重なる二色、対なる一色 ~第1章 前編~

第一章 前編

 桜舞う四月、今日は新入生の入学式。

「新入生のみなさん、おはようございます。この度は、ご入学おめでとうございます。生徒会長の夢野都です。この度は、ご入学、おめでとうございます。突然ですが、本校は、生徒数も全体で百二十名程度しかおらず、生徒も女子のみ、しかも場所も少々アクセスが悪いかもしれません。しかし、そのデメリットを活かして、様々な活動に昇華できていけたらなと思っております。また、部活動も少ない分、放課後に各々が使える自由な時間を確保し、皆さんの思い通りの生活を皆さん自身で描いていくことが可能です。また、現在は校則がまだまだたくさんありますが、皆さんの意見も参考に、少しずつ校則の改善を行っていきたいと思っています。私も、これが生徒会長になってからの最初の仕事ですが、皆さんと同じ新入生のような気持ちで頑張っていきたいと思います。何か困ったことがあれば、私たち生徒会に気軽に相談してください」

「スピーチしんどかった…」

「お疲れ、お姉ちゃん」

 入学式を終えて、私と真知子は共に家に帰っていた。

「そう言えば、真知子はどうだった?」

「とりあえず、クラスの全員と担任の先生にはもう【握手】できたよ」

「早すぎでしょ…」

「何か、クラス全体の自己紹介のときに、ノリで全員のところを回って【握手】を強要したら、割とすんなりいきまして」

 因みに、今現在、私たちの通う学校は、全体の生徒数が百二十人程度、一学年一クラスで大体四十名程度である。

「あのさ、それってつまり、真知子は一年の人はもう【能力】の対象にできるの?」

「まあ、そういうことになります」

「…」

「スゴすぎて何の言えないのなら、私を誉めて」

「いや、ごめん。でもそれは、本当にすごい。私なんてまだ十人もいない生徒会の人たちぐらいしか【握手】できてないし、先生もまだできてないし…。やっぱり真知子は流石だな」

「ね、あ、ちょっと、やめてよお姉ちゃん。照れちゃうよ~」

 満更でもないようだ。

「こほん」

 真知子が咳払いをした。

「さて、お姉ちゃん。これからどうするの?」

「これからって?」

「だから、誰と仲良くなっておいた方がいいとか、誰に【能力】を使うのかとか、結局もうちょっと具体的にどうしたいとか、色々あるでしょ?」

「まあ、確かに…」

「まだやるべきことは山ほどあるんだし、気合い入れていくよ~!」

「分かった」

 入学式も無事に終わり、始業式の日になった。始業式の日は生徒会とすてやる仕事もなく、ただの一学期の開始を裏付けるだけのものだった。

 新しい学年、同じクラス。でも、クラスの顔触れは何も変わらない。だから、自己紹介なんかもササッと終わり、すぐに授業が始まろうとしていた。

 生徒会長の仕事も始まった。

「改めて、今年度の生徒会長の夢野都です。一年間、一生懸命頑張っていきたいと思います。宜しくお願いします」

「今年度の副会長の吉村さとりです。皆さんと共に、良い学校を築けるように精進しますので、宜しくお願いします」

 同じ二年の吉村さん。一年のときは、成績優秀で勉強も運動も得意な文武両道を貫く人と学校では噂されている。

「今年度の書記の松本彩香です…。宜しくお願いします…」

 私より一つ上で三年の松本さん。学年が異なるから、あまり詳細は分からないが、見た感じ少し引っ込み思案のようだ。

「今年度の会計の相川蓮です。私が得意な計算で、皆さんを支えていけたらなと思います。宜しくお願いします」

 同じく三年の相川さん。レンという男っぽい名前だからか、眼鏡をかけているその姿は男性にも見えなくはない。因みに、今までに紹介した私以外の三人は、全員昨年も生徒会に務めていた。

「今年度から生徒会に入ります。岡穂香です。まだまだ経験は少ないですが、皆さんと仲良くなれるよう、頑張っていきたいと思います!」

 最後に、生徒会唯一の一年生である岡穂香さん。見た感じだけで言うなら、少々ギャルの要素があるかもしれない。

「私も今年からですが、皆さんの足を引っ張らないように頑張りたいです」

「そんなに重く思わなくても大丈夫だ。私だって、まだまだ不安なところは山ほどある」

 こう言って優しくしてくれるのと言動からか、吉村さんはよく学校で告白されているようだ。気持ちは分かる。

 こう考えると、他の皆のことを何も知らないんだと思ってしまう。もう少し、知らなければ。

「それでは、改めまして、『宜しく』の【握手】です」

 そう言って、私は皆に手を差し出す。

「そうですね、宜しくお願いします」

「宜しくお願いします…」

「こちらこそ、宜しくお願いします」

「同じ新人同士、頑張りましょう!」

 各々が答えてくれる。握手を返してくれる。それだけで、私は嬉しかった。

「そっか、お姉ちゃんも生徒会とは【握手】できたんだね。とりあえず一歩前進だね」

「そうかな。でも、先はまだまだ遠い…。学校全体を【能力】で包み込むには」

「学校一つって結構壮大だからね。まだまだ頑張るぞ~!」

「お~」

<続く>

2件のコメント

  1. よみましたー。
    とりあえず生徒会を手中に収めましたね。
    支配のペースゆっくりだ……!
    では。

  2. 読ませていただきましたでよー

    支配への第一歩。その長い長い道のりの一歩目を踏み出したのだ。
    とはいえ、教職員を含めてもすでに真知子ちゃんと合わせれば全体の4分の1くらいは能力下に入れてるはずだから、一人ずつでも集団で囲んで無理やり握手すれば一月後くらいには学校全体の支配ならできそうなんでぅけどね(保護者は難しいかもしれないけど)

    あ、でも真知子ちゃんと都ちゃんは能力が意識下無意識下で対照的だから同じ人に二人共握手しないといけないのか?
    まあ、それは片方が支配してれば命令して握手させることは余裕だろうけど。

    であ、次回も楽しみにしていますでよ~

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