(注:本作品は2007/4に近親相姦研究所に掲載されたものです)
カッチン。コッチン。カッチン。コッチン。カッチン。コッチン。
どこからか規則正しくリズムを刻む音がする。
時計より少しゆったりとした、眠気を誘うテンポ。
姫宮 聖美(ひめみや きよみ)は、ぼんやりと思った。
(あれは……なんて言ったかしら……? 確か、メトロ――)
「ねぇ、ママ。子猫って可愛いよねぇ」
「え?」
不意の呼びかけに声の方向を向くと、すぐ隣に座っている一人息子の雅人(まさと)と目が合う。
「あ……マー君」
聖美はふわりと優しく微笑む。
小作りの顔に整った鼻筋。長い睫毛にクッキリとした二重の大きな目。ゆるやかにウェーブした漆黒のセミロングの髮が白い肌に映え、まるで人形のように美しい。
今年三十*歳の美母は、今でも二十代前半にしか見えない、可憐で初々しい美貌を保っていた。
(ああ、そっか。私、ソファーに座ってたんだっけ。あれ? いつからかしら? そろそろお洗濯物を畳まないと――)
「やだなぁ、ぼーっとして」
くすくすと雅人が笑う。よく少女と見間違われる美少年の端正な横顔は母親譲りだ。
*学二年ともなると、ずいぶんしっかりしてきた気がする。日頃、サッカー部で鍛えられているせいか、細身の体は精悍に引き締まり、エネルギーがみなぎっている。
背丈もいつのまにか小柄な自分と並んでいた。もう「お子様」では無い。そばに寄るだけでなんだか青臭い熱気に当てられるような気が――
「僕の質問、聞こえなかった?」
「……え、ええ。ごめんなさい、マー君。何だったかしら?」
霞がかかったように、ぼんやりと頭が重い。だが決してイヤな気分では無い。
むしろ、あたたかなお湯に浸かっているような心地よい気怠さが全身を包んでいる。
このまま、いつまでも陶然と惚けていたいような――
「子猫って可愛いよねぇ、って言ったの。聞こえた?」
「ええ……ちゃんと聞こえて……いるわ」
まるで寝入る寸前のように、集中力を保つのがひどく難しい。
思いはすぐ脇道に逸れ、また、ぼんやりとした表情が聖美の顔に浮かぶ。
(……ああ。このお香もなんて名前だったかしら。いい香り。マー君が先輩からもらってきたのよね。*学生でお香なんて、ほんと渋いセンス。だけどマー君、ずいぶん気に入っちゃって、このところ毎日――)
カッチン。コッチン。カッチン。コッチン。カッチン。コッチン。
単調なリズムと、えも言われぬ芳香が聖美の思考を白く塗りつぶしていく。
「僕、子猫って大好きだな。ママは?」
微笑みながら問いかける雅人の表情は明るい。たわいもない母と子の会話。
だが、なぜだろう? 聖美の心の奥底で何かが小さく警鐘を鳴らす。
(ああ。答えてはいけない。いけないわ。そうよ、今ならまだ……)
しかし、胸中の思いとは裏腹に聖美はなめらかに答を返す。
「ええ、ママもネコちゃん大好きよ」
「やっぱり! じゃ、子犬も好き?」
幼い子供のように無邪気な問いかけ――だが、その目には異様な熱気と狂おしいほどの期待が浮かんでいないだろうか?
「ええ。ワンちゃんも大好き。だって……可愛いんですもの」
「そうだよね。動物の赤ん坊ってみんな可愛いよねぇ。ママはどんな動物の赤ちゃんでも大好きなの?」
「ええ、ママはどんな動物の赤ちゃんも大好きよ」
「ふぅん。それじゃあ……ママは人間の赤ちゃんも好き?」
どくん。
心臓が大きく脈打つ。
(ダメよ。答えちゃいけない。いけないの。だって、だっ……)
「ええ、もちろん。ママは赤ちゃん大好きよ」
(……ああ!)
ためらうヒマもなく、言葉がスルリと唇をすり抜ける。
そう。そこに嘘は無い。自分は子犬も子猫も好きだ。だが――
「そうかぁ。ママは【赤ちゃん】が【大好き】なんだね?」
「ええ。ママは、赤ちゃん……大好きよ」
(ああ。答えてる。どうしよう。私、また……)
「ママは【赤ちゃん】が【すごくすごく好きでたまらない】んだ。そうでしょう?」
「ええ、そうよ。ママは赤ちゃんが、すごく……すごく好きで……たまらない、わ」
幾重にも反復される質問に答えを返すうちに、だんだん意識が遠のき、ゆうらりと目の前の景色が揺れ始める。
周囲の物音が次第に遠ざかる中、なぜか雅人の声だけがはっきりと耳に響く。
海の底に沈んでいくような深い陶酔感が聖美の体と心を支配し始めていた。
「そうなんだ。じゃあ、ママは【赤ちゃんのどんなところが好き】なの?」
「え? ……あっ!」
急に、ぽん、と何かを手渡され、聖美はハッと目を見開いた。
渡されたものは軽さの割に意外と大きく、片手では持ち切れない。
聖美は『それ』を落とさぬよう、反射的にしっかり両手で抱きかかえた。
どくんっ!
手の中にある『それ』を認識した瞬間、聖美の中でなにかが弾けた。
「……あ。ああぁ」
「さぁ、僕に教えてよ。ママは【赤ちゃんのどんなところが好き】なんだっけ?」
罠にかかった哀れな獲物を見下ろす猟師のように、薄く微笑みながら、嗜虐の期待と興奮に満ちた声で雅人が囁く。
「あ……赤……ちゃん。赤ちゃん」
手渡されたミルク飲み人形を見つめ、聖美はわななく唇で繰り返す。
胸の奥底から激しく湧き上がる、せつなさと愛おしさにただただ圧倒されていた。
「赤ちゃん!」
(違うっ! 違うわ! それはただの人形なのっ!)
聖美の心の片隅の叫びは、全身を貫く激しい歓喜のうねりの前ではあまりに小さく無力だった。かろうじて残っていたかすかな理性も原初の雌の本能にたやすく呑み込まれてしまう。
「ああ……可愛い……可愛い、赤ちゃん」
そっと抱きしめると、人形はほのかなミルクの匂いがした。
満ち足りた幸福の香り。優しく頬をすり寄せる聖美の目に知らず知らず涙が浮かぶ。
「柔らかくて、お日様みたいないい匂いがして……小さなおてても、小さなあんよも、まあるいほっぺも、みぃんな、ぷくぷくしてて……私が笑うとニッコリ笑い返してくれるの」
「うんうん。それで?」
「おなかが空くと赤ちゃん、泣いて私を呼ぶの。『ママ、おなかが空いたよ!』って。私……私ね、赤ちゃんにおっぱいをあげているとすごくすごく幸せな気持ちになるの」
「ふぅん、そっか。じゃあ、【その子にもおっぱいあげなきゃいけない】ね」
カチリ。
小さなスイッチ音と共に聖美の腕の中の人形がむずかるように動き出す。
ほぎゃあ! ほぎゃあ! ほぎゃあ!
「あ! ああ、泣かないで! 分かったわ! すぐおっぱいあげるわ!」
慌てて乳房を与えようとして、ふと気付く。
「……え? 私……ハダカ?」
聖美は自分が全裸でソファーに座っている事をそこで初めて意識した。
一糸まとわぬ、つややかな裸身が午後の日差しを受け、なまめかしく輝いている。
少女のように可憐で清楚な外見には似合わぬ豊かな乳房がクッションとして人形を受け止め、きゅっとくびれたウェストが、これもまた芸術品のようにまろみを帯びた豊かな尻の曲線につながっている。
すらりと伸びた両足は、つつましく閉ざされ、合わせ目からほんのかすかに漆黒のヘアを覗かせている。
おとぎ話の人魚のように、聖美は何一つさえぎるもの無く美しい裸身をさらけ出し、居間のソファーに座っていた。
「え? どうして? 私、どうして……」
だが、羞恥の意識が働く前に、鋭く雅人の叱責が飛ぶ。
「ママ、赤ちゃん!」
ほぎゃあ! ほぎゃあ! ほぎゃあ!
「あ! ああっ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
慌てて人形の口元に桜色の乳首を寄せると、ミルク飲み人形はすっぽりと聖美の乳首を口に含み、内蔵されたポンプの力で力強く吸い付く。
チュク。
「ぁうっ……」
瞬間、ゾクゾクしたものが背筋を走り、思わず聖美はあえぎ声を洩らして小さく身震いした。
チュク。チュク。チュク。チュク。
「……ふふ。おっぱい、たくさんたくさん飲んで、大きくなってね」
胸の小さな疼きが、聖美の心に幸せの記憶を呼び覚ます。
とろけるような微笑みを浮かべる聖美の耳許に雅人が囁く。
「ねぇ、ママ。【今日は暑かった】よね?」
「え……?」
(そうだったかしら?)
「【暑くて暑くてたまらなかった】よね。そうでしょう?」
「……え、ええ。そうね。今日は、暑くて……暑くて……」
「でも、【クーラーは壊れてる】んだ」
(ああ。そういえば、そうだったわ。クーラーは使えないのね)
「【暑くて暑くてたまらない】、なのに【クーラーは壊れてる】。だから、ほら、【マー君、一緒に脱いじゃおう!】って、ママが自分から言い出したんじゃない」
「ああ。そう……だったわね」
言われてみると、そんな気もしてくる。
(そうよ。たまらなく暑かったのよ。今日は――)
「ねぇ、ママ。お風呂に入る時や、着替えの時はいつも裸になってるでしょ? 外で裸になるのはおかしな事だけど【家の中で裸になるのは別におかしな事じゃない】よ。そうでしょう?」
小さな子供に諭すように、ゆっくりと雅人が囁く。
その口元に浮かぶ歪んだ笑みに聖美は気付かない。
「ええ……そうね。家の中なら……おかしな事じゃ……ないわ」
(そう。裸でもちっともおかしくないわ。だって……だって暑かったんですもの)
「ああ、そうそう! ついでに【ここをお風呂場だと思えばいい】んだよ。ほら、僕もママも裸だけど、それなら全然おかしくないでしょ? 僕とママは【一緒に赤ちゃんをお風呂に入れている】んだよ」
「ああ……そうなのね。マー君もママと一緒に赤ちゃんをお風呂に入れてるのね。それなら、ちっともおかしく……ないわ」
マー君も――ハダカ?
何かがチリッと頭の隅をかすめる。
だが、小さな音を立てて乳首を吸う人形に心奪われ、至福の笑みを浮かべ続ける聖美の意識に、もはや疑念が浮かびあがる事はなかった。
■■■■
チュク。チュク。チュク。チュク。
飽く事を知らぬ人形は単調な音を立て、ただ黙々と口もとを動かし続ける。
雅人は全裸でミルク飲み人形に乳房を与え続ける美母に優しく語りかけた。
「ねぇ、ママ。【赤ちゃんて、とっても可愛い】ねぇ」
「ええ……とっても可愛いわ」
「ママは今、【すごく幸せ】?」
「ええ。すごくすごく幸せよ」
「そっか。じゃあ、ママは【赤ちゃんといる時が一番幸せ】なんだね?」
「ええ。そうよ。ママは赤ちゃんといる時が一番幸せなの」
オウム返しに雅人の問いに答える度に、全身を包む幸福感が増していく。
腕の中の小さな重みと、吸い付かれる胸の疼きが、いまや世界中の何よりも大切に思える。
「ふぅん。そうか、一番幸せなんだ。それは良かったねえ、ママ。――【紫の常闇】」
……え?
一瞬、貧血を起こしたように目の前がスッと暗くなり、聖美は目をしばたいた。
「ねぇ、マー君、今の……停電?」
不思議そうにあたりを見渡した聖美は、不意に悲鳴を上げた。
「……ああっ! 赤ちゃん! 赤ちゃんはどこっ?!」
腕の中に大事に抱えていた人形が忽然と姿を消していた。
激しい焦躁感とパニックが聖美の胸に押し寄せる。
「赤ちゃん! 私の赤ちゃんっ!」
「ママ、落ち着いて。――【深く穏やかな泥の海】」
慌てて立ち上がろうとする聖美の肩をそっと押さえ、雅人が囁く。
「……あ」
全身を虚脱感に襲われた聖美は、上げかけていた腰をストンとソファーに落とす。
続いて素早く聖美の額に人差し指を当てた雅人は、小さいがはっきりとした声で告げる。
「【過ぎゆく日々のあかし】は【五つ】」
途端にトロンと目の光を失った聖美が、さきほどまでとは打って変わったあどけない口調で話し始める。
「あのねぇ。マーくん、あかちゃんが――」
「聞いて、ママ。【あの子はママの赤ちゃんじゃない】んだよ」
「え? そう……なの?」
「うん。【他のお家の赤ちゃん】なんだ」
「ほかの……おうち?」
「そうだよ。【他のお家の赤ちゃん】だから、【自分のお家に帰らなきゃいけない】――分かるよね?」
「うん……わかる。そっか、あのコはわたしのあかちゃんじゃなかったのね」
パニックと焦躁感が消えると、一転して言いようのないほどの喪失感とやるせなさが聖美の胸を締めつけ始めた。
「わたしのあかちゃんじゃ……ないんだ」
じんわりと風景がにじむ。
うつむいたままポロポロと涙をこぼしはじめた聖美を、そっと抱き寄せた雅人は、あやすように美母の髮を優しく撫でてやる。
だが、行動とは裏腹に、その目は淫らな妄念にギラギラと血走っている。
やがて、つとめて何気ない風を装い、雅人は尋ねはじめた。
「ね、ねぇ……ママ。【赤ちゃんがいないと寂しい】ねぇ?」
「……」
無言のまま、コクリと聖美がうなずく。
「【赤ちゃんが好きで好きでたまらない】ママは、今、【赤ちゃんがいなくてすごくすごく寂しい】んだよね? やっぱり【赤ちゃんに一緒にいて欲しい】?」
「……うん。ママね、すごくさびしいの。あかちゃんにいてほしい」
「だけど、ママ。【他のお家の赤ちゃんはずっと一緒にはいられない】よ。それは分かるよね?」
「……うん。わかる。あかちゃん、おうちにかえっちゃうのね」
聖美は、今にも泣き崩れそうになるのを必死に堪えながらうなずく。
「でも、ママは【やっぱり、どうしても赤ちゃんと一緒にいたい】んだよね? そうなんでしょ?」
「……うん」
「それじゃあ……僕がとっておきの【簡単な解決方法】を教えてあげようか?」
「えっ!? ほんと!? おねがい! おしえて、マーくん! どうすればいいの?」
幼い子供のように全神経を集中し、聖美は真剣に待ち受ける。
その吸い込まれそうなほど美しい瞳に、雅人は思わず一瞬たじろぐ。
ゴクリ。
喉を鳴らしてツバを呑み込むと、押さえ切れない興奮に声を掠れさせながら、雅人は最も重要なキーワードを切り出す。
「それはね――【ママが・赤ちゃんを・産むんだ】」
「ああっ!」
途端に聖美は勢い良く立ち上がり、雅人をギュっと抱きしめる。
「スゴいっ! スゴいスゴい! マーくん、アタマいいっ!」
「わぶっ!」
豊かな胸のふくらみに顔を埋め、甘い体臭に包まれて、雅人は目を白黒する。
「そうよ! わたしがうめばいいのよっ! あはっ! カンタンカンタン!」
溢れんばかりの歓喜に身を震わせる全裸の母に慌てて雅人が叫ぶ。
「……ま、待ってママ! でも、それには【問題がある】んだ!」
「え? もんだい?」
きょとんとした顔で見つめる聖美を再びソファーに座らせ、雅人は慎重さを取り戻した声で、ゆっくり刻み込むように話し始める。
「ねぇ、ママ。【パパはいつも帰りが遅い】ね」
「……うん。おそいね」
「【パパは仕事が大好き】なんだ。それはママも知ってるよね?」
「うん。パパはむかしっから『おシゴトだいすきニンゲンさん』なの」
「一日のうちでパパの『仕事の時間』と『僕達と一緒にいる時間』じゃ、どっちが多いのかな?」
「えと……おしごとのじかん?」
「そうだね。つまり、【パパは僕達より仕事が好き】なんだ。分かる?」
「あ……うん。パパはわたしたちといっしょにいるより『おシゴト』してたいのね」
「そうだよ。【パパは何よりも仕事の時間が大事】なんだ。だから【パパはもうママのためには時間を作ってくれない】んだ。それは分かる?」
「うん……わかる」
聖美はあどけない表情でコクリとうなずく。
「だからね。【パパはもうママがどんなに頼んでも一緒に赤ちゃんを作ってくれない】んだよ」
「え? そうなのっ!?」
「そうなんだ。残念だけど、【パパは何よりも仕事のための時間が大事な人】だから、もう、【ママと赤ちゃんを作る時間は無い】んだよ」
「えぇ! そんなのヒドいっ! ママ、どうしてもあかちゃんがほしいのに……」
再び意気消沈する聖美に、逸る心を押さえ付けつつ雅人が尋ねる。
「……ねぇ、ママは【どうしても赤ちゃんが産みたい】の?」
「うん! ママ、ぜったいにあかちゃんうむのっ!」
「ふぅん。何人くらい?」
「え? えと……いっぱい! かわいいあかちゃん、たくさんたくさんうみたい!」
「なるほどなるほど。【ママは可愛い赤ちゃんを何人も何人も産みたい】のか……よし! それじゃあ、【そのためにママがどうすればいいか】を僕が一緒に考えてあげよう」
「うんっ!」
勢いよくうなずいた聖美に、雅人はとぼけた表情でわざとらしく問いかける。
「あ……だけど、せっかく僕が考えてあげても【ママはちゃんとその通りに出来る】のかなぁ?」
「できるよ! だいじょうぶっ!」
「【何でも絶対に僕の言う通りにする】って約束出来る? 約束出来ないなら……」
「やくそくするっ! ママ、なんでもぜったいマーくんのいうとおりにするよっ!」
「そう。……【約束だよ、ママ】」
キラキラと透き通った無垢な目で自分を見つめる母に、雅人は歪んだ笑みを返す。
――かくして全ての準備は整い、少年の禁じられた『妄執』が現実を侵食し始める。
■■■■
「さて。それじゃ、さっそく質問だよ。僕はオトコでよく分からないから、きちんと答えてね。【赤ちゃんを作るのに女の人はまず何をすればいい】のかな?」
親しげに聖美の裸の肩を抱いた雅人はさらりと問いかける。
「……え?」
「教えて、ママ。【赤ちゃんを作るのに女の人は何をしなくちゃいけない】の?」
「えと――それは……そのぅ」
「ほら、ちゃんと答えてくれないと【可愛い赤ちゃんを作れない】よ。さぁ、早く!」
「……せ、せっくす?」
頬を赤らめ、目をそらし、蚊の鳴くような小さな声で告げる。
「ん? 聞こえないなぁ? キチンと大きな声で言ってよ、ママ」
「ああ! もう! マーくんのいじわるっ! 『せっくす』するのっ!」
「へぇ。そうなんだ。でも、【セックス】って【具体的には何をするの】?」
「え? そ、それは……そのぅ」
口ごもる母に先回りして答えを告げる。
「確か、【女の人のお○んこに男の人がお○んちんを入れて精液を出す】んだよね?」
「おま……」
頬を真っ赤にしたまま、うつむく聖美に、さらに畳み掛けるように雅人は質問を重ねる。
「ねぇ、ママ。確認したいんだけど、【女の人が赤ちゃんを産む】には、必ず【セックスしなきゃいけない】んだよね? 【セックスしないと赤ちゃんは出来ない】――そうなんでしょ?」
「……うん」
「じゃあ、【ママが可愛い赤ちゃんをたくさんたくさん産む】には【ママのお○んこにお○んちんを入れて、中にたくさんたくさん精液を出してもらわなきゃいけない】――そういう事だよねぇ?」
「……し、しらないっ!」
プイと顔をそむける聖美に、雅人は笑いを堪えながら、質問を変える。
「ごめんごめん。じゃ、違う質問。【赤ちゃんが欲しくて欲しくてしょうがない人がセックスをする】のはいけない事?」
「えっ? ううん。それは……ちっともいけなくないよ」
「【セックスするのは気持ち良い】事?」
「えっ!? えと……それは……」
「ちゃんと正直に答えて、ママ。【セックスするのはすごくすごく気持ち良い】事――そうなんでしょ?」
「う……うん」
「それじゃあ、【赤ちゃんが欲しくて欲しくてしょうがない人】は【すごくすごく気持ちの良い事をしたがってる人】で、だけどそれは【ちっともいけない事じゃない】――そういう事になるよね?」
「えと……えと……」
「ゆっくり考えていいからね、ママ」
しばし黙って指を折りながら真剣に考えていた聖美は、やがて小さくうなずいた。
「うん……そう」
「ふぅん。それじゃあ……」
満面の笑みを浮かべた雅人は、ゆっくりと『言葉の罠』を閉じていく。
「【赤ちゃんが欲しくて欲しくてしょうがないママ】は【すごくすごく気持ちの良い事をしたがってる】んだね? そうなるよね?」
「――え?」
「でも、それは【ちっともいけない事じゃない】……そうだよねぇ? だって【すごくすごく気持ちの良い事をする】のは【赤ちゃんを産むのにどうしても必要な事】なんだもの――そうでしょ、ママ? 違う?」
「……う、うん」
じわじわと空気が変わって行くのを敏感に感じとった聖美は、少し怯えた目で雅人を見つめる。
「じゃあ――」
聖美の肩を抱いていた雅人の手がいつのまにか位置を変え、脇の下からそっと乳房を包みこむ。伸ばした中指が優しく乳首をさすり始める。
「ひっ!? ま、マーくんっ?!」
「【ママが・可愛い赤ちゃんを・たくさん・たくさん・産む】ためには、【すごく・すごく・気持ちの良い事を・たくさん・たくさん・しなくちゃいけない】……ね?」
「え? そ、そうなの……かな? あっ!」
今度は反対の手が聖美のすべすべとした太股を優しく撫でまわし始める。
「だけど、それは【ちっともいけない事じゃない】――つまり【いい事】なんだよ。だって、ママは自分から【可愛い赤ちゃん、たくさんたくさん産みたい!】って言ってるんだもの」
「えーと……えーと……」
混乱し、泣きそうな表情の美母を雅人はじわじわと追い詰める。
「これは【気持ち良い】事?」
首筋をペロリとなめる。
「ひうっ! う……うん」
「【いい事】? 【いけない事】? どっち?」
「い……いい……こと?」
「そうだよ。【気持ち良い事】は【いい事】なんだ」
「う、うん。……あっ!」
クチュリ。
太股をなでていた息子の指が、ついに秘められた禁忌の花弁に触れる。
「ま、マーくん!? ……ダメっ!」
ビクンと体を硬直させた聖美は、思わず雅人の手を押し留め、イヤイヤと小さく首を振り、懇願するように上目使いで雅人を見つめる。
「ママ……【約束だよ】。僕に任せて」
「あ、う……ううぅぅ。……うん」
にっこりと優しく微笑みかけられ、聖美はしぶしぶ手を放す。
「そうそう。いいコだね」
雅人はポンポンと軽く聖美の頭をなでると、のしかかるように体勢を整える。
「じゃ、いくよ、ママ。声を上げるの我慢しちゃダメだからね。それと手で邪魔するのもナシ。いいね? これは【いい事】で【必要な事】なんだから」
そう言って雅人は本格的に『いい事』にとりかかる。
■■■■
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
聖美の朱唇から、熱い吐息が洩れる。
「ほらほら、我慢しちゃいけないよ、ママ。ママがちゃんと気持ち良くなってくれなきゃ、全然意味が無いんだからね」
内心の興奮を押し隠し、雅人はあくまでもソフトに丁寧に、じらすようにゆっくりと指先を這わせ続ける。
「う……んうぅ……」
抵抗を諦め、目をつぶり身を硬くしていた聖美の頬が次第に上気し始める。
「さぁ、それじゃ、もう一度聞くよ。【ママはどうしても赤ちゃんを産みたい】んだよね?」
「――う、うん。……ん! んんっ!」
耳たぶを甘噛みされ、耳の穴に舌をねじ込まれ、聖美の全身がゾクゾクと震える。
「【たくさんたくさん可愛い赤ちゃんを産みたい】――そうだね?」
「はうぅぅ……あ! やあんっ!」
チュポっと音を立てて、乳首が吸われる。
「ほらほら、ちゃんと答えて。そのためには【たくさんたくさんセックスしないといけない】――そうだよね?」
「そ、そうです! あ! あんっ!」
たっぷりと唾液をまぶされた乳首がヌルヌルコリコリと弄ばれる。
「つまり、ママは【たくさんたくさん気持ち良い事しないといけない】んだよ。分かってるね?」
雅人の中指がトン、トン、と軽く、敏感なピンクの肉の芽をノックする。
「わか……あっ! んっ! あうぅ!」
十*歳の少年とは到底思えない老練したテクニックで、雅人は美しい母の裸身に官能の焔をかき立て、まるで楽器を演奏するかのように、あえぎ声を『奏で』てみせる。
「ふふ。やっぱりママは優秀だね。今日もすぐに【気持ち良い】事を覚えちゃった」
聖美の腕が持ち上げられ、脇の下に雅人の鼻先が寄せられる。
「ああ、いい匂い。ママの匂いだ――」
「いやいや、かいじゃダメ! あっ! ひああっ!」
丁寧に手入れされた脇の下を、ベロベロと舌が襲う。
「【気持ち良い】のは【いけない事】?」
「い、いいこと! いいことですっ! きゃううっ!」
聖美は無意識のうちにクイクイと腰や胸をくねらせては、雅人の指先に自分が一番感じる場所を押しつける。
最初こそ、とまどいを見せたものの、もはや嫌がってなどいない。
むしろ、雅人に甘えるように自ら積極的に身を委ね始めている。
つつましく閉ざされていた両足は、知らぬ間に大きく開かれ、濡れそぼつ熱い秘裂から漂う、熟れたオンナの香りが雅人の鼻腔を刺激する。
すでに「する/される」という一方的な関係ではなく、二人は立派な『快楽の共犯者』だった。
「でもねぇ、ママ。【気持ち良い事】にも、ひとつだけルールがあるんだよ」
「え? き、きもちい……あぅ! いいコトの、るーる……?」
全身の快楽のツボを狙い打ちされ、骨抜きにされた聖美はもはや目を開ける事さえままならない。
「そう。簡単だよ。【お互いに愛し合ってる同士】なら【気持ちいい】のは【いい事】なんだ」
「あ、あいしあってる……なら……いいこと? あんっ!」
「そうだよ。例えば、【ママは僕が好き】……そうだよね?」
「う、うん。ま、ママはマーくんのこと、だいすきっ!!」
「【ママは僕を愛してる?】」
「うん! ママは……ママはマーくんのこと、あいしてる……ああんっ!」
「【僕もママを愛してる】よ。すごくすごく愛してる。パパよりも誰よりも――世界中で一番ママを愛してるんだ」
万感の思いを込め、母の耳もとに愛の告白を囁く。
美母を淫蕩の罠に陥れた魔技の持主も、この時ばかりは純真な少年そのものだった。
「い、いっしょ! ママも、いっしょなの! ママもせかいじゅうで、いちばんマーくんのこと、あ、あいしてるっ!」
「【パパよりも?】」
「うん! パ、パパより、マーくんがすき! いちばん、あいしてるっ!」
「ああ。嬉しいよ、ママ! 僕達は【世界中で一番愛し合ってるんだね?】」
「うん! マーくんとママは、いちばんあいしあっ……あっ! あっ! ああっ!」
次第に大胆さを増す雅人の指先の動き一つ一つに、聖美はビクビクと敏感に反応を示す。もはや抗いなど一切無い。聖美はソファーの背に大きくのけぞり、白く大きな乳房を重たげにふるふると揺らし、両足をしどけなく広げ、何の遠慮も無く全身で快楽を貪る。
「ママ、気持ちいいのっ? ほら! ここも、ほらっ!」
「あー! マーくん! いいの! いいっ! あっ! あーーーーーーーっ!」
おだやかな昼下り。姫宮家の居間には、欲情したオスとメスの淫靡で濃厚な匂いが立ちこめる。
■■■■
「――ん? あ……え?」
雅人の与える快楽にすっかり身を委ね、目を閉じ、忘我の表情を浮かべていた聖美は、ふと、肌寒さを感じて我に返る。
気付くと息子は指を止め、しげしげと面白げに聖美の反応を観察していた。
「こ、コラぁ!」
途端に、かあっと頬を染めた聖美は両手で胸を隠し、慌てて足を閉じる。
「うーーーっ! もぉっ! ばかばかばかっ!」
気恥ずかしさをごまかす為に、聖美は怒ってみせるしかなかった。
「ふふ。【いい事】は気にいったみたいだね、ママ?」
「し、しらない! ママ、ぜんぜん『きもちよく』なんかなかったもん!」
「あは。可愛いなぁ。……ねぇ、ママ。【気持ち良い事】は【いい事】――それじゃ、【いけない事】ってどんな事だろうね?」
「え? いけない……こと?」
「そうだよ。こうして【愛し合ってる人同士が一緒に気持ちよくなる】のは【いい事】でしょ?」
雅人は母の首筋にそっとキスをする。
「あっ! う、うん!」
「反対の【いけない事】は――」
「きもちよくない……こと?」
「ああ、残念。正解は【家族じゃない人と一緒に気持ちよくなる事】だよ」
「かぞくじゃないひとと?」
小首を傾げる聖美に雅人は微笑む。
「『不倫』て言うんだけど、知ってるかな?」
「あ! 『フリン』! しってる!」
「ママは不倫したことあるの?」
「ないよっ! そんなのぜったいない!」
「そう。安心した。実は【ママには呪いがかけられている】んだ」
「え? ノロイ?」
「そうだよ。もし、ママが不倫したり、『不倫したい』って思ったりしたら、【ママの頭は死ぬ程痛くなるんだ】よ。そういう『呪い』なんだ」
「えっ! そ、そうなの?」
雅人のあまりの真剣な表情に、怯えた聖美は思わず問い返す。
「うん。頭が割れるようにガンガン痛くなるけど、どんなに薬を飲んでも治らないんだ。なんたって『呪い』だからね。そうなりたい?」
「イヤイヤ! そんなのイヤ! ママ、ぜったい『フリン』なんかしない! したいなんておもわないもん!」
「そうだよねぇ。【一緒に気持ちいい事していいのは愛し合ってる人とだけ】ってルール、ママはちゃんと分かってるもんね」
「うんっ!」
まるで父親に甘える少女のように聖美は雅人の胸に顔を埋める。
雅人は愛しさを込め、美しい母の黒髪を撫でてやる。
しばし、甘く静かな時が流れる。
「ね……ねぇ、マーくん。もう……しない、の?」
もじもじと太股を擦り合わせながら、聖美が小さな声で尋ねる。
「ん? 何を?」
「うー、わかってるくせにぃっ!」
「うーん。全然わかんないな」
「もぉ、いじわるっ! き……『きもちいいこと』っ!」
「あれあれ? ひょっとして、【僕にもっともっと気持ち良い事して欲しい】の? ママはエッチだねぇ」
「ち、ちがうよ! えーと……えと、あ! 『あかちゃんうむにはきもちいいことがぜったいひつよう』なんだもん。それは『いけないことなんかじゃなく』て、『いいこと』だから、『ママはたくさんたくさんきもちいいことしなきゃいけない』のっ!」
勝ち誇るように聖美は反論してみせる。
「お、スゴい。やっぱりママはアタマ良いね」
「でしょお? あ! それにマーくんてば、まだ、『ママがどうしたらかわいいあかちゃんをたくさんたくさんうめるか』って、ちゃんとおしえてくれてないよ」
「ああ。……たぶん、ママはもう分かってると思うんだけどな」
「え?」
「じゃあ、最後に一番大事な質問をするからよーく聞いて答えてね。ちゃんと考えたら分かるはずだよ。これは【ママが自分から答えてくれなきゃ意味が無い】んだ」
「わかった。ちゃんとかんがえる!」
「さ、それじゃ僕の膝においで」
「うん!」
さっそく聖美はソファーに座る雅人の膝をまたぎ、向かい合わせに座ろうとしたが、目と目が合い、慌てて後向きに反転する。
「な……なんか、はずかしいから、アッチむくね!」
「いいよ」
人間椅子状態の雅人は全裸の母の背中を優しく受け止める。
「ん!」「うっ!」
母と子の素肌が大きく触れ合い、瞬間、二人ともゾクリと身震いする。
「あ……あのね、マーくん」
雅人の膝に座った聖美が、前を向いたまま、振り返らずに話しかけてくる。
「……ほ、ほんとはね。ママ、ちょっと『ヘン』なの。だれかにどこかから『やめなさい!』っていわれてるみたいなきがするの。『いいこと』のハズなのに『すごくすごくイケナイこと』をしてるみたいなキモチにな――あんっ!」
背後から抱きすくめられ、うなじに舌を這わされる。
「じゃあ、ママはどうしたいの? やっぱり……やめたい?」
いたずらな指がそっと乳首をつまむ。
「う、ううん。『さいごのいちばんだいじなしつもん』なんでしょ? それに……」
聖美は足を大きくM字に開くと、雅人の手を取り、自らの秘められた花弁へと誘う。
クチュ。
そこはすでに溢れんばかりに女の蜜を熱くたぎらせていた。
「……ママ」
「『やくそく』……だもん。いいよ、マーくんなら――『イケナイ』ことでも」
「……」
瞬間、感動と罪悪感とで胸を詰まらせた雅人は、母の背に頬を寄せ答える。
「あ……ありがとう、ママ」
――そして微かな声で「ごめんね」と呟き、魔少年は最後の仕上げに取り掛かる。
■■■■
チュプ。チュプ。チュプ。
「う……んぅ!」
膣内に差し込まれた細い指が小さな水音を立て、ゆるゆると女の中枢を刺激する。
「いいかい、ママ。よく聞いて」
「……ぅん。あくっ!」
「【赤ちゃんを産むため】に【ママはセックスしなきゃいけない】よね?」
「う、うん」
「だけど【パパにはもう頼めない】」
「うん。……あ。ソコ……いぃ」
「【セックスはすごく気持ちが良い事】で【気持ち良い事】は【いい事】」
韻を踏んだ詩を唱えるように、雅人はゆっくりとしたリズムで問いかけ続ける。
「うん、わか……うぅっ!」
「でも、【家族じゃない人と一緒に気持ちいい事をする事】のは【不倫】で、それはすごくすごく【いけない事】」
「う、うんっ! わかってるっ! ぜったいしないっ!」
「うん、いいコだね。【気持ち良い事】は【愛し合っている人同士でしなくちゃいけない】――ママはちゃんと分かってるもんね?」
「うん!」
「【ママが愛してる】のは誰?」
「マーくん! それと……えと……パパ?」
「【ママが一番愛してる】のは誰?」
「マーくん!」
「――ああ、今日もやっとここまで来てくれたね、ママ」
一瞬、背後からギュっと美母の体を抱くと、雅人はラストスパートにかかる。
「さあ、ママ教えて!」
「あっ!」
雅人は左手を伸ばして敏感な小さな肉の芽をつまみ、右手の指2本を膣に挿入して、聖美が一番弱いGスポットあたりをこすり上げる。
「【パパよりずっとママを愛していて】!
【ママからも愛されていて】!
【不倫】なんかじゃなくて!
【ママに赤ちゃんを産ませてあげられる】のは誰っ!?」
グチュグチュと激しい水音を立て、雅人の指が秘奥を出入りする。
「あっ! は、はげし……あ! ああっ!」
「【世界でたった一人だけ】!
【ママと一緒に赤ちゃんを作る】ために!
【ママのお○んこにお○んちんを入れて】!
【射精してあげられる】のは誰っ!?」
「あ! あうっ! あうううっ!」
もはや言葉を返す余裕もなく、聖美は情欲の炎に呑み込まれて行く。
「さぁ、イッて、ママ! また今日も自分からイッて! 自分の言葉で僕に応えて!」
ありったけの情熱を込め、少年は愛する母を攻め立てながら叫ぶ。
「【ママは誰の赤ちゃんが産みたいの!?】」
「ま、マーくんっ! マーくんですっ! ママは……ママはマーくんの……マーくんのあかちゃんがうみたいのっ! ああ、マーくん! おねがいっ! あかちゃん――マーくんのあかちゃん、うませてええええええええええっ!」
全身をガクガクとエクスタシーに震わせながら、ついに『母』は陥落する。
そこにあるのはただ、本能の命ずるまま若い牡に種付けをねだる一匹の美しい雌の姿だった。
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
全身をヌラヌラと汗で光らせた二人は、しばらく無言のまま、ただ荒い息を付く。
やがてゆっくりと後ろを振り返った聖美は、まるで初恋の相手と出会った少女のようにキラキラした目で雅人を見つめる。
「……マーくん」
「……ママ」
ごく自然に唇と唇が触れ合う。ありったけの愛しさと情熱を込めて聖美は雅人の唇を貪る。
「ああ、すきっ! マーくん、だいすき! ママ、マーくんとしたいっ!」
「何を?」
雅人は優しく微笑みながら問いかける。
「せっくす! 『せっくす』するのっ! マーくん、ママとあかちゃんつくろっ!」
「うーん。どうしよっかなぁ。僕、今日はあんまり乗り気じゃないかも」
「ウソウソ! そんなのぜったいウソ! ママ、しってるもん、マーくんホントはスゴくエッチなんだもん! おっきくなったお○んちん、いっしょけんめいりょうあしではさんでかくしてたけど、しってるんだから! ほら!」
「……あ、コラ!」
ぶるんっ!
聖美が閉ざされていた雅人の太股をこじ開けると、肉の兇器と化した雅人の『カタマリ』が飛び出す。
「わ……スゴぉいっ!」
雅人の『ソレ』は標準的な成人男性と比べても遥かに巨大だった。
「ま、ママがいけないんだよ。ママがあんまり可愛いから……こんなになっちゃったんだぞ」
なぜか、少し照れながら雅人が言う。
「ね? さわっていい?」
「……うん」
聖美は天を衝いて吃立する息子の欲棒におそるおそる指を絡める。
「……どう?」
「あつくて……すごぉくカタいよ。それに、すごく……おっきい」
「パパより?」
「うん。どうしてこんなになっちゃうの?」
「言ったろ、ママが可愛いからだよ。ママの中に入れたくて入れたくて、こんなにギンギンになっちゃったんだ」
「わたしのせい……なの?」
「そうだよ。全部、ママがいけないんだぞ! ずーっと昔から僕が知ってる誰よりも、綺麗で、可愛いくて……だから僕、アイドルやクラスの女の子に全然興味持てなかったんだ」
「……マーくん」
「あんな仕事バカのパパになんか絶対ふさわしくない! ママはもう僕のものだよ。カラダもココロも誰にも渡さない!」
「うん。ママはマーくんのモノだよ。だから、マーくんもママのモノになってね」
「ママ……」
ふたたび、二人は口づけを交わす。それはまるで婚姻の誓いのように心のこもった厳かな口づけだった。
「ねぇねぇ、マーくん。ママはさっきちょっとイッちゃったけど、マーくんはまだぜんぜんイッてないから、カッチカチだねぇ」
雅人の分身をオモチャにしながら、聖美が目を輝かせる。
「うん。我慢するのが大変だったよ」
「え? どうしてガマンしてたの?」
「だって……どうしてもママの口から『したいっ!』って言わせたかったんだ。僕、ほんとは……ムリヤリなんかイヤなんだ」
後半は口の中で呟く。
「ふふ。ズルい、マーくん。じゃ、いってあげる。ママはいまスゴくスゴーく、マーくんと『したい』の。だから、おねがい。これをママにちょうだい」
そう言って聖美はひざまずくと、息子の熱い肉塊に軽くキスする。
「いっぱい、きもちよくしてね」
「……ママ」
妖艶で可憐な仕草に雅人の鼓動が早まる。
だが、ふと、いたずら心を出した雅人はわざとらしい口調でうそぶく。
「ああ、そうだ。パパの机の引出しの奥にスキンがあったっけ。せっかくだから使ってみよっかなぁ」
「え?! どうして? やだやだ! そんなのつけちゃダメ! いっしょにあかちゃんつくるの! ちゃんとだしてくれなきゃダメ!」
「えーと、『出す』って『どこ』にだっけ? ボク、子供だから全然わかんないや」
「んもぉ! ママの、お……お○んこのナカにだすのっ!」
「何を?」
「マーくんのせいえきを!」
「どうやって?」
「マーくんの……お、お○んちんをママのお○んこにいれてっ!」
「うーん。キチンと続けて言ってくれないと分かんないなぁ」
「うう……ほんと、イジワルなんだからあ! 『ママのお○んこにマーくんのお○んちんをいれて、たくさんたくさんせいえきをだす』の! だから、ぜったいゴムなんかつけちゃダメなの! ちゃんとナマでいれて、ぜんぶママのナカにだしなさい! さぁ、これでいいでしょ!?」
「ふふ。ママ、可愛いなぁ」
「お、おこるよ!」
待ち切れない様子で聖美は雅人の手を引く。
「ねぇ、はやくっ! もう……ベッドにいこ、マーくん! ママ、はやく、マーくんといっしょにきもちよくなりたいの! マーくんのあかちゃんがほしい! 『ママ』になりたいの!」
「うん。これからまた明日の朝まで、何回も何回もママの中に出してあげるよ。僕の濃いミルクをママの子宮の奥までたっぷり注ぎ込んで、今日こそママを孕ませるんだ。必ず妊娠させるよ。いいね、ママ?」
「うん! かわいいあかちゃんつくろうね、マーくん!」
勢いよくうなずいた聖美だったが、ふと、途中で気付く。
「あ、でも……どうしよう? とちゅうでパパがかえってきちゃうかも」
「ああ、それなら大丈夫」
「どうして?」
「もう、【パパは僕達が何をしてても目に入らない】からさ」
パタン。
こうして今日もまた、愛の営みに胸はずませる美しい母と子は手に手を取り合い、生まれたままの姿で寝室のドアの向こうに消えて行くのだった。
< END >