桜の園 第一話 観桜の宴

第一話 観桜の宴

 満開の桜並木に囲まれた坂道を学生達を満杯に詰め込んだスクールバスが登ってきた。バスはヨーロッパ調の重厚な装飾の校門の前でスピードを緩めると、古びたバス停の前で車体をきしませ重たげに停車した。

 開いたドアから吐き出されるように学生達が飛び出してくる。

 新学期最初の講義に遅れまいと駆け出す学生達をよそに、山田ヒロシは最後にゆっくりとバスのステップから石畳の上に降り立った。

 ヒロシは今年からこの大学に学ぶことになった新入生だった。本来ならもっと早目に登校して、指定された教室に行くべきなのだろう。なにしろこの大学は関東圏の大学としては一二を争う敷地面積の広さを誇っているのだ。毎年この季節になると道ならぬ校舍に迷う新入生の姿で溢れかえるのだと、ヒロシは事情通の友人から聞いたことがあった。

 しかし、ヒロシはたいして焦っていなかった。講義に遅れて単位を逃したところで挽回するすべは持っている。せっかくの大学生活を講義だけで潰すつもりはなかった。

 ヒロシはジャケットの右ポケットに手を入れ、小型のMPプレイヤーほどの大きさの装置があるのを確認した。この装置さえあれば心配ない。ヒロシと友人が苦心して改良した装置なのだ。

 ヒロシは新生活をもっと有意義に楽しむつもりだった。

 校門をくぐり抜けたヒロシは、広い敷地内の中央を通っている桜並木の真ん中を春の暖かな陽射しを浴びながらのんびりと歩いていった。

 本校舍に入ると、閑散としたロビーで掲示板を見上げている二人の女学生が目にとまった。見ているのが学内の案内図なので、恐らく教室の位置が分からなくなった新入生だろう。二人ともどこか初々しさの抜けきらない感じで、嬉しいことにどちらもかなりの美人だった。

 一人はロングヘアーに膝丈の白いフレアスカートに白いブラウスのいかにも上品そうなお嬢様風で、もう一人はショートカットで濃紺のシャツにジーンズ姿のクールな感じを醸し出している気の強そうなタイプだった。花にたとえれば白百合に黒薔薇というところか。二人とも髪も染めずにナチュラルメイクな所がヒロシの気に入った。

 ヒロシ笑顔を作って二人に近づいて行った。

「二人とも教室を探してるの?」

 振り向いた二人はヒロシを見て安堵の表情を浮かべた。

「ええ、教室が変更になったみたいなんですけど、ここって広いじゃないですか、わけが分かんなくなくなってしまって」

 二人を代表してクールなショートカットがはきはきとした口調で答えた。そのイントネーションは少々関西風だ。ロングヘアーの御嬢様はその背後で困ったような笑顏を浮かべて頷いた。

「教室番号は?」

 気さくな先輩を装って聞くとショートカットは手に持っていたプリントを見直した。

「ええと……西校舍3―Dです」

「ああ、それならちょうど通り道だから案内して上げるよ」

「じゃあ、お願いしてもいいですか?」

「いいとも」

 ヒロシが明るく答えると、二人は思わず微笑んだ。

「じゃあ、ついておいで」

 ヒロシが歩き出すと、二人は慌ててバッグを肩に掛け直しながらその背後に従った。

 中廊下を抜け校舍の裏側に出ると、煉瓦が敷かれた桜並木道が三方に向かって広がっている。陽射しの方向から察するに左に向かえばたぶん西校舍なのだろうが、ヒロシはそのまま直進した。

「あの……西校舍って左側じゃないんですか?」

 ショートカットが不審気に聞いてきた。その声には問い詰めるような響きがある。

「ああ、でも3―D教室ならこっちから行ったほうが近道なのさ」

「そうなんですか……」

 ショートカットはまだ納得しかねないかのように、辺りを見回した。

「でも、案内図にあった道より二、三分は早く着くんだよ」

 ヒロシはしゃあしゃあとでまかせを言う。

「長いこと在籍していてもこの近道を知らない奴も多いけどね」

「なんだか少し得したみたいね」

 御嬢様が初めて口を開いた。柔らかく澄んだ声だった。

「涼子が方向音痴だったおかげね」

「あら、香織だって地図を見ても分からなかったじゃない」

「……」

 香織と呼ばれたショートカットは絶句し、それを見たお嬢様――涼子は明るく、その名の通り涼やかに笑った。今のやり取りで二人はすっかりリラックスしたようだ。

 ヒロシは二人を人気のない所に連れ出そうと出来るだけ淋しげな場所へと移動していったが、すっかり気を許した香織と涼子は何の疑いもなく後をついてきた。

 桜並木に囲まれたテニスコートの横を過ぎると敷石が途切れ土の道になる。周りは並木というより雑木林に近い風景になっていた。さすがにこのあたりで二人は不安感に覆われ始めたようだ。さかんに辺りを見回し始めた。

「あの……」

 香織が質問しようとするのを無視して右に曲がると、端にベンチがポツンと置かれている空き地に出た。周りが茂みに囲まれているので、ここなら誰かに見られるということはないだろう。

「さあ、ついたよ」

 ヒロシの台詞に二人は訝しげに眼を瞬いた。空き地の周りを見渡しても目的地の校舍など影も形もない。

「あの……これどういうことなんです?」

 ヒロシはベンチまで歩いて腰かけると、大きな態度で足を組んだ。

「これからここが君達の教室さ」

 これまで気の良い先輩と思っていた青年の態度の豹変ぶりに、二人は戸惑うばかりだった。

「私逹をからかってるんですか?」

「まあ、そういうことになるかな」

 騙されたと分かった香織は柳眉を逆立てた。もともとクールな美しい女子大生だけにその怒り様はおとなしい猫が豹に変貌したかのような印象がある。

「涼子、行こう!」

 香織はおろおろするばかりの涼子の手を握ると、今来た道に向かって引っ張っていこうとした。

 ヒロシはすかさずポケットから装置を取りだし、二人の背中に向けた。

 スイッチを押した瞬間、二人は電気にでも触れたかのように硬直して立ち止まった。

「戻ってきて僕の前に立て」

 言われるがまま二人はベンチに腰かけているヒロシの前まで来ると立ち止まった。その眼は霞がかかったようになっており全くの無表情で、どこか遠くを見ているかのようだった。

「これからは僕が君達の御主人様だ。分かったら返事をしろ」

「はい、御主人様」

 二人は同時に抑揚のない声で返答した。

「二人ともボーイフレンドとかはいるのか?」

「いいえ」

「今まで男とつき合ったことはあるのか?」

 涼子はなく、香織は高校時代につき合いがあったと答えた。

「涼子は処女なんだな?」

「はい、御主人様」

 涼子は霞んだ瞳のままためらうことなく答えた。

「香織はどこまでいったんだ?」

「キスだけです」

「じゃあ、まだ男に抱かれていないんだな」

「はい」

 香織は遠い眼のまま答えた。

 二人とも処女とはツイているなとヒロシは思った。いますぐここで犯そうかとも考えたが、せっかくの桜のシーズンである。この美しい女子大生二人を従えて花見と洒落込むことにした。まだ午前中でもあるし、日暮れの早い春とはいえ半日は楽しめるだろう。

「香織、金は持っているな」

「はい、持ってます」

 ヒロシは香織が肩に提げていたバッグを奪い、中からレポート用紙と筆記用具をとりだした。二人にいくつか質問しながら細々と書き付けた。リストはかなりの量になり、はたしてこれだけ買いそろえることが出来るのだろうかとヒロシは少々心配になった。しかし、どうせ人の金である。ヒロシはあまり考えないことにしてメモを香織に渡した。

「よし、君はこれからこのメモに書かれているものを買えるだけ買って来い。金は全部君が出すんだ」

「はい、御主人様」

「一時間だけ待つ。よし、行け!」

 香織は踵を返すとマラソンでもするかのように駆け出した。

「涼子はこっちに来い」

 ヒロシは凉子を引き連れて、桜の木陰の芝に横座りにさせた。

 ヒロシはその横に屈み込むと、白いフレアスカートを遠慮なく捲りあげ、眩いばかりの白く艶やかな大腿を露わにした。片手を伸ばし掌でそのすべすべした心地好い感覚を軽く堪能する。

「涼子の実家は何をやっているんだ?」

「銀座で画廊を経営しています」

 ヒロシの思ったとおり涼子は御嬢様だった。なんとなく品が良さそうなのは親が芸術にかかわりある仕事をしているせいなのだろうか。

 涼子はヒロシのされるがまま、すらりとした太腿を触られつづけていた。上品な美しい横顏に流れる長い黒髮に、舞い落ちたいくつかの桜の花びらがちょっとしたアクセントを与えている。霞んだ瞳でどこか遠くの一点を見つめているその姿は一幅の名画のようだった。

「涼子。君はこれから何があっても動くな」

「はい、御主人様」

 ヒロシは身体を横たえ、涼子のそろえて並べた大腿に後頭部を乗せた。枕にするには少々高すぎたが、美女の温もりは格別だった。頭を横に向けると、スカートの影から純白のショーツが愛らしい三角形の顔を覗かせている。

「お休み、涼子」

 ヒロシは軽く首を曲げ、ショーツ上から下腹部に軽いキスを与えると、頬を大腿に預けたまま目を閉じた。美女の爽やかで甘ったるい匂いに包まれ、すべやかな大腿の温もりを頬に感じながら、舞い散る桜の花びらの下でヒロシはいつの間にか寝入っていた。

 誰かが駆けてくる足音で目が覚めた。

 目をこすりながら上体を起こすと、大荷物を抱えた香織が立っていた。腕時計を見るとちょうど一時間経っていた。

 香織はビール缶やつまみの入ったコンビニ袋のほか、新しく買った大きな紙バッグやリュック、クーラーボックスを持っていた。総て中身が詰まっているので女の細腕にとって相当な大荷物だったろう。肩で息をしている香織はの額にはうっすらと汗さえ浮かべている。しかし、その表情は霞がかかったままの無表情で苦痛の色はみじんもなかった。

 ヒロシは立ち上がると香織の前に立ち、右手を伸ばして乳房を揉みこんだ。思ったより大きな胸の感触にヒロシは思わず微笑んだ。

「ご苦労さん。金は足りたか?」

「いいえ」

「じゃあ、どうやってこれだけの物を買いそろえたんだ?」

「カードを使いました」

「へえ、限度額はいくらなんだ?」

 答えを聞いてヒロシは驚いた。とうてい学生の身分で扱える額ではない。

「香織のおやじは何者なんだ?!」

「父は大阪で会社の社長をやっています」

 会社名を聞くと誰でも知っている大企業だった。確かオーナー企業で企業収益も国内トップクラスだったと新聞で読んだような気がする。

「なるほどね、香織もいいとこのお嬢さんだったのか……」

 嬉しくなったヒロシは香織の胸にひと揉みくれてから離れると、形の良い太腿を剥き出しにしたままの姿で横座りしている涼子の腕を取って立たせた。

 スカートのお尻に付いた埃を手で払ってやりながら命令する。

「涼子、交替だ。香織の荷物はお前が持て」

「はい、御主人様」

 香織から荷物を受け取り身につけた涼子の姿はちょっと異様だった。白いブラウスに白いフレアスカート姿の可憐な御嬢様が、両手荷物の他にリュックを背負い、肩からクーラーボックスまで提げている。まるでニュース映像で見た戦時中の買い出し姿のようだった。

「涼子、重いか?」

「はい、御主人様」

「でも絶対に持っている物を落としてはダメだ。それから僕がいいというまで途中で休むな」

「はい、御主人様」

 ヒロシは無表情で立っている香織に向き直った。

「香織、君は僕を背負って行くんだ」

「はい、御主人様」

 ヒロシは香織を屈ませるとその背中に飛び乗った。上体を曲げて香織の肩越しに両手を伸ばし、掌ですっぽりと両の乳房を包み込む。

「いいか香織。僕が右のオッパイを掴んだら右に、左のオッパイを掴んだら左に曲がれ。両方を同時に掴んだときには止まるんだ。立ち止まった状態から両方のオッパイを掴んだら、今度は進めだ。それから、お尻を叩かれたらスピードアップだ。分かったら繰り返して言ってごらん」

「はい。香織は御主人様に右のオッパイを掴まれたら右に、左のオッパイを掴まれたら左に曲がります。両方を同時に掴まれたときには止まります。立ち止まった状態から両方のオッパイを掴まれたら、今度は進みます。そしてお尻を叩かれたらスピードアップします」

「よし、それじゃあ出発!」

 ヒロシはそう言うと香織の両の乳房を同時に掴んでぐりぐりと揉み込んだ。

 だらだらとつづく坂道を、男を背負った若い女が喘ぎながら登り、その後ろから、もう一人の女が華奢な体中に荷物をくくりつけて、よろよろとついてゆく。男を背負った若い女は額を汗でいっぱいにし、その男に胸を揉みしだかれながら叱咤されていた。

 ヒロシは大学の裏山へと向かっていた。たいして高い山ではないが、道も緩やかだが景色も良く、さらに桜の季節とあって絶好のハイキングコースだった。今日は平日とあって訪れる人もなく、異様な一行を眼にする者はいなかった。

「ほら、がんばれ。もう少しだぞ」

 ヒロシは、香織の歩みが少しでものろくなると右手を伸ばし、彼女の丸く張った形の良いお尻を平手で叩きスピードアップを要求した。その度に香織は苦しげな息づかいで足を早めた。

 大荷物を運んでいるため遅れがちになる涼子をわざと引き離し、その都度、香織の両乳房を同時に掴んで立ち止まらせ、やわやわと揉みながら涼子が追いつくのを待つ。

 ヒロシは香織の乳房を揉むのが楽しくてしようがなくなっていた。知的でクールな美しい女子大生が乳房を揉むという淫靡な指示に文句を言わず、まるで従順な仔馬のように忠実に従っている。指に力を込めて握りつぶしても、香織は美しい眉を軽く歪ませるだけで、ほとんど無表情のまま決して抵抗する素振りは見せない。

 道端に見事に咲いた桜の木々を眺めようと寄り道するため、片方の乳房を握り締めて方向を変えたり、両の乳房を同時に鷲掴みにしたり離したりを小刻みに繰り返し、香織を止まらせたり進ませたりさせて遊んでみた。また、立ち止まった後、左の乳房だけを揉み続けると、香織はその場で左にぐるぐると回転した。ヒロシは濃紺のシャツ越しに跳ね返してくるような弾力をたっぷりと掌で味わいながら山歩きを心ゆくまで楽しんだ。

 小一時間も経った頃、渓流沿いに崖に囲まれた場所があるのを見つけた。香織の体力が限界に近いということもあったので、ヒロシはここでひと休みすることにした。

 香織の乳房を揉みながら緩やかな坂を下って渓流の側まで誘導し、ハイキングコースから見えない平坦な場所にたどり着いたところで両の乳房を握り絞った。

「どう、どう」

 ヒロシは馬にするような掛け声を与えて香織を立ち止まらせ、ひょいと飛び降りた。

 五分ほど遅れて涼子が到着したので、その荷物を降させ、二人に命じて休憩場所を設けさせた。

 二人がシートなどを敷いている間、ヒロシは辺りの偵察に出かけた。

 歩いてすぐの所に満開の桜の木々に覆われた二メートルほどの落差の小さな滝があった。茂みと崖に囲まれ奧まった場所にあるのでハイキングコースから覗かれる心配もない。周囲を桃色に染めあげたちょっとした秘密の空間だった。

 ここにするか……。

 ヒロシは二人に命じて、場所を移動させた。

 設営が終わり腕時計を見ると、もう十二時を回っていた。

「お嬢様方、そろそろ昼食にしましょうか」

 ヒロシは冗談めかして言うと、レモンイエローのシートの上に腰かけ胡座をかいた。しかし、下が岩場なのでゴツゴツした感じがするのが気に障った。

 ヒロシは立ち上がり対策を考えると、香織にシートの上に俯せに寝るように命じた。

 寝転がった香織を跨ぎ、ブルージーンズを盛り上げる丸く張り出した尻に腰かける。若い肉のクッションがきいてなかなか心地好い。ただ背もたれがないのが気にかかった。

 今度は仰向けになって脚を投げ出して坐るように命じた。そうしておいて上体を起させ、脇に垂らした両腕を背中側の地面に伸ばし、掌で上半身を支えるように香織のポーズを調整した。

 もう一度腰かけてみる。太腿の上に尻を降し、背もたれると、香織の胸の膨らみがヒロシの背中をくすぐった。しかし、まだ不満が残った。これでは香織の表情が全く見えない。

 ヒロシは再び腰を上げると、彫像のように固まっている香織を見ながら考え込んだ。

「よし。これでいこう」

 イメージの固まったヒロシはそう言うと、涼子にリュックを持ってこさせ中から数本のロープを取りだした。

 香織を仰向けに寝かせ、両膝をそろえて立たせる。ロープで香織の右手首と右足首を括りつけ、左手首と左足首も同じように括る。このままでは膝が開き気味になるので、両脚を膨ら脛の上あたりにロープを巻きつけた。少々窮屈で痛々しい姿だが催眠状態の香織が文句を言うわけもない。これで立派なアウトドア用人間椅子の出来上がりである。

 ヒロシは香織の胴体を跨ぐと腹の上に腰を下ろし、香織の立てた膝に背もたれた。香織の程よく脂肪の乗った腹は適度に柔らかく、肋の上にさえ尻を乗せなければクッションとしてはまあまあだった。背もたれにした太腿の感触はさきほどの胸の弾み具合に比べれば劣るが、ヒロシは充分に満足していた。

 何より香織の表情が見えるのがいい。自分の膝越しに覗いてみると、霞んだ瞳でどこか遠くの青空を見上げている香織の美しい顔が見えた。

 知的な美人女子大生を椅子代わりに組敷く快感は、これまでヒロシが使用してきた椅子の比ではなかった。自分のアイディアの完成に嬉しくなったヒロシは腰を曲げ、香織の乳房に両手を置いてゆっくりと揉み込んでみる。

「どうだ香織、椅子になった感想は。僕の役に立てて嬉しいだろう?」

「はい、御主人様のお役に立てて嬉しいです」

 香織は無表情のまま答えた。ヒロシは満足気に微笑むと凉子を呼んだ。

「涼子、飲み物と食べ物を用意しろ。一人分でいいぞ」

 涼子は命ぜられるままシートの上にいくつかの飲食物を並べた。

 ヒロシは人間椅子となった香織の上でふんぞり返ったまま、横に正座させた涼子に箸を持たせ食事を口もとまで運ばせて食事をとった。

 充分に腹がいっぱいになったところで、涼子にクーラーボックスから缶ビールを持ってこさせた。

 タブを開け口に含んで半分ほど一気に飲む。冷えた液体が喉元を駆け降りて行く感覚が心地好い。

「涼子、肩を揉め」

 涼子はヒロシの背後に跪き、香織の太腿にゆったりと背もたれたヒロシの肩を揉み始めた。

「もっと胸を近づけろ。そうそう、必ず僕の頭に触れるようにだ」

 屈んだ涼子は豊に張りだした胸をヒロシに擦り寄せた。涼子が肩を揉むため両手に力を込める度に、柔らかな弾力がヒロシの後頭部に押しつけられる。

 ヒロシは美女のマッサージを受けながら空を見上げた。桜の木々に縁どられた抜けるような青空を二羽の子鳥がもつれ合いながら横切って行った。

 清楚な美女の淫靡なマッサージを受けながらいつしかヒロシは微睡(まどろ)み始めた。

 岩魚が跳ねた水音でヒロシは我に返った。

 ついうとうととしてしまったのは、暖かな春の木漏れ日の中にいたからだけではなく、二人の美人女子大生の献身的奉仕のせいもあった。

 ヒロシがうたた寝していた間中、涼子は胸をヒロシの頭に押しつけながら、肩をマッサージし続けていたし、香織は微動だにせず人間椅子としての役目をちゃんと果たしていた。

「涼子、もういいぞ」

 涼子の奉仕を中止させ、ヒロシは香織の腹の上から立ち上がった。

「涼子、香織のロープを外してやれ」

 涼子は香織の脇に跪き、苦労してロープを外しはじめた。

 その間にヒロシは辺りを探し回り、三十センチほどの長さの枯れ枝を見つけて拾い上げた。

「全員集合!」

 声をかけると二人の美しい女子大生はヒロシの前に並んだ。

「ひと休みしたことだし、次は腹ごなしに運動といきますか」

 ヒロシは手にした枯れ枝を岸辺に向かって力いっぱい放り投げた。

「香織、取ってこい」

 命令された香織は弾かれたように駆け出した。その背中に向かってヒロシが指示を与える。

「ただし手を使うな。口でくわえて持って来るんだ」

 枯れ枝まで行った香織は跪くと上体を曲げ枯れ枝をくわえ、素早く立ち上がり駆け戻ってきた。

「よし、ここに跪け」

 戻ってきた香織はヒロシが指さした地面に跪いた。

「そうしたら、犬のように両手を前に出せ」

 香織は犬がチンチンするかのようなポーズを取った。

「それでよし」

 満足気に頷いたヒロシは香織の頭を撫で、朱唇から枯れ枝を受け取った。

「次は涼子だ」

 そう言って枯れ枝を放り投げる。

「よし、行け!」

 涼子は白いフレアスカートをはためかせながら駆け出した。頼りない足どりに見えるのは、テニスシューズを履いた香織と違って、白い編んだサンダル風の靴のせいだろう。

 涼子は香織と同じように枯れ枝を口にくわえ戻ってくると、ヒロシの前で跪いた。

 ヒロシは次々と枯れ枝を投げては、二人を交互に走らせる。ヒロシは美しい女子大生を意のままに従わせる快感に酔いしれていた。

 数回繰り返したところでパターンを変えた。

「今度は同時にスタートだ。勝った方には御褒美、負けた方には罰ゲームがあるぞ」

 枯れ枝を放り投げ、「行け!」と命令した。

 二人は同時に駆け出したが、勝ったのは香織だった。やはり涼子には分が悪い勝負だったようだ。

 駆け戻り跪いた香織の口から枯れ枝を受け取ったころ、手持ちぶさたの涼子がやっと戻ってきた。

「賞罰という言葉があるくらいだから、まずは御褒美の方からいきますか。香織、そのまま両腕を背中に回せ」

 跪いたままの香織が両腕を背中側に回したところで、ヒロシはズボンのチャックを降して、期待感で膨れ上がった一物を引っぱり出した。

「これにキスさせてあげよう。ほら、やってごらん」

 ヒロシが屹立した怒張を近づけると、香織は唇をすぼめて顔を前に傾けた。

 香織の艷やかな唇が先端に触れたとき、ヒロシは言いしれない快感が下腹部から込み上げてくるのを感じた。

「目を閉じろ。そしてそのまま唇でくるむみこむんだ。口を開けて歯をたてるな」

 香織は長い睫毛を閉じると、朱唇を割って亀頭をくるみ込んだ。ぬるりとした暖かさが敏感な部分を包み込む感触は最高だった。

「今度は舌を使って舐めてみろ」

 柔らかな舌先で亀頭の先を舐めあげられた瞬間、ヒロシの背中を快感が電流のように駆け抜けた。慌てて気を引き締めなければ危うく暴発してしまうところだった。

「ストップ! ストップ!」

 一時奉仕を中止させ、一物を引き抜いた。せっかくの美しい女子大生のフェラチオを短時間で終わらせたくはなかった。

 ヒロシは一度大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、再び跪いている香織に矛先を向けた。

「いいか、何があっても絶対に歯をたてるな。それから吐き出そうとするなよ」

「はい、御主人様」

 目を閉じたまま答えた香織の頭に両手をかけて、柔らかな唇に先端をあてがうと、そのままぐいっと腰を突き出した。

 朱唇を割って呑み込ませた怒張を押進め、喉奧まで到達させた。

「いいか香織、これがお前の御主人様の大切な宝物だ。今回は特別に御褒美としてしゃぶらせてやっているんだから有難く思え」

 怒張を口いっぱいに含んだままで返事の出来ない香織は、代わりに軽く頭を上下させた。

「それじゃあ行くぞ。涼子も今後の参考のためにしっかりと見ておけよ」

「はい、御主人様」

 答えた涼子の無表情な顔に微笑みかけると、ヒロシはゆっくりと抜き差しを開始した。

 亀頭の笠が唇の端に引っかかるくらいまで後退し、今度は喉の奥まで届けとばかりに前進した。香織の頭を前後に揺すりながら、同時に自分の腰をシンクロさせる。乙女の口腔の粘膜のぬめぬめした感触と、温かい息づかいを分身に感じながら見下ろすと、健康的な赤い唇を赤黒い怒張で嘖まれている香織の姿が見えた。整った顔だちだけに、その淫らな行為は実にアンバランスな感じがする。

 普段の香織はみるからに気の強そうな感じがしたので、たとえ親密になっていたとしても、そう簡単にフェラチオなどしてはくれないだろう。しかし、あの装置のお陰で、この知性に満ちあふれた美しい女子大生に命令するままこんな淫らなことを強要できるのだ。

 ヒロシは装置の力に感謝しながらピッチを早めていった。

 柔らかな舌の上を何度も前後に滑走させているうちに、徐々に限界点が近づいてくるのが分かった。

 ヒロシは香織のさらさらした髮に指を絡ませると、その頭を振って烈しくこね回し力強く大きなストロークで往復する。

 数回目でついに限界に達したヒロシは怒張を思いきり突き出し、根元まで口腔に詰め込むと、香織の頭をがっしりと固定した。

「いいか香織、一滴残さず飲み込むんだぞ」

 そう言い放ち汚濁の液体を喉奧に解き放つ。怒張は白濁した精液をまき散らしながら、陸揚げされたばかりの鮮魚のようにビクビクと乙女の口腔中を跳ね回った。

 脈動が収まり最後の一滴まで注ぎ終わってから、やっと引き抜く。

「飲め」

 命令すると軽くむせていた香織は目を閉じたままごくりと音を立てて飲み込んだ。

「口を開けて舌を出せ」

 言われた通りに香織が舌を差し出す。

「よし、全部飲んだようだね。これはおまけだ」

 ヒロシは萎えかかった一物の先を香織の舌に乗せ、尿道に残った精液を指で一物を圧迫して絞りだす。滴り落とした白い汚濁の上に一片の桜の花びらが舞い落ちてきた。

「ちょうどいいや。ほら、それも飲み込むんだ。ちょっと違うが花見酒ってところだな」

 香織は舌をしまうと唇を閉じ、そのまま躊躇うことなく男の欲望の残滓を花びらとともに飲み下した。

< つづく >

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