姉はツンデレメイド奴隷 前編

~前編~

 何というか。
 
 思春期を迎えた男として、コレはどうだろう? という目覚め方をしてしまった。
 至高の朝の対極。
 例えばメイドさんがフェラチオで起こしてくれるとか、味噌汁の具の大根を切り刻むトントントンというシチュエーションの真逆。
 そこは乱雑に散らかった僕の部屋ではない。
 家族共用の居間。来月にあるテスト対策のため勉強をしていた。
 自分の部屋でしなかったのは、目の前のパソコンで遊んでしまって集中できないからという単純な理由だ。
 でも居間でもうまくいかず、現実逃避のためにいつの間にか本を読んでいて、そのまま眠ってしまったらしい。
 目覚めた僕の頭の近くに、小説の挿絵ページが見開きの状態で置かれていた。

 美少女文庫刊「姉はツンデレメイド奴隷」

 内容は中○生ほどの主人公と意地っ張りの実姉が織り成すご都合主義なエロ小説で、作者の技量ははっきり言って糞で内容も案の定脳みそが足りない展開だったが、それでもなお、僕のお気に入りだった。
 なんといっても絵が良い。ペニスの描写が非常にグロテスクで、とろとろになった膣内に抜き差ししている絵柄がなんともエロかった。

 で。

 コタツに突っ伏して眠っていた僕の傍らに、そんな小説のそんなページがあったわけで。
 場所が居間だから、当然朝になれば家族がそこに来るわけで。

「あらおはよう、卓巳……って何コレ?」

 姉さんに、見られた。
 声をかけられた僕は、寝ぼけ眼をこすりこすり、欠伸をしながら目を覚ました。殺意に似た視線を感じて見上げると、そこには僕を見下ろす姉さんの般若の面。

 ドウシチャッタンデスカ……? 

 姉さんがあごをしゃくった。その先には見開きのエロ絵。
 ご丁寧に絵には吹き出しがあって、「お姉ちゃんのアソコ、気持ち良い?」なんて聞いていたりして。
 少しの間、時が止まった。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 そして時は、動き出す。
 残酷に淡々と。

「きゃー!」
「こっちが叫びたいわよバカ!」

 ――臨時ニュースです。
 本日朝方に起きた大規模テロのため、姉市場第一部で弟関連の株が大暴落しました。全銘柄ストップ安です。

 ……というわけで、朝っぱらから説教半時間コース。学校がなかったらもっと長かっただろう。
 それに加えて本を没収された上に今日はお弁当なし、という厳しいご沙汰。しかも今月は財政状況がピンチなので購買で焼きそばパン260円税込みを買おうかそれとも昼抜きにするかとまで悩まされる始末。
 厄日だ。
 と思ったら、捨てる姉あれば拾う姉がいらっしゃった。それは僕のお姉ちゃん。

 混乱しないように説明すると、僕には2人の姉がいる。
 2つ上の優しい杏奈”お姉ちゃん”と、4つ上の厳しい柚子”姉さん”。僕は家庭内カースト制度の末端構成員、つまり末っ子。
 ちなみに両親は仕事の都合で揃って海外に行っていて、毎月決まった額を仕送りしてくれている。
 だから今現在は姉妹と僕との3人暮らし。

 僕らの通う学校は中高一貫性なので、一緒の敷地にある。僕と杏奈お姉ちゃんは、一緒に登校するのが日課だった。
 友達にはシスコンとか言われるが、実際そうかもしれない。
 お姉ちゃんは優しくて綺麗で、学校の男子の多くの憧れの的だった。
 もっとも柚子姉さんの方も美人なので人気はかなり高い。何でか僕には冷たいけれど。

「あはは、災難だったねぇ、卓巳」

 学校へ向かう道すがら。
 お姉ちゃんが、指でぷにぷにと僕の頬をつっついた。朝方にこしらえたばかりの傷口を笑ってえぐるのはやめてほしいと思う。僕は怒って頭を振ると、お姉ちゃんはすぐに手を引っ込めた。

「ごめんね~。はい、これあげる」

 お姉ちゃんがかばんを開いて、袋を取り出した。口から銀色のものが覗き見えている。遠足でたまに見かけるアレ。アルミホイルに包まれたおにぎり。

「こういうこともあろうかと急いで作ったの。料理苦手だけどこれだけは作れるから。あ、もし口に合わなかったら購買で何か買いなさいな。お小遣いあげるよ」

 そう言って夏目漱石先生をくれた。にぱっと僕に100万ドル相当の笑顔を振りまいて。うう。身内の情が骨の髄、もとい空腹を予想していた胃にしみる。嗚呼、一生の恩に着ますお姉さま。

「ありがとうお姉ちゃん」
「ん。柚子姉さんには内緒だよ~」
「うん」

 僕は素直にお礼を言い、お姉ちゃんがそんな僕の頭を優しく撫でてくれた。

***

 放課後。
 帰宅部の僕はまっすぐ家に帰る。
 杏奈お姉ちゃんは生徒会の副会長の引継ぎ業務があるとのことで、今日の帰りは別行動。
 まったりとテレビを見て、ゲームをして、思い出したようにテスト勉強をした。
 そして柚子姉さんが作ったご飯を食べて、お風呂に入ろうとズボンを脱いだところで思い出した。
 ポケットから取り出した財布の中身に。
 お金を返してなかった。

 というわけでお風呂に入った後に、お姉ちゃんの部屋に行った。ノック2回で、中に通された。
 お姉ちゃんの部屋には、でん、とベッドの上に大きな熊のぬいぐるみが置いてある。
 本棚にはたくさんの少女漫画と一緒に、いわゆる801小説群が何の臆面もなく並ぶ。
 小奇麗に片付けられた机の上には写真立てが飾られていて、中にはお姉ちゃんと、中学に入学したばかりの頃の僕の姿が写っていた。

「ん、どうしたの~? 今日は寒いからお姉ちゃんに添い寝して欲しいとか?」
「いやそれ、中学生になったときに姉さんから禁止令が出たでしょ。じゃなくて、朝にもらったお金を返そうと思って」
「ああ、それ。いいよあげる。埋め合わせしたいなら、そのうちデートしてくれればいいから♪」
「うん……じゃない! いやここで貰っちゃうと流石に人間としてどうかと思うからさ」

 そう付け加えると、お姉ちゃんは首を傾げつつも受け取ってくれた。やれやれ、コレで肩の荷が下りた。

「別にいいのに。あ、そうだ忘れてた。これ、姉さんがゴミ箱に捨てたの拾ったといたよ。卓巳のでしょ?」
「ぐはぁ!」

 ほわわーんとした笑顔で差し出された本。それを見て、僕はのけぞった。
 きっと良かれと思ってしてくれたんだろうけど逆効果。
 杏奈お姉ちゃんが持っていたのは、朝方僕がおっぴろげて姉さんにしかられた元凶。

 姉はツンデレメイド奴隷……

 ええと、その。
 泣いていいでしょうか?

「柚子姉さんは生真面目だから気をつけないとダメだよ」
「お姉ちゃんはなんとも思わないの?」
「私はブラコンで理解のあるお姉ちゃんだから。ずっと何があっても卓巳の味方だよ」

 どこまで本気なのか分からないところがおいし……じゃない、恐ろしい。きっと本心は混じり気なし100%。ああダメだ、僕の表現もどこか壊れている。テンションがやばい。思わずお姉ちゃんに抱きついて、その高○生1年生のわりにはけしからんくらいに豊満な胸にすりすりすりすりしてみたくなってきてしまう。

「ごほん」

 危険なところに行く前に、僕は咳払いして妄想を断ち切った。現実世界に戻ってみると、目の前に我が恥部、昨夜ズリネタに使った小説が控えている。ぎぎぎぎぃと油の切れたロボットのような動作で本を受け取った。恥ずかしさに身体が燃えそうだった。

「卓巳、こういうのに興味があるの?」
「僕も男だから……」
「そう」

 お姉ちゃんが短くうなずいた。嫌われたかな、と思ったけど表情を見るとそういう感じでもない。長い付き合いで、不機嫌なときにどんな顔をするかくらいは見れば分かる。

「お姉ちゃんの秘蔵の本を貸してあげようか?」
「801は勘弁して欲しいです」
「そういうのじゃないよ、もう。アレは友達と話をあわせるための参照文献」
「いやそれは明らかに嘘だと思うけど。え、というか、お姉ちゃんもこういうのを読むってこと?」
「姉弟モノはたまーにチェックしてるね~」

 間延びした声でそうおっしゃる。恐るべし杏奈お姉ちゃん……。

「コレなんていいと思うよ。挿絵はないけどツボを心得てて、文がすっごく上手いから。シチュエーションも全部、お互い同意の上だし」

 そう言って、僕に黒表紙の本を渡してくれた。
 タイトルは、美姉妹と童貞少年……。

「え、ええと。……ありがとう」

 思わず受け取ってしまった。まいった。どうしろというのだろう、これを。
 本から目を離して、お姉ちゃんの方を見るとそこにはにこにことした善意の笑顔。
 仕方なく僕は、その場を引き下がって。
 仕方なく僕は、自分の部屋に戻ってから、なんとなしに本をめくった。
 ええ、本当は興味がありましたとも。

 読み始めはそんなかなり軽い気持ちだった。けれど、気づくと引き込まれていた。
 それは不思議な本だった。
 途中までは、姉と弟が禁断の世界に足を踏み入れるという、文章のクオリティは高いけれど普通のエロ小説。
 けれど姉と弟が一線を越えたところを境に、白紙のページが延々と続いていた。
 まるで、つくりかけの同人誌みたいに。

 そのとき、僕はまったく予想していない。
 これが原因で、あの淫靡な出来事が始まるということを。
 ともあれ、日常を狂わすスイッチが変なところに潜んでいて。
 僕はそれを、知らない間に踏んでいた。

***

 股間のあたりがすごく気持ちよかった。
 口内性行、尺八、フェラチオ……まぁ呼び方なんてどうでもいいけれど。
 若い女の人が、さらに若い僕のペニスを口にくわえていた。

「すごい、こんなに大きくなるんだ」

 女の人が嬉しそうに言った。聞き覚えがある声だけど、頭にもやがかかったように思い出せない。誰だろう、たぶんよく知っている人のはずなのに。
 柔らかい口腔の暖かさが僕のペニスを包んでいる。波のようにうねり、強く弱く刺激してくれる。舌を動かすたびに、ぴちゃぴちゃという湿った音が聞こえて――ああ、すごく……気持ちいい。
 
「入れたい、卓也?」

 僕のペニスから口を離して、そういって彼女は、腰を上げて。
 くちゅくちゅに蕩けたアソコを、自分で広げて見せた。
 はぁぁ、と白く曇るほどの熱い吐息を吐いて、興奮に火照った身体から、甘い女の汗の匂いをただよわせて。
 魔性の笑みを浮かべて、僕にささやく。女の人の声が耳をくすぐり、こそばゆくもゾクゾクとしたものが僕の背中を走った。

「私のココに、入れたくない?」
 
 もちろん。
 僕はそう応えようとする。でも、なんでか声が出なかった。口を開くことはできる。でも舌が動かない。難聴者のためのテレビ手話のようにぱくぱくと動かし、もごもごと意味のない音しかでない。
 声で答えるのをあきらめて、代わりに、うなずこうとした。でもそうすると、今度は首が動かせない。
 泣きたくなった。
 股間では僕のペニスが、欲求不満を訴えている。フェラチオは気持ちよかったけれど、射精できるほどのものではない。出したかった。

「応えないってことは、入れたくないの?」

 違う! 入れたい!
 ああ、これは現実じゃないんだ。妄想とか夢とかそういう類。だから肝心なところで寸止めになってしまう。入れたかった。あの気持ちよさそうな穴に。入れて突き上げてうねる膣に圧迫されて射精して種付けして孕ませたい。気持ちいいことしたい……!

「卓也、いいことを教えてあげる」

 女の人が、僕の胸をくすぐる。ちゅっ、と僕の乳首にキスをした。腰がむずむずする。背骨のあたりに甘いうずきが這い回る。
 ああ、愛撫なんてどうでもいいから入れさせて欲しい。でも僕の懇願の視線が届かないのか、届いていも無視しているのか、女の人は何もしてくれず、ただ妖しく微笑んでいるだけだった。

「素直になりなさい。ここで卓也がしたことは、現実に繋がってるの。現実でもしたいって本当に思ったことじゃないと、ここではできないのよ?」

 思ってる。思ってるさ!
 犯したいんだ、僕は、お姉ちゃんも、姉さんも!
 いつでも僕の味方で優しくて綺麗なおねえちゃんと、あの何かにつけお小言を垂れて厳しくて僕にオナニーの権利を認めてくれない姉さんを、それでも好きで好きでたまらない姉さん達を、犯して、僕だけのモノにしたいんだ!

「あははは、良く出来ました♪ 2人ともなんて、卓也は欲張りさんね」

 女の人は、僕の頭を撫でた。ほっそりとした指が、僕のごわごわとした髪を梳くように動く。この感触にも覚えがあった。それに女の人の声も……
 ああ、そうだ。
 お姉ちゃんだ。
 何で今まで気づかなかったんだろう?

 女の人――杏奈お姉ちゃんが、腰を浮かせた。仰向けに僕の腰の上、天井を指しているペニスにまたがるように。
 お姉ちゃんとセックスする……ぼうっとした頭の片隅で、倫理の鐘がキンコンキンコン鳴っていた。でも無視する。どうせこれは夢だから、気持ちよければ何だっていい。この享楽を食らい尽くしたい。
 このどうしようもなくたぎった僕のペニスを、ヒクヒクと震えたお姉ちゃんのあそこに突っ込んで、かき回したかった。

「素直になれたご褒美に、お姉ちゃんの処女をあげるね」

 ゆっくりと、腰を下ろす。
 お待ちかねの肉の感触が、僕を包み込んでくる。
 僕のペニスがずぷぷ、と入っていく。お姉ちゃんの未使用の膣肉を掻き分けて、処女膜の抵抗を途中で感じてもかまわずに蹂躙する。
 ああ……、と僕は熱い息を吐いた。そして、この暖かくうねる膣の感覚を熱心にむさぼる。ずっと待ち焦がれた餌を与えられた子犬のように。
 すごかった。
 くにゅくにゅしていて暖かくうねって、ペニスが柔らかく包み込まれている。言ってる自分も何が何だかよくわからない。
 びくびくって僕のペニスが、お姉ちゃんのナカで震えてる。射精はまだだけど、きっと先走りがお姉ちゃんの中にあふれてきてる。
 繋がったところを見ると、ぐじゅぐじゅになっていた。お姉ちゃんの膣液に、うっすらと赤いものが混じっている。血だった。

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 僕はびっくりして聞いた。処女は血を流すなんてエロゲーや小説だったら定番だけれど、実際に見ると流石に動揺する。
 案の定、お姉ちゃんはちょっと辛そうな顔をしていた。無理に笑顔を見せようとしている。その表情が硬くて、逆に痛々しい。
 でも一方で、お姉ちゃんの引きつった笑顔を見て、ゾクゾクとした快感が僕の背中を駆け巡る。
 僕は今、好きな相手を虐めている。しかもそれは、血の繋がった姉だった。

「ん。気にしないで、卓也。そんなに痛くないから……ん、っ…」

 お姉ちゃんが少し口端をひきつらせた。ああ、ごめん。僕は内心で謝るけど抜いてなんて言えない……だって、これ、すごくキモチイイ……!
 罪悪感と背徳感まじりの快楽がごちゃまぜになって、くらくらした。
 仰向けになった僕の腰の上に、お姉ちゃんの腰が乗っている。お互いの大切なところが繋がってる。
 お姉ちゃんを押しのけないと抜けないから。そういう風に自分をごまかして、僕はそのまま膣肉の感触を味わった。
 僕のペニスを下腹に刺したまま、お姉ちゃんが、んっしょと腰を動かす。新しい刺激に僕のペニスが脈打つ。

「そんなにしたらすぐにでちゃうよ、お姉ちゃんっ」
「いいんだよ、卓也。好きなように集中して。お姉ちゃんの中にたっぷり出していいのよ」
「でもっ……」
「大丈夫よ、これは夢だから。まだ現実にはなってないわ……」

 そうだ。
 まだ、現実じゃない。
 だから。
 何をしたっていい。
 僕は理性を手放して、お姉ちゃんの蜜壷を突き上げた。

「あんっ!」

 お姉ちゃんが声をあげる。それは快楽ではなく、苦痛が混じった声。でもかまわない。これは現実ではないから。
 好きなように動く。雄が雌を射精して孕ませるための、獣の動き。
 ぐじゅぐじゅと音がした。膣から分泌したお姉ちゃんの体液と、いくらか漏れた僕の精液とがかき混ぜられている。
 お姉ちゃんが僕の胸に両手を置いて、腰をくねらせた。
 それは痛み混じりの拙い動きだったけれど、童貞だった僕には十分な刺激だった。
 片手を伸ばす。僕の動きを察して、お姉ちゃんがその手を自分の胸に誘導してくれた。
 柔らかい。夢中で揉み、頂の先の桜色をきゅっきゅっと指でこする。

「ん……」

 お姉ちゃんがぴく、と身をすくませる。おとがいをそらして。
 感じてくれている。一瞬合った視線の先で、瞳が黒く潤んでいた。
 ああ、出る。
 股間がはちきれそうだった。
 もう少し、もうすこし我慢して、この肉のこすれ合いを味わいたいけどもう限界が近い。

 好きよ……

 お姉ちゃんの唇が、そう動いた。
 僕は力を抜いた。我慢しなくていいと、お姉ちゃんに言われたとおりに。
 出すよ、と目で合図する。お姉ちゃんがそれを察して、頷く。抜いてとは言われなかった。
 射精した。

 どくっ、どくっ、どくっ、どくっ。

 何度も射精した。頭が真っ白になるくらいの快楽。
 お姉ちゃんの膣がうねって、僕の白濁を子宮の奥へいざなう。
 一滴もこぼさないように、弟の精液で妊娠するように。

「ふふふ……いっぱい出たね……」

 お姉ちゃんが僕の頭を撫でる。いやらしさのない動作で。姉が弟に、あるいは母親が子供にするように。
 それからお姉ちゃんは、痛みに顔をしかめながらも僕のペニスを抜き取った。
 股間からあふれた液体をすくい取って、白いねばねばを口に含む。

「苦いね、これ。その手の本だと、たいていおいしいって言ってたのに」
「……夢だったらおいしくてもいいのにね」
「ふふ。そうね、残念」

 不満を言いながらも、お姉ちゃんがちゅ、ちゅと僕の白濁を舐める。ときどき不味そうに顔をしかめて、それでも僕のをすする。
 その淫靡な光景に、僕のペニスがまた昂ぶってきた。
 お姉ちゃんが、目ざとくそれを見つける。お姉ちゃんの手が伸びてきて、くにゅりと僕のペニスを包んだ。

「元気だね、卓也。またしよう、いっぱい。卓也が満足するまで」
「うん。今度はお姉ちゃんにも気持ちよくなって欲しい」
「うれしいな。じゃあ、早くそうなるようにお姉ちゃんを調教して、ね?」

 僕はこくりと頷いて。
 お姉ちゃんの身体を組み敷いて、何度も中に注ぎ込んだ。

***

 目が覚めると、そこはありふれた日常。
 適当に朝食を食べて学校へ行き、家に帰ってテレビを見る。あっという間に夕方になり、テストの勉強は進んでるのか、なんて柚子姉さんにお小言を貰っているうちに日が暮れる。
 ただ、すこし違うこともあった。

 杏奈お姉ちゃんに貰った本。あれは魔法の本だった。
 1週間に1度、白紙のページが更新されて新しい章ができる。枚数にして10ページを下回るくらい。
 今は本の総ページの中盤あたり。小説の中の主人公は、2人の姉との一線を越えて、色々なシチュエーションを試していた。
 今週はお風呂場だ。姉弟がお互いの身体を隅々まで洗いあっている。先週は裸エプロンで料理を作っていた。

 たぶんこの更新の種明かしは、何パターンか途中まで書いたのを用意していて、僕が寝てる間に差し替えているのだろう。
 杏奈お姉ちゃんが犯人の、すごく手の込んだいたずら。でも内容は相変わらず凄くて、次を楽しみに待っていたりする。

「卓也、お風呂沸いたわよ。とっとと入りなさい」
「はーい」

 ドアごしに、柚子姉さんからお声がかかった。
 自室で読書に励んでいた僕は、ページを開いたままそれを逆向きにする。
 参考書じゃなく、いかがわしい本だ。泡プレイの箇所を読んでいる時にお呼びがかかるとはタイムリーといえなくもない。まったく嬉しくないけれど。
 僕は股間でおっきしたペニスをしまって、立ち上がった。
 そこは欲求不満を訴えているけど、時間を遅らせると姉さんに叱られる。現実は厳しい。あの小説みたいに、お姉ちゃんや姉さんと桃色世界にまぎれたいけれど絶対に有り得ない。

 脱衣所につく。服を脱いだ。すぱぱぱーんと。
 うちのお風呂は広い。親がこだわりを持っていて、敷地面積は僕の部屋と同じくらいにしておいたとおっしゃっていた。……。うん、凄く広いです。
 シャンプーをとり、頭をわしゃわしゃ洗う。当然目を閉じて。

「流すわよ」
「ういー」

 僕は目を閉じたまま返事をした。頭にお湯が注がれ、泡が流れ落ちる。目を開けた。
 そこに。
 信じられない人がいた。バスタオルを……巻いていない。産まれたままの姿で。
 柚子姉さんが、僕を見てる。
 そこはお風呂場で、お互いが裸だった。

「どうしてここにいるの、姉さん?」
「え、今日は私がお風呂当番でしょう。曜日を間違えてた?」
「お風呂当番……?」

 ああ、そうか。
 きっとこれは夢の続きなんだろう。
 どこかの小説で読んだシチュエーション。僕が持っていた本だったか、それとも杏奈お姉ちゃんが貸してくれた本だったかは忘れたけれど。でもこの感じは、覚えがある。
 発情した女の匂いと、ギラギラした自分の匂いがする。
 姉さんが、潤んだ瞳で僕を見ている。
 頭がふわりとした。思考にモヤがかかり、生殖行為以外のことがどうでもよくなる。
 そこは現実と虚ろの境が混ざり合う。僕の妄想が全て許される世界。

「姉さん、じゃ、いつもみたいにしてくれる?」
「いつも……どうしていたっけ?」
「胸に石鹸の泡を擦り付けて、僕の全身を洗う奴」
「え、ああ、そう。そうだったわよね」

 どろり、と。
 姉さんの瞳に、欲情の色が濃くなる。
 記憶が、現実から夢へと動く。
 本の中の登場人物。禁断の一線を越え、弟と愛欲の世界に溺れる姉へと。
 ごく自然な動作で、姉さんが石鹸を手に取った。待って、と僕はその手をつかんだ。
 少し怒った顔で睨まれる。ちょっと怖いけれど、無視して言った。

「僕が塗るよ」

 石鹸を手のひらにつけ、姉さんの胸へ。たぷたぷとした量感を楽しみつつ、指先で乳頭を押したり引いたりする。僕の手が触るところが石鹸の泡で白く濁った。面白いのでまんべんなく塗り広げる。そうするうちに胸の先がとがってきて、きゅっきゅっと指の腹でこすった。
 あっ、ああ、と甘ったるいあえぎを漏らしながら、姉さんが抗議をする。

「んっ、卓也……触り方、いやらしいわよ」
「だって姉さんの身体がいやらしいんだもん」
「もう、いつの間にこんなえっちに育ったの」

 その口調は怒っていなかった。それどころかおっぱいを触る僕の手に自分の手を重ねて、やんわりと撫で付けてくれる。
 そして滅多に見せてくれない優しい目を、僕に向けた。

「がっつかなくても大丈夫よ、ね?」
「うん」

 僕は手を引っ込めた。頬が熱い。照れてしまっている。
 姉さんは自分の胸に塗りたくられた泡を少しこすって、すっと立ち上がった。僕の背中に身を寄せる。ふにゅう、とふたつの膨らみが押し付けられた。姉さんの顔が、僕の首筋にある。
 耳たぶを、甘く噛まれた。
 背筋を走るぞくりとした感覚に、僕の身体が震える。

「まずは、背中からね。次に腕と、胸板。その後は脚を洗って、最後に卓也の一番汚いところをきれいきれいするから」
「うん」
「最初に出すのは、姉さんのお口と胸とどっちがいい?」
「両方。胸でして、口で受け止めて欲しい」
「おっぱいで挟んでしこしこしながら、お口で舐めて、卓也の苦い精液を飲んで欲しいのね」
「うん」
「すけべね」
「姉さんのせいだよ」
「なら、責任とらないといけないわね」
「うん」

 必要なこと以外はほとんど口を開かず、僕は頷く。あんまり喋ると、何かが弾けてしまいそうだった。
 姉さんの息が、僕の背筋をくすぐる。それは熱く、はぁはぁと乱れていた。
 これからのことを想像して興奮しているんだろう。僕と同じように。
 僕の胸板に姉さんの手が回る。後ろから抱きしめられる形。姉さんが身体を上下に動かし、ぬるぬるとした乳房の泡が僕の背中に広がり、硬く尖った頂がくすぐったくじれったい刺激を与えてくれる。
 姉さんの手が、下に動いた。くりゅ、と勃起した僕のペニスの竿が、姉さんの手に包み込まれる。

「カチカチになってるわね、卓也のヘンタイ」
「ごめん」
「いいのよ、コレも姉さんの責任でしょう?」

 つつつっと、姉さんが僕の耳朶をなめあげた。はぁ、と僕は息を吐く。
 姉さんはくす、と笑って。
 僕を焦らすように、そこから手を離した。

「まだよ。お、あ、ず、け」
「そんなっ」
「姉さんの言うことを聞きなさい。……大丈夫よ、いっぱい、気持ちよくしてあげるから」

 姉さんが移動する。僕の腕を乳房の谷間ではさみ、指先までを丹念に洗う。僕の視線は、たぷたぷ揺れ、いやらしくゆがむ姉さんの胸と、若草のような茂みに覆われた綺麗なあそこを行ったりきたりしていた。

 ……ああ、早く。

 早く出したい。姉さんの胸に挟まれて、口でくちゅくちゅと転がされて、姉さんの中に入って射精したい。
 そんな僕の血走った視線を受け止めながら、姉さんは丹念に僕の身体を洗っていく。途中に、また石鹸から泡を補給して、僕の胸に自分の胸を合わせた。
 粘ついた視線が絡みつく。姉さんの欲情に潤んだ黒い瞳が、僕の目の前に来る。
 どちらともなく、唇を重ねた。ちょん、と姉さんの舌が僕の唇にあたる。僕は口を少しあける。舌がもぐりこんできた。

 ちゅ、ちゅちゅ……りゅ…ちゅる……

 舌を絡めあう、大人のキス。唾液が唇からこぼれ、お風呂のタイルの上につぅと落ちる。
 僕は手を伸ばして、姉さんの太ももをさすった。

「ん、いけない子ね」
「だって」

 弁解にならない弁解を吐きながら、僕の手はとまらない。
 太ももから中心部へ、恐る恐る指を這わせる。言葉で注意しただけで、姉さんは止めようとはしなかった。
 だから僕は、そのまま姉さんの女の部分を触る。ようやくたどり着いたそこは熱くぬかるんでいて、ぐちゃぐちゃになっていた。お風呂のお湯でも、石鹸の泡でもない。粘性の高い液体が、僕の指を汚している。

「感じてるんだよね」

 僕はその手を姉さんの顔の前にあげた。中指と人差し指で、ねっとりとした液体がいやらしく線を描いている。
 姉さんは答えない。僕は指を姉さんの頬に寄せた。姉さんは目を閉じる。頬においた指を滑らせ、口元へ持っていく。姉さんの愛液で、姉さんの唇を汚した。

「舐めて、きれいにして」
「うん……」

 姉さんが素直に頷く。

 ちゅぷ……。

 きれいにして、との言葉に反応したんだろうか。観念したように、姉さんが口を開いていた。
 姉さんが指を口に含み、舌をからませる。いやいやだった動きが、次第に熱を帯びてくる。自分の愛液を全部舐め取って、その上でまだ僕の指に吸い付いた。
 僕は褒美とばかりに、もう片方の手で姉さんの胸を弄ってあげる。

「あ……ふっ、だめよ……卓也……」
「何が?」
「感じすぎて……変な声が出ちゃう」
「聞きたいよ、姉さんの可愛い声」
「弟のくせに生意気いうんじゃ……あっ、……はふ……」

 姉さんの胸を撫で回す指が、泡のおかげでよく滑る。ぴんっ、と乳首をはじくと、姉さんがおとがいをそらした。
 姉さんが感じている。僕の首筋のあたりが、ちりちりと暑くなってくる。襲いたい。でも、我慢した。姉さんが絶えられなくなって身悶える姿が可愛かったから、姉さんがイク前に手をのける。

「洗うの、続けて。次は脚で、その次は僕の一番キタナイトコロだよね?」
「え、ええ。そうね……ん……はぁ……」

 僕が手を離すと、姉さんは恨めしそうにこちらを見た。気づかないフリをする。これまでの冷たい態度への、ささやかな仕返し。
 僕は立ち上がって、湯船のへりに座った。姉さんが僕の足元にひざまずく。泡を胸につけ、胸を僕の脚にこすりつける。触れるか触れないかのタッチで、おっぱいの先が僕のすねのあたりにあたる。ずいぶん我慢しているせいだろう。姉さんのその動きは、洗うというよりは僕の身体を使ったオナニーのようだった。
 けれど、胸のじれったい刺激だけでイけるわけがない。僕も協力していないし。すぐにそのことを悟って、姉さんは手早く僕の脚を洗い終えた。僕の足の指は口と舌で舐めあげ、終わった後に口をすすぐ。最後にシャワーを使い、僕の体の泡を洗い流した。

「いよいよお待ちかね、だね」
「お互い様だよ」
「やっぱり生意気」

 はむ、と。
 姉さんが僕のペニスをくわえた。亀頭が口腔に収まり、ぬらつく感触がする。舌が鈴口をちょんとつつき、僕の先走りを舐め取る。姉さんは上目遣いで僕の表情を確認してから、たっぷりとした自分の胸を抱えた。
 僕のペニスの竿が、姉さんの胸に包みこまれた。膣内とは違う、けれど凄く気持ちいいおっぱいの肉の感触。
 僕は姉さんの頭を撫でる。
 じゅ、じゅっと口内で唾液をまぶしながら、姉さんの舌がいやらしく動く。ああ、すごい……!
 姉さんの口端からこぼれた唾が、僕のペニスを包む乳房の谷間に落ちた。それは程よい潤滑油になって、姉さんが両手を動かすたび、にゅらにゅらとおっぱいがこすれ、柔らかい肉の感触が僕を絶え間なく刺激する。
 びくっ、と僕のペニスがうごめいた。射精の前段階。新しい先走りが鈴口から溢れ、すぐさま姉さんの舌に舐め取られる。

「らひて、いいんだよ?」

 僕のペニスをくわえたまま、姉さんが喋る。
 それがきっかけになった。

「出すよっ、口の中にっ!」

 鋭い声で言うと、姉さんは小さく頷いた。
 僕は我慢を解く。
 尿道に焼けるような快楽を残し、精液が爆ぜた。
 姉さんは僕のペニスをくわえ、喉奥に白濁を受ける。
 途中でんっ、とむせたけれど、僕は姉さんの頭をつかんでいた。一滴も残さず、口の中に含ませる。

「ん、けほっ……もう……強引なんだから」
「ごめんなさい」
「反省してないでしょ、口先だけで」
「そんなことは――」
「ここが、暴れたいって言ってるわ」

 姉さんが僕のペニスに舌を這わす。カリをくすぐり、ぬらついた精液の残滓をすくいとる。裏筋の血管の辺りを刺激された頃には、僕のペニスはまた天高く反り返っていた。ちゅっちゅっ、と鈴口に何回かキスをされて、尿道に残った精液をちゅーちゅーと吸い取られる。
 うう、気持ちいい!

「ふふ……」

 姉さんが妖しく笑う。血なのだろうか。その顔は、杏奈お姉ちゃんが発情したときと同じだった。

「後始末したら、お仕置きしないとね。卓也の節操がないここに」
「お仕置き?」
「そう。姉さんのあそこで、ぎゅっぎゅってたくさん絞り上げるの。さっきみたいなことができないように、一滴残らず」
「一滴残らず?」
「そ。お仕置きだから、卓也に拒否権はないのよ」

 妖艶に笑う姉さんが、自分のアソコに手を伸ばして。
 くぱぁ、と花開かせた。
 ひくひくとうごめき、熱く潤う蜜壷を。
 僕はごくりと唾を飲み込んで。
 理不尽なそのお仕置きを、甘んじて受けることにした。

***

 風呂から上がると、互いに記憶を失い、理性が戻る。
 柚子姉さんは何事もなかったかのようにお皿を洗い洗濯物を干す。僕も何事もなかったかのように部屋に引きこもり、息抜きに本を読みたまにテスト勉強をする。
 あれは夢だ、と心に言い聞かせながら。
 それは、週に1度のお楽しみ。
 一定量の時の砂が流れ落ちれば、お互いに忘れてしまう淡い交歓。
 けれど、続けるうちに僕の妄想はだんだんと逞しくなり。
 杏奈お姉ちゃんから借りた小説は、次の話を紡ごうとしていた。

< つづく >

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