key 第二章の2

第二章の2

「………」

 初めて自分以外の指環使いと相対したというのに焦りはなかった。
 そこにはあったのは自分と同じ、狂気の世界に足を突っ込んだ相手に対する昂揚感。
 さっきまで浸かっていたぬるま湯が瞬時に沸騰し、湯気が一掃され、クリアになった視界には目の前の女しかいなくなった。

「からす君…」
 後ろから言葉がかけられる。
 …あぁ、ひかり、まだそんな所にいたのか。
「邪魔だ。とっととさがれ」
 正直、下がろうがどうしようが構わない。
 巻き添えになりたくなければ下がればいい、それだけだ。
 ひかりも俺にスイッチが入ったのを理解したのか背後から気配が遠ざかっていくのが分かる。大体10メートルといったところか、視線を感じるところによると物陰でこっちを見てるってトコか。

 女はそれを止める様子もなく、ひかりを目で追ってからこちらをからかうような口調で俺にささやいた。
「あら、酷い。いいの?彼女にあんなヒドいコト言って」
「そんなことはどうでもいい。
 それよりアイツに、クリスにどこで遭った?」
「アイツだなんて…あの方に対する礼儀がなってないようね」
「フン、どう考えたってただのオカマじゃねぇか、あんなの」
「あの方を悪く言うの?そんなの―――赦さないわ」

「元から許しをもらうつもりなんて、ない!」
 そう言ってオレは女に駆け出す。
 影を媒体に間接的な力の行使ができないなら直接干渉ならどうだ!
 女まで距離にして15メートルに充たない、これなら数秒かからず―――

「野蛮ね」

 しっかりとこちらを見据えてそう言うと、女は指輪を高く掲げる。

「視界、断絶」

 結果は次の瞬間顕れる。

 視界が、ブラックアウト、した。

 な―――!
 俺はもつれて転びそうになった足をぎりぎりのところで踏みとどまらせ、周囲を見回した。
 が、何もみえない!

 これは―――動揺を治める努力をしている側からからかうような声が聞こえた。
「どう?今まで頼っていた眼を失った感想は?」
「!」
 声だけが聞こえる。もしかしてこれが―――

「これが私の持つ指輪、いえ、契約した魔王、シャックスの持つ力よ」

 聞き覚えがある。センパイから借りた本に記してあった。
 シャックス、44位の魔王―――!
 これが他の指輪、魔王の力が使われる、という感触か。
 目に違和感はない。痛みも何もない、ということは目を失った、というよりは視力そのものを奪われた、ということか。
 それにしても…改めて思い知る。この力は明らかに最強の力のひとつだと。

 ―――だが、そう、だがけして、無敵じゃ、ない。
 そう、依然として思考は影を通して流れ込んでくる。
 女が油断しているのが手に取るように分かった。

 …整理する。
 ここで怖いのは一体どんな能力をもっているか分からない他の指輪を使われることと俺の能力がどんなものか当てられることだ。
 だから、他の指輪の能力を使われないように、俺の指環を気取られない様、誘導する。
 幸い、直接、攻撃に使えるような指輪を持っていないのはシャックスを使った際に読めている。

「くぅっ」
 俺はひざまつき、手探りで周囲を確認するかのようなフリをする。
 いったん女の思考が入ってこなくなる。が、コイツが指輪を奪うために俺を無力化するにはどんなに長い獲物を使っても俺を再び自分の影の中にいれざるを得ない。
 まぁ、飛び道具を使われたら終わりなのかもしれないがさっき見た感じではそんなモノを持っているようには見えなかったし、なによりそんな相手ならクロスレンジになる前に問答無用で襲い掛かってきているハズだ。
 俺は見えなくなった目を閉じる。
 目が視えないなら眼でみようとする必要はない。
 味覚―――は使えない。聴覚、嗅覚、触覚、残りの三感で敵を感じ取れ。

こつ、こつ、こつ

 ハイヒールの音が近づいてくる。
 響きは正確なテンポを刻み、近づくに比例して足音も大きくなっている。
 俺が奇襲をかけられる距離になるまで
 あと10歩
 あと8歩、
 あと5歩
 あと2歩
 あと―――
「そこかぁっ!」
 そう叫んで手を伸ばし、女を捕まえようとする。

(!)

 再び、女が驚いた思考が入ってくる。
 女の影に入った証拠だ、女に対する直接干渉は防がれても流れてくる思考まではシャットアウトすることはできない。
 オマエの考えてることは手にとるように分かる!
 好機とばかりにオレは女の一部に触れようとする、が
(早くコレを―――!)
「!」
 オレの指を待っていたのはなにかが弾きあうようなパチパチとしたスパーク音。
 これはまさかっ!
 本能でそれが危険だと判断し、指をそらし、腕を回転させようとする、が、それはオレに触れて―――しまう!

 ばちばちっ!

 全身の筋肉が弛緩し、脱力していくのが感じられた。そう、これは
(スタンガン―――!)
 それと同時に俺は助走の勢いも手伝ってブザマに頭から倒れる。
 ち、しくじった。視覚を閉ざされれば残っているのは聴覚を頼ったこの方法しかない。
 今の足音といい、この行動を誘導されたのは俺の方―――!
「あぶない、あぶない、思ったよりも早くてびっくりしちゃった」
「…っぁくっ…!!」
 体が……っ!痺れて……っ
「さて、と。
 コレが効いているうちにとっとと指輪を回収しなくちゃね」
 こつ、こつ、こつ
 忌まわしいヒールの音が近づいてくる。
「あなたの指輪は……6つ!?私の倍もあるじゃない!誰か倒してたの?」
 そう言っていちいち指に嵌っている指輪のナンバリングを確認していく。
「それにしてもなぁに?どれもこれもやたらとナンバリングが低いのねぇ…71位?期待して損しちゃったじゃない。でも、まぁ」

 いらないってワケにもいかない、か―――

「…おい、一つだけ聞かせろ、この指輪を集めて―――何をする気、だ―――?」
「あら、もう口がきけるようになったの?いそがなきゃ」
 そう言って指輪に手をかけながらどうでも良さそうな声で答える。
「そうそう、全ての指輪を集めるとね―――」

この世界の王になれるのよ

「……おう?」
「そ、王よ。全てを支配できるこの世界の王」
「んなワケ―――」
「天使様が教えてくれたわ。
 全ての指輪を集めれば王の中の王になれるって」
「くだらねぇ、そんなモンになって何が楽しい?」
「ふん、他人に、誰かに怯えながら過ごしたことがない人間のセリフね。
 誰かに恐怖せずにいられる生がどれだけ幸福なモノかも知らない、そんな子供が言っていいセリフじゃないわ」
「そんなのっ!知るモンかよ!」

 もう勝負は決まっている。
 もちろん負けはオレ―――の手をとったお前だ!

 正真正銘のファイナルトラップ、いや、罠と言うにはあまりもつたない、女がオレの手を手にとった瞬間、いちかばちかコイツに精神操作を行った。
 その結果、コイツは指環を抜かずにオレにクリスから聞いた話を包み隠さずした。

 即ち、直接接触なら指輪の力は滞りなくお前に通じるってことだ!
「俺はそんな世界は創る気なんか―――ない!」
 今までで最も強力かつ単純な精神操作を女に使う!
「え?シャックス、早く奪えって、まさか今の―――!」
 とたん、女の身体から力が抜けたように崩れ落ちる。
「くっ、うぅっ!」

「ちなみに教えておいてやる。
 指輪の地位ってのは読んで字の如く魔神たちが守護する方位の[地]軸の[位]置を表している。
 別に偉さや強さの単位じゃないのさ」
「なっ!」
「だからナンバリングが低いからって侮ってかかると怪我するぜ?」

「くっ!」
 ―――っ!
 苦し紛れの声の後になにも、聞こえなくなった。
 ……あぁ、シャックスは聴覚も奪えるんだっけな。
 だが、関係ない。
 俺のダンタリオンは数日前のままとは違う。
 おまえが、視覚を、聴覚を奪うというのなら俺は―――精神を、身体を奪う。

「……いいか?オマエは今からこういう―――」

『わたしを犯してください』

「てな」
「っ!」
 声が重なり、女が驚愕するのが肌で感じられた。
 精神操作だけでここまでのコトになるとは思っていなかったのだろう。
 だが、もう遅い。オレのダンタリオンは既に心だけじゃない。簡単なものなら行動すら掌握できる。
「諦めろ。もうオマエは俺のモノだ。さ、それじゃ犯す前に指輪をもらうぞ」
 そう言って手探りで女の手をとる。目は見えていないが構わない。
 シャックスの指輪を奪えば全てが元に―――
「――――――っ!」
 なにか張り詰めた空気のようなものが大きくなり、次の瞬間、手中にあった相手の手の重さがきれいさっぱり無くなる!
 次の瞬間、視覚と聴覚が戻り、そこには何も残ってはいなかった。
「! ちっ逃げられたか」
 とりあえず二覚が戻ったのに思わず安堵する。実の所、あのままだったらどうしようかと思っていたところだ。

「ふん、セェレとは厄介なモン持ってるな、あのねェちゃん」
 頼んでもいないのにオロバスが語りかけてくる。
「セェレ?あの女、指輪を使ったのか?」
「ん、大将は見えも聞こえもしなかったんだっけな。
 ありゃやっこさんが一枚上手だった。自分の唇噛み切ってその激痛の中で何とか指輪を発動させがやがった」
 セエレ、何位だったが忘れたが、願いの貴公子と呼ばれるどんなモノでもどんな距離でも運んでみせる魔王。
 どんなもの、とあったがそれを知った際、思わず指輪を確認したが今の様子をみると[指輪を全て持ってくる]もしくはそれに準じたオーダーは叶えることはできないのだろう。
 もしかすると身につけている指輪のうちのどれかが俺の指輪を弾いたようにそれを妨害する効果を持っているのかもしれない。
 でなければ出口のないケースを用意し、水を張るなり、真空にしてやれば事は足りてしまう。
 実際、指輪使い以外に対してなら可能だろう。
 そういったことを考えるとひかりを見られたのは失敗だったか?
 …いや、だったら交渉材料として攫うなり、人質として使えばよかったハズだ。
 そこまであの女の頭が回らなかったか、それともそれがあの女の矜持だったか。
「それにしても、瞬間移動能力者とはな、惜しいことをしたな……」
 上手いこと手に入れられればよかったんだがな……
 まぁ、アイツに次はない。俺の前に立つだけで服従するようになった以上、時がくるのを待つだけだ。

「無事か?ひかり」
 ことが終わっので俺は連れ合いに声をかける。
「い……今のはいったい―――目が見えなくなったと思ったら……あの方は……?」
 目を白黒させてこちらを見てくる。
 どうする?忘れさせるか?今の俺の、ひいては現段階で扱えるダンタリオンの力は記憶操作すら可能なハズだ。
 ……いや、いいか。なにも見えていなかったなら問題ない。
 それにこれからもこういうことが起きるたびに忘れさせるのも限界があるだろう。
 記憶の操作ができるとはいえ、完全に改編できる訳じゃない。
 俺の思想操作とは何もなかった、気にすることではなかったと思わせる暗示系の強化版だ。
 完全になかったモノとして記憶を書き換える改変・改造とはまた趣が違う。
 だから記憶の齟齬が生じるたびに記憶全体にほころびが生じてしまうようになる。
 …なら、少しずつ慣らしていけばいい。
 他の連中にしてもそうだ。

「さて、と、帰るぞ」
「え、あ、あぁ、はい……」
 まだ何が起こったのか分からないと言う風なひかりを無視して周囲に注意を張り巡らせる。
 気配はない…………誰も見てはいなかった、か。
 まぁ、あの女がどこまで視覚を奪ったかは分からないがこんな場所とはいえ、他の指環使いが見ていないとも言い切れない場所で事を起こそうとしたのだ。当然、そう言った連中の視覚は先に奪っただろう。
 まぁ、いい。それよりも今は久しぶりの極度の緊張と集中から解き放たれた反動でとっとと休みたい。
「ひかり、タクシーを呼んでくれ。大通りで手を上げてれば止まるから」
「あ、は―――はい」
 ひかりがタクシーを手を上げるとタクシーに乗り込んだ。
 運転手は繁華街から乗り込んできたカップルの片割れが学生服をきているという事で眉をひそめたがそれ以上は何も言わずに車をマンションに向けて走り出させた。

「……」
「…………」
「………………」
「あの」
「……なんだ?」
「なにも、いわないんですか?」
「なにもって?」
「さっきのこととか」
「さっきのことっつってもな……」
 実際、どう説明したものかと思案していた最中だった。
「まぁ、あれが魔術ってヤツだ」
「まじゅ、つ?もしかしてあれが―――」
「あぁ、今さら信じてもらえるとは思わないけどな実際、俺もそうとしか説明できない」
「…………」
「実際、オマエも使われただろう?」
 瞬間、ひかりの顔が紅くなる。
 おおかた、処女を奪われたときの事でも思い出していたんだろう。

「………えらく地味なんですね、魔術って」
 でた。ぐさり、と胸をえぐるセリフがでた。
 ……結構、根にもつタイプだよな。
「あぁ、地味だ。それでいてえげつない」
 確かに見た目は派手な燃焼、要は爆発や天候操作の魔術なんてのもある、そうオロバスは言っていた。
「だが、そんなのは現代科学によって安価な対価で手に入る。だから誰も使わなくなったんだ」とも。
 結局、残ったのは科学では長い時間と代償を払わなければ到達できない、到達できていない領域の魔術、そして、人類では到達できないとされる5つの魔法―――
「ヤツが使った瞬間移動、あれがホンモノなら正に魔法、の副産物によってできた魔術だ」
「魔法も魔術も似たようなモノではないですか」
「全く違うな。魔術は何かしらの目的=答えのために式を起こし、一つの結果を顕すが魔法は文字どおり法そのものを則って奇跡を起こす」
 例えば魔術はが何かを暖める際、摩擦熱を媒体に火をおこしたり電気を媒体に電子レンジにいれて分子振動を起こす目的で式を進め、等価交換、即ち、イコールになるよう求めた答えを出す作業だとすると魔法は任意で対象の分子振動数を操作して発熱させる。
 要は代償無し、無価で望むものを手に入れられる。

 瞬間移動という事象でいうなら魔法による転移は次元すら跳躍するという、デタラメなハナシだ。
 瞬間移動はその副産物、といっても原理は同じ。
 魔法は異次元を知覚し、飛ぶ先の法則性、つまり向こう側でも自分が保てるよう物質を量子レベルで、変成、転換させるのが不可能といっていいほどに難しいらしい。
 ごくたま磁場が極端に湾曲して任意の次元への穴が開いたり、世界を構成するシステムの誤作動により世界法則が近似値の世界にごく一瞬、つながったりすることもある。
 事実、量子力学の世界では次元跳躍する黒穴と白穴に関して認識されている。
 だが、所詮、肉眼では認識できない極小の世界の話、もし自分の一部が分子単位で異世界に行ったところで誰が気づくだろう。
 たまに湾曲空間は人が通れる大きさで安定するがそれは超重力で光どころか星そのものを飲み込む。そんな中を人間が入り込めばでてきた時に人間、と呼べる形になって出てこれるかどうかはまぁ、考えなくても分かる。
 それに比べ、瞬間移動、座標転移は俺達のいる三次元原理さえつかめればいいから、と言っていたがそれでも俺にとっては途方もない話だった。
 それに劣るもう一つの瞬間移動、超高速移動、縮地、瞬歩だとか韋駄天足とか呼ばれるものは。魔法使いでもなんでもない、一般人である俺でも習得は可能であるらしい。
 が、それは血のにじむような努力と指輪の付帯能力―――肉体強化があってはじめて可能になる行為、普通の人間があれを行えばあまりの負荷に筋繊維は断絶し、血管は破裂、表皮は空気との摩擦熱により焼けただれる、それだけならまだいい、最悪、空気抵抗、大気が壁となって圧死する。
 乗り物に乗って窓から手を出した際のあの抵抗が人間の体では耐えられない位の壁になる。
 その上、移動距離も極端に短い上に間に障害物があれば当然、一見、なにもない空間で衝突死する。
 だから習得しても使える者と回数は自然と限られる。
 瞬間移動の概要に関してはそれ位だとオロバスは言い、詳しい原理について聞くと、
「わからんさね、それこそ俺っちより博学な連中を呼び出すしかない」
 と身も蓋もないことを言いやがったのであの時は思わず強制召還した。
 とはいえ、一癖も二癖もあるバルバトスやダンタリオンにお伺いを立てるのはあまりに気が引けた。
 あれ以来、瞬間移動には触れていなかったがこんなところで出会うなんて思いもよらなかった。

 タクシーの運転手は大方、オカルトか映画の話とでも思ったんだろう、なにも言わずにミラー越しに微笑んでくると帽子をかぶり直して再び前を向いた。
「まぁ、さっきも言った通り、信じるも信じないもオマエ次第だ。好きにすればいい」
「…………信じます」
「…………」
「信じます」
「そっか……」
 それだけ言うと車内は終始無言になった。

 マンションに戻るとひかりは俺を千鳥に預けると自分の部屋に引きこもった。
「ジュージ、なにがあったの、こんなに疲労して」
 思わず主従を忘れて幼なじみに戻った千鳥に苦笑しながら俺はなんでもない、といいながら部屋に戻る道を歩きだした。
「それにひかりのあの服って―――」
「あぁ、俺が濡らして着れなくしちまったんでわびに買った」
「ふーん……」
「どうした?」
「いぃえぇ、なんでもありませんわ、ご主人様、わたくしが一生懸命実行委員会でクラスの出し物をゴリ押ししていた最中にデート、プレゼント、挙句の果てに明日から必要な資材の調達もできていなかった模様。
 わたくしはかなしくてかなしくて……」
 普段ならアタシというところをひかりよろしくわたくし、と言い直すあたりかなりキているようだ。
 まぁ、ムリもない、のか?
「ちょっと待て、デートなんてしてない。
 そもそもオマエの指示―――」
「いいんですのよ、いいんですのよ!所詮、私は魚、釣った魚。
 エサを与えられる事なんてないんですから!」
 ついには演劇じみてくるくる回り出す始末。ダメだこりゃ。
 そーいや、今朝、空が明けるまで部屋にいたってコトはそのまま神社に行ったってことで今の今まで寝てないってか……
「はぁ……いい加減にしろ。何もなかった。これを取りにいってただけだ」
 そう嘯くと俺は左ポケットに入っていたダイヤ付きの輪っかを千鳥に放った。
「なにコレ、数珠?」
「……アミュレットと言え、アミュレットと、結構、高いぞ、それ」
「ふぅん、くれるの?」
「欲しいのか?」
「だってジュージからのプレゼント、6年前からもらってないもん」
 と少しすねたような上目使いで言ってきた。
 ……誕生会を開いてたころの話か。これまた昔の話を。
「好きにしろ、代わりにさっきのオボエテロヨ」
 はははははーとどこか生気の抜けた笑いで明後日の方を見て笑う。そんな千鳥に声をかける。
「そういえば、くいなとみなぎは?」
「二人とも部屋に帰ってきてるハズよ。いつも通り晩御飯には来ると思うけど…何かあったの?」
「あぁ、いろいろとな。いいかげんオマエは寝ろ」
 そう含みのある物言いをすると何が言いたいかは分かったらしい。こういう時、ムダな物言いが少ないと助かる。
「ん、晩ご飯食べたら今日は寝ることにするわ」
 と言ってみんなの待つリビングへと向かう。
 …今はそう、いろいろと、そう、いろいろと。
 情報が欲しいんだ―――

 晩餐時、二人にしばらくしてから俺の部屋にくるよう言うと俺は自室で新たな指環をはめていた。
 ちなみに余談だが千鳥は食事中、眠気のあまりスープ皿に顔をつっこんで別の意味でベッドに直行した。

 ―――そして今、俺の目の前には琴線を刺激しそうなくらい蒼い空の下、樹界が拡がっていた。
 他の指輪をはめて分かったが、この世界は魔王達の趣向によって構成されているらしい。
 ちなみに寂しがりやのオロバスの世界は服を着たマネキンの生き人形が整列している中にあの二足歩行の馬ヅラがいた。生理的に身の毛がよだち、どこの中ボスかと突っ込んだのち、契約に至った。マネキンの中に等身大フィギュアがあったことにツッコまなかったのは最後の良心だと思いたい。

「―――ふぅ……っ」
 緊張からか息を吐くと空から背中の開いた燕尾服を着た[なにか]が降りてきた。 
「おぉ、オヌシか、我が指環を手にしたのは」
「……鴉公子じゃなったのか?」
 目の前の[それ]はどう見ても人語を話す王冠を載せた巨大なフクロウにしか見えなかった。
 あまつさえ、顔を扇風機のように90度以上回転させている。
 ……どう考えてもフクロウ、フク○ウ博士だ。
「あぁ、その姿がいいというのならなれなくもないが」
「いや、別にいい。オロバスの言葉のイメージが強かったもんだからな」
「ホゥ、ホゥ、久しぶりだな、ヤツの名を聞くのも」
「知り合いだったのか」
「あぁ、同じ爵位だと何かしら接する機会は多いからな」
 まぁ、知り合いだからといって何も言う事はない。
「それよりもここに現れたということは」
「あぁ、オマエの力を借りたい」
「ワシの力は彼奴から聞いておろう、それでも欲しいのか?」
「あぁ、勝たなきゃいけない戦いに参戦しちまったからな」
「ホゥ、ホゥ、ホゥ、そうか、なら構わん、我の力ならば貸してやろう。
 その代わり―――」
「代償か、なんだ?」
「我は自然と共に在り、精霊達と共に在る事を望んでる。
 そうだな……できることなら一日の半分は自然の中にありたいものだ」
「半日か……」
「あぁ、まぁ贅沢は言わんが、な」
 含みがあるようにいうとフクロウは眠たそうに目を細めた。
「一つ聞く。お前の能力のオドの増幅は指輪を着けていなくてもできるのか?」
「ホゥホゥ、それはできん、だが、指輪をはめ続けても増えはせん。ワシは大気から魔力を吸い上げて我が指輪に蓄える。そしてそれを指輪に蓄えたものが使う。それだけじゃ」
「…それ、オマエになんかメリットあんのか?」
 言うならば貯金するだけ貯金して他人に使われるようなものだ。
「自分以上の力を望み、それを使えるようになった人間というのは存外、滑稽でな。力を使い果たし、いざと言う時、自分の力しか使えずあわてふためく姿なんぞ吹きださずにはおれん」
 ホゥホゥホゥとなくフクロウをあきれ顔で見ると、さもありなんと返して来た。
「……いい趣味だな」
 やっぱり真っ当じゃない、か。
 自然に関しても、まぁ、契約するときに内的魔力を増やせば特に問題もない。
「あぁ、条件に関しては別に構わない。
 それにしてもあそこに指環があったのは前の契約者と同じような契約をしてカラスにでも連れ去られたのか?」
 なら、なにか対策を施さなければならない。
 そして契約をしていれば前の契約者、そいつの事を聞き出せるかもしれない。
「いや、あれはワシの仕業じゃ」
「オマエの……?」
「あぁ、前の指環を持っていたモノは非道く自然無き世界にいてな。
 契約する前になけなしの力を使ってあの水場に逃げ込んで水霊と話をしては新しき主への貢物を用意しておいたというワケだ」
「ちょっと、待て、じゃあ、あの水場にのカラスは―――」
「ワシじゃ。
 あの森と水場の霊力の流れを弄くって定期的にカラスとして顕現できる程度の魔力の貯えができたのでな、あとはその流れと場の強化も兼ねて魔力の高い道具をあの場に集めとった」
「てコトはあそこにあった光りモノは全部ホンモノだったのか」
「あぁ、中に一つ、大きい石があったじゃろ。あれは特に価値がある。
 宝石魔術に使用できるほどの魔力が込められてての、まぁ、あとで講義しよう。
 それよりも今は契約を―――」
「あぁ、契約を」
 俺が腕を延ばすとその上にフクロウが翼を休めた。
 かぎつめが腕に食い込み、そこから血が垂れ、文字を形成した。これが契約書に、成る。
「我は魔王ストラス、36位の王、以後よろしく」
「おれは、俺は―――鴉 十字よろしく頼む」
 そう言うと世界を仰いだ。なにもない、よるべない世界。もし、オレがこの世界をつくるのならばどんな風になるのか―――
 
 目が覚め、一息つくとちょうどドアがノックされた。

グッドタイミング。
「―――入れ」
失礼します、と電気の部屋に入ってくる二人。
相良くいなと珠鴫みなぎがそこに、いた―――

「ということで私達の出番ですか」
「…ですか」
 二人とも夜伽に呼ばれたのかと勘違いしていたのか言葉尻に落胆の色がみえた。
「あぁ、頼む。
 この町で最近起こっている異常を調査して俺に伝えて欲しい。くいな、おまえならそこら辺の話はもう掴んでんだろ」
 ここ数日、その為にほっつき歩いていたようなものなのだから。
「はぁ、そうは言っても噂話程度しか集まってませんですけど」
 いまいち要領を得ないのか自信無さそうにくいなが口を開く。
「それでいい。なんでもいいから聞かせてくれ」

「あの、都市伝説って知ってますか?」
「いきなりだな…人面犬とか口裂け女とかだろ。それがどうかしたのか?」
「それが増えているんです」
「そりゃ噂話の一つや二つ――――
「じゃないんです。
 全部で8つ。
 実際なんらかの被害があったのか警察も動いてます。
「そいつぁ……」
 明らかに不自然だ。
 そういう狭地定着型迷信、フォークロアは多くて二つか三つくらいしか流行らない。理由は簡単、ネタが多ければ多いほどその土地に深く根付きにくいからだ。
 みなぎがそれぞれの伝説の流行ってる地域を地図にして渡してきてようやく納得した。
「うわさが流行っている地域も中央と八方とにわかれてる。唯一、流れてないのはにぃ様の城のあるこの地区だけ」
 即ち、俺の影響下、か。

 あの魔女め、上手い具合にばらけさせやがったな。
 いや、あの女の言っていたことを思い出す、あの女は3つしか指輪を持っていなかった。
 クリスも大量に指輪を購入するといったら途端に渋った。つまり、他の連中のスタートラインは2個か3個くらいだってコトか…
 ということは一回戦を終えたか、そんなことなしに悪さをしている他の指輪使いがウワサになっている可能性が高い。あの女に至ってはまだ事件すら発覚してない可能性だってある。
「……で?その噂ってのはどんなのがあるんだ?」
「北方のビル群の中にある幽霊ビル
 北東の徘徊するジェイソン
 東方の魂を抜かれるゲーム機
 南東の遊園地の夜中に光る城
 南方の人形マンション
 南西の中華街のケロロちゃんの復讐
 西方の今日もどこかでディヴィルまん
 北西、にぃ様がいるここ
 そして中央、九頭ビルの赤い部屋。
 で以上」
「なんかいくつか怪談なのかというかオマエらふざけてないか的なタイトルがあったんだが……」
 特に、ディヴィルまんとか。
「都市伝説ですから」
 なっとくできねー
「なんてこというんですか!
 特にディヴィルまんなんかは昔、不動 秋子さんという女傑が……」
「だまれ、それ以上はなんつーか、いろいろヤバい。
 で、警察が動いてるのは―――?」
「主に中華街とジェイソンですね。公式には発表されてませんが実際、死傷者が発生しているようです」
「じゃ、その二つを優先して、全部の詳細を文書にして俺に届けてくれ」
 中にはガセもあるかもしれない、というかあからさまにガセな気がするがその二つは恐らく俺と同類の連中の仕業だ。
「それじゃ引き続き情報収集を頼む。
 いいか、くれぐれも―――」
「この娘に捕まった時みたいに無茶はするな、ですよね」

 ぬいぐるみを抱くかのようにみなぎの頭に自分の頭に乗っけていたくいなはそう言いながら少し体を起こし、みなぎの服に手をかけだした。
「それじゃ……」
「……なにするつもりだ」
「先にご褒美を貰おうかなーって」
 こくり。
 自分の服を脱ぎだしたくいなにみなぎが同意する。
 それを見て俺はうめいた。
「ちったぁ、つつしみってモンを持って欲しいんだが……」
 特に求められたときにだけ応じるとか、そういう従順なの。
「申し訳ありません、まだ若いので♪」
「どっちかってーと俺の厳しさが足りてない気が……」
「にぃ様、充分、責めは厳しかった」
「昨日も気を失いましたし」
「……そーゆー厳しさじゃない」
 ……最近とみに生意気になってきている。
 隷属化した時の緊張感がなくなってきているようだ。
 まぁ、締めるところは締めているんで問題ないっちゃ問題はない。
 だが、ここまでくると少々食傷気味になる。問題はないがもう少し他の刺激で満たして欲しいモンだ。
 まぁ、在りもしないものをねだるよりは現状の更なる発展を臨むが妥当なセンか。

「まぁ、せいぜいオレが積極的になるよう誘ってみせろ」
「はいっ」
「うんっ、にぃ様とヤる」
 オレがそう言うと元気に返事を返し、みなぎは無表情の中に犯る気を見せた。
 ちなみにさっきからにぃ様と声があがっているがみなぎがここに来てから俺を呼ぶ時の呼称になっている。
 本来なら御主人様と呼ばせるのだろうが便宜上、みなぎの主人はひかりだ。
 それじゃ紛らわしいのでなにか他に案はないかと考えていたら珍しく本人からお兄ちゃんと呼びたい、と希望があがった。
 当初、俺は別に構わなかったが主人と実妹がそれに強く反対してきた。
 で、結局オレは寝技を、みなぎはハンガーストライキを行い、交渉権を勝ち取り、雪花の[お兄ちゃん]の呼称以外にして、という要望によりこの形に落ち着いた。

 さて、本題に戻って、俺は二人の下着を見てジト眼になった。
 …どうやら、当然のことながらハナっからそのつもりだったらしいな。
 くいながライトグリーン、みなぎがピンクのおそろいの下着を着け、同じ色のニーソックスとガーターベルトをつけていた。無地だがカットが激しく、所々にレースが入っている。
 二重になっているはずの股間のクロッチは透けていていかにも[そういうことをする用]だ。
「どうですか?ゴハンのあと、打ち合わせしておそろいの下着でこようって事にいたんですが」
 イタズラが成功したかのようなくいなの得意げな口調に俺は続けろ、と無言であごでしゃくって指示を出す。

 二人とも淫蕩に微笑むとそのまま口付けをし、正面から互いの身体をすり合わせだした。

「んっんん…」
「ふぁっ、んっ、ふんんっ!」

 舌はぴちゃぴちゃと淫らな音をさせ、互いの口内の粘膜をこすり合わせる。
 下の方も下着をつけたままクロッチ部分を押し付けながら上下させていると、次第に湿り気が増し、互いの女性器が透けてあらわになっている。

「んっんん…っ!ふうんっ!」

 次に、薄目をあけて手探りでブラを取り合うとそそり立った乳首をこすり合わせ、互いの胸に埋没させる。
 興奮し、ボルテージがあがってきたのかこちらにまで牝の匂いののった熱気が伝わってきた。

 が、オレは動かない。もう少し、もう少しこのショーは楽しめる。

 二人ともそれがわかったのか今度は寝そべってシックスナインの体制になり、互いの性器を弄りだす。
 くいなはぴちゃぴちゃと布越しなのにも関わらず、卑猥な水音をこちらに聞こえるよう大きく立てながらなめ上げた後、そのまま張りつくパンティの中に指を入れて薄布一枚を越してこちらに見えるようみなぎの秘裂を広げてみせる。
 おかげで内側の媚肉がときおり膣中に挿れて欲しがっているかのように収縮しているのが分かる。

「んふぅっ!アタシよりも小さいオマンコなのにっ、ご主人様のおチンポ入るんですよねぇ…っ?アタシのでもキツキツなのにこんな小さいオマンコにご主人様の太いのが入るなんて…っなまいきっ!」
 セリフそのものはみなぎを虐めているがむしろ嬉しそうにみなぎの太ももに流れおちた愛液を愛しそうに舐めあげ、陰唇のえらに沿ってゆっくりと細い指を走らせながら舌を布の上からみなぎの膣に挿入しようと食い込ませる。

 ぬっ・・・ちゅぅっ・・・くぽっ・・・・・・んちゅうぅっ・・・

「んっ!ふぁう…っ、んはあぁ…ぁっ…っ!」

 一方、みなぎはというとこれまたくいなの最も濡れた部分の布をちゅうちゅうと吸い取るとそのままこちらに見えるよう、だ液と愛液が混じり粘性を持った淫液を使ってくいなの股間と自分の口に橋を作って見せつける。
 そればかりかこちらはくいなの性器だけではなく、片手でくいなの美乳を愛撫し、もう一方の手で布越しでも分かるよう淫核を勃起させ、包皮から剥き出しにし、乳首をするのと同じ動きで指の平であたるかあたらないかくらいの強さで擦りつける。

 ぬちっ・・・ちゅぬぅっ・・・ぬりゅう・・・

「ひぅっ、んはぁっ、んんんっ!」

 それでも刺激はしっかりと伝わっているのか時折、くいなの足全体がびくんっ、と反射している。

「はぁっ、こんなにちくびとくりとりす大きくして…すけべ…」
 こちらもまた好戦的な笑みを浮かべ、息を荒くしては張り付いた下着が少しでもくいなの淫裂に食い込むよう、なぞるような舌の動きで丹念に何度も舐めあげていく。
 その動きに合わせて近くの布もズレるのだろう、クリトリスに刺激がいくようでときおり走る快感に身体を振るわせた。

 二人の視線がオレの視線と絡まる。
 既に二人とも、誘っている、というよりはもう我慢ができなくなり、懇願する顔になっている。

「どうした?それで終わりか?」

「っ!…まだに決まってるじゃないですか。前にも後ろにもたっぷり注いでもらわなきゃ満足できないんですからっ」

 そう言うとくいなはもう使い物にならなくなったみなぎの下着の紐を解くとそのまま剥ぐ。

 と、そこには前だけしか弄っていなかった答え―――ヴヴヴヴヴヴヴと微振動を繰り返す男性器を模した張子がみなぎの肛門に納まっていた。

「どうですか?
 ご主人様のをいつでも受け入られるようにこっちの方もっ、んっ!、いつも挿れてるんです…っ!ふぉあぁっ!」
 みなぎの肛門に入っているモノを見ながら弄って意識したのだろう、もどかしそうに尻をふりふりと揺らし、少しでも快感を得ようとするが思うように快感が得られないらしい、物欲しそうな熱い目でこっちをみてくる。
 だが、まだ早い。
 互いにバイブを弄れる程度に抜き出すと、そのまま相手の菊門を陵辱しだす。
 開発した成果か、互いのアナルはそれぞれの持つそれ専用ではない、ノーマルのバイブをなんなく受け入れ、入ってくるそれと引き換えに前の蜜壺から愛液が勢いよく、ぴゅぴゅっと飛び出していた。

 ずっ・・・ぬぅっ・・・にちぃっ・・・

「あっ、ん…っ、あぉうっ!くふっ、んふあぁぁっ!」

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「ふぅ、ふぅ、ふぅ…ひぅっ、んあっ!、ふぃぁあっ!」

 それぞれが排泄期間を激しく陵辱され、身悶えながら相手のそれを陵辱する。
 しばらくそれが続き、じゅぽっと音を立ててくいなの手に収まったピンク色のバイブが出た後のみなぎのアヌスはまるでなにか挿れておくのが当たり前かというほどに穴が開き、中の淫肉もそれを望むかのように蠢いていた。
 こちらからは見えないがみなぎの手の内にライトグリーンのバイブが収まっているところを見るとくいなのアナルも同じような痴態をさらけ出しているのだろう。

「んふぁっ、これでご主人様に使っていただく準備が整いましたぁ…っ」
 たっぷりと甘い声でくいなが囁くとそれまでくいなの濡れそぼった淫穴を相手にしていたみなぎも肩で息をし、「ん」と同意の声をあげてきた。

 …そろそろか。
 俺の方もズボンの中で勃っているのが分かるくらいに怒張をたぎらせ、二人に見せ付けるようにすると二人とも待ち焦がれたようにベッドから降り、こちらの股間に鼻先を近づけてきた。
 俺が組んだ足を解いて広げるとゆっくりと、だが決して遅くない速さでくいながベルトを、みなぎがファスナーを咥え、口だけで下の衣類を脱がしにかかってきた。

 ここ最近、ようやくこの行為も慣れてきた。
 当初は足を広げたとたん、我さきにと群がり、ヘッドバッドしてくれたり、手を使ってベルトを脱がしにかかっていた。他にもトランクスを下げるときに布地と一緒にその中にあるものまで噛み付いてくれやがったのもいたが、まぁここでは割愛する。
 ようやく覚えだしたのかここまで一通りを行い、肉棒に奉仕できるようになってきた。

「ふぁ…っ、ご主人様の匂いっ」
「にぃさまのあじぃ…っ」

 くいなは下着から開放され、ぶるんっとそそり立った俺の匂いをかぎ、はぁっと興奮を隠さずに亀頭に息がかかるくらいの近さでため息をつく。一方、みなぎはさっきのくいなへの股間奉仕と同じ要領で俺のトランクスの股間部を味わっていた。

「ご主人様…ご主人様にご奉仕…奉仕させてください…」
「満足するまでこの身体ごじゆうにお使いください…」

 裸のまま欲情しきった瞳で懇願する牝奴隷達。そしてオレも止めるなど必要ない。

「始めろ」

 そう言うとまるでこの世界でもっとも美味しいモノを食むようにくいながそのまま喉奥まで当てるように肉棒をしゃぶり、一方、みなぎは絶妙な舌使いで子種袋を自分の口から出し入れをして刺激してくる。

「はぁっ・・・ぬろぉっ、はぁ・・・っ、んぷっ・・・はっ・・・はあぁっ・・・」

 くいなも苦しそうにしながらその激しさは決して衰えることはなく、逆に激しくなっていた。
 それどころか―――

 ぷしゅっ

 先ほどからくいなの性器は誰も触れていないはずなのに絶頂にも似た感覚を味わっているかのように潮吹きが止まらなかった。
 みなぎも同様に身体を奮わせながら自分の股間をちょろちょろと水浸しにしながら懸命に身体が崩れ落ちないよう、玉袋奉仕を続けている。
 無理もない。なぜなら口奉仕で肉茎奉仕は挿入されるイメージと、玉袋奉仕は淫核への奉仕にそれぞれリンクさせている。
 その上、オレが直接関係することでしかイケない。そのため、二人は今まで溜め込んだ快感を爆発させるかのように小さく連続してイキながら奉仕していることになる。

「んっ・・・んふぅんっ、んむ・・・あん、ひぁむ!・・・んむむぅっ!」

「ぬぅぅっ・・・ぷはっ…んむっ!」

 次第に二人ともコンビネーションが取れてきて、くいなが美味しそうに奥まで肉茎を口に含むとみなぎが口から袋を出し、そのまま根元までちろちろと舌を伸ばし、舐りあげ、再びみなぎが焦がれたように子種袋を口に含み、舌で転がしだすとくいなは顔を持ち上げ、唇を横にずらしながらでカリを締め上げ、舌の表面全体を亀頭に這わせる。

 しゅっ、にちゅっ、ちゅっ、ぬちゅっ!

「ん…っ、さきばしり…っ、でてきたぁ…っ♪んっ、おいし…っ」

 ちゅっ、にゅるっ、ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!

 まるで乳牛の乳搾りのように交互に与えられる刺激が快感の波となり、白濁液が堰をきったかのようにどんどんとみなぎの舌が這いすりまわる裏筋のすぐ下を駆け上がっていく。
 みなぎもそれを心得たのか鼻先で駆け上がり硬くなる筋の息を吸いながらその鼻先で少しでもその中身が駆け上がるのを阻止しようとする。

「…っ!そろそろイクぞっ」
 俺が声をあげると二人は素早くオレの陰茎をお互いの舌で上下にはさみ、そのまま亀頭を包みこみ、まるで一つの肉穴になったかのように同調し、縦にすりあげる。
「くっ!」

 びゅるっ!びゅびゅっ!びゅるるっびゅくっびゅくんっ

「うっ、くうぅっ・・・んっ・・・だ、だめェ・・・いくイくっ!ああああぁぁぁぁ」
「んっ、あぁんっ、すっ、すごい・・・っ、ひぁ・・・ひあああぁぁっ!」

 二人とも顔射され、濃い俺の匂いを嗅ぐと同時に達してしまう。

「ふぁんっ、んっ、ぴちゃっ、んんんっ、んっ」
「れろぉっ、んっ、んん~っ」

 少しでも味わいたいのか今、自分にかけられた精液を相手に舐め採らせると今度はオレのモノにまだ残っている子種を求めて舌を伸ばしてきた。

「ぴちゃっ、んんっ、れろぉっ、んっ、はぁっ、んんんっ」
「んんっ、ん~、んんんっ、んっ」

 今日何度になるか数えるのにも億劫になる射精を終えたにも関わらず、二人が舐め終えた俺のモノは天に向かってそびえていた。

「はぁ…っ、あ…すごいです…ご主人様ぁっ」
「あ…っ」

 それを見てまだ相手をしてもらえるのかと身体を震わせて悦ぶ二人に俺もヤキが回ったのかヤケになったのかそのままベッドに手をつかせてこちらに尻を突き出させるよう命令すると挿入してもらえると思ったのかつん、と尻を突き出し、少し足を開いてみせる。

「まるで盛ったメス犬だな」
 おれが吐き捨てると被虐されることに対してすら快感を得るようになったのだろう、身悶えながら許しを請おうとする。
「あぁっ、申し訳ありませんっ、いやらしいメス犬にお仕置きをお願いします…っ」
「そんなメス犬には指だけで十分だ」
 そう言って俺は二匹のメス犬の発情し熱を持った膣穴と尻穴に指を突っ込む。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

 二人とも最初は指だけの挿入に感じつつも中途半端な快感に物足りなさそうにしていたがいきなり変化しだす。

「ひぁっ!なにこれぇっ!」
「んあぁっ!にぃさまのちんぽっ、前にも後ろにも…っ!」

 それだけならまだいい。

「ふんっ、んんんっ!?なにこれぇっ!突つかれるたびにっ!びゅびゅって…っ!」
「どぴゅどぴゅでてぅっ!いっぱい…いっぱいださえてうぅっ!あっ、ん、だめぇっ!」

 信じられない出来事に二人とも激しく悶えだす。 
 なんてことない。ダンタリオンの力だ。
 オレの指を挿れられる行為をオレのモノが挿入されるイメージに置き換えた。それだけじゃつまらないんで、突かれる度に射精されるイメージも追加で送り込んだ。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、じゅぼじゅぼっ、ぐにゅうぅっ!

「ひんんっ!またイくぅっ!らめっ、これぇっくせになるうぅっ!」
「ふっあっんんんっ!できひゃう…こんな…いっぱいぃぃっ!あかひゃんできひゃうぅっ!」

 数えられないくらい前後同時に激しく突かれ、射精を受け、もう呂律がまわっていない。
 安心しろよ、この方法ならいくら出されてもそんな心配はないからな。
 言葉にはせず、ただ不安と悦びがない交ぜになった心を読んでは冷たい目で笑う。

「くふうぅぅっ!うっ!あ、あうっあうぅっ!」
 指は両手ともきゅうきゅうと締め付けられ、潤滑油があっても出し入れが難しく、ずっずっと間接ごとの出し入れになり、その度に喘ぎ声が上がった。

 ぶしゃあぁぁっ!ぴゅぴゅっ!

 くいなが潮を吹き、みなぎが黄金水を漏らしながら身体を弓なりにしならせる。
 だが、俺の注挿は一向にやむ気配を見せずそのまま続く。

「ひああああぁぁぁっ!んくぅっ!ぅあっ!イクのっ!イクのとまらにゃいひぃっ!」
「ひぅっ!らめぇっ!おくっ!おくきてゆぅっ!やすっ、休ませてぇっ!」
「ダメだ。主人をおいて勝手に満足して休みたい?オマエらは何様のつもりだ?」
「んひうぅっ!も、申し訳ございませんんぅっ!」
「そう思うんだったらとっとと俺をイカせてみろ、早くしないと狂っちまうかもなぁ」

 虐げられる悦びに打ち震えながら、なんとかヒザを浮かせ、オレの指の入った前後の穴を自分の両手で広げ、こちらに懇願する。

「ひうぅっ!んっ!ひぁぅっ!お、おねひゃいしますぅ!ごひゅじんさまのチンポ、ちんぽぉっ
 好きなとこをろにハメてくださいぃっ!」
「だひてっ!にぃさまのほんものっほんものチンポ汁っあたしの膣内にいっぱいにしてぇっ!」
 とりあえず及第点にまでは仕上がった、か。

「二人とも、さっきみたいに抱き合ってそのまま寝転がれ」
 そう言うとくいながみなぎを引き寄せ、そのままの勢いで寝転び、互いの足を絡ませ、二人の二穴がよく見えるよう大股開きになる。
 一方、それまでされるがままだったみなぎもワンテンポ遅く気づいたのか軟らかい身体を活かして、開かれた股間と穴を少しでもよく見れるよう挑発するように腰を上げた。
 すると、聖水と愛液の混じった牝の匂いがはっきりとこちらに伝わってきた。

 俺は転がったままのバイブを手にとるとそのまま二人のアナルに埋め込み、そのままスイッチをMAXまでツマミを移動させた。
「あっ!おぉぅっ!んあっ!」

 そしてそのまま二人の濡れそぼった秘所と秘所の間に挿しこむとそのままスライドさせだす。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、じゅぼっ、ぬちゅんっ!

「んっ!ひんっ!ふぁっ!ふうううぅぅぅんっ!」
「くりっ!くりといすっびりびりくゆぅっ!」

「これくらいで満足するなよ…」
 まだ使ってない穴があるだろう?
 俺は指を二本、二人の穴に突き刺すと中でかき回す。

 じゅぼじゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

「~~~~~~っ!!
 あ、あばれっ!マンコのなかでおちんちんがにほんもぉっあばれてるぅっ!」

「らめっ!まんこっ!ちびまんこにっ、にほんもはいんないぃっ!」

 二人ともだらしなく舌を重ね、よだれは垂れ流しになり、乳房を擦りつけあう。
 もうまっとうな思考は残ってないのか愛液と尿が垂れ流しになり、それが敏感な亀頭にもかかり、潤滑油になって美少女二人のたてすじを蹂躙し続ける。
 二人のワレメが俺のモノを引きずり込もうと出入り口をひくつかせるが欲棒は狙い過たず、勃起し、包皮の向けた淫核に亀頭がぶつかるよう、これでもかというくらいに勢いよくピストンする。

「ひうぅぅぅっ!ああぁ…んっ!ひぁあっ!」
「くりっ、ふぅっ!らめっ!んはぁっ!」
 もう体が言うことを聞かないのだろう、奥に突き入れる度に腰を中心にびくびくっと肢体がはね、その度にペニスを圧迫した。

 ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!ぱちゅんっ! 

「溶けちゃうっ!溶けちゃうっ!気持ちよすぎますぅぅっ!イっちゃうぅぅぅ!」
「あぁぁぁぁぁぁっ・・・中でこすれてぇっ!きもちいいぃぃぃっ!」

「そろそろだ、イクぞっ」
 急速に尿道を駆け上がってくる白濁液が止まることなく幹から爆ぜる!

 びゅ―――っ!びゅるっ!びゅくんっ!びゅくっ、びゅくっびゅくんっ!」

「はっ、あああああああああぁぁぁぁぁ――っ」
「んっ、ふあああぁぁぁぁぁっ!」

 びゅる、びゅっ!ぴゅぴゅっ!ぴゅっ・・・ぴゅくっ。

「ん、ふぅ…っ」
「ん…ん…っ」

「ふぅ…っ」
 俺は一息つくと気を失った二人に簡単な後処理を施すとタオルケットをかけ、別の部屋で寝るべく、そのまま部屋をあとにした―――

< つづく >

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