ぼく達は支配者 第1話

第1話 遼達、四次元人になる

【1】

「アナタたち男子はまた女子の平均点よりも低かったみたいですね……罰として学校の裏庭の掃除です。雑草の1本まで始末して綺麗にしないと帰ってはいけませんよ!!」
 クラスの担任の丑原先生のすっごくながいおせっきょうがやっとおわった。大学時代にミスキャンパスって言うのにえらばれたと良くじまんしているけど、何かあるとぼくたち男子のせいにして長い竹のじょうぎでたたくとかいじわるばっかりしてくるからみんなからは牛ババアなんてよばれているんだ。と言うかぼく、魚里 遼(ウオザト ハルカ)は本人の前いがいではふだんそうよんでる。
 きっと美人だからワガママほうだいできてたせいであんなになったんだぜとクラスメイトの三原くんが前に言っていた。でもぼくのおねーちゃんは美人なのにとってもやさしいからきっとちがうと思う。
 男子のテストの平均点がわるかったというそんな牛ババアのおせっきょうからやっとかいほうされたぼくたち、1組の男子たちはしょくいん室から学校のうらにわへと走りだした。

「くっそー、丑原……。あのババアが女子にだけテストのもんだいを教えてるんだから女子の方が平均点が高いのなんて当たり前じゃん!!」
「だよなー、三原。いやまあそれでもオレが100点まん点で30点だったのはたしかなんだけどさ」
「フハッ!!さすがに時任のその点数はヤバいわーマジヤバいわー。つか三原と魚里と俺はその3倍以上なのにまきこまれてんじゃねーか!!」
「だな!!今日は金曜だから俺んちでべんきょう会やろーぜ!!時任にべんきょうをおしえる会!!オヤツは300円からなー!!」
「ギャハハハハハ!!「から」なのかよ!!あと10円までにしとけよデブ峰!!」
「デブ峰じゃねーよ、伊府峰だよ!!」

 わいわい
      がやがや

 『しょうしか』ってヤツでウチのクラスの男子は5人くらいしかいないけど、そのおかげなのか男子どうしはちょーなか良しだ。女子は9人、それに担任の牛ババアとはすごくなかがわるいけどね。牛ババアが女子をひいきするし、多数決で女子ばっかり良い目を見てるからさ。

「みんな、とりあえず草ぬこうよ草」
 よっこらせ。人に言う前にまず自分からってヤツだ。しゃがみこんで草をひっこぬいてみる。ここの裏庭は日かげだからなのかひょろっとしたざっ草ばかりなので、実はかんたんにぬけるのだ。
 もくもくとひっこぬきまくるぼくたち。ほうかごの自由な時間で何してるんだろうって思いながらとにかく草をひっこぬきまくっていると、草の根の下にキレイな光る野球ボールくらいの玉を見つけた。ピッカピカに光るソレをほりだし、みんなに見せてみる。

「すっげー!!すっげー!!宝石じゃんこれ、絶対さぁ!!」
「魚里がみつけたからウオザトニウムとかそんな名前にしようぜ!!」
 みんながはしゃぐ中でまずは水道の所に行って水あらいをしてからジャンパーのすそでみがくと、ますます玉は強く光りだした……と言うかお日様みたいなくらいにはげしく光をはなっている。
 おかしいな……何だかいきなりすごくつかれてきたし、とってもまぶしい……………………………………………………ッ!!目をとじててもまぶたの裏側が光ってる感じがする……!!
 そして次のしゅんかん、

『おい、お前ら。俺を地面から出してくれたのはお前らだよな?』
 何かへんな声が聞こえた。頭の中からひびいてるような、たくさんの鳥のなき声みたいなのに意味がわかるみたいなそんな声。光がおさまって来たのでゆっくり目を開くと、さっきの玉がぼくたちの顔くらいの高さまでういていた。

『いや助かったぜ。人から力を貰わないと俺は自分では動けないのに溜めてた分の力はずっと前に全部使いきっちゃってたからな。ああ、俺の名前は「&%%$’(」って言うんだ…………っと俺の名前は三次元じゃ発音できないのか…………んー……四次元人だから「4D(フォーディ)」とでも呼べば良いさ』
 ペラペラと喋るその声に合わせて光る玉がびみょうに動く。きっと声のぬしはあの玉なんだろう。

『とりあえず礼だな。四次元でも三次元でも親切にされたらお礼をするのは当たり前だからな。……そうさなぁ……君たち三次元人の脳を四次元人基準にグレードアップしてやろうかな。』
 あんまりにもとつぜんすぎてかたまっているぼくたちの方に近づいて来る玉。さいしょに頭にさわられた三原くんはそのままひざからくずれ落ちた。かけよろうとしたぼくたちもじゅんばんに玉にさわられて、さわられたじゅんばん通りにたおれてしまった。

『脳の活性化と……あと精神エネルギーで精神に干渉するシステム、ついでに君たちの肉体の方も精神力が高まるほどに強化されていくようにしておいた。ちょっと慣れるまでに時間が掛かるだろうけど、まあ上手に使うと良い』
 いしきがうすれていく……
  意識がうすれていく……
   意識が薄れて行く……

 …………………あれ?何かおかしいな?頭の中が先週間違って使っちゃったパパの高いトニックシャンプーで洗ってるみたいにスッキリしてきた感じがする。ダメだ……頭がスッキリするほど体を動かそうとする意思が弱まっていく……せめて一緒に倒れている皆のためにも誰か呼ばなくちゃ……

「…………ぁ………」
 声が出ない……それでも声を出さなきゃ皆が………

「……………ぁぁ………」
 皆を助けるんだ!!!!!!!!!!!!

『裏庭に誰か来て!!友達とぼくが倒れているんだ!!!!』
 もう口も舌も動かない今、何も喋れていない筈なのに声が出た気がした。そしてそれと同時に意識は一気に薄れ……ぼくは目の前が真っ暗になった。

【2】

「皆大丈夫!?」
 ガバっと跳ね起きる。ツンと来る消毒液の刺々しい匂い。これは保健室の匂いだ。ぼくは保健室のベッドで寝ていたらしい。保健室の清潔そうな真っ白の布団とシーツに包まれて眠っていたなんて初体験だ。
 驚いた顔でこっちを見る三原くんと伊府峰くん、時任くん、南河原くん、そして保健室の小泉先生。どうやら誰かがぼく達を保健室に運んでくれたらしい。

「はいはい、静かにしましょうね」
 濡らしたタオルを持って小泉先生がベッドの傍まで来た。
「凄い汗だからまずはコレで体を拭きなさいね。ここでぱっとみた限りでは倒れた原因は単なる疲労困憊だと思うけど、念の為に明日は全桶市立総合病院に行きなさい。病院には先に学校から事情は説明しておくから」

 全桶市……ぼく達の住んでるS県の大きくも小さくもない自治体だ。全部オッケー全オッケーと言う持ちネタのコケシがモチーフのゆるキャラ、オケシくんが最近ではブームになっている。コケシは別に特産品とかじゃないんだけどね。
 そんなくだらない事を思い出しながら、しっかりと顔の汗を先生から受け取った濡れタオルで拭いた。背中の手が届かない所は小泉先生が別の濡れタオルで丁寧に拭いてくれた。凄く気持ちいい。何だかおちんちんのおしっこが出る所がむずむずする。
 こんな風に小泉先生はとっても優しいから牛ババアと違って凄く人気があるんだ。ぼく達5人の中で『この学校の中で独身の理由が全然分からないランキング』でトップをゲットしているような美人さんだしね。………勿論お姉ちゃんの方が美人だけど。

「それじゃ、皆起きたことだしおうちの人に電話して迎えに来てもらいなさい。もう夜の7時よ。」
 衣服を整え、ベッドから降りた僕はそう言われて窓の外を見た。成程、既にとっぷりと夜が更けて真っ暗になっている。
「携帯くらい持ってるでしょ?黙っててあげるから使って良いわよ」

 先生のご厚意に甘え、早速家に電話する。ここ何年かは中東で石油プラントの設計と建設をやっているお父さんもお母さんも2カ月に1回帰って来る程度で、大学院生のお姉ちゃんしか家にはいない。そしてお姉ちゃんは車の運転があんまり巧くない。常に法定速度ギリギリを維持して止まる時にはいつも急ブレーキと言う奇跡のドライビングテクニックの持ち主だ。お姉ちゃんは大好きだけど、お姉ちゃんの車には乗りたくないなぁ……。

「プルルルルプルルルル……あ、遼ちゃん!?随分遅いけどどうしたの?…………え…………学校で倒れてたってどういうこと!?すぐに迎えに行くから待ってなさいね!!」
 事情を説明するとお姉ちゃんは慌てだした……ヤバい、このままだとお姉ちゃんが自動車ぶっ飛ばして事故を起こしそうだ……。

「『大丈夫だから心配しないで』!!『車も飛ばさなくて良いから』!!」 キィンッ……
 あれ?また何か変な感じがした。喋ってないのに声だけ飛び出しちゃったみたいな不思議な感覚。
「…………はい、分かりました。心配……しません。車も……飛ばしません……」
 電話の向こうのお姉ちゃんの声もおかしい。普段元気一杯のお姉ちゃんがこんな風にぼそぼそと喋る所なんて初めて聞いたよ。
「あ……あれ?あー……とにかく待っていなさい。1時間位で迎えに行くから。」
 さっきと違う落ち付いた声で喋って電話を切るお姉ちゃん。事故を起こしそうにない程に落ち付いているみたいだから安心したけど何だかおかしい……いや、絶対におかしい。
 …………ちょっと確かめてみよう。ええっとさっきの『喋ってない声』はこうやって……

「小泉先生!!『右の人差し指で三原君の脇腹を優しく突いてみて』!!」
「え?」
 怪訝な顔で振り向く三原くん。そして……
「はい、分かり……ました……」
 突然椅子から立ち上がった先生は口を半開きにしてふらふらと三原くんに近付いて抱きしめると、虚ろな目をしながら右手人差し指で脇腹を突き始めた。先生の大きなおっぱいに三原くんの後頭部が埋まっていて気持ちが良さそうだ。

「え?何?どうしたの先生?『止めて』!!」
 突然のことに驚いてもがいていた三原くんもさっきのぼくと同じ声を出した。
「はい……止めます………………あら?どうしたの、三原くん?」
 先生は三原くんを離すと、数秒で普段の綺麗な顔に戻った。んんー……これってもしかして……ぼく達、人を操れるようになってる……?確か裏庭で気を失う前に4Dとか何とかいう玉がぼく達の頭を改造したみたいなことを言っていたなぁ……さっきから妙に頭が冴えてる気がするし、アレって夢じゃないのかもしれない。
 ………もし違ってたら困るし、ここは先生でもうちょっとだけ試してみよう……
「先生!!『小指で鼻くそをほじって』!!」
 先生がもし正気なら、もしぼくたちに人を操る力がないのなら絶対にやる訳が無いことを先生にあの『声』でお願いしてみる。違ってるなら大人に変な事を言わないのなんて先生は注意するだろうけど
「はい……分かりました。鼻くそをほじります……」
 演技になんて見えない位に先生は小指で豪快に鼻くそをほじりだした。先生の綺麗な顔がお鼻をほじっている所為でぐにゃぐにゃと歪む。それを見ていると何だかおちんちんがまたむずむずして来た。保健体育の授業で習った『勃起』と言うヤツだね。

「おい、魚里!!コレどういうこと!?」
 混乱している時任くん。
「先生がおかしくなっちゃった!!」
 慌てている伊府峰くん。
「…………」
 呆然としている南河原くん。
「……そう言うことなのか、遼?」
 そして、さっきの脇腹突きで事態を把握する三原くん。
「そうだよ、多分ぼく達は声で人を操れるようになったんだよ!!
 ……じゃあ先生……『鼻くそをほじるのはもうやめていいよ』……」
 三原くんの言葉に頷くと、ぼくは先生に鼻ほじりを止めるように『命令』した。ふらふらと先生は鼻ほじりをやめた、ぬらぬらと先生の小指が鼻水と鼻水でテカっている。

「そして……『服をめくってぼく達におっぱい見せて』……いや『見せろ』!!そのあと……『ぼくが許すまで絶対に動くな』!!」
 『声』の出し方のコツを掴んできたぼくは先生に『命令』した。先生は大人っぽいワンピースを破りそうなくらいの勢いでスカート部分の裾を握って首まで引っ張り上げた。ピンピンと幾つかのボタンが弾け飛んで、先生のレースの黒いブラジャーとパンツが丸見えになっている。僕は先生のそのブラジャーを掴んでひっぱり、力づくで剥ぎ取った。次にパンツだ。この保健室で先生が包帯やガーゼを切る為のハサミを机から持って来て、ぼくは左右の腰の所をそれぞれ切り離した。支えを失い、切れたパンツは床に落ちる。
 こうして先生は大きなおっぱいとぼくにはおちんちんがある辺りにもじゃもじゃとした毛が生えているのが丸見えになってしまった。先生のおっぱいをぼくは平手でぱちんぱちんと打ってみる。ぼくの平手で赤く腫れているおっぱいがぶるんぶるんと激しく暴れる。
「ひっ……ふぇぇぇぇ……」
 頭の上から泣き声を聞いて先生の顔を見ると、大人なのに子供みたいに泣き出していた。ああ、ぼくは『どんなことをされても気にするな』なんて言ってないもんね。短時間操ってる間は意識が無くなるけど、しばらくすれば元に戻るってコトか。
 ぼくはその泣き声を聞いて、泣き顔を見ている内におちんちんが硬くなってきた。皆も同じみたいで、振り向くと僕以外の皆はちんちんを手で押さえていた。

「皆、ぼくと同じことができる筈だよ!!ほら、やってみて!!」
 皆にさっきの声を使わず呼び掛けた。4人ともぼくと同じ考えのようで、皆はニヤリと笑っていた。
 ふと、窓を見るとぼくもニヤリと笑っているのが映っているのが見えた。
 人を支配するってこんなに楽しいんだ……。
 人を虐めるのがこんなに面白いから牛ババアやクラスの女子たちはぼく達に意地悪をしていたんだ……。
 それらを知って、ぼく達、1組の男子の心は1つになった。とりあえず最初の目標はぼく達によるクラスの完全支配……だね。

 その為に、まずはこの小泉先生をぼく達で支配するんだ。この力で何ができるのか、何ができないのかしっかり確かめないとね。フフフッ!!

< 続く >

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