********** exhibition 『TEST』 7 **********
【晴海『Zton(ゼットン)』店内 地下舞台】
(みんな、ごめん。本当にごめん、お別・・れ・・みた・・い・・ごめんね・・ごめんね、ご・・・め・・・・・)
奈津美はぐったりとして二度と動かなくなった。
それを確認して無表情のまま奈那と麻衣子は奈津美の拘束を解いて瑠璃子に歩み寄った。
事切れたに違いない奈津美をチームメイトたちが陣内瑠璃子を守るようにして見下ろしている。
その痛ましい姿に誰一人表情を変えず、無表情のままで感情のかけらさえ持っていなかった。
「すまな・・いナ。かばい・・きれなか・・ったか・・」
「な、ナイトホーク!」
ママと瑠璃子の前に横たわった大きな背中、舞台はすでにいたるところが血まみれだ。
瑠璃子とママが同時に影の名前を叫んだ。
目の前に飛び込んで盾となり、銃弾を二人の代わりに受け止めたのはナイトホークこと鷹野美夜子だった。
二人に同時に呼ばれて、俯せの状態から体を返し振り向いた彼女の口元から一筋血が流れ落ちる。
苦痛にゆがんだその顔でウインクして微笑を浮かべる。
「ナイトホーク。なんで、あなたが」
ママは驚きを隠せない。
「さあ・・な。こ・・なワリを食・・うことなん・・てスワ・・トをクビになって・・・・以来、すっか・・り御免こう・・ると決め・・ていたの・・に。ママ、観・・客席・・張り巡らさ・・たスワット・・のトラッ・・プはすべ・・て安・・全に解除・・した。・・客・・避難はもう・・何の障・・害もなくで・・きるは・・ず・・」
「あなたにしては一生分の気配りね、助かるわ。その腕の傷と手錠、まさか拘束されて引きちぎってここまで来たの」
「オ・・レの驕り・・だ。この建・・物の中で起・・こったこと、識・・者会はすべ・・見通しだ・・ろう。ならば、少し・・で・・信頼回復・・・ておかな・・けりゃ、懲・・罰・・免れ・・ない。でも・・その心配・・もい・・かもな。死をもっ・・て償う、失敗の・・責任の取・・り方だ。あ・ば・・・よ」
2人をかばった影の主、ナイトホークは二人をかばい、一瞬にして血まみれになってその場に倒れ、ママに抱かれて言葉を残した後、ぐったりと崩れ落ちた。
「ナイトホークは自分勝手にもそこの伊部奈津美を自らの手駒にしようとして逆に利用された。ハンターが自ら手駒を増やすは何ら咎めるべきものではない。ただし、今起きている結果は自らの驕りによりパーティーを台無しにしかねず、組織への背任に結びつく、許し難いものだ」
虚空の長からの声が劇場に響き渡った。
「ナイトホークの死をもって償うその行為は識者会としては最低限の贖いとして解釈するも、その結果として、『SNOW』と『メデューサ』を守り、スワットのトラップを解除し、バイヤーを危険から守った行為については、一部評価に値する」
劇場からも心ばかりのささやかな拍手が起きる。感謝なのか、しらけた演出への終演の願望からくる義理なのか推し量るすべはない。
「バイヤーの皆様の英断に感謝申し上げる。ナイトホークの罪は問わないこととする。ナイトホークと伊部奈津美、明智祐実そして舞台下の司会を搬送しろ」
長の声にどこにいたのか屈強な黒服の男たちが現れ、手際よく簡易的処置を施しつつストレッチャーで三人を舞台から搬送していく。
すでに舞台下に落ちていた司会と祐実、そして奈津美に意識はなくピクリとも動かない。
「識者会付きの『ガード』よ。識者の命令のみで動く。いつもどこに隠れているんだか・・真っ黒で無表情ですばしっこくて、『マトリックス』なゴキブリ野郎たちね」
これから醜態を演じさせることがショーのグランドフィナーレだといったママも長の指示には口答えもせずに黙ったまま祐実を見送った。
運ばれていく伊部奈津美を瑠璃子は最後まで見送っていた。
瑠璃子の目の前からストレッチャーで運ばれるナイトホークを見送る。
動き出したストレッチャーから急に血まみれの手が伸びてが瑠璃子にしがみついた。
ナイトホークの手だった。
「なに?何か言いたいの」
訴えかけるようなナイトホークの眼差しに瑠璃子は顔を寄せた。
「今まで見てきてお前の性格は理解している。だが、組織に入った以上、ハンターにまでなったんだ。長や識者会には盾つくな。これは忠告だ」
「あっ、そりゃどーも、ご丁寧に」
瑠璃子はナイトホークの忠告など意に介さないようなしれっとした態度だった。
「自分がいつまでも自由だと思うな。お前はすでに自分勝手に動くことができない爆弾を抱えていることを忘れるなよ。お前はすでに鈴をつけられた飼い猫に成り下がっている」
「爆弾?飼い猫ォ?なにそれ?ボクは今まで自分でいろんなピンチを乗り越えてきたよ、一人で。乗り越えられない危機なんてなかった。ボクの力はそのためにある」
「驕るなよ、驕ったが最後、このザマだ。どうだ、私が言うと説得力があるだろう・・・・」
ナイトホークは力のない苦笑いを浮かべた。
瑠璃子を掴む血まみれのナイトホークの手を、瑠璃子は指1本1本ほぐしていく。
「ボクは、アンタとは違う」
「・・・・・・・・そう・・か」
ナイトホークはもう何も言わず、目で瑠璃子に訴えているようだった。
やがてすべての指が瑠璃子からはがされて、ストレッチャーに瑠璃子が戻すとあとはもう何もなくナイトホークを載せたストレッチャーが去っていく。
さてと―――――、と瑠璃子は深呼吸を一回して闇の虚空に向かって叫んだ。
「長さん!いるんだったら、ボクが明智祐実を頂戴っていった時にどうして返事してくれなかったのさ!それにママがボクを、組織のためになる展開をここにいる人たちのために提供するスタッフだと言った。そんなことまでやるつもりなんかサラサラないよ!」
「SNOW、いい加減に分をわきまえなさい。識者会の皆様のお怒りをかっては私たちは存在できないのよっ。これは私があなたを心配しての忠告よ。ナイトホークの言葉を思い出しなさい!」
ママが口早に真顔で言った。
本気で瑠璃子の態度を戒めている。
おそらくママも識者会には頭が上がらない。
そのことはママの一連の態度からも容易に推察できた。
識者会の長からの声は再び途絶え、沈黙だけがあたりを包み込んでいる。
観衆は再び固唾を呑んで何が起こるかを見守っている。
「ふ~ん、また無視するんだね。えらいえらい長さんは・・・・」
瑠璃子が悪態をついたそのとき、天に声は届いた。
「SNOW。今回のレディスワットのチーム6全員の籠絡の報酬として、識者会はお前に明智祐美を与えることを許可しよう。自由にするがいい」
長の声が劇場内に響く。
「そりゃ、どーも。それならそうとさっき、すぐに答えてくれればよかったのに。もったいぶっちゃってさっ!」
「ただお前の申し出は、メデューサが今回のパーティのために骨を折ったシナリオを最後の最後で無にすることであり、我々の大切な会員へのおもてなしを台無しにするわがままだ。まぁ、結果として明智祐実の自傷は予想外で、結果としてフィナーレはできなかったわけだが」
「長、発現のお許しを頂きます。ただ今の長のお言葉は、私には過分たるものです。メデューサは識者会の皆様のお役にたてて、バイヤーの方々に歓んでいただくことが仕事なのですから」
ママは虚空に向かって嬉しげに瞳を輝かせ片膝を地につけ、両腕を胸の前でクロスして自分を抱くようなポーズで深々と頭を下げる。
おそらく識者会に対する忠誠のポーズなのだろう。
「メデューサ、励め。引き続き励め。今回の仕切り、我々も十分満足のできるものだったぞ。見事だ」
「ありがたきお褒めのお言葉、それだけでメデューサは幸せでございます」
ママは軽くはないケガの体にムチうち、顔をあげて目を潤ませてまで長の言葉に悦びうち震えている。
瑠璃子はママの表情を見てある疑念が湧いた。
(ま、まさか、ママも、長に支配されている・・・・!?)
その時、瑠璃子の携帯が鳴った。
「SNOW、切りなさい!長との話は終わっていない。携帯電話なんかに出るのは失敬よ!」
「関係ないね!」
ママの制止を振り切り、半ば反抗的な態度を堂々と見せつけるたいがため、軽率にも瑠璃子は相手先も確かめずに携帯の着信を受けた。
「もしもし・・」
「○△×□・・・・・・・・・・アデムシ・・・・」
瑠璃子の耳元でささやかれた言葉に瑠璃子の全身が反応する。
(!!!!!!!!!!!!!!!!しまっ・・・た)
瑠璃子の中で初めてナイトホークの忠告の意味を理解した。
自分はにゃんにゃんハウスで醜態をさらしていた。
『お前はすでに自由ではない』そういったナイトホークの言葉を今、改めて理解した。
『乗り越えられない危機なんてなかった。ボクの力はそのためにある』さっき口にしたばかりの自分の言葉が皮肉にも聞こえるほど自分の脳裏に響いている。
それすらも霞がかって、今、瑠璃子は再び自らが絡め取られる恐怖に襲われていた。
自らを救う手だては琥南の顔、それが瑠璃子が襲われた時のために自らがかけた呪縛を解く唯一のキー。
ただ、その琥南自身が今はどこにもいない。
(クっくそーっ!)
瑠璃子の自分勝手な識者会への態度を示す最後だった。
瑠璃子がにゃんにゃんハウスで絡めとられた完全キーワード。
なぜそれを長が。
琥南が、アイツがチクッたか。
瑠璃子の思考がそこへ行きつく前に瑠璃子の精神は深淵のかなたへと吸い込まれていく。
瑠璃子の意識のブラックアウト――――。
瑠璃子の表情がバイヤーたちのモニターや劇場のモニターにアップになる。
携帯を耳にあてたまま瑠璃子はフリーズしている。
表情は一瞬にして今までの顔だちを崩して蕩けるよな夢見の表情へと変化する。
その表情の劇的な変化に場内からは祐実の激変の時以上の感嘆の声が漏れた。
「ああああああ、おにいちゃん、おにいちゃぁん、輝美はおにいちゃんのためにあるんだものぉ、うん、ううん、そうだよね、おにいちゃんがそう言うんなら間違えなんかあるもんか。長に絶対服従するね。うん、識者会のみなさまの命令は輝美にとっておにいちゃんの言葉同然だよ。反抗なんか絶対しない、するもんか。素直に従うの。うん、輝美はお兄ちゃんの言うとおりいい子なるよ」
おおっと劇場から歓声が上がった。
あの反抗的な女子校生はたった1本の携帯の着信で識者会に絡め取られてしまった。
「うん、そうだよ、輝美はセルコンの一員になったんだもの。うん、一生懸命頑張る、組織のためになることに不満なんか言わないよぉ。おにいちゃんのためだものォ。うん、うん、反抗なんて絶対しない。心の底からおにいちゃんのため、識者会のみなさんを尊敬して、言われたことは絶対に全部成功させる、だってそれが輝美の悦びだもの」
携帯片手に相手と話す瑠璃子の蕩けた表情の口元からは涎が糸を引いてライトに照り映えている。
話をするたびに全身を痙攣させ多幸感に包まれているのが誰の目にも明らかだった、あの反抗的なイケイケの女子校生の姿はあっというまに霧散してしまった。
カメラは瑠璃子のチェック柄のスカートとそこから見える若々しい太ももを映し出す。
内腿からキラキラと光る筋が幾線もゆっくりと流れてる。
性的にもイキっぱなしの状態であることが伺いしれた。
劇場内からは識者会の底知れぬ力に驚嘆の声が漏れた。
「そうだよね、輝美は組織の一員になったばかりだから、周りの人にもちゃんと礼儀正しくするよ。おにいちゃんの言うことはいつも間違いないものね。うん、ごめんなさい。バイヤーの人たちにも謝る。うん、ううん、恥ずかしくなんかないよ、うれしい、おにいちゃんが言うことを守ることは輝美にとって、とってもとっても大事で嬉しいことだから」
瑠璃子から引き出される言葉はすでに組織への忠誠へのなにものでもなかった。
言葉を自ら吐き出しながら、瑠璃子の表情は酩酊しているかのように、自分の言葉に酔い、自分の言葉で自分に暗示をかけているようだ。
呆けた表情はさらにだらしなく口から涎を垂らし糸を引く、それがライトに照らされてモニターに映るとそれまでの瑠璃子とのギャップ、落差の激しさに場内が沸いた。
『蕩ける』、『絡めとられる』、『自我を奪われる』、『完全なる操り人形化』、それを『ハンター』とまで組織に認定された能力あるものが堕とされつつあるのだ。
場内が興奮しないわけがなかった。
携帯をしまって瑠璃子は舞台の一番前に進み出た。
「バイヤーのみなさま、私、輝美の今までの非礼な言葉の数々、この場をお借りして心からお詫びします。本当に申し訳ありませんでした。輝美はこれからSNOWとして組織の発展のために一生懸命頑張ります」
瑠璃子の言葉に拍手が起こる。
それは瑠璃子の態度や言葉に対してではなく識者会の瑠璃子を籠絡するまでの過程をライブで見れたことの喝采だ。
瑠璃子は舞台そでに下がったママに笑顔で向きなおった。
ママでさえ驚きを隠せないほどの豹変した今どきの女子校生の顔だ。
「メデューサ様、私、SNOWは悪い子でした。これからはメデューサ様の御心のこもったお言葉は素直に受け入れて、礼儀正しい態度で従います。これからSNOWを組織のために役立つ一員として導いてください」
そう言って深々と頭を下げると今までママに対して見せたことのないような可愛らしい屈託のない笑顔で微笑んだ。
「バカね、私やナイトホークの言うことを素直に聞いてりゃ、あそこまで取り込まれて脳ミソいじくりまわされることもなかったのに。自分の本名まで明かすほどココロの根っこまで持ってかれちゃったのね。哀れだわ、携帯がこんな地下で鳴るもんですか。全て識者会の仕掛けた『教育』。私が携帯に出るなと言ったのも忠告ではなく、敢えてあなたに携帯電話に出させるための誘いだったのに、意外と単純で馬鹿なお子ちゃまだったからかしらね、SNOW」
「はい。輝美は馬鹿なコです。だからみなさんの言葉に素直に従い、みなさんの力になれるよう、一生懸命努力しますっ!」
ママの呟いた独り言にも瑠璃子は自分への忠告と抵抗もせずに忠誠すら誓う言葉を口にする。その変貌にママは改めて識者会の思慮深さと強大な力に畏怖した。
自分でさえ、ココロの一部はすでに識者会に支配されている。
その上で与えられた地位と自由だ。今、コーディネーターの地位にあるメデューサこと、ママでさえ瑠璃子の豹変ぶりに否が応でもそれを思い知らされる。
改めて組織に逆らうことへの恐怖心が刻み込まれた。
「まさか、あんたがそんな可愛い笑顔の似合うコだったなんて想像さえできなかったわ」
ママの皮肉まじりの言葉に瑠璃子は満面の笑顔を浮かべ、「お褒めいいただいてうれしいです」と喜んでみせた。
これ以上、識者会の意に反することを勝手にすればナイトホークのように死をもって購うか、陣内瑠璃子に成りすまして自由奔放にして識者会を重んじなかった輝美のようにココロの奥深くまで支配されるかのどちらかだ。
瑠璃子は今までのふてくされたよな態度が別人のようにわざとらしいとさえ思えるほど、スキップをして跳ねるような可愛げのある歩き方で客席の前に進み出た。
「輝美は今日からSNOWになります。でもそのまえに、ここにいるすべての皆様へお見せした今までの悪態ともいえる非礼のお詫びとして、識者会の方々とメデューサ様がグランドフィナーレとして、ご用意していたプランを台無しにした悪い子・輝美は、識者会からの進言を心から素直な気持ちで受け入れて、私、自らが誠心誠意の謝罪を込めたグランドフィナーレをさせていただきます」
別人のように瑠璃子は三つ指をついて礼儀正しく舞台から客席に向かって一礼すると、何の躊躇いもなく可愛げのある仕草で制服を脱ぎ始めた。
客席からは大歓声と今までにない喝采が沸き起こる。
「さぁ、あなたたちも、笑顔でサービスしてね。あなたたちはマスコットなのよ。客席を回って体を差し出してきなさい。可愛がっていただいくの」
瑠璃子は呆然と立ち尽くしていたチーム6の全員に命令すると京香と小雪を含めた全員が笑顔をたたえて客席に散っていく。
一糸纏わぬ瑠璃子の体は発育の良い絶妙なプロポーションとして再びバイヤーたちから歓声を浴びることとなった。
「ちなみに、輝美はまだバージンですっ!だから、皆さま前でロストバージンをお見せできるのをとってもうれしく思います。光栄です!輝美がロストバージンする相手は輝美を高く評価してくださり、識者会への次回のTESTの協賛をお願いできる方にしたいという識者会のご命令に輝美はすすんで従います」
言うないなやオークションのマネーカウンターはものすごいスピードで上昇し始めた。
「輝美の心からの愛を捧げるヒトが決まるまで、輝美はここでオナニーをお見せしながら待ちます。それが皆さまに楽しんでいただくことと信じます。ここにいる皆さまに喜んでいただくことが私の今までの償い、そして輝美の生きがい、幸せです」
そう言って瑠璃子は舞台正面に黒服が用意したゆったりめのソファに腰を下ろすと恥ずかしげもなくM字開脚するとスジを指でなぞり始めた。
「輝美は、まずこうやってスジにそって人差し指、中指、薬指と順に追うようになぞっていきます。クン、ふ~ん」
金額の更新速度が更に上がっていく。
瑠璃子のパンティの筋目はすぐにその濡れ具合がわかるほどに滲んだ。
そして笑顔と、恍惚とした表情が入り乱れる中で、く~んっと子犬が寂しさに泣くような可愛らしい喘ぎ声を漏らして鼻の頭を汗を浮かべ、眉間にうっすらと皺を寄せた。
オークションモニターは画面分割であらゆる角度から全身、局部アップ、顔の表情などを多面的に映す。
客席からは大歓声と今までにない喝采が沸き起こる。
それに反応するかのように瑠璃子は悦びの表情をさらに深くした。
「さぁ、あなたたちも、笑顔でサービスするの。あなたたちはマスコットなのよ。客席を回って体を差し出してきなさい。触っていただいくの」
瑠璃子は呆然と立ち尽くしていたチーム6の全員に命令すると京香と小雪を含めた全員が客席に散っていく。
「胸も揉みから優しく入って指で乳首の周りから先に向かってゆっくりとなぞりあげて勃たせて堅くしていきます。お胸が大きいのでこうすれば乳首を目いっぱい伸ばした舌でチロチロとできちゃうんです。Hするの怖いので今までずっと自分でやってましたぁ」
すでに鼻の頭に汗をにじませて瑠璃子は自慰に耽る。
「スジに指が入っていくと、あ、あん。おツユで湿ってきて、んん~、スジがぱっくりと開いてくるんです。そうしたらオマメもクリクリしまっす、きゃふん。あぁ、いいよぉ、気持ちよくなってきちゃったよぉ」
瑠璃子の指が深くそしてだんだんと激しくなっていく。
「な、なんでぇ~っ、なんで、いつもより、すっごくカンジちゃうよォーっ!全身電気が走ったみたい、ピクピクしたうぅぅ~」
腰がまるで別の生き物のように快感を求めてグラインドする。
指、手、腕の動きはさらに激しくなっていく。
「あん、ああああん、気持ちよくって、気持ちよくって、翔んじゃう、まっしろになっちゃう、あふん、いい、ああ、いい、っっっ、いっくうーっ」
瑠璃子は短時間のうちに一気に自分の体をいじって最初のオーガズムを迎え、白目をむいて体をひくつかせている。
識者会の力とはいえ、ハンターにまで決まっている使い手を、そして性への快感の本質さえ未経験の女の子を、あっという間に一匹の欲情に狂ったメスへと変えてしまった。
瑠璃子の昇天とともにオークションの落札期限となって、ドールに連れられた男が舞台へと昇る。
「あぁ、きて、はやく、輝美の初めてをもらってくださぃ~。心を込めて輝美はあなたを愛します。輝美の初めての血と愛を捧げます、識者会のためにあなたへーっ!!!!」
そう言うと瑠璃子は両手を広げて全裸になった男を招きいれた。
「加賀源内だ」
男は一言名乗った。
「あん、源内さまぁ~。愛しています。心からお慕いしています。輝美の初めてを差し上げるのに相応しい素晴らしい方です。輝美は心から源内さまのために尽くします。だから、そっと、最初は・・・ゆっくり。おねがい、やさしくシテ下さい。あ、あ、あああああああああーっ、い、いたぃ」
瑠璃子の顔に一瞬苦悶の表情が浮かぶが、それをこらえて瑠璃子は汗ばんだ笑顔を加賀に見せると思い切り抱きつくように加賀に対して腕の力を込める。
それを契機に男が一気に貫いた。
「ひっぅっ!い、いたい。いたいですぅ、源内さまぁーっ痛い。いたいぃぃぃ」
「感じろっ!一生に一度の痛みだ、楽しむんだ、その痛みを貴様は自分で快感に変えられる。そんなチカラをお前はもっているのだろう。自分で自分が感じている苦痛を最初で最後の体験を二度と味わえない快感に私の目の前で変えて見せろ」
「はぁ、はぁっ、はいっ。輝美は、輝美の持っている力で、いま感じている痛みを二度と味わえない快楽に変えて見せますぅ」
一瞬、加賀はピストン運動を止める。
瑠璃子は目を閉じてしばらく加賀に刺しぬかれたままじっとしていたが目を開けたときその眼は妖しげに潤んでいやらしげな舌なめずりをして加賀を見つめた。
加賀はそれを合図のようにグラインドもピストンも思いの限りを尽くして瑠璃子をねっとりと攻め始めた。
「あぁぁぁぁあ、いい、いい、いいですぅ。いいよぉ、キモチいいよォーっ。源内さまぁ、キモチいいっ!源内さまのが輝美の中で輝美をキモチよくしてくれてるのぉぉぉぉーっ!」
「クククク、ハハハハハ、それ、どうだ!感じるか!さっきまで処女だった貴様が、今はもう何度もセックスを重ねた女のように快感を貪るか?あん?」
「はい、はいぃぃーっ、感じますうぅ~、輝美は、輝美はキモチよくて、キモチよくて、頭まっしろぉーっ!」
加賀はあらゆる体位を瑠璃子に要求し続けたが瑠璃子はどそのすべてを積極的に受け入れた。
破瓜の血が内股にスジをつくり滴り、愛液と男の重ね摺れる内腿がそれをかき消していく。
「ああああああんんんんんん、源内さまぁキモチいい~大人のオンナにして頂いてありがとうございます。快感ですうぅ~。輝美はこれからも組織にため、識者会のため、皆さまのために精一杯働きます」
オークションの落札額は実に3億円もの値をつけていた。
「もっと、もっと、もっと、強く、強く、感じます、源内さまの、たくましい、男らしい、硬くて、太くて、大きい源内さまの輝美への愛を感じますぅ~。輝美は、てるみは、そのお気持ちを倍にして、倍にして、誠意を尽くして愛させていただきます。好きです、愛しています、源内さまぁ~、げんないさまぁーっ!」
源内に比べて小柄な瑠璃子は力いっぱい源内を抱きしめて、腰をくねらせ、源内を、奥へ、さらに奥へと包み込み、咥えこんで引き入れていく。
やらされているのではなく、心の底から愛した相手を慈しみ、迎え入れているその行為と言葉が、先ほどまで悪態をついていた瑠璃子とは思えないほどのギャプに周囲は源内を自らに置き換えて感じ入っていた。
瑠璃子の表情はうれしさと女の悦び、その喜悦に満ちた表情で満たされたうえに涙さえ浮かべている。
それは心の奥底で必死に抵抗している瑠璃子の涙ではなく、明らかに自分の処女を奪われ、肉体をいいようにもてあそばれながらそれを悦びとして受け入れてしまっている操り人形の悦びの涙に他ならない。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ、い、いく、いっちゃうう、あたまが、まっしろになっちゃうぅ、源内さまぁ~、わたしの愛する源内さまぁ、私の大切な大切な源内さまぁ、ご主人様ーっ、イクぅぅぅぅぅー、あぁぁぁぁぁーっ」
源内の腰のグラインドと共に瑠璃子は爪を立てるほどに源内に抱きつき、津波のように襲ってくる快感に我慢しきれず源内の肩を噛み、カラダをビクビクと何度も何度も震わせた。
「ふぅ、ふふふふ、はははは。悪くなかったぞ、ハンターの初物をまさかいただけるとは安いものだ。私の専属としたいものだ」
男はそれでも十二分に堪能したようにぐったりとする瑠璃子を舞台に横たえると、ドールから差し出されたガウンを羽織りシャワー付きの個室客席へと導かれていった。
瑠璃子はぱっくりと口を開け、濡れて精液のこぼれる局部を舞台から客席に向かってさらけ出してぐったりとしている。
多幸感に包まれ、にやけながら今起きた経験を蕩けた表情で満足そうに天井を見ながら反芻し、体についた精液を指で掬っては愛しげに舐めている。
ぱっくりと口を開けた瑠璃子の秘部から指が抜かれ、その口からこぼれる精液のさままでモニターにアップになった。
会場からはグランドフィナーレにスタンディングオベーションが起きる。
「客も客だし、識者会も識者会だわ。悪のりのしすぎ。みんな雰囲気に酔ってる。でも女子校生にしてハンターの女の処女、2度とない。高い買い物じゃないかもね」
ママは瑠璃子の痴態と拍手の嵐に半ば嫌気がさしていた。
「でも、これで、彼女のココロにも組織の楔が深く穿たれた・・・」
「どうだね、ロストバージンの体験は?キヒヒヒ」
舞台の袖から瑠璃子にひょっこりと近づいたのはあのにゃんにゃんハウスの、もともと今日のパーティには来ないと言っていたはずの『潮招き』だった。
「ほぇぇ、とっても、とっても、いいきもちぃ~。私にとってサイコ~のクリスマスイブぅ~。思い出深い初経験ん~、これも識者会と源内さま、会場の皆さまのおかげですぅ」
上半身を起こして蕩けた表情で瑠璃子は微笑んだ。
まだココロを識者会によって酔わされたままだ。
「少しは店をむちゃくちゃにされた私の溜飲も下がったよ。おまえさんには組織の支配を受け、手枷足枷をつけてもらわないと核爆弾が街なか歩いてるようなもんだからね」
わざわざ夜更かしして来た甲斐があったってもんだ、店をめちゃめちゃにされて悔しくってねぇ~と瑠璃子の操られ呆けた顔をみて卑しく下品な笑い声をあげた。
「私わぁ~、自分のカラダで組織に貢献できてぇ、と~っても幸せですぅ。組織の一員にしていただいた識者会とバイヤ~のみなさまにぃココロから感謝していますぅ」
瑠璃子はココロもカラダも芯まで蕩けてしまったように呆けたままだ。
本心からその言葉を吐いて、ロストバージンのショックなど微塵も顔に出さず、幸福感満ち足りた顔で誰も疑っている様子など微塵も感じることなく、むしろ感謝さえ覚えている。
「長、そろそろ少しはこのコに自由を返しておやりよ。そして現実を受け止めさせて嫌というほど自分の身の程しらずを思い知らせて終演でどうだい」
潮招きの声に長から「おばばが、その子の脇に落ちている音叉で彼女の額を叩けばよい」と指示が降ってきた。
「おやそうかい、そうかい。ありがとよ。それなら、そうするかね」
潮招きは音叉を拾い上げ、キーンと共振させた。
「はっ」
瑠璃子は蕩けた表情から一瞬にして我を取り戻し、周囲を見渡すと自分の全裸に気づき慌てて制服と下着を掻き集めて胸と局所を隠した。
恨めしげに潮招きを睨みつけているが何も言葉が出ない。
「はははは、全てをわかっているようだね。どうだい、少しは身に染みたろう。組織の一員になることの重みと我々識者会に歯向かうことの無謀さを」
「・・・・・・・・いいようにボクを操りやがって、このくそババァ!あっ!あうぅっ・・・失礼しました潮招き様、これからはSNOWとしてあなた様を敬い、目標とさせていただきます。う、ううっ」
瑠璃子は潮招きを罵倒した瞬間に一瞬にして思考を奪われて瑠璃子の表情は険しい怒りの表情から、まるで夢を見ているようなポワンっとした無邪気な微笑みに豹変する。
従属の言葉が勝手に口から飛び出し、しおらしい態度になった。
しかし、一瞬のうちにその支配が解け、自分がそんな態度をとったことに驚きを隠せない。
「ハハハハ、わかったかい。まぁ、そういうことだよ。セルコンに忠誠を尽くす『良心回路』は常にお前が出すぎたマネをすればお前を否応なく支配する。これもBLACK-BOXの一つだね。逆らいさえしなければは自由でいられるよ」
「良心回路だぁ?どれだけの人間がその意味をわかるっての!この老いぼれの牝ぶたぁう、ううっ・・・牝豚はこの私です、下品なお言葉で潮招き様を辱める輝美は悪い子です。お仕置きされるべき卑しい牝ブタ、お仕置きしてください、潮招きさまぁ~」
「キヒヒヒイ、懲りない子だねぇ、あんたも。組織に穿たれた楔は容易には外れやしないよ、観念をし。さぁ遠慮なくお仕置だ」
そういって骨だらけの老骨の指が瑠璃子の秘唇に入った瞬間、異様な速さで手首が回転した。
「ひゃ、ひゃん!あぁぁぁあ、いい、いひぃ、だ、だめ、かんじちゃう、こわれちゃう!よすぎて、よすぎて、いっちゃうぅぅぅぅぅ~、だっめぇぇぇぇぇ-っ」
「それ、おゆき、ヨガリ狂って極楽浄土を見ておいで。さぁ、れっつ、おうばぁ・ざ・れいんぼう、だよ。潮吹きしな。キヒヒヒヒ」
潮招きが目にも留まらぬ速さで微妙な回転をつけて指を瑠璃子の秘唇から引き抜いた瞬間、一気に瑠璃子は高々と潮を吹いて全身を痙攣させた。
「あ・・・・あ・・・・・・・・あ」
瑠璃子はビクビクと体を痙攣させ、しばらくは茫然自失の状態が続いた。
「まだまだ潮の吹き方が甘いね。これからみっちり仕込んでやるよ。意識を一瞬にして喪失させるほどの快楽を私から与えられたお前は、私に会うたびにその快感を思い出し逆らえなくなる。刷り込みってやつさ。ココロのそこでは体が私の指を求めて私の指に恋焦がれるようになるんだよ、キィっヒヒヒヒ」
潮招きが去り、舞台が瑠璃子のさまざまな痴態をさらけ出した余韻に浸りきり、熱も冷めかけた頃、瑠璃子はやっと覚めて我を取り戻す。
「帰る!ボクは帰る!こんなとこにもういられるもんか!TESTも終わったんでしょ!帰る!こっから出る。だれか、何処でもいいからここから連れ出してよ」
ヒステリックに瑠璃子はわめき散らした。
すると舞台の袖から再びあの識者会付の黒服が4人現れた。
「SNOW様、それではご希望にお応えして我々がご案内いたします」
「だれ?」
「今後、ハンターSNOW様のお世話をする”チームSNOW”のナンバー1からナンバー4でございます」
4人の男たちは同じいでたちで無表情の傭兵のようだ。
「いいご身分じゃない、あなたの忠実なアシスタントよ。そして組織の忠実な猛犬でもある。組織はあなたを常に囲って監視しているわけね、ココロもカラダも」
ママが瑠璃子の視線の先、舞台の袖から話しかけた。
「あんたにも埋め込まれてるの?良心回路。メデューサ」
瑠璃子は初めてママをコードネームで呼んだ。
「組織から楔の穿たれていない者なんていないわ。それで組織がまとまっているのよ。哀しい鉄の結束、組織の掟ね」
止血し切れていいない脇腹を圧迫止血しながら脂汗を滲ませてママは苦笑いを浮かべた。
「ざけんじゃないよ!テメーがしれっとボクを変なTESTになんか甘い言葉で巻き込むから・・・・・あ、あぅ、おご・・ココロから感謝します、メデューサさまぁ。晴れて組織の一員となったSNOWをどうぞよろしくお願いしますぅ」
悪態をメデューサについた瞬間に、瑠璃子は柔和な表情になって目の前まで駆け寄ると傅いて彼女のヒールに何度もキスをした。
すぐに呪縛は解けて瑠璃子は我を取り戻す。
「うぅ、ぺっ、ぺっ、ぺっ、いやぁっ!なんでボクが自らすすんでヒトの靴なめなきゃいけないのぉーっ」
「あなたもいい加減に気持ちを整理したらどう?もう、良心回路のすごさがわかったでしょ」
「・・・うぅ」
悔しい・・認めたくはない今の自分の有様に瑠璃子は表情を曇らせた。
「あなたには普通の同年代の女の子が味わえないような暮らしが保障されるわ。しばらくはそれを楽しみなさい」
メデューサは今までに見せたことのないようなやさしい表情と言葉を瑠璃子に向けた。
「お前にはハンターの身分が与えられた。衣食住の生活は思うがままじゃ、一般社会に無事に溶け込んでおくれよ。そして親衛隊が常に影となりお前のフォローをする。まぁ気兼ねなくお使いよ。組織からの指示命令はそのうち来るだろうからね、お前は身命を賭してやり遂げてくれるはず」
潮招きの声だけが天井から降ってきた。
(くっそーっ!だから嫌いなんだ組織なんて。埋め込まれた暗示はいずれ絶対解いてやる!コノウラミハラサデオクベキカっ!)
瑠璃子は全裸の上から防寒のコートを着せられ4人の男に丁重に守られている。
(いやみな拍手、でもさっき声に出して言ったときは勝手にココロとカラダをのっとられたけど考えるだけなら何も起きなかった・・・。なら、手はまだ考えられるはず!ウフフ、諦めないモンね!)
瑠璃子は不敵な微笑を浮かべたがそれはもう劇場のモニターには映されることはなかった。
(いずれ絶対つぶしてやる、こんな組織!ボクのロストバージンの代償がどれだけのものだったのか識者会にわからせてやる!識者会の糸口もあの潮招きのババアを締め上げれば出てくるはず。今に見てろっ)
前を歩くガードのSNOWナンバー1の尻を瑠璃子は思い切り蹴り上げた。
「なにをなさるんです、SNOW様。御用があればお申し付けください」
蹴られた痛みには表情を変えずナンバー1は振り返った。
「ボクのバージンがたったの3億ぅ~?あんた、どう思う?ボクは女子校生なんだぞ!初めてだったんだぞ!ハンターになるんだぞ!そのバージンはプライスレスだろぉーっ」
「我々はそういったことに対して個人的にお答えすることはありません。あくまでSNOW様の御用のみを叶えるよう識者会から仰せつかっております」
「ふ~ん、そうかい、そうかい。でもどうやらあんたたちを苛めても良心回路は働かないようだね。これも収穫。犬さんと明智祐美の所に連れてってよ」
「かしこまりました。そう言ったご希望であれば、対応させていただきます。花道をお通りください。TESTにパスした方はお客様から今後の期待の喝采を受けて会場を去るのがパーティーのルールです」
「やだ!」
頑なに花道からの退場を拒み、それでも客席からの喝采の中、瑠璃子は舞台の袖から去っていった。
舞台裏のバックヤードのような広いスペースに何十台もの車が止めてある。
「こちらからどうぞ。お車はここから近くのベイサイドインテリジェントビルの下層駐車場へとつながっております。病院へは約20分で到着します」
「ツツツ、痛い、おまたが・・ツツツ痛。最悪のイブだぁーっ。ざっけんなよっ!いつかきっとこの仕返しは・・・・・・・組織のために身を粉にしてご奉仕いたします」
一瞬のうちに瑠璃子に穿たれた楔が作用して組織に従順な言葉と態度に変化する。
「ご奉仕して、ご奉仕して、皆様に悦んでもらえる獲物をご提供できるよう頑張り・・・・ま・・す・・・くっ、な、なんで、なんで楔、楔、私がこれほど根っこごと掴まれるなんて」
瑠璃子は自分の力で超えられない組織にしっかりと穿たれた楔に唇を噛みしめる。
瑠璃子はすっかりはねっ返りのじゃじゃ馬っ気が姿を消して肩を落として去っていく。
その時、はっと瑠璃子はあることを思い出す。
(そうだ!琥南だ、ヤツに会えば、ヤツの顔を見れば、以前私が自分に刷り込んだ暗示が発動し、その力で組織の楔を砕くことが出来る!そうだ、琥南だ!)
「ちょっと、チームの方々さん」
その言葉に4人が瑠璃子に耳を傾ける。
「琥南を、ブリーダーの『とちゃんボーヤ』の居所を探して私に教えて。もう組織の一員同士なんだから自由に会うコトだって可能でしょ?」
「かしこまりました、SNOWさま」
チームSNOWの4人は瑠璃子の命令にうなづいた。
(これで、琥南に会えれば、琥南の顔を見れば、楔は抜ける。私は再び自由だ。私をいいように辱めやがってっ!生き恥を晒されて黙っているほどヤワじゃない。組織だろうと、識者会だろうと、リベンジマッチのスターとだっ)
SNOWナンバー3が車の後部座席を開け、瑠璃子が頭をぶつけないように、さながらホテルマンのように瑠璃子の体を気遣った。
舞台の向こう正面にある2階、花道へ降りる階段に二人の影が現れた。
「あらあらぁ~、ちょーっと、来るのが遅かったかしらねぇ~。ウフフフフフ」
園美を連れたパンプキンが地上階から降りてたどり着いたのが向こう上面2階だった。
血塗られた舞台と運ばれていく関係者の姿。
かろうじて舞台に満身創痍のメデューサを見つける。
しかし、彼女の周りには全裸の美しい女たちが無傷のままバイヤーたちの目に晒されている。
「なぁ~んだ。結局、大それた失敗はしなかったのか。残念ねぇ~。でも、メデューサ自身があれじゃぁ識者会の評価はたとえ作品が優れていても厳しいものになるのは間違いないわ。ウフフ、私がメデューサに取って代わってTESTのため、識者会付のコーディネーターになれるチャンスは一気に膨らんだわ。さぁ、園美、階段を下りて、花道に下りたら舞台に向かいながら、服を1枚ずつ剥いで、その美しいカラダをお客様にお見せするのよ。そして仲間のもとへお行きなさい」
パンプキンは無表情のまま術中にある園美の背中を押した。
「はい。パンプキンさま、わたしのご主人様。園美は脱ぎながらみなさまに私の美しい体を見ていただき仲間のもとに合流します」
感情のこもらない無機質な復唱だ。
「だめだ~め、あなたは超一流のモデルよ。生きた表情をなさい、そして胸とくびれと、オンナの大事なトコロを隠すことなく強調して、エロチックに、大胆に見せつけるのよ。あなたは見られると異常に興奮する。それが嬉しくてたまらない」
「はいっ!パンプキンさまぁ~、仰せのとおりに」
まるで別人のように生気を取り戻した園美はスルスルとパンプキンがあつらえたドレスを脱ぎながらファッションモデルのように花道を歩きながら全裸になって仲間の待つ舞台へと歩いていった。
園美の登場に客席は再び登場した初物に感嘆の声を上げる。
彼女もスワットなのか・・・・・。
あれが本当の課題作品か、上物だな。
園美の眩しい裸体と作られた笑顔に客席は最後の盛り上がりを見せる。
(カボチャでぶ、遅いのよ!あんたさえもっと早く来てくれれば、私のパーティーはもっと違うものになったはずだわ!今頃来やがって。わざとなら許さないっ!)
メデューサが向こう正面のパンプキンを睨みつけても、気づいてか、わざと気づかぬフリなのかパンプキンは澄まし顔だ。
メデューサは撃ち抜かれた足を引きずり痛々しくも舞台の中央、スワットの女たちがいる正面にファッションショーのフィナーレにデザイナーがモデルの中央に出るように進み出た。
舞台のスワットチームは客から見れば壮観だった。その中央にメデューサが立つ。
「皆さま、本日のお運びありがとうございます。ご堪能いただけましたでしょうか。最後に届きましたこの園美がSNOWの本来の課題作品です。このコはこのあと最終オークションへとかけさせていただきます」
再び満場の拍手がメデューサに向けられる。
「レディスワットの篭絡、このTESTの課題から新たなハンター「SNOW」が誕生しました。また、皆様方から、『美しく華麗で自由にSEXのできる最強のボディガード』を、危険を伴う商談などに同行させたい、そういったスタッフを組織より派遣してほしいとの強いご要望も以前からございました。今後、一両日中には皆さまに十分ご満足いただけるこのレディスワットチームを皆さまをお守りするセルコンの女性SPとして派遣できる手はずを整えますので、どうぞ目的とご予算に応じてご利用ください。そのため識者会ではすでに内定しておりますが、彼女たちはナンバーズには組み込まず、またオークション対象ともいたしません。ご承認の拍手をいただけますでしょうか」
それだけ言うとメデューサであるママが深々とお辞儀をする。
フィナーレを飾る承認と賞賛の拍手が観客席から沸き起こった。
最後を飾ったメデューサには、やっと識者会付の男たちの手が差し伸べられた。
男たちに支えられてメデューサが舞台から去る。
識者会がまだメデューサを見捨ててはいない証だ。
「思ったより重症です。処置の手配を、傷は深く、命取りになります」
一人の黒服がメデューサの傷をすばやく診断し、携帯で救援要請の連絡を取る頃には彼女はすでに気を失い男たちに身を任せきっていた。
最後の最後までを取り仕切り、計算外のアクシデントにも対応して終幕の口上を述べた充実感からか、蒼白の顔には心なしか微笑みさえ浮かんでいるかのようだった。
園美のオークションが最後の盛り上がりを見せ、BLACK X’masと呼ばれるセルコンの恒例パーティは終焉を迎えた。
ゆっくりと舞台の幕が下り、劇場のバイヤーたちはドールたちにいざなわれてひとり、また一人と帰途につく。
BLACK X’masは、今年もバイヤーたちに十分な満足感をもたらし無事に終宴を迎えた。
バイヤーたちにとって「TEST」を伴うパーティーは、いつも格別な醍醐味のある組織の大イベントという印象を深めることとなった。
この日、都内各地で起きた不可解な事件は数日新聞紙上を賑わせたが、クリスマスイブにネットで誰かが呼びかけた愉快犯的な同時多発のいたずらとして人々の記憶から消えていった。
警察はスワットの演習と若者の起こす奇怪な事件に振り回されるだけ振り回されたがそれでも数人の若者の検挙を新聞社にネタとして提供するにとどまった。
スワットの大規模な演習は所轄では顰蹙を買ったが、誰もそれが事件であるとの認識はされなかった。
スワット単独となってからの敵地建物内演習はスワット用に新規開発された武器の試用を兼ねており、そのいくつかが誤用や暴発でけが人を出す結果となったことは内々に所轄にも知れ渡り、下っ端の署員たちの嘲りのネタとして彼らの不満を霧散させた。
負傷の程度、人数、具体的な原因は秘匿された。
翌日から何事もなかったようにチームは再び任務についた。チーフ不在のチームは局長の紀香自らがチーフ兼任として現場を取り仕切ることとなった。
そして、すべてはクリスマスイブに起きた都市伝説のような出来事として語られ、そしてまた年が明けて様々な事件をマスコミが取り上げるとあっという間に忘れ去られていった。
< To Be Continued. >