十話 勝利の後に
… … …。
学校の勉強なんて、欠伸が出た。
一度教わったコトはキチンと頭に入れて、テストで完璧に答える。逆に言えばそれだけのコトが出来れば、世の中の人間はボクを「天才」と崇めてくれた。
塾で教わるコトがあんまりにもスラスラ出来るから、親も先生もどんどんボクに期待して、どんどん難しい問題を出してくる。そしてその答えを一度見て、覚えて、答える。…それだけで大人はボクにチヤホヤしてくれるのだ。
そりゃ、最初は嬉しかった。褒められるのが嫌な子供なんているわけがないし、それで大人達が喜んでくれるなら、ボクはその「喜ぶコト」をするのが楽しかった。
だけど…楽しさは段々と「飽き」に変わっていった。
それでも親や周囲の期待を裏切るわけにいかなかったから、ボクは勉強を続けた。いい中学、いい高校、いい大学、いい就職先… 周りのボクに対する期待は風船のように膨らみ続け、果てがなかった。…人間なんて貪欲で卑怯だ。自分は何の努力もしないクセに、誰かの努力にはなんのリスクもないから応援するだけする、だなんて…都合がいいにも程がある。
そして何より嫌だったコト。
…兄のコトだった。
兄は人並みには勉強が出来るけれど、ボクと比べれば劣っていた。
普通の人間として育っていたはずなのに、ボクみたいな妹がいるせいで親や周囲からは疎まれ、無視され続けていた。
待遇だって、ボクと兄じゃ違った。ご飯だって、おやつだって、誕生日のプレゼントだって。ボクが貰えるのに兄が貰えないものが幾つもあって。その度兄は泣きそうな顔になり部屋に閉じこもっていた。…両親は、そんな兄の様子を知りながらも無視し続けたんだ。
時折、兄の部屋からは音が聞こえてきた。
ゴミ捨て場に捨ててあったテレビとビデオデッキを自分の部屋で繋げて、兄はいつも映画を見ていた。少ないお小遣いで映画をレンタルしては、何回も、何十回も繰り返し見ていたのだ。
兄は、妹のボクを恨んでなかった。それどころか両親や周囲の人間でさえ、恨むなんて感情は持っていなかったのだ。
溜まったストレスや寂しさは、自分自身で映画を見ることで発散し、全部自分で抱え込んでいた。
てっきりボクは兄に苛められるんじゃないか、なんて勝手に心配していたけど兄は何も言わない、何もしてこない。それどころか、いつも勉強ばかりで疲れきっているボクと一緒に遊んでくれたり、一緒に笑い合ったりしてくれた。お気に入りの映画だって、親に内緒で何本も一緒に見ていた。
両親に差別されて兄が部屋に閉じこもる度、ボクは心配して何度も兄の部屋を訪れたものだ。
「…お兄ちゃん?」
「…っ。 な…奈月か…びっくりさせるなよ」
「…大丈夫…?」
「大丈夫も何も、なんともないよ。…心配するな」
「本当に…?」
「…うん。 …あ、それよりこの間見た映画、面白かったんだ。一緒に見ない?奈月」
「…!…うんっ」
…兄の瞳は真っ赤に充血して、辺りには涙と鼻水を拭いたティッシュが散乱していたのに。ボクを心配させまいと、兄はいつも気丈に振舞ってくれていた。
…いつしか、ボクはそんな兄に抱いてはいけない感情を抱いていたのだ。
それは…「恋心」。
クラスのどんなかっこいい男子だって、あの兄と比べれば霞んで見えてしまっていた。
小さな頃から抱いてしまったその感情は、成長していってもまったく消えるコトはなかった。
…そんなボクの気持ちを知ってか知らずか、両親は兄を地方の大学へ進めさせる。
家を出て行った兄を見送る時は、あまりの絶望感に膝を地面につけてしまっていた。…たった四年。しかし、兄のいない日常などボクには考えられない地獄の日々。大人達に媚び、ただ延々と何かを書き、考え続ける毎日。
…そんなとき、ボクは進めていたとある研究を思い出した。
そう、それが…「人を操る研究」だったのだ。
「… … …。ッ…う…」
暗闇に落ちたと思っていた視界だが、どうやらそうではないらしい。…自分の今の状況を落ち着いて考える。視界が暗くなったのは…ボクが目を閉じてしまったからだ。
…目を閉じる?おかしい。自分からそんなコトをするはずがない。今この状況で何故目を閉じなければならないのだ?
…いや、違う、これは…。目が開けられない…?
「く、ぅ…!」
どれだけ力を込めても瞼は微動だにしない。何者かに押さえつけられているように、目が…開かない。
これは明らかに…
ボクが、自分の意思で目を閉じているのだ。
そればかりではない…ボクは…思うように声が出せない…!?喉に蓋をされているように、声は出てもそれを言葉に出来ないのだ。
「え、ええと…それで次は、と…」
耳に女の声が聞こえてきた。先ほど階段の下のほうに居た女の声に違いないだろう。そして続けて聞こえてきたのは…
…!
MCMPの起動音…!?
馬鹿な…何故…!?あれは先ほどお兄ちゃんが壊したはずなのに…!?
「や、やっ…!」
「…えいっ」
ボクがそう言っている間に…女は何かを送信したらしい。 無駄だとは思っていても、ボクは何かを防御するように身構えてしまう。
だが…その送信の相手はどうやらボクではないらしい。
「…!ぐ…っ!」
…!お兄ちゃんの声っ…!?
…そうか、これは…。ボクがここまで行動するコトを知っての兄の作戦で…。
ボクはまんまと、その掌の上で踊らされていた…!?
「…ふう…。助かったよ…春香…」
「こ、これでいいんですか?なんだかよく分からないんですけど…」
「分からなくていいさ」
…足音がボクに近付く。…いけない、ショックを受けている場合ではない…!なんとか、なんとかして声を…!名前は分かっているのだ、後は操りさえすればっ…!
「ふ、ふ、ふゥっ…!」
「…無理するなよ、奈月」
そう言って兄と思われる手は… ひょい、とボクからMCMを取り上げてしまう。
「あっ…!」
「…頭に付けるだけでいいのか?…えーと、確かマイクを近づけて…」
「や、やぁ…!」
「…『藤田奈月。身体の拘束が解除される』」
兄のその言葉が聞こえた瞬間。ボクの目は開き、喉の緊張したような感覚も解ける。
「はぁっ… はぁっ…!く、くそっ…!」
「お、効いた。…やっぱり洗脳が速いな、コレ」
「か、返してよっ!それはボクが作った物だっ!!」
「おっと」
飛び掛ろうとしたボクの身体をひょい、と兄は避ける。
「『藤田奈月、動けない』」
「あ…っ!…く、ァ…!」
駄目だ。
兄の言葉一つで、ボクの身体は痺れたように動かなくなってしまう。立ったままの状態で、ボクは硬直する。
「…せ、先輩…。な、何なんですか、それ…」
ボクが操られる様を見て、驚いている先ほどの女性。
…確か、春香とか呼ばれていた…。…名前だけは知っている、兄のMCMPの使用情報を見ていたから。
…東堂春香だ。兄の部活動のメンバー。…くそっ!こんな人間が紛れていたなんて…!しかも、洗脳もせずに自分の駒として…!
「…。いいものだよ。『東堂春香。眠る』」
「あ…」
糸が切れたように、東堂春香は壁に背をもたれかけると、そのまま座り込み、やがて寝息を立てる。
「…さて、と。これで…完璧に俺の勝ちだな、奈月」
「…くっ…!」
「本当に…お前に勝つにはどうしたらいいか、考えた。…その結果、一度はお前に負けなければ勝てないんじゃないか、っていう結論に達したんだ。…お前は、完璧に俺の作戦を読んでくる。だから俺は一度負けて、お前に作戦を読もうとする気力を失わせようとしたんだ」
「… … …」
「つまり…お前が勝利の余韻に浸り、隙を生む。そんなチャンスを俺は作った。…そしてあとは、そこに踏み込めばいい」
…今回の作戦。
兄は、数十人の兵隊を連れて力ずくでボクを取り押さえようとしている、そう思っていた。MCMの弱点をこれで突いたつもりなのか、とボクは兄を鼻で笑って…そしてあっけなく勝ってみせた。
今思えば、あっけなさすぎたのだ。
MCMの機能を使えばそんな奴等一瞬で洗脳出来てしまう。そして実際ボクは、あっという間に勝利してみせ…兄は、MCMPを壊して降伏を宣言した。
…あっけなさすぎる。思い返せば、罠だという疑いだって十分持てたはずなのに…!
これが…兄の言う、隙を生ませるという事らしい。勝利という目の前の出来事に食いつきすぎ、他の事に目もくれなかった…。
「…MCMPを壊せば、お前は余計に安心する。唯一の武器を壊しちまえば、後は生かすも殺すも、お前の自由。そして油断が生まれる。…形が電子辞書に似てるのが幸いしたよ。店でそっくりな物を探して、買ってきた…。…高かったんだぜ、あれ」
兄は少し苦しそうに笑った。
…掌で踊っていたのは…ボクの方だったのだ。そんな事にも気付けず、ボクは…兄を我が手中に収めたと勘違いを…。悔しい、ただただ、悔しかった。ボクが、このボクが負けるなんて…!しかも…ボクより頭の悪かった、あの兄に…っ!!
「問題は、その後だった。お前に勝利を献上するのはいい、しかし、その後にMCMPを操る人間を作らなければいけない。…しかも、信頼出来る人物を」
「… … …」
「MCMPで操るわけじゃないんだから、当然何らかのミスをしたりする危険性もある。…確実性がない、それが人間が行動するリスクだ。…あとは賭けだったな。春香には階段で待っているように言っておいて、MCMPの使い方を教えておいた。…使い方だけで、それがどういう効果を生むのかは教えてないけどな。…藤田奈月、という名前が表示されたらこう入力しろ…と、ただそれだけ」
「…馬鹿なっ…!」
何故そんな確実性のない作戦をとる…?操ってもいない人間の行動なんて、信じられるわけがない…!不安定で、自分勝手で、揺らぎやすい…。そんな人間を信用するのが前提の作戦なんて…作戦とは呼べない!
「奈月」
ふいに、ボクは兄に名前を呼ばれた。
「お前には分からないだろうさ。…人を信じるなんて事は、多分とっくに捨てちまったんだろうから」
「…くっ…!」
「逢った時から薄々感じてたよ。…お前は上っ面だけ良くて、真実を何も言ってくれない。ずっと何かを隠しているのが、なんとなく俺には分かってたよ」
「…何を…!」
「当然だ。…俺はお前の、兄ちゃんなんだから」
「…!!」
「…奈月。もう昔には戻れない事くらい、俺にも分かる。…もう一度、昔の純粋な笑顔を見れない事くらい、分かってるさ」
「…お兄ちゃん…っ!」
「だから、奈月…」
兄は、大きく息を吸い込んだ。
「『藤田奈月、お前は… … …』」
「えっ… … …!」
私の意識は、そこで一瞬途絶えた。
「…ッ!?」
なんだ…今、ボクは何をされた…!?
今…確かに一瞬意識が飛んだ…!すると…
ボクはもう兄に操られている…!?
馬鹿な…。操られている感じは…まるでしない。思考だってしっかりしているし… あれ… 手足だって普通に動くぞ…!?
… … …操られていない?今一瞬意識が飛んだのだけは分かる。でも…おかしい。まるで変な感じがしない。
…!
そうか… これは…!
「ふ… ふふ…」
「…?何がおかしいんだよ…」
思わず笑ってしまうボクの顔を、兄が不思議そうに覗き込む。そうだ…この現象はきっと…副作用だ…!
「実はね…ボクの身体には、こういう時の為の切り札が埋め込んであるんだよ…」
「何…?」
ふふ…それは驚くだろうなぁ…。
今、兄は完全に『勝った』と思ってただろうに…ボクは更にその上をいっていたんだから…!
勝利の余韻に浸って隙を生んでいたのは…そっちの方だよ、お兄ちゃん…!
「おそらくボクの身体に埋め込んである新型のMCMが、外部からの命令を打ち消してくれてるのさ…。…ふふ、自分でもこんな効果があったのかなんて驚いちゃうけど…!」
「なんだと…!」
「残念だったね…。ボクは、お兄ちゃんに操られたりなんかしないよ…!」
そう言って、ボクは兄に一歩近付く。
…ふふ、ここまで来て随分と強情だね。一歩も引かない、なんて…。
…このMCMは近付かないと効果が発揮できないんだ。その強情さが余計に寿命を縮めてるのが…分からないかなぁ…?
「それじゃあ… このMCMの操作方法を教えてあげようかなぁ…?」
そう言って、ボクは…
自分の服に手をかけた。
そう、このMCMはボク自身が…裸を晒さないと効果を発揮出来ない。今兄に逃げられてはいけない、ボクは焦って服を脱ごうとする。
白のブラウスのボタンに手をかけ、一つ一つ…ああ、もうめんどくさいなぁ!破いちゃえ。
ジーンズも脱ぎ捨てるようにその辺りに放っておくと、ボクはもう下着姿。白のスポーツブラとパンツだ。
「…奈月…お前…恥ずかしくないのか…?」
…?兄が何故かにやついて聞いてくる。
可笑しな事を聞いてくる。そりゃ…街でこんな風に裸になるのは論外だ。露出狂じゃあるまいし。
でも今、ボクは目的の為に服を脱いでいる。恥ずかしいわけがない。ボクはボクの中にあるMCMで兄を操るのだ。そんな事で恥ずかしがるわけがない。
「そんなわけないでしょ…。むしろ嬉しいよ、これからお兄ちゃんはボクの手中に収まるんだから」
「…。そうか、そうなんだよな…ふふふ…」
これから操られるというのに、相変わらずお兄ちゃんは笑みを浮かべている。…最後の最後くらい、妹に余裕を見せつけてやろうとでも言うのだろうか。馬鹿らしい。命乞いでもしてくれば面白いのに。
ブラのホックを外して脱ぎ捨てると、ボクの胸が露にされる。続けて…歩きながらパンツに手をかけて… ボクの秘所が晒された。僅かに生えている陰毛が風に揺れてくすぐったく感じる。
…少し、濡れちゃったかな。…ん?なんで濡れなくちゃいけないの?恥ずかしい事じゃないはずなのに…。
… … …まぁ、いいか…。
「うふふふ…全部脱いだよ、お兄ちゃん…」
「… … …」
ボクの裸に見とれちゃったのかな?お兄ちゃんは微動だにせずに背を壁につけてボクを凝視している。
…そりゃあ、子供の時以来だからなぁ。一緒にお風呂に入ってた…あの時以来。
「さぁ…おとなしくボクに操られるんだよ…」
「… … …」
ボクはそう言いながら、お兄ちゃんのズボンのチャックを開ける。その中に指を突っ込み…モノを探す。
…あった…。少し大きくてびっくりしちゃったけど、確かにコレだと分かる…男性器だ。
既にお兄ちゃんのモノはカチカチに硬くなっている。それを…少しびくびくしながら取り出して…。うぅん、こういう経験ってないから、なかなか…。
「…それで…お兄ちゃんの…これを…」
…そう、ボクの身体の中にあるMCMの使用方法は従来と全く違うのだ。
…それは…。
「…ボクの、中に…!」
ボクは抱きつくように、手をお兄ちゃんの首の後ろに回すと、秘所をモノに当てる。
…初めての経験だから…痛いかもしれないけど…仕方ない。お兄ちゃんを操るためなんだから…。
お兄ちゃんを、ボクのものに…!
熱い肉棒が大事な部分に触れただけで、電流が走るような快感がボクの中を走る。
オナニーなんか比にならない。もっと鋭敏で…熱い快感。
「あはっ…!」
それだけでボクの中はグチョグチョに濡れてしまったような感覚さえある。
…そうだよね。ボクは待ち焦がれたんだから。…お兄ちゃんを操る事に。
…今、それが、現実になるんだから…!
「いっ…入れる…よぉ…?」
上にそそり立つお兄ちゃんのチ○ポに、ボクのマ○コをゆっくりと…。
…っ!!
な、なにこれ…!押されて、ボクの中が広がるたびに…まるで快感が、波のようにっ…!
「んあっ…あああっ…!ん、ふぅぅぅっ…!」
声は極力我慢するようにしていたが、閉じた口から喘ぎ声が漏れてしまう。き…気持ちよすぎる…っ!あああっ…!
…そう。
ボクの身体のMCMは…。
ボクの中を使って、相手をイかせた時に… 相手を洗脳可能にするの…!
「ひぃぃっ…!は、入ってくる… お兄ちゃんの… ボクの、中にぃぃっ…!」
永遠にボクの奥へとお兄ちゃんのチ○ポが入ってくるような感覚。もう既に膜が破れて血が愛液に混じって滴り落ちている。
しかし、不思議と痛みは感じない。圧倒的な快感の前で、処女膜を喪失した痛みは嘘のように掻き消えていた。
「お、お兄ちゃ…!き、気持ちいいっ…?」
「…ああ、奈月の中… 凄く気持ちいいよ…」
「くふぅ…っ!そ…それは、残念だねぇ…!ボクの…MCM、はぁ…あぁん!お兄ちゃんがこのまま、い、イっちゃうと…あはぁっ!」
言い切る前に、お兄ちゃんは腰を動かし始めた。
入っては出て、出たと思えば奥に突き刺さるモノ。…まともな言葉なんて、出てこない。何も考えられない。気持ちいい。
「あぁぁんっ!お、お兄ちゃん…激しいっ…!そ、そんなに動かす、と…くああああっ!?」
ボクの説明の途中に腰を動かし始めてしまったものだから、お兄ちゃんは何も知らずに快楽を貪っているのだ。
馬鹿なお兄ちゃん…!このままイっちゃったら…ボクのものになっちゃうのに…!
…でも…!
あああああっ!なんて気持ちいいんだろう!セックスって…こんなに気持ちいいものなの…!?こんな…こんな、事だったなんてっ…!
「んあああっ!あはっ…あははははっ…あははははは!!き、気持ちいい、気持ちいいよぉぉ…!!」
思わずボクは笑ってしまう。
気持ちいい、気持ちよすぎる!
もう何度イったか分からない。絶頂に達する度敏感になる鋭敏な快楽に身を任せてしまうと後は楽なもので、あまりの快感に思わず笑ってしまうのだ。
セックスって…こんな…こんなにっ…!!
「ひぃああああっ!!んぐっ、くああああっ!!お兄ちゃ…あああっ!!ボク、ボク壊れちゃうよぉおおおっ!?」
…もう既に壊れてしまっているのかもしれない。
もう何も考えられない。
気持ちいい。
もっとしたい。
もっと。
もっと。
…あれぇ?
なんでボクはお兄ちゃんとセックスしてるんだろう?
…分からない…。
分からないけど、気持ちいい。
「んあああああああああああああああっ!!」
「奈月…っ!お、俺、もう…!」
「あはははっ!イくの!?お兄ちゃんイっちゃの…!?あはは、いいよ…!ボクの中に全部出してぇ…!!」
…お兄ちゃんがイクと、いい事があった気がする。
なんだっけ、思い出せない。
でも…お兄ちゃんのせーえき、ボクの中に…!
「出してぇっ…おにーちゃんのせーえき、ボクの中にちょうだあああいっ!?」
「ぐ、ぅっ…!出すぞ、奈月っ…!出すぞ…!!」
「ああああああああああああっ!!」
その瞬間、ボクの中で一番大きな快感が弾けた。
「… … …ッッッッッッッ!!!」
もう分からない。
頭の中が真っ白。全部… 全部… 忘れちゃった。
…。
…。
…だいすきだよ、おにーちゃん…。
< つづく >