後編
辺りに■■が散乱している■■。
小さい女の子に■■■になって、男が■■で少女の細い■を■■、もう片方の■で少女の■■をまさぐっている。
少女の■が苦し■■歪む■、男は力■緩■ず、むしろ更■■重をかけ■■め上げ■■く。
少■は苦■■ぎれに手■デタ■メに振り■す。その■が、男の腕を引■掻く。
少女の■の間には、男の■■が残る。■は■をつけ■■たことに逆上したのか、■女の■を力任せに■■。
少女は■と■から■を流しながらも、尚もがむ■■らに■■振り回す。
ふと、少女■■が■■を■る。
少女はそれ■■かを認■■る前に、■■■■■を思いっきり男■■に向け振るう。
男の■から■■■が飛び散り、少女の■■が■に染■■。
男は奇妙■■鳴のよ■■ものを■■、ぶつ■■■た箇所を■■■■のたうち回る。
少■■■由にな■■■を踊■■て、■■■ったもの■■えて再■■■向けて■び■■でいく。
男■■の■■る■触が、少■■■に伝わる。
■の断■魔の■■、少女■■にこびり■■。
男■■から溢れ■■が、少女の■を■める。
■に倒■■男は■■うちながら、そ■■も少女■■に向け■■■伸ばす。
少女は、そ■■の■に向けて、三■■となる――
「――ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
春奈は、自分の叫び声で目を覚ました。
全身に、びっしょりと汗をかいている。
耳の奥では未だにどきどきという心臓の鼓動が鳴り響いているし、肺は新鮮な空気を求めて最大限に暴れている。
……久しぶりに、昔の夢を見た。
見たくもない、夢。
紛れもない、悪夢。
そのことに、春奈は嫌悪感を覚える。
自分のトラウマを、改めて思い出すなど。
今まで強盗をしてきた中では一度も見たことのなかった夢だった。
何故、今になって思い出したのだろう。
とりあえず汗にまみれた額をぬぐおうとして、春奈は自分の手が動かないことに気づく。
そこでようやく春奈は、自分が拘束されていることを思い出した。
「……大丈夫、春奈?」
「――っ!?」
間近から声をかけられて、春奈は驚き、声のした方を見る。
心配そうな目で自分を見る、詠歌の顔があった。
「よみ、か……」
「すごい汗だよ? ほら、鍵外してあげるから服脱いで」
詠歌は現在はキャリアウーマンのような普通のスーツを着ていたが、その首にある黒い革製の首輪だけが、詠歌の変貌を示していた。
詠歌は持っていた小さな鍵を、椅子の後部にある穴へと差し込む。
かちゃり、という音を立てて、春奈を椅子に縛り付けていたベルトが外れる。春奈は、自由になった。
だが、抵抗しようという気持ちは、微塵も春奈の中には芽生えなかった。
もしかしたら逃げられるかもしれない。だが、仮に見つかりでもすれば殺されてしまう。
今の春奈にとって、脱走というメリットに対する死というリスクは、全く釣り合わない程大きかった。
「……」
春奈は、甲斐甲斐しく自分の身体の汗を拭いてくれている詠歌の横顔を見る。
そもそも、捕まったのは詠歌が自分をここ――信じられないが、どうやら政府の組織らしい――に売ったのが原因だ。それは、間違いない。
間違いない、はずのだが。
(……いつもと、全然変わってない……)
長い、とても長い付き合いだからこそわかるもの。
詠歌の、春奈に対する友情や思いやりなどは、一切変わっていなかった。
それが、春奈が詠歌を『敵』と認識するのを妨げていた。
その当の詠歌と言えば、春奈の体を拭き終わり、元通りに拘束をし直しているところだった。
何でもいいから、言葉を交わしたい。けれど、詠歌が既に敵である可能性は限りなく高いのだ。迂闊に口を滑らすことはできない。
そんな逡巡を春奈がしているうちに、詠歌は拘束を元通りにすると、「……じゃあ、私はこれで……」と言い残し、春奈に背中を向けた。
「あ……よ、詠歌、待って!」
春奈は咄嗟に、去ろうとしている後ろ姿に呼びかける。
だが、返ってきたのは謝罪の言葉だった。
「ごめんね、成人様に呼ばれてるから……」
振り返りもせずに部屋を出ていく詠歌の後ろ姿を、春奈はただ見つめるしかなかった。
※※※
場所変わって、同建物内のモニタールーム。
壁全面を埋め尽くすように設置されている無数のモニターのうち、いくつかには呆然と扉を見つめる春奈の姿が映っている。
春奈の部屋中に貼られている写真のうちいくつかには、目の部分にカメラを仕込んであった。『監視されている』ということを意識させない為である。
滝川は社長のような椅子に座りながら、落胆している春奈の様子をモニター越しに冷静に観察していた。
(やっぱり、まだ詠歌への依存度は高い、か……。良い感じだね)
そう思い微笑む滝川に、隣の椅子に座って先ほどからひたすらキーボードを叩いていた人物が声をかけた。
「おいおーい。何モニター見て一人でニヤけてんだよ、趣味悪ぃな」
「うるさいですね、ほっといてくださいよ。だいたい酒井(さかい)さんだっていっつも人の仕事監視してるじゃないですか。趣味の悪さじゃ負けますね」
思考に水を差されたことにささやかな不快感を感じながら、滝川は隣を振り向いた。
かなりがっしりとした体格の男が、背筋を曲げていくつものモニターを同時に凝視しながら、凄い速度でキーボードを打鍵していた。
名を、酒井桂吾(さかい、けいご)といった。
イオロの職員であり、普段はこのモニタールームで犯罪者たちの監視などを行っている。
酒井は面倒くさそうに首をまわして音を立てると、椅子ごと滝川の方へ向き直り、無精髭の生えた口を開いた。
「俺は仕事なの。好きでやってる訳じゃねーんだよ」
「どうだか。好きでもないのにこんな陰気なところに一日中居れるもんですか」
「金もらえりゃ居るさ。お前こそ、拘束した女に薬打って洗脳するなんて、まともな奴のすることじゃないぜ」
「まとも、ですか。まあ、そんな人間がここに居るのかということは置いておくにしてもですね、『洗脳』って言葉は響きが悪いですよ。まるで僕が犯罪者みたいじゃないですか。僕がやってるのはただの『説得』ですよ」
そう言って肩をすくめる滝川に対し、酒井はあくまで冷ややかな視線を送る。
「嘘つけ。薬打っといて『説得』で片付けんなや」
「ああ、知りませんでした? あれ、中身はブドウ糖なんですよ。血糖値が一定値を超えると、それを下げるためにインスリンが出ますよね。そのインスリンの副作用として、一時的に脳に行く栄養が減少し、理性の働きが鈍くなるんですよ。ほら、チョコレートとかを一気に食べると、少しの間頭がぼーっとするでしょ? あれはそういう理由があるからです」
「そ、そうなのか?」
「当然ながら嘘です。少しは頭を使ってくださいよ」
「ふざけんなや!」
「だって、酒井さんが『嘘つけ』って言ったんじゃないですか」
酒井が再び反論しようと口を開きかけたとき、モニター室の扉が開いて、詠歌が入ってきた。
「失礼します。ただいま、戻りました」
「ん、おかえり」
丁寧にお辞儀をする詠歌に、滝川は手をひらひらと振って応える。
「さて、詠歌も戻ってきたことだし、つまらない言い訳はやめて仕事してください、酒井さん」
「てめぇ……」
酒井は青筋を立てて滝川を睨む。だが、それ以上何かを言っても無駄だと悟ったのか、酒井は表情を切り替えると再びモニターに向き直りながら喋りだした。
「注文通り、寝てるときだけ例のやつを起動させてるぜ。暗示もあるみたいだし、多分確実に『悪夢』ってのを見てるだろうな。覚醒時は解除してていいのか?」
「はい、今のところは。あと一週間くらい経ったらもう一度様子見ますんで、よろしくお願いします」
「ったく……お前が一番人使い荒いんだよ。もっと考えて、最小限の労力で仕事する努力をしろよ。ちったぁ韮崎(にらさき)や貝藤(かいどう)を見習えっつの」
うんざり、といった表情で酒井は顔だけ滝川に振り返り、愚痴のようなことを言う。その間もキーボードを叩いているのは、さすがと言うべきか。
韮崎憂(にらさき、ゆう)。
貝藤基治(かいどう、もとはる)。
共にイオロの職員である。その実力は、曲者揃いのイオロ内においても一目置かれている。恐れられている、と言い換えてもいい程に。
「えー、韮崎さんはともかく、貝藤さんですか? 僕、正直言って貝藤さんよりイカれてる人なんて見たことありませんよ」
だが、比較されている本人は至って呑気なもので、滝川は座っている椅子ごと独楽のように回りながら、やる気なさそうに返事をする。
「だからこそ、だ。アイツは確かにアレだけどな、仕事だけは気持ち悪いくらい簡単にかつ迅速に仕上げてくんだよ」
「そりゃ、知ってますけど……。というか、それも含めてイカれてるって言ってるんですけどね、僕は。いくらなんでも、たかが万引きグループの女性メンバー全員を精液便所にするのはやり過ぎでしょうよ」
その発言自体は否定できなかったのか、酒井はしばし沈黙した後に続ける。
「……だいたい、貝藤は例外にしても、お前は遅すぎる。一人仕上げんのに一ヶ月はかかり過ぎなんだよ。せめてその半分くらいでやれよ」
「難しいですねー。急ぐとその分不安定になるんですよ、僕の場合。でも、その分後遺症とかは全く残らないし、人格もほとんど完璧に保存してあるからトントンだと思うんですけど」
「そこなんだよ。必要なのは犯罪者の人格じゃねえだろ。迅速に情報を引き出し、有能な犯罪者であれば忠実な部下にする。それだけだろうが」
「そんなもんですかねぇ。実際、僕に回ってくる仕事もなかなかあるんですけどねぇ……。……あ、回りすぎて気持ち悪くなってきた……」
おええ、と吐くふりをする滝川、それに心配そうに寄り添う詠歌に心底呆れた視線を送りながら、酒井はリターンキーを叩くように押すと、椅子から立ち上がって扉の方へと歩いていった。
「あれ、どこ行くんですか?」
「寝んだよ、馬鹿。誰かのせいでこっちは夜通し起きるハメになっちまったからな。仮眠でもとらなきゃ、やってらんねえんだよ」
「そうですか。大変でしたねえ」
「……」
自覚がないかのような言葉を吐く滝川に殺意を含んだ視線を向け、酒井は扉から出ようとする。
が、部屋を出る直前、思い出したように再び滝川の方を振り返り、視線を泳がせながら口を開いた。
「あ、そうだ。なあ、ちょっと詠歌ちゃん貸してくんねぇ?」
「え? 寝るんじゃなかったんですか?」
「だから、一緒に寝るんだよ」
「腎虚で死んでください」
にべもなく断る滝川に、酒井は先ほどよりも少しばかり殺意の増した視線を向ける。
「てめぇ……俺はお前の注文のせいで徹夜したんだぞ?」
「金もらってれば、どんな仕事でもするんでしょう」
「少しは誠意ってもんがあるだろ?」
「そんなに盛りたいんなら、『忠実な部下』にでもしてもらえばいいじゃないですか。真由子(まゆこ)さん、寂しがってましたよ」
「たまには、他のも味わってみたいだろ? 今度あいつ貸してやっからよ」
「お断りです。もっと部下を大事にしたらどうですか?」
「だってよ、なんかずるくねぇか? 詠歌ちゃんといい春奈ちゃんといい、なんでお前のところばっかりかわいい子が行くんだよ」
「そりゃ、僕の方法がこの場合一番適してるからに決まってるじゃないですか。おとなしく諦めてください」
「んだよー。ちょっとくらいイイじゃねーか」
「ダメなものはダメです。それに、残念ながら詠歌にはまだ仕事があります死ね」
「……ちっ。つまんねぇの」
最後に露骨に舌打ちをして、酒井は部屋から出て行った。滝川の最後の言葉の意味には気づかなかったらしい。そしてしばらくの後、エレベーターの作動音が聞こえてきた。どうやら、自分の部屋へ戻ったようだ。
それを完全に確認した後、滝川の背をさすっていた詠歌が心配そうに尋ねた。
「……あの、大丈夫なんですか?」
「ん? いいっていいって。ああは言ってるけど、どうせ酒井さんも部下に慰めてもらう気だろうし」
「でも、後で仕事をしてもらえなかったりとか……。私のことでしたら、気にしていただく必要は……」
「へぇ。僕に意見するんだ?」
「……っ!」
滝川が突然出した低い声に、詠歌はたじろいだ。今までに詠歌が聞いたことの無い程、その声音は冷たかった。
「僕はね。自分のものを盗られるのが、一番嫌いなんだよ」
「え……?」
「お前はもう、僕のものだ。そうだろ?」
滝川は、射抜くように詠歌の目を見ながら言う。その表情は、滝川が怒っていることを如実に表していた。
詠歌は滝川の態度の豹変にやや戸惑いながらも、しっかりと頷いた。
「は、はい。私の全ては、成人様のものです」
「だったら、もっと考えろ。軽々しく他人に僕のものを差し出すんじゃない」
「わ、わかりました……」
「……うん、よろしい」
その返事に満足したのか、滝川はうってかわって明るい表情で軽く手招きをする。そして、よくわからないまま近くに寄ってきた詠歌の腕をいきなり掴むと、そのまま抱き寄せた。
「な、成人様?」
いきなり抱き寄せられたことに対し、詠歌は驚きと喜びの入り交じった声をあげる。
そんな詠歌に言い聞かせるように、滝川は詠歌の顎を指で持ち上げながら言った。
「大丈夫だって。ああ見えて、酒井さんは仕事はちゃんとする人だから」
「そ、そうですか……」
戸惑いながらも頷く詠歌に、滝川の目がいたずらっぽく光った。
「うん。それより、僕に意見しようとしたのはいただけないなぁ」
「え……」
「『暦の懺悔録』」
かくん、と抱きしめられていた詠歌の身体中から力が抜ける。度重なる反復により、今ではキーワードから催眠状態に落ちるまでのタイムラグはほとんどなくなっていた。
滝川は詠歌の身体をしっかりと支えながら、自らの膝の上に向かい合うようにして座らせた。
「さて、どうやってお仕置きしようかな……」
虚ろな目をした詠歌を前に、滝川は楽しげにあれこれと想像を巡らす。
もちろん、先ほどの失言を全て許した訳ではない。だがそれ以上に、詠歌という人間を使ってどうやって遊ぶかという方に、今の滝川の関心は移っていた。
「やっぱりお仕置きだし、意見できないようにするのがいいかな……?」
そう思いつき、滝川は一人くすくすと笑う。そして詠歌に暗示を与え始めた。
「いいですか、詠歌さん。これから僕が三つ数えると、あなたの耳は特別になります」
「……とく、べつ……?」
「はい。あなたの鼓膜は、あなた自身の声に対してだけ特別な震え方をし、その振動はあなたの脳の快感神経を直接刺激します。それは今までにあなたが味わったよりも、何十倍も気持ちいいものです。直接脳を刺激するのですから。わかりましたか?」
「は、い……」
「いいでしょう。では、僕が三つ数えると、僕が与えた暗示は全て忘れて元の状態へと戻ります。ですが、今言われたことはあなたの心の奥に刻まれ、必ずその通りになります。いいですね? では、数えますよ。いち……に……さんっ!」
滝川が数えると同時に指を鳴らすと、詠歌はゆっくりと目を開けた。そして、まだぼおっとした様子で辺りを見回す。
「どうしたの、詠歌?」
「わた……」
し、と言い切る前に、詠歌は軽く痙攣し、股間から勢いよく潮を噴いた。
身体中が一瞬でピンク色に染まり、呼吸が荒くなる。
信じられないことに、たった二文字喋っただけでイッてしまったらしい。
何が起きたのか理解できないまま、詠歌は半開きの唇から尚も言葉を出そうとする。
それが、いけなかった。
「いっ……」
たいなにが、とは続かず、代わりにもう一回詠歌の身体が跳ねた。
「~~~~~~~~っ!?」
またもや盛大に噴き出す愛液で、ショーツと滝川の膝があっという間にびしょびしょに濡れる。
混乱しながらも自分の言葉が原因であると気づいたのだろう、詠歌は必死に口を押さえて喘ぎ声が漏れないようにする。そんな様子も、滝川は楽しんで見ていた。
「どうした、何か僕に言いたいことがあったんじゃないの?」
「……なにを……されたのですか……?」
かすれた声で、できる限り声量を押さえて喋る詠歌。それでも相当な刺激であるらしく、一文字口に出すだけで身体はビクビクと震え、秘所からはとめどなく愛液が溢れてくる。
その姿に笑いをこらえながら、滝川は答えた。
「んー、別に? ただちょっと口答えしたそうだったから、ご褒美に気持ちよくなれるようにしてあげただけだよ」
「……そう……ですか……んっ!?」
いきなり陰唇をショーツの上からなぞられ、詠歌は身体をびくつかせる。既にそこは、ショーツの役目を果たしていないほどに濡れそぼっていた。
無理矢理な暗示で強制的に発情させられた身体は、軽いタッチだけでも強烈な快感を詠歌の脳へと伝える。
「入れてあげるよ。ほら、尻を出しなよ」
「……」
「返事は?」
「……わかり……ました……」
「んー……。なんか気に入らないな。よし、今の自分の状況を説明してみてよ」
「……っ!?」
なんとかして言葉数を減らそうとする詠歌を、滝川は許さない。
詠歌は驚愕しながらも、滝川の命令に従うしかなかった。
「わ、わたしは……いま、成人様に……」
「声が小さい」
「……っ! す、すみません……」
「謝罪はいいから、もっと大きな声を出して」
「ひ……ゆ、許してください……!」
「だーめ」
ぱぁん! と、滝川の平手が詠歌の尻を叩いた。
「あああっ!? んふう――っ!!」
尻を叩かれた衝撃で一瞬詠歌の口から喘ぎ声が漏れる。その刺激により、詠歌はまたもや絶頂に無理矢理押し上げられた。滝川に必死に抱きつきながら、詠歌は余韻に身体を震わせる。
「ほら、そんな風に物わかりが悪いから、こうしてお仕置きされるんだよ?」
「あ……そんな……」
詠歌は絶望の声を漏らす。だが、理不尽でしかない滝川の要求も、今の詠歌にとっては紛れもない快感であった。その証拠に、滝川に無茶な要求をされたはずの詠歌の目は潤み、無意識に滝川へ媚びの視線を送っている。
「ほら、言いなよ」
「わ、わかりましたぁっ! くううっ! わ、私はあはぁぁっ! 成人さまにぃぃっ! い、意見をしようとおあああっ! うあああっ! そのせいで、耳をぉぉっ! 改造されましたあはあああっ!!」
「そうそう、その調子」
滝川は喋る度に跳ねまくる詠歌を心底面白そうに眺めながら、拍子を取るかのように軽く何度も詠歌の尻をスパンキングする。その度に詠歌は身体中を震わせ、被虐の喜びを表現する。
「ああああっ! い、いまぁっ! わたしはああああんっ! じ、自分の、こえがぁぁぁぁっ! 気持ちよくぅぅっ! ああああああっ!」
「ほら、もっと続けて」
「うあああっ! それと、な、成人様にいぃぃっ! お尻を叩かれてええぇぇっ!! うあ、もうだめぇぇっ! いれて、入れてくださいいぃぃっ!!」
「……うん、まあいいでしょ。それじゃ、そこに手をついて。あ、キーボードは押さないようにね」
詠歌は言われた通りにふらふらとモニターの方を向き、スカートを捲り上げてきれいな形の尻を惜しげなく滝川の前に晒す。その秘所は既に幾度とない絶頂で湯気が立つほどに濡れており、官能的な香りを漂わせている。
滝川は濡れそぼった詠歌のショーツを下ろす。外気に晒された外唇はそれだけでもひくひくと震え、更なる芳香により滝川を誘惑する。
滝川はその様子にこれ以上ほぐす必要がないことを了解すると、いきなり自らの肉棒をそこへと突っ込んだ。
「あうっ! ひ、ひあああああああっ!?」
十分に濡れていたそこは、スムースに滝川を受け入れる。
唐突な刺激に詠歌は喘ぎ、その声により再び絶頂へと押し上げられた。
同時に、詠歌の中が強く収縮する。
滝川はそんな詠歌の様子に満足そうに頷くと、早いペースで腰を振り始める。
「ふあああっ!! うああ、ああああああっ!!」
滝川が一突きするたびに詠歌の身体が面白いように跳ねる。自分の喘ぎ声が更なる快感を運んでくるという事態に、詠歌はただただ翻弄されるしかなかった。
数秒に一回は達しているのだろう、通常ではありえない周期の締め付けに、さすがの滝川も普段よりも限界が早く近づいてくる。
「んー、ちょっと刺激が強すぎたかな?」
「な、成人様ぁっ! 私、ダメですぅっ! うああっ! こんなの、壊れちゃいますよぉおおおあああっ!! ダメぇっ! あがあっ、頭の中があああっ!」
「いいよ、壊れちゃいなよ。ちゃんと直してあげるから」
弱音を告げる詠歌に、滝川はあくまでも冷たい。むしろ腰の動きを早め、より多くの快感を詠歌に与えようとすらする。詠歌の耳元ではガンガンと絶頂を告げる音が連続して鳴り響き、頭が鐘になったかのような気すら起きてくる。
もう何十回イッただろうか、一突きごと、いやそれ以上に絶頂に達し続けている詠歌の頭は、次第に思考することをやめる。全身から送られてくる快感を受け取るだけしか出来なくなってきていた。
そんな詠歌の様子からそろそろ潮時だと判断した滝川は、ラストスパートに向け腰のスピードを更に早めると同時に、詠歌の胸に手を回す。柔らかな感触を楽しみながら、滝川は詠歌に囁いた。
「ほら、見てごらん。君の親友の春奈が、寂しそうだよ?」
「ううぅ、はるな……?」
詠歌は最早ろくに残ってもいないであろう意識で、霞がかかっている目を正面のモニターに向ける。そこには、孤独感に苛まれている春奈の姿が映っていた。
「はるな……かわいそうに……んふっ!? な、成人さまぁっ!? 胸ぇ、ダメですっ! そんなに揉んじゃだめえっ!」
いきなり胸を強く揉みしだかれ、予想外の刺激に意識の覚醒した詠歌は、悲鳴のような声をあげる。
「何がダメなの? 気持ちよさそうじゃん」
「だから、気持ちよすぎるんですっ!! ああ、だめ、だめっ! 私、イッちゃいます……っ!」
「いいよ、イッても。ほら、春奈さんの目の前でイッちゃいなよ」
「ああ、うああっ! 春奈、だめ、私もうダメなのぉっ!! ああああっ! イクうううっっ!!」
強すぎる快感に、詠歌の中がこれまでで一番強く収縮する。そのタイミングに合わせて、滝川は最後に思いっきり詠歌を突きあげ、その最深部で精を放った。
「ああ――――っ!! 春奈、はるなぁ――――っ!!」
熱い精液が自分の中に流れ込んでくるのを感じ、詠歌は自分の親友の名を連呼しながら本日一番の絶頂に達した。
「う……ああ……」
余韻に身体を何度も跳ねさせながら、詠歌は脱力し、そのまま床の上へと転がった。
流し込まれた精液が愛液と混じり合いながら、詠歌の秘所から垂れた。
そんな詠歌に、滝川はねぎらいの言葉をかける。
「お疲れさま。気持ちよかったよ」
「ありがとう……ございます……」
主の言葉に、息も絶え絶えといった様子の詠歌は嬉しそうに目を細め、そのまま意識を手放した。
※※※
春奈が『イオロ』に捕縛されてから、二週間が経った。
だが捕まったと言っても本当にそれだけで、別に拷問などを受けている訳でもなかった。
毎日一時間だけ『説得』という名目で滝川との面会を強いられてはいるが、それ以外はかなりの自由を与えられている。
一週間目に椅子の拘束も外されたため、部屋の外に出ることができないという点以外は特に不都合なところもない。
ない、のだが。
「……大丈夫、春奈? すごく疲れてるように見えるけど……」
食事を運んできた詠歌が、不安そうに声をかける。
そう。春奈は、傍目から見てもわかるほど疲弊していた。
目の下にはくっきりとクマがでている。明らかに睡眠不足によるものだった。
春菜は、眠るたびに悪夢を見た。
決まって、あの夢だった。
起きる度に全身が汗でびっしょりと濡れているし、喉の奥までカラカラに乾いている。
気分は、最悪。
だから、春奈は眠らないようにした。
(眠ったら、またあの夢を見る……)
なぜかわからないが、春奈はそう確信していた。
そして、恐怖した。
自身のトラウマである出来事を、夢の中であるとはいえ追体験することは、春奈にとって何よりも避けたいことであった。
今や春奈にとって、睡眠は休息でなく、拷問の時間でしかなかった。
まぶたにかかる重力を必死で払いのけ、意識を保つために自ら頬を張り、腕をつねる。
それでも、睡魔――まさに、春奈にとっては『魔』だった――はやってきた。所詮は人間、どうしても身体は休養を欲するのだ。
何度か、まどろんだ。
そして、その度に跳ね起きた――いや、起きざるを得なかった。
その繰り返し。
日に日に衰弱していくのを感じながら、それでも春奈は眠れなかった。
「大丈夫……? あんまり大変なんだったら、成人様にお願いして『説得』の時間を減らしてもらおうか……?」
「……っ! それは駄目っ!」
おそるおそるかけられた詠歌の言葉に対し、春奈は反射的に叫んだ。
「え……? で、でも、顔色とかすごく悪いし……」
「あ、いや……。まだ、大丈夫、だから」
怒鳴られた詠歌は、戸惑ったような声を出す。
だが、戸惑ったのは春奈も同じだった。
何故、自分は詠歌に対して怒鳴ったのだろう。詠歌が自分のことを思って提案してくれたことは、わかりきっているというのに。
「……大丈夫ですか? 何か、大きな声が聞こえましたけど」
春奈の大声を聞きつけ、そう言いながら滝川が部屋に入ってきた。その姿を見て、春奈の顔が無意識に綻ぶ。
「別に……なんでもないわよ」
春奈は頬を赤らめながら滝川から目を逸らし、あくまで素っ気なく答える。だが、そうしていながらもちらちらと微かに滝川の方を伺っている。
ここ一週間ほどに共通してみられるその仕草にあえて気づかない振りをしながら、滝川は言った。
「そうですか? ならいいんですけど。あ、詠歌は仕事に戻ってくれる?」
「あ、はい。わかりました」
暗に「出て行け」と言われたことを察し、詠歌は滝川に向かって一礼をすると部屋の外へと出て行く。
それを確認すると滝川は部屋の隅から椅子を出し、春奈と向かい合うようにして座った。
「さて、じゃあ『説得』の時間です。……と、言いたいところなんですけどねぇ」
「……何なの?」
「実は、これからしばらく『説得』はお休みになるんです」
滝川は困ったように頬を掻きながらそう言った。
「え……?」
「えっとですね。ちょっとこれから他の仕事があるので、その間はこちらに来ることができません。だから、お休みです。そうですねー、だいたい一週間くらいでしょうか」
「……?」
突然のことに、春奈は理解が追いつかない。
「え……ちょ、ちょっと待ってよ。そんないい加減でいいの?」
少しの後、ようやくその言葉の意味を理解した春奈は、やや焦った口調で言った。
「あれ、そんなに『説得』が気に入りましたか?」
「や、あの、そうじゃなくて……。そ、そう! 今更仕事をやめてもいいの!?」
「ですから、他の仕事が入っているんですって言ったじゃないですか。それとも、他に何か用が?」
「う……」
春奈は再度、うつむいて視線を滝川から逸らす。
その様子を見て、滝川はほぼ計画通りにことが進行していることを確信した。
暗示により睡眠を間接的に禁じられ、精神的に衰弱している状態で、毎日一時間に渡って顔を合わせ、声を聞く。
疲弊している時には理性の働きが鈍り、本能が現れやすくなる。その上、毎日顔を合わせる相手に対しては、人間は親近感を抱くようになるものだ。
加えて、この環境。周囲全てが敵という状況は逆に、その敵の代表者である滝川に対しての恋心にも近い依存心を、春奈の中に作り出していた。
「あ、そうだ。詠歌にも手伝ってもらいたいので、しばらくの間は他の者が世話をします」
「……っ」
春奈は唇を無意識のうちに噛んだ。
これで、春奈の知っている人間が周囲から一人も居なくなることになる。
それは、今の春奈にとっての精神的支柱が、また一つなくなることをも意味していた。
できることなら、誰かにずっとそばに居てほしい。
だが春奈のプライドは、滝川に頼むという行為を拒んでいた。
耐えるように沈黙している春奈の様子を、滝川は冷めた目で観察する。そして春奈がこれ以上何も言いそうにないのを確認すると、椅子から立ち上がって春奈に背を向けた。
「では、そういうことで」
「……」
扉が閉まる無機質な音を、春奈は唇を噛んで聞いていた。
※※※
『うう……うああっ……!』
酒井の手によりモニター室から中継されてきた映像を、滝川は自室のパソコンから観ていた。
『やめて……っ! いやあぁ……!』
「……うん、凄くイイね。たまらないなぁ……!」
「んん……ちゅば、じゅる……」
先ほどからモニターの向こうでは、春奈が夢にうなされている。
それを満足そうに見ながら、滝川は呟いた。
「あの虚ろな目、おびえる顔、うなされる姿! ああ、見てるだけで勃起が止まらなくなるよ……」
「じゅぷ、んぶ、じゅぽ……」
「んー、どうしよう。もっと見てたい気もするけど、壊しちゃダメだし、多少早めた方がいいのかな?」
「れろ、はむ、んむぅ……」
「それとも、もうちょっと追いつめてみるかな……どう思う、詠歌?」
滝川は、先ほどから机の下でフェラチオをしている詠歌に対し呼びかけた。嬉々として滝川の肉棒をくわえているその姿は、まさしく忠犬と言ったところだろうか。まあ、本当の犬ならこのようなことは絶対にしないだろうが。
「ふ、ふぁい?」
「……返事をするときくらいは、口を離しなよ」
しゃぶっている最中だった詠歌は、いきなりの問いかけに多少間抜けな声を出す。それにやや呆れた顔をしながら、滝川は続けた。
「元アバンチュール副首領としての君の目から見て、今の春奈さんの状態はどんな感じ? って聞いたんだよ」
「あ、はい。そうですね……」
詠歌は思案するように目を伏せる。長い睫毛が呼吸に合わせてかすかに震えるのを、滝川は何となく眺めていた。美しいな、と唐突に思った。
「彼女とは長い付き合いですが、あそこまで憔悴してるのは見たことがありません。正直、もうすぐ壊れそうに見えます」
「うん……。よし、じゃあそろそろ次の段階に進むか。詠歌、もうフェラはいいから仕事して」
「……わかりました」
詠歌は少し名残惜しそうに滝川の逸物から口を離すと、ウェットティッシュで丁寧にそれを拭い、パンツとズボンとを元通りに戻した。
そうしてから、最後に深々と礼をして、詠歌は部屋から出ていく。その後ろ姿を眺めながら、滝川はぼんやりと呟いた。
「そろそろ彼女も、君みたいに自分の罪を自覚できるようになってるんじゃないかな?」
そして、滝川は再びモニターに向き直り、酒井にメールを送るべくキーボードを叩き始めた。
変化は、如実に現れた。
――見られている。
春奈が感じたのは、視線。
部屋中を埋め尽くすように貼られている、写真。
老若男女、本当にいろいろな顔が、死体が、一斉に春奈を見つめていた。
いや、状況は最初と変わっていない。だが、気のせいだろうか、それらの視線が以前よりも鋭い気がする。
というよりむしろ、生きている人間から見つめられているかのような感覚すら沸き上がってくるのだ。
「――、」
こくり、と春奈の喉が鳴った。
以前であれば、いやここにきた初日であれば鼻で笑えていたであろう、視線。
だが睡眠不足により衰弱した今の春奈には、それを笑い飛ばす、いや無視する気力すら残っていなかった。
四千十八個の目玉から、常に監視されていることの圧力。
恐怖。
春奈はここに来て初めて、恐怖を感じた。
「……ごめん、なさい……」
春奈の唇から、謝罪の言葉が漏れた。
それはあくまで無意識でのことだったが、一度出てしまえば後は簡単だった。
堤防の切れた川が氾濫するように、恐怖という感情によってプライドは断ち切られ、謝罪の言葉が次から次へとその口から溢れ出した。
春奈の自信が破壊された瞬間だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……! 刺し殺してごめんなさい、撃ち殺してごめんなさい、殴り殺してごめんなさい、絞め殺してごめんなさい、轢き殺してごめんなさい、焼き殺してごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……。……だから……」
許してください、と。
今まで見下すことしかしていなかった相手に対し、春奈は初めて許しを乞うた。
それでも。
視線は、止まなかった。
※※※
「さて、お久しぶりですね……と」
一週間後。
久しぶりに部屋に入った滝川は、春奈の様子に驚きを隠せなかった。
春奈はベッドの影で頭を垂れ、力なく何度も何度も謝罪の言葉を呟いていた。
髪の毛は乱れ、表情は虚ろである。その輝くばかりの美貌も、今は疲労に上から塗りつぶされてしまっている。
モニター越しに確認していたとはいえ、その姿は滝川の目にあまりに惨めであった。
滝川は後ろ手にドアを閉める。
春奈はドアの閉まる音に反応し、滝川の方を振り向いた。
「ひっ……!」
そもそも滝川だとも認識していないのだろう、『そこに人間が居る』という事実だけで春奈は顔面を蒼白にする。そして部屋の隅まで必死に後退すると、うずくまって頭を抱えた。
滝川が少し動くだけで、春奈は全身をビクつかせて恐怖を表現する。
滝川は、そんな春奈の状態を作り出した自分に心の中で喝采を送りながら、しかし顔には出さずにゆっくりと春奈のもとへと歩を進めた。
一歩滝川が近づくにつれ、そのだんだんと大きくなる足音に春奈は顔色をますます青白くする。
「……どうかしましたか、春奈さん?」
「……え……?」
ある程度まで近づいたところで、滝川はこれ以上なく優しく声をかけた。
春奈は初めて顔を上げ、滝川の顔に焦点を合わせた。
そして、自分の前に居るのが誰なのかをようやく認識した。
その途端、先ほどまであれほど鮮明に感じていたはずの死者達からの視線は、綺麗に止んだ。
「『説得』の、時間ですよ?」
「あ……ああ……っ」
心地よい安心感が、春奈の中に溢れた。長年離ればなれになっていた恋人と、艱難辛苦の末に再会できたかのような、感激。
(この人なら……!)
視線から、悪夢から、自分を守ってくれるかもしれない。
たった一週間ほど会わなかっただけだというのに、春奈は信じられない程に滝川を求めていた。そして、壊されたプライドは最早その感情を否定することもできなかった。
このとき既に、春奈は滝川を、自分にとって大切な人だと無意識に確信していたのだった。
「大丈夫ですか、春奈さん?」
「……滝川さんっ!」
心配そうに声をかけてくる滝川に、春奈の中で愛情が溢れた。
春奈はもつれる足で必死に滝川へ近づき、その足に縋り付く。
「お願い……、一人にしないで……。お願いします……」
滝川に抱きつきながら、恥も外聞もなく、わずかに残っていた全てのプライドをかなぐり捨てて春奈は懇願した。
憐憫を誘うその姿に満足しながら、滝川はそっとしゃがみ、細かく震える春奈を抱きしめた。
「大丈夫ですよ……。僕なら、春奈さんのそばに居ますから」
「だめ、だめなの……。もう、どこにも行かないで……。もう一人はいや……」
春奈は、いやいやと駄々っ子のように首を振りながら、涙を流してうわ言のように「一人はいや」と繰り返す。
一ヶ月ほど前には自分のことをさんざん罵った美女が、今ではみっともなく自分を心の底から頼っている。滝川の最高の楽しみは、この状況にあると言っても過言ではなかった。
その愉悦が表情に出ないように注意しながら、滝川は春奈の耳元で囁く。
「春奈さん……。どうして、そんなに怯えているんですか?」
「いや……怖いの……。あの人たちが……みんな、私を見つめてくるの……」
滝川の胸に顔を埋めながら、春奈は滝川の白衣の裾を強く握りしめる。
その姿はまるで、親に捨てられまいとしがみつく赤子のようでもあった。
そんな春奈の様子から大丈夫だろうと判断した滝川は、いよいよ最終段階に入ることにする。
出来る限り誠実そうな顔を作り、滝川はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「春奈さん……。よければ、僕に罪の告白をしてくれませんか?」
「え……?」
「話すことで、楽になれることもあります。僕は、春奈さんの力になりたいんです」
「……いや……嫌われちゃう……」
ここで滝川に嫌われることは本当に絶望なのだろう、春奈は固く拒絶する。自分のしたことが、いかに残酷なことであったかを知っているからだ。
滝川はそんな春奈をしばらく見つめた後、いきなりその唇を奪った。
「んむっ!? ……ん、ん……」
優しい接吻に、春奈は一瞬目を見開いたが、すぐに細める。そして自分の身体を完全に滝川へと委ねる。
その状態のまま二、三分経った後、滝川は唇を離し、春奈の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「大丈夫。僕は、春奈さんの味方です」
「信じて……いいの……?」
未だ不安そうな目で、春奈は滝川を見上げる。
「はい」
そんな春奈に、滝川は、きっぱりと断言した。
「…………ん、わかった……」
そうまで言われては、春奈はもう拒絶などできなかった。
ぽつり、ぽつりと春奈は語り始めた。
その内容は、ほとんどが聞くに堪えないものであった。
幼かった自分を無理矢理犯そうとしていた父親を、近くにあった包丁でズタズタに刺し殺した。
祖母との久しぶりのお出かけにはしゃいでいる少女を、目障りだという理由のみでマシンガンで撃ち殺した。
そのことに我を忘れて飛びかかってきた老婆を、手に持っていた銃で殴り殺した。
自分に求愛する男を、正体がバレることを危惧してネクタイで絞め殺した。
自分たちから宝石を守ろうとしているガードマンたちを、周囲の客ごとダンプカーで轢き殺した。
妻子が居るからといって命乞いをする男をさんざん働かせた後、やっとたどり着いた家ごと焼き殺した。
今では春奈も自分のしたことの重大性、残虐性を理解できるようになっているのだろう、懺悔をしながらもその目からはぽろぽろと雫がこぼれ落ちる。
滝川に嫌われるという恐怖もあった。
だがそれよりも、春奈は自分のしたことを悔いていた。
滝川は最初の方こそ声を出して頷いていたものの、途中からは何も言わなくなった。そんな滝川を気にしながらも、春奈は語ることを止めなかった。
そうして、三十分後。
「……以上が、私がしてきたことの全てです」
後悔に襲われながら全てを語り終えた春奈は、涙に濡れた顔でおそるおそる滝川を見上げた。
いや、見上げようとした。
春奈が顔を上げるより先に、滝川は春奈を抱きしめていた。
「春奈さん……っ! よく、よくぞ話してくれましたね……!」
滝川は、泣いていた。
無論、嘘泣きである。
だが、疲労により判断力の低下した春奈には、そんなことがわかるはずもなかった。
「辛かったですよね……! 苦しかったですよね……! ありがとう、ありがとう……!」
滝川はひたすら強く春奈を抱きしめ、感謝の言葉を繰り返す。
軽蔑か、よくても落胆。
その二つの反応を覚悟していた春奈は、滝川の想定外の反応に頭が真っ白になる。
「――う、うああ、ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
そして、その言葉の意味を理解すると同時に、春奈は幸福のあまり赤子が産声をあげるように泣いた。
「うわあああっ! ああーっ!! ごめんなさい、ごめんなさいーっ!! う、う、うわああああああんっ!!!」
己の罪を告白することによる精神的な重荷からの解放、そして滝川による赦免と称賛。
その自他の涙に洗われるという二重のカタルシスにより、春奈の精神は今までに経験したことがないほどの強烈な多幸感を感じていた。
そう、今までの価値観全てを塗り替えてしまうほどの。
わんわんと滝川にすがりついて泣きながら、春奈は自分がもはや滝川なしでは生きられなくなっていることを、心の底から理解した。
そして、感謝した。
自分の存在を委ねきれる人間に、出会えたことを。
ひとしきり泣きじゃくった後、春奈は恍惚とした表情で呆然とベッドに腰掛けていた。
そんな春奈の髪をそっとなでると、滝川は白衣の内ポケットにしまっておいた注射器をそっと取り出し、春奈の袖を捲った。
「安心してくださいね。ほら、栄養注射をしますから、腕を出してください」
「……はい」
春奈は言われた通りに、むしろ嬉々として滝川に向け二の腕を差し出す。
チクッとした痛みとともに、体内に液体が流れ込んでいく感覚が春奈を包む。
すぐに意識が朦朧としてくるが、春奈はそれを恐怖だとは思わなかった。今や、滝川の行動は春奈にとって絶対だった。
「いいですか、大きく深呼吸をしてください」
「……わかりました……。……すぅ……はぁ………すぅ…………はぁ…………」
滝川に従い深呼吸を繰り返すたびに、春奈の身体からどんどん力が抜けていく。十数回の深呼吸により、春奈の身体は自らを支える力を失い、隣に座る滝川へともたれかかる形になった。滝川の軽い呼びかけにも、かすかに反応するだけだ。
それを確認すると、滝川は本格的に催眠導入へと移行した。
「では、僕と一緒に、階段を下りていきましょう」
「……かい……だん……」
「そうです。一つ数を数えるごとに、僕たちはあなたの心の底へと続く階段を一段ずつ降りていくのです。そして、十段を降りたところであなたの心の最深部へとたどり着きます。では、数えますよ。ひとつ……」
「………ひとつ………」
「ふたつ………みっつ……………」
「……ふたつ……………みっつ………………」
滝川は数を数えながら、それに同調させてゆっくりと春奈の身体を前後に揺らす。
「よっつ…………いつつ………………むっつ……………………」
「…………」
もう聞こえないほど声が小さくなった春奈のかわりに、滝川は続けて数を数えていく。その間隔は徐々に長くなり、それに合わせて春奈の身体の揺れ幅も大きくなる。
「ななつ…………………………やっつ…………………………………ここのつ…………………………………」
ここまでくると、揺らされている春奈の身体は完全に脱力し、今は滝川に支えられているだけとなっていた。全ての筋肉から力は抜け、半開きになった口からは蜜のような唾液が垂れている。滝川はそっとその唾液を指で掬うと、舐めてみた。甘かった。
「……………………とお…………………」
最後の数を数えると同時に、滝川は春奈の身体をベッドへと優しく横たえた。
当然ながら、滝川が注射したのは栄養剤などではなく、以前投与したのと同じ薬だった。
一度投与された経験があることに加え、今回は強固なラポールも出来上がっている。
そのために、春奈は前回よりも遥かに早く、かつより深い催眠状態へと堕ちていった。
「春奈さん、聞こえますか?」
「…………はぃ…………」
微かに、春奈の唇が動く。注意しなければ聞き取れないほどの小さな声に、滝川は春奈がとても深い催眠状態にあることを確信した。
そうしたところで滝川は、まず手始めに春奈の精神を解析するため、質問をすることにした。
「春奈さん、あなたはたくさんの人を殺しましたね?」
「…………はい…………」
「あなたが最近見ていた悪夢や感じていた視線は、その人たちの恨みのせいなんですよ」
「……」
深い催眠状態にありながらも、春奈は微かに顔を歪める。それは、それほどまでに深く、春奈の精神に、ここ数週間のことが恐怖とともに刻み込まれているということを示していた。
それを確認すると、滝川は次のステップへと進む。
「春奈さん。あなたは、彼らに許してもらわなければなりません」
「………ゆる、す………」
「そうです。そうしないと、いつでもまた同じ体験をすることになります」
「……い、や……それは、いや…………」
「そうですよね、いやですね。では、どうすれば自分の罪を償えるでしょうか」
「………?」
そこで滝川はひと呼吸置くと、唇を舐める。そして、これから先春奈の根幹となるべき暗示を、本格的に与え始めた。
「償いには、自らを辱めることが必要です」
「……はずか……しめる……?」
「そうです。つまり、恥ずかしいことや屈辱的なことをすることで、自分が犠牲者の方たちよりも更に下等の存在であると、彼らに示すのです」
「………かとうの、そんざい……」
「はい。そうすることで、彼らの溜飲を下げることが出来ます」
滝川は、春奈に人間としての尊厳を捨てさせようとしていた。
贖罪という理由を付け、恐怖から解放されたければそうするしかないと間接的に脅すのだ。恐怖心に心の奥深くまで侵されている春奈は、一も二もなくその提案に飛びつくだろう。
だが、それだけではまだ足りない。
自ら喜んで捨てるようにさせる為、滝川は更に暗示を重ねる。
「贖罪行為はとても安心できることです。つまり、快感を感じるようになります」
「……かい……かん……」
「そうです。あなたは償うことで恐怖から脱することができますが、それは同時に快楽へと入っていくことなのです」
「…………」
「つまり、自分の尊厳が傷つけられることは快感なのです」
「…………かい、かん………」
「そうです。そして、償い方がより惨めであればある程、許される度合いが増し、快感も強くなります。わかりましたね?」
「……はい………」
「よろしい。また、あなたに償いの仕方を教え、悪夢から救ってくれる僕、滝川はこれ以上なく大切で、愛しく、尊敬すべき存在です」
「………はい……たいせつ……」
「よって、僕のことは『成人様』と呼ぶようにしてください」
「……はい…………わかり、ました………」
「では、今から三つ数えると、あなたは今の間に言われたことを忘れ、気持ちよく目覚めます。ですが、僕が『トラビアータ椿』と言うと、どんな時でも今の状態へと戻ります。いいですね?」
「……はい……」
「では、数えますよ。いち……に………さんっ!」
滝川がそう言うのと同時に指を鳴らすと、春奈はゆっくりと目を開けた。
そしてぼんやりと視線を漂わせた後、目の前の滝川の顔に徐々に焦点を合わせる。そして、滝川であることを認識すると、途端にその顔を赤らめた。
「成人、様……」
その春奈の一言で、滝川は暗示が全てうまく刻み込まれていることを判断した。そして、春奈の手を取りベッドから床へと立ち上がらせる。たったそれだけのことでも春奈にとっては嬉しいことらしく、早くも目が潤んできた。
滝川は唇を微かに歪め、春奈に命じる。
「では春奈さん、服を脱いでください」
「え……」
突然の要求に春奈は驚き、戸惑う。
だが、そんなことは気にも止めずに滝川は続けた。
「ほら、早く。それが『償い』なんですから」
変化は劇的だった。
「償い」という単語を聴いた瞬間、春奈の身体の緊張が緩んだ。
そして、恥ずかしそうに顔を俯けながらも、小さく答えた。
「わかりました……」
一枚、また一枚と服が春奈自身の手により脱がされていく。
上着が脱がされ、肩からのラインが明らかになる。なめらかな曲線、そして陶磁のような白い肌に、思わず滝川の目は釘付けになってしまう。詠歌とはまた違った、完成されたスタイルによる美しさだった。
春奈はスカートのホックを外し、ジッパーを下ろしてそのまま手を離す。布が重力に従って落ちた後には、すらりとして健康的な脚が現れた。滝川は脚フェチでもマゾでもないが、これほど美しいなら踏まれたがる者の気持ちもわかるような気がした。
ブラジャーを外すと、詠歌よりも二周りは大きいであろう乳房が、まるでポロンという音すら聞こえてきそうな程の揺れと共に飛び出した。巨乳でありながら重力に逆い上を向いているその形、淡いピンク色の乳首。そのどこにも文句をつけられるところなどなかった。
一枚脱がされるごとに、美しい春奈の身体が露わになっていく。それはさながら、蛹から蝶へと羽化するかのようであった。
それほど、春奈の裸体は芸術的なまでに美しかった。
最後のショーツを脱ぎ捨て、春奈は全裸になる。未だ羞恥心を捨てきれていないのだろう、胸と股間を手で覆うようにして隠している。
だが、その豊満な胸は隠されるどころか、覆いきれていない手により更に卑猥な形に歪められていた。
そんな扇情的な姿のまま、春奈の呼吸が早くなる。滝川と周囲の写真からの視線に晒されることで、暗示により快感を感じているらしかった。
「ほら、皆さんがあなたの裸を見てますよ」
「ああ……!」
滝川が指摘することで、春奈は感極まったような声を上げる。その股間から、透明な液体が内股を伝って床に垂れた。完全に春奈は発情していた。
「ほら、その手をどけてください。あなたの一番いやらしいところが見えないじゃないですか」
「す、すみません……」
春奈は胸と股間から手をどける。そこで滝川は、春奈の乳首がすっかり勃っていることを発見した。
きれいなピンク色のそれは、充血して痛いほどに張りつめている。ぷっくりと膨らんだ春奈の乳首は、どんな果実よりも魅力的に滝川を誘っていた。
その誘惑に逆らわず、滝川は収穫するかのようにその赤い果実をつまむ。
「ふああっ!」
「こりゃまあ……いやらしいおっぱいですねぇ」
「ひい……!」
軽くつままれ、滝川になじられただけで、春奈は全身を震わせて喘ぐ。だが、それでも滝川に抵抗するそぶりは少しも見せなかった。
暗示により、今の春奈は屈辱的なことをされる程、より強い快感を感じる身体になっていた。
吐き出された喘ぎが、滝川の顔にかかる。
そこで滝川は春奈の胸から手を離し、荒い呼吸を繰り返している春奈の顎をそっと持ち上げた。
「あ……」
そのまま唇を奪う。
先ほどのような優しいキスではない。乱暴に、春奈の口内を蹂躙するキスだった。
「んむ……っ!? む、むぐ……! じゅる、んふう……!」
滝川は舌を、春奈の歯を一つ残らず舐めるように動かし、同時に、軽く歯で下唇を食む。
愛撫を受け、身体中から力が抜けた春奈は、滝川にもたれかかるようになる。
滝川はそんな春奈を強く抱きしめると、春奈の後頭部に手を回し、唇同士を合わせて強く吸った。
「んふ!? んんんんん――っ!!」
ビクビクと、春奈の身体が痙攣する。その動きを制限するように更に抱きしめ、滝川は吸引を続けると同時に舌を思いっきり掻き回す。春奈はひたすら耐えるようにして目をつぶる。
そうして、何分くらい経っただろうか。すっかりとろけた春奈の身体中の毛穴からは、汗と共にフェロモンが立ち昇っていた。
「ぷはぁ……」
滝川が唇を離すと、混じり合った唾液が春奈との唇の間に橋を作った。
春奈はとろけきった顔で、満足そうに唇を拭う滝川を見上げる。
「……ふん」
滝川はそんな春奈を鼻で笑うと、いきなり突き飛ばした。
「きゃ……!」
突き飛ばされた春奈は、その先にあったベッドに倒れ込んだ。丁度その姿勢が、動物のように四つん這いになる形となる。
滝川はそんな春奈を、唇を歪め、見下しながら言葉でなじる。
「なんですか、その姿勢は。大きいおっぱいをみっともなくブラブラさせて、まるで牛じゃないですか」
「そんな……。酷いです……」
春奈は抗議のような声を上げるが、姿勢を崩そうとはしない。その表情には紛れもない愉悦が混じっていた。滝川に責められるたびに、ぴりぴりとした電流のような快感が春奈の身体を駆け巡るのだ。
そんな春奈の状態を、滝川が見逃すはずもない。
「そう言う割には、嬉しそうじゃないですか。もしかして、春奈さんは変態なんですか?」
「ああ……! 違います、私はそんな……んああっ!?」
言い切る前に乳首をつねり上げられ、春奈は痺れるような甘い声を出した。滝川は、何度もそれを指の間で転がす。コリコリとした乳首の感触は、予想外に面白かった。
「ほら、ちょっと胸を弄られただけでそんな声を上げるなんて、説得力ゼロですよ?」
「うう……あんっ! くふ、ふああっ!」
言葉責めと乳首への刺激という二つの快感に、春奈は四つん這いの姿勢のまま面白いように跳ねる。股間からは、先ほどから愛液が洪水のように溢れていた。
そんな春奈の様子を楽しんだ後、滝川はたわわに実った二つの果実を、まるでもぎとるかのように揉みしだいた。
滝川の手にも余りある程大きいそれらは、滝川の手の中で従順に形を変える。
「あん、ああっ! うあ、くううっ! 胸が、おっぱいがぁ……ああああっ!!」
「ふふ、こうすると本当に乳搾りみたいですね」
「ああ、そんなぁ……っ! うああ、だめぇっ!」
「どうですか、かつて自分が殺した人たちの前で、胸を弄られてはしたなく声を上げている自分の姿は?」
「ああ、はい……! たまらなく、惨めです……!」
写真からの視線が、筆のように春奈の全身を這う。
度重なる快感により半開きになった口から涎を垂らしながら、春奈は滝川の質問、いや言葉責めに答える。最早何を言われようと、滝川の言葉であれば、それは春奈の中で快感となった。
あまりに魅力溢れる春奈の色気に、そろそろ滝川自身も快感を貪りたくなってきた。特上の女が自分の手により喘いでいるのだ。興奮しない方がおかしい。
滝川はズボンを下ろしながら、春奈へと声をかける。
「さて……どうですか、春奈さん。犯して欲しいですか?」
「……っ! は、はいっ! お願いです、どうか私を犯してくださいっ!!」
「犯す」という単語を聞いた途端、春奈は一変した。滝川の目に自分の秘所が留まるよう腰を高く上げ、そのまま扇情的に振る。それはまさに、発情したメス牛が交尾をねだる姿そのものであった。
だが滝川は、あえてじらすことにする。このままでは、春奈の肉体の誘惑に負けたことになるからだ。
滝川はあくまで、「春奈に頼まれたから」「仕方なく」犯すのだという立場を作りたかった。そうすることで、今後春奈の身体に溺れることを避けるという意図もあった。
「んー、やっぱりどうしようかなぁ。春奈さんは変態ですから、実は男なら誰でもいいんじゃないんですか?」
滝川は取り出した己の肉棒で春奈の尻を軽く叩きながら、それでも尚挿入を渋る。その感触と言葉に、春奈は焦ったように言った。
「ち、違いますっ! そんなことありません、私には成人様だけなんですっ!」
「んー、怪しいですね。だって、ここに来た最初は僕を殺すとか言ってたじゃないですか」
「ああ、ごめんなさい……! でも、今は違いますっ! お願いです、私は成人様じゃないとダメなんです……っ!」
滝川の肉棒に目が釘付けになったまま、春奈は半狂乱のような声を出す。
「えー、それはそれで問題なんじゃないですか? 変態のくせに、選り好みするなんて。そんな生意気言うような子は、どうしましょうかねぇ?」
「うう、そんな……!」
春奈は心の底から悲しそうな声を出し、あまつさえ目に涙すら浮かべる。
その姿から、滝川はこのくらいじらせば十分だろうと判断し、そして恩着せがましく言った。
「しょうがないですね……。それじゃ、せっかくですからそのまま牛みたいに犯してあげますよ」
「あああ……! ありがとう、ありがとうございます……っ!!」
今度は感激の涙を流す春奈にゾクゾクと征服欲を刺激されながら、滝川はベッドの上に膝立ちになり、いきり立つ肉棒を己の欲求そのままに春奈の中へと突き刺した。
「あああああっ!!」
「……っ!?」
挿入された途端、春奈は大声を上げて軽い絶頂に達する。
だが一方で、滝川は驚愕していた。突き刺したはずの己の肉棒が、まるでその瞬間に消失してしまったかのような錯覚を覚えたからだ。
そして次の瞬間、圧倒的な量の刺激が脳へと突き刺さる。
「うぐ……っ!」
思わずうめき声が漏れた。
春奈は、まさに名器というより他なかった。
膣肉全てが、まるで形を知り尽くしているかのように完璧に滝川のペニスを包みこみ、そしてそれがぜん動するかのように幾重の波となって滝川を締め上げるのだ。
少しでも気を抜けば、その瞬間に果ててしまいそうだ。事実、先ほど詠歌相手に二発も抜いておかなければ、既に射精していただろう。それほどに、春奈の中は気持ちがよかった。
滝川は奥歯を食いしばって下腹に力を入れ、ピストン運動を開始する。
「あああっ! うわあっ! いいです、こんなの、信じられない……っ!」
「く……!」
春奈が喘ぐたびに、キュウキュウと更に滝川の肉棒が締め付けられる。更に上の快感が来ることを、滝川はにわかには信じることができない。
一方の春奈と言えば、こちらも現在滝川から与えられている快感を信じることができなかった。
今までに男と寝たことは何度かあったが、今感じているものは過去のそれらとは全くの別物だった。
滝川のペニスが自分の中で一往復するたび、春奈は脳髄まで焼けるような快感を味わう。まるで自分の内部全てが性感帯になってしまったかのようだった。
「ああああああっ! だめ、あそこがぁっ!」
「ぐ……! そ、そこはオマンコって言ってくださね……っ!」
「は、はいっ! オマンコが、オマンコ気持ちいいのぉ……っ!」
パン、パンと滝川と春奈の身体がぶつかり合う音が、部屋中に響く。
滝川は春奈の腕を掴み、引き寄せるようにして上体をのけぞらせる。体勢が変わったことにより、滝川の先端が春奈の上壁を擦る形になった。
「ああ、そこぉっ! そこ、すごくいいですっ! 狂っちゃうぅっ!」
「……っ! そうですか、なら止めないと壊れちゃいますよね?」
春奈の快感が十分に高まったのを察し、滝川はそう言って腰の運動を止めた。
「え……っ?」
春奈はいきなり伝わってくる快感が減少したことに、間抜けな声を上げる。そして、信じられないといった様子で滝川に尋ねる。
「ど……どうして止めちゃうんですか?」
「ん、だって春奈さんが『狂っちゃう』って言ったんじゃないですか」
「そ、そんな……」
春奈はもどかしそうに腰を動かそうとするが、滝川にうまく身体を掴まれている為に快感を得ることが出来ない。春奈は滝川の方を振り返り、必死に媚びた視線を送る。
「うう……! お願いです、動いてください……!」
「無理ですねぇ。春奈さんに狂われてしまったら、僕の仕事が失敗になりますからね」
じらし。
快楽に対する欲望が限りなく高まったところで、その一切を奪う。
それにより滝川は、これから自分が提示する条件を、通常より遥かに受け入れさせやすくしようとしていた。
「では、そういうことで。ここらで止めておきましょうか」
思ってもいないことを言いながら、滝川は春奈の中から自分のを抜こうとする。
春奈はその態度に、髪を振り乱しながら叫んだ。
「いやあああっ! お願いです、もっと私を犯してください! でないと、私狂っちゃいます……!」
「どっちにしろ狂っちゃうんですか? それなら同じじゃないですか」
「だめ、だめなんですっ! お願いなんです、動いてくださいぃぃ……っ!」
それこそ狂ったように頭を振りながら、涙を流して春奈は滝川に懇願する。
そんな春奈をしばし困ったように考える振りをして見つめた後、滝川はぽつりと言った。
「……それなら、僕の奴隷になります?」
「え? ど……奴隷?」
きょとん、と春奈は滝川の言葉を繰り返す。それに頷きながら、滝川は続けた。
「はい。今は春奈さんの更生中ってことになってるんですけどね。もし春奈さんが僕の奴隷になるんだったら、もう僕の仕事は完了したことになりますから、遠慮なく動けるんですけど」
「ああっ、なります、ならせてくださいっ!」
また動いてもらえるかもしれないという希望に、春奈は一も二もなく飛びついた。それほど、今の春奈は快楽に対して貪欲になっていた。
そんな春奈に、まだ滝川は難色を示す。ここが、滝川にとっての一番の正念場だった。
「そんなすぐに言われてもですね……。春奈さんは、プライドってものがないんですか?」
「ああ、プライドなんかいりません! 春奈は、成人様の奴隷になりたいんです!」
「うーん……。それじゃ、春奈さんは僕の言うことなら、なんでもできますか?」
「はい! どんなことでもします、なんだってできます!」
その春奈の返事に、滝川はゆっくりと尋ねた。
「じゃあ、『アバンチュールを裏切れ』……と言ったら?」
その言葉に、一瞬春奈の動きが止まる。
それは、今までの自分の人生を全否定することにもつながるからだ。
だが、春奈は迷わなかった。
春奈は、滝川に向かって宣言するように叫んだ。
「裏切りますっ! 首領も辞めます、仲間だって売りますっ! 私は、成人様の奴隷になれるんだったら、なんだってします!」
「……いいでしょう」
その言葉に、滝川は春奈の精神が完全に改変されていることを確認した。
今までの我慢のご褒美とでも言うように、滝川は先ほどよりも早いピッチで腰を動かし始める。
そのことに春奈は感謝の声を上げる。
「ああああっ! ありがとう、ありがとうございますぅぅっ!」
「これからは、お前は僕の奴隷だ! いいなっ!」
「はいぃっ! 光栄です、ああっ! もっと、もっとぉっ!」
喜びと快感で涙と涎を振りまきながら、くしゃくしゃになった顔で春奈はひたすらに喘ぐ。
突然、滝川が春奈の尻を叩いた。
ぱぁんっ! と、乾いた音が響く。
「ひぃっ!?」
突然の衝撃に、春奈が悲鳴を上げる。
「ああっ! 痛いです、成人様ぁっ!」
「どうだ、犯されながら尻を叩かれるなんて! 惨めな奴隷だな、お前はっ!」
「あああっ!! そうです、惨めなんです! 私は、最低の奴隷ですぅっ! ああああっ!」
暗示により被虐の喜びを開花させられた春奈は、強いスパンキングにすら嬌声を上げる。
いや、滝川に服従を誓った今の春奈なら、たとえ暗示がなくても叩かれることを喜ぶだろう。
ぱんっ! ぱんっ! ぱぁんっ! ぱぁんっ!
滝川はリズミカルに春奈の尻を左右交互に叩く。度重なる衝撃により春奈の尻は赤く腫れ上がり、更に敏感になっていく。
それに同調するように、一回叩く度に春奈の中の締まりが増していった。滝川はそれをひとしきり楽しむと、いよいよラストスパートに移った。
春奈の腰を強く掴み、叩き付けるようにして自分の腰を振るう。
「うああっ! あああっ! だめ、気持ちよすぎるうぅっ! 成人様ぁっ! 私、イッちゃいますよおっ! あああああっ!」
「く……っ! いいぞ、ほらっ! イけっ!」
ぱあぁんっ!
滝川は最後に手の形が残るほどに強く、春奈の尻を叩いた。そして、その刺激により猛烈に締まった春奈の中を無理矢理突き進む。
ごりん、と。快感により降りてきた春奈の子宮口を、滝川の亀頭が抉った。
「……ぐぅっ!」
「ああああああああああああああっっっっ!!!」
その刺激に滝川はたまらず、内部めがけてありったけの精を放つ。
春奈も、自分の最奥まで征服されたこと、加えて精子が子宮内を蹂躙する感覚に耐えられず、思いっきり絶叫しながらイッた。
精子の一つ一つが電流となり、脊髄を伝わって脳を焦がすような感覚すら覚える。その電気刺激に、春奈の身体が大きく海老反りになった。
それが、限界だったのだろう。春奈の股間から黄金色の液体が勢いよく迸った。その飛沫はなめらかな曲線を描いてベッドへと注ぎ、大きな水たまりを作る。
滝川が手を離すと、春奈はそのまま力を失ってベッドへと倒れ込んだ。
「あれ、お漏らししちゃったのかい? 躾けのなってないメス牛だね、春奈は」
滝川は楽しそうに責めるが、その言葉も既に春奈の耳には届いていない様子だった。
限界を超える快感というものを生まれて初めて与えられ、春奈の頭は情報多過から一時的な休養を必要としていた。
(成人様……。春奈は、あなた様の奴隷になれて幸せです……。これからも、ずっとお傍に仕えさせてください……)
どんどんフェードアウトしていく意識の中、春奈は滝川に心から感謝していた。
自分を罪から救い出し、快感を与えてくれる滝川に、春奈は永遠の忠誠を誓った。
そして、気を失った春奈は滝川のベッドへと運ばれ、それから丸二日眠り続けた。
春奈は、完璧に堕ちたのだった。
※※※
アバンチュール首領である春奈の失踪から、二ヶ月後。
一人の少女が喧噪の中、携帯で誰かと会話をしていた。
くりくりとした目は、どこかリスのような小動物を連想させる。まだ成人前であり、ショートカットにしている黒髪の所々にはメッシュが入っている。
「活発で健康的な、十代の女の子」という言葉が、これ以上なく当てはまるような少女だった。
名を、「流川円(るかわ、まどか)」といった。
春奈や詠歌とは違い、スタイルは正直言ってあまりよくはない。だが、かえってそれが発展途上にある者だけが備える魅力というものを醸し出していた。
その彼女は、電話の相手に向かって首を傾げながら尋ねる。
「それで、椿お姉様は、ボクに一体何の用ですか?」
『実はね、ルカ。すごい話があるのよ』
そう。電話の相手は春奈であり、円もまたアバンチュールのメンバーであった。
通称、「ルカ」。
ある事件の際、偶然春奈に助けられたことが原因となり、入団した。それゆえ、春奈を姉のように慕っている。
幼い顔とは裏腹に機械類に滅法強く、その技術を生かしてこれまでに何度もアバンチュールの危機を救ってきたという実績がある。
「すごい話、ですか?」
『そう。暦の仕入れてきた話なんだけどね』
「暦さんが? それなら、信憑性が高そうですね」
『あなた、ユキノとかがその台詞を聞いたら怒るわよ?』
「えへ、すみませーん」
照れたように舌を出し、円は電話の向こうに謝る。持って生まれた元気の良さ、そして歯に衣着せぬ言い方。そのせいで、円は時々失言をしてしまう癖があった。
『そう、それで相談なんだけどね。あなたの力を借りたいのよ』
「お姉様がボクに? えへ、なんか照れちゃいますね」
自分の憧れの人に頼られることを光栄に思いながら、円は胸を張って答えた。
「わっかりました! 何でも言ってください!」
『そう、ありがとう。それじゃ、今から指示する場所に向かって頂戴。そこにハイヤーを回しておくから、それに乗って私のところまで来て。話はそれからにしましょう』
「はーいっ!」
円は元気よく返事をし、通話を切ろうとする。だが、そこでふと思い出したように春奈に尋ねた。
「あの、椿お姉様。この話って、他の人には……」
『そうね、話さない方がいいわね。極秘事項だから、まだ私と暦しか知らないのよ』
「わわ……! 光栄です! じゃあ、早速行きます! どこですか?」
春奈からの信頼に、円は心を踊らせる。そして、春奈から場所を聞いて通話を終了すると、目をきらきらと輝かせながら呟いた。
「よぉし、ボク、頑張っちゃうぞ……!」
……それが、蜘蛛の巣に飛び込んでいくことだとも知らずに。
一方、ここはイオロ内、滝川の書斎。
備え付けの電話機より聞こえる機械音より、通話が切れたことを確認した春奈は、背後の椅子に腰掛けている滝川を振り返り、尋ねた。
「いかがだったでしょうか……?」
豪華な椅子に座っている滝川は、にっこりと微笑んで頷いた。
「うん、上出来だよ。よくやったね」
「あは……。ありがとうございます、成人様」
滝川に褒められた。
そのことだけで春奈は頬を染め、頭を下げる。
一連の調教により、今や春奈は滝川に絶対の忠誠を誓うマゾ奴隷となっていた。
それこそ、滝川のためならかつての仲間であろうと容易く罠に嵌めるまでに、春奈の価値観は作り変えられていた。
春奈は滝川の手招きに従い膝の上に座ると、滝川の後頭部に手を回し、その肉厚な唇を重ねる。
「んふ……」
ねっとりと濃厚なキスを交わしながら、春奈は滝川に尋ねる。
「ルカも、私たちと同じようになれるのですか?」
「うん、そうだね。楽しみ?」
「はい……とても」
心底嬉しそうな表情で、春奈は答える。仲間にも自分と同じ気持ちを味わって欲しいという思いが、春奈の中にはあった。仲間に対する気持ちは、滝川の奴隷となった後も形を変えてはっきりと残っていた。
「そういえば、少し気になるのですが……。犠牲者の方達からの視線は、本物だったのでしょうか?」
滝川の機嫌がいいことを察し、春奈は以前からずっと気になっていたことを尋ねた。
部屋中から感じていた、あの視線の正体についてである。
「ん? どうしてそう思ったの?」
「あ、いえ。ふと思っただけなんですけど、本当にお化けなんて存在するものなのかな、と……ひあっ!?」
質問している最中にいきなり乳首を軽くなでられ、春奈は驚きの声を上げる。
滝川は、そんな春奈を目を細めて見つめると、そのまま春奈の身体をまさぐりながら種明かしを始めた。
「んー、そうだね……。春奈は、『呪われた場所』っていうのを信じる?」
「んっ、呪われた場所、ですか? あんっ!」
滝川のやんわりとした愛撫に息を荒げながら、春奈は滝川の言葉に耳を傾ける。
「うん。そこにいると気分が悪くなる、誰かに見られているような気がする、そんな類いのことが起こる場所」
「え……それって、んふっ! た、ただの迷信じゃないんですか、んああっ!」
「いや、これが実際に存在するんだ。って言っても、別に本当に呪われてる訳じゃないんだけどね」
「……?」
よくわからなさそうに首を傾げる春奈の乳房をもてあそびながら、滝川は語り始める。
「『電磁波と超音波による、知覚外からの脳への刺激による認識障害』……不可視の電磁波や、聴覚外の超音波。自然界には、人間の認識できない光や音があふれてる。それで、こいつらのうちある波長の奴らは、脳の一部とか三半規管とかと共鳴したりして、不快感を与えたり認識に異常を起こしたりすることがあるんだ。『呪われた場所』っていうのは、こういったものがたまたま発生している場所のことなんだよ」
「んあっ! そ、そうなんですか……ふあんっ!」
いきなり乳首をつねり上げられ、春奈はひときわ甘い声を出した。
「そ。これを言い換えれば、そういった電磁波とかを発生させることで、そこを人工的に『呪う』こともできるってこと。これが、春奈の居た部屋にしてた小細工なんだよ」
そして、もう一つ滝川がした作業があった。
それは、自分が部屋に入るときだけ、電磁波と超音波の発生を止めるということ。
滝川が居るということにより、それまで感じていた視線を感じなくなるのだという安心感。
暗示により依存心を極限まで高められた状態の春奈は、あっけなく滝川の術中に堕ちたのだった。
滝川は動かしていた手を止め、息の荒い春奈に尋ねる。
「どう、僕がこんな小細工をしてたんだって知って。僕が憎い?」
「いえ、とんでもありません。おかげで自分の罪を自覚することができ、あまつさえこうして償うことすらできるようになれました。本当に感謝しています」
その言葉には少しの嘘も含まれていないのだろう、春奈はむしろ誇らしそうな表情すら浮かべて答えた。
そんな春奈に滝川は微笑み、寝室に行くよう命じる。
その意味するところを理解し、春奈は顔を赤らめながらも嬉しそうに扉へ向かう。
と、春奈が扉にたどり着く前に、その扉が向こう側から開いた。
詠歌だった。
「成人様、ルカが無事捕獲されたようです」
一礼し、詠歌は滝川に向かってそう報告する。
「完全に予想外だったらしく、抵抗する暇もなく麻酔ガスにより眠らされたそうです。現在は、『顔の檻』内で拘束された状態のまま眠っています」
「そうか。二人とも、ご苦労だったね」
椅子から立ち上がった滝川は二人の元へと歩み寄り、その頭をなでた。
滝川に褒められ、二人は顔を赤くする。
「さーて、じゃあぼちぼち仕事に行きますか」
「はい」
「あ……」
滝川の言葉に詠歌は頷くが、春奈は少し寂しそうな声を上げる。それに気づき、滝川は後ろを振り返った。
「ん、どうしたの春奈?」
「あ、いえ……」
下を向き、もじもじと言葉を濁す春奈を見て、滝川は春奈への褒美の途中であったことを思い出す。
「ああ、そうだね。ちゃんとご褒美をあげないとね」
「え……い、いいんですか?」
予想外の滝川の言葉に目を輝かせながら、春奈は聞き返す。そんな春奈を微笑ましく思いながら、滝川は頷いた。
「うん。頑張ったからね。そういうわけで悪いけど、詠歌は先に行っててくれるかな?」
「あ……はい」
そうやんわりと命じられ、詠歌は不承不承頷く。
抜け駆けされたことは悔しいが、滝川の命令には逆らえない。
詠歌は嫉妬と羨望の意を込めて春奈を軽く睨むと、滝川には丁重に礼をし、玄関から外へ出て行った。
「あの、ありがとうございます。身勝手な願いを聞いてくださって」
「ん、いいって。それじゃ、ベッドに行こうか」
「はい……!」
滝川の言葉に嬉しそうに返事をし、春奈は寝室へと通じる道を歩き出す。そしてベッドの前へと着くと、いきなり四つん這いになった。
滝川は当然のように春奈を踏み台にし、ベッドへ上る。春奈が自ら提案したこの方法は、最近の滝川のお気に入りだった。
「さて……。それじゃ、今日はどうやって犯して欲しいのかな?」
埋もれるほど柔らかいベッドの上に座り、滝川は春奈に希望を聞く。春奈は興奮に目を輝かせながら答えた。
「はい……! 仲間を売るような最低の私を罵りながら、思いっきり激しく犯してください!」
滝川は、暗示の効力に内心笑いながら、春奈の服を乱暴に脱がしていくのと同時になじる。
「やれやれ。本当に春奈は変態なんだね」
「ああ……! そうなんです、私は変態で、マゾで、最低の奴隷なんですっ!」
滝川の言葉責めにますます興奮しながら、春奈は自らをけなす言葉をその美しい唇から紡ぐ。
そんな春奈に滝川はにっこりと笑うと、いきなり春奈を押し倒した。
「いくよ」
「はい、来てください……あああっ!」
滝川の肉棒が突き刺さると同時に、春奈は嬌声を上げる。何度も何度も犯され、春奈のそこはすっかり滝川用に開発されていた。
猛々しく腰を振るう滝川の顔を眺めながら、春奈は白い喉を露わにして喘ぐ。
そしてその一方で、ぼんやりとアバンチュールのことを考えていた。
これから自分は、次々と元の仲間たちを売っていくのだろう。
アバンチュールの崩壊は、もう確定していると言っても間違いない。
過去のトラウマを乗り越える為に作った組織が、今自分の手により壊されようとしている。それは、自分の人生の否定と言っても過言ではない。
それでも。
そうすることで滝川の役に立てることが、春奈にはこれ以上ないほど幸せで。
「……出すぞっ!」
「はいぃっ! ああっ、わたし、イキますっ! ああああああぁぁぁぁ――っ!」
中に出される精液の熱さに、春奈は一気に絶頂へと達する。
白く明滅する視界、滝川によりもたらされる最高の快感の中で、春奈はそっと心の中で呟いた。
(成人様……。春奈は、幸せです……)
だが次の瞬間には、その考えすらも絶頂の波に押し流されていったのだった。
< 終 >