おねえさんの下僕になって 7

第七夜

 美子の前に出現したのは、妖怪の世界からやってきたという使者を名乗っていた、宇宙人のような姿でもあったが、宇宙に住んでいるわけではないという前置きもしていた。

「あ、あなたは…。」
「ふふふふ。小川美子さんとやら、急に自殺願望なんかどうしたのかしら。」
「わたし…、だんだん醜い姿になっていくのを感じているんです。だから、いまのままで…。」
「うふふ。しょせん、あなたは低級の妖怪として洗脳された吸血鬼だからね、いずれそうなるのはあなたの運命でしかたないわ。でも、あなたはどうして吸血鬼になったのか、そしてあなたの吸う相手が限られていることもおわかりのようだから。」
「ええ。わたし、片思いの男の子を追いかけていたところをドラキュラ様に見つかって…。」
「ふふふふ。あなたのそのいやらしい心がいまの低級の妖怪になった条件なのよ。けれども、自殺しようというのは掟に反する行為よ。」
「掟に反するって…。」
「罰を受けなければいけないわね。」
「罰ですか。」
「さっそく、こっちにいらっしゃい。」
「あっ。」

 謎の怪人は、美子を自分のほうにおびき寄せたかたと思うと、すぐその場で美子の着ていた服を脱がし始めたのであった。

「きゃあ。」
「ふふふふ。」

 怪人が光線を放つと、怪人と美子の周囲の光景が消えてしまい、四次元の世界にワープしていたようであった。気がつくと、美子は裸になっていたまま縄で腕ごとしばられたさるぐつわの状態で、さらに美子をしばっていた縄が美子の身体を逆さづりにして、美子の長い黒髪も頭から大きく下のほうにだらーんと垂れ下がっていたのであった。

「痛い、熱い…。」
「うふふふ。」

 美子は、怪人に鞭でたたかれたり、ろうそくの炎から垂れてくるろうを身体じゅうに受けているのであった。

「たすけて…。」

 その力ない美子の叫びを、百合樹がテレパシーで感じ取っていた。

「もしかして、おねえさん?どこに、どこにいるの?」

 百合樹は、そのあとため息も聞こえてきたのを感じて、美子が危ない目にあっているのではと思い、夜中に家の窓からとびあがって美子の家へと向かったのであった。

 異様な雰囲気を感じたのは、警察学校の犬たちの間でもあった。

「恐ろしい侵略者がすぐ近くにいるわ。みんなで探し出さなければ。」

 騒ぎ出した犬たちも、警察学校の門を出て美子の家の方にむかっていったのであった。警察学校では人間の警備員もいるはずなのであるが、この夜はたまたま勤務をさぼって友人と麻雀をやりに行ってしまい、戻れなくなっていたのであった。

 百合樹は、美子の家が玄関もあけっぱなしになっているのを見てやはりなにかおかしいと感じた。家のなかにも入ってみたが、誰もいるようすがなかった。美子がいつも寝ているという部屋に入ってしまい、美子の制服や下着、髪飾りなどがあるのを見て美子のことを思い出さずにいられなかった。ベッドには濡れたあともある。美子が夢のなかで好きだった以前の同級生に抱きついてフェラチオまでしてしまい、興奮しておもらししていたのである。

「おねえさんは、やっぱりいつもオナニーとかしているみたい…、はっ。」

 警察学校の犬の群れがようやくたどり着いていたようで、足を止めていた。犬どうしの間でも、侵略者のいるのはあっちかこっちかと話し合われているようだった。
 そして、とうとう何匹かが家のなかに、そのなかには自分の親を美子に殺されていたという犬もいて、美子の居場所がわかったようである。犬は、人間以上に匂いに敏感であることはたしかである。

「うわっ、なんだい?」

 犬たちも美子の部屋に入ると、美子がおもらししていた布団のシーツをはぎだして部屋の外にひきずって運んでいたのである。

 『ここに問題の侵略者と人間の女がひとりいるみたいだよ。』

 その濡れた部分に犬たちが揃って向かっていったのであった。

「いったい、この犬たちは…。」

 百合樹はぼうぜんとしてその場で見ているだけであった。

 犬たちの入り込んだ世界には、怪人と美子がいて、美子が怪人に処刑されている姿があった。その怪人に向かって犬たちはうなり声をあげるのだった。

「なんだ、この犬どもは、うう…。」

 怪人は、犬たちのターゲットになっていた。一斉に十匹以上の犬にとびかかられてはなすすべもなかった。

「きゃあ、やめてちょうだい。ぎゃあーっ!」

 すると、周囲の壁などが崩れて、閃光が走っていた。

 気がつくと、美子も犬たちも元の世界で、美子の家の前にいるのであった。犬たちのターゲットになった怪人は逃げていったようである。そして、美子が犬たちに囲まれて家のなかに運ばれ、美子も気づいたのであった。

「まあ、あなたたちは…。特に、わたしはあなたの親の仇よ。それなのに助けてくれるなんて…。」

 玄関のところで、犬たちは裸のままになっている美子の身体をおろした。そして、みな一斉に反対方向を向いて美子の家から出ていき、警察学校に夜が明けないうちに帰っていったのであった。

 玄関の前に倒れていた美子の姿を百合樹も見つけ、しかも裸のままだったので思わず目をそらしてしまった。

「ああ、あんた…、おねがい、わたしに血をちょうだい。」
「え?うん。」

 百合樹もすぐその場で服や下着を脱いで裸になり、美子の身体に正面から抱きついて美子の髪をなでるのであった。

「よかった、おねえさん、助かったんだね。」
「わたしも、あの犬たちのためにもう、死のうなんて思わないわ。それより、あんたから血を吸い続けていればずっときれいでいられるし…。」

 美子の牙が百合樹の首を強く刺して、流れ出てくる血を美子は何度も舌ですくいあげていた。

 それから、百合樹は夜中になると美子の家に通いつめては、美子との性行為に戯れているのであった。

「おねえさん、三つ編みできたよ。」
「じょうずになったわね。じゃあ、背中にまわって抱きつくといいわ。わたしの髪を分けているヘアラインをなめてみて。」
「うん。」
「ふふふふ、あいかわらず大きくぼっきするわね。特に三つ編みをわたしがした時にね。」
「ねえ、おねえさんはずっと髪の毛を長くしているの?」
「少しずつ切ったことはあるけれど、幼稚園の時から短くしたことはないわ。いつも三つ編みできる長さはあったわよ。」
「こんどこのまま切らないでいたら、地面についちゃうかな?」
「あんたも、髪の毛長くしてみる?そしたら、三つ編みにしてわたしがあんたの髪をひっぱるから。似合いそうよ。」
「ええっ?まわりになんと言われるかな?」
「ふふふ、わたしたちはもう人間じゃない、吸血鬼の妖怪なんだから、髪も自由に伸ばせるのよ。いますぐにでもね。」
「ほんと?やってみたい。」
「いいわよ。」
「あっ、で、でちゃう…。」
「うふふふふ。」

 その時百合樹の精液が大量に…、こうして、このふたりは将来結ばれるようになるのだろうか。でも、いまは決して恋人どうしの関係ではなく、あくまで百合樹は美子の奴隷で下僕であり、性行為のおもちゃにすぎないのである。百合樹が美子に対する思いを一途に続ければいずれは実るかもしれない。

< おわり >

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