昭和八年九月、静川市内で少女の変死体が発見された。
 一年前に失踪した男爵令嬢、梶原日那子の遺体であった。
 彼女の婚約者にして、特別高等課長の畠山重矩は、日那子の死に不審を抱き、密かに捜査を行なっていた。
 ここで紹介するのは、晩年の畠山が所持していた、未公開の捜査記録である。