第六話 「新海先生、なんて格好してるんですか!」 辰巳がパソコンを起動して授業の準備をしていると、朝の気だるさに満ちた職員室に野太い叫び声が響き渡った。 黙々と仕事を進めていた手を止め、声の方向に目を向けた他の教師か
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職員室に戻り、自分の席に着くと自然とため息が漏れた。
教師になって一月ほども経つが、未だにミスなく授業を終えられたことがない。
ため息をこぼすと、隣の席で書類を整理していた沙織が体を向けてきた。「どうしました辰巳先生。授業で何かありましたか?」
憧れの教師 第五話
第五話 狭い室内はカビのような匂いが充満している。 乱雑に並べられた書籍には埃が山のように積もっており、最後に利用されたのがいつなのか予想もつかない。辰巳とて勤めて二ヶ月ほどにもなるが、社会科資料室に入ったのは初めて
もっと読む憧れの教師 第四話
第四話 辰巳が出欠簿の名前を呼び上げている最中、立てつけの悪いドアが開く、いびつな音がした。 室内の視線を一身に集めても、教室の後方を歩く雫は一切気にする様子がない。見えない紐で天から吊り上げられているように、背筋を
もっと読む憧れの教師 第三話
第三話 「新海先生、遅くなりました。作成した予稿をメールしたので、チェックをお願いします」 「はい。いま確認します」 ディスプレイの右下に目をやると、時刻は九時をまわっている。もはや、辰巳と沙織の他に誰も残っている者は
もっと読む憧れの教師 第二話
第二話 この日をどれほど待っていたことか。 辰巳は恐怖に顔を歪めたまま眠っている夏帆の体を直し、両手で顔を挟む。 「よく聞いて……。お前は俺のことをすごく信頼している。親よりも、友達よりも、他のどんな人よりも信頼して
もっと読む憧れの教師 第一話
第一話 堂々としていればかえって目立たないというのは本当らしい。 最前列で漫画を読んでいる少女に辰巳が気づいたのは、四時間目がもう間もなく終わる頃だった。 「近本、授業中に何を読んでるんだ!」 辰巳の言葉に含まれた
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