むかしむかし、とある山里に、犬坂と上杉というふたりの長者がおった。
 犬坂と上杉の家は、それはたいそう羽振りが良かったそうじゃ。
 じゃが、ある日、犬坂の家にひとりの旅の修験者がやって来ることになった。
 今思えば、それが、全ての災いのもとであった。