key 第二章の3

第二章の3

―――久しぶりにあの夢を見た。

 誰かと寝た夜には見ていなかったのでもう見れないものかと思っていたが幸い一人で眠った時には見れるようだ、まだ見れた。
 あんな戦いが始まった以上、夢にも変化がないの確認してみたかったのだが…やはり変化が現れていた。
 契約した魔神達と雪花達、つまり、俺のモノになった連中の顔が増えていたのだ。
 が、しかし、顔が見えない影のほうが圧倒的に多かった。

 俺はベッドの横にあったミネラルウォーターを飲みながらクリスの宝石箱を思い出す。
 あの時、宝石箱の中にあった指輪の数は71環。
 即ち―――
「今の約10倍ってトコか」
 俺はため息をついた。

 昨日、戦った女の科白を思い出す。
 自分の2倍、というコトは一人当たり2環から3環の指輪を持っているとして考えると、最悪あと2、30回は戦わなくてはいけない、ってコトか。
 まぁ、手っ取り早ければあと一回、すなわち、俺の持ってる指輪以外を全て手に入れたヤツが現れれば一回で済むだろうがとてもじゃないが64環を持つ相手を7環しかもっていない俺が倒せる可能性は限りなく薄い。
 まぁ、周囲も潰しあっていって戦うのだとしたら約10回程度としてみるのが妥当だろう。
 だが、その場合、熟練した指輪使い達だけが残り、そんな連中と戦わなくてはいけなくなるだろう。

 ………なら。
 どうすればいいのかは分かっている。
 幸い、今の俺はクリスから6つの指環を購入し、戦っていない連中に比べて2倍近くの指輪を所有している。
 中には契約していない指輪もあるが、それでも多いのには変わりない。
 そこを突いていけば自ずと指輪は増やせるだろう。

 戦略はまぁ、そんなところだ。あとはその実行段階、戦術、か―――

 あれから2日、休日になり他の指環使いと本格的に遭遇するべく一人で街にきていた。
 目的地はくいなに聞いた場所から近場を一ヶ所チョイスした。

「ケロロちゃんの復讐、か」
 ちなみにケロロちゃんとは人体切断すらできそうな巨大かつ凶悪なハサミを頭上にかかげた理容院や美容院によくあるカエルのマスコットだ。
 ちなみにケロロちゃんの復讐とは以下のような話らしい。

 ある所に女グセの悪い男がいた。その日も美容師の女を暴行まがいの行動をしたあと酒に酔っ払ってここらへんを歩いていた。
 ふと、気がつくと人通りのない道の真中にケロロちゃんが立っていた。
 なんの気なしに邪魔だと思った男はケロロちゃんを蹴り倒してそのままそこを通りすぎた、が、なにか音が聞こえた。
 だが、酒に酔ってた男は気づかない振りをしてそのまま立ち去ろうとする。
 しかし、現場から立ち去ろうとすればするほど後ろから聞こえてくる声はどんどん大きくなっていく。
 あまりのしつこさに頭にきた男は声の主をぶん殴ってやろうと振り返るとケロロちゃんが立っていた。
 それだけならいい。

 男の手の指がケロロちゃんのハサミの中に収まっていた。

 五本の指があった場所には代わりにびゅーびゅーと止まることのない血の指ができて、いた。
 あまりの恐怖に男が叫んで振り返って逃げようとすると今度は踏み出したハズの足が横にあったケロロちゃんのハサミに突き刺さっていた。
 もう半狂乱になりながら這ってでも逃げようとすると一斉にケロロちゃん達のフリカエル、フリカエル、フリカエルという声がビル群に木霊した。うつ伏せだった男が訳が分からなくなって振り返るとそこには自分の首にかかったハサミを持って綴じようとしていたケロロちゃんが、いた。

 なんでも女の命とも言うべき髪を切ってきたハサミが意志をもち、復讐する、という話だ。類似した話もいくつか取り上げられていた。
「…なんだかな」
 これなら片手に包丁、片手に死んだ鶏を持って笑いながらこちらへ歩いてくる赤パンチ、赤鼻白顔の某バーガー屋のマスコットに夜道で出会う方がよっぽどドッキドキだ。

 次にどうやって入手したのか分からないがみなぎから渡された書類に添付された警察の内部資料には実際にあった事に関する記述があった。
 [こと]が起こり出したのは大体十数日ほど前、そうクリスに会った数日後だ。
 この辺りではビル風によってできる突風に交じって時折、カマイタチが発生し、モノが切れる事故がたびたび起こっていたが最近じゃそれによって人体、つまるところ指が吹っ飛んだり体が裂けたりしているらしい。なんとも非常識なウワサが飛び交っていた。
 だが、実際、被害者が幾人も出ていた。
 その被害者のいずれもがしつこく女に絡んでいた、もしくは女関連で複数のトラブルを抱えていた男だったらしい。
 この関連性から警察は捜査本部を設置、事件と事故、両方の線から捜査に当たっている、と書いてあった。
 [俺達]から言わせれば「自分はここにいる」と宣言しているようなものだ。

 ………他の指環使いか、もしくは俺に対する警告だかなんだか知らないがいい度胸をしている。
 あとはこの休日、街の中で人通りが少ない場所を選べばほら―――

「…………」
 己ずと[それ]が近づいてくるのが分かる。
 指環が教えあっているのか、それとも呼び合っているのか。
 ただ、数奇な運命に導かれて交錯するは指環使い。

 コッコッコとハイヒールが鳴るのを隠そうともしないそれはビルとビルの狭間の小陰で休んでいた俺に当然のように名前を聞いてきた。
「…名前は?」
「カラス、烏 十字。そちらは?」
「私は―――クジャク」
 そこで一旦区切り、足をとめ、陶器のような白肌にプラチナブロンドの長髪、そして何より特徴的な緑銀のチャイナドレスをベースにしたような服に腰を当てて自信ありげに宣言する。
「孔雀院 華南。よろしく」

 人気のない裏通りで俺達は対話していた。
 と言ってもただ会話をする、そんな穏便なものではない。
 互いに一瞬でも気を抜けば文字通り、瞬く間に指輪を失うだろう。
 それだけ張り詰めた緊張感の中に俺達はいた。
「一度だけ聞いておくわ。指輪を渡しなさい。そうすれば命まで取らないわ」
「そっくりそのままお返しするぜ」
「…そう、なら―――!」
 言うが早いかクジャク―――孔雀院の足元が爆ぜる!
「骨の2、3本で済むようお祈りするのねっ!」
 早いなんてモンじゃないっ!声の前後がほぼ同時に届くような速さで俺の直前まで到達し、まるで鞭のように孔雀院の脚がしなり俺に放たれる!
 スリットの入ったスカートがギリギリにまでめくり上がり、やたらと光るハイヒール、恐らくはダイヤか金属か、光っている上に塗装されていて分からないが―――それが屈んだ俺の頭上を恐ろしい早さで通過した。
「これがカマイタチの正体か!」
 おそらく、まともに食らえば肉だけじゃない、骨ごと鮮やかな断面で断たれるだろう。
 だが、孔雀院がこう来るのは踏んだ影から解っていた。
 さすがにこの早さには驚いたがまぁ、同じ指環使いとしてならまだ常識の範疇、対処できた。
「コイツで終わればっ!」
 そのまま掌底の要領で指輪ごと華南に突き出す!

 ばちぃっ!

「なっ―――!」
 それは気づけば俺の声で―――昨日の女の要領で互いが弾かれた! 
 どういうことだ?
 昨日のあの女の場合、間接干渉は防がれても直接的になら力は使えたってのに。
 困惑の色を隠せない俺に余裕の笑みを持って孔雀院が口を開いた。

「なにかしてきたみたいね…
 だけど近接でしか戦えないんだからそういう力を無効化させるアミュレットくらい用意してあるわよ」
 そういわれ見上げるとそこには―――

「!」
 再び垂直に振り下ろされんとするその脚首には確かにアミュレットが―――!
「ちぃっ!」
 身体をのけぞらせて、いや、ここは―――!

 更に前に出る!
「っ!」
 孔雀院の攻撃は線だが、攻撃に使用している場所は必然的に硬いところに絞られる。
 即ち、あの凶悪なハイヒールとヒザだ。
 そのリーチが届かない場所は、いや、それ以前にこの脚は振り下ろさせてはいけない。
 振り下ろせばそれは致命的な一打となって俺に降りそそぐ!
「なっろぉおおおっ!」
 もう一度、弾かれた手で頭をかばうように組み、そのまま振り上げられた華南の足首に添えるようにすると左足で軸足に脚払いをかける!

「っとぉっ!」
 だが、相手もさるもの。俺に足を弾かれた反動を利用してそのまま側転した後、後方宙返りになり距離をとる。以前、みなぎと闘っていなければ思わず賞賛していただろう。
「ッふぅ…ッ!」
 息をつくヒマもないやりとりから解放され、呼吸を整える。

 ……ヤバい。明らかに、ヤバい。

「よく避けたわね。だけど次は外さないわよ」
 その通り。きっと次は避けられない。というか今のを避けられたのすらマグレに等しい。

 …こんな事なら武器を用意しとくんだった。
 内心舌打ちするものの、そんな時間はなかった。そもそも、それほど使い慣れた得物に心当たりもないし、かといって使い慣れない道具ほど邪魔なモノはない。
 武器は無意識に使えるほどに精通しなければ実戦では使えない。
 たとえば不慣れな飛び道具―――銃を使ったとしても目の前の相手には引き金をひく時間で肉薄され、発射後の反動に耐えている間に文字通り、腕ごと持っていかれる。
 にしてもこんな指環があるとは思っていなかった。
 …いや、使い方があるとは思ってもみなかった。
「戦い慣れてないところをみると貴方、実戦向きの指環は持っていないようね、いや、実践そのものが初めてなのかしら?」
「…ふん、隠しているだけかもしれないぜ?」
「出し惜しみする余裕なんてあるのかしら?」
 ち、見抜いてやがる。

「ねぇ、もう一度聞くわよ?
 どんな力だか知らないけど私には効かないわよ」
 その通り。
「素直に指環を渡せば痛い想いをしなくても済むのよ?」
「………分かってる…」
 確かに、それはとても魅力的な選択肢だ。
「だが、断わる」
「……そう、残念ね」
 諦めたようにため息をつくと、目を細め、これ以上ないくらいに視線を強めるとそのまま俺を射抜き、間を詰めようとこちらに向かってくる。

「―――っ!」

 この女をこれ以上近寄らせるのは―――マズい。
 なら、どうするべきか。
 思いつくことは一つしかなかった。
「教えてやるよ……これがオレの……」

 戦い方だっ!!

「!!」
 そう言いながら俺は指を、腕を掲げ、孔雀院が足を止めて身構えたのを確認すると 同時に孔雀院とは反対側に走り出す!

「ちょ、ちょっと、逃げる気!?」
「なんとでも言え、こっちが不利なのに戦ってられるかよ!
 戦うんだったら俺が武器でも用意してからにしろ!」
 向かい合って戦ったとしても勝てないのは自明の理だ。

「っ、そんなヒマ、私が与えるとでもっ!」
「っ!ちぃっ!」
 後ろを見ると凄まじい勢いで孔雀院が走って追ってくるのが分かった。
 そりゃそうだ、向こうも今なら確実に勝てる相手をわざわざ逃したくはないだろう。

 俺は大通りに出ると人ごみを掻き分けながら孔雀院との距離を稼ごうともがく。
「くぅっ!!なんだって今日はこんなに混んでんだよ!」
「休日だからに決まってるじゃない」
 後追いする孔雀院は俺の造った道をなぞりながら悠長にそんな返答をしてくる。
 大通りではコトを起こさないつもりなのか互いに声の届く範囲までしか近寄らない。
「ちくしょ、このままじゃ―――」
 人通りがなくなったと同時にどうなるかは目に見えている。

 俺は人ごみに隠れ、互いの死角に移動したのを確認するとそのまま逆側の人の流れに乗り、そのままUターンしてさっきの衝突地点を越えた後、大通りを外れ、さっきよりも大きい小路に逃げ込む。
 すると背後に気配が生じる。
「…っ、マジかよ…」
 まるであの出来の悪い都市伝説だ。
 はずれろ―――そう思いながら

 ふりかえる。

 すると小路の入り口に見たくもない女の影が在った。
「逃げてもムダよ。
 私の指環は探しモノを見つけ出す能力を持つプルソンとヴォラクの指環があるもの。
 どれだけ離れていたって貴方を見つけ出して見せる―――!」
 高らかと宣言する。

 だが、そこに俺の姿はない。
 …あぁ、どこにいるかは分かるだろう。だが、どの高さにいるかまでは―――考えつかないだろうっ!
 完全に仁王立ちになった孔雀院の足元にしゃがんでいた俺は手を伸ばし、ありったけの力でアミュレットを引き寄せる!

「な…っ!」

 まさか人通りのある入り口から仕掛けられらるとは思っていなかったのだろう、影からも孔雀院の驚きが伝わってきた。
「くぅっ!」
 両足が引っ張られ、倒れそうになるが敵もさる者、今度は両手で地に手をつき、前転して距離をとろうとする。

 そして、アミュレットは俺の手に―――残っている!

「逃がすかぁっ!」
 このまま逃げられてアミュレットを装着されては元の木阿弥だ。

 チャンスは今このときを以って他にない!

 俺は手を伸ばしたなびくチャイナドレスのすそを掴み引き寄せる。
 さすがにこの奇襲には対応できまいっ!
 そう思いながら無理やり引き寄せられる孔雀院の顔を見る。とそこには。

 にやりと不敵な笑みを浮かべた孔雀院の顔、それどころか待っていたとばかりに凶悪な両カカトがこちらに向いている!

「…っ!?」
 違和感を覚える。が、身体は止まることなくそのまま孔雀院を引き寄せ、その胴に俺の手が着く。
 何があるか知らないが大丈夫だ。これさえ効いてしまえば―――っ!

 ばちぃっ!

「なにぃっ!?」

 そのとき起こった全てに対して驚く。

 アミュレットを奪ったのにも関わらず指輪が弾かれたこと、そしてその時入ってきた孔雀院の思考にもそしてその指環―――
(アミュレットはフェイク。身体能力を上げたのも防御していたのもこの指環)
 No.29 その名は基督教でも名高い7つの原罪の一つ、怠惰を司るとも言われる魔王。
「アスタロト―――!」
 言うが早いか踵がこちらに振り下ろされる!

 しゅばんっ!

「ぐぅぁあッ!」
 突然のことに身体に平行線が描かれ…る事はなかった。逃げている最中に手に入れ、服の下に忍ばせた鉄板が衝撃を受け、その反動で小路の奥へ7メートル以上吹っ飛ばされる。
 あまりの衝撃に肺の中の空気が全て抜け出し、痛みに息ができず、思わず喘ぐ。

 にしても…文字通り鉄板でよかった。アルミやそれに類する軟金属だったら間違いなく貫かれていたに違いない。
 瞬時に遠のく意識を回復させ、転がりながら体勢を整えて膝をつく。
「ふぅ…っ、最初は驚いたけど…こんなことするために逃げ出したとは…お粗末な結末ね。
 …だけどもう、二度はない」

「…っ!」
 なんと言われようが俺にはこの方法しかない。
 そう思い、再び背をむけて駆け出した俺に高らかに背後から声がかけられる。
「走ってもムダよ?その先、袋小路だもの」
「なっ!」
 声の通りそこには越えられない巨大なコンクリートの壁が―――!
「ここあたりは私の庭みたいなものでね、道は把握してるの。…さぁ、もう逃げられない」
 そう言って女はヒールを響かせ歩み寄ってくる。

 じり、と俺は後ずさっていき、ついには

 どんっ

「!」
 コンクリートに背中をつけることになった。
 思わずへたり込む。

 そんな俺を見下してふと思いついたように孔雀院は口を開いた。
「どう?これが最後。
 私に土下座をしてペットになる、って言うんだったら無傷で助けてあげるわよ?
 見たところ顔も好みだし、年下にこんなペットがいたら、と思っていたのよね」
「……ふざけんな」

 …その提案に俺はブチ切れ―――

 後ろの壁に左手を叩きつけ、言い放つ!

「誰がそんなマネするかよ!」
 どいつもこいつも似たようなことばかり言いやがるっ!
 俺がそう言ったとたん、孔雀院の顔が険しくなる。
 コイツにとっては俺は怯えて許しを請わなければいけないのだろう。
 だが、俺の答えはNOだった。
「そう、人がせっかくチャンスをあげたのに…」
 再び孔雀院が俺を見る、その顔はまるで般若のようだった。
「なら、病院のベッドで目覚めるのね―――っ!」
 そう叫んで右足を振り上げ―――

 ばっ

「なっ―――!」
 羽交い絞めにされる!

「なっ何がっ!?」
 孔雀院が必至に後ろを見るとそこには屈強そうな男たちが四人、孔雀院の両手両足を大事そうに抱きかかえ拘束していた。
「ちょっ!は、離しなさい!」
 慌てたように四人を叱りつける孔雀院。
 だが、男たちは己の持った肢体を見つめ、ぴくりとも動かない。

「どうしたよ?
 かかってこないのか?」
「…っ!」
 男たちに気を取られている内に俺はポケットに手を突っ込みながらとぼけた口調で孔雀院をからかった。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!なんなのよ、貴方たち!どきなさいって言ってるでしょう!」
 そう叫んで慌てて無理やり男たちを振りほどこうとするがいかんせん両手両足を持ち上げられてはさすがの足技使いもバランスはおろか踏んばりもきかず、じたばたもがくハメになるだけだった。
 その証拠にその拘束は孔雀院がどんなにしても解ける様子はない。
 ようやく立ち上がった俺はズボンについた埃を払いながら孔雀院告げた。
「あぁ、そうそう、いまさらだけど教えてやる」

 これが、俺の、戦い方だ―――

「そ、そんな、これが貴方の……っ!?」
「あぁ、指輪の力だ」
 そう言って俺はポケットから手を出し、孔雀院に突き出した。
「71位、ダンタリオン、ヒトの精神を操るオレの指環だよ」

「そんな…っ、今までの、あの逃亡も演技だったって言うの!?」
「言っただろう?次に戦う時には防具じゃない、[武器]を用意するって」
 大通りに出て俺は力のありそうな男たち、即ち、コイツ等を選んで指環で強制的に意思を奪い操り人形にした。
 曰く、あの腕を、孔雀院の腕を何があっても離したくない、足を離したくない。
 あとはその思いを待機状態にし、さっきとは違う男四人が入っても問題の無さそうな幅の袋小路へ誘い込み、追い詰められたフリをして油断を誘う。
 何も考えなしにここに来たわけじゃない。素性の分からない相手と戦うのだ。相手のことは分からなくてもその根城に関しては徹底的に調べさせた。
 そう、孔雀院には悪いが俺もここら辺の地理はしっかり頭に入れてきてあった。
 そして、状況に応じて使い分けられるよういくつかの仕掛けが用意してあった。それが
 大の男が四人、といっても指輪の力を持つ孔雀院が相手では簡単に返り討ちに会うのがオチだろう。
 だからこそ、ここまでの演技が必要だったのだ。
 その為、孔雀院の背後に距離を取った上で気配を殺し、迫らせた。

 影に関しては問題なかった。ただでさえ暗い袋小路では影の濃さなどほぼ目立たず、また孔雀院も俺に意識を集中していたため気付かれなかった。
 問題は影の距離だったがへたりこむことによって縮め―――孔雀院が勝利を確信したその瞬間、指環を後ろの壁に、男たちの影に叩きつけた。

 欲望、解放、と。

「さて、と。勝負はついたようだがどうする?」
「どうするって何を………」
「このまま指環を渡して俺のモノになるって言うんだったら無傷のまま解放してやるぜ?」
 さっきコイツが言った言葉をそのままに返す。
「だ、誰が…っ!」
「別にかまわないが………
 もしNOの場合、コイツ等4人がオレが[やめろ]というまでオマエを、犯し続ける」
「な―――!!」
 目を大きく見開く孔雀院。
 くくく、条件てなぁこうやって断れないようにして突きつけるモンなんだよ。

 あくまで避けられない選択肢で、あくまで自分から選ばせる。

「5秒やる。
 だが妙な事を考えて返答しても結末は変わらない」
「なっ!
 5秒って短すぎ―――っ!」

「5」
 いつだったかみなぎが俺にしたような無駄な時間、つまり反撃を思いつくような時間を与える必要なんてない。

「4」
「わ……分かったわよ」
 即答する華南。
 だが、

「3」
 秒読みは止まらなかった。
「な………分かったって言ったでしょう!?」
 だから分かっているといっただろう、妙なこと―――条件を受け入れたフリをして油断をさせて拘束が緩んだら反撃しよう、だなんて考えているのは[分かった]だなんて言わないんだ。

「2」
 男たちに華南がうつぶせになるよう宙吊りにさせ、拘束の力も少し強めにさせる。
「ひっ!」
 顔を引きつかせ、蒼白になる孔雀院―――華南。
 隆起させたのは筋肉だけではない。
 ズボン越しにでも分かるくらいに男たちの肉棒を怒張させた。
 うつ伏せで吊られている華南にはよく見えることだろう。

「1」
「あぁ…」
 華南が絶望するのが分かった。
 そして、それと共に新たな感情が湧いてくるのが分かった。

「ゼ……」
「わ、分かりました。
 ご主人様…」
 全身から力が抜かれ、本当に屈服したのが指輪の力を使わずとも分かるくらいに華南が変わった。
 弱々しい、まるで常に悲しみを背負ったかのような、顔。
 …それが本来の、指環を手に入れる前のオマエか。

「…解放しろ」
 そう男たちに命じて華南の拘束を解放する。

 ちなみに指輪は嵌められたままだ。
 だが、華南はその場に膝をつき、頭をたれ、左手の人差し指、中指、薬指それぞれに嵌められた指輪を一環一環、別れを惜しむかのように、だけど躊躇うことなく抜き取っていく。
 そしてそれらを俺に差し出した。
「確かに受け取った」
「はい、ご主人様」

 するとそこに声が生まれた。
「大将、大将」
「この声…オロバスか。どうかしたのか?」
「そのまま指環をまとめてハメな。なにがいいたいのかは嵌めれば分かる」
 そう言ってひづめに指環をくぐらせるジェスチャーでこちらに指示する。
「大丈夫。安全は俺っちが保証する」
「…分かった。これでいいの……」
 か、とはいえなかった。

 俺は意識を失っていた―――

「―――……ん、あぁ…」
 気が付くとまたあの空の下にいた。
 ただ、今までと異なる点が一つだけあった。
 目の前に独りだけしかいないハズの魔神たちが今度は4柱もいた。
 思わず慄く。だが、魔神たちの反応はこちらの予想を見事に裏切った。

「我が王を打ち破るとは貴殿、できますな」
 ライオン頭の爺さんがあご部分のたてがみをヒゲの様になで上げこちらに呟いてきた。
「我はプルソン、20位の王じゃ」

「へっ、心のどこかに恐怖をもってるヤツが戦いに生き残れるわけがねェだろ」
 これまた羽の生えたライオンが小ばかにしたような声をあげるが言葉尻に孔雀院の身を案じるような声色が含まれていた。
「いや、孔雀院…華南は強かったぜ。実際、正面から策を弄さずにやってきたんだ。
 恐怖を無理矢理押さえつけるだけの度胸はあるってことだろ」
「ふん、オレはヴァプラ、60位だ」

 そう言ってライオンは黙り、二頭の獅子に挟まれた大小の天使…と言っても正体は悪魔なのだろう、その二柱がめいめいに口を開いた。
「そうだね、だからこそ最後の最後でとびっきりの恐怖を味わえた。あぁ、美味しかったよ。
 ごちそうさま、そしてありがとう、お兄ちゃん、ボクはヴォラク」
「キサマはどれほどの恐怖を我らに与えてくれるのかな?指環使い。我はアスタロト、魔王アスタロト」
 姿だけは神々しい天使だが、出てきた言葉は真逆…指環に宿った魔王たち。彼らは何も見返りなしに協力するワケじゃない。無償で手伝うといっても必ず裏はある。
 この天使の姿をした悪魔たちが望むのは恐怖。契約者、そしてその敵の恐怖を食って愉悦にふけるのがコイツ等の目的だったってことか。

「………」
 なにを言っても通じない。だから何も言わない。
 コイツ等は結局、俺たちとは違うモノなのだ。

 だが、話はできる。だから俺はため息をつきながらも俺の意思を示すことにした。
「………ただ、華南に足りなかったのは覚悟だ」
 目的のためにだったらなんだって犠牲にできる覚悟。
 華南にはそれが決定的に足りなかった。
 俺だったら三度も相手に選択させなかったし、きっと犯され続けようと指環を手放さなかっただろう。
 だが、傷つけられるのを極端に恐れるアイツは自分を犠牲にすることができなかった。
 それだけ、ただそれだけだ。

 それを聞いて納得したかのようにプルソンが口を開く。
「そなたの覚悟はどこから?」
「さぁ、気が付いたら逃げられなくなっていた」
 いつの間にか自分の思うように動いていたら守るべき物が増えていた。厄介極まりない。

 それを聞いて憮然としてヴァプラが問いただす。
「キサマの強さはどこから?」
「さぁ、気が付いたら大概のことができていた」
 実の所、誰だって大概のコトはこなせる。あとはその成長度の差とそれを自覚できるかだけだ。

 それを聞いて好奇を満たすかのようにヴォラクが見つめてくる。
「あなたの決意はどこから?」
「さぁ、気が付いたらオレはオレでしかなかった」
 …10年前のあの時以来、俺は少なくとも自分の意志で、決意で行動すると決めた。

 それを聞いて俺を納得したかのようにアスタロトが宣誓した。
「我等、汝を理解せり。
 故に―――我等、汝を主と認めん」
 ………なるほど、一度支配された指環はその指環使いを倒すとそれ上位の指環使いに服従するってか。
「…あるじ、か。一度負ければ全てを失っちまう…なんとも儚いモンだな」
 そんな独白がセカイに響き、そして全てが霞んでいった―――

「ふぅっ…」
 契約が締結し、袋小路に戻ると俺は仰向けになって寝ていた。
 なんてことない、華南にひざ枕されていたのだ。
「あ、起きられましたか、御主人様」
「ん、あぁ…」
「気分はどうですか?」
 何に対してだ?
 あの世界から目覚めたことか、それとも、オマエを屈服させたことが、か? 
 そう聞こうとしたがやめた。
「わるくない」
 そういえばなんら問題ない、そう思った。

 手を上げて華南のあごを捉えこちらを向かせる。
「綺麗だな」
 哀愁漂う女の顔。
 正直、こんな大人の魅力をもった女が一人くらいは欲しかった。
 大人とあるがこういう場合、千歳は当然のごとく論外だ。
「なぁ、やっぱり抱きたいっつったらイヤか?」
「……優しくしてくださるのでしたら」
 そう言った瞬間、華南の思考が流れ込んできた。
 ……なるほど、な。
 今まで抱かれてきた男連中がどいつもこいつもクソ野郎だったか。
 いや、抱かれるなんて言い方は生ぬるい。
 文字どおり、犯されてきた、と言った方が正しい。
 そしてその中には、初めての相手…実の父親も、含まれて、いた。
 …だから、か。
 だから、そんな状況から救われたからこそ自分に固執し、犠牲にはできなかったのか。

 …ったく、めんどくさい。みなぎといい、コイツといい、こんなのを目の前にしたら勃つものも勃たなくなる。
「…安心しろ、イヤだっつーんなら手は出さない。まぁ、負けた手前、身の回りの世話はしてもらうけどな」
「身の回りの、世話ですか?」
 きょとん、と、全く予想していなかったような声をあげる。
 流れ込んでくる思考からはそこら辺の場末にでも売り飛ばされると思っていたらしい
 …ったく、そんなことしてなんになる。俺はオレの為に自分の力を使う。
「こちとら見ての通りの学生で先に俺のモノになった連中もそんな感じなんでな。そういった世話をしてくれるヤツがいてくれると助かる」
「……」
「今までは自分の世話だけで精一杯だったかもしれないけど、お前よりも小さい連中の世話をしてくれ」
 きっと、それがお前を助けるだろうから。
「……」
 華南の顔からは表情は読み取れない。
「どうだ?一日三食昼寝付きのマンション管理人、やってみる気はないか?」
 華南が弱弱しく、だけどはっきりと、くすりと微笑む。
 少し怪訝な顔をしてから納得した。あぁ、そうか。制限時間はないものの、これは―――
「選択肢なんてありません」
 そう言って今までの笑顔の中で一番の笑顔を返してみせた。

 華南がこちらに来る為の[手続き]、要はダンタリオンを使っての洗脳と記憶操作を周辺の人間に行い、新しい華南の部屋―――マンションの一室に来ていた。
 こちらが華南の私室で仕事部屋は1Fエントランス横に夏だというのにも関わらず、ミカンの乗ったコタツのある時代錯誤的かつ季節感が限定された部屋が用意されている。

「困ったこととか欲しい物があったら言ってくれ。近いうちに揃えさせる」
「ありがとうございます…あの、それでご主人様」
「ん?」
 そう言って隣の華南を見ると自分を抱くよう手を回し、俯いていた。
「もしよろしければ…抱く価値なんてない汚れた体ですけど…」
 …そういうこと、か。
 まるで自分を恥じるように口にした女に俺は少し怒ったように吐き捨てる。
「別に汚れてなんて、ない」
「だって私は…」
「ならオレは妹を抱いたがそれはどうなんだ?」
「………」
「そもそも、俺が抱いた他の連中の方がおかしかったんだ」
 どいつもこいつも処女だった事の方がよっぽどびっくりだ。
 そこらへんの雑誌じゃ初体験なんざとっとと済ませてるような事書いてあったってのにフタを開けたらそんなことはなかった。
「そんなつまんないことは気にするな。少なくとも俺は気にしない」
「ホント…ですか?」
 誰かのモノでも欲しくなったらそれがどんなモノでも手に入れる、そして俺のモノである限りは誰の手にも触れさせない。
「しつこい」
 あまりにも自信なさ気に答えるので行動で分からせることにした。

 ついでに指環の力を使う。
「[愛されてるかどうかは何発射精させたかでわかる。]  愛されたいなら、愛してるか伝えるなら頑張って俺をイかせるんだな」
「はっはいっ!」

 返事をするなり膝をついて、俺のズボンからまだ柔らかい状態のモノを取り出して口に含みだした。
 陰嚢を繊細な指で揉み上げながら空いた手で股間周りを撫でまわしていく。
 どんなに嫌な行為だったにしろ、その経験は雄を喜ばせるのには十分に役に立つようだ。
 柔らかだった肉棒は次第に華南の口の中で形を変え、硬く、長くなっていき、薄紅色の唇の小口からついにはみ出してしまった。

「んっ、ふぅん…っ、んっ!ご主人様のおおきぃ…んんっ!」

 そう言ってはみ出た部分を無理やり口に含むべく喉の奥まで飲み込んで硬くなった肉棒を絶妙な舌加減と感触で愛撫してくる。慣れてなければ咳き込んでしまうところだ。

「無理はしなくていい。オマエのやり易いようにすればいいんだぞ」

「んっ、んんんっ、はぃっ、んむぅ…っんっ、んんっ♪」

 無理をするな、と労わりの言葉を受け、肉茎を口から抜かずに嬉しそうに返事をすると更に無理をして口を前後に動かしだす。
 …あぁ、いい調子だ。人間だれしも自分の働きを理解し、労ってくる人間には逆に無理をしてでも応えようとする。自分を一人の人間として扱ってくれる相手、それが華南の望んだ相手だった。
 今の華南に強制はできない。あくまで華南本位…というのも不本意だがそうしないと今までコイツが関わってきた男達に俺が重なってしまう。
 ダンタリオンの力を使えば強制されることでしか感じられないマゾにもできるがそれではあまりにつまらないし、なにより万が一にでもダンタリオンの力が解けたときに快くない結果が待っているのは明確だ。
 だから、心を読んで華南の望む形で俺のモノにする。

 他人に認められ、愛されるという感情は何にも代えがたい媚薬となって華南を支配する。
 その為に今まで望んでもいないのに培ってきた技術で俺から精液を搾り取ろうと躍起になって丹念に舌で責め上げだす。

「んっ!んっ・・・んふぅんっ、んむ・・・あん、ひぁむ!・・・んむむぅっ!」

 ちゅっ、にゅるっ、ちゅぷっ、にゅるるっ、ちゅぱっ、ぬりゅうっ!

 舌の表面を使って輸精管をマッサージするかのように押し付けるように上下し、まるでその中を駆け上がるモノを吸い出すかのように吸い上げてくる。

「んっ!ずっ、んはぁっ、んんっ、ぷは…っ、んんん~っ!」

 口内の空気を全部吸いきるかのように吸引しながら少なくなった隙間の中を華南の舌だけが激しくが行き交う。
 おそらくこれと同じ舌技ができるのは華南と同じく[仕込まれた]みなぎくらいだろうがいかんせんみなぎは身体が未成熟すぎる。分かりやすく言うと個々のパーツが小さい。そのため、普段はオレの感じやすい部分を集中して激しく愛撫してくるのだが―――
 華南はそれとまるで対極、まるで肉奎まるごとをその暖かい媚口の中に包みこんで愛撫するかのような華南の舌はゆっくりと優しく、それでいてまんべんなく絶頂に導こうとしてくる。

「んくっ、んっ、ふっんんんっんん♪」

 は……っ、む、ちゅう、ちゅっ、ン、ぴちゃぴちゃっ

 甘えるような鼻声を出しながらもその舌は決して肉棒から離れることはなく、張り付いたまま縦横無尽に感度の高まった男性器を這いずり回る。
 丹念に何度も行き来する舌の感触と包まれて吸引される感触に熱い奔流がこみあげてくる。
 華南もそれを感じ取ったのか上目遣いでいつでもどうぞ、と合図し、射出口に舌をなぞり上げてざらついた表面を押し当てて鈴口を割って刺激してくる。
 それが起爆剤となって途中までせり上がっていたスペルマが狭い管の中を文字通り駆け上がり、そのまま突き抜ける!

「っ!、だすぞっ!」

 言うが早いか俺は華南の口から肉茎を無理やり抜こうとし、その華南の口内が真空状態にならないために口に納まっている管から代わりに空間を埋めるための何かを欲し―――その吸引がとどめになり、開いたままの華南の口と顔に白濁液を浴びせる。

 びゅ―――っ!びゅるっ!びゅくっびゅくんっ!びゅくんっ!びゅる、びゅっ!

「ふはっ、あ、あふっ、い……んん、ちゅぶ、は、熱ぅい、っ、んんっ!」

 華南はまるで心を開放してシャワーを浴びるかのように目を閉じてザーメンシャワーの恍惚に浸る。
「ん、んっん…っ!ん~~~っ♪」
 肌に精液が張りつく度に小さくイっているのか身体を小刻みにびくっびくっと震わせる。
 その間も今度は射精を促すかのように両手で優しく包み、敏感な割れ目の周りを親指でねぶりつつ、もう片方の手でしゅっしゅっと小気味よく竿をシゴき上げてくる。
 その度にびくびくっとペニスが震え、震える度にまだ上りきってないザーメンが発射させられた。

 ぴゅるっ、ぴゅぴゅっ!ぴゅっ・・・ぴゅくっ

「ふぁ…んっ、ん…っ」
 一通り出し終わると口に溜まった精液を味わうように口の中で咀嚼し、その間、顔に這いついた白濁を指先に集めていく。
 すると口の中のものを嚥下し、手に溜まったまだ熱のこもった精液を舐めて口の中に含み、それが終わると華南のだ液でテラテラと光る手が肉棒に伸び、射出口に舌を伸ばし、ちろちろとそこだけを愛でるかのように舐めだし、その度にびくっびくっと反応する敏感なままのそれから再びスペルマを誘い出すように刺激を与えてくる。

「あっ、んんんっ!、ふぁっ、んんっ!」

 やがて、口恋しくなったのか唇で亀頭を食みだし、舌がその先の幹に絡みついた粘液に伸びそうになったところで思わずストップをかけた。
「っ、ちょっと待ったっ、今度はその胸でしてくれ」
 危ない危ない。少し落ち着けないとマジで連続して搾り取られかねない。
「はい…」
 そう言うとチャイナドレスを胸の谷間に埋め、豊かすぎる双乳で包み込む。
「―――っ!」
 挟む、という表現ではなく、文字通り、[包み込む]感触にうめき声があがりそうになる。
 豊かな乳房は華南の手からもこぼれるほどに柔らかく吸い付き、俺を包み込んで離れなかい。
 その上、始めに出した俺の精子が潤滑油となり、予想のつかない角度にペニスが愛撫されていく。

 ぬりゅう…にちゅっ、ずっ、じゅぷっ、にゅるんっ!

 まるでヴァギナと口の間…もしかすると両方の特性を持ったような感覚の乳房の愛撫に先ほどまでピンポイントで刺激されていた肉棒が満遍なく愛され快楽を喚起し、出したばかりだというのにまた迸りがこみ上げてくる。
「―――っ」
 少し抵抗しようとしたがやめた。意味がない。そんなことよりも―――
「かなん…っ、もう少しそのままにしてくれっ」
 言うが早いか俺自身が胸に挿入するように腰をグラインドさせる!

「ん…っ、はあああぁぁぁぁぁぁぁぁ……どっどうですか…っ?わたしのオッパイどうですかぁっ!?」

 ぬりゅんっ!ぬちゅっ、ちゅぱんっ、ちゅぶっ、ぐにゅうぅっ!ぱちゅんっ!

 そのまま、と言ったのにも関わらず華南は自分の麗乳とそれを犯すペニスが少しでも快感を得られるよう、自分が愛されている証を得られるよう、押し付けて勃起した乳首ごとペニスに擦り付けてくる。

「あぁぁぁぁぁぁっ・・・お…おっぱいっ、おっぱいの中でこすれてぇっ!オチンチンしごいてきもちいぃですぅぅっ!」

 そう言いながら華南の胸は指の間からこぼれ形を変えながらも俺から離れずそのまま俺に絡み付いては愛撫してくる。
 そしてその奥にあるチャイナドレスの目の粗い生地があるものの、オレの出した白濁液が胸元に溜まってでもいたのだろう、既に白濁まみれになり、滑りよく、強い刺激を与えにきた。

 じゅぼっ、ちゅぶっ、ぐちゅぅっ、ぬちゅんっ!

 びくびくっと怒張が立て続けに震え、限界を知らせようとしてくる。
「―――くっ!」

「んっ・・・んふぅんっ!出ますかっ!?出ちゃいますかぁっ!?んん、ちゅぶ、はぁっ!
 だしてくださいぃっ!かなんのおっぱいマンコにいっぱい出してくださいぃッ!」

 びゅるるるっ!びゅるっ!びゅるびゅるびゅる!びゅくんっ!びゅる、びゅっ!ぴゅぴゅっ!

「ふはっ、あ、あふっ、い……んん、ちゅぶ、は、ご主人様にあいされて、あたたかい…っ」
 ふぅ、ふぅ、ふぅ荒く息をつきながらも華南は愛しそう涙を目にためながら胸に溜まったスペルマを子犬が水を飲むようにぺろぺろと少しずつ舐めてはこちらが息を整えるのを待っていた。
 ……底なしに満たされたいのは愛情か、それとも性欲か。
 また心を染め直そうかとも思ったがそれも負けたような気がするのにムカついてそのまま続けることにした。
 ま、本番はこれからだ。
「そろそろ入れるぞ。準備はどうだ?」
 問うまでもありません、と呟いて前垂れを口に含み、恥ずかしそうにしながらこちらに自分の股間がよく見えるようすらりと細く長い脚を開いて見せる。
 ドレスによって密閉されたまっていたむわっとする甘酸っぱい匂いがした後、姿を見せた華南の股間は愛液で紐パンの薄い生地のはワレメに食込む形で張り付いており、その奥にある華南の媚肉のかたちがそのまま分かるようになっていた。
 華南は手際よく紐を解き、前面の張り付いた生地を前に剥がすとそのまま閉じられたワレメの中を俺によく見えるよう両手で広げて見せた。
 拡げられ、空気に晒された膣中の媚肉は乾くことなく蜜液を滴らせ、こちらを誘うように壷惑的にヒクついていた。まるで魔乳と同じように突き入れたらそのまま出すものを出さない限り開放してもらえなさそうだ。
 オレは肉棒を華南の手によって拡げられたヴァギナに宛がうとそのまま挿入することはせず、上端部の頭を出した陰核を押しつぶすように陰唇にそってスライドさせる。

 ず…っ、ずりゅうっ、ぷちゅ、ちゅるぅ…っ

「んっ、ふぁっ、んんんっ、ひぁっ!ふぅぅ…はぁ、はぁっ、んん…っ、はっ、はいっ」

 時折、陰核が擦れる度にびくっと反応しながらもどこかもどかしそうに華南が声をあげる。
「欲しいか?欲しいんだったら何が欲しいのか言ってみろ」
 華南の乳房で唯一硬い乳首を摘みながら俺は言う。
「ふぁうっ!オ、オチ…ひぃあっ!オチンチンですっ!」
「誰のか、が抜けてるぞ」
「申し訳ありませんっ、ご主人様っ、ご主人様のオチンチンですっ。
 ご主人様の精子まみれのオチンチンを私のオマンコに入れてくださいぃっ!」
「―――」
 俺は何も言わず、これが返事だと言わんばかりに自分のペニスを華南の秘部に挿入する。

 ぬちゅぅ・・・にちゅっ・・・ぬちっ・・・ちゅぬぅっ・・・ぬりゅう・・・

「はぁ・・・はぁっ!はぁ・・・はあぁん・・・っ!ひぁ・・・ひあああぁぁっ!はいって…っ、キたぁっ!」

 華南の膣穴はなんの抵抗感もなく俺を迎え入れる。
 とは言え決して緩いわけじゃない。分け入っていく華南の牝穴は狭く、膣壁は密着して吸い付いてくる。
 そして―――最奥

「んはぁっ!ひぁっ、そこぉっ、しきゅっしきゅうぅ…っ、こんこんって…えぇ…っ!」

 しっかりと膣奥、子宮口でも感じてる。
 さて、それじゃ遠慮なく動―――
「……っ!?」
 今、瞬間的に華南の中に走ったもの、それは―――
「…オマエ、未だに抱かれるのが怖いのか」
 言い当てられ、驚いた表情でこちらを見る。
 ま、無理もないか。
「……ったく」
 俺はため息をつくと華南の背中を持ち上げて自分は寝転ぶ。要は騎乗位になって華南に命令する。
「自分の思うように動け」
「え…?」
「いいから、自分が気持ちよくなるように動いてみろ」
「はっ、はいっ!」
 少しイラついたような俺の声に慌てて腰を上げる。
 そして―――

「んんっ!」
 自分の粘膜に慣らすように降ろす。
 落とした方が俺が気持ちいいと分かっているのだろうが自分の粘膜ににオレの粘膜をなじませるようにゆっくりと動く。
 …やっぱりこういうのには慣れていないようだな。
 ただでさえ華南の膣中は上物だ。出し入れをしていればちゃんと吸い付いてくるし、蠕動もする。自分で動かなくても華南が動いていれば快感で気持ちも昂ぶってくる。
 要は自分本位で動いて自分本位で完結できる。
 今まで相手にしてきた連中はみんなそうだった。
 まぁ、レイプなんざ支配欲と嗜虐思考にそんなモンを混ぜたモノなんだろうがなんともまぁ、勿体無いことをしたモンだ。
 華南の真価はそんなものだけじゃ―――ない。

 ぐちゅっ、ちゅぼっ、ぐちゅぅっ

 最初はぎこちなく動いていたものの、だんだんと動きが大胆になっきて接合部から流れる粘液と音が次第に間隔をせばめ、ボリュームを上げていく。
「んっんっ、ふぅんっ、んぁっ、ふぅんっ!」
 漏れてくるため息も艶を帯び、視線も肌も熱くなり、牝のそれになってくる。

 口付けてきた華南のだ液を飲み込む、とお返しとばかりに唇を密着させ、こちらの口内に溜まった粘液を全て吸い尽くそうと舌を入れ、届く範囲でこちらの口内の液体を舐めとっては嚥下していく。
 豊かな柔乳は垂直に重力に引かれ、オレの胸元で形を自由に変えていたので揉みしだいて乳首を捏ねまわす。

「くふぅっ!んふぁっ、きゃふぅっ!」

 喘ぎ声を上げながら華南の秘部は更に感じるよう、俺を飲み込もうと子宮口に押し付け、こじ開けるよう愛撫してくる。
 ―――そう、別に開発されていたわけじゃない。華南の最も感じる場所、それは―――

「んっ!むぅううぅぅっ!んむ・・・っ!はぁっ、んっ・・・・・・!あぁっ!くふぅっ!」

 子宮、というワケだ、
 華南への興味、と言うよりも好奇が一気に増し、強引に割り入っていく感覚と征服欲が満たされていく。

 ごりゅ、ぐにゅうっ、ぐにゅっ、ぐりゅんっ

「あっ、あ、は……っ、く、う、うぁっ、あ!?はぁ・・・んはぁ・・・っ!ふぁっ、あああぁっ!」

 とうとう誰も到達したことのなかった華南の奥に俺の男根が侵入すると華南の中に信じられないほどの快感が走り、思わず天井を向いて喘いで寸断なくオレをきゅうきゅうと締め付けてくる。
「どうした、子宮にオレのが入っただけでイったようだがそれだけでいいのか?」
「うっ、くうぅっ…んっ…だ、だめェ…まだ…っ、まだですぅ…っ
 んっ!わたしの中も愛してっ、精液を出してっ、ご主人様のザーメンで満たしていただきたいんですぅ…っ」
 苦しそうにそう言うと腰を揺らして子宮口で文字通り亀頭を食いついたまま肉棒をきゅうきゅうと締め付けて愛撫してくる。

「はぁっ、んっんんんっ!」

 擦るだけでは物足りなくなったのか意を決したかのように少しずつ抜いていくと閉まりきる前に勢いよく子宮口にぶつけ、貪欲にペニスを深く飲み込もうとする。

 ぐちゅっ、ぐりゅうっ!

 苦痛に顔をゆがませながらその顔は幸せに満ち溢れていた。
「んぁっ!そんな…っ、こ、こんなっ、セックス初めてですぅっ!
 んはぁっ、んんんっ、なんっでぇっ?なんでこんなに気持ちイイのぉっ!?」
 抗いきれないほどにこみ上げてくる快感に口をほころばせつつ、華南が困惑の声をあげる。

 バラしてしまえば今までの華南は肉体は絶頂することはあっても決して幸福には感じていなかった。
 中には犯されていくことでそれにポジティブに順応し、被虐思考になる女もいるが華南は元々ネガティブだったのだろう、決して順応できなかった。
 そこに俺が現れ、自分の意志で抱かれ、自分の意志で挿入している。
 そればかりか射精させればされるほど愛されていると実感できる。
 そう、肉体にはリミッターがあるが、精神は自分が許す限りそのリミッターが無くなる。
 幸せだと感じれば感じるほど、気持ちイイと感じれば感じるほど肉体がそれを反映して更に快楽を供給する。
 よって―――すかさずそこに指環を発動させる。
 意識化に俺のモノになって尽くすことは何よりも幸せだ、と。
「それはオレがオマエが俺のモノになったからだよ」
「わたっ…しが、ごしゅじんさまの・・・っ!モノぉ?・・・っ!ふああああぁぁぁぁっっ!」
「あぁ、そうだ。オマエはオレのモノだ」
「わたし・・・っ、は、ご主人様のものぉ・・・んっはっ、愛してくれるご主人様のもの・・・っ、んっ!嬉しいィっ!
 ひぅっ、ふああああぁぁぁぁっ、しあわせすぎてまたイクっ、またいきますぅッ!
 んっ、ふあぁっ、ひいぅ…っ!ツラいのに気持ちイイくてっしあわせでっあいされたくてやめられないのぉッ!」

 びくんっ!びくびくっ、びくびくびくびくっ、びくんっ!

 呂律がまわらなくなりながらも身体を弓なりにそらしながら痙攣しつつも動きを止めず、嬉しそうに泣きながら俺に肉壺奉仕をしてくる。
「ご主人様っ、オマンコでオチンポあいされてひもちひぃですかっ!?あいひてくれますかぁっ!?」
「あぁ、気持ちいいぞ。そろそろだ。そろそろ―――出すぞ」
「ふぁっ、んんっ♪うれしいぃっ、うれしいれすぅっ!」
 外気に触れるはずの接合部は泡立って挿入の激しさを物語り、、イキながらの挿入は子宮内に入るほどに深い位置の不規則な収縮とまんべんない締め付けに俺の脊椎の中を電流が走り、出して間もないのに輸精管の中を熱液が駆け上ってくる!

「んんんっ!びくびくしてきらぁっ!いっぱいイってっいっぱいあいひてくらさいぃッ!」

「あぁっ!だすぞっ、どこに出して欲しいっ!?」

「中にっ、しきゅっ、子宮の中にっ、お願いしますぅっ!
 わたしの子宮の中にぃっ、いっぱいっ孕むくらいにたねつけしてくらさいぃっ!
 すきぃっ!せいえきっ!すぺるまっ!ざーめんっ!らしてぇっ!あいしてえぇぇっ!」

「―――っ!」

 びゅくっ!びゅーっ!びゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅくびゅくっ!
 とても今日三発目だとは思えない量の白濁液が華南の膣に注ぎ込まれる!

「はぁ、はぁ、はぁ…あぁ、膣が熱い…っ、んっ、愛されてる…っ、んんっ!」
 俺が自分のモノを抜くとごぷっと音がして注ぎ込んだ白濁液が逆流してきた。 
「あっ…もったいない…」
 そういって割れ目から溢れた精液を指先で丹念に拭い、その指を丹念に舐めあげていく。
「…マズくないのか?」
「だってご主人様の愛してくださった証ですから…」
 そう言って焦がれたように舐めあげる。
「そんなんこれからだってチャンスはある。
 それともなにか?これだけもらっといてまだ足りないのか?」
「どんな人でも愛されれば愛されるほどもうれしいって感じるハズです」
 少なくとも私はそうです、と絶対的にこちらを信用した目で華南は言った。
 自分の居場所と安寧を手に入れたからだろうか、さっきまでのネガティブさは無くなり、落ち着きを手に入れたように見える。
「……愛される、ね」
 愛玩動物でも可愛がられれば嬉しいと…感じるんだろうな。
 ま、そうやって自己完結する分には問題ない。必要以上にダンタリオンで操作する必要もないだろう。
 まぁ、俺は勃ったら抱くだけだ。
 それよりも―――
「一休みしたらオレの部屋にやって来い。みんなに紹介する」
「は―――はいっ」
 それだけ言うと俺はどう紹介したモンかと考えながら自分の後始末をし、そのまま部屋を出た。

< つづく >

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