジェルを股間に―――女性性器に塗り付けはじめた。
最初のころは何もなかったが、しだいに、女たちの足が震えはじめるのがわかる。
それだけではない。
ぽたっ、ぽたっ、と落ちているのは、愛液だ。
研究者ふたりが、性器に手をふれ、愛液を掬い取ると、そこには大量の愛液がべっとりとついていた。
それを確認すると、白衣のポケットから、今度はボールギャグを出し、それぞれの口に装着させる。
そして、壁の奥にある、SM用の革の手錠がかかっているところに二人を連れていくと、それぞれの腕を壁につなぎ、2番と3番が壁に手をついて、後ろに尻を突き出すようにさせる。
そのまま、田中も高橋も、ペニスをズボンから取り出すと、コンドームもなしで、ずぶりと挿入した。
「~~~~!!」
「~~! ~~~~!」
んごおおお、んふうううう、などという声が聞こえるが、よく聞き取れない。
はっきりとした人間の声ではなく、何か獣の声を聞いているかのようだ。
ぽたぽたと、壁のほうに落ちてきている液たちは、唾液だろう。
ボールギャグをかまされていても、快感により叫ぶ喉は、唾液を放出するに違いない。
ぱんっ、ぱんっ、と激しい音が聞こえる。
さきほどの奉仕で、もう我慢の限界だったのだろう。
男二人の腰が震える。
その震えがおさまって、ペニスを抜く。深く、射精したのかもしれない。
精液は、出てこなかった。
片づけをして、部屋から出ると、高橋が律に声をかけてきた。
「1番から3番までは、きちんと避妊をしているからね。生でしても問題ないんだ。君もこの実験に参加する前に、性病チェックはしただろう?」
「あ、はい」
いきなりの言葉に、素直に答える。
「そうか。なら、君も、もししたかったら、彼女たちと生でしたっていい。彼女たちに許可を取る必要はあるがね」
田中が口をはさむ。
「きちんと許可をとることが大事なんだ。ここには強制はない。わかっているとは思うが、もし君がそんなことをしたら倫理規定違反になって警察を呼ばれるから、そのつもりでね」
「逆にいえば、許可が出たら何をやってもいいということになるが」
「まあ、番号ごとに実験内容が違うらしいから、そういう機会はないかもしれないけどね」
じゃあ、と言って三人は別れる。
部屋に戻ると、机にプリントが置いてあった。
印刷された文字で、トランクに必要なものを用意した、と書いてある。
その中には、ボンデージが置いてあった。
あのジェルも置いてあったし、ボールギャグも置いてある。
このまま、飛び出していきたい衝動にかられる。
もちろん、まだ4番のいる部屋の鍵は持っていないのだが。
それに、この実験棟には、門限があり、ある時間をすぎると外出ができなくなり、外からカギをかけられてしまう。
律たち実験者が、時間をすぎても自室に戻っていないと、実験が失敗となってしまうので、律は時間には気を付けるようにしていた。
時計は最初に保管されてしまったので、どこかから響いてくる時計の音を聞いて判断する。
さっき、9回鐘の音がなった。10回目が来るまでに部屋に戻っていないといけないのだ。
たっぷり眠れるというのは、悪いことじゃない。律は、10回目の鐘の音を聞く前に、眠りに落ちた。
四日目。
床に封筒が落ちているのが見える。
扉の下から、入れられたのだろう。
そこには、4番の部屋の鍵と、注意事項や連絡事項が書かれた紙が入っていた。
注意事項によれば、今日は一日、人がいないので、自由に過ごしていいし、4番ともセックス解禁らしい。
ただ、4番の部屋と、自分の部屋以外は、鍵がかかっていて入れないとも書いてあった。
律は、コンドームをひっつかむと、すぐに4番の部屋に向かった。
4番は、空中で、ちょっとしたブランコのようなものに拘束されていた。
逆Y字型のハンモックのような拘束具で、ちょうど秘所だけがこちらに向けられている。
手も足も、天井からの鎖につながる革ベルトで拘束されていて、身動きが取れない状態のようだった。
律は、そのまま、ズボンもパンツも脱ぎ捨てると、秘所にジェルをたらして、コンドームをいれた。
「あああっ!」
大きな喘ぎ声が響く。
それは、明らかに莉緒のもので、ああ、やっぱりこの女は莉緒だった、と頭のどこかでぼんやりと思う。
でも、今の律には、莉緒は莉緒であって、莉緒でなかった。
今の律には、莉緒が4番に見えていた。
声を聞いていても。
もうそれが、昔の、ほんの数日前の、莉緒と同じ声なのに、それが莉緒とつながらない。
莉緒ってどんな女だったっけ。
思い出せない。
人間の、莉緒を、思い出せない。
人間は、視覚情報に多くをたよる生き物だ、と聞いたことがある。
目の前で、4の数字を顔につけたまま、口だけを出したマスクで、髪すら出せないようにおおわれた女。
顔が見えない、この女を、莉緒と同じ女だと、あまり思えない。
このマスクをした、この女。
この女にしてきたことは、命令。
命令の、実験。
こういうマスクをしている女にしてきたことは、実験。
ダイヤルをまわして、何度も絶頂させた。
最初あった抵抗も、だんだんなくなって、最後には、面と向かっていかせることができた。
昨日の二人の男は、いつもと違う相手だって、遠慮なくセックスしていた。
そうだ。
顔にマスクをつけていて、番号がついている女たちは、マゾヒストだと言っていた。
これは実験なのだとも言っていた。
きちんと命令にだって従うのだ。
律は、4番とセックスできると、紙に書いてあるのを読んだ。
これは、許可が出たということだ。
許可が出たならしてもいい。
これは実験なのだし、実験の責任者からの命令だ。
権威ある命令だ。
従ってもいい、いや従わなくてはならない。
「このっ、このコンドームううううっ! ちがうっ、なんかちがうのおおおお!!」
いつもよりも大きいあえぎ。
空中で、腰をしっかりと律ににぎられながら、翻弄され、律の腰にぶつけられるさまは、まるで人型のオナホールのようだった。
律は、すぐに出してしまう。
興奮している。
すごく、興奮している。
4番を、好きにできるんだ。
すぐさま、次のコンドームを用意する。
そのまま入れる。
セックスする。
腰を動かす。
「ひゃうううっ、ああっ、いいっ、いいよおおっ、あはあああっ!」
もう、莉緒の声なんて聞こえない。
聞こえるのは、4番の声だけ。
実験動物の声だけ。
三日ぶりのセックスは、とても楽しい。
たまった欲望を吐き出すのは、とても楽しい。
その日、昼寝をはさみながら、コンドームを8個消費して、律は4番を犯した。
食事はしなかった。
さすがに、疲れたので、さっさと寝ることにする。
たくさんの食事と、飲み物を飲んで、寝た。
莉緒の心配はしなかった。
4番の心配も、しなかった。
4番の管理は、実験責任者の仕事だ。
律は、言われたことをやればいい。
五日目。
鍵がある。
朝、起きたら、扉の下から、また封筒が入れられていて、この鍵と、書類が入っていた。
今日は、午前中が、自由時間だ。
鍵を、紙に書いてあった部屋のドアノブに差し込み、開ける。
すると、そこには、みっつの丸尻が、こちらを向いて、待っていた。
だれが入ってきたのか、後ろ向きだから、相手はわからないかもしれない。
1番。2番。3番。
顔をマスクで隠された女たちが、拘束されて、こちらに尻を向けて立っている。
そのパンツの部分は、遠慮なくはぎとられて、割れ目がしっかりと見えていた。
律は、遠慮することなく、彼女たちに、生で挿入することを決める。
つん、つん、と先端で、濡れたぬかるみに刺激を与えると、じんわりと液がもれてくるのがわかる。
律は、ジェルを取り出して、自分と、1番の性器にぬりつける。
じんわりと熱を帯びてくるのが自分でもわかった。
ゆっくりと、自分のペニスが硬度を増していく。
もう一度、ペニスの先端を、1番のあそこにあてる。
くちゅっ、という音がして、先ほどよりも濡れていることは、明らかだった。
そのまま、生挿入する。
「く、おぁ……」
やばい。
これは、やばい。
生が、こんなに気持ちいいなんて。
「おおおおっ!」
うなり声をあげて、腰を激しく打ち付ける。
ギャグボールをかまされた1番は、くぐもった声をあげる。
すぐに射精してしまった律は、すぐに2番へとペニスをうつす。
その胸をぐにぐにと揉みしだき、相手の背中に覆いかぶさるようにする。
他人のぬくもりがあたたかい。そのまま、小刻みに腰を動かして、また射精する。
気持ちよすぎて、我慢がきかない。
3番の中にいれて、今度はゆっくりかきまわす。
二度も出したので、今度は余裕があった。
それでも、丁寧に腰をくねらせ、その巨乳や、腹や足の肉を堪能すると、また射精したい気持ちが出てくる。
一気に奥まで挿入すると、3番が声にならない声をあげて、子宮にまで届くように、思いっきり発射した。
三発。
でも、まだまだやりたりない。
完全に獣の目になった律は、午前中いっぱい、女たちを犯しつくした。
その日は、あまりにも疲れていたので、夢も見なかった。
六日目の朝。
律は、自分が部屋から出られないことに気がついた。
扉には、鍵がかけられている。
代わりに、テレビの前に、手紙が置いてあった。
「器材をセットして、映像を見ること」
指示通りに、セットすると、映像が流れだす。
そこに映っているのは、四番だった。いや、莉緒だ。
マスクをしていない。
そして、莉緒が見ているのは、テレビ。
そのテレビのディスプレイに映っているのは、自分が、1番や2番や3番とセックスしている映像だった。
肩が震えている。
泣いているのだ。
莉緒は、目で涙をぬぐう。
それでも、後から後から流れてきて、それでも莉緒は必死に我慢していた。
その肩を、だれかが優しく叩く。
そこには、1番のマスクをつけた男がいた。
いや、より正確にいうなら、1番のマスク以外は、何も着けていない男がいた。
全裸だった。顔だけがわからない。
さらに、二人の人物が、カメラに入ってくる。
2番のマスクをつけた男と、3番のマスクをつけた男だ。
この二人も、当然のように全裸だった。
1番の男が、優しく莉緒の髪をなでると、2番と3番の男も、背中をなでさすったり、ティッシュで涙をふいてあげたりして、落ち着かせている。
そのかいあってか、莉緒にも笑顔が戻る。
マイクの調子が、とても悪いのだろうか。
ほとんど 声が聞こえてこない。
何か言っているのはわかるが、何を言っているのかわからない。
そのとき、急に音声が鮮明に聞こえてきた。
マイクが、莉緒の手に渡されたのだ。
「律くん、こんにちは。莉緒、です。この、治験は、律くんが、浮気、するのを、止めるための、治験、でした。マゾヒストの治療実験とありましたが、本当は、浮気性の人間を、治療するための、治験です。もしかしたら、駄目かな、と思ってましたが、やっぱり駄目でしたね……ひくっ」
ここで、莉緒が、すんっ、と鼻をすする。
「昨日までに、律くんは、三人の女の人とセックスをしました。それも、生セックスです。嫉妬しました。本当に、律くんはわたしのこと、好きなのかなあって、思った。わたしがいても――他の女の人と、しちゃうんですね。だから――だから、わたしも、考えました」
そこで、涙を拭くと、にっこり笑った。
「これから、莉緒は、この人たちと、セックスします。それでも莉緒のことを愛しているなら、マジックミラーの部屋に来てください。そこで、わたしを見ていてください。鍵は、ベッドの裏に張り付けてあるはずです。もし、自分の浮気はしょうがないけど、わたしの浮気は許せないなら――――帰ってください。部屋の鍵も、スペアキーが同じところに張り付けてあるはずです」
しばらく、ショックでぼんやりとしていた律は、すぐに鍵を取り、マジックミラーの部屋に向かった。
律が部屋に入ると、マジックミラーごしに見える莉緒が、ベッドに拘束されていて、愛撫されているところだった。
莉緒のあそこに、ゆっくりとローターがあてられる。
「ひゃああっ」
莉緒の甘い声が聞こえる。
すでに莉緒の声は、甘く蕩けていて、この愛撫が、しばらく前から、行われていることがわかる。
「ああっ、いくっ、いくっ、………ああ、もう、どうして!」
怒りも混ざったような声は、自分が絶頂に至れないことを嘆いていた。
ゆっくりと、男たちの手が、莉緒のあそこをねぶり、快感を与える。
「ひゃうっ、ああ、あうっ、ああっ……」
いきそうで、いけない。
そんな中、ぼそぼそと、1番のマスクをかぶった男が、莉緒になにかをささやく。
「あぁっ、言えないっ………言えないよおっ、あっ、いくっ、い………ああ、もう、いやあああっ!!」
莉緒が叫んだ。
がちゃがちゃと拘束具を動かして、大声で叫ぶ。
こんな莉緒の声、聞いたことがない。
「言う、言うからぁ、ごめん、ごめんね、律……っ! で、でも、律も浮気したからいいよね! 許してくれるよね!? 律、ごめんなさいっ!」
すうっ、と莉緒が息を吸い込んだ。
聞いてはいけない。
そう思ったが、すでに手遅れだった。
「わ、わたしのお、おまんこっ! おまんこをっ! 生オチンポで、めちゃくちゃにしてくださいっ!!」
がくん。
ひざから、力が抜けた。
景色が涙でにじむ。
目の前で、莉緒が、拘束具を解かれているところだった。
そのまま、1番の男にのしかかられる。
あわてて涙をぬぐう。
男の生のペニスが、莉緒のあそこに、ぴたりとねらいを定めたところだった。
「莉緒……だめだ…………」
また、ぼそぼそっ、と1番が、なにかを莉緒に囁くのが見える。
「律っ! わたしっ! わたし、律が一番好きだからっ……だけど………だけど、けじめはつけなきゃいけないから! わたしがこうすることで、律の浮気を許すから、だからっ……もし、最後まで、ここにいられて、その気があったら…………わたしのところに来て!」
そこで、またすうっと息を吸い、大声で宣言する。
「でも、今はっ! 莉緒は、みなさんの、お、おまんこ、ど、奴隷ですっ! みんなの生、お……オチンポ、様で、莉緒のぐちょぐちょ……ああ、恥ずかしいっ! ぐちょぐちょ淫乱おまんこっ! かきまわして、精子いっぱいかけてくださいっ!!!」
莉緒がやけになったような大声でそういうと、一気に1番が挿入した。
「あああああああああっ!!」
律が、今まで聞いたことがないような大きな声を莉緒はあげる。
その声には、甘さも交じっていて、その甘さも、淫の色をふくみ、律は、そんな莉緒を見たことがなかった。
そのまま、しなやかでなめらかな動作で、莉緒の足が、1番の腰にしっかりと巻き付く。
そして、腕は首と背中にまわり、もう離したくないというように、四肢が1番の体にからみついた。
律は、ショックだった。
でも、それだけじゃなかった。
鬱勃起、というのだろうか。
ひどくつらい、吐き気がするような気持ちの中、確実に、律のズボンの中で、ペニスは勃起していた。
ぼんやりとした意識の中、ズボンを脱いで、ペニスを出す。
そこには、すでに先走り汁があふれ出ていた。
あれ……こんなに、激しく、硬い勃起って、していたかな…………。
「おおん! おおおおんっ、おおおおおっ、おほおおおおおおっ!!」
聞いたことのない喘ぎ声をあげる莉緒を見ながら、律はゆっくりとペニスをしごきはじめた。
そのとき。
すっ、と後ろから抱きしめられて、その手を優しく止められる。
「だめよ、自分でしちゃあ。わたしたちがしてあげる」
「え……?」
ぼんやりとした意識の中、まわりを見回すと、三人の女たちがいた。
一人はスレンダーな体形。
一人はかっこいいスタイルのロケットおっぱい。
一人は、肉付きのいい、エロい体の巨乳。
「つらいよね、彼女が他の男としてるのを見るの、ってさ」
スレンダーな女の人が言う。
「あの、あなたたちは……」
「あそこで、君の彼女とセックスしてる男たちの旦那」
ロケットおっぱいが、肩をすくめて言う。
混乱する律に、むちむちした体の巨乳が、優しく声をかける。
「びっくりしたでしょう。あんな変態で淫乱な言葉を言って、おちんちんを求めちゃうんだもんね。でも、しょうがないのよ、女って、男の手で優しくされると、濡れちゃうものなの」
「君だってそうでしょう? わたしたちの手でシコシコされると、おちんちん、こんなにしてるもんね」
スレンダーが、先走り汁でぬるぬるのペニスを、優しく優しくシコシコする。
「別に好きじゃない女相手でも、射精しちゃうじゃない? ギリギリまで射精を寸止めされたら、出させてくださいって言っちゃうんじゃない? 女も一緒よ。あなたのことが一番大事で、一番愛していても、寸止めでいくのを焦らされ続けたら、もう我慢できないってなっちゃうのも、しょうがないことよ」
スレンダーの優しい言葉に、少しだけ、救われた気がする。
「あ、出た」
ロケットおっぱいの言葉に、律はマジックミラーのほうに視線を移す。
そこには、莉緒の体から離れる1番と、その1番から垂れてくる精液だった。
1番は、躊躇することなく、その精液と愛液で汚れたペニスを、莉緒の口の前に出す。
一瞬、律は、莉緒が首を横にして、拒否するかと思った。
だが、莉緒は、一切抵抗することなく―――むしろ、自分からすすんで、体を動かしてペニスをくわえた。
律は、衝撃を受けた。あんな清楚な莉緒が、そんな……。
そう思っている間も、じゅるるっ、じゅぽっ、じゅずずずっ、と、しっかりとペニスを綺麗にしている、熱心な音が聞こえる。
「莉緒………生、で、そんな………」
その言葉に、まわりから、口ぐちにコメントが来る。
「でも、君もわたしたちと、エッチしたよね?」
「でも、それは、わたしたちがしていいよ、って言って、君もしたから。合意の上じゃない」
「はじめての生オチンポ様は、別の男の人だったけど、君も童貞は彼女にあげたわけじゃないから、おあいこって感じじゃないかしら?」
「むしろ、あなたの初めての生オマンコは、わたしとでしょ?」
その言葉に、律はぎょっとする。
「気がつかない? わたしたち、あなたが犯した番号のマスクの女たちよ」
そういえば……。
じゃあ、スレンダーが1番で、ロケットおっぱいが2番で、巨乳が3番か。
だが、顔が見えているせいか、人間、というか、別人という感じが、すごくする。
「1番のマスクをつけて、あなたに機械でたっぷりいかせられたのが、わたし、里美」
「2番の聖子よ。君のおちんちん、悪くなかったわよ」
「3番、泰佳。正直、わたし、君の顔、好みなんだぁ。いっぱいこれからセックスしようね」
最後の言葉に、ぎょっとする律だが、むくむくとペニスが勃起してしまう。
それを見て、女たちは、かわいいー、と笑顔になる。
「心配しなくてもいいのよ。お姉さんたちのオマンコで、慰めてあげる。自分の彼女が、ズボズボされているのを見るのは、つらいでしょう? でも、他の女とセックスしながら、自分の女が犯されているのを見ると、少しはつらさがやわらぐし―――それに、あの男の妻がわたしなのよ? あなたは、あの男の妻を犯す。あの男は、あなたの彼女を犯す。ふふっ、これ、覚えちゃったら、やみつきになっちゃうんだから」
そう言いながら、聖子が律にまたがる。
「今、莉緒ちゃんを犯してるのが、わたしの旦那」
そう思うと、莉緒をとられた嫉妬と、その旦那の妻を犯しているという優越感で、ペニスが急速に硬くなっていく。
「あふうっ……ふふっ、すてきっ。中で硬くなるんだもん」
そう言って、首筋のあたりで、息を大きく吸い込んだ。
「若い男のにおい………たまんないわぁ」
その言葉と言い方がエロすぎて、律は、目の前の光景、莉緒が犯されている光景を忘れるためにも、腰を動かし、聖子に快感をあたえる。
「んっ、んんっ! いいっ、いいわっ、いいわよっ!! 遠慮なく中出しすればいいからねっ!」
ぐちょぐちょに絡みついてくるおまんこに、今まで我慢してきた分がかさなって、律はあっけなく一回目の限界を迎える。
どぷぷぷっ!
はあっ、はあっ、と荒い息をつく律に対して、聖子は余裕そうだ。
「ふふっ、あの子、あなたが生オマンコを我慢したら、あなたにはじめてをあげるつもりだったのよ。せっかくのチャンスだったのに残念ね。これはちょっとした仕返し、ってところかしら。あら、二人目が終わったわ」
ふと見ると、2番が抜き、また莉緒の口までペニスをもっていくところだった。
そして、3番が莉緒の中にペニスを突っ込む。
ちょうど、2番が口での奉仕を受け、3番が膣での奉仕を受けている形だ。
「じゃ、今度はわたし」
そういうと、泰佳が、ぎゅうっと律を抱きしめる。
そして、軽く腰を浮かすと、ゆっくりと腰を沈めた。
ぬるぬるとした膣壁が、律のペニスをやわらかくつつむ。
「つらいよね……好きな人が、あんな風になってると、さ」
そういって、軽くちゅっ、とおでこにキスをする泰佳。
「わたしも、結婚してから、浮気癖が抜けなかったの」
その言葉に、律はまゆをあげる。
後ろを振り向いて、泰佳は、莉緒を犯している3番の男を見る。
「それで、夫が思い詰めてね。ここに来たってわけ。びっくりしたわよ。あの真面目で優しいだけの取り柄の旦那が、他の女と―――って」
はあっ、と泰佳は溜息をつく。
「旦那のことは嫌いだったわけじゃないの。好き。とっても好きだった。でも、あんまり性欲を感じなくて――エッチなことは、外注してたのね。バカね、わたし」
ぐちゅぐちゅ、と音をたてて、リズミカルに、律のペニスから、精液を泰佳はしぼりとろうとする。
「びっくりしたけど、嫉妬した。怒った。なんでって思った。でも、そこまで追い込んでたんだよね、わたしが。そのときにはじめて気づいたの。ああ、わたし、この人を失いたくないんだ、って」
3番の男が、腰を震わせる。
そして、ペニスを抜くと、莉緒にフェラチオをさせにいく。
また、1番が、挿入しようとする。
今度は、バックからだ。
「嫉妬したけど、その分、旦那に色気が出てきたのも事実、かな――あるいは、わたしの独占欲なのかもしれないけど、さ」
そう言うと、急にピストンの速度を速めた。
さきほどまでのが子どもの遊びでもあったかのように、急速に律を追い詰めていく。
「わたし、これはこれでよかったと思ってるよ。わたしの浮気で家庭が崩壊するより、ずっといい。わたし、他の女を一番に思ってる旦那なんて、絶対見たくないからね」
きゅっ、と膣内がしまるかと思うと、律は発射していた。
ぽん、と肩に手を置かれる。
里美だった。
「じゃ、行きましょうか」
律は、里美とつながったまま、里美をバックで犯しながら、彼らのいる部屋に入っていく。
目の前には、同じようにバックで犯されている莉緒がいる。
「莉緒……どうして………!」
どうしてもこうしてもないよな、と律は自分でも思う。
でも、思わず出てしまった。
「だって……こうしないと、わたしのこと、一番に見てくれないじゃない。いろんな女の人とセックスしちゃうじゃない。わたし、知らない女の人と勝手にセックスされるのは嫌なの。本当は、一対一がいいよ。でも、それが無理なら――無理なら、夫婦交換のほうが、ずっといい。だって、フェアだもん。律くんが、他の女の人とセックスしていても、その他の女の人の大事な人と、わたしがセックスできるなら――それなら、まだ、許せるから」
そうして、にっこりと笑った。
「選んで。みんなと一緒にスワッピングをするか。それとも、わたしと別れるか」
律は、目の前で犯されている莉緒を見て、すでに決心していた。
莉緒は、だれにも渡さない。
莉緒が、スワッピングを認めているなら――答えはひとつしかない。
「莉緒。ごめんな、今まで―――俺――――お前が、一番好きだ」
「うおっ……しまるっ……」
後ろの男が思わず声を出してしまった。
この声は……莉緒のおじさんだ。
その背徳的な事実に気づいて、律のペニスも大きく、硬くなる。当然、自分が感じる快感も大きくなるし―――
「あふうんっ! 大きくなるうっ!}
相手に与える快感も大きくなる。
「みんなと、しよう。でも、一番は、莉緒だからな」
「うんっ……! うんっ………あ、ああっ、いくっ!」
莉緒が、顔をあげて、いき顔をみせる。
それは、妙に美しく、それを見ながら、律も達した。
律は、女からペニスを抜くと、莉緒の方に歩いていく。
男たちがマスクを取る。
うすうす感じていたとおり、研究者たちだ。1番が鈴木、2番が高橋、3番が田中。
それを横目で見ながら、莉緒の顔に手を触れると、律はキスをした。
たぶん、今までに一番長いキスを。
キスの間に、莉緒のあそこをぐちゅぐちゅとかきまわす。
莉緒も、律のペニスをシコシコと刺激する。
二人の視線がからみあって、そして、二人は一つになる。
まわりにいる六人の男女に祝福されながら、二人は今までにないくらいの激しい愛を感じていた。
莉緒が、律の浮気について、おじさんである悟に相談したのは、あの実験の、一ヶ月ほど前だった。
自分の母の姉妹である「里美おねえちゃん」の旦那さんである悟さんは、社会心理学の先生をしているらしかった。
「やっぱり、浮気するような男とは、別れることを、おじさんは、強くおすすめするよ」
「――――わかってます。でも、あきらめられないんです。なにか。なんでもいいですから。方法はないですか。なにか、せめてひとつでも試してから、別れたいんです」
「方法は、ひとつ、思いつくけど。それを君ができるか、心配だな」
「教えてください。やれること全部やってから――お別れしたいから」
「わかった。それなら、言うよ。でも、秘密は守ってもらわないと、困る」
「はい……」
それから、おじさんに聞いた話は、優しいおじさんのイメージとはかけ離れていて、信じられないくらいだった。
スワッピングのサークルを主催していること。
メンバーが六人いること。
定期的に、セックスをしていること。
おじさん夫婦と、高橋さん夫婦は、もともと友だち同士で、男同士がスワッピングに興味があり、妻もまんざらでもなさそうだったこと。
田中さん夫婦は、奥さんの浮気癖を直すために、引き入れたこと。
だから、自分が他の男とセックスするのをうまく見せれば、浮気癖が治るかもしれないこと。
「いちおう、田中さん夫婦で実績はあるんだがね……自分の姪を、こんなことにひきいれていいのか」
「やります」
自分でも、びっくりするような、はっきりした声が出た。
「本当かい?」
「――――はい」
その声に、迷いはなかった。
「では、いくつか、条件がある。これが飲めない限り、この話はなしだ」
そして、悟おじさんは、いくつかの条件を、莉緒に言った。
莉緒は、そのすべてを、了承した。
それは、スワッピングサークルのみんなが集まる、ある日に行われることになった―――。
条件の一つ目。
裸でのスワッピングの見学。
「どう、気分は?」
「そう、ですね。正直、緊張しています。それに――」
そこで、いったん、莉緒は言葉を切る。
「それに、怖いし―――罪悪感も、あります。彼氏が浮気したのはつらいけど、でも、自分が浮気するのは、やっぱり――」
「そうね。わかるわ。だったら、ちょっとずつ慣れてみるのはどうかしら」
「ちょっとずつ……ですか?」
「ええ。わたしたちは裸だけど、あなたは服を着るのはどうかしら」
そう言って、彼女が出してきたのは、ボンデージだった。
青と黒を基調としたコルセット――あるいはビスチェというのだろうか?――に、黒に青色のリボンがついたブーツやグローブを合わせた、お洒落なデザイン。
黒と青が、どことなく上品な雰囲気を醸し出している。
「服って……これですか?」
「これも、慣れ、よ。それとも、これを着るより、裸のほうが恥ずかしくない?」
「い、いえっ、着てきますっ」
「じゃ、ここで着替えてね。わたしたちは、地下のプレイルームで待ってるから。場所はわかるわよね」
「わかります」
「それなら、また会いましょう」
服を着替えておりていくと、みんなが裸でいた。
「ほおっ」
「これはいい」
男たちの素直な称賛に、さすがに恥ずかしく感じたが、その一方で、喜んでいる自分もいる。
自分が、男たちを喜ばせていることに、一種の女のプライドがくすぐられたのかもしれない。
逆に、女たちは、嫉妬がほんの少し混じった視線を向けてくる。
若くて美人の女が、セクシーな衣装を着て、自分の旦那たちの前に立っているのだ。
ここが「そういうところ」だとわかっていても、本能的に危険を感じて、敵意を向けてしまうのかもしれない。
「あっ………」
男たちが、自分を見て、ペニスを勃起させてしまう。
顔がほてるのがわかる。
「あらあら、嫉妬しちゃうわね」
そう言いながら、里美は、片手で自分の旦那のペニスを掴むと、もう片方の手で、田中さんの旦那さんのペニスを握る。
ぴきっ、と田中さんの奥さんの顔がひきつるのがわかる。
あれが、浮気を繰り返していたという田中の奥さんか。
全体的に、おっとりとした顔で、きりっと引き締まった顔つきの里美おねえちゃんとは、正反対だ。
スレンダーな体つきで、胸も小さいが、足がきれいで、スタイルもいい、かっこいい、と言われる里美。
ふっくらとした体つきで、胸もメンバーの中で一番大きく、太もももムチムチで、男好きのしそうな色気を放つ泰佳。
確かに、田中さんの奥さん、男受けはすごくよさそうだな、と莉緒も思う。
莉緒の心にも、ちりっ、と嫌な気持ちが蠢く。
ああいう、おっぱいばかり大きくて、癒し系みたいな顔をして、平気で人の彼氏をとるようなのを、莉緒も見てきたからだ。
泰佳になんの罪もないのに、ああいうタイプの女が、自分の旦那を、他の女にかりそめにでも「盗られて」、焦っている様子を見るのに快感を感じている自分がどこかにいることを否定しきれないのが、莉緒に、自己嫌悪を催させる。
「ふふっ、康久さん、わたしの姪に手を出しちゃ駄目ですよ。いくら若くてかわいいからって――もう、オチンポこんなにして、いったいうちの姪で、どんな想像をしてたんですか? 康久さん、いつもこんなに、カウパー出てましたっけ?」
実に真面目で、「いい人」そうな康久さんが、ううっ、とうめく。
ちらっとこちらを見た康久さんの目の奥に、情欲の炎がともっているのを、確かに見た。
思わず、泰佳の方を見ると、必死にとりつくろっている笑顔の奥で、隠しきれない嫉妬が見える。
わたしというものがありながら、女子大生に鼻の下をのばしちゃって。ただ若いだけの小娘じゃない!
そういう気持ちが、にじみでているかのようだ。
だが、莉緒は、優越感を感じていた。それは、泰佳が、自分の彼氏を寝取った女たちの中によくいるタイプに似ていたからかもしれない。
あらあら、おばさんの嫉妬って見苦しいわね。あなたの旦那さん、わたしが裸になってもいないのに、おちんちんすごいことになってるわよ? あなたじゃ駄目なのよ。
もしかしたら、その一瞬の優越感が伝わったのだろうか。
嫉妬が、瞬間的に敵意にかわり、それから、深い不安の色に襲われるのが見える。
自分の夫の方を見やる泰佳の心が、莉緒には手にとるようにわかった。
他の女に、自分の大切な人を、取られちゃうんじゃないかという不安の光―――。
莉緒の、先ほどまでに感じていた優越感が、一瞬で消え去る。今あるのは、申し訳ない気持ち。
この気持ちは、わたしもよく知っているのに。
また、莉緒と泰佳の目が合う。
泰佳も、何かを感じ取ったのだろう。
「あらあら、悟さん、わたしたちも楽しみましょうよ」
そう言って、おじさんのペニスを、里美から奪う。
そうしながらも、表情は不安げで、自分の旦那である康久の方を見る。
康久も、泰佳の方を見て、安心させるように、にっこりと笑った。
それで、やっと不安が少しとれたのか、悟の腰の方まで頭を下げ、「フェラチオ奉仕、しちゃいますね」と言って、躊躇なくペニスを飲み込んだ。
そのとき、康久の顔も、ひきつったようになる。
その顔を、泰佳が見ていないのが、本当に残念だと、莉緒は思った。
「あん、そんな顔しないで。今のパートナーは、わ・た・し。わたしもたっぷり奉仕しちゃうんだから」
ちゅっ、と音をたてて、康久のくちびるにキスをして、それからフェラチオに入る里美。
だが、莉緒は、キスの音がしたとき、一瞬、泰佳の奉仕が止まったのを見逃さなかった。
あんなに、旦那さんのことを気にしている人が、浮気しまくっていたのかぁ―――。
もし、そうなら。
そうなら、わたしのところも、どうにかなるかもしれない。
「あっ……くうんっ!」
甘い声をあげて、里美おばさんが、康久に貫かれる。
泰佳のフェラチオが、一瞬、完全に止まり、それから我に返ったように、寝転がって、大きく足を開き、男を誘う。
「こっちも……泰佳のぐちょぐちょおまんこに、勃起ペニスつっこんでくださいっ……あはああんっ!」
見ていると、どうやら泰佳は、淫語を積極的につかっていく方向性のようだった。
莉緒も、いつか真似してみようかな、と思う。恥ずかしいけど。
「オチンポ様がっ、オチンポ様がっ、きくうっ、きくのおおっ!!」
康久が、泰佳のほうを見て、嫉妬に染まった顔をしている。
里美は、ゆっくりと手でその顔を里美のほうにむけると、静かに、甘いキスをした。
それも、長く、愛情が感じられるような、好きな女を盗られた男をなぐさめるような、情け深いキスだった。
その瞬間、莉緒は見た。
泰佳の顔が、苦痛にゆがんだのを。
わたしの彼も。ああいうことをしたら、あんな風になってくれるのだろうか。
キスをしたまま、康久は里美の中に出した。
精液を出しながらもキスをしている二人を見て、泰佳の頬に、つうっ、と涙が光る。
それを見て、おじさんは興奮してしまったのかもしれない。
「ああ、もうダメだっ!}
びゅるるっ、と悟おじさんは、泰佳さんの中に、精液を遠慮なく出してしまう。
そのまま、ペニスを掃除させようとしたおじさんだが、飛ぶようにやってきた康久さんが、泰佳のくちびるを奪ったので、それは永遠にかなわなくなる。
「大好きだよ、泰佳。世界中で一番好きだ」
泰佳さんは、うん、うん、としか言わない。
ごめんね、と一言、康久さんが言うと、あやまらないで、と泰佳さんが良い―――そのまま、二人はキスをしたまま、セックスをはじめた。
あっというまに、泰佳さんはのぼりつめ、くぐもった声で絶頂をつげる。
でも、それでも止まらない。
優しく、でも断固たる意志で叩き込まれる腰に、また泰佳さんが反応しはじめる。
次の瞬間、康久さんの腰がとまり、軽く痙攣する。
射精、した、のか―――と思いきや、またすぐに腰が動きはじめる。
「あー、こりゃあしばらくはあのままだな」
悟おじさんが、ほほえましいものを見るかのように笑って、そう言った。
莉緒の疑問の視線に、
「康久さんはね、自分の奥さんとセックスするときに、本当に愛情が深まると、射精してもすぐにはなえないんだなあ」
「抜かずの三発とかあるのよ」
里美もにっこり笑う。
「うらやましい~」
「聖子には俺がいるだろ」
高橋夫妻の言葉に、みんな笑う。
意外とアットホームなんだな、と莉緒は思った。
高橋夫妻もスワッピングに参加して、悟おじさんたちと夫婦交換したあと、最後には自分のパートナーとフィニッシュしてから、条件の二つ目にすすむことになった。
その間も、泰佳と康久がずっとセックスしていたのが、莉緒には印象的だった。
条件の二つ目。
ヌード撮影会。秘密を守るために、保険として、みんなの裸の写真を、みんなで共有するのだ。
裸になって、みんなの前に立つ。緊張する。
緊張して、足が震える。でも、足が震えるのは、緊張のためだけかしら?
「じゃあ、撮影会をするよ」
「秘密を守ってもらわなくてはならないからね。君が警察に行ったりしたら、この写真が、ネットにばらまかれることになる」
「わたしたちのヌードも、あとでちゃんと渡すわね」
「もしかして、この男たちのオナニーのおかずになっちゃうかも」
「おいおい、姪をそんな目でみるなよ」
「あら、そんなこと言っているあなたが、一番興奮しちゃうんじゃない? おちんちんは正直ね」
悟のペニスが、腹につくくらいになっているのを見て、莉緒は、自分の足の間が、熱くなっていくのを感じる。
おじさんが―――あの、子供のときから遊んでくれたおじさんが、わたしで、興奮してる―――。
一瞬、悟と莉緒の視線が交差する。
それは、莉緒が経験したことがないくらい、ねっとりとした空気をふくんだ視線の交換だった。まるで、情欲の糸で目と目が結ばれたように。
いつも、莉緒にやさしかった里美の目に、ある種の険がある。それを見て、莉緒はショックを受けるが、面白そうに、それでいて安心させるように、にやっと笑う泰佳の顔で、また安心する。
そうだ。嫉妬や、怒りや、敵意も、みんなふつうのことなんだ。
だって、みんな、自分のパートナーのことが大好きなんだから。
莉緒は、里美おねえちゃんに、安心させるような笑みを浮かべる。
大丈夫。莉緒は、里美おねえちゃんの大事な悟さんを盗ったりなんかしません。わたしが一番欲しいのは、律くんだから。
「じゃ、撮るよ。はい、チーズ」
高橋さんの旦那さんの声。
裸になって、莉緒は、みんなの前に立っているが、突然声をかけられたので、反射的に、ピースして笑顔になってしまう。
「おっ、いいねぇ。ぴちぴち女子大生がすっぱだかで笑顔ピース。うーん、エロい!」
高橋さんのひょうきんな声に、思わずくすっと莉緒は笑ってしまう。
他のみんなも笑っていて、緊張がほぐれた。
「も~っ、セクハラですよぉ、征四郎さん」
莉緒も思わず笑う。
そこからは、とてもリラックスした撮影ができた。
ピースして笑顔。
胸の谷間をよせて、腰をかがめるポーズ。
胸をもちあげて、舌を出して、乳首をなめるジェスチャー。
椅子に座って、片足だけ折り曲げて、あそこを見せる。
椅子の上で、M字に足をまげて、大きくあそこを見せる―――だけではなく、自分の指で広げさせられる。
「莉緒ちゃん。濡れてるね」
そう優しい声でいう康久のペニスも、腹にくっつくくらいになっていた。
「エッチな、気持ちに、なっちゃいましたから……」
恥ずかしそうに、笑顔を浮かべていう莉緒に、ちょっと驚いたように目を開く康久。
ぱちん、と音がして、はねあがったペニスが、康久のおなかにあたった音がする。
興奮、したのだ。わたしで。
ぞくぞくっ、とするような快感が、背筋を這い上がる。
いけない、と思いつつも、泰佳の方を見てしまう。
ぎゅっ、と手をにぎる泰佳は、心なしか手が震えているようだ。
ごめんね、泰佳さん。でも、あなたの旦那さんは、わたしで欲情しましたよ? けど、しょうがないよね。浮気した女なんだもん。
そう思う残酷な心と、女としての優越感。それを心の奥底にひめて、ごめんね、というようにぺこっ、と軽く頭をさげる。
泰佳の顔も、とりつくろったように笑う。これはこういう「ゲーム」なんだから。大人げなく怒ってはいけない、と。
みんなの顔を見渡す。
みんな、男の人は勃起していて、莉緒のあそこを見つめている。
莉緒は、なんだかうれしくなってしまって、自分から最後にポーズをとれ、と言われたときに、もっともっと興奮させたくなって、エッチなポーズを必死に考える。
「め、めすいぬの、ふ、ふくじゅうの、ポーズ……なんちゃって」
前に、このポーズでセックスしたときに、律に犬の降参のポーズみたいだな、と言われたポーズだ。
床に背中から寝転がり、足をおりたたみ、ふとももをかかえこんで、足と足のあいだから顔を出す。
もちろん、見ている人には、ぱっくりと口をあけたおまんこが、丸見えのはずだ。
「エロすぎる……」
「おかしたい……」
「莉緒ちゃん……」
康久さん、征四郎さん、悟おじさんが、それぞれぼそりとつぶやいて、次の瞬間には、シャッターがばしゃばしゃとたかれる。
連続でシャッターを切る、ばしばしばし、という音も響く。
莉緒は確信した。今、この瞬間に限っては、妻のことが、この三人の中から、消えている。
笑顔を作りながら、三人の女を見る。
三人とも、莉緒のほうなど、見てはいなかった。
嫉妬と独占欲に満ち満ちた目で、自分の夫たちを見る妻が、いるだけだった。
そして、最後の条件。
「じゃあ、これからは、低用量ピルを毎日飲んで、中出しされても子供ができないようにしましょう」
「でも………もし、もし、最終的にセックスが嫌だったら……」
「もちろん、無理にとは、いいませんよ」
そうして、康久さんは、ピルをくれた。
康久さんは、お医者様だったのだ。
三つの条件をすべてクリアしたあと、みんなで、この計画を煮詰める。
まず、おじさんから、この実験の概要を聞く。
彼氏である律が、閉鎖空間で看守のようにふるまうことで、色々な禁忌を解き放つということ。
上司である自分の意志、権威への服従を覚え込ませること。状況に流される環境を整えること。
そして、その中で、スワッピング的なことへの抵抗感をなくしていくこと。
だいたいの説明が終わったら、里美おねえちゃんから、莉緒に、最終確認が来た。
「いいの? 本当に? やめるなら、今のうちよ。時間が欲しいなら、帰ってから、結論を出してもいいわ」
だが、その言葉に、莉緒は首をふる。
「ううん。する」
女たちが、ほうっとため息をつく。
「そんなら、遠慮はしないからね。カメラのときによくも旦那を誘惑してくれちゃって~。おかえしに、たーっぷり彼氏、誘惑しちゃうし、犯しちゃうんだから」
泰佳が言うと、聖子も、
「そうそう。本気でやっちゃうんだから。ま、でも、そのかわりに、旦那たちともできるんだけど、ね……」
「それから、莉緒の彼氏がやったことだけ、莉緒にやるからね。莉緒の彼氏がやらなかったことは、莉緒にはしないから。ま、莉緒がしたいんだったら、別だけど」
そう言って、里美も笑う。
いろいろと細かいことを詰めて、そして計画の日まで、何度も打ち合わせをして、いよいよその日がやってきた。
実験一日目。
「莉緒の彼氏、なかなかやるわね。たっぷりいかされちゃった」
里美おばさんの言葉に、莉緒は震える。
夜。莉緒はマスクを外している。里美も、マスクを外している。
「不安? 大丈夫よ。律くんがどう転んでも、おばさんは莉緒ちゃんの味方だから」
そう言って、里美は莉緒をぎゅっと抱いた。
莉緒は、ほんの少しだけ、落ち着いた。
実験二日目。
「今日もたっぷりいかされちゃったわぁ」
里美が、少し疲れたような顔でやってくる。
莉緒は、律がだんだん、遠慮がなくなってくるようで怖い。
実験の様子は、ビデオで見させてもらっている。
里美に対しても、莉緒に対しても、だんだん遠慮がなくなってきているようだ。
まるで、里美じゃなくて1番、莉緒じゃなくて4番、という名前の実験動物を扱っているように。
でも、もっと怖いのは、莉緒自身が、自分を莉緒じゃなくて、4番だと思いつつあることだった。
あのマスクをかぶって、命令されると、どんなことでも、しなくちゃいけない気になってしまう。
おじさんが、こちらにやってきて、ペニスを出す。
そして、かいでごらん、とペニスを顔の前に突き出した。
「もしかしたら、これを入れることになるかもしれないからね」
すんすん、と思わず、においをかいでしまう。
男の性臭。
じゅんっ、とあそこが湿ってくるのがわかる。
莉緒もオナニーはさせてもらえていない。
男のにおいに、頭がくらくらする。
セックス、したい―――。
一瞬、そう思ったときに、完全に律のことが頭から抜けていたことに気づく。
莉緒は頭を振る。
いけない。だんだん、慣れてきちゃってる――――。
実験三日目。
「彼氏、遠慮がなくなってきたわね。これは――生で、聖子さんや泰佳さんにいれちゃうかも」
里美がそう言う。
そうしたら―――そうしたら、莉緒は、他の男の人のおちんちんを、生でいれる、だけだ。
そう考えても、あまり抵抗がないことに、莉緒は気づいた。
事前研修で、エッチなことをたくさん見たり、セックスはしなかったけど、撮影会などもして、慣れたというのもひとつ。
そして、オナニーも禁止で、三日目まで焦らされた性欲がたけり狂っているということ。
それらが、莉緒の貞操観念を、下げているのではないか、と莉緒自身は分析していた。
それとは別に、4番として生活していくうちに、おじさんに命令されたら、だまってしたがってしまう気がする。
おじさんの言うことに反抗するのが、すごく難しい。おじさんは、この施設の中で一番えらいから、従わないといけない。
そんな風に思ってしまう。
今日は、おじさんだけじゃなくて、征四郎さんや、康久さんもいる。
彼らも、律よりも経験が豊富な、「研究者」だ。
まるで犬のように、莉緒の頭の中では、悟おじさんを頂点とした、ヒエラルキーが無意識のうちに刻み込まれていく。
そこでは、新参者の律は、もちろん最底辺だ。
その思いが、莉緒の表層意識にたちのぼることはないが、それでも、一瞬、律以外の男たちにセックスを命令されたら―――莉緒は、断るのを想像するのが日に日に難しくなっていっているように感じた。
それだけではなく、拒否を難しいと感じることを、まずいと思うことさえ、なくなってきている。
まるで、権威に従うのは当然であるかのような思考回路。
だって、おじさんはえらい人なんだから、おじさんがセックスしなさいって言ったら、セックスしなくちゃ―――。
そんな気持ちになりそうで、莉緒はいけない、いけないと思うが、三人の男たちがズボンをさげて、雄のにおいを部屋に充満させることで、そのような思考は霧散する。
莉緒の近くに、勃起したペニスを持ってきて、莉緒の鼻に、あのいやらしいにおいがたちのぼってくる。
そのとき。
莉緒は、すっぽりとマスクをかぶせられる。
ぞくぞくっ、と背筋に甘い快感が走った。
命令、されちゃうのかな――――。
もし、ここで、セックスしなさい、と言われたら。
とても、我慢できる自信がない。
ううん、それどころか、それを当然として、セックスしてしまうだろう。
だって、今は、莉緒じゃなくて、4番なのだから。
しかし、莉緒にとっては少し驚きだったのだが、勃起したペニスを近づけるだけで、何もしてこない。
それが、たまらなくもどかしい。
律が、他の女に手を出さないと、自分もしてもらえないのだろう。
ああ、律は浮気性なんだから、早く他の女とセックスしないかなあ―――。
そこまで考えて、莉緒はぞっとした。
律の浮気に、あんなに心を痛めていたのに、今はむしろ、心待ちにしている。
あれ? あれ? いつからこんな風になったんだろう。
思い出せない。
むしろ、それが当然のことのように感じる。
マスクをかぶっているから、においを強く感じる。
三種類の、彼氏じゃない男のにおい。
ごくり、とつばをのむ。
考えてみれば、ありがたいことかもしれない。彼氏の浮気に傷つかないようになって、他の男を求めるようになるというのは。
もしかしたら、おじさんの温かい配慮なのかも。
莉緒は、そんな風に、自分の都合のいいように解釈する。
たっぷりとペニスのにおいを覚え込まされた莉緒は、おまんこがぐちょぐちょになってくるのを感じた。
いつの間にか、彼氏以外の男とセックスすることに、抵抗感はなくなっていた。
実験四日目。
やっと律に抱いてもらえた。
でも、律が律みたいじゃなかった。
欲求不満は解消されたけれど―――命令されるのが、当然で、ああいうセックスも当然、という気がしてしまう。
だが、そのことにもう恐怖はない。
命令に従うのは当然で、権威に従うのは当然だ。
莉緒は、4番なのだから。
実験五日目。
今日は、六人みんながそろっている。
「あふ~。すごいわね、彼」
「もうけだものよ、けだもの」
そういって、みんながあそこを見せてくれる。
かきだされたそれは、まぎれもなく精子だ。
男たちが、背中を叩いてくれる。莉緒は泣いてしまう。
やっぱり、悲しかった。でも、そういう心が残っていたことが、どことなく莉緒はうれしかった。
他の男とセックスしたいと思うようになっていたから、こういうことをされても、痛くないかと思ったのだが、そんなことはなかったから。
でも、きっと、他の男のことを考えていなかったら、もっともっと打撃は大きかっただろう。
おじさんたちの配慮なのかな、やっぱり。そう、莉緒は思う。
みんなに、頭をなでられ、男たちに抱きしめられ、彼らになら、抱かれてもいいか、と思ってしまう。
前までは、体が、性欲が、男を求めていた。
でも、この日。
こんなにつらいときに、優しくしてくれるなら、セックスしてもいい、と思ってしまった。
心も、彼氏以外の男を受け入れた瞬間だった。
そして、莉緒は、六日目を迎える。
やっぱり、悲しくて、少し泣いてしまったけれど。
でも、他の男たちにセックスしてもらえて、うれしかった。
その瞬間、律のことは、完全に頭から消えていた。
しかし、最後に、律が自分のところに来てくれた時。
ああ、よかった。やっぱりわたしが一番好きなのは律なんだ。
そう思うとともに、律の真剣な表情を見て、もう律はこのグループ以外で浮気しない、ということを、確信したのだった。
その後の、七日目。
事情を説明し、自己紹介が終わり、律は、莉緒と一緒に、スワッピングサークルに入ることにした。
律に残されたのは、莉緒と別れるか、別れないか。別れないなら、スワッピングサークルに入るというのが条件だったからだ。
もはや、そのレベルにまで、律の誠実さに対する信用は、莉緒の中で落ちていた。それは愛情とは別次元の評価軸なのだ。
そして、今日は、八人みんなでスワッピングする日だ。
初心者の莉緒が、まずは好きな相手を選ぶ。
すると、律が、その相手の奥さんとする。
そのあとは、自由に相手を交換する。ルールはひとつ。すべての人を味わうこと。最後は、パートナーとすること。
女と男が一列に、はないちもんめのように並ぶ。
莉緒は、一歩前へ出て、迷わず田中さんのところに行く。
「奥さんは、一体何歳ですか? 十代の女子大生オマンコに、どぴゅどぴゅザーメン中出しできるのは、今だけですよっ!」
その言葉に、田中以外の二人も、ペニスをギンギンに勃起させる。
びりびりっ、と痛い視線(たち)を背中に感じる気がするが、それは無視する。
唯一、律だけが、ゆっくりと勃起させただけだった。その淫乱な言葉に、ショックを受けたのだろう。
だが、これまでの六日間で、なにかのたがが外れた莉緒には、もはや制限はなにもない。
4番のとき、命令されることを当然と思い、マスクをつけていなかったときにはできないこともするのが自然だと考えて、タブーを乗り越えていた莉緒は、マスクを外してたくさんの男に精を受けたことで、マスクがなくても、タブーを感じない、欲望に正直な女に成長していた。
「もう、莉緒ちゃん、エッチすぎるよ」
そう言いながら、田中さん――康久さんは、嬉しそうだ。
「だって、里井おねえちゃんの姪ですから」
ぺろっと舌を出して、莉緒は言う。
そのまま、二人で敷かれたマットのところに行って、みんなの前で結合する。
ちらり、とみると、泰佳と律も二人で近くに来るのがわかる。
律と目が合って、安心させるように笑う。
あいしてるよ、と口だけで伝える。
だが、次の瞬間、康久のペニスが入って来て、そんな思考は粉々になってしまう。
きっと、ペニスに貫かれて、とろけている雌の顔を、律に見せているのだろうと思うけれど、どうすることもできない。
せいぜい、律の方ではなく、康久のほうを向くだけだ。
恥ずかしい。
でも、こんなところまで、好きな人に見せられる解放感。
すごい………。
「一対一が本当はいいけど、夫婦交換ならまだ許せるって言ってたけど、莉緒ちゃん、夫婦交換のほうが、楽しくなってきたんじゃないの?」
「あふぅっ……」
その質問には、かわいい喘ぎ声をあげるだけで、莉緒は答えない。
気持ちよくて答えられなかったのか――それとも、イエスと答えられなかっただけなのか。
「僕もそうだったから、わかるよ、莉緒ちゃん……浮気性の大好きな人が、嫉妬に狂った目で、こっちを見てくれると、うれしいよね」
田中さんが優しく、莉緒の耳にささやく。
知らない人がこのシーンだけ切り取って見たら、きっと恋人に甘い言葉をささやいているように見えるだろう。
ちらっと、莉緒が田中さんの奥さんである泰佳さんのほうを見ると、こちらを殺しかねないような目で見ていた。
泰佳さんとつながっている律も同じような目をしている。
うれしい。
「出すよっ、莉緒ちゃんっ!」
「はいっ、こくまろ濃厚ザーメン、いーっぱい莉緒のどスケベ女子大生おまんこの中に、ぶちまけてくださいっ!」
「莉緒ちゃんエロすぎっ! かわいすぎっ!」
そう言って、康久さんが、遠慮なく精子を莉緒の中にぶちまける。
にこにこと笑って莉緒が律と泰佳の方を見て、手をふる。
二人は唖然とした顔でこっちを見ていた。顔がひきつっている。
完全に、ピストンも止まっている。
「でも、律が一番好きだよっ!」
「ぼくも、泰佳が一番かわいいと思う」
その言葉を聞いて、やっと緊張がやわらいで、二人とも、またピストン運動を開始する。
でも、ちらちらとこちらも見ていて、うまく調子が出ないようだ。
「ね、きっと今日は、わたし、律くんにたーっぷり愛されちゃいますよ」
「ぼくもだよ。絶対絶対、泰佳は今日、ぼくを離さないし、しばらくはこの集まりにも来れないな。泰佳がぼくをつなぎとめておこうとするからね」
康久さんが、幸せそうに笑う。
莉緒も、きっと自分は今、幸せそうに笑っているんだろうな、と思う。
どっちも、浮気性の相手を持ってしまったから、わかるのだ。
だけど、この笑顔の交換は、きっと相手を嫉妬させることになって、ちゃんとこちらに目を向けてくれる要素になるんだろうな。
莉緒と康久は、結合をやめ、まだ始めていない、鈴木夫妻のところに行く。
おじさんとセックス。
莉緒は、じゅんっ、と濡れていくおまんこを感じながら、そこにおじさんの指をはわせて、ぬるぬるの愛液を感じさせると、笑っていった。
「おじさん、ありがと。作戦、大成功だった」
そして、そっと耳元でささやく。おじさんのペニスをにぎりながら。
「お礼に、わたしのおまんこで中出ししよ?」
手の中でぐんぐん大きくなっていくペニスと、横からの里美おねえちゃんからの嫉妬の視線を感じながら、莉緒はすばらしい満足感を味わっていた。
< 完 >
あとがきおよび解説
たまに長い解説をつけてしまいすいません、秋茄子トマトです。
スワッピングについて、ちょっと調べてみたのですが、案外、ずさんというか、あまりシステムが洗練されていないという印象を持ちました。口淫性交において、コンドームをつけないのは性病予防にはならないし、相手の許しがでれば避妊具は必要ないなどは(ピルを飲んでいたとしても)病気の危険がありますよね。また、公共の場でのちょっとした露出プレイなんかもあったりすると、そりゃ見たくない人の自由を侵害しとるんではないかみたいな事例もあったりして(参加者じゃない人に見えるように下着を脱ぐとか)、そりゃー、マナー的にアウトでは、とも思いました。
この話は、「ヒルガードの心理学」という有名な心理学教科書をはじめ、本物の心理学書籍に多くを負っているのですが……。ちょっと長い解説と注意事項を始めに聞いてください。
まずは心理学に対するぼくの立場を。心理学の限界、というのは、すべての社会科学にいえることですが、再現性の低さ、でしょう。
対人恐怖症というのは、日本にしか存在しないらしいですが、これは日本の文化が原因だからだと考えられます。
同様の話で、同じ心理学実験をしても、文化が違えば結果が違う場合や、結果が同じでも原因が違う場合もあるのではないでしょうか。
社会科学は、自然科学のマネをしていますが、自然科学と同じようにはなれっこないと思います。
なぜなら、「いつ、どこで、だれがやっても、同じ過程を通って同じ結果が出る」というのが自然科学ですが、扱う対象が人間や人間社会である以上、社会科学は、その条件を満たせません。人間は、一人一人違うものだからです。
だから、自然科学は、「普遍的な真実」を与えますが、社会科学や人文学は「モノの見方、解釈」を与える学問なのだと、ぼくは思っています。
(「普遍的な真実」などない、という立場もありますし、確かに厳密にいえば、世界中いつでもどこでもエナジーイコールエムシースクウェアが成り立つとは限りませんが、相当の確率で成り立つといえるでしょう。本物の独我論の側に立たない限りは。この種の議論においては、「知の欺瞞」のソーカルらの立場にぼくは立ちます)
また、心理学は「間違っているのは社会の方だ」という結論が出せないのが駄目だ、みたいなことを外山恒一が言っていましたが、確かにそれはその通りだと思います。心理学史などを見ていると、どうしてもなんらかの価値観から自由にはなれていない――たぶんなりようもないので、そこに自覚的であることが重要なのかな、と思っています。
ただ、文化人類学は、社会科学の中でもちょっと異質かもしれないと思っています。。人間ってこういうものなんだよな~というのが、しょせん近代という時代の制約を受けているということを実例をもって教えてくれるので、他の社会科学が「わたしの考えた真理」を出してきたとき、力強く反証を出してくれることがあります。
注意事項。実在の心理学実験をモチーフにしてますけど、しょせん官能小説、性的ファンタジーなので、あまり真面目に受け取らないでください。
真面目な話、ミルグラムの服従実験については、ショッキングな結果だけが宣伝される傾向があるようですが、実際の実験結果はもうちょっと複雑なようです。権威のある人間が命令し、電気ショックを受ける人間はボタンを押す人間から見えないところにいて……みたいな、いくつかの「壁」があったはず。他にも、スタンフォード監獄実験は、最初のレポートと二回目のレポートに描写の差があるとか、何かをさせたあとに、ごほうびをあげると、確かにその行動は強化されるが(オペラント条件付けの話)、子どもに勉強させて、勉強したらごほうびをあげるようにした場合、ごほうびをなくすとモチベーションが下がってしまう(内発的動機付けの話)なんかもあったりして、じゃあ自発的にやらせるには自主性を重んじるべきなのではうんぬん、などという話になってきて、ひとつの実験とってみても、解釈は多様で、一律には言えません。
真面目な参考文献としては、エーリッヒ・フロムの「破壊 人間性の解剖」の上巻、および、笠原敏雄の「加害者と被害者の”トラウマ” PTSD理論は正しいか」が、これらの心理学実験について批判的な考察をしています。
要するに、「それっぽく」見せるために心理学の実験を題材にとっただけなので、真剣に取ってもらっては困る、という話です。それと、記憶にまかせて書いたので、心理学実験自体が微妙に間違っているかも。まあ、そんな人はまずいないと思うけど、今までで一番リアルな題材を使ったので、これ応用や引用できるんじゃね?みたいな人がいると困るので一言書いておきます。応用できるほどちゃんとした心理学の知見を利用してません。
心理学で相手をどうこうできるよ、みたいな話は、お金を搾取するための詐欺だったり、何かの利害関係の中でヘゲモニーを取りたい人が勝手に叫んでいる印象がありますね。
逆に、心理学の実験のことを知っていることで、その傾向から自由になれる傾向がある、という話もあります。 だれか権威のある人に命令されたときには、「あ、これあの実験だ……」と思って反抗する自由を手に入れるのも一興かと。
重ねて言いますが、参考文献は本物の心理学でも、この作品ではインチキに応用しているので、この知見を真理と思わないでください。この話を読んでも心理学の事は何もわかりません。
心理学の書籍はそこそこ読みましたが、読めば読むほど、簡単に「わかる」とは言えないなあと思いました。まあ、どんな学問でもいえそうですが。
あと、実際に現実でこういうことをしたら犯罪になるし、そもそもこの話みたいにうまくいかないだろうし、そのうえ、最初に書いたように実際のスワッピングは危ないと思うので、真似しないように。現実は小説とは違います。
こういう話は大半の人にとってまったくの蛇足でしょうが、今まで書いた話と違って、現実に一部真似できなくもない話なので、一応書いておきます。
ああ、それと。女の子を気持ちよくさせるコンドームですが、実際に売っているみたいです。
長さのわりに登場人物が多いので、簡単な登場人物設定を。
佐藤たち(主人公たち) 佐藤律(モテるがちゃらい若い)、佐藤莉緒(清楚でふつう)
鈴木夫妻(おじさん夫婦)悟(研究者。ペニスは大きくて太い)、里美(スレンダー)
高橋夫妻(おじさん夫婦の友達)征四郎(わりとひょうきん。かりが太い)、聖子(ロケットおっぱい)
田中夫妻(浮気を直しに)康久(安心感がある、妻には絶倫)、泰佳(巨乳ビッチ)