<0>
世の中には、同じ駅なのにその東西でまるで違う顔を持つ町というのがある。
東は発展してて高級マンションやらスーパーやらデパートやらが立ち並ンでいるのに、西に行くとせいぜいが寂れたゲームセンターや立ち読み本屋、駅前は放置自転車がずらりと並び、少し離れると田畑と民家しかない。そんな町が。
その寂れた方の大通りを一人の少女が歩いていた。
大通りなのになんだかさみしげで隙間風が舞っている。
無論駅へのどんつきになるその道には車の影さえ見えない。今はまだ明るいが、夜になると危険かもしれない。
清楚なセーラー服を隙なく着こなし、背筋を伸ばして凛と歩くその少女はあきれるほど美しかった。 手には白い紙袋を持ち、お嬢様独特の近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
ストレートの髪を肩下まで伸ばした彼女は周りの物には全くの無関心というように、己がペースを崩さずさっさと歩いてゆく。まなざしはどこか茫洋としていて、何を映しているかよくわからなかった。
だから、見えていなかったのかもしれない。前方に湧いた、かなりやばげな若者の集団を。
その男達はいかにも喧嘩と女と薬が好きそうな面々で、誰もがあまり関わりたくないような暴力の匂いをぷんぷんさせていた。まるでGメン75のように道いっぱいに広がって歩いている。
しかし彼女は、それらさえも路傍の石のように気付かずに通り過ぎようとする。
やはり見えてないのか?
頭の悪そうな、必ず疑問系で終わる会話を続けていた男たちが、それに気付いた。
男たちは5人。チビとノッポとデブとたれ目と坊主が揃っていた。
無論これほどの美少女を見逃すはずもなく男たちはデブを中心に少女を取り囲む。
「ねえねえ彼女~いっしょに遊ぼうよ」「うっはー、こんなキレイな子みたことねえぜ!」「ぶぅ」
てんでに好きなことをはやしたてる。
それに対し少女は無言。おびえているのかと思えば表情は全く変わらず彼らを見てもいない。
囲まれてようやく、なんだか邪魔だな~という風に顔を上げた。
そのキョトンとした顔は男たちの欲望にガソリンをぶちまけて火を点けた。
もはや彼らの頭の中はこの美少女に突っ込むことしか考えていない。1秒でも早く物陰に連れ込みたいようだ。
後ろからのっぽが笑いながら少女の肩に手をかけようとした。
すぃっとそれにあわせて美少女の空いたほうの手が上がる。
次の瞬間、ノッポは地面に転がっていた。
男たちはぼんやりと地面に転がっているノッポを見ているが、地面に寝そべっているマグロを見ているような目である。場違いというか、なぜそこにそれがあるかがわからないのだ。
ノッポは動かない。
数秒が過ぎてようやく、それが冗談でなく何者かにやられたらしいということがわかった。
わかったが、それが少女の手によるものとは結びつかない。
「て、てめ~!」
一人だけ気付いたのか、それともその空気に耐えられなかったのか、坊主が甲高い不協和音を響かせながら、右手からなぐりかかった。ちょっぴり目がいっている。
少女は無言でわずかに体をずらし、坊主のベクトルを変える。
バランスをくずした足を形のよい脚がスラリと刈り取ると、顔面からコンクリに突っ込んだ。
ぐちゃ!とも、にちゃ!とも聞こえる鼻の砕ける不気味な音とともに坊主は沈黙した。
少女は強かった。圧倒的に強かった。
しかしあまりに実力の差がありすぎてチンピラ達は気付けない。
チビとたれ目が両脇からつっかかった。ちなみにチビは空手をかじっている。
少女はすべるようにたれ目の懐に入る。
チビが思い切りのいい拳を放ったが彼の拳が捕らえたのはたれ目の顔面だった。
ナックルの代わりにと付けていた棘付きの指輪が出血を強いる。
仲間を殴ったことで一瞬呆然とした隙に、少女はチビの膝裏をコツンと蹴りバランスを崩す。
いわゆる膝かっくんだ。たれ目によりかかられ絡み合いながら倒れたチビはすぐに動けなくなった。
そこにようやくデブが巨体で踊りかかろうとしたが、まるでマンガのようにハデにすっころんだ。
いつのまにか手を取られ後ろに回され上下を180度変え顔面で受身を取る羽目になる。
そのまま二人の上に倒れこみ動かなくなった。
わずか数秒で5人の男たちを戦闘不能に追いやった少女は息ひとつ切らしていない。
それどころか、片手は紙バックを持ったままで使っていなかった。
手に持った白い紙バックをちらりと見る。それは無事なようだ。
わずかにほっとした顔が唯一の表情だった。
そして秒殺された男たちには目もくれず歩み去っていった。
風が流れた。ふわりと彼女の後ろに流れ込む。
そこには、彼女の背中には、天使の羽が羽ばたいていた。
それは光が編んだ美しい羽。人には見えない輝きだった。
折からの風にわずかに揺れたように見えた。
<1>
朝礼が始まる前のざわめきの時間、俺の机の前に伸吾がやってきてうちの学校の美少女について語りはじめた。
私立みさなぎ学園はそこそこレベルの高い学校だったが、ご多分に漏れず少子化の影響で徐々にレベルが下がってきている。
神奈川県の山に近い土地柄で2:8で田舎の含有率が多かった。それでも1時間電車に揺られれば横浜に出るのだから垢抜けた格好の生徒も結構多い。
「まずはアリスちゃん先輩こと鏡有栖ちゃんだよな」
3年生の鏡有栖(かがみありす)は体は小さくてまるで日本人形のようだけど弓道部のエースという人で、人なつっこくて元気がいい。僕ら後輩たちからもアリスちゃん先輩と愛称で呼ばれ慕われていた。
「森林先輩は?」
「俺、あの先輩苦手。キレイだけどなんか怖いし」伸吾の言い分もわかる。
森林人十美(もりばやしひとみ)先輩はアリスちゃん先輩の親友で元バスケ部のエース。
なんでも怪我をして引退したらしいけど身長は180近くありモデル体型。
ちょっとヤンキー入ってて怖いけど美人さんだ。
キレイはキレイだけどむしろカッコイイという形容詞がぴったりくる。
後輩の女の子から絶大な人気があった。
「忘れちゃならんのが松田先生だよな」という伸吾に俺は身を引く。
「え?・・・お前ゲテモノ?」
「何をいう!確かに性格は少し破綻しているがあの10代ではなしえない魅惑のボディをお前は忘れているぞ」
と伸吾が力説するのは松田彩子(まつだあやこ)先生。
24歳の化学教師だが、確かにナイスバディである。
うわさでは人には言えないやばい研究をしているとか・・・。
笑えば美人だが、俺は彼女のニヤリと口をゆがめる笑い及び高笑い以外見た事がない。絶対ゆがんでいる。
今年の1年生については、まだ1学期がはじまったばかりなので全くわからなかったが、伸吾はどこで聞いたかいろいろな情報を披露した。結構粒ぞろいらしい。
一通りのピックアップが終わった後で俺たちはなんとなくクラスの一角を見る。
そこにはこの学校でも有数の美貌があった。
氷室沙耶(ひむろさや)。奇跡のようなキレイなオンナノコだ。
肩よりやや伸ばした艶のある黒髪で背は165くらいだろうか?
ごく普通のサイズだが顔が小さいためスラリとして見える。
クラスメイトということで最後に持ってきたが、彼女はちょっと変わっていた。
なんというか、いつも一人でぼ~っとしていることが多い。
無口で会話が成立しない。いつのまにか一人でついっといなくなることが多い。
授業中もぼ~としているのだが、教師に当てられるとすらすらと答える。
掴み所がないというのが一番的確だろうか。
はじめの週は女の子達がいろいろアタックしていたが、それも徐々に減り、次の週ではぱらぱらとなり、今ではたま~に声を掛ける程度。一方男子は彼女を遠巻きに見ていた。
なんにせよ目立つ人間であるのは確かで、ゆえにいわくありげな噂が彼女を取り巻いている。
実は資産家の娘さんだとか、すご~く頭がいいとか、いまどき許婚が存在するとか、複数の男性とお付き合いしているらしいとか、一人暮らしをしているとか、武術家の娘だとか、ひどいのは悪魔が取りついているなんてものまであった。
まあ、見てる分には害はない。どころか幸せな気分になれるかもしれない。
TVでアイドルを見ているようなものだった。
と、俺も最近まではそう思っていた。
予鈴が鳴ったので伸吾は席に戻っていった。
と、自己紹介が遅れたようだ。俺は伊吹九朗(いぶきくろう)。
背が高い以外はさほど特徴もないただの高校生だ。
いや、だった。つい最近までは。
とあることがあって、見えないはずのものが見えたりするようになっってしまっていた。
それは例えば氷室さんの背中にはときどき、きらめく羽のような光が見えるとか。
誰も話題にしないのでやはり見えているのは俺だけらしい。
そういえば最近彼女は眼鏡をかけていないな。
眼鏡がない方がキレイな目がよく見えていいなあとか、その日はぼんやりと見とれていたりして過ごした。
その後に急展開が待っているとはお釈迦様でもご存じなかった。
放課後。写真部に在籍して入るが幽霊部員なのでその本性をまっとうするべくひっそりと帰ろうとしたときだった。
「伊吹君」
涼やかな声に呼び止められた。
「ちょっと話があるんだけど」
といったのは我がクラスのロンリービューティ氷室沙耶その人だった。
俺はうろたえて一応周りを見てみる。もしかして違う伊吹君はいないだろうか?と思ったが、該当者は俺しかいないようだ。
「伊吹君の背中の羽について話があるの」
え~と・・・・。該当者は俺しかいないようだった。
<2>
いちごケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキ、モンブラン。コーヒーゼリーにシュークリーム。
私はケーキが好きだ。
甘くとろける生クリーム。ほのかに酸っぱいチーズクリーム。感触さくさくスポンジケーキ。
はあ・・・・至福。
見た目がかわいく、匂いが甘く、食べるとやわらかな食感、口内に広がるたまらない甘さ。
ケーキというのは人類の産みたもうた奇跡だと思う。
昨日も私は噂に聞いたケーキショップに足を運んでいた。パンプキンパイが絶品だというお店があったのだ。
駅から歩いて20分という中途半端な場所にあるこじんまりとしたお店だったけど、確かにすばらしい味だった。試食してその場でトリップしてしまった私は自分で食べるために1ダース買って帰ったのだった。
途中で変なのが絡んできたけど、つぶれてなくてよかった。
私が駅へとつながる長いエスカレーターに乗ったときのことだ。
隣の公園から光が見えた。
なんだろうと思ってぼんやりと見ていると、ちらちらっと光ってる。
何かの反射だろうか?と目を凝らすと、それは少年の背中から見えていた。
普通の光ではない。微妙な色合いを変えるその光は羽の形をしていた。
あれは・・・・。
エスカレーターが上りきるとそれは見えなくなってしまった。
戻ろうかと思ったけど・・・まあいい。学校にいけば会えるし今はパンプキンパイの方が優先項目だった。
<3>
放課後の屋上というのはなかなかの穴場である。
しかもものすごい美人と二人きりというのははじめてのケースだ。
俺の胸の奥のアルバムの1頁として大切に保存したい。
それにしても見れば見るほど氷室沙耶はキレイナ女である。
クラスの他の女達とは別の物質でできてるんじゃないかと疑ってしまう。
そんな俺の両目2.0の擬視すらも慣れているのか涼やかに受け流しながら
「えっとね、その羽について知っていることを教えて欲しいの」
彼女の声をちゃんと聞いたのははじめてかもしれない。
妙に平坦な感情のこもらない声だ。
せっかくだから会話を楽しみたいんだけどなあ。
「知ってることと言われてもなあ・・・羽って・・・その何?」一応とぼけてみた。
「昨日、湯の浜駅の公園にいたでしょ?」
あら・・・。昨日通りかかった公園でがきんちょが木にひっかけた風船を取ってやったときだな・・。
まさか目撃者がいようとは・・・。
力を使うと羽が見えてしまう。んだが常人には見えないから問題ないと思ってたのになぁ。
「今の私はせっかく買ったモロゾフのチーズケーキをお預けされている気分なの」
「え?」
なんだかわからないが、怒っている様だ。
「教えてくれないなら・・・・死んでもらいます」
ゆらり、とそのにわか暗殺者の氷室さんはポーズをとる。
ひょいと踏み込んできたかと思うと、いきなりパンチが来た。
必死に避ける俺。はや!意外にせっかちなのか?
「死んだら、話せないぞ!」
「あ・・そうね・・じゃあ、半殺しで手をうちましょう」
そんなポーズもかわいいのはずるいと思う。
一瞬の隙をつかれて投げられた。らしい。背中の痛みの後に視界が反転したからだ。
氷室さんはなんか格闘技をやっているようだ。しかも強い。
「つ・・・」
まだ手加減があるのか、俺は瞬時に起き上がった。
俺の正面にするりと彼女が入ってくる。
今にもキスができそうな距離で
「ね、見せて」と魅力的な笑顔を見せて
ズダーン!
また投げられた。
転がって逃げる俺に今度は追って来なかった。
「ん、これじゃだめか」
そういって彼女は俺に手を掲げる。
彼女の背中の羽が急激に広がる。
まずい!
俺は腕をクロスに組んで防御姿勢。
次の瞬間、彼女から見えないエネルギーが叩きつけられた。
「って、あぶね~な」
「ほら、見えた♪」
くすりと氷室さんが笑った。
俺は彼女のエネルギー波をエネルギーの盾で防いだのだ。
そして俺の背中には光の羽が拡がっていた。
戦闘は続行中だった。俺が口を割るまで彼女は止めるつもりがないらしい。
彼女の技は合気道だろうか?するすると手が伸びたと思うとあっという間に投げ飛ばされる。
一応反撃してみたが、そらされ、かわされ、逆に投げられた。抵抗した方が被害がでかい。
一旦俺の羽を引き出したあと、彼女は体術しか使ってこなかった。
一方俺は羽の力を使わないと防御もままならない。
氷室さんの意外な一面は見れたが、あまり楽しい状況とはいえなかった。
何より学生服がボロボロになってる。
俺は一旦間合いを取ろうと一足飛びに10M程飛び離れた。
があっさり追いつかれる。やばい。
目の前に彼女の手が迫る。まじやばい。テラヤバイ。
というまに視界がひっくり返った。
そしてしたたかに背中を打った俺は抵抗をやめた。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ・・・」大の字で転がる上に彼女が見下ろす。
「おしまい?」あまり息もあがってない。まいったなあ・・・。
しょうがない。奥の手を出すか。
<4>
私は、彼を組み敷いていた。彼は羽を持っていたし常人と違う運動能力を持っていた。
人には見えない羽。
力を持つものの象徴。
私がコレを手に入れたのは2週間ほど前だった。
それは教室で、唐突に力を授かった。
一体誰が?何のために?
力はすばらしいものだった。いや、恐ろしいものと言ったほうがいいだろうか。
少なくとも今の人類の科学技術では不可能なのは間違いない。
それは私の体を変えた。
まず眼鏡がいらなくなった。あれほどひどい近視が一晩で治っていたのだ。
それから感覚が鋭くなった。目をつぶっての真剣白羽鳥でもできそうだ。
力にしてもそうで、必要なときに必要なだけ湧いてくる。
唯一の特徴は力を使うときには光の羽が展開すること。天使の羽のような形をしている。
でも、普通の人には見えないらしい。
私は疑問の山を抱えていたが、さりとて誰に聞くわけにもいかず行き詰っていた。
従来のくせで問題を棚上げにしていた私の目に飛び込んできたのは、背中に美しい光で編まれた羽を持つ彼、伊吹九朗君だった。
「おしまい?」さあ、話して・・・
え?
私は、彼を組み敷いていた。場所は・・・!?私の部屋のベットの上。
何が起こったかわからなかった。たった今まで学校の屋上にいたのに。
いつのまにか私の家にいる。
ちなみに駅前のマンションの12階が私の家で、現在一人暮らしをしている。
私はベットの上の彼の上に馬乗りになっていて、下から彼がニヤニヤと笑っていた。
慌てて彼の上から降りた。いや、降りようとしたが体が動かなかった。
「何?どうして?」
パニックになる。状況がわからなかった。
そこへさらにニヤニヤと笑いながら伊吹君が言った。
「どうして?って・・・氷室さんが誘ったんだろ?」
その声に記憶がよみがえる。
そう、確か放課後彼に声を掛けて私の部屋に誘って・・・違う!
屋上で彼と闘って・・・そして羽を見て・・・羽を・・・。
羽を見た後の事が思い出せない。なんだろう羽が気になる。羽・・・羽がなんだっけ?
う・・・・。頭が重くなる。ノイズが駆け抜けて記憶をばらばらにくずしてしまう。
まるでジグゾーパズルだ。記憶を組み立てるのがひどく億劫だった。
ばらばらの記憶をムリに繋げようとする。
そうだ・・彼の羽を見せてもらおうって・・・誘って・・・誘って・・・。
いや、私の羽を見てもらうんだっけ?
放課後に声を掛けて・・・・。屋上に・・・。
キーーンと頭の中を何かが駆け抜けたようなにぶい痛みがあった。
家に誘った。
そうだ、彼に羽を見てもらおうと家に誘ったんだ。
その時私の体の下にいた彼がぴくりと動いた。
「あ」
私の股間が彼のおちんちんを挟んでいた。
衣服越しとはいえその堅さを意識してしまう。
一旦意識してしまったそれは、急激に私の頭にこびりつき離れなくなった。
やだ・・・大きくなってる。
男の人のおちんちんの上に座り込んでいるその状況を意識して、私の顔が熱くなる。
しかも、私の敏感なあそこは、あの羽のせいなのか異常に感覚が研ぎ澄まされていて、彼の堅さと形と熱をはっきり捕らえており、頭の中で容易に再構成することが可能だった。
「やだ・・・」
バラバラな頭が沸騰しさらにわからなくなってくる。
その中に鮮明な感覚がいきなり押し寄せた。
それは”快感”だった。
「あっ!」
無意識に股間を彼に擦り付けていた腰が快楽を生み出すポイントを見つけたのだ。
「んあ・・・」
クリトリスだった。私はそれを彼に、彼のおちんちんに擦り付けていた。
「だめ・・・」
怖いほどの快感が湧き上がって、私を夢中にさせる。
私の腰は無意識に動いていた。
「はあぁ・・・」
吐く息が熱い。
彼の上を上下に行き来する私の腰は男の人の形をなぞり、さらに明確な情報を伝えてくる。
「ふあああ・・・」
やだ、パンティの感触が変わってきた。濡れちゃってるんだ。
だめだ。これじゃセックスしちゃう。
どんどん、怖いくらいに伊吹君のおちんちんが欲しくなってきた。
羽を見せなきゃ。
羽を見せて調べてもらわないと・・・・
「ん、あ・・・」
羽は羽を持つものにしか見えない。彼じゃないと調べられない。
「ん・・・は・・ね・・を・・羽を見て・・・」
私は腰を押し付けながら制服を脱いでいった。
スカーフをはずし脇のファスナーを下ろし制服の上着を脱いだ。
ちゃんとたたみたいけど、今はここから動けないからベットの横にすべらせる。
彼の目が妙に熱くなって、彼のおちんちんもさらに硬くなった。
ふふ・・・。なんかかわいい。狼狽してるのだ。
私はもっと、彼を熱くしたくて私はブラをはずした。私の白い胸がまろびでる。
羽を見るのに服を脱ぐ必要はないんだけど、それに気が付いたのは脱いだ後で、そして服を脱いだらどうでもよくなっていた。
空気に開放された身体は冷えるところかさらに熱くなる。
彼に触れたかった。
「ねえ、あなたも見せてよ」
そういって、彼の服を脱がすためボタンをはずしていった。
彼の手が下から伸びて私の胸を掴んだ。
「ああぁ・・・」
びくっとしたが、気持ちいい。それに今の私は彼の服を脱がすのに夢中だった。
ボタンがひとつはずれる度に私の中で疑問が消えていった。
どうしてこんなことをしているのか?なぜ他のことを考えられないのか?そんな疑問の切れ端が消えていく。
そして彼の男の匂いにくらくらする。
私の中の牝が彼の牡を強烈に求めていた。
彼の上着を脱がし終えたときもはや羽のことすら頭になかった。
私は完全に欲情していた。
私の腰はいやらしく蠢き、彼の形をなぞっていた。彼のおちんちんの形と硬さに夢中だった。
「ふ、あ・・・硬い・・・」
クリトリスを擦り付けて思わず声が出てしまった。
なんだか恥ずかしい。
恥ずかしさをごまかすため私は彼に抱きついて唇を奪った。激しく口付けを交わす。
いや、それは口付けというより私が彼を食べていると言ったほうがいい。彼が欲しかった。
セックスしたい。たまらなく身体が熱くうずく。
セックスしたい。
そうだ。そのために今日は彼を誘ったのだ。その考えが妙に気に入った。ストンと私の中の納まるべきところに納まった。
私は彼が欲しかった。彼といやらしいことがしたかった。
だから誘った。誘って家に連れ込んだ。
そうだった。何を考えてたんだろう。自分がおかしくなる。キスしながら笑った。
いやらしく絡み合うのが嬉しくて楽しくて笑った。
自分の思考が誰かに誘導されている。そんなことは露ほども感じなかった。
そんなことはどうでもいいことだ。
はじめて男を受け入れ、はじめての快楽を興じ始めた私にそんな些細なことなどどうでもよかった。
私たちは唇をむさぼりながらもどかしく下半身を剥いていった。
私の愛液でぐちょぐちょなパンティを脱ぎ捨て、彼のおちんちんを掴む。これを私の中に入れる。入れなければいけない。
これが欲しい!欲しい。入れたい!入れたくてたまらない。
私の体はあさましく濡れており何の問題もなかった。
私はそれを、彼のおちんちんを自らの手で掴み、自分の中に埋めていった。
<5>
彼女に倒された俺は、この羽を授かったときのことを思い出していた。
それは今から一月ほど前。春休みのことだ。
俺はその休みを利用して山登りをした。叔父に連れられていってきたのだが、そこで俺は遭難してしまった。急に霧が覆ってはぐれてしまったのだ。
気がつくとどこか広い洞窟の中におり、そしてそこには奇妙な棺が横たわっていた。
なぜ洞窟の中でそれがわかったかというと床が薄ぼんやり光っていたからだ。
それは何で出来ているのか材質のわからない明りだった。
俺がその明らかに日本のものとは違うデザインの棺に触れると、床の明りが淡いものから強烈な青緑の光に変化をした。
そのときは気づかなかったのだが怪我をしていた俺の手から血がこぼれた結果らしい。
そして洞窟の中が光で荒れ狂った後、棺の蓋が開き中から女神が現れた。
未知なる物に俺は畏怖した。その場を動けなくなる。
この世のものとは思われない絶世の美貌。完璧な肉体。よくわからないデザインの衣服が中途半端に体を覆っており余計にセクシュアルなそれは女神としかいいようのないものだった。
「お前が我を起こしたのか」
頭の中に殷々と言葉が響く。彼女は笑っていた。
俺はあまりのことに声すら出せない。
「ふ、どうやら奴らの誰ひとり我を見つけられなかったようだな」
彼女が何を言っているのかまったく理解できなかった。
「しかし、約束は約束だな。我をみつけたものに”神”を与える」
アルカイックスマイルというのだろうか、ソレはあきらかに俺を見て笑っていた。
知らずに俺はソレに近寄っていた。足が勝手に動いていたのだ。
「来よ」
逆らうことのできない神の命令が俺を支配する。
「我を抱くがよい」
何を言われているのか、頭は理解できない。にもかかわらす体は勝手にソレを求めている。
ペニスは体中の血液が流れ込んだのかと思えるほど硬く大きく立ち上がっている。
自分でもみたことのないほど巨大なペニスをソレは嬉しそうに自分の中に招いた。
激しい快楽が脳の中枢を貫き、俺は女神の膣内に出しまくった。情けない悲鳴を上げていたと思う。
ソレの腕が脚がおれをからめとり激しい快感の中、何かが俺の中に入ってきた。
ソレの膣の中から精液を泳ぎ、俺のペニスを通って入ってくる。
それは熱くうごめいていた。
ペニスの中を何かが通るという痛みと恐れと快感の中、俺は絶頂を迎えそして意識を手放した。
かすれた意識の中ソレの微かな笑い声が聞こえた。
「さて、お前に神を授けた。我は消える。忠告だが力は隠したほうがいいぞ。人に知れるとあまり碌な事はないからな・・・・まあ、それができるなら・・・くっくっく・・・」
やがてそのあまりにも巨大な神の気配は消え、俺も本当に気を失った。
そして気付くと病院のベットの上だった。
ということがあり俺には神が授けられたらしいが、何がどうなのかよくわかっていない。
神様には取扱説明書が付いてなかったからだ。
ただ、肉体にはいろいろ作用しているようだ。傷ができにくく治りやすくなったし、力も強くなった。 どうも記憶力とか思考力も上がっているようでそれなりに便利だった。
とはいえ、それが突然しゃべり出すわけでもなく事件も起こらずに一学期がスタートしたのだ。
神って健康食品のようなものなんだろうかと思い始めた矢先それは起こった。
俺は神の子、あるいは天使、もしくは使途と呼ばれるものを生んだのだ。
その日は朝から妙な感じがしていた。
背中が痒いというか張っているというか、学校を休むほどではなかったので登校したが三限目のことだった。
授業中にそれは起きた。
張っていた背中がはじけた。
何かが抜け出た感じがした。
その何かは全部で3つ。無論俺以外には誰にも見えない光求だ。
ふたつは教室から飛び出したがひとつは残った。
やがてその何か、透明でぶよぶよでふわふわなそれは氷室沙耶の中に吸い込まれていったのだった。
俺は奥の手を使った。隠していた羽を全て拡げたのだ。俺の羽は彼女と違い6対。12枚の羽を持っている。
俺の中に巨大な神格が顕現した。
同時に俺の意識が拡散する。神の知覚は人が見るにはあまりにも巨大すぎる。全ての情報を同時に視るのだ。
周囲の空気を構成する物質ひとつひとつにかかるベクトルから風の流れを計算する。
足元のコンクリの組成式から含有水分の%、ペーハーにいたるまで把握する。
彼女の体にしても、その形を3次元的に捕らえ、あらゆる角度から見ることができる。
皮膚、欠陥、筋肉、骨、脂肪それらの形を把握、細胞のひとつひとつの違いを理解し、神経の流れを見る。シナプスの結合具合から思考の過程を知る。
全てを同時に識るのだ。人の脳に耐えられるものではない。まあ、神が憑いた俺だから耐えられるんだけどね。
そしてふくれあがった神格は何もせずとも彼女に襲い掛かる。
それは瞬く間に彼女の中の力、使途を支配した。
もともと俺から分離した神の一部だ。その力にはほとんど自我がない。
パソコンでいえばOSのようなものはあるが意思はない。
それを一瞬で書き換え俺の支配下に置く。
それは同時に深く融合していた彼女の魂さえも支配した。
その瞬間、彼女は俺の一部となり手を動かすように彼女を動かせるようになった。
つまらない。俺は何もせずとも、指1本動かさなくとも彼女を破壊できる。
いや。それは俺の望みではない。神の力は大きすぎる。手に余る。俺は羽を引っ込め、強引に神格をばらばらにちぎり捨てた。
わずか数秒の事なのに俺は全身で汗をかいていた。
意思のない人形となった氷室沙耶は、その場で崩れ落ちた。
大きなため息をした後、俺は考える。
しかし・・・。
沙耶の太ももがちらりと見える。
・・・そうだな、何も全てを元に戻す必要はないよな。
神格が降臨した後の俺の思考はやや尊大になっていたようだ。
『さて、人形遊びをはじめようか・・・・。』
<6>
伊吹君の大きなおちんちんが私を貫いた。
覚悟はしていたが痛い。そして熱い。まるで鉄の塊を打ち込まれたよう。
痛い。私の性器からは血が流れていた。
でも、構わない。これが私の望みだから。私が求めたものだから。これは私への罰。おろかにも彼に拳を向けたことへの罰。
?彼に拳を?何のことだろう?記憶が細切れになっていてよく思い出せない。
それに、今は彼のおちんちんが私を責めていて、その他のものはどうでもよかった。
私は自ら腰を振り、彼に尽くす。自らに罰を与える。痛ければ痛いほど救われるような気がした。
腰を上げ、思い切り落とす。切れた部分をつつかれてほら、痛い・・・。
あれ?
いや、痛くなかった。
それどころか気持ちいい。唐突に今までにない快感がこみ上げてきた。
「んあ、はあああぁぁぁぁ・・・あん、あん」
風呂場に浅ましい女の淫靡な快楽の声が反射する。
・・・気が付くとそこはオフロだった。
たしかさっきまではベットだったのに、いつのまにか繋がったまま風呂場にいた。
また、飛ばされたのだ。
理由は気になるが、いや、気にならなかった。
湧き上がる快感が強すぎて他の事はどうでもよくなる。
いつのまにか私も彼も泡だらけだった。触れ合う肌のすべり具合がたまらなく心地いい。
そして不思議と処女を貫かれた痛みが全くなくなっていた。先ほどまであった違和感が消えている。
彼のおちんちんという異物が身体の中をかき回すという異物感が消え、代わりにあるのはどっしりとした安心感だった。
オスの塊が腹の中にあるというのに、それが当たり前のように感じられた。
むしろそれに寄りかかることで大きな安堵感すら得られる。
やだ、放したくない。
「はあ、気持ちいいよぉ・・・すごくいい・・・」
はしたなくこぼれる声にも違和感がなかった。
突かれる度に快感が拡がっていく。
まるでオセロゲームで全ての陣地が白に変わってゆくように、中心からドミノが倒れてゆくように、 私の細胞が彼に支配されていく。
それが気持ちいい!気持ちよくてたまらなかった。
もっと、もっと私を支配して。私の全てをあなたのものにして!
私は心の奥からそう叫んでいた。
私の腰は淫らに動き強い刺激を求めており、私ののどはいやらしい声を絞り出す壊れたスピーカーのようだ。
その快楽に私は夢中だった。
体の奥を貫かれる。
奥を叩かれると強い快感と安堵感がこみあげる。
「いい、いいです。すご、しゅごい、んあああぁぁぁぁ・・」
「奥!奥がいいの!」
伊吹君の動きがだんだん早くなって、私の中でおちんちんも膨らんでいる。もうすぐ出るんだと思うと嬉しくなる。
いっぱいだして私を犯して。この体が伊吹君のものだとマーキングして欲しい。
そして私の優しい支配者は私の望みをかなえてくれた。
「く、沙耶!出る!」
「きて!中に!全部ちょーだい!!」
私のおなかの中で熱いカタマリがはじけたとき、ものすごい愛おしさと幸福感が襲ってきた。
「いや!いく!いくうぅぅ・・・・・!!」
私は真っ白になった。白く白く、真っ白に。
それでも体は彼を求める。彼にしがみついて少しでも多く彼と触れ合っていたかった。
だからそうした。
「ごしゅじんさま・・・・」
ぎゅっと抱きしめる。
私の支配者は背中を抱いてくれた。
<7>
私は夢を見ない。
いや、正確には見たくない。
見るとそれはつらい過去を思い出すからだ。
やさしくも厳しかったお爺さま。
私をいじめる姉弟。そして父だった人・・・。
あれから1週間がたった。
わたしと伊吹君は学校から帰ると毎日セックスをした。
学校ではしらんぷりをしているのに、家のドアを開けた途端、激しくキスを交わした。
場所と時間と相手を提供された若者ってまるで餓えた獣のよう。
玄関で、ソファで、台所で、お風呂でセックスしまくった。もちろんベットは一番回数が多かったよ。
お風呂でするときは彼は必ず私のお尻を求めた。ぬるぬるにした石鹸のついた指をお尻の穴に埋めてくる。
知能犯の彼はおちんちんで私のおまんこを串刺して快楽に夢中になってから、お尻に手を伸ばす。
そうされると私が逆らえないことを知っているからだ。
指は1本から2本になり、はじめは違和感にむかついていたのにだんだんとよくなり、最近はお尻の穴でも感じるようにされてしまっていた。
おまんことお尻の穴を同時に抉られると、自分でも何を言っているかわからない悲鳴をあげて達するようにしこまれてしまった。
「今日は後ろに入れるぞ」
そう言われた時、頭では拒絶したが、お腹がきゅんと疼いて拒否できなかった。
お風呂で脚を持ち上げられ、二つに折りたたまれる。
私は自分の膝裏で手を組み、彼の前に性器をさらけ出す。
脚をぎゅっと閉じても、全てが丸見えだった。
女の子の身体って損だ。でもこれからの事を想像すると顔が赤くなる。
性器からトロリと白いねばついた液がこぼれた。
「ひゃあ・・」
彼は指でお尻の穴をほぐすと私の顔をじっと見る。
「はじめ見た時より随分かわいくなったな」
うう、いじわるだ・・・。
「準備がいいようだからはじめるぞ」
彼は自分のおちんちんに石鹸をまぶすと、私の後ろにあてがった。
「脚を開いて顔をみせて」
恥ずかしくてたまらないのだが、彼の言葉には逆らえない。私はおずおすと脚を開いていった。
指とは比べ物にならない太さのものがゆっくり押し入ってくる。
肛門が拡げられる。
「ぁぅ・・・」
思わず息を呑んだ。
「ゆっくり息をはくようにして」
言われるままにする私。
ぬるり。
彼の亀頭がとうとう入った。
「ひぁ・・・・」
ものすごく変な感じがする。
同時にお腹の中、子宮のあたりがじんじんとしてきた。
だめだ、これじゃすぐ感じちゃう。
亀頭が入った後は簡単だった。それでも彼はゆっくりと入ってきた。
「全部入ったぞ」
その言葉に頭が真っ白になってゆく。
でも、まだ違和感が残っておりすぐには達する事ができない。
彼はそのままゆっくり私に体重をかけのしかかってくる。
唇をちょんとつつかれた。私はその合図に舌をだす。
吸われた。激しくむさぼりあう。舌と舌が絡み。唾液が混ざり合う。
あは、お尻で繋がりながらキスしてる。
そのまま胸を揉まれた。堅く尖った乳首を転がされる。
この1週間ですっかり開発された私の性感はどんどん感じていく。
どんどんどんどん。もっともっと。
彼が、おちんちんを動かした。抜いてる。
ひあ、だめ、めくれちゃう。肛門がめくれちゃうよ。
こんなの反則だ。彼が動くたびにいきかける。
しかもいかないからたちが悪い。
私の頭は混乱の極致にあった。
「ねえ、だめ、だめなの、ねえ・・・」うわごとのように繰り返す。
「どうした?」
「だめなのぉ、いけないのに・・・」
「いきたいのか?」
頭の中がにごりきった私はその言葉にすがりついた。
「いきたい!いかせて!ねぇ!」
「沙耶はお尻でいきたいんだ」
「うん、そうなの、沙耶はお尻でいきたいの!」
「じゃあ、どうすればいい?」
彼は私におねだりを強要する。さんざんおまんこで教育された言葉を搾り出した。
「もっと速く動いて!お願い、もっと強く沙耶のお尻の穴を抉ってください」
彼はとても邪悪な笑みを浮かべた。
「よくいえました」
ああ、これでいかせてもらえるんだ。涙がでた。
「あああぁぁぁぁ・・・」
太い杭が私の奥深くを抉った。
「ひぎ!んあああああああ!いく!いく!いっちゃううぅぅぅ・・・・」
肛門を激しく擦られる感触でいってしまった。
私のお尻がぎゅっと彼を締め付ける。
「くっ・・・絞まる」
彼にもいって欲しかった。私はぎゅぎゅっと締め付ける。
私の肛門を支配したことに満足したのか彼も私の中に精液をぶちまけた。
どびゅ!どびゅ!びゅ!・・びゅ・・・。
「あは・・あつい・・・」
すごかった。すごい気持ちよかった。
これからはお尻も調教してもらえるんだと嬉しくなる。
全身から力が抜ける。涎がこぼれる。
知らずにおしっこを漏らしていた。
「はあ・・・・」
すごく気持ちよかった。
<8>
気が付くとベットの上だった。
私も彼も素っ裸だったが、別に気にならない。
彼は軽い寝息を立て眠っているようだ。
伊吹君を見ていると愛おしさがこみ上げてきて、彼に抱きついた。
彼の腕の筋肉に私の胸が形を変える。
ひょろっとして見えたけど意外と筋肉がついてるんだ。やっぱ男の子だな~と思った。
ふと・・・。
あれ?
あれれれ?
あれれれれれれれれ?
がばっと彼から離れる。
記憶が全部戻っていた。
この1週間の記憶。彼とセックスしまくって。快楽に調教され。肛虐にまで溺れた記憶。
それらはありありと思い浮かべることができる。
何度も何度もいかされまくり、おちんちん欲しさに忠誠を誓った牝犬の記憶。
それが全部嘘!!!?
それら性の記憶とともに私は思い出していた。今日が今日であることを!
あれから、彼と屋上で闘ってからまだ、6時間ほどしか経っていないことを!
私は愕然とするしかなかった。
お腹がすいた。と言った俺に彼女はお茶とお茶菓子を用意してくれた。
パンプキンパイとシナモンティ。
特にパンプキンパイは絶品で、俺は壮絶に喰らいついた。
あまりの上手さにお替りを要求したほどだ。
彼女はパンティとなぜか俺のカッターシャツを着ており前が開いた状態でめちゃくちゃエロい。
俺はパンツとシャツなのだが、何故に男女でこうも違うのだろう。
彼女は終始無言だった。ちょっと怖い。
パイを全部食べ終わったあと彼女は唐突に語り始めた。
「私はお爺ちゃん子でね・・・小さいころから兄弟になじめなくて浮いた存在だったの」
小さい頃もかわいかったんだろうなあと想像する。
「本名は溝呂木沙耶っていうの。溝呂木って知ってる?」
「名前だけは・・・」
確か、地元の名士だ。ここから駅で3つほど離れたところにばかでかい本宅があったはず。不動産やら金融やら工場やらいろいろ持ってる大金持ちらしい。
「それで、10歳の頃だったかな、本当のことを知ったのは。そういうことって隠してもどうしてかばれちゃうものなのね、私って本当はお爺さまの子供だったのよ」
へ?
「お爺さまが50過ぎて若い妾に産ませたのが私というわけ。氷室というのも母方の名前なのよね。世間体が悪いからって父の子供にされたの。笑うわよ、お父さんと思っていた人が実はお兄さんだったなんてね」
彼女の家はいろいろと複雑らしい。
「それでも、お爺様が亡くなるまではよかったわ、まだね・・・。2年前に亡くなって、それからはいろいろ陰湿ないじめにあったわ。兄弟にね」
「そういう環境で育った私は人を信じられないひねくれた女の子になってしまったの」
「・・・・」
資産家ってのもいろいろ大変らしい。俺にはわからないことだからふ~んとしか言いようがないが。
「まあ、遺産があるからお金だけには困らないから、贅沢かもしれないけどね」
「なんでまた、そんなことを?」
俺に話すのか尋ねてみた。
「・・・・ねえ。・・・・伊吹君・・・・どうして私に羽をくれたの?」
彼女は俺の問いには答えず逆に問いかけてきた。
「いや、その・・・」
どうして、といわれても勝手に飛んでいったものだから答えようがない。
「私が欲しかった?」
ちょっとはにかみながら上目使いに見る彼女はとても魅力的で、例えそうでなくとも欲しくなってしまう。
「あ・・ああ・・」
うわずりながら俺は答えた。
「ふ~ん・・・、ま、いいわ。合格としましょう」
何を言ってるか理解できない。
「あのね、私は好むと好まざると伊吹君のシモベとして生きていくしかないわけ」
ふ~っと息を吐く。
「私の人間としてのこれまでとこれから。今までのどろどろとした生き様とか、もうどうでもよくなっちゃった復讐とか、ぜ~~~んぶ背負ってもらわないと困るわけですよ」
そういいながらテーブルを回って俺の真横まで来る。
「伊吹君は私を人でないものにして、体を奪って、心を奪って、私の人生を奪ったのよ」
指を突きつけてくる。
「それと!パンプキンパイの最後の1個を奪ったのよ!!」
いや、それは・・・・。
「まさか、これだけのことをしといて、これでおしまいってことはないわよねえ」
美貌の上に全裸よりもエロい格好ですごむ沙耶はとても怖い。
「いや、ソンナコトハ・・・」
ニコリと笑ってぎゅっと抱きついてきた。
「ちゃんと責任取ってくださいね・・・。ご主人様」
沙耶のセリフと甘い匂い、そして柔らかい体にドギマギする。
う、・・・これは・・・掴まったかな・・・。
「ああ、離さない。絶対」
そういって俺は彼女を抱きしめた。
「フフフ。言いましたね」
するりと腕から抜け出す彼女。
「え?え?え?」
「では、早速証明していただきましょう」
いつのまにか、腕を取られてる。
「まて、沙耶!いや氷室さん!ちょっとまって!」
俺のセリフは優雅に無視され、体を持ち上げられる。
沙耶は俺を簡単に捕らえ、ベットに連行した。
「私もしかしたら、すっごいHかもしんない・・・」
既に興奮してるのか、顔を赤らめた氷室さんは壮絶にいやらしい。
「たっぷりちょーきょーしてね」
うわああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・。
結局のところ彼女の白い肌の誘惑にあっさり陥落した俺は、沙耶に何度も甘い声を挙げさせた。
さて、捕らえたのか捕らえられたのか、ミイラ取りがミイラになったのか、男と女の関係は深く巧妙に激しく捻じ曲がっている。
むづかしいことは明日考えることにして若い俺は目の前の美肉をむさぼるのだった。
ところで、神ですら全てを見通すことは適わない。
ましてや神様若葉マークの俺がそれに気付くには随分とかかってしまった。
そう、あの日俺から生まれた神の子は3つ。あとふたつは未だ見つかっていない。
波乱はまだ始まったばかりだったのだ。
< 終 >