中2の血脈 前編

前編

「ソー? ・・・ホワッドュユーセイ?」

「ワッデューセイ?」

「ワデューセイ?」

 ラッパーでもないのに、一生懸命鏡の前で、ネイティブっぽい発音を口真似しながら、何度も繰り返す。学習机に置いた鏡に向かって、自分の発音と、顔の角度を何度も何度も確かめる。さっきYouTubeで見た、黒人さんの言い方を、何とか習得しようとしているのだ。彼、宮野悠生が今、中学の宿題をサボって没頭しているのは、自分の必殺技が決まった後の決め台詞だった。

 男の子だったら誰でも、「もし自分が正義のヒーローだったら」という妄想を思い描いて、必殺技や設定をあれこれ考えたことがあるかもしれない。今年、中学2年生になった悠生が今でもそんな妄想に浸っているとなると、少し幼いと思われるかもしれないが、彼、悠生の場合は正義のヒーローごっこではない。彼は妄想の中では正義や悪という括りからもはみ出す、絶対固有、孤高の能力者なのだ。”What D’you Say? ”という英語の煽り文句が書かれたデザイナーコラボTシャツをユ○クロで見つけた彼は、ユーセイという自分の名前と結び付けて、これを想像上の特殊能力者である自分の決め台詞に決定したのだった。

 英語。それは格好いいもの。平凡な都内の私立中学に通う、これといって取り柄もない平凡な男子中学生にとっては、英語の決め台詞があるというだけでウットリ出来るアイテムだった。友達は少ないが、クラスメイトにいつか自慢したい。しかし自分からこの決め台詞を宣伝するのも格好良くない。自意識のせめぎあいに苦しみながら、宮野悠成はまず、鏡の前でこの決め台詞を完全に自分のものにすることに集中した。

(もし自分に、圧倒的な特殊能力が天性で備わっていたなら。今の自分は世を忍ぶ仮の姿。平凡な中2男子のようでありながら、本当はこの国の未来をも左右するような能力者であって、いつか世界を敵に回して大立ち回り。最後は意外と世界を救ったりして、美少女はみんな僕の虜。)

 悠生の妄想を小学生じみていると思うかもしれないが、彼には彼なりに拘りがあった。

(子供の妄想とは訳が違うよ。僕の場合はちゃんとしたイマジネーションの設定であり、世界観。きちんとプラスとマイナスがバランスとれているんだ。例えばこの能力。炎の化身をしもべにして敵を紅蓮に焼き尽くす能力は、天性の能力でありながら同時に僕にとっての呪いでもあって、僕は常にこれを押さえつけるために、1日1回は氷を口に含んでいないといけない。僕は世界を救うために力を完全に開放する時、自分自身をも火傷させてしまうんだ。そんな厳格な設定、小学校のガキには思いつかないよね?)

 悦に入って悠生がクローゼットから出すのは、今日買ったばかりのデザイナーコラボTシャツ。ユニ○ロでもデザイナーコラボだったら有りだ。あとは英語のデザイン。英字新聞の柄の服など、なおご機嫌だ。

「ワッデユーセイ? 格好いいよな。」

 黒いTシャツを鏡の前に掲げながら、悠生は発音をまた練習する。今日、新しい服を買ったことも、きっと母親は気がつかないだろう。今日の新品Tシャツを含めて、彼は自分では黒い色の服しか買わないからだ。

(悠ちゃんはもっと、水色とか白とか、似合うと思うな)

 無邪気に、母親は言うだろう。彼の生まれついての祝福/呪いを知らないでいるからだ。呑気な母親。宮野悠美は、いつも息子の妄想や設定をぶち壊しにかかるのだ。その天性の無邪気な笑顔で。

 悠美は31歳。宮野悠生の人生の中で、実際に「個性的」と言えるところをリアルに挙げれば、悠生の母親、悠美がとても綺麗なシングルマザーであることだろう。そう、悠生の父親は悠生に物心つく前に交通事故で亡くなっており、悠美は女で一つで悠生を育てている。それでも保険金がしっかり入ったおかげで、二人とも生活には一切不自由ないのだが。。。

 悠生の凡庸とした顔だち、体形に比べて、母親の悠美は不釣り合いなくらい、美貌に恵まれていた。その分、おっとりとしていて、天然ボケが入っているが、13歳の悠生にとっては若い母でもある。悠生の遊び仲間はよく、悠生の家に来ては、
「お前の母ちゃん、若くて綺麗でいいよな。」

 と呟いた。まるで比較して「お前は全然格好良くもないけど」と言われているようで、悠生には癪な事実だった。

 他の誰でもない、世界に一人だけの自分というものを、喉から手が出るほど求めている中2男子にとっては、若く美しい未亡人でご近所のアイドルという、悠美の存在は、母親ながら、誇らしくも羨ましかった。

「悠ちゃん。ママよ。お願いがあるの。」

 コンコンというノックと、同時に喋りだす母。悠美のいつもの無邪気な行動に、悠生は溜息をついた。「やれやれだぜ。」悠生は溜息をついた後、慌ててそう言うようにしている。格好良さそうだからだ。

「悠ちゃん。そろそろ教えてくれない? ママ、準備が間に合わないと困るの。誕生日は明日でしょ? 何か欲しいのかな? ラジコンはどう? 男の子だから、釣り竿とか欲しいのかな?」

 母はノックをした後は、許可も得ずにドアを開ける。悠生の誕生日プレゼントのことを真剣に悩んでいるのだ。紺色のワンピースに肩までウェーブのかかった髪がかかっている。シンプルなワンピースはふくよかな胸の膨らみと魅力的な腰のくびれ、そして女性的な腰回りをはっきりと表していた。悠生は鏡に映りこんできたその美しい母の体から慌てて目をそらす。最近、昔と比べて母親に妙にドキドキしてしまう。無防備な母のせいだろうか? 悠生が変わりつつあるのだろうか?

「誕生日プレゼントなんて、別にどんなプラモでもいいよっ。母さんにはどうせわからないんだよ。男の気持ちなんて。・・・誕生日なんて・・・所詮、死に一歩近づく一里塚さ。どんなプラモをもらったって、心の傷はそんなに埋まりはしないんだよ。」

 悠生が捨て台詞を吐くと、悠美は困ったような顔でうつむく。それでも数秒後、生き返ったかのように明るい笑顔を見せた。

「・・・そっかぁ。プラモデルはどう? ・・・悠ちゃんも大きくなったんだし、難しそうなプラモデルもきっと、上手に組み立てられちゃうわよね? ・・・どんな、・・・プラモデルだったらいいかな?」

 悠美はまるで尻尾を振ってご主人様にすがりつく飼い犬みたいに、嬉しそうに悠生に身を寄せる。肩に悠美の胸の感触を覚えた悠生がまたイラっとして声を荒げる。

「別にプラモだったら何でもいいって訳じゃないよっ。ほらっ、そっちのプラモ展示ケースに、まだ買ってないプラモがリスト化されてるだろ? 少しはそれでも見て、自分で考えたら?」

 普通の品行方正な親子関係がムズ痒くて、ついつい母親に邪険に当たってしまう。それが余りにも普通で凡庸な平均値の男の子の反応であることを、悠生は気がつかないでいた。

「そっか。ごめんね、ママ、気が利かなくって。ここのリストにある、プラモデルを買って来ればいいのね。・・・悠ちゃん。昔はアンパンマンのヌイグルミが大好きだったのに、大人になったのね。・・・ママ、嬉しいわっ!」

 リストを抱きかかえるようにして、豊満な胸に押しつけて部屋を出ていく母、宮野悠美。悠生は溜息をついて、母親の後姿を見送った。そして思い出したように慌てて、「ヤレヤレだぜ。。。」と呟いた。

。。。

「何これ? ・・・と、誰これ?」

 翌日、学校から帰ってきた宮野悠生は、自宅の異様な光景に、思わず問いかけた。学校での一日は、どうということのない、平凡な一日だった。誰も、クラスで目立たない悠生の誕生日などには気がつかない。悠生は机で昼寝をしているふりをしながら、「実は自分が今、殺し屋たちの狙っているこの教室を守っている。自分がここで睨みを聞かせているということで、殺し屋たちは手が出せず、結果、ここの女子たちは中身のないガールズトークに花を咲かせていられる」という設定を思い浮かべながら休み時間を過ごして、家に帰ってきた。

 そして見たのは、折り紙のリングで飾られた室内と、テーブルの上のケーキ。そして食卓テーブルにはシースルーのネグリジェーを身にまとった母、悠美が首に大きなリボンをつけて、悠生の帰りを心待ちにしていた。食卓の椅子には、見知らぬ美人の女の人が、黙って腰かけていた。クリスマスにかぶるような、銀と緑のストライプ柄のトンガリ帽子をかぶって、おとなしく席についている。

「悠ちゃん。おかえりなさい。14歳、おめでとう!」

 悠美が満面の笑みで両手を差し出す。ネグリジェからは大きな胸と色素の薄めの乳首がはっきり透けて見えていた。悠生はドキドキして目を逸らす。トンガリ帽子を被っている美人の女の人は、一度コホンと咳払いをした。

「お久しぶりです。悠生様。・・・たぶん貴方にとっては初めましてですよね。親戚の東宮スミレと申します。」

 どうせ何も面白いことはないと思っていた、14歳の誕生日。家で待っていたのは、半裸の母。見知らぬ美女。ぶっ飛んだ状況に、悠生は何か言うべきだと思ったけれど、やっとのこと、口から出てきたのは、「ど、どちら様ですか?」という当たり前の台詞だった。あとで、「ワッデューセイ?」とか、「ヤレヤレ」とか言っておくべきだったと、後悔した。あれだけ練習したのに、口をついて出たのは、ずいぶん凡庸で、意味のない質問。名前を名乗った人に対して、もう一度、「どちら様」かと聞いていた。

「悠生様。私は東宮スミレ、貴方の世話役です。御児宮悠生様の封印を解かせて頂くことと、その力の指南を務めさせて頂くために参りました。」

 ストレートの黒髪がキラキラしている和風美人。切れ長の目と色の白さが印象的な美人さん・・・スミレと名乗ったお姉さんは、ドギマギしている悠生の前を横切るようにして後ろに回り込んだ。その動き方も洗練されていて、和紙が空中を舞って降りていくようにヒラヒラと軽やかだった。

 フッ・・・。スミレさんの吐息を間近に感じて、悠生の体温がグッと上がる。いつの間にか両肩に、スミレさんの白い手が乗っていた。

「悠生様の封印・・・解かせて頂きますね。失礼します。」

 スミレさんの両手が、肩からスルスルと前に伸びて、悠生の胸元を抱きしめるように交差する。体が近づく。背中に女の人の胸も感触がすると、耳元にまた、吐息がかかった。

「鬼宮様々御霊解放祝」

 美人さんが何かを言ったと思うと、悠生の体がさらに熱くなった。主に下半身が。

「あっ・・・でっ・・・出るっ・・・・怖いっ・・・何かっ・・・・出ちゃうよっ・・・」

 悠生が直感的に助けを求める。その体を、細身のスミレが後ろからギュッとさらに強く抱きしめた。

「大丈夫です。男子の平均的な精通経験年齢は12歳ですから、14歳の悠生様も、もう充分です。」

 スミレさんの説明の意味もよくわからないまま、悠生の下半身にグッと溜まってきた、血の集まりのようなものが、いっそう膨張する。いつの間にか、意識が遠のくような退行的な快感と掻痒感が混じり合って下腹部のさらに下から迸った。無意識のうちに、股間を手で確認する。尿が漏れてしまったのかと誤解したが、股間はどうにもなっていなかった。悠生と、食卓テーブルとの間に、深い銀色の、水銀のような物体が、プカプカと浮いていたのだった。

「これ・・・は?」

「悠生様のアウラの形です。先祖伝来の、御児宮悠生様のお力です。これを・・・あそこの悠美さんにぶつけてみてください。」

 家庭教師が教科書の内容を説明するかのように、スミレさんはすらすらと説明をする。ネグリジェ姿の悠美はニコニコして未だに悠生の誕生日を祝おうとしている。ただ悠生だけが、ポカンとしていた。

「ぶ・・・ぶつけるって、・・・手で?」

「いえ、あのアウラの塊は悠生様の念じるままに動きます。ただ、悠美さんに入れ、と念じてください。」

 この場の、非現実的な状況に気圧されたのか、それとも悠生の生まれつき妄想に流されがちな性格からか、気がつくとスミレさんの言う通り、念じていた。そしてボヨボヨと形を変えながら揺らめいていた、重金属のようなモノは、悠生の念じるのに合わせるようにして、悠美さんの方向へゆっくり、ゆっくりと漂っていった。

「アウラをこのように顕現させて放出出来るというのが、御児宮一族の証です。そしてこの密度、力強さは、初めて精通した御児宮の男子とは言え、さすがは本家の御子です。私たち一族の希望はやはり、悠生様です。お父様もお母様も、間違っておりませんでした。」

 スミレさんが淡々と説明している言葉が、意味も分からないので頭に入ってこない。ただ悠生は、ユラユラと変形しながら母親である悠美へと向かっていく、重金属のような浮遊体を眺めていた。

「ぁぁっ・・・・ふっ・・。」

 水銀みたいなネットリとした浮遊体は悠美の下腹部に入り込んでいく。一瞬、悠美のお腹の周りがフィルムが歪んだようにフォルムが変わる。飲み込まれるようにしてボッコンと重金属がお腹に吸い込まれた。

「えぇっ? 母さん・・・、大丈夫?」

「悠美さんは大丈夫です。さっきのアウラも悠生様ご自身のようなものです。ほら、震わせてみてください。自分の足の指先を震わせるように・・・。」

 スミレさんに言われるままに、半分、夢見心地に悠生が心を動かす。・・・ゴボゴボッと重金属の柔らかい球体が震えたような感触があった。同時に、母親の悠美が目を見開いたまま、体をブルブルっと震わせる。

「先ほどの御玉が悠生様のアウラ。遠く離れすぎない限り、貴方の自由に動きます。そしてそのアウラを震わせて、アウラの入り込んだ依り代を動かすことも出来ます。今度は、右手を上げさせることを考えて、さっきのアウラを動かして見てください。」

 ブルブルッ・・・ゴボッ。悠生が思うのと同時に、母親である悠美の下腹部のあたりで重金属が蠢く気配があった。いつの間にか、悠美はピンッと右手を挙げている。真っすぐ点を突くかのように、はっきりと挙手をしていた。

「封印は私が解除しました。悠生様の思うがままにしてください。あの者・・・。悠美は、悠生様の実の母親ではありません。これまで悠生様をお守りして養育した、御児宮家の僕の一人です。悠生様を騙してまいりまして、申し訳ございませんでした。」

 悠生を後ろから抱きしめていたスミレさんが、そのまま悠生の背後に跪く。悠生は、スラスラと学術的な説明をするようにして語られたスミレさんからの衝撃の言葉に、唖然としていた。

「母さんが・・・。母さんじゃ・・・ない?」

 そんなことは嘘だと、いつもの天然ボケの入った笑顔で笑い飛ばして欲しかった。それなのに、宮野悠美は食卓テーブルで右手を挙手したまま、夢を見ているような表情でボンヤリ答えた。

「悠生様、申し訳ございません。悠美に・・罰を与えてください。どんなことでも致します。」

 宮野悠生の頭の奥で、何かが弾けた気がした。腹の底から獣のような声が出る。それに呼応するかのように悠美の腹下で重金属のような浮遊体が震え、悠美はいつのまにか自分の両手で、身にまとったネグリジェを引き裂いていた。テーブルに飛びつく悠生。悠美は悠生の獣欲に共振するように、自分でネグリジェを破り去り、全裸でテーブルの上に寝そべって足を大きく開いた。悠生が飛びついて悠美の体に覆いかぶさると、まるでその悠生の獣欲が乗り移ったかのように悠美が激しく悠生の衣服を引きちぎる。悠生が裸にされながら、母と思ってきた人の体を貪る。白い肌に歯を立てる。柔らかい肌に舌を這わせる。悠美もそれを上まわるほどの勢いで「息子」の体を愛撫する。ピチャピチャとあさましい音を立てて舐めまわす。

(足を上げろ、大きく開け。もっと、もっと!)

 悠生が念じると、悠美の下半身に浸みこんだ重金属がブルブルっと震えた感触を返す。即座に悠美の長くてしなやかな両足がピンっと天に向いて伸び、パックリと開いて水平に。大股開きになろうとする。太腿の腱がピクピクと痙攣していた。

「いっ・・・痛いです。ご主人様っ・・・。」

 悠美が悲鳴を上げる。スミレの冷静な声が後ろからかけられる。

「悠生様。アウラを使う時は感情のままに無理をさせてはいけません。人間の力を超えて、無理をさせてしまいます。少し力を抜いて。」

 悠生がスミレの言葉を聞いて、少し気を抜こうとするのだが、体中に噴き出してくる、熱い、怒りにも似た力は一向に柔らがない。

「悠生様。私がいます。落ち着いてください。」

 スミレが食卓テーブルまで駆け寄って、悠生の体を後ろから抱きしめる。耳元にフッと息を吹きかけた。

「大丈夫。私がおります。悠生様をお守りします。」

 スミレさんが体を密着させると、体温の低そうな見た目に反して、柔らかく温かい感触が悠生を包み込む。重金属の震えが、少し和らいでいく気がする。又裂きの姿勢で、口から泡でも噴き出しそうな様子だった悠美が、深い息をつく。全身に張りつめた力が、少しずつ抜けていく。

(悠美・・・。僕を気持ち良くさせて。)

 少し落ち着いた声で、悠生が念じてみると、「母」は嬉しそうに体を起こして悠生に抱きつく。まだ張りのある、豊かなバストを悠生に押しつけてきた。

「私は悠生様を気持ち良くさせるために生きています。私にご奉仕させてください。」

 悠生の「母親」はウットリとした表情でそれだけ言うと、悠生の体中を丁寧に丹念にキスをして、自分の胸を乳首を円を描くようにして押しつけて愛撫を始めた。その、愛情の凝縮されたような奉仕を、全身でいつまでも味わっていたい気持ちもあったが、悠生の方に、次へ進みたい事情が出てきた。股間が漏らしそうな程に膨張して固くなっていたのだった。

(射精する・・・このままだと・・・、射精するっ。)

 保健体育の授業で習った男の体のメカニズム。直感的にそれを感じた悠生。しかし、恥ずかしい液を漏らしてしまったのは、彼ではなかった。

「あっ、・・・・うぁあああっ・・・。」

 悠生に舌と胸で奉仕していた「母親」の悠美が、膝をこすりつけるような姿勢になったあと、急に腰を前後に振る。苦しそうな、気持ちの良さそうな表情で、悠美が唇を噛む。彼女のしなやかな足の間から、断続的に粘液のようなものが吹き出してきた。

「悠生様。今、アウラと共振したままで、ご自分で射精しそうだと、強く思われたでしょう? 先に、アウラが反応して、依り代の悠美を射精させてしまいました。・・・その、女なので、射精ではなくて、・・・潮を吹いたのですが・・・。相手は悠生様の思いのままに反応をしてしまいますので、気をつけて感応しなければ、うまく交わることが出来ません。」

 冷静な口ぶりで話そうとしていたスミレさんだが、ところどころ、際どい言い回しのところで、つっかえていた。悠生はまだ童貞なのに、このお姉さんのことを可愛いとすら感じた。

「どうしよう。母さん、もう出しちゃって、疲れちゃったかな?」

「女性の体はそのように単純にクールダウンしません。大丈夫です。もう一度、深く、出来るだけ深い響きでアウラを揺り動かすことをイメージしてください。そして悠美。発情しろ。すべてを僕に捧げろ、と念じてください。」

 悠生は無意識のうちに自分の両目を閉じていた。そしてさっきの水銀のような鈍いシルバーの浮遊体が「母さん」のお腹の下でブロッ、ブロロロッと震えるところを思い浮かべる。そして夢中で(母さん、発情しろっ、すべて僕に捧げて)っと念じてみた。

「うっ・・・うあああっ。もっ・・・もうっ…ダメ。悠生様。私の悠ちゃん。・・・入れてっ。ここにおチンチン入れてくださいっ。お願いしますっ。」

「母さん」は栗毛色のウェーブのかかった髪を振り乱して、何かの衝動に突き動かされるように悠生にすがりついてくる。擦りあう肌から、彼女の体温が上がったように感じられた。

 悠生の固くはちきれそうになっているオチンチンを、悠美の股間に入れようとする。スムーズに入らなくて、少し気持ちが焦った。「母さん」は両手を添えて、悠生のモノを自分のナカに導く。やっと、温かい内部に入った。

(スミレさんに見られてるんだよな・・・。)

 見知らぬ美女の前で、食卓テーブルの上で繋がってしまっている、全裸の親子の姿を考えると、悠生は頭の片隅で恥ずかしい思いを持て余す。それでも、いま彼の頭の大部分は、背徳的な快感と、暴れ狂うような獣欲で溢れていた。

「悠ちゃん素敵っ・・・。もっと奥まで来て。ママを滅茶苦茶にして欲しいの。」

 切羽詰まったような、悠美のうわずる声。もっと奥までモノを入れようとすると、膝をグッと開いて、腰をぶつけ合うような体勢になる。柔らかいという想像ばかりしていた女性の内部は、部分によってザラザラしたところやヌメヌメしたところ、力強く悠生のオチンチンを締めつけてくるところなど、色んな表情を持っていた。最初は慎重に、優しくモノを動かしていた悠生だが、母に求められるままに、ピストン運動を激しくしていった。母の深呼吸のような溜息が、悲鳴のような、鳴き声のような、いつもとは違う声になる。苦しそうな顔をしている悠美のことを心配したが、尋ねると「気持ちいいから、もっとして」とねだられた。

 宿題のこと、学校のこと、友達関係のこと。悠生は普段頭の一部に回り続けている生活の悩みを、全て忘れたかのように、この「カユキモチイイ」感覚を下半身一杯に感じて、腰を振り続けようとした。それでも、一瞬気を緩めた時に、オチンチンの先からビュッと何かが噴き出るのを許してしまった。

(オシッコが漏れた?)

 焦って止めようとしたけれど、一度許してしまった後は、ジュッ、ジュッ、ジュッと何度も何かが出ていくのを許してしまう。自分のお尻の割れ目が始まるあたりから太腿の付け根のあたりまで、温かい快感が充満する。背筋から脳天まで、眩暈を覚えるような気持ちよさが突き上がってきた。お風呂で寝そうになった時のような、ボンヤリ熱に浮かされた気持ちよさだった。

「いいの。いいのよ。悠生様の精。大事な大事なモノよ。お郷のみんなの宝物よ。」

 体を起こして悠生を抱きしめた悠美は、ふくよかで柔らかいオッパイで悠生の顔を包み込んだり、顔中にキスをしたりしながら、その合間によくわからない説明をする。それでも、「精」という言葉を聞いたところで、悠生は「精子」とか「精液」、「射精」という言葉を思い出した。オチンチンから精子が出た。クラスメイトたちの大部分よりも遅かったが、悠生は精通したのだ。「母」の導きで・・・。それとも、スミレさんという、知らない美人の導きで?

「悠美。あとは私から説明します。貴方は悠生様の体を綺麗にしなさい。」

「はい、かしこまりました。スミレ様。」

 自分よりも年下と思われる、綺麗なお姉さんの言葉に、「母」が微笑んで恭しく従う。悠生は微妙な感情を胸のうちに感じていた。テーブルから下りた悠美は、悠生の手をとって、テーブルから椅子、そして床へと丁寧に悠生を案内する。そして裸のままで、悠生のオチンチンを両手で包み込んで、顔を近づけてきた。

 チュッ

 オチンチンの先に、当たり前のようにキスをする「母」。

「わっ・・・汚いよ、母さん。」

 本能的に、オチンチンに口をつける行為を、不潔だと判断した悠生が思わず腰を引こうとする。それを追いかけるようにして、悠美は口を開いてオチンチンをパクッと咥えこんでしまった。

「悠生様。精子も精液も、汚いものではなくて、大切なものです。特に貴方の一族の『お精』は、私や悠美のような、お郷の人間にとって、神聖なものなのです。御児宮家。貴方の本当の家系の名前です。」

「おにみや? ・・・いや、僕は宮野です。」

「宮野とは、御児宮一族の一員がお郷を離れて生活する時の偽名です。貴方も、そして私の東宮家も、もとを辿れば、御児宮の一族なのです。貴方は物心のつく前に、母代わりの役を頂いた清水悠美と一緒にお郷を離れて上京しました。貴方の本当のお父様もお母様もご存命で、岐阜県は奥飛騨地方の鬼ヶ獄という先祖伝来の土地で生活されています。・・・いえ、村を統治なさっています。」

 ついさっきの、初めての射精の時よりも、大きな眩暈を感じて、悠生は思わず裸のままでフラついてしまった。「母」の、口での奉仕はまだ続いている。

「急に沢山の驚きを与えてしまうのは、良くないですね。一つずつ、時間をかけて本当のことをご説明しましょうか?」

 スミレさんは冷静な口調を崩さない。理路整然と喋ろうとする彼女の雰囲気は、学校の先生によく似ていた。

「そんな、小出しに言われるよりも、今、いっぺんに話してください。・・・でも、ちょっとだけ、待って・・・。また、その、アレが、出ちゃいそうになってきました・・・。」

 悠生が恥ずかしそうに言うと、スミレさんは「何の心配もない」といった様子で微笑んだ。

「お精はいつでも、お好きなように出してください。今は悠美の口の中にそのまま出せばいいですよ。ねぇ、悠美?」

「ふぁい。」

「母さん」は、悠生のオチンチンを根元まで咥えこんだままで、嬉しそうに返事した。躊躇いはあったけれど、悠生は我慢できなくなって、「母」の口の中にで、またドクドクと、射精してしまった。

「中学2年生くらいの男の子が、射精を1日に複数回することはおかしなことではありません。ですが、御児宮一族の男子は特に、性欲が強くて、体もその性欲に耐えられるようなかたちに、精通後、急激に成長していきます。悠生様の場合は、1日に10回前後、射精や性行為をすることは、普通だと思ってください。・・・いえ、むしろ、それがお勤めです。」

「・・・どうして?」

 一日に、10回も射精するのが当然というような説明に、悠生は正直、困ってしまった。それでは勉強もゲームも、・・・日課である「特殊能力者の妄想」に浸ることも、頻繁に中断させられてしまう。

「残念ながら御児宮家の男子の精子は、遺伝的に受精能力が極端に低いからです。それを補うために、通常の男性の何百倍も、性行為を繰り返さなければ、受精し、一族の命脈を保つことは出来ません。だから、それを補うための能力が発達したのではないかと、考える人もお郷にはいます。一方で私の仮説は・・・」

「クシュンッ・・・あ、ごめんなさい。」

 悠生はスミレさんの説明を、クシャミで遮ってしまった。自分が寒がりな体質であることを思い出した。

「服をお召しになりますか?」

 スミレさんが冷静に質問すると、跪いて口の中の粘液を何度も喉を動かして飲み込んでいる悠美に目を向ける。その視線に気がついた「母」が、悠生の脱ぎ散らかされた服を、テキパキと手に取って、悠生に着せていく。「母親」に服を着せてもらうなんて、ずいぶん久しぶりのことで、悠生は少し頬を赤くした。

。。。

 スミレさんの説明は簡潔で、子供の悠生にも極力わかりやすくなるように工夫されたものだったけれど、その中身が余りにも現実離れしていたので、悠生が噛み砕いて理解するまでにはやはり時間がかかった。まとめてみると、こういうことらしい。

≪御児宮一族の由来≫

 南北朝時代(だから鎌倉時代末期か室町時代?)に、政争に敗れて飛騨の奥地、辺境の土地に移り住んだ人たちの中には、陰陽道や道教、密教、古神道などに携わった学者や僧侶がいた。後醍醐帝という人が真言立川流に飯縄修験といった、「邪教」扱いされるものにも興味を持っていたことで、南朝方にはそんな邪教の専門家たちが混じっていたらしい。「鬼宮」と言われた一族もその一つ。鬼神の力を駆使して、民衆や大軍を自在に操って裏切りを起こさせたり、パニックを起こしたりしたとされる。その力は絶大だったのだけれど、後醍醐帝崩御の後は、南朝方にも鬼宮一族の力を畏れる人たちがいて、その力を存分に発揮させてもらえなくなった。飛騨国司の姉小路家の庇護を得て、奥飛騨の秘境の地に根付いた鬼宮家は、陸の孤島のような山岳地帯に隠棲することになった。

 それでも、南北朝統一後は時の政権と裏で結びつくことが度々あって、日本史の闇で幕府や朝廷と取引を行って暗躍した。鬼宮家は周囲の勢力からは畏怖の対象になっていて、彼らの隠れ里は「鬼ヶ獄」と呼ばれるようになった。

 室町時代の末期には、鬼ヶ獄で沸いている硫黄泉が万病に効くという評判が出て、人の出入りが少しずつ増える。この頃に体裁を気にしてか、鬼宮本家は鬼神を祭っていた神社を「御児宮(おにみや)と読みかえている。江戸時代以降も「秘湯ブーム」が起きるたびに辺境の温泉が美人の湯、子宝の湯などと、主に女性に良いと評判を呼ぶが、基本的には鬼ヶ獄は、圧倒的なアクセスの悪さから、今も「知る人ぞ知る、陸の孤島の秘湯」を中心にした、小さな里村らしい。

≪御児宮一族の力≫

 鬼神の力、神通力、妖術などと畏れられてきたが、御児宮一族が使う力は、その遺伝に由来しているらしい。明治時代に郷に定住した研究者の仮説では、気功かオーラのようなものを凝縮させて、人にぶつけて、その人の体や思考を操っているのではというものだった。現在、御児宮の血族がその力を使う時のイメージも、それに近いらしい。(その学者が寒村から学会に送った超科学の研究論文は、中央では完全に無視されたそうだ)

 そしてスミレさんの認識では、御児宮の力とは、一言で言うと「人を操る力」らしい。人の行動、感情、知覚、信条、記憶、人格と、レベルアップするごとに人間の本質に近い部分まで支配する、恐ろしい力。その人の肉体を物質的に一気に変質させることは出来ないけれど、体の分泌や神経系への脳からの指示に干渉して、免疫力、自己治癒力を上げたり、成長を促したり、筋肉の運動力を一時的に全開させるということまでは出来るそうだ。一度に集団を支配したり、長い時間、支配を持続させたりすることも、能力と技術次第。悠生のような「ご本家」の男子なら、力の扱い方の修練を積めば、数千人という単位で強力で木目の細かい支配まで出来るはずと言われた。

「但し、この力が万能ではないということに、常に注意を払ってください。鬼神のようなその力は、歴史上多くの権力者が利用しようとしましたし、多くの敵をも生んで参りました。14歳になる歳まで、貴方の力に封印がかけられてきたのも、そうした理由があります。郷の外でお育ちになる御子には、幼い頃から無意識のうちに力を使ってしまうことが大きな危険と見なされたのです。

 そして、悠生様が14歳になられた今日。私が鬼ヶ獄の郷の指示で使わされました。これからしばらくの間、貴方に一族の力の使い方、御児宮家の男子の生き方をお教え致します。そして悠美はこれまで通り、貴方様の母代わりとして、そして諸々のお世話をするために、私たちとの生活を続けます」

 スミレさんがそこまで説明をしたところで、悠生に服を着せ終えた「母さん」は、両手を床について恭しく頭を下げた。

≪御児宮家の宿命≫

 強大な力の副作用なのか、歴史上の長い期間、閉じられた世界で通婚が繰り返されて、血が濃くなりすぎたからか、御児宮一族の生殖能力は一般の人間よりも極端に低い。精子や卵子の受精能力が低く、性行為を普通と比べて極端に多い回数こなしていかなければ、少子化が進んでいく。現在、御児宮家の血を引き、力を使える一族の者は11名。この人数を確保するために、前の世代はその人生のほとんどをセックスの繰り返しに費やして来たらしい。

「性行為の相手との相性によって、受精に結びつくこともありますし、その状況、御児宮の者の精神状況によっても、精子が一時的に受精能力を高める可能性もあるようです。なので、悠生様は、これから出来るチャンスがある限り、可能な限り多様な相手と、可能なかぎり多様な方法、シチュエーションで、セックスをして頂かなければなりません。私が先ほど、『1日に10回が目安です』、とお話したのは、先の世代の統計に基づいています。」

 気が遠くなるほどの数と方法の性行為を可能とするために、御児宮の男子は封印が解け、精通を経験してからは、急激に性欲が増進して、セックスに対しての体力も上がる。性器も耐久力が高まって、性病に対しての免疫力も上昇するらしい。

「まずは、悠生様が気になる女性を、片っ端から相手にして、セックスをして頂かなければなりません。私がそれをお手伝いしながら、悠生様に力の行使の仕方をお教えして参ります。いずれは、貴方がお一人で、力を使って、それによる社会への悪影響も事前に防ぎながら、如何なる相手も支配して、性行為を行うことが出来るようになります。これが御児宮家の命脈を保つ、今のところ唯一の方法なのです。日本政府も、その中枢の一部は、これを知っていて、容認、後押しすらしています。」

 毎日、セックスに明け暮れる。何千回、何万回のセックス。何千人もの相手を操って、その行為に及ぶ。聞いているだけで気が遠くなりそうな話だったけれど、悠生の股間はもう、その話を喜んで引き受けようとしているかのように硬く、熱く起立していた。今日はすでに2回も出しているのに・・・。

「それじゃあ僕は、勉強にも、将来仕事にも集中して打ち込むことが出来ないと思うのだけれど・・・。」

 股間を手で押さえつけながら、悠生が恥ずかしそうに尋ねると、スミレさんは少し顔に哀れみの表情を浮かべて、すぐにそれを笑顔で覆い隠した。

「それが、我が一族の宿命であり、政府上層部からの要請でもあるのです。悠生様のお仕事は、その特殊なお力を伸ばしながら、一人でも多くの御子を産ませるために、セックスを続けること。それは恥ずかしい仕事ではありません。地上の哺乳類や雌雄が分かれた生物の負っている役割と、同じだと思ってください。」

 スミレさんは出来るだけ冷静な教育係の表情を保とうとしている。しかし悠生の目には、彼女の表情の裏側にもわずかな葛藤や逡巡、恥ずかしさ、戸惑いなどは息づいているように感じられた。

。。。

「今日は色々と、驚かれることが多かったと思います。封印が解けて、精通があって、力の行使も初めて経験して頂きました。これから悠生様は体の変化に耐えていって頂かなければなりません。今日のところはゆっくりお休み頂きます。」

 スミレさんは、悠生に早めの入浴と睡眠を薦める。悠生も確かに体が火照って疲れていた。ニコニコしながら、悠美は悠生に洗面所までついてくる。スミレさんの長い説明の間に、スケスケのネグリジェから、普段通りの清純そうなワンピースに着替えていた。脱衣場で、さっき着せてもらったばかりの服を、また悠美が脱がせようとする。悠生はされるがままになりながら、「母」に質問を投げかけてみる。

「母さん。今の、スミレさんの言ってたことって、全部本当?」

 悠美は、いつもの柔和な笑みを投げ返してくれるけれど、口調はすっかり変わってしまっていた。

「申し訳ございません。私はお郷の物ですが、御児宮様のご一族ではございませんので、詳しいことは知りませんし、知る必要もございません。ご一族のお世話をして、頂いたご指示に従うために生きているのです。先ほどスミレ様と玄関先でお会いした時に、私もこのことを急に思い出したという次第です。」

 いつもの優しい声で、ずいぶんと距離を感じさせるような丁寧な言葉遣いをされると、悠生は急に寂しくなる。

「母さん。母さんに僕の世話をするという使命があるんなら、それは続けてもらっていいから、それ以外は、これまでと同じように僕に接してよ。急にそんな言葉で喋られると、家族がみんないなくなっちゃったみたいで、寂しいよ。」

 悠美は少し考える。考え事をするときに、黒目が上にあがって、口元をすぼめる仕草は、これまでの、少しだけ「天然ボケ」が入ったような母の様子と全く変わらない。

「それ・・が、悠生様のお望みなら、従わせて頂きます。でもね、悠ちゃん。ママ、スミレさんにも、このことの許可を後で頂かなければいけないと思うわ。お郷の者がご一族に失礼な口の利き方をしていたら、本来はお仕置きの対象なんだから・・・。急に色んなことが変わっちゃって、ごめんなさいね。」

 悠美の口調が、いつもの喋り方に戻ると、それだけで悠生をいくらかホッとさせる。何気ない、どうってことのない日常の会話のトーンが、これほど自分を安心させるものだとは、思わなかった。

「それじゃ、悠ちゃん。お風呂に入りましょ。ママもすぐにお洋服を脱いで、ご一緒させてもらうから、何もしないでいていいのよ。体を洗ったり、お湯加減をみたりするのは、全部ママのお仕事なんだから。」

 悠美にうながされて、悠生は先にバスルームに入る。といっても、そこからすることはないので、悠美が服を脱ぎ終わって、入ってくるのを待つ。一緒のお風呂なんて、どれくらいぶりだろう?

「すぐに終わるから、待っていてね。」

 すりガラスのように目隠しになっているプラスチックのドア越しに、悠美が伝える。バスルームのドア越しの会話は、なんだかドキドキさせられる。ついさっき、間近で見た悠美の裸は悠生の目に焼きついている。しかし、曇ったドア越しに様子が伺える、大人の女性の服を脱いでいく姿というのは、また別のドキドキを悠生に与えている。紺のワンピースがスルスル落ちて、肌色がドア一杯に広がる。手を回して下着を外していく様子。屈んでパンツを脱いでいくと、ドアには豊かなお尻が近づいて、すこしくっきりとお尻の割れ目まで映る。裸で勃起を隠せない状態の悠生は、一応股間を手で隠してみた。

「失礼します・・・。あ、ママ、入るわね。」

 ドアが開くと、宮野悠美が裸で入ってきた。色の白い肌。腰回りはしっかりクビレていて、オッパイは大きい。運動は得意ではないが、体は健康的にムチムチとしている。

「ねえ、母さんって・・・。本当に31歳?」

 あまり判断材料となる経験は持ち合わせていないが、悠生はここで疑問をぶつけてみた。昔から彼の「母」は、若く見えるとご近所や周りの人たちから言われ続けてきたのだ。

「ごめんなさい・・。本当はママ、今年で28なの。悠ちゃんと一緒に過ごしてきた11年間。ずっと嘘をついてきたのね。だけど、本当にママ、自分で3歳も年上だって、信じて疑わなかったわ。どうしてかしら・・・。」

 悠美が申し訳なさそうに答える。両目を上にあげて、考え込んでいる時の癖が出ているが、たぶんこれは御児宮の力で、そう信じ込まされてきたのだろう。

「でも、考えても仕方がないわね。それよりも、目の前にある、お仕事に集中しなくちゃ。」

 悠美は少し垂れ気味の両目を細めて、ニッコリ微笑みながら両手を伸ばして悠生に近づいてくる。

「仕事ってやっぱり? ・・・ムギュッ。」

 悠生の口を、「母」が自分の口で塞ぐ。腕を悠生の背中に回して抱きついてきて、体をペッタリと密着させてきた。悠美の全身の柔らかい肌が、悠生を包み込む。

「悠ちゃんのお世話をして、喜んでもらうことがママのお仕事よ。特に14歳になった悠ちゃんは男の人として成長していくんだから、ママ、沢山、女の人に出来るご奉仕をしていかなくちゃ。「母親代わり」のお世話もするけれど、それ以外にも、悠ちゃんが彼女になるような女性にしたいことや、ペットにしてみたいこと。玩具に対してしてみたいことなど、何でもしてくれればいいの。全部ママが喜んで引き受けちゃう。」

 キッスの合間に、呼吸を整えながら悠美が喋る。息が切れがちなので、熱い吐息が悠生の顔にかかる。抱き着いたまま悠美は、少しだけ体を話すと、左手に掲げたボディソープの容器をグッと握って、自分の体と悠生の胸元との隙間に、ダラダラとボディソープを垂らした。悠美がまた豊かなバストを悠生に押しつけて、ゆっくりと腰を下ろしていく。体を上下させるたびに、石鹸が細かく泡立って、ヌルッとした感触は悠生の股間をいっそう硬くさせた。

「悠ちゃんと一緒にお風呂入るのも、久しぶりね。それに、男の人にこうやってご奉仕するのも・・・、もちろん悠ちゃんには初めてだし、ママ自身も、11年ぶりだから、上手に出来てなかったら、教えてね。ママが悠ちゃんを満足させられない時は、厳しく叱って、お仕置きして欲しいの。そうしていかないと、ママはどんどんだらしない怠け者になってしまうし、悠ちゃんは立派な御児宮家のご一族として成長出来ないわ。これは・・・、気持ちいいかしら? ・・・いつでも素直に、正直に教えてね。」

 悠美が豊かな太腿で悠生の下半身をギュッとする。体を上下させて、オッパイで悠生の体を擦りたてながら、下腹部で悠生の下半身を洗う。ツルンとしたお腹が悠生の腹筋を擦ったあとで、泡まみれの悠美のヘアーが悠生の陰部を刺激する。悠生はそのまま精を撃ちはなちそうになってしまった。

「ママ・・・、気持ちいいよ。・・・すごく上手だ・・。」

「嬉しい・・・。ママ、悠ちゃんが気持ちよさそうにしているのを見るのが、一番の幸せ。・・こんなに幸せでいいのかしらって、泣きたいくらいになっちゃう。」

「母」が感極まったような表情で、悠生の唇をこじ開けて舌を絡ませてくる。全身で悠生を愛撫しながら、潤んだ目で悠生を見て、陶酔したような表情で微笑む。悠生は奉仕されながら、手を脇から入れて悠美のオッパイを包み込んだ。丸くて大きくて柔らかい、悠美の乳房は悠生の胸元で上下したり円を描いたりして変形しながら、悠生の指先にはハッキリとした弾力を返してきた。

 悠美が生活していた「郷」のこと、悠生の本当の両親のこと。色々と聞きたいことはあったけれど、悠生はそれ以上に、今また、性欲の暴走に切羽詰まってきた。ついさっきのことを思い出す。あの時、悠生が『右手を上げて』と念じたとき、確かにスミレさんが『アウラ』と呼んだ、重金属のようなドロッとした塊が、震えたことを感じられた。すると直後に、悠美はピンッと右手を真っすぐ上に伸ばしたのだ。そのことを思い出すと、今、悠美から受けているご奉仕以上に、悠生の股間がキュッと引き締まる。

(もう一度・・・、試してみようか。・・・さっきの銀色の玉はもう、消えちゃったのかな?)

 悠生が気にした瞬間、ブルルッと振動を感じた。悠美のお腹のなかだ。

「ふっ・・・んん」

 悠美が少しだけ顎を上げて、おかしな感覚をやり過ごすそうとしているような表情を見せる。

(まだ、さっきの玉は母さんのお腹に残ってる? ・・・・ようし、『母さん、両手を上げて』・・・)

 悠生が、慎重にさっきの力をまた試してみる。悠美は少し困ったような顔をしながら、両手を悠生の体から離して、ゆっくりとバスルームの天井へ向けて伸ばしていく。体が悠生の胸元から離れると、繋がっていた白い泡が切れる。豊かなオッパイが、名残惜し気に少し揺れた。

「あぁ・・・、悠ちゃんの体が、洗えない・・・。・・・これ、悠ちゃんがしているの?」

 悠美は驚いているというよりも、仕事が進まずに困ったという表情で悠生を見ている。こうして御児宮の力を使われたのは、今日が初めてではないようだ。

「そうだよ。・・・駄目?」

 悠生が無邪気に聞いてみる。

「駄目じゃぁ、・・・ないわ。ご一族の方が、お力の練習を積んで、上手になるのは、お郷のみんなにとっても、嬉しいことよ。だけど・・・、今は悠ちゃんの体を洗ってあげないと・・・、いつまでもこうしていたら、2人とも風邪ひいちゃうでしょ?」

「母」が息子を諭すように、いつものようにオットリと優しく話してくれる。ただ体勢が、泡まみれの裸で、綺麗にバンザイのポーズになっているのが、シュールというか、滑稽だった。悠生はさらに、悪戯をしてみる。

『両手を握りしめて、肘をまげて、腕を真横に下してきてよ。脇をしめて、横からオッパイを揺すってみせて。』

 悠生が心の中で告げると、また悠美のお腹の中で、重金属のようなネットリした球体が、ブブブッと震えたように感じる。まるで、メールを着信した携帯のバイブレーションみたいだった。すると球体の振動とほぼ同時に、ピンッと天まで伸ばされていた悠美の両腕が折れ曲がる。握りこぶしを作った両手で脇をしめると、丸くて大きなオッパイが、両脇から肘に寄せられて、ムギュっと胸の真ん中に寄せられる。少し遅れて、オッパイが震える。色素の薄い乳首が真ん中に寄る。鎖骨の前あたりで固定されたゲンコツを支点にするように、肘が何度もオッパイを横から寄せる。ペチペチと音が鳴った。

「は・・・、恥ずかしいよ。悠ちゃん。・・・ママに、こんなこと、させないで。」

 今更ながら、悠美が顔を赤くする。悠生の思い通りに動く、大人の体。それを意識しながら、恥ずかしがる大人の女性。その様子に、悠生はさらに股間が熱くなったのを感じて、我慢の限界に達した。悠生の方から悠美に抱き着く。まだ両肘で横乳を叩き続けている悠美の体を、バスルームのタイルの上に押し倒した。体を滑らせて悠美の女性の部分に自分のモノを滑り込ませようとする。またも、最初の挿入で手間取った。

『母さん、膝を大きく開いて』

「・・あっ・・・。」

 念じると同時に、悠美の両足がグッと開く。膝を曲げたまま、カエルの足のように開脚してしまった。

「は・・・恥ずかしい・・・、悠ちゃん・・。」

 両膝の外側がピタッとバスルームのタイルに貼りつくと、悠美の恥ずかしい部分が割れ目から剥き出しになった。ヘアーは毛先が石鹸で隠れているが、赤い粘膜は剥き出しだ。手先が股間を押さえようと一瞬伸びたように見えたが、すぐにまた拳を握りなおして、肘でオッパイを横から揺する動きに戻ってしまう。悠生の「母さん」は、壊れた玩具のような動きと体勢で、「息子」には絶対に晒してはならないような姿を見せてしまっていた。恥ずかしさに身をよじりながら、「息子」の思った通りに体を操られる悠美。その光景が、悠生の興奮を倍増させた。

「また入れちゃうよ。」

「あ・・・、・・・うん・・・。」

 一瞬の逡巡のあとで、悠美は悠生の顔を見据えて、少し困ったような顔のまま、コクリと頷いた。悠生が悠美の両脇に手をついて、悠美よりも小さな体で覆いかぶさる。突き出すように曝け出された悠美の秘部にモノを入れるのは、さっきよりもずっと楽だった。温かさとザラッとした部分、ヌルッとした部分。食卓テーブルの上で初体験を済ました時よりも、いくらか感触を冷静に楽しむ余裕が出来た。

「これから・・・、毎日、・・こういうこと、・・してていいの?」

 腰を前後にスライドさせて、固くなっているペニスを悠美のナカから出したり入れたりを繰り返しながら、息継ぎをするように悠生が尋ねる。

「悠ちゃんが・・・飽きなければ・・・、ふぁっ・・・、毎日・・・、ずっと・・・よ。・・・多分。」

 悠美は「息子」と結合している時でも、考えごとをする時には両目が上を向いて、口をすぼめる癖が出る。今まで、母と思って一緒に生活してきた、美女とセックスをしている。彼女の日常を思い出させる表情が出るほど、悠生は急に現れた現実の新しい姿に改めて強い興奮を覚えた。

「あっ・・・悠ちゃんっ・・・ごめんなさい・・。ママっ・・・もうっ・・・もうっ・・・。」

 悠美の声がどんどん上ずっていく。吐息と喘ぎ声のピッチが速まり、トーンが上がる。さっきのテーブルの上での情事とは展開が違う。悠生は乏しい性の知識を脳内でひっくり返して、何が起こっているのか考えた。

(そう言えば・・、さっき、僕はイったけど、・・・「母さん」は本当にはイってない。潮を噴いただけ・・・。その「母さん」が・・・、イキそうになってるんだ。)

 初めて女の人がオルガスムに達しようとしているところを見ると、また自分のほうが先にイッてしまいそうになる。必死の思いで射精を我慢しながら、モノの出し入れは続ける。悠美をイカせるために、さらに激しく腰を動かす。慣れない悠生にとっては、なかなか大変な作業だった。それでも、こめかみを締めつけるような快感が悠生をさらに夢中にさせる。お漏らしを我慢しているような、どこか狂おしさを含んだ、気持ちよさだった。

「あっ・・・、あっ・・・もうっ・・・、悠ちゃんっ・・・・ごめんなさいっ。」

 悠美は、なぜか悠生に謝りながら、達したようだった。大きく開かれた両足がビクッ、ビクッと痙攣する。白いふくらはぎに、腱がくっきりと浮かび上がった。石鹸の泡とお湯と汗にまみれたツルツルした体が、快感に身をよじって、悶えている。悠美の体の様子は、彼女のおへその下あたりで小さく振動している、重金属のような悠生が放った粘性の塊を通じて、何となく知覚することが出来た。

 ブチュッ

 悠美が、結合したままの性器のあたりから、何か温かい液体を出した。それは悠生のオチンチンの根元のあたりにかかって、タマの裏まで垂れていった。

「はぁ・・・、悠ちゃん、ごめんね・・・ママ・・・先に、気持ちよくなりすぎちゃった。・・・はぁ、・・・駄目なママね。」

 顔に貼りついてくるウェーブのかかった栗毛色の髪を、首を横に振って払いのけながら、悠美が悠生を見つめて謝る。申し訳なさそうに、そして恥ずかしそうに、自分がイッタことを伝えてくる美人の「母」を見ると、悠生のモノはさらにたかぶった。

「いいよ、僕もすぐ・・・、ほらっ・・・ほらっ・・・。」

 悠生も射精が我慢しきれなくなる予感を得て、腰をさらに強く突き立てて振る。昇天後の悠美の体はさらに柔らかく敏感になったように、打ち震えながら悠生の乱暴なモノを受け入れる。悠生は本能的に悠美のナカの一番奥深くまでモノを押し込んだと思ったところで、精を解き放った。

 デュッ・・・・デュデュッ・・・

 力強く、射精をしたと思ったと同時に、悠生の脳が真っ白になったような立ちくらみを覚える。気絶しそうな快感。思わず上半身をブルブルッと震わせた。しばらく何も考えたくないような、気怠い心地良さに沈みこむ。射精の余韻のようだ。ボンヤリとした気持ちのまま、悠美の胸元に顔から崩れ落ちる。悠美はまだ両肘で自分のオッパイをペチペチと寄せ上げていて、悠生の鼻がなんどもオッパイにギュウギュウと包まれた。

。。。

 体を洗い流されて、バスタブに一緒に入ってからも、悠美は体や胸、舌を駆使して悠生に快感を与えようと、丹念な奉仕を続けた。しまいにはノボセてしまいそうな気になって、悠生はお風呂から上がることを提案すると、悠美は笑顔で従ってくれた。

 バスタオルで体を丁寧に拭いて、パジャマを着させてくれる悠美。体に白いバスタオルを巻きつけて、そうした作業をしている悠美の姿を見ると、また悠生はムラムラとしたものを感じた。不思議なものだ。つい今まで、全裸の彼女に両足を大きく開かせて、抱いていたのに、今は今で、バスタオルから見える彼女の胸の谷間に、また目がいってしまう。悠美がせっせと屈んで作業をするたびに、零れ落ちそうになる、丸くて白いオッパイ。それを見すぎていると、また大立ち回りが始まってしまいそうな気がして、悠生は慌てて目を逸らすことにした。

「お風呂は、ゆっくり出来ましたか? ・・私も、荷物を広げさせてもらっています。これからしばらく、ご厄介になりますので。」

 リビングに戻ると、隣の和室で荷物を広げていたスミレさんが淡々と述べる。さっきまで羽織っていた、カーディガンが和室の壁に吊るされている。今のスミレさんは、ノースリーブの上着で、荷物の整理をしていた。しなやかな肩が見える。柔らかそうだと無意識のうちに感触を想像していた。スミレさんがピタッと壁側を向いたまま、動きを止める。ゆっくりと振り返ったスミレさん。冷静な表情を崩さないまま、小さく微笑んだ。

「今日はお疲れでしょう。悠生様。早めにお休みになってください。明日から、色々と生活が変わって、忙しくなると思いますので。」

 肘のあたりをそっと触れられた感触があって、悠生は振り返る。ネグリジェに身を包んだ悠美が、ゆっくりとお辞儀をする。2階の「母」の寝室。悠生がいつも寝ている自分の部屋よりも、大きなベッドのマスターベッドルームが、ベッドメイキングも終わったようだった。

< つづく >

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