夢から始まる物語 final plane 前編

final plane前編・「願い主」と「妹」と「悪夢」

 登場人物:

 レオン・・・天界から来た天使と悪魔のハーフの美男子。天界ではシオンと呼ばれている。『ユグドラシル』の称号を持つ。天使階級は無く、現在最終試験中。

 明日香・・・男の人(父親代わり)が欲しいと願った中2。レオンが天使になれるかどうかは明日香次第。大人になるにつれ天然ボケは抜けてきた。

 美佳・・・明日香の母。未亡人。レオンの天使術でレオンのセフレに。

 リファイス・・・シオンの婚約者。シオン母に引けをとらない美女。明るさと素直さが一番のとりえ。天使第6階級。

 フィリシーン・・・堕天使で魔界に住むグラマーな女性。エンカーブレイスとは親友だった。その息子シオンに興味津々。

 エンカーブレイス・・・シオンの母で天使第8階級。歴史上最高の美女で天才の為、皆の憧れだった。シオンを産んだ際に命を落とす。

 ブルータル・・・シオンの父で悪魔。趣味は天使を強姦すること。その性格は魔界ですら手を焼いていたほど。覚醒したシオンによって生涯を終える。

 ハーシブリィ・・・ブルータルの娘。シオンを求めて下界に。ジャンクフードとコーラが大好き。愛称はハーシィ。

 用語説明:(※印はこの話で初めて登場or説明するもの)

 付き人&願い主=派遣された天使&願う資格があると判断された者(人間に限らず)

 地区制度=下界で言うところの国家。基本的に親子は別々の地区に派遣される。シオン達はルナ地区。他にはレム地区、アルテミス地区など。ルナ地区では10年に一度武道大会が開かれる。

 天使階級=1から9まで存在し、数字が増えるほど強く、良い部屋に住める。さまざまな特権も与えられる。議会は引退者から構成される。

 次元移動=天界、下界、魔界の3つの異なる世界を行き来する。術の習得までには高度な技術と長い年月を要する。また、次元移動の門が存在し、術を持たないものでも移動可能である。下界には門が無い為、下界に来た場合は術以外では帰ることができない。

 天使術「マスターオブスペース」=領域内を魔力で支配する。対象は任意で選択可能、物質なら材質の変化も可能(極端な変化は不可能)。人間へは誤認や精神操作、肉体操作が可能。

 悪魔術「マイティラスト」=対人間用。あらゆる欲望を操作する。基本原理は天使術と同じで、術同士がぶつかれば魔力の強いものが競り勝つ。

 ユグドラシル(男)&マーテル(女)=天使術に「癒しの力」の属性を持つまさに完璧な存在の称号。伝説級に珍しい。例外なく称号を手にするため、シオンもユグドラシルである。

 マナ=他の世界感とだいたい同じ。魔力の根源で大気中に存在し、特に大樹カーラーンから溢れ出ていると言われている。十分に存在する為、枯渇を防ぐ旅とかはしない。

 ※次元移動カード=天使専用。一回分の次元移動術の魔力が込められたカード。天使術に反応し次元跳躍が起こる。これによって次元移動術を使えない者でも移動できる。
 ※空間移動=悪魔専用。主に建物内に侵入する時などに使う。盗みや偵察などに便利。フィリシーンやハーシブリィが現れたのもこれ。意外と時間がかかり、しかも距離も遠くない為戦闘向けではない。
 ※魂狩り=悪魔専用。魂もしくは体力を対価に求める。今作では単純に「魂=寿命」を示す。

 男の天使が性交を行う場合、女性側が潜在意識で孕みたいと望む場合に着床する。真に欲しない場合は着床することは無い。つまり、女性側が望めば男性側が望まない場合でも着床することになる。尚、宿った生命を中絶することは、生命を尊ぶ我々にとって許しがたい行為である。また、子供が成長し階級が得られるまでは、全ての責任は親にある。
 男の悪魔が性交を行う場合、女性側の意志にかかわらず、安全日以外ならば高確率で着床する。そのため、悪魔の性交は避妊が必須である。これは繁殖能力を重視しているための特性と言える。
 天使と悪魔の混血の場合はどうなるのだろうか。前例は無いが、中和されるのではなくどちらか一方の特性を継ぐと考えられる。もし本人の意思で天使と悪魔両方に変化できるとするならば、身体的特徴と共に精子もまた特性が変化すると言えるだろう。
 天使図書館「生命の誕生」受精の項目より抜粋

≪「Aパートだぞ♪」byハーシブリィ≫

 ハーシブリィが明日香たちと同居するようになった。相変わらず気が短く、それでいて甘えんぼで照れ屋で、尚且つ態度がでかい。
 レオンと衝突することによって打ち解けやすくなっているらしい。とりあえず喧嘩は耐えないが、ハーシブリィにとってはその喧嘩すらも楽しいようだ。

 ある祝日の昼、ハーシブリィが美佳に迫っていた。
「なあ美佳!俺にも小遣いくれよ!さっき明日香にあげてただろ?」

 美佳は財布の中から千円札を五枚取り出した。
「ええ、いいわよ・・・はい。大事に使うのよ」

 ハーシブリィは千円札を握ってニンマリと笑みを浮かべた。
「サンキュー!新しいゲームが欲しかったんだよなー。中古屋って便利だな!新作がもう売ってるぞ!」
 ハーシブリィはゲーム屋のチラシを美佳に見せびらかした。
「そう、良かったわね~。へぇ~、こんなに高価に買い取ってくれるの?(今度明日香のゲーム売っちゃおうかしら)」

 ハーシブリィは自慢げに胸を張った。
「おう!買って、速攻で遊んで、速攻で売って、ポイント使って安く買う!これがコツなんだぞ!特にまとめて売るのがコツだな!」

 ハーシブリィの知識は大体が明日香から学んだものだ。レオンはゲームに興味を示さない為、明日香とハーシブリィはゲームに関しては相性がいいのだ。

 美佳は嬉しそうなハーシブリィを見て微笑んだ。
「なるほどねぇ。結構下界に馴染んできたわね」
「まあな!兄貴が世話焼きで困るぜ~・・・っといけねえっ!売り切れちまう!」

 ハーシブリィは急いで早速ゲームを買いに出かけていった。

 そんなハーシブリィを見ながら、美佳が椅子に座りながらため息をついた。
「はあ・・・ハーシィだけお小遣いあげないわけにはいかないものね・・・」

 そんな美佳の部屋に、レオンが入ってきた。そしてぶっきらぼうに封筒を差し出した。

「美佳、ハーシィの分の今月の生活費代、それに小遣い代も入ってる。使ってくれ」

 美佳はその封筒を受け取って中を覗いてみた。一万円札が数枚入っている。
「・・・ど、どうしたのこんな大金・・・え~っと・・・ひい、ふう、みい・・・・・・20万っ!!?こんなの受け取れないわよ!」
 美佳は、20万という大金に驚いていた。

 レオンは美佳のベッドに腰掛けた。
「確かに。俺がここに居るのは明日香が望んだからだ。今ここに居るのも、明日香が望んでいるから。だから美佳がお金で困っていても俺は援助しなかった・・・だが、ハーシィが同居することになったのは俺が原因だ。というわけで俺がハーシィの分のお金を出す。あいつにはいっぱい下界のことを学ばせたいんだ。余った分は好きに使ってくれ」

 20万が余らないなんてことはまずありえない・・・つまり迷惑料が含まれているのだ。

 美佳はじっとレオンを見据えた。そして封筒を突き返した。
「ダメ!この家に住む限り私が稼ぎ手よ。それは変わらないし、明日香の付き人の貴方に援助してもらいたいとも思わない。これは返します!」
「俺は帰ってからもハーシィと暮らす気で居る。ハーシィは俺の妹だ・・・こういうことぐらい、兄貴面してもいいだろ?」
「・・・レオン・・・」

 美佳はレオンの顔を見て決心した。
「分かったわ。このお金は受け取ります・・・余ったお金は明日香やハーシィの贅沢に使うことにする・・・ありがとね」
「例を言うなら俺のほうだ。ハーシィを置いてくれてありがとな」

 レオンは少しだけ笑みを見せた。
 美佳はその美形の顔をしっかりと目に焼き付けた後、率直な疑問をぶつけてみた。

「ところでシオン・・・こんな大金どうやって?」
「街を歩いてたらいろいろとスカウトされた。あとは一緒に寝るだけで女の人がくれたり・・・下界人は金を払ってまで抱いて欲しいんだな」
「そ、それって○○じゃ・・・・・・美形は得ね。つくづく羨ましいわ・・・」
「○○って悪いことなのか?」
「え~っと・・・レオンが訴えなければ大丈夫!・・・・・・なのかしら?普通は逆だから・・・ってそんなこと詳しくないわよ~」
「そうか・・・じゃあ俺は明日香の様子でも見てくるぜ」

 レオンはそう言って美佳の部屋を出て行った。
 この日、美佳はレオンと女がどんなことをしていたのか妄想が止まらなかったらしい。

 そんなことがあるとは知らず、ハーシブリィはただ下界生活を堪能するのであった。
「お、今日の焼肉旨いな~。何だ?今日は誰かの誕生日か?」
「そんなことないわよ。たまたまよ、たまたま」

 そんなこんなで次の展開が始まるのは明日香が中3となった秋。

 ハーシブリィがいつものように遅めに起きてくると、美佳が食卓に座っていた。
 見渡してみるがレオンと明日香の姿は見えない。

「・・・ん~?兄貴たちは~?」
「今日は明日香の修学旅行の日なの。あの子ったらまた寝坊したもんだからレオンに送ってもらったのよ。ひょっとしたら明日香に付き添って帰ってこないかもしれないわ」

 ハーシブリィは目を擦りながら大きなあくびをした。
「ふあ~っ。そうか~・・・・・・・・・えーーーーっ!!何で教えてくれなかったんだよ!!俺も行きたかったぞ!!」
 状況が飲み込めたハーシブリィは、急にそわそわと落ち着きがなくなった。考えていることはわかる。レオンが居ないので不安なのだ。

「起こしたわよ~。何度も」
「何だよーっ。ま、まさか兄貴本当に帰ってこないんじゃ・・・ど、どこだ!?俺も追いかけるっ!!」
「ダメよ。ハーシィは日本を良く知らないでしょ」
「そんなことない!!知ってる!!・・・と、思う・・・」
「それに細かいタイムスケジュールも分からないから。たかだか3日ぐらい我慢しなさいな」
「う~・・・」

 寂しいような悔しいような表情を浮かべるハーシブリィに、美佳が問いかけた。

「なるほど。ハーシィはお兄ちゃんが居なくて寂しいんだ?」
 美佳が言うと、ハーシブリィは顔を真っ赤に染めた。

「う、うるさい!そんなわけない!」
「じゃあレオンが居なくなってもいいんだ?」
「居なくなったらダメに決まってるだろ!!」
「じゃあやっぱり寂しいの?」
「そんなことないって言ってるだろ!兄貴が居なくたって平気だ!」

 美佳はそんなハーシブリィを見てクスクスと笑った。
「うふふっ、面白いわね。ハーシィ」
「な、何か変なこと言ったか?俺・・・」
「さぁね~。何なら私と一緒におねんねする?」
「ばっ!バカにするなっ!」

 美佳はハーシブリィも妹らしいところがあるんだと安心していた。
 結局、戸締りや火の元に注意するように何度も促した後、慌しく会社に向かった。

 美佳も仕事に向かい、一人残されたハーシブリィ。仕方なくポテトチップスを食べながらテレビゲームを始めた。明日香とハーシブリィは対戦型のゲームをよく買う。短期間で短時間でできて区切りがいいからだそうだ。

「明日香が居るとスナック菓子を食べた手でコントローラーを触るなって煩いしな。兄貴もごろごろするなって煩いし。のびのびできていいぜ」

 恐らく大半の人がされるとイラッとするだろう・・・だがハーシブリィにとってはどうでもいいことなのだ。勿論掃除なんて自分からはしない。

 ハーシブリィもかなりのゲーマーだが、世の中には上が居るものだ。今戦っている相手もかなりの腕らしい。

「あ~~っ!!沈んだ!!くそっ!俺が闘ったほうが強いっつ~の!!大体よぉ、大会の使用禁止にするぐらいなら前作より肩バルカン強化してんじゃねぇよっ!!こんな凶悪なのに勝てるかっ!!あとあの黒い奴!!」

 どこか別の場所・・・
「うしゃしゃしゃしゃ!アタシに勝とうなんて10年早いわよ!」
「・・・そんな全力でやらなくてもいいんじゃないですか?」
「アタシはウサギを狩るのにも全力を出すトラなのよ!」
「・・・それってダメな方なんじゃ・・・」

 ハーシブリィも暫らくしてゲームに飽きてきた。ポテチの袋をがさがさとやると、逆さにして最後の破片を口に入れた。
「・・・あ~つまんね~・・・さっきの以外は全員格下かよ~。こんな時兄貴が居たらな~・・・」
 大きなペットボトルのコーラをがぶ飲みする。そして大きなゲップをすると、カーペットに寝転がった。
 別にその兄貴がこのゲームが強いわけではない。別のことをして退屈をしのげるという意味である。

 ところでこんなに欧米でメタボリック的な食生活だが、ハーシブリィはスレンダーである。悪魔は基礎代謝力が物凄く高いので、運動なんてしなくても鈍らないのだ。
 一方のレオンといえばたいした趣味もないので、抱く、寝る、喰う、学校付き添い、家事手伝い、筋トレが主体である(簡単に言えば明日香がゲームや勉強している間に)。

「・・・・・・明日香ってやたらと兄貴を使うよな・・・いくら付き人でも修学旅行に連れて行くなんてやりすぎだよな。俺の兄貴なのに・・・」

 ハーシブリィは何気なくレオンと明日香が一緒に居る様子を思い浮かべた。すると、ハーシブリィの心の中にもやもやとしたものが沸き起こってきた。そしてそのもやもやが次第に姿を見せ始めた。
(・・・兄貴が明日香に取られるかもしれない・・・明日香は消さなくてはならない・・・)

 ハーシブリィの表情が少しだけ険しくなった。

「・・・俺の兄貴なのに・・・俺だけの・・・誰にも渡さない・・・」
-ドクン・・・-

 ハーシブリィは自分で口にした後、ハッとして飛び起きた。
「な、何だ・・・今の感じ・・・」
 ハーシブリィが異変を感じたのはその時からだった。

 その夜、ハーシブリィは美佳に気付かれないように外に出た。その時の目はいつものそれとは違い、邪心に満ちていた。
(俺は魂を狩らなければいけない・・・悪魔の仕事だ・・・)

 ハーシブリィは欲望に促されるまま、人々の欲望を叶える代わりに魂の一部(=寿命)を喰っていった・・・

 一度魂の味を覚えてしまうと、あとは踏みとどまれなかった。翌日も、その翌日も人々の魂を喰い続けた。

 結局、レオンが帰ってきたのは3日後だった。相変わらず満足気な明日香と共に。
 兄貴に知られたくない、という気持ちからなのか。それとも兄貴が居ればその欲求も起こらないのか。ハーシブリィはレオンが家に居る時は魂狩りをしなかった。

 ハーシブリィはよく夢を見るようになった。それは狂気に満ちた自分が兄貴を襲う夢・・・ただ、その中の自分は物凄く快感だった。
 ハーシブリィはベッドの上で魘されていた。
「ん・・・うぅ・・・」

(兄貴・・・兄貴を俺だけのものにしたい・・・兄貴以外は何も要らない・・・全部・・・明日香も美佳も・・・リファイスも・・・皆ころ――)

 ハーシブリィは慌てて飛び起きた。
「うわああああぁっ!!!」

 レオンが不審に思い、ハーシブリィを抱き寄せた。
「どうした?ハーシィ。嫌な夢でも見たのか?」

 ハーシブリィはレオンの胸に顔をうずめてぶるぶると震えていた。
「あ、兄貴・・・兄貴!!俺っ!!怖い!!怖いよおぉっ!!」

 レオンはハーシブリィの頭をそっと撫でた。
「大丈夫だ。お前は俺が護ってやる。どんな敵が来ても。命懸けでな」
「ぐすっ、ぐすっ・・・あ、兄貴・・・もし、もしそれが・・・その敵が・・・(俺だとしたら?)」
「ん?」
「・・・なんでもないんだ。何でも・・・」
「そうか・・・」
「・・・兄貴。しばらくこうしててもいいかな・・・」
「ああ。勿論だ」

 ハーシブリィに異変が現れ始めたある日、レオンのもとに一通の封筒が届いた。普通の郵便と違い、それは直接レオンの目の前に現れた。
 レオンが中を開くと、手紙とカードが入っていた。
「ん?このカードは・・・天界への次元移動用か・・・手紙の差出人はジジイってところか?・・・え~っと・・・『現状の報告会を開く。貴殿の任務について途中報告すること。翌日の午前9時に天界の集会場へ来られたし』・・・任務の途中報告ねぇ・・・そんなのが有るなんて知らなかったぜ」

 その手紙を受け、レオンは翌朝、天界へと移動した。

 食卓では明日香が美佳からそのことを説明されていた。

「え~っ!!?今日レオン居ないのぉっ!?」
「ええ。今日は経過報告をしなければいけないんですって。あなたの付き人としての」
「何よぉっ!そんな話、私全然聞いてないわよ!!」
「明日香に言うと『絶対に行っちゃダメ!命令よ!』って言うに決まってるから・・・ですって」
「うっ・・・」
「そんなに大事な用事でもあるの?だったらハーシィに頼めばいいじゃない」
「それだけは嫌よ!だってハーシィは私とは無関係だし!いつもいつもレオンにひっついててウザいのよ!レオンは私のものなのに!」

 そこに怒りに満ちた表情のハーシブリィがやってきた。
「なんだとぉっ!!俺は兄貴と兄妹なんだ!!問題ないだろ!!だいたいお前はいつもいつも兄貴に頼りすぎだ!!」
 明日香は負けじとハーシィに言い返した。
「何よ!!レオンは私の願いを叶えるために来たのよ!それこそ問題にならないでしょ!大体あんたは居候のクセにわがまますぎるのよ!」
「わがままなのはお前だろっ!!」

 美佳が2人の頭をゴツンと叩いた。
「いたっ!」「いてっ!」
「はいはい。2人ともそこで終わり!明日香、確かにあなたはレオンに頼りすぎね。ハーシィも妹ならもっとレオンのことを手伝ってあげなさい。以上!はい、解散~!」
 美佳が手際よく喧嘩を鎮めると、2人は我慢していた。

 明日香は椅子から立ち上がると、ハーシブリィをキッと睨みつけた。
(ふん!あんたが居なかったらもっとレオンを使えるのに)

 ハーシブリィはそっぽ向いて二階に上っていった。
(ふん!お前が居なかったら兄貴は俺と一緒に居れるんだよ)

 美佳はそんな2人を見ながらため息をついた。
「はぁ・・・あんたたちがもっと仲良くしてくれるといいんだけどねぇ・・・」

――――――――――天界――――――――――

 シオンが通された部屋の中には、テーブルが一個と、一人の天使が座っていた。
 その女性、リファイスは笑みを浮かべながら立ち上がった。
「うふっ。元気にしてた?シオン」

「リファイス!な、何で・・・」
「言わなかったっけ?第6階級になると階級が無い天使の任務報告を受けることができるのよ。しかも任意に」
「じ、じゃあ昨日の封筒もリファイスが?」
「そうよ。こうすればシオンと逢えるでしょ?」
「し、職権乱用だろ・・・」
「何か言った!?」
「な、何でもありません・・・」

 シオンはリファイスの向かいの椅子に腰掛けた。
「・・・更に綺麗になったな」
「あら、そう?恋する女は綺麗なものよ」
「・・・」
「もしかして妬いてる?心配しなくても相手はシオンだから」
「や、妬いてなどいない!」

 リファイスは数枚の紙に何かを書き込んでいく。
「さてと。とりあえず先に任務報告をしてもらおうかな。じゃれ合うのはそれが終わってからね♪」
「・・・別に変わったことは無い。以上だ」
「シオン!仕事は仕事よ!ちゃんと報告する!私もシオンの任務の様子を知りたいもの」

「・・・分かった・・・願い主である今野明日香だが、最近些細なことで俺を使うようになった・・・と言うわけでいつごろ終わるのか俺にも見通しがつかない」
「・・・なるほどね。つまり所有物という感覚が強まってきた・・・ということかしら?下界人に良くあることね」
「そうだな。俺が心配なのは、俺が居なくなった後のことだ・・・こんな様子でやっていけるのかどうか・・・」
「・・・へぇ~。シオンも願い主を心配するようになったのね。しかも任務後のことまで・・・で、彼女がそうなってしまった理由は何だと思う?」

 理由を聞かれシオンの脳裏にハーシブリィのことが思い浮かんだ。

「実は・・・」
「実は?・・・」

 が、言いかけてふと気になった。
(待てよ。悪魔と暮らしてるってのはまずいよな・・・天使にとって悪魔は忌み嫌う存在だし・・・明日香の付き人が終わった時に説得すればいいか・・・)

 シオンはハーシブリィのことを隠し、話題を変えた。
「俺にも分からない。年月が経てば性格も変わるんじゃないか?あいつも年頃の女だし」
「・・・・・・・・・シオン・・・」
「ん?」

 見ると、リファイスが疑るような目でシオンを見ている。
「シオンのことを一番理解しているのは誰だと思う?」
「・・・リファイス・・・」
「その私に隠し事しようとして隠し通せると思う?」
「べ、別に俺は隠し事なんて・・・」

 リファイスはテーブルをバンッと叩くと、シオンの目の前に立った。
「シオン!!言いなさい!!それとも言えないような事なの!?」
「い、言えないような事だよ!!特にお前には!!」
「・・・」
「・・・」

 リファイスは伏目がちに悲しげな表情をして見せた。
「・・・私はこんなにシオンを愛しているのに・・・シオンにとって私はその程度の存在なのね・・・がっかりだわ・・・」
「ち、違う!俺はお前を――」
「ダメ!もう婚約は破棄!あなたと私はもう赤の他人よ!!」
 リファイスは目に涙を浮かべながらシオンを睨みつけた。

 シオンは観念した。
「わ、分かった・・・言う・・・言うから考え直してくれ・・・ただ、他の人にはまだ言わないでくれ・・・」
 リファイスは心の中で勝ち誇った笑みを浮かべていた。
(・・・ふふふっ♪シオンには困った時は泣き落としに限るわ)

 シオンはハーシブリィについてリファイスに話し始めた。

 話し終えた後、リファイスは想像以上の内容に困惑した表情をしていた。

「ホント・・・なの?・・・シオンが悪魔と一緒に暮らしてるって・・・」
「ああ・・・」
「ダメよ・・・早く魔界へ帰しなさい・・・」
「り、リファイス!あいつはお前が思うような悪魔じゃない――」
「一緒よ!!悪魔なんて皆一緒よ!!ハーフのシオンとはわけが違うのよ!!だいたい妹ってエンカーブレイスさまの血じゃないでしょ!!憎むべきブルータルの血じゃないの!?」

 シオンは意を決してその場で土下座した。
「・・・俺は・・・俺はあいつを助けたいんだよ!!俺しかあいつの側に居てやれないんだよ!!・・・頼む・・・頼む!!言わないでくれ!!皆には時期がきたら俺から話す!!」

 リファイスはシオンの土下座に驚愕したが、まだ決心がつかないようだった。
「・・・汚いわよ・・・天使階級がもらえたらその権限で認めさせようって魂胆なんでしょ・・・ユグドラシルとして恥ずかしくないの?」
「・・・恥ずかしいさ・・・だからお前にはこうして素で認めてもらいたい・・・天使とか悪魔とか関係なく・・・俺はあいつを幸せにしてあげたい・・・できることならお前の義理の妹にしたい・・・・・・・・・頼む・・・」

 リファイスは呆れたようにため息をつくと、シオンに手を差し伸べた。
「・・・そこまで言うなら仕方ないわね。だったら最期までやり遂げて見せて。私も義理の姉として協力してあげる」
「リファイス・・・」
「ただし!・・・私のこと愛してるわね?」
「も、勿論じゃないか!好きだーっ!」

 シオンはリファイスを押し倒した。

「ちょっと。こんな所で?私の部屋に行きましょ・・・新しい部屋よ」
「リファイスっ!」

 シオンはリファイスの首筋に舌を這わした。
「ちょっ、あふ・・・こ、こらぁっ!シオン~!や、やめ・・・んもうっ!」

 リファイスは観念してシオンの頭の後ろに手を回した。
「ねぇ・・・欲しいのはこっちでしょ?」
 そして口づけをした。

「ん・・・」
「ふあ・・・」

 お互いが手で身体を触りあい、長い口づけが続く・・・

 ようやく2人はキスを終えた。

「シオン・・・愛してるわ・・・」
「俺もだ。リファイス・・・」

 お互いに服を脱がせあう。
 そして2人は全裸になった。

 リファイスは床に座ると、脚を大きく広げた。
「・・・来て」
 そして指でおま○こを広げた。

 シオンはさっそくリファイスの股に顔をうずめ、おま○こに舌を這わせた。
 -ぬちゃっ-
 リファイスがぴくんと反応した。
 リファイスのおま○こがしっとりと湿り気を持ち始めた。

「し、シオン・・・上手くなった・・・んく・・・ど、どうして?」
「・・・ん・・・いっぱい練習した・・・」
「じ、じゃあ、その人と私・・・どっちがいい?」
「無論・・・リファイスだ・・・」

 シオンは指を入れた。そして膣を弄る。
 リファイスの身体が大きく震えた。
「ん・・・な、何?・・・」
「リファイスがオナニーばかりしていたから感度が上がったんだろう?リファイスの一番感じるところは覚えている・・・何年経っても、な・・・」
「ふふっ・・・ん・・・私がエッチになった・・・あん・・・とは、考えないのね・・・」

 シオンはそのままおま○こを弄りながら、リファイスの乳首を口に含んだ。
 舐める・・・吸う・・・転がす・・・甘噛み・・・
 的確にリファイスが感じるように攻めていく。

 リファイスはただ喘ぎ声を出すしかなかった。
「あっ、んんっ、はぁぁぁっ!」
 リファイスの腕がシオンの身体を強く締め付ける。

 リファイスの身体が跳ねた。
「も、もういいでしょっ!?はっ、はやくっ!いれてえぇっ!!」
「だな。もうおま○こもびしょびしょだ・・・じゃあ」

 シオンはリファイスの身体を横向きにした。
 そしてペニスをおま○こに挿入した。
「リファイスはこの体位が好きだろ!?」
「ああんっ!!すきぃぃっ!!」
「んで、奥まで一気に挿し込む!!」

 -ズンッ!-
「はああぁぁん!!」

「いくぞ!」

 -ぱんっぱんっぱんっぱんっ-
「んんっ!んっ!んあっ!!あぁっ!!しっ、しおっ、んっ!!」
「な、何だ?」
「すっ、すきっ!!すきぃぃっ!!すきなのぉぉっっ!!」
「もうイクのか?・・・俺も・・・愛してるぜっ!!」
「あんっ!あいっ、あいしっ!!あいしてるうううぅぅっっ!!!!」

 リファイスの身体がビクンビクンと痙攣する。
「はぁぁぁぁ・・・・・・」
 白目を剥き、そのまま失神した。身体が余韻に痙攣を続けている。

「リファイス・・・俺は必ず戻るからな・・・」

 シオンはリファイスと寄り添い合い、ひと時を楽しんでいた。

≪「Bパートよ♪」by明日香≫

 それからは相変わらずの日々が続き、高校2年生。

 この頃の明日香は、レオンを常に側につけ、クラスを支配していた。ただの支配ではない。逆らうものには制裁を、慕うものには褒賞を。そして牙を剥くものには絶対なる支配を・・・年頃の多感な時期と言うことも重なり、いわゆる『状況の力』というものに飲まれていたのである。

 ハーシブリィは一人で居る時はこっそりと魂を狩っていた。

 この日の放課後も、明日香は不良生徒に絡まれていた。
 そんな状況でも明日香は余裕の笑みすら浮かべて居る。
「貴女たち、私に逆らわない方がいいわよ」

「てめぇっ!!調子に乗ってんじゃねえよ!!」
 女子生徒が明日香の胸倉をつかむ。
 レオンはそんな様子をただじっと見ている。明日香の指示を待っているのだ。

 明日香は呟いた。
「・・・レオン。やっちゃって」
「・・・本当に良いんだな?」
「勿論よ。私の怖さを思い知らせてやるわ!」

 明日香の言葉を聞き、レオンは明日香の望むように女子生徒たちを支配した。

 その頃、魂狩りから帰って来たハーシブリィは部屋で・・・
「ふぅ・・・はぁ・・・」
 大きな鏡の前で全裸で座り込んでオナニーしていた。

「あ・・・そこ・・・感じる・・・兄貴・・・ダメ・・・」
 鏡に映る自分に興奮しながら悶えている。やはりナルシストなようだ。

 左手の親指を軽く噛みながら、右手で胸を激しく弄る。
「あ、激し・・・い、痛い・・・兄貴・・・」
 と、身体がぶるっと震えた。
「だ、だめだ・・・我慢・・・できないよぅ・・・兄貴・・・下も・・・」

 両脚を広げると、左手でクリトリスを擦った。
「あ・・・んん・・・くっ・・・あっ・・・」

 そして恥部に右指を入れてラストスパートに入った。指が1本2本と増え、3本入った。
「うあぁっ!ああっ!!もうっ!もうイクッ!イッちゃううっっ!!兄貴いいぃっ!!」
 身体が大きく仰け反り、腰を大きく突き出した。

「くっ!・・・・」
 声を殺して余韻に浸る。

「ふぁぁ・・・・・・あにきぃ・・・」
 最近、魂狩りをした後はレオンをおかずに自慰しているハーシブリィ。気持ちよさそうに床に寝転んでいる。

 しばらくして、ハーシブリィは頭を掻いた。
「~っ!・・・また、やっちまった。俺・・・ダメだ・・・最近治まりがつかない・・・なんでだよ・・・俺、兄貴のこと男として見てるつもりないのに・・・・・・・・・ダメだ。頭を冷やそう」
 ハーシブリィはシャワーを浴びに部屋の外に出た。

 シャワーを使おうと扉の前まで行くと、学校から帰って来たレオンが使っていた。

(あ、兄貴が入ってる・・・裸で・・・)
 ハーシブリィの背中にぞくぞくとしたものが駆け巡った。

-ドクンッ!-
「・・・あ・・・」
 ハーシブリィはレオンのシルエットに見入っていた。
-ドクンッ!!-
(な、何だろう・・・この気持ちは・・・胸が熱い・・・)
-ドクンッッ!!!-
(・・・どんどん強まってくる・・・あ、熱い・・・これ、さっきと比べ物にならない・・・な、なんだよこれは・・・抑えられない・・・俺・・・何かとんでもないことをやっちまう・・・)
 ハーシブリィの体温がどんどん上がっていく・・・悪魔は起伏が激しい、それは自分がよく分かっている・・・もう身体中が快感を欲してビリビリと震えていた。

 しばらく耐えていたが、ハーシブリィの手が扉に掛かった。
(う・・・う・・・と、止まらない・・・だ、ダメだ俺・・・それだけはダメだ!このまま離れろ!離れなきゃダメだ!)
 頭では思っているが、身体が言うことを聞かない。離れなければいけない。だが離れられない・・・

 気配を感じたレオンがシャワーを止め、中から声を掛けた。
「・・・ハーシィか。どうした?」

 シオンの声を聞いて、ハーシブリィの身体が動いた。
-ドクンッッ!!!-
(欲しいっ!)

 ハーシブリィは勢い良く扉を開き、レオンを押し倒した。
「!!?」

 シオンは突然の出来事に呆然としていた。
「お、おいっ!?一体どうしたんだ!ハーシィ!」
「・・・あ、兄貴・・・俺・・・身体が変なんだ・・・兄貴を見てると熱くって・・・頭がぼ~っとして・・・胸がドキドキして・・・変なことばかり考えちまう・・・」

 ハーシブリィは潤んだ瞳でレオンを見つめていた。半開きの口からは熱い吐息がレオンにかかる。浴室の熱気が更にハーシブリィの理性を消し去った。

「あ、兄貴ぃ・・・俺ぇ・・・自分が怖いよぉ・・・兄貴を俺だけのものにしたい・・・独り占めしたい・・・そんな考えが・・・止まらない・・・もう限界なんだっ!!」
 ハーシブリィは強引にレオンの唇を奪おうとした。レオンは必死で抵抗する。
「くっ!誰に何をされた!ハーシィ!」

 ハーシブリィは誘うような表情でレオンを押さえ込もうとしている。
「誰のせいでもない!これは俺の意思だ!」

「バカ!お前は俺の妹なんだぞ!」
「大丈夫だ。下界のように近親相姦の禁止というのは無い・・・」
「そういう意味じゃない!!俺はそんなつもりはない!」
「俺は女だ!そして兄貴は男だ・・・それだけだ・・・」
「・・・ハ、ハーシィ・・・」
「分かってる・・・兄貴は関わりのある者は抱きたくないんだろ・・・傷つけたくないから・・・でも・・・この身体は・・・俺の意思じゃ止まらない・・・」

 レオンの太ももに、ハーシブリィの愛液がとろとろと垂れた。
 そしてハーシブリィの硬く尖った乳首が擦れた。

「・・・触れてみろ」
 ハーシブリィがレオンの手を胸に当てる。その胸の中にある命の象徴は、レオンを求めて激しく鼓動していた。
「・・・」
 レオンは思わず手を引っ込めた。

「・・・身体がすごく熱いんだ・・・まるで身体中の血液が沸騰しているみたいで・・・苦しいんだよ・・・頭が狂いそうなんだよ!!兄貴が欲しい!!欲しいんだ!!これが欲しいんだよ!!」
 ハーシブリィは荒々しい形相で、レオンのペニスを握った。

「く・・・お、お前・・・もしかして悪魔の本性が・・・」

 ハーシブリィは辛うじて衝動を抑えていた。
「あ、悪魔が他人を好きになる最大の条件って何だか知ってるか?・・・強さだよ・・・俺、兄貴だから大丈夫だと思った・・・実際、大丈夫だった・・・でも・・・でも!・・・俺の中の悪魔が・・・兄貴を欲してる・・・それだけじゃない!俺は人間の魂を狩ってる!本当はやりたくないのに!!・・・悪魔が囁くと簡単に操られてしまう・・・俺、弱いよ・・・」

 ハーシブリィは震えながら、レオンのペニスに口を近づけた。
 レオンがどかせようとするが、ハーシブリィが全体重と全力でそれをさせなかった。
(く・・・ハーシブリィは他の悪魔と違い、消極的だった・・・だから抑えられていた悪魔の本性が、ハーシブリィの人格を蝕んでいるのか・・・)

 ハーシブリィは動きを止めると、泣きながらレオンに笑いかけた。
「俺・・・兄貴を好きなことには変わらないよ・・・俺自身も・・・兄貴とセックスしたい・・・」
「っ!!?は、ハーシィ・・・」
 レオンはその言葉にショックを受けた。
(いくらお前が俺を愛しても・・・俺はお前を妹としてしか見れないのに・・・それでもお前は・・・くそ・・・あんた史上最悪の悪魔だ・・・ブルータル・・・)

 ハーシブリィは口を大きく開け、レオンのペニスを咥え込んだ。
 お尻をせわしなく振りながら、ペニスを舌で愛撫する。
「はあ~~」
 ようやく手に入れた。そんな満足そうな顔をする。
「ん・・・んぅ・・・」
 尻尾で自身のアナルを愛撫している。

 ハーシブリィのザラザラとした長い舌、熱い口、熱気の篭った部屋、ハーシブリィの身体、そして幸せそうな表情。
 妹に犯されると言う考えもしなかった光景と雰囲気に、レオンは飲まれていった。

「んむぁ・・・あにきぃ・・・だしていいぞ・・・おれ・・・のむから」
 ハーシブリィの妖艶な笑みに、レオンも気分が高まっていった。

 -じゅぼっ、じゅぼっ、じゅぼっ-

「うっ・・・は、ハーシィ!出るっ!!」
 レオンのペニスから精液が放たれる。
 -ドクン!!ドクン!!ドクッ・・・-

 ハーシブリィは嬉しそうに軽々と飲み込んだ。
「ん・・・んぐ・・・・・・あはあ~。これだ。この味だ。身体が満たされる・・・」

「も、もう良いだろ・・・」
 レオンが起き上がろうとする。

 ハーシブリィはじっとレオンの顔を見つめる。
「・・・ダメだ。やっぱりこっちに欲しい・・・」
 レオンの制止を振り切って乗っかる。

 歯を食いしばってレオンのペニスを挿れる。
「・・・んっ!!うぐっ!!お、大きい・・・」
 初めて入れる男の・・・兄のペニス・・・
 破瓜の血が流れる。通常の人間より多くの血、だが、痛みよりも満足感を感じているようだった。
「ふうっ・・・入った・・・見ろ兄貴・・・俺のここが・・・兄貴を咥え込んでる・・・」

 ハーシブリィが腰を激しく動かす。
 レオンが激しさに顔をしかめるが、ハーシブリィは完全に自分の世界に入っている。
「うあああっ!!は、はらが!!こわれるっ!!か、からだがっ!!はじけるぅぅっっ!!あはあぁぁっ!!」
 ハーシブリィは大きな喘ぎ声を上げながら一層腰を激しく動かす。

「んあああぁぁぁっっ!!!!」
 大きく身体を反らしてオーガズムに達した。
 熱いスペルマがハーシブリィの胎内に入っていく。
「ああ・・・こ、これだ・・・これが・・・欲し・・・かった・・・兄貴と・・・1つに・・・」
 ハーシブリィはそのまま快感の中で眠りに落ちた。

 翌朝・・・
 ハーシブリィはレオンより先に目を覚ました。
「・・・中に入ってる・・・」
 お腹に手を当てて昨日の事を振り返る。
 レオンの寝顔をじっと見る。
「・・・どうしよう・・・俺、兄貴を・・・愛してしまった・・・」
 レオンの身体にそっと触れる。

 その日の朝食・・・
 ハーシブリィは昨日の事を気にしてレオンに話しかけた。
「な、なあ・・・昨日はその・・・自分でも何が何だか分からなくて・・・あれは・・・あの時は正気じゃなかった。俺じゃなかったんだ。ごめんな。もう衝動に流されないようにするから・・・」

 レオンはがたっと立ち上がった。そして拳に力を込めた。
-バキィッ-
「ぐあっ!?」
 ハーシブリィは思いっきり殴り飛ばされた。
 レオンは黙って外に出て行った。

「な、何するんだよ!!兄貴ぃっ!!!」
 ハーシブリィは訳が分からずに叫んだ。
「ち、ちくしょう!!そんなに怒る事無いだろ・・・俺だって好きでやったんじゃ・・・」

 美佳が立ち上がると、ハーシブリィの手を取った。
「・・・ハーシィ。ちょっと話があるわ。来て」
「な、何だよ!!」
 ハーシブリィは美佳に手をつかまれて美佳の部屋に連れ込まれた。

 美佳はハーシブリィをベッドに腰掛けさせると、諭すように話し始めた。
「・・・ハーシィ・・・妹を抱いた、いえ、抱いてしまったレオンの気持ちを考えてみて」
「だ、だからあれは・・・」
「本当にあなたじゃなかった?形はどうであれレオンはあなたとセックスしてしまった・・・あの後、レオンが私のところに相談に来たわ。それでね、貴女の記憶を消すことも考えた。でもそれでは何の解決もしないでしょ?・・・ただ、あの時の貴女が普通じゃなかったし、貴女の潜在意識に妊娠を望まないように植えつけておいたのよ・・・それなのに肝心のあなたはあれを全て嘘にしたがってる・・・逆ならどう?レオンが強引にあなたを抱いた。次の日に、あれは気の迷いだ、正気じゃなかったと言って謝ってきた」
「お、俺なら・・・・・・い、嫌かも・・・そんなの嫌だ!」
「でしょ。なら、貴女がすることはわかるわね?」
「ど、どうすれば良いんだ!?」

 美佳は手の甲でハーシブリィの胸をとんとんと叩いた。
「あなたのここがその答えを知ってるわ」
 美佳は手を振って食卓に戻った。

「あ、兄貴・・・」
 ハーシブリィはレオンを探しに外に飛び出した。

 明日香はじっとその様子を睨んでいた。そして心の中で不満を爆発させた。

――――――――――明日香目線――――――――――

 何かすっごくイライラする・・・
 ハーシィがレオンに強引に迫った?何で・・・あいつら兄妹じゃない・・・兄妹でそんな事・・・
 私が願ったからレオンはここに居るのよ・・・レオンは私のものなの!
 そうよ。私はレオンを神様から貰ったの。

 そして学校の教室・・・
 私の目の前に数人の女子生徒がひれ伏している。皆私の良き友達よ。

 今日も喧嘩を売られた。放課後に呼び出された。

「さあレオン、行くわよ!!」
 ・・・?・・・レオンが来ない・・・いつもなら・・・

 私はレオンが居るであろう廊下を覗いた。
 ハーシィがレオンに抱きついていた。

「兄貴ぃ・・・ごめん。俺は兄貴が大好きなんだ・・・あれも俺の気持ちなんだ・・・」
「・・・分かったから泣くな。痛かったか?俺も大人気なかった。悪かったな」
 レオンがハーシィの頬をさすっていた。

 とても間を割っていける状況じゃなかった・・・
 何だか悔しい。何でかな?・・・
 レオン。昔は・・・私を大事にしてくれたのに・・・

 レオンはハーシィとともに去っていってしまった。

 え?ちょっと・・・私は?あんた私を護るんでしょ?

 く・・・し、仕方ない・・・私だけで・・・行くしかない・・・

 私はボコボコにやられてしまったらしい・・・目を覚ました時、天使化したレオンが立っていた。ユグドラシル?だっけ?治っているはずの身体が軋む。

「・・・やられたのか。誰にやられた」
 そんなレオンの言葉に無性に腹が立った。

「れ・お・ん・・・わ、私を置いてどこに行ってたのよ!!」
「ん?」
「私の側に居なさいよ!!あんたのせいでこんなになっちゃったのよ!!」
 レオンはなんとも言えない表情で私を見ていた。いつもなら分かるのに・・・今は何を考えているのか・・・分からない。罪悪感?同情?それとも・・・嫌悪感?

「・・・ダメだな。こいつは・・・」
 ハーシィが蔑んだように呟いた。苛々は増すばかりだ。
「あんたもあんたよ!!あんた何様なの!?あそこは私のうちなの!!そしてレオンは私のものなの!!あんたは何なのよ!!いったい何なのよぉっ!!」

 ハーシィの哀れむような視線が突き刺さる。私の精神は簡単に崩壊した。
「うあああっっ!!!もうレオンなんか大っ嫌い!!思い通りにならないあんたなんか!!要らないわよ!!出てって!!消えちゃえばいいのよっ!!」

「・・・行くぞ。ハーシィ・・・」
 そう言い残したレオンはハーシィとともに空へと飛んでいった。
 私は一人残されていた。

 私は沈んだ気持ちで家に帰った。
 母さんが仕事から帰っていた。
「あ、明日香!!どうしたのよ!こんなに服が汚れて・・・これ、血の痕じゃないの?」
 母さん。あんたも悪いんだからね・・・いっつもレオンとエロエロして・・・

 私は部屋に閉じこもった。

 しばらくして気分が落ち着いてきた。落ち着いたら疑問が沸き起こった。

 あれ?もしかして・・・
 私、『要らない』って言っちゃった・・・
 私、『要らない』って思っちゃった?・・・
 そう言えばこれって・・・レオンが帰るための条件?・・・
 任務失敗の・・・

 レオン・・・帰っちゃったの?
 ま、まさかねぇ・・・弾みで言っちゃっただけだし。お、思ってない、よね・・・ホントに要らないなんて・・・

 気分転換をするため、私は1人でお風呂に浸かった。
「ふう。あんな奴居ない方がせいせいするんだから!!」
 私はレオンとの出会いを思い返していた・・・

 いろいろあったな~・・・本当に。小さい頃から長い間一緒に居たもんね。
 そうそう。小学校の修学旅行のときはちょっとエッチな夢を見ちゃったっけ・・・レオンとエッチする夢。

 レオン・・・
 いつも一緒に居たレオン・・・
 ずっと一緒だと思ってたレオン・・・
 よく考えたら・・・
 私・・・
 レオンがいないとダメなんだ・・・

「うぐっ・・・れ、レオン・・・帰ってきてよぉ・・・」
 涙がお風呂の湯に混ざってく・・・
 そうだよ・・・私の力じゃない・・・レオンの力なのに・・・
レオンにだって人生があるのに・・・リファイスって女性を愛してるのに・・・
 私・・・レオンが居るのが当たり前だと思ってた・・・

 結局その夜、私は眠れなかった・・・

 翌朝・・・
 学校に行った私は驚いた。
 昨日の女子生徒が私に謝りに来た。ありえない・・・何で?
 こ、これは・・・レオン?まだ近くに居るかも!!
「レオン!!どこに居るの?」

「何だ?」
 レオンが居た。側にはハーシィが居た。良かった!終わったんじゃないんだ!

 聞くと、昨日の夜はハーシブリィがレオンを誘ったらしい。珍しく自分のお小遣いで。結局レオンが元手なんだけど。子供が親にプレゼントするような感じかな。
 そのことで私に許可を貰おうとしたら、私が気絶していたってわけ。
 私が出て行けって言ったから、一人になりたいのかと思ったそうだ。

「!!そ、そんなの・・・嘘に決まってるじゃない・・・私はレオンと一緒に居たいの!!」
 私はハーシィをレオンから引き離そうとする。

「な、何をする!!やめろ!!うわっ!!」
 ハーシィが転んだ。
 私はその間にレオンにキスをした。
 ようやく気づいたことがある。
 私、レオンが好き。
 そして・・・きっとレオンに恋してる!

――――――――――――――――――――

 ハーシブリィはその様子を見て、呟いた。
「く、くそ・・・明日香・・・許さねえ・・・」
 ハーシブリィを激しい嫉妬が襲う。

「そりゃあリファイスは仕方ないさ。婚約してるし・・・それに手を出さない約束もした・・・だけど・・・お前は何なんだ・・・お前が何で兄貴に手を出すんだ!!ただの願い主だろ!?何で恋愛感情を持つんだよ!!兄貴は天界に帰るんだぞ!?俺から兄貴を取るなあっっ!!!!うああぁぁっっ!!」

 驚くことに、ハーシブリィの身体は悪魔の力の解放を始めた。
 レオンが慌てて明日香を引き剥がし、止めに入る。
「ハーシィ!!それは悪魔の!!」
「がああぁぁっ!!!」
 既にハーシブリィの意識は消えかかっていた。

「ハーシィ!!俺が分からないのか!?」
「ぐああぁぁぁっ!!」
 ハーシブリィは頭をぶんぶんと振った。

 レオンは仕方なく身構えた。
「・・・いいだろう。俺がお前を止めてやる・・・明日香を殺したければ俺を越えて行け・・・(こりゃあ本気でやらないと殺されそうだな・・・)」

 レオンはハーシブリィを捕まえると、校庭に移動した。
「さあ来い!お前は俺が止めてやる!気にするな、いつもの喧嘩だと思え!」
 ハーシブリィはレオンに殴りかかった。

 レオンはハーシブリィと本気で殴りあった。
 ・・・・・・・・・・

 その喧嘩を心配して見ていた明日香。

 ハーシブリィが先に力尽きて倒れた。解放状態からもとに戻ったのを確認すると、レオンは天使化し、ユグドラシルの力でハーシブリィの傷を癒した。

 駆け寄った明日香に、レオンはハーシブリィを抱きかかえながら言った。
「悪いな。明日香・・・こんなんでも俺の大事な妹なんだ・・・我慢してくれるか?」
「うん・・・ごめんね。レオン・・・今まで一回も言ったことがなかったけど・・・ありがと」
「気にするな。俺は付き人だからな」

 今日の明日香は、レオンの後ろを歩いていた。

< つづく >

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