居候 「失礼いたします。園江でございます」 わたくしは離れの障子の前で膝を突き、抑揚のない声で言いました。旦那様から離れの住民の世話を頼まれてはいますが、愛想良く振る舞ってやる筋合いはありません。 「あぁ、はいはい」
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昭和八年九月、静川市内で少女の変死体が発見された。
一年前に失踪した男爵令嬢、梶原日那子の遺体であった。
彼女の婚約者にして、特別高等課長の畠山重矩は、日那子の死に不審を抱き、密かに捜査を行なっていた。
ここで紹介するのは、晩年の畠山が所持していた、未公開の捜査記録である。
華族令嬢変死事件一件書類
前略 お元気でいらっしゃいますか? 父からお聞き及びでしょうが、私は国立静川大学へ進学します。帝大卒のお祖父様、K大学に通っているお姉様には及びませんが、精一杯頑張ろうと思います。 先日、お祖母様の遺品を整理しており
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