幕間1
夢を、見た。
翠色の、夢だ。
夢の中、『彼』が私に会いに来てくれた。
ただそれだけで、夢の中の私は幸せだった。
「だけど……」
夢の内容を思い出し、私は憂鬱になる。
彼に、あんな姿を見せてしまった。
夢の中で“まで”、あんな、汚らしい私を。
『何を今更……』
心の中、そんなふうに呟く、自分がいる。
『何を今更、そんなこと言っているの?』
…そう、その声は、正しい。
こんなにもよごれている、きたならしい私。
その私が、たとえ夢の中でとは言え、綺麗になれるはずなんて、無いのに。
夢の中で私がした、汚らわしい行為。
彼は、私のことを、どう思っただろう?
侮蔑か、軽蔑か。あるいは、それ以外の何か、嫌悪と言った感情か。
『何を今更…』
再び、その声が聞こえる。
いつだって、その言葉は正しい。
そう、私は、望んでいたのだ。
彼の足元にひざまづき、彼にねじ伏せられることを。
彼のものに奉仕し、彼のもので汚されることを……。
夢の中、確かに私は、その穢れた、浅ましい行為に喜びを感じていたのだ。
「ミノル、さん……」
彼の名をつぶやく。
それだけの行為が、こんなにも愛おしい。
『せめて、夢の中だけでも…』
胸元にしまった、小さな、鍵。
私はその鍵を、両手でぎゅっと握りしめた……。
< 幕間 1 了 >