第6章 おもちゃ
1
ゼミの開始時刻の20分前に、倫子はゼミ教室に行った。
すでに「晴菜のお友達」は勢揃いしていた。
晴菜と今井弘充が、間違えて早く教室に来てしまうという心配はない。二人には、下期に使うテキストを買いに行ってもらっている。
小田に犯されまくっている晴菜が、どんな気持ちで今井弘充と一緒にいるのか、想像するとワクワクする。
もっとも、晴菜が今井の前で口を滑らせることはないし、弘充がなにかを怪しむこともない。すべては倫子がメンテナンスしているから。
晴菜としては、弘充に本当のことを話せないことで、かえって後ろめたい悔恨を味わっているだろうけど。
とにかく、晴菜たちがいないうちに説明を済ませてしまおう。
倫子は伊東屋のロゴの入った包装を開いて、消しゴムを3個取り出した。
1つは皿に乗ったプリンの形。2つめはかき氷。これもお皿に乗っていて、かき氷の頂上には苺シロップがかかっている。3つめはホットドッグ。パンの間にレタスとウィンナーが挟んであって、片側だけウィンナーが長く突き出している。
サイズは3~5センチくらい。いずれもよくできたミニチュアだ。
消しゴムを手にとって眺めている友人たちに、倫子が説明した。
「えーと、プリンが左で、かき氷が右ね。プリンのキャラメルのところが乳首。かき氷は苺シロップがかかっているところが乳首。つまり、左のほうが大きいってわけね」
吉本が興味津々といった表情で聞く。
「そうなの?」
「え? なに?」
「実際に左のほうが大きいの?」
「吉本クンも自分の目で見たでしょう?」
えーとどうだったっけなー、と記憶を頼りに考え込む。
倫子がからかってやる。
「日本人の女性は、平均的に左のほうが大きいのよ」
「えっ、そうなの?」
「右利きの男が多いから、左側ばかり揉むせいで大きくなるんだって。あと自分で触るときも、右利きだったら左側ばかり触るし」
吉本が嬉しそうな顔をする。
「へえぇ、そうなんだぁ。トリビアだねえ。15へぇあげます」
「そんなのウソに決まってるじゃん」
「……」
授業開始時刻が近づき、ゼミの他の学生たちも集まってきた。
夏休み明けの最初のゼミなので、中には、会うのは夏合宿以来という学生もいる。学生たちは挨拶を交わし、夏休みの思い出を披露し、互いに笑う。帰省土産の菓子を、分け合って食べる。
晴菜が弘充と連れだってやって来た。それぞれ別々に話の輪に加わる。この二人はゼミの中で、べたべたじゃれ合うようなことはしない。
倫子は自分の隣の席を指し示して、晴菜を手招きする。
あれから何度も小田に犯されているというのに、晴菜の汚れのない美しさは変わりない。
だが、久しぶりに晴菜に会った男子学生が、晴菜に見とれているのは、ほぼ毎日会っている倫子にはわからないような変化があるからかもしれない。
今日のゼミは、各学生が提出した夏休みのレポートに対する質疑やディスカッションだ。
晴菜は、梓ほどではないが真面目にノートを取りながら、教授の言葉に耳を傾けている。
倫子が買ってきた消しゴムは、北村、角田、吉本の3人が持っている。
3人は、倫子や晴菜の真正面に座っている。ゼミ生と教授の質疑を聞いているふりをしながら、消しゴムをいじりはじめる。
消しゴムは晴菜に見えるように机の上で。
吉本と角田が左右のオッパイを分担している。プリンのふもとをくすぐり、かき氷の先端をつつく。
反応が出るか確かめるため、まだホットドッグには手をつけない。
倫子は晴菜の様子を窺う。
晴菜がピクリと身体を震わせる。チラチラと周りを見回してから、Tシャツの胸元をつまんで、パタパタと揺さぶる。しきりと胸を気にする。
男たちがにんまりと目を見交わす。プリンのキャラメルの部分と、かき氷の苺シロップの部分を指で押しこみ、擦る。
晴菜が、はっと顔を上げる。Tシャツの上から胸の膨らみを手で押さえる。
ちゃんとリンクしているようだ。
角田と吉本はいったん手を休める。
次は北村の番だ。ホットドッグの消しゴムのパンの裂け目に、人差し指をかけて動かす。
また晴菜が、ぎくりと背筋を伸ばす。向かい側に座っている男たちにはよく見えないだろうが、スカートの下で閉じた太ももをビクンと突っ張らせる。
北村が、尋ねるように倫子の顔を窺ってくるので、しょうがなく倫子はうなずいてやる。
あまり授業中にあからさまな反応はしたくないんだけどなぁ。先生に怒られる危険は男たちだけが負って欲しい。
倫子が頷いたのを見て、北村が小さくガッツポーズをする。ホットドッグを愛でるように指で撫でさする。
北村は表情に出すぎ。それに、指の動き生々しすぎ。あのイヤらしい笑い方で指元を見つめて、コネコネといじくるのは、見るからにアヤしい。センセイに見つかるよ。
北村の隣に梓が座っている。真面目な梓は、ものすごいスピードでノートを取っている。学業優先で、ゼミの授業中には、晴菜へのイタズラに参加するつもりはないらしい。だが、北村の様子があまりにあからさまで不自然なのが気になったようで、肘で小突いて注意する。
北村は、表情を引き締めてしかめ面になる。消しゴムを触る指は、いかにも授業を聞きながら無意識のうちにやっているような、自然な小さな動きに変わる。
倫子はほっと息をつく。
勉強と悪事にかけては、梓は頼りになる。
倫子の隣で、晴菜はすっかり落ち着きをなくしている。意味もなくテキストのページをめくったり、ペンを持ったり置いたりを繰り返してしている。
息が荒い。髪の毛を掻き上げる仕草がやけに艶かしい。
授業はほとんど聞いていないようだ。
ノートを取る右手を止める。
左手でスカートの上から股間を押さえる。
自分の手で押さえているはずなのに、割れ目を誰かに触られているように感じるのはなぜなのか、きっといぶかしんでいることだろう。
角田と吉本も、乳房消しゴムをいじっている。途中で吉本の分は崇行にバトンタッチ。
だめねえあなたたち。女の子の感じ始めのときに、乳首とアソコを一緒に愛撫するのは良くないって、教科書に書いてあるでしょ?
でも今日は大丈夫よ。倫子お姉さんが、晴菜の感度は大幅増量でチューンアップしてあげたから。
晴菜が、ペンを置く。自由になった右手で胸を押さえる。周りにバレないように気にしながら、そっと胸の膨らみの頂上部を手で押さえる。
誰かが乳首を転がしている感覚が消えない。
晴菜は、時折、ウッ、と息を詰まらせる。
だんだん我慢できなくなるはず。
だってあの男の子たち、3人がかりで休憩なしに攻め立ててるんだもん。敏感になってる晴菜にはたまらないはず。
北村が消しゴムをいじるのをやめた。
おや、と思っていると、北村が大嶋先生から質問を受けた。
晴菜をいじるのに夢中になっているのかと思っていたら、議論の流れは追いかけていて、そろそろ自分が当たりそうだと予想したらしい。
大嶋先生が言う。
「北村君は、金融機関の従業員アンケートは、去年よりばらつくって書いてるよね。ばらつくってどういう意味?」
北村の大雑把な分析が、教授に突っ込まれている。
大嶋ゼミでは、毎年、有名企業の何社かに協力を頼んで従業員たちからアンケートを集めている。下期の授業では、そのアンケートの分析を行うのだが、夏休みレポートは、アンケート結果の予想という課題になっていた。
晴菜は、女性器への愛撫を止められて、ほっと一息ついている。
残っている胸の刺激を、右手で押さえるように、細い肩を抱いている。
スカートの裾を押さえていた左手は、机の上に戻す。もどかしい感触を吹っ切るように、机の下で太ももを小さく揺さぶる。
北村は、大嶋先生の質問に答えながら、ホットドッグの消しゴムは、独占するように左手のひらの下に隠している。
相変わらずケチな男だなあ。
角田がそれを強引に奪い取る。その際に消しゴムのどこかが紙と擦れたらしく、急に晴菜は股間を押さえて、前かがみになって腰を引く。カタンと椅子が鳴る。
その程度の小さな物音では、誰も気にしていない。だが倫子は、これ見よがしに晴菜の顔を見てやる。
周りを気にしていた晴菜と目が会う。
晴菜は真っ赤になって目をそらす。
角田が、ホットドッグからはみ出しているウィンナーの端を指で押さえる。
あ、みんなに言うの忘れてた。
そこ、クリトリスだから。
それに、晴菜のウブなクリちゃんは、とても弱い。
晴菜は、こらえきれずに「ンッ」と声を出す。
何も知らない学生の何人かが、晴菜のほうを見る。
晴菜は真っ赤になって机の上に俯く。俯いていては消しゴムが見えないので、自動的に顔を上げて、視線で消しゴムを追う。
晴菜の喘ぎ声に反応して目を向けてきた学生たちは、頬を赤らめた晴菜の表情に驚く。潤んだような目が遠くを見つめて、清楚な美貌が、今日はなんだか艶かしい。
角田は、そこがクリトリスだと知らないので、ウィンナーの先端には執着しない。
北村とは違って角田には、さりげない様子を繕うだけの分別はある。
何食わぬ顔で割れ目を掻き分ける。おずおずとレタスを触る。
角田クン。大丈夫よ。
チョットくらい雑に触っても痛くないから。
もうたっぷり濡れてるだろうから。
晴菜のヤツ、今日は感じやすいインラン女なの。
うふふ。
晴菜は、太ももをもぞもぞさせて堪える。花柄のスカートの裾を左手でぎゅっと握り締めて、股間を押さえる。小さく腰を揺らす。
晴菜ぁ、太ももかなりきわどく露出してるよ。あ、ショーツ見えた!
いいの? 清純派のイメージ崩れちゃうよ?
はは、今はそんなこと気にしてられないか。
教授が晴菜の名を呼ぶ。
自分の身体に夢中の晴菜には聞こえない。
「小野寺さん?」
先生がもう一度晴菜の名を呼ぶ。
倫子が晴菜を小突く。
「あ、はい?」
教授が白髪交じりの眉をひそめる。品のいい大嶋教授は、学生をしかりつけるようなことはしない。ぼんやりしていたらしい晴菜のために、さっき言った言葉を繰り返す。
夏休み中研究室に質問に来た点について、みんなに説明してあげて、と。
晴菜は慌てて手元のノートをめくる。ノートに沿って、アンケート先各社の新卒採用人数を説明する。景気が回復して、新卒採用を増やした会社が多いのだが、抑制したままの会社もある。
角田たちは、いったん消しゴムへの愛撫を取りやめる。そして、意地の悪いことに、晴菜が発言している最中の間の悪いタイミングを狙って、消しゴムをつつく。
晴菜はそのつど言葉をとぎらせ、やたらと艶かしい吐息を吐きながら、ノートを読み上げる。
「IT関連企業は従来から新規採用……ンフン……中途採用も積極的に……ンン」
真っ赤に火照った美貌から、ムラッと色気が匂いたつ。学生たちはノートをとる手を止め、不思議そうに見守る。
教授が心配そうに聞く。
「小野寺さん? 熱でもあるの? 顔真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」
「えッ? あ、はい……」
恥ずかしさをこらえるように顔を俯かせる。
「その、ちょっと熱っぽいかも……アハンッ……いえ、大丈夫ですから」
慌てていたせいか、押さえきれずに喘ぎ声が漏れてしまう
教授はますます不審そうな顔をする。
「夏風邪? 授業も始まったんだし無理しちゃだめですよ」
「はい。ごめんなさい」
晴菜は心底申し訳なさそうにする。
そりゃそうよね。授業中に感じてるなんて、先生に申し訳ないよね。やさしい大嶋先生だって、そんなインラン女がゼミ生の中にいるとわかったら、がっかりだよきっと。
教授は、明らかに異常な様子の晴菜を気遣ってか、晴菜には追加質問せずに開放してやる。
倫子が付箋にメッセージを書いて晴菜に見せる。
《ほんとに大丈夫?》
晴菜は潤んだ目を倫子に向けて、どうにか頷く。ピクピクと身体を震わせている。けっこうヤバそう。
見ると角田、吉本、崇行の3人が並んで、一心に消しゴムを擦っている。
授業中としては異様な光景。
あっちゃー。なにあいつら。
大嶋先生は角田たちから背を向けているので、気づいていないのが幸いだ。
晴菜はかなり息が苦しそう。歯を食いしばって、声を押し殺している。
晴菜の左手は、スカートの下にもぐりこんで、なんとか自分を抑えつけようとしている。すっかりスカートがめくりあがり、晴菜がショーツの上からアソコを押さえつけているのが丸見えだ。
あらあら、あの晴菜ちゃんが授業中にスカートめくってパンツいじりですか?
男たちは、遠慮なく指を動かす。
晴菜は椅子の上で小さく腰をくねらせる。ため息をつき、時折背中をピクリとさせて、天井を見上げる。
こりゃ晴菜、もうすぐイキそうね。
机の下で晴菜の太ももが跳ねる。
倫子は、さきほどの付箋の下に書き足して、晴菜に聞く。
《もしかしてトイレ?》
晴菜がぼんやりと付箋を見る。目の焦点が合っていない。付箋に書いた言葉の意味を理解するのに時間がかかる。
クフンと息が漏れる。
付箋の下に何か答えを書き足そうと、ペンに手を伸ばすが、指先が震えていて、ペンを取ることができない。
あきらめて晴菜は、小さく首を横に振る。
余計なこと聞かないで、と懇願する表情。
消しゴムを奪われたままだった北村が手を伸ばして、吉本の手に渡っていたホットドッグを奪い返すのが見えた。自分の手でイカせてやる、といイビツで誤まった欲望。
不満そうな吉本に、崇行が気を使って、乳房消しゴムを渡してやる。これも、イビツな譲り合い。
その間、刺激にインターバルができて、晴菜は一瞬気を抜く。
結果的に晴菜は、その油断をつかれてしまう。北村と吉本がいっせいに愛撫を加える。
「アハン」と押さえ切れなくなった声をはっきりと漏らしてしまう。
さきほどより多い人数の学生が、顔を上げて晴菜を見る。晴菜の凄艶な表情にギョッとなる。
晴菜、いま授業中よ。
ダメよぉ静かにしなきゃ。
あんまりアンアンうるさいから、みんな見てるよ。
ねえねえ、まさか、みんなが見ている前で、ヘンなことしてないよね? ゼミのアイドルの晴菜ちゃんが?
晴菜はギュッと両肩を抱いて、快感に耐える。身体が震えないように押さえつける。みんなから見えない机の下では、足がガクガク震えている。
また、アンと声を漏らし、学生たちの目を集める。大嶋先生も小さく振り返る。
小さな顔を左右に揺する。長い髪が汗ばんだ頬に張りつく。口を半開きにして、熱い息を吐き出す。夢見るように潤んだ瞳が、なにかを求めるように遠くを見ている。
普段は清楚な晴菜が、今は全身から色気を発散して、他の学生たちをゾクリと驚かせる。
ふふ。
そろそろ限界ね。
イッちゃえ。
倫子が促すように正面を見る。
北村が嬉しそうに顔をほころばせて、切羽詰った晴菜の色気を見つめている。
北村は、ホットドッグの消しゴムを裏返す。ホットドッグの具材をノートにこすりつけて、いきなりゴシゴシと字を消し始めた。紙に擦れた具材が、消しゴムカスに変わる。
倫子は大きな音をたてて舌打ちする。
バカ。バカ北村。死ね。
女の子の身体をなんだと思ってるのよ。
そんなことしたら壊れちゃうわよ。
一度あんたのチンコをやすりでこすって、削りカスが出るまでやってごらんなさい。そうすればわかるわよ。
慌てて晴菜の目の前に手を置いて、視界をさえぎる。
さっきまで真っ赤になっていた晴菜の表情が真っ青になっている。ガクガクと震えているのは、これは快感のためではない。
えーと、どうしよう?
晴菜の視界をさえぎるためにかざした手を、熱を測るように晴菜の額の前に動かす。視野を塞ぎ続けるよう注意する。
晴菜の額は、熱っぽく汗ばんでいる。
「先生! 小野寺さん、ものすごい熱です。ちょっと医務室に連れて行ってきます!」
晴菜には自動的に消しゴムを視野に入れるよう仕込んである。こんなヤバい状態になっているのに晴菜は、倫子の手を避けて消しゴムを見ようとする。
それ以上余計なものを見せるわけにはいかない。倫子は晴菜を背中向きにさせる。
晴菜の脇の下に手を差し入れて抱きかかえる。晴菜がビクンと身体を震わせる。脇の下も汗ばんでいる。
本当に病人みたい。
倫子が振り返って見ると、消しゴムをいじっていた男たちが、呆然と手を止めている。いったい何があったんだという顔。
その中で北村だけは、倫子をとがめるような表情なのが、憎たらしい。まったく罪悪感を感じていないらしい。死ね。
倫子は無理やり晴菜を立たせて、ドアへ向かう。
驚いて言葉を途切らせていた大嶋教授が、思い出したように口を開く。倫子の背中に言う。
「あ、そうですね。ずっと気分悪そうでしたもんね。すいません、私がもっと注意すべきでしたね。下川さん、気づいてくれてありがとうございます。医務室まで、小野寺さんをお願いしていいですか?」
「はい」
「誰か男の人もついていったほうがいいですか?」
教授が気を使ってくれて、今井弘充のほうを見ながら言う。弘充はすでに腰を浮かせている。
「いえ、いいです。私だけのほうが」
ついてこられたら困るの。
倫子の辞退を違う意味に理解したのだろうが、教授は納得してくれる。
「あ、そうですね。それでは、下川さんお願いします」
急いで晴菜を教室の外に連れ出す。
出る間際に倫子は、振り返って北村を睨みつける。
せっかく教室で晴菜がイッてしまう恥ずかしい瞬間が見れたのに。ホントに、あともう少しだったのよ。
あんたがぶち壊しにしたのよ。
それどころか、下手したら、晴菜に立ち直れないようなショックが出ちゃうところだったのよ? アソコがバラバラになっちゃうってのを経験しかけたのよ?
わかってんの?
その北村の横で、梓がニタニタ笑っている。真面目そうにノートを取っていたときとは打って変わって、生き生きと嬉しそうだ。
それを見て、倫子は脱力する。
まったくあんたも……。
女なら北村のやってたことの残酷さが想像つくはずでしょう? なんでそんな楽しそうなのよ?
大きな音をたててドアを閉じる。
授業中なので、さいわい廊下に人はいない。
教室から出た途端、晴菜は膝から崩れ落ちる。
「ハルハル、大丈夫? しっかりして」
倫子は、気遣うように声をかける。今の事態の張本人のくせに、親友らしい仮面ははずさない。
脇の下に手を入れて、ぐっと力を込めて、晴菜を引っ張り上げる。
「アフン。触らないで。お願い」
晴菜は、艶かしく身体をくねらせる。膝を折ったまま太ももをこすり合わせるせいで、スカートがずり上がる。下着が見えかけているのを気にもとめない。
めくれかけたスカートの上から、しっかりと股間を押さえている。細い指がスカートの花柄に食い込んでいる。
倫子は、もう一度晴菜を抱き起こそうとする。
晴菜が熱い息を吐く。
「ンフンッ……ミッちゃん、しばらくそっと……ンンッ」
潤んだ瞳を倫子に向けて嘆願する。
声を我慢する必要がなくなったのと、相手が倫子だというせいで、晴菜は安心しきっている。喘ぎ声を隠そうとしない。
倫子は、ふといぶかしむ。
私が触っただけでこんなに感じてるってことは……?
うわぁ! なんだ、この女、授業中にイッちゃってたんだ! だからこんなに身体が敏感になってるだ!
ははは。清純アイドル小野寺晴菜が、ゼミの最中にイッちゃったんだ!
全然気づかなかった。
よく我慢したなこのオンナ。よく隠し通せたなこのインラン女。
いつだろう? いつイッたんだろう?
それにしてもいつの間にこんな感じやすい女になったんだ? ついこの前は、ビデオを見ながらオナニーしても濡れない女だったのに。
これも全部小田のおかげか?
倫子は面白がって、身体を抱きかかえるふりをして、オッパイに触ってやった。
「イヤン」
腰をくねくねさせて悶える。
うわ、ナマメカしい。
放っておいたらここでよがり始めてしまうかもしれない。
倫子は、アンアンと喘ぎ続ける晴菜をひきずって、二部屋離れた空き教室に連れ込んで鍵を閉めた。
ここならいくら鳴いても大丈夫よ。
二人きりで部屋の鍵閉めて閉じこもるなんて、ああ、なんか、こっそり大学でセックスやってるみたい。
倫子は、晴菜を気遣うフリをしながら、晴菜の身体をいじった。容態を尋ねるフリをして、晴菜に快感を説明させた。
晴菜のオルガスムスが引いてしまうまで、親友と二人きりの時間を楽しく過ごした。
2
大教室の中を、お経のような講義の声が流れている。
倫子は、授業が始まって30分もたってから、大教室に潜り込む。
わざわざ北村の隣の席に座った。机に肘をついてペットボトルから水を飲みながら、授業中ずっと、隣の席の北村を眺め続けた。
倫子の視線に、北村は居心地悪そうにする。倫子のほうをチラチラと見る。そのつど倫子はにっこりと笑って、ピースサインをしたり投げキスをしてやったりした。不気味なプレッシャーをたっぷりと与えてやった。
講義が終わるなり、北村が愚痴る。
「なんだよ、気持ち悪い。気が散るなあ」
「え? なんで? 北村クンのこと、カッコいなぁと思って見とれてたのに」
「んなわけなだろ」
北村はいったん黙る。
倫子はなにげないふりをして、北村が言い出すのを待つ。言い出さないのなら、それはそれでいい。
北村の、運命の分かれ道。
北村はおずおずと聞いた。
「昨日みんなで飲みに行ったの?」
「うん」
晴菜と彼女の友人たちの、「心温まる」(身体は熱くなる)飲み会のことだ。
「おれも行きたかったなぁ」
「あ、ごめん、北村クン声かけるの忘れてた。今度は声かけるね」
倫子は白々しく答える。北村は黙り込む。
2回続けて北村には声をかけていない。もちろんわざとだ。
北村は何か言いたそうにして、口ごもる。改めて口を開く。
「ゼミのときの、消しゴムの件は、悪かった。今度からは、やり過ぎないように控えるから」
倫子は表情を変えずに答える。
「もうその話はいいって。気にしてないから。だいたい吉本クンや角田クンだって、同じように消しゴムを紙に擦りつけてたんだから、北村クンだけやり過ぎたわけじゃないよ」
倫子の、心のこもらないほがらかな笑顔が、北村へのプレッシャーになるだろう。もし北村に人並みの感受性があれば。
北村が黙り込む。疑うように倫子の顔を見る。
倫子は、明るい顔で聞いた。
「それだけ?」
「それだけって?」
北村が目をそらす。
「じゃあ、いいわ」
教室の中に、講義後の学生たちのざわめきが響く。
倫子は、机の脇に立ったまま、何をするでもなく、他の学生たちを見る。
数秒、北村のために猶予してやる。
北村は何も言わない。
倫子はため息をついた。それから、上目遣いに北村を見る。機嫌を取るように言う。
「昨日の飲み会呼ばなかったこと、気にしてる?」
「いや、別に」
「気悪くしたならゴメンね。ホント、うっかりなの」
倫子が申しわけなさそうにして、右手で北村を拝む仕草をする。
北村は、何も疑うことなく、少し嬉しそうな顔をする。この男は、自分が人より優位に立てたという感覚に敏感だ。
「いいよ。今度のに呼んでもらえれば」
北村が鷹揚に頷く。大目に見てやると言わんばかりの表情。
倫子は、北村におもねるように提案する。
「ね、そのかわりっちゃなんだけど、北村クンに手伝ってもらいたいことあるの。いい?」
「なに?」
「ハルハルに、芸仕込んでるんだけど、なかなか身につかなくて。なんかすっごい嫌がるの。ちょっと1人だとつらいから、北村クンにも手伝ってもらいたいんだけど、いい?」
北村は、ご馳走の匂いを嗅いだ犬のような表情になる。にんまりしながら、「芸って?」と聞く。
「『お手』とか『おすわり』とか」
「え?」
「『お手』よ、『お手』。犬に仕込むやつ。まあ、あれみたいなもん」
「へ?」
「ま、見ればわかるから」
倫子は北村を別の空き教室に連れて行く。
教室では山越崇行と晴菜がいて、おしゃべりをしていた。
倫子は教室に入るとドアに鍵をかけた。この小教室は、大嶋ゼミの名前で予約してある。最近は大嶋ゼミの名前でやたらと小教室の予約が入っているはずだ。
倫子が崇行に言う。
「じゃあ始めて」
崇行が晴菜に向かって言った。
「お手」
3
北村はがっかりしていた。
お手、だって?
なんだ、本当に犬の芸を仕込んでいたのか?
もっといやらしいことだと思ってたのに。
しかも晴菜はまったく反応しないし。
倫子も崇行も、晴菜が反応しないことは気に留めていないようだ。
ミッちゃんが言ってた、芸の仕込がうまく行かない、って言うのは、こういう意味か。
倫子が北村に言った。
「もっとハルハルの近くから見たほうがいいよ」
近くから見るほどのものか?
突然、崇行がズボンとトランクスを脱いで、下半身裸になった。
陰毛のなかからぶら下がったペニスが見える。
うわっ、なんだ、急に?
何でお前が脱ぐんだよ。
見たくねえぞこんなの。おれが見たいのは、晴菜ちゃんのパンツの中身のほうだよ。
北村は、うんざりした表情で倫子のほうを見る。倫子が手ぶりで、視線を戻すよう促す。しぶしぶ崇行たちの方を見る。
するとそこでは、急に北村好みの場面に展開していた。
晴菜が崇行の前に屈み込んで、細い指を崇行のペニスに絡めていた。晴菜に触れられるだけで、すぐに崇行のモノは元気になる。
誰かが下ネタを話すだけで、顔を真っ赤にする晴菜なのに、崇行の一物を見ても、恥ずかしがる様子はない。それどころか、モノが立ち上がるのを見るなり、晴菜は顔を近づけて、間近から嬉しそうに見つめる。
「うふふ。元気な山越くん」
マジ? 晴菜ちゃんがこんなこと言ってる!
晴菜は、恋人に挨拶するように崇行の先端にキスをする。「チュッ」という音が鳴る。
崇行の顔を上目遣いに見る。崇行に笑いかけてから、崇行のペニスを口に含んだ!
えーっ?! いつの間にこんなことに! あの晴菜ちゃんがフェラチオだなんて。
倫子のやつ、晴菜ちゃんにこんなことまでやらせて……
しかし、なんで山越だけこういうオイシいことをやってもらえるんだ?
倫子が北村の横に来て、小さな声で説明を始めた。
北村は、晴菜が巧みに崇行のペニスを昂ぶらせるのを見つめながら、倫子の言葉を聞いた。
ハルハルには、大学にいる間、一声かければフェラチオするように仕込みたい。
だって、北村クンたちも、そのほうがいいでしょう? ゼミの中に1個トイレがあると便利だもんね。
ハルハルに合図の言葉をかけて、そのあとチンコ見せたら自動的にしゃぶり始めるシステム。特許出願中。ふふふ。
ただ、ハルハルは、フェラチオ経験がなかったみたいなの。拒否反応が強い。今日はハルハルの機嫌がいいらしく、順調だけど、拒んだり泣き出したりすることも多い。なので、ハルハルが慣れて、芸を覚え込むまで、崇行に訓練させている。
でも、崇行1人だけだと、崇行も身がもたない。
だから、北村にも手伝って欲しい。
……大歓迎だった。
あの晴菜ちゃんにフェラさせられるなんて。
しかも、フェラ慣れしていない小野寺晴菜を、思い通りに仕込める。
北村は、崇行が受けている行為を、自分になぞらえて想像する。
晴菜ちゃんの小さな唇で締め付けてもらいながら、あの綺麗な顔に、チンポを打ちつけたら気持ちいいだろうな……。嫌がろうがなにしようがかまわず顔にぶっかけて……
想像するだけで勃ってしまう。
ちくしょう、山越のヤツ、気持ちよさそうな顔しやがって。さっさとどけよ。おれにも回せよ。
ニタニタしながら妄想に浸る北村に、倫子が注意事項を言う。
ハルハルのほうがまだ安定していないから、あまり無理なことはしないでね。芸を仕込むときは、必ず私が立ち会う。ハルハルがパニクったり、いぶかしんで催眠術のことに気づく気配を見せたら、ちゃんと対応しないといけないから。
ハルハルを眠らせて落ち着かせることができるのは、私だけだもんね。
そのことは、北村クンも知ってるでしょう? 北村クンは、自分も催眠術かけられないかハルハルに試してみたけど、ダメだったんでしょう?
さりげなく言われたので聞き流しそうになった。
北村は、はっとして、倫子の方を見る。
ばれてたのか。
一瞬だけ後ろめたく感じる。
だが、すぐに開き直る。
何が悪い? 別に気にすることはないじゃないか。ミッちゃんがやっていることと同じことなんだし。
「ああ、冗談のつもりで、ちょっと試してみたけど、やっぱりダメだったよ」
できるだけ軽い調子で、倫子に言う。
ハハハと軽く笑う。
北村は、倫子や他の連中のいないところで、自分だけで晴菜を独占してみたくなったのだ。晴菜を思い通りにして、二人で恋人のように楽しんだり、他の連中に見せびらかしたりするのを想像すると、愉快だった。
こっそり晴菜をつかまえて、北村も催眠術をかけることができないか試してみた。倫子がやるみたいに、晴菜の肩に手を置いて後ろから「晴菜さん」と呼びかけてみた。
晴菜がいぶかしそうにするが、催眠術にかかってしまえばこっちのものなので、無視する。なにかキーワードがあるかもしれないと思って色々口に出してみたがどれもダメだった。
結局成功しなかったので、晴菜への言いわけに苦労した。
そのあと、催眠術をかけているときの倫子の声を内緒で録音して、もう一度晴菜をつかまえて聞かせてみた。
録音した倫子の声でも、効き目がなかった。何が悪いのかまったくわからない。失敗するとは考えていなかったので、倫子がひどいことを言っている言葉をそのまま晴菜に聞かせてしまった。
晴菜は、「晴菜さん、さっさと脱いで」などと言っている倫子の言葉を聞かされて、すっかり驚いてしまった。
北村は、あまりうまくごまかしきれなかった。
まあしかたない。何とかなるだろう。困るのはミッちゃんだから、ミッちゃんが何とかすればいい。
倫子には黙っておいた。
その後も、晴菜は倫子の言うことは聞いているみたいだから、うまく処理したに違いない。北村が心配する必要はなかったということだ。
現に今も、倫子の口調は、特に北村を責めるという風でもない。かすかに笑いながら北村を見ている。
北村は、何か言ったほうがいいと思って、倫子の注意事項を復唱した。
「うん。わかった。ミッちゃんのいないところでは、晴菜ちゃんにヘンなことしないから」
「そう。さすが北村クンは飲み込み早くて頼りになるね。吉本クンあたりとは違うよ。やっぱり、北村クンに頼んでよかった。
くれぐれもよろしくね」
頼りにされて悪い気はしない。
そうか。なにもおれが自分で晴菜ちゃんに催眠術をかけようとする必要はなかったんだ。ミッちゃんにやらせればいいんだ。
ここでミッちゃんに恩を売っておけば、うまくミッちゃんを使って自分だけオイシいことができるかもしれない。
山越だって、ミッちゃんに取り入って自分だけ晴菜ちゃんにしゃぶらせてたみたいだし。
山越のヤツ、いつも要領いいんだよな。
そうひとりごちて視線を戻すと、晴菜と崇行のほうはすでに終わっていた。
晴菜は立ち上がって、鏡を見ながら口元を指先で拭ったりしている。
崇行はズボンを穿き終わって、満足そうに晴菜の横顔を眺めている。
なんだ、一番いいところ見逃したのか。ミッちゃんがヘンなこと言ってじゃましたせいで。
いや、でも、他の男が晴菜ちゃんに気持ちよくしてもらっているところなんか見たくない。
「次、北村クンの番よ」
北村は顔をほころばせる。
「え? いいの?」
「イヤだったらいいのよ。吉本クンにでも頼むから」
北村はあわてて言った。
「イヤだなんて。そんなわけないよ。ミッちゃんにはお世話になっているし、協力しないとね」
北村が、的外れに恩着せがましいことを言うのを聞いて、倫子は鼻で笑う。
崇行は機嫌よさそうに、北村に声をかけてくる。
「意外とテクニシャンなんだよ。マジ我慢するのが大変。おれも最初は、すぐ出しちゃったよ」
これまで晴菜の口を独占していた崇行が、北村に向かって先輩ヅラするのが癪だ。
「ご忠告どうも。おれは山越とは違うから大丈夫だよ。ギリギリまで我慢してやるから、晴菜ちゃんにはせいぜいがんばってもらわないとね」
北村が得意がるのを、崇行は笑顔で聞き流す。
晴菜が胡散臭そうな顔で聞く。
「なに、私ががんばるの? なんか、カンジ悪いこと言ってる?」
北村の言葉にこもる下品な響きを察したようだ。
倫子が咳払いした。
「北村クン。タカユキも。ヘンなこと言わないよう注意してね。今はまだ……なんだから」
ああ、もう、小姑みたいに……。ちょっとくらい大丈夫だって。どうぜ、いざとなれば、ミッちゃん催眠術で解決できるんだし。
さてと。
北村がニヤニヤ笑いながら晴菜を見つめると、晴菜は気味悪そうに北村を見返してくる。
「晴菜ちゃん、よろしく」
晴菜が吹き出す。
「どうしたの? なんか、他人行儀な挨拶して……」
あれ? どうするんだっけ?
倫子のほうを見ると、北村に「お手」の仕草をして見せた。
北村が晴菜に言った。
「お手」
倫子が、北村に向けて、ズボンを下ろす仕草。
さすがに気後れする。
晴菜が無邪気に北村の顔を見つめている。黒目がちの生き生きとした瞳で、さっきまでフェラチオをしていたなんてウソのよう。
急に不安になる。
これまで何度も、清楚な晴菜が一瞬で豹変して、恥ずかしいことを始める姿を目にしてきた。それでも、晴菜のこんな澄んだ美しさを間近にすると、とても信じられないような気持ちになる。
倫子から再度、手ぶりで促されて、北村はジーンズのベルトを外し、トランクスと一緒に下ろした。
晴菜の黒目が揺らいで、視線が落ちる。北村の顔を一瞬見て、かわいらしく笑う。その笑顔に、北村はどきりとする。
フリチンを見て、いやがるどころか、笑っている。
北村のかすかな不安は一掃された。
ホントに晴菜ちゃんがしゃぶってくれるんだ!
この綺麗な顔が! このかわいい唇が!
そう思っただけで北村のペニスは起き上がり始めた。
崇行にやったのと同じように、晴菜は腰をかがめると、まず先端に音をたててキスをする。そして、上目遣いで北村を見上げて、男心をくすぐる。
晴菜は、絶対に北村の口とはキスなんかしてくれないだろう。
でも、チンポにはキスするんだね? 晴菜ちゃん、お高くとまってるくせに、チンポが相手だとそんなにお口がユルいんだ。
晴菜は、塗りなおしたばかりで艶々している唇を、北村の亀頭に被せて、舌で唾液を塗りたくる。
晴菜の唇にくるまれた瞬間、北村のペニスが、ピクリと反応する。
ホントに始めちゃった……。うわ、小さな唇を一生懸命開いてくれて……。
感動のあまり、身体が震える。
晴菜は、ピチャピチャと音をたてて、舌を擦りつけてくる。そのいやらしい音が、清楚な外観とギャップがあっていい。
いったん口からペニスを吐き出して、横から竿にも唾液を伸ばす。その間、指で先端部を刺激する。途中で晴菜は、ブラウスのボタンを3つはずして、襟を大きく広げる。ブラジャーに包まれた胸の谷間を北村に見えるようにして、奉仕を続ける。
晴菜が、咥え直して、唇でしごく。指は、根元から、袋のほうへと軽く揉みほぐす。
目にかかる前髪をかき上げながら、ときおりチラチラと北村の顔を見上げる。北村が顔をにやけさせると、晴菜も笑いかける。
「北村くん、どう?」
「うん。晴菜ちゃんにしゃぶってもらってるってだけで、最高」
「ホント? うれしい。でも、まだまだこれからだからね」
普段なら決して口にするはずのない、晴菜の挑発的な言葉に、北村は奮い立つ。
晴菜は、唇でしごくのをいったん止めて、チューチューと吸引する。深く咥え込んでピストン運動。
「ンフン」と声を上げながら、またペニスを口から吐き出して、横から舐める。指でサオをくすぐったかと思うと、裏スジをツンツンとつつく。
北村は、膝から力が抜けそうになる。
「北村くん、感じてくれた?」
「あ。そこ、ちょっとキツい」
「キツい? そんな言い方するんだ。じゃ、もうやめる?」
そう言って、指の動きを止める。
悪戯っぽく笑いかけながら、人差し指の爪の先で、ペニスの付け根に沿ってぐるりと円を描く。
晴菜が、こんなふうに、性悪女みたいに焦らしてくるなんて。
「いや、待ってよ。ここでやめられたら、蛇の生殺しだよ。言い直すよ。『キツイ』じゃなくて、『気持ちいい』だよ」
「ふふ。じゃあ、晴菜が、もっと気持ちよくしてあげる」
北村のペニスが、再び晴菜の可憐な唇に沈み込む。指と舌が、北村をいとおしむ。晴菜は、恥ずかしがることも、遠慮することもない。
晴菜が、強く擦り始める。北村を喜ばせるように、「アア、ンフン」と声を上げながら。
うわっ。うそッ。
北村は、「おれは山越とは違う」と虚勢を張ったものの、こんなに色々攻め立てられると、とてもたまらない。そもそも、自分の股間に、天使の美貌が吸い付いているというだけで、男には大きなハンデだ。
晴菜は、そんな北村の心中を見越しているかのようだ。
「北村くん? 我慢しなくていいのよ。晴菜に飲ませて」
これでフェラチオ覚えたばかり? 信じられない。こんなに可愛い顔してて、こんなにいやらしいなんて……
「いや、待って。まだ……」
もったいない。せっかくの晴菜の口だ。
北村がこらえようとする。
晴菜は、頭を前後に動かして搾り取るようにこする。北村にとって早すぎようがなんだろうが、容赦するつもりはないようだ。
またいったん口を離して、指で強く擦る。
「出して」
そうささやく。
咥え込みながら、微笑むように「ンフン」と声を出して、北村を誘う。
晴菜には、天性としか言いようのない勘のよさがあるし、徹底的に小田に鍛え上げられている。最初から晴菜の美貌に圧倒されている北村に、勝ち目はない。
あっさりと北村は、晴菜に搾り出される。
もっとこの瞬間を先延ばししたいのに、溢れ出す自分を抑えることができない。
晴菜は、北村のペニスをしっかりと咥えこんだまま、全てを口の中に受け止める。おいしそうに飲み干す。
「嬉しい」「美味しかった」などと北村をねぎらいながら、丁寧な後始末までしてやって、北村との役者の違いを見せつける。
北村がこれまで味わったことのないような、最高のフェラチオだった。いや、それどころか、これまで経験したどの女との射精よりも上かもしれない。
やみつきになりそうだ。
ミッちゃんのおかげで、これから、ずっと毎日この口を味わえるんだ!
そう思うと北村はすっかり有頂天になった。
―――
北村が晴菜の口をずっと毎日味わうだって?
北村ごときが?
倫子は、そんなにお人よしではない。
4
次の日から4日間、あわせて5日の間、毎日、北村は、晴菜の口を使わせてもらった。
倫子は、大学内で、人目につきそうなスリルのある状況でフェラチオをさせたがった。
きっと倫子は、晴菜がフェラチオをするのを毎日見ていても、つまらないのだろう。晴菜が危ない状況でフェラするのを、横から見るほうが楽しいのだろう。
北村はそんなふうに考えた。
まず、学生が他にもいる教室の隅で、おしゃぶりをさせた。
晴菜は机の影に隠れて北村の股間に吸い付いた。崇行と倫子が壁になって他の学生から見えないようにしてくれたが、何かの拍子に話しかけられないとも限らない。
だが晴菜はまったく周囲を気にする様子がなく、平気でチュパチュパと音をたてる。
逆に北村は、周りが気になって、なかなかのめり込めない。緊張したせいで結果として、最初のときに比べて、射精までに時間がかかった。おかげで早漏の疑惑は免れることができた。
次は、図書館の中で。
晴菜が、机の下に落とした消しゴムを拾おうとしたところで、目の前に北村のペニスを見つけ、そのまま吸い付いた。
静かな図書館の中に、水音とかすかなあえぎ声が響く。人の話し声のあった教室の中よりも、音が目立つのでバレやすい。実際、通りがかりに、不審そうに辺りを見回す学生も何人かいた。倫子や崇行が咳払いしたり物音を立てたりしてごまかした。
他人がいる中でフェラチオされるのも2回目なので、北村もいくらかは慣れた。むしろ、見つかるかもしれないというスリルが心地よかった。
それに、見つかったとしても、それは、あの小野寺晴菜にフェラチオさせているということが、人に知られるということだ。恥ずかしいどころか、男としては自慢していいことなのでは?
さらにその次は、大学内の男子トイレだった。
晴菜を男子トイレに出入りさせるだけでも大変だった。
崇行が先に偵察に行って、誰もいなくなるのを待った。倫子が晴菜の腕を引っ張って、冗談めかしてケラケラ笑いながら男子トイレに連れ込んだ。
北村のペニスを晴菜に見せ、すぐに個室に入って鍵を閉める。
その直後、トイレに近づいてくる男子学生の声が聞こえたので、倫子も隣の個室に隠れる。
崇行が洗面台で髪の毛を整えるふりをする。
トイレに入ってきた2人づれの男子学生が、崇行に声をかける。
崇行の知り合いらしい。
はからずも、晴菜の話題が出る。
「夏休みあけたら、ますます美人になってたね」「今年はミス啓知に出るんだって?」「来月からCanCamの読者モデルで出るって聞いたんだけどホント?」
「それ、両方とも断ったって聞いてるよ」
ははは。その晴菜ちゃんが、すぐそこでフェラチオしてるとも知らずに……。耳を澄ませば、その憧れの小野寺晴菜が喘いでいる声が聞こえるのに。
トイレの個室で晴菜は、男たちが自分の噂話をしているのを聞いて、少し恥ずかしそうに身じろぎする。
北村は、外にいる男たちへの優越感を確かめたくて、乱暴に腰を振って、ペニスを晴菜の口中に押し付ける。
「ンフ」
晴菜が、外に聞こえそうな声を上げる。
腰を動かす北村に急かされて、唇で激しく擦る。
崇行と話している男子学生たちは、まったく気づかない。
無邪気に崇行を、飲みに誘っている。
「なあ山越、今度、小野寺さんと一緒に飲みたいな」「下川さんも一緒で」「じゃあ、おれは小野寺さんと話すから、お前は下川さんね」「いや待てよ、おれも小野寺さんがいい」
こいつら、きっと崇行がいなければ、もっと男の欲望丸出しの会話してるんだろうな。一度でいいからヤリたいとか、酔わせてホテルに連れ込めないかな、とか。
この連中が晴菜ちゃんとヤルのはムリだけど、フェラチオなら、そのうち何とかなるかもね。
「お手」って言って、チンポ見せればいいんだよ。
おれの使い古しでよければだけどね。
得意な気持ちに浸りながら、その日は北村はすぐに射精してしまった。
この3日、北村ばかりが晴菜の口を使っていた。崇行はフェラチオされていなかった。
晴菜を独り占めできて嬉しいのだが、とりあえず崇行にも気を使ってみせた。
「山越のほうが先輩なんだし、先におまえがやれば?」
崇行は、苦笑いして倫子と目を見交わして、「おれはそっちはいいから」と辞退した。倫子も「北村クンは気にしなくていいから」と言う。
倫子と山越の意味ありげな視線を見て、北村は確信した。
やっぱ山越とミッちゃんは、デキてたんだな。
そっか、きっと晴菜ちゃんの口で山越がイッてしまうんで、ミッちゃんが嫉妬したんだな。それで、晴菜ちゃんのしつけをおれにさせたのか。
北村だけが晴菜の口を使うことが、正当化されたのは嬉しいのだが、崇行に対しては複雑な気持ちを抱く。
山越のヤツ、ほんといつもうまくやりやがって。
小野寺晴菜のお口だけじゃなくて、下川倫子の身体もかよ。
北村は、行儀悪く机の上に座って足を組んでいる倫子の身体を眺める。
倫子も、晴菜とは違った意味でいい女だ。
晴菜の聖に対して、下川倫子は艶。
ミニスカートから覗く倫子の褐色の太ももは、やたらと挑発的で色っぽい。たしか胸のカップも晴菜より大きかった。
ミッちゃん、いかにも遊んでそうだから、夜もスゴそうだし……。
山越は、この女と寝てるのか。
おれもこの女を押し倒しておけばよかった。酔っ払った隙に、胸に触ったことはあるんだけどなあ。
どうにも割に合わない気がする。
おれの周りには、いい女がこんなにいるのになぁ。
やっぱり、桐野梓を口説きなおしたほうがいいかな?
いやいや、今ここには小野寺晴菜という最高のオモチャがいるんだ。
まずはそっちを楽しもう。
5日目には、よりによって今井弘充がいるすぐそばで、晴菜にフェラチオをさせた。
大学の中にあるタリーズの、店内地下の一番奥で、図書館のときと同じように晴菜はテーブルの下にもぐりこんでいた。晴菜が吸い始めたばかりのときに、今井弘充がやって来た。晴菜と待ち合わせしていたらしい。
北村は、驚愕のあまり、一挙に萎えてしまった。
それなのに、倫子はと見ると、まったく平気な顔をしている。
倫子が北村の耳元に顔を寄せて囁いた。
「出してしまわないと、ハルハル、元に戻らないわよ」
射精しないと、晴菜は正気に戻らない。おかしくなっている状態の晴菜を、今井弘充に会わせるわけにも行かない。
北村はおどおどながら、今井弘充に声をかけた。
「晴菜ちゃん来てないよ。他の席かも」
なんとか追い払おうとした。
だが倫子は、椅子の上に置いてある晴菜のバッグを示して、弘充を引き止めた。
「いや、ハルハル、さっきいたよ。たしか、濃いミルクを飲みたいとか……」
そこで倫子は、こらえきれなくなって笑いを漏らしてしまう。
「ウフフ……なんかそんなこと言ってたから、たぶん少ししたら戻ってくると思うよ」
この女、わざと今井弘充を引き止めている!
北村が助けを求めるように倫子を見ると、倫子は、目で北村を叱咤する。
さっさと晴菜の口に出しちゃえ。
倫子と崇行は、何ごともないかのように、今井弘充とおしゃべりをした。
この2人、今井とも親友だったはずなのに、残酷なことを平然とやる。
ただおそらく、ここで今井弘充にばれても、倫子や山越は言い逃れできるだろう。知らぬ存ぜぬで通せばいい。
だが、北村はただではすまない。
北村は、倫子や弘充たちの会話は、まったく上の空だった。ひたすら、足の間の晴菜の存在がばれないことを祈り続けた。店内の照明が暗くてよく見えないのがかすかに救いだ。
いったん萎えてしまった北村の一物も、晴菜のテクニックで、すぐに元気を取り戻した。
相変わらず、晴菜のフェラチオは音が大きい。
通常であれば、唾液の音やあえぎ声が、快感のスパイスなのだが、さすがに今日はそういうわけには行かない。大きな音がたつたびに、はらはらしながら、弘充の顔を見る。
会話にも加わらず、様子がおかしい北村に、弘充が気を使う。
「どうした? 体調でも悪い?」
「あ、いや……」
北村が固まる。
倫子がフォローした。
「寝不足らしいよ。なんかフーゾク店で、上手な女に舐めてもらったのが忘れられないんだって。ふふふ」
そう言ってケラケラ笑う。北村の小心ぶりを嘲笑っているようだ。
この倫子の沈着ぶりと悪意が恐ろしい。
だが、そのうちに、弘充の視線に怯える緊張感が、北村にゾクゾクする興奮をもたらす。この数日間、人目を気にしながらフェラチオさせたときにも感じた感覚だ。
スリルと緊張感が興奮を倍化させる。今日のスリルは、昨日の何倍も大きい。
北村は、股の間の晴菜の美貌と、今井の顔をちらちらと見比べた。なんだか笑いがこみ上げてきた。
お前の恋人がいま何してるかも知らずに……
笑い顔を隠すために顔を伏せた。
北村が自分を見たのだと思ったらしく、机の下で、晴菜がなまめかしく微笑みかけてくる。
晴菜が小さくウィンクするのを見て、北村はうれしくなる。
晴菜も、恋人の目を盗んで、他の男のペニスをしゃぶることに、後ろめたい興奮を感じているに違いない。
今井のすぐそばで、こっそりとフェラチオにふけるという、このスリルと快感を、晴菜と北村の二人だけで味わっている。
ははは。
今井のヤツ、ほんの目と鼻の先で恋人が、鼻を鳴らして他の男のチンポしゃぶっているっていうのに、気づきもしていない。
今この瞬間、小野寺晴菜はお前の恋人でもなんでもないんだ!
スリルと優越感に酔った北村は、急に興奮がこみ上げてきた。
それを察した晴菜のほうも、唇の動きに熱がこもる。
ついに北村は、今井弘充のすぐ1メートル横で、その恋人の口の中に射精した。射精の瞬間に、「ウォッ」と小さく声を出してしまう。
長い射精だった。どんどん溢れ出てくる!
晴菜に初めてフェラチオしてもらったとき、それが人生最高の射精に思えたが、今回のほうがさらに良かった。
他の男の前で、その男のカノジョに射精するのが、こんなに気持ちいいものだとは、大発見だ。
たっぷり射精したのに、晴菜は全部飲み干してくれた。
今井弘充の精液と、とっちが量が多かったか、確かめてみたい。
いつも献身的な晴菜が、丁寧に後始末をしている間に、倫子が今井弘充を連れ出してくれた。
「今井クン、そういえばコーヒーおごる約束だったよね」
と、うまい口実だ。きっと前もって用意してあったに違いない。
ことを終えた晴菜は、楚々とした仕草で、はだけていたブラウスを整えなおす。何事もなかったかのように椅子に腰かけ、カフェ・ラテのカップに口をつける。
そのカフェ・ラテは、晴菜の胃の中で、北村の精液と混じりあった。
5
今井弘充の前でのその最高のフェラチオを最後に、倫子からお呼びがかかることはなくなった。
1週間たって、倫子に聞いてみた。いかにも手伝ってやるよと言う恩着せがましい口調で。
倫子はあっさりとかわした。
「うん、ありがとう。北村クンのおかげで、うまく行ったよ。今いろいろ調整中だから、また今度手伝ってね」
機嫌よくそう答えた。
それっきりだった。
5回口に射精して、これで終わりかよ。種牡馬かおれは?
いや、種牡馬なら、下の口を使わせてもらえる。
これじゃ、種牡馬以下じゃないか!
相変わらず、晴菜を囲む飲み会には、北村は呼んでもらえない。
大学内で、北村が晴菜と二人になる機会があった。
ここで「お手」と言えば、またしゃぶりはじめるだろうか?
試してみよう。
口を開きかけたタイミングで、倫子と出くわした。慌てて止めた。
危ないところだった。
やるなら、ミッちゃんに見つからないところで。山越もミッちゃんの仲間だから注意しないと。
角田や吉本を引きずり込もうか?
いや、どうしておこぼれをあいつらに施してやる必要がある? ひとりでたっぷり楽しもう。
晴菜は、大学にいる間しかフェラチオしないということだった。だから、大学外でこっそりというわけには行かない。
晴菜と倫子の2人ともが受講しているはずの授業で、晴菜が1人きりでいたので尋ねてみた。
倫子は「例によって」男と会っているので授業は休んでいると言う。
よしチャンス。
適当なことを言って晴菜を空き教室に連れ込んで、しゃぶらせた。
久しぶりだったので、ずいぶん気持ちよく射精できた。
倫子や崇行の目がないので、自分の好きなように晴菜にフェラチオさせることができた。
どうせ晴菜は、催眠術にかかっている間のことは忘れてしまう。
憧れの晴菜に向かって、「ヘンタイ女め」「いつもお高くとまりやがって」「そんなにチンポ好きなのか?」「今井のとどっちが美味しいんだ?」「おれの恋人になれ!」と嘲笑い罵るのは気分が良かった。
晴菜のフェラチオは、顔に似合わずやたらと上手い。
だが晴菜の巧みなテクニックで否応なく追い詰められてしまうのが、なんとなく癪だった。
なので、最後は晴菜の自由にはさせなかった。
「絶対に歯を立てるな」と念押ししてから、晴菜の頭を両手で掴んで前後に動かして、北村は自分で腰を動かした。
晴菜の綺麗な顔に、腰をぶち当てて、好きなようにペニスを押し込む。本当に晴菜の口を犯しているような気分になれて気持ちよかった。
晴菜が「そんなやりかたいや」「アアひどい」と哀願するのも北村を満足させた。
そんなに嫌がっているのに、射精した精子はきっちり全部飲み干す。その従順さが可愛いペットだ。
男に乱暴な行為をされたときは、泣き声を上げて哀願して男を喜ばせるよう、晴菜が小田から教え込まれていたなどとは、北村には思いも寄らなかった。
そのうえ、北村が排除したつもりの角田吉本が、晴菜と飲み行ったときにはフェラチオしてもらっていることも、想像すらしなかった。
調子に乗った北村は、倫子の目を盗んで、何度か晴菜にフェラチオをさせた。
倫子からは、フェラ中はほかの余計なことはするなと言われていた。だが、フェラチオの最中に晴菜が見せつけてくる胸の谷間があまりに魅力的だ。つい椅子に腰掛けたまま手を伸ばして揉んでしまった。
晴菜は、抵抗するどころか、嬉しそうに声を上げる。
ブラジャーをずらして乳首を直接刺激してやった。そうやると、晴菜のフェラチオにも余計熱が入るような気がした。
この調子で、なし崩しで服を脱がせて行って、そのうち晴菜とヤってしまおう。
ははは。ざまみろ。今井も、山越も、ミッちゃんも。啓知大学の全男子学生どもも。お前らの大切な小野寺晴菜を、絶対に犯してやるからな。
倫子は北村に会うと、何の疑いもない笑顔で「北村クンのおかげで、晴菜のしつけは順調よ」と喜んでくれる。北村のやっていることには気づいていないようだ。
北村はすっかり安心していた。
人に見つからないかビクビクしながらフェラチオしてもらうスリルが忘れられないので、今度はもうすこし人のいる近くでやらせてみよう。
6
催眠術にかけた晴菜から様子を聞いて、倫子は苦笑いした。
やっぱり北村はバカだった。
いつも目先のことしか考えない。頭は使うのだが、小ずるい考えかたしかできず、思慮が浅い。視野が狭く、浅薄に自分のことを正当化する。自分勝手で、他人への配慮がない。
バカならバカなりに、身のほどをわきまえていればいいのに。北村が自分を振り返ってみるチャンスはいくらでもあったのに。勝手に晴菜にフェラさせた後で、倫子に謝りに来るとか、せめて角田たちに相談するなりすれば、倫子も見捨てずに面倒見てやったのに。
まあ、一度痛い目にあうのは、北村にとっても、いい経験かも。
7
ある日、談話ラウンジのテラスで女子学生の悲鳴が聞こえた。
学生たちが駆けつけてみると、小野寺晴菜が真っ赤になって、両手で顔を覆ってかがみこんでいた。
見ると、晴菜から数メートル離れたところで、北村がフリチンになって、勃起させたまま立ちつくしていた。
大学のアイドル小野寺晴菜の前でフリチンになった露出狂学生の噂は、すぐに広まった。
< つづく >