サイミン狂想曲 第四話

第四話

 今朝は思いっきり早起きをして、登校した。数人の先生は学校にいるのかもしれないが、敷地内には全くと言っていいほど人の気配はない。テスト期間中だから、運動部の朝練もお休みだ。まだ、朝露の香りの残る校庭を横切って、僕は体育館に向かう。

 実は、昨日の童貞喪失のリベンジを果たすべく、リンダちゃんと待ち合わせをしているのだ。リンダちゃんとは、体育館で落ち合うことになっている。もっとも、リンダちゃんとメールアドレスを交換するのを忘れていて、さらに清美ちゃんと真由もアドレスを知らず、結局、清美ちゃんに生徒会経由でアドレスを教えてもらって、ようやく連絡を取れたというゴタゴタもあったのだが……

 僕は期待に高鳴る胸を抑えて、体育館の扉に手をかける。入口の鍵は開いていた。足音を忍ばせて、中に潜り込む。無人の体育館はがらんとしていて、式典や体育の授業で使う時よりも広く感じる。

「賢チャ~ン! コッチ、コッチ!!」

 ただ広い空間に、独特のイントネーションの黄色い声が響いた。声のほうを見れば、女子更衣室のドアから、頭と腕だけを出したリンダちゃんがブロンドの髪を揺らしながら手を振っている。僕は、背を丸め、こそこそとしながらそちらに向かう。更衣室のドア越しに、僕とリンダちゃんは向かい合う。

「待ち合わせの時間は、まだなのに……リンダちゃん、早いね」

「ダッテ……賢チャンとのデートだと思うと、いてもたってもいられなくなっちゃったんだもン」

 熱っぽい視線で見つめてくるリンダちゃんは、僕の腕を掴むと、グイッと女子更衣室の中に引っ張ってくる。半ば体勢を崩しながら、更衣室の中に引きずり込まれて僕は目を見開いた。

「エヘヘ……どうかナ?」

 上半身は、ぱっつんぱっつんに胸が詰まって、裾はへそが出るくらいに短く、生地も薄いノ―スリーブのベスト。下半身には、お尻をギリギリ隠して、太ももをむき出しにしたミニのプリーツスカート。リンダちゃんは、チア部のユニフォームを身に着けていた。

「うん、良いよ! リンダちゃん、凄くイイ!!」

 僕は興奮して、リンダちゃんの身体を視線でなめまわす。リンダちゃんは、少し照れたようにかを赤らめながら、腰をくねらす。

「まずは、賢チャンだけのために考えたスペシャル・チアリーディングを見てもらおうかな、って思っていんだけド……」

「うん、うん! もちろん、見せて!!」

 リンダちゃんの申し出に僕は何度も、うなずき返す。リンダちゃんも、嬉しそうにはにかみ、ポンポンを手に取った。すっと直立すると、リズムを取って動き始める。

「フレー! フレー! 賢チャン!! アイ! ラブ! 賢チャン!!」

 女子更衣室は、リンダちゃん一人が踊る分には十分なスペースがあるが、それでも、グラウンドでのチア部の練習と比べれば、圧倒的至近距離だ。リンダちゃんの重そうに揺れる乳房、思いっきり垂直に上げる脚、それに伴って丸見えになるスカートの中身まで、堪らない臨場感となって目前で繰り広げられる。おまけに、スカートの下にはアンダースコートをつけておらず、プリーツスカートがめくれるたびにエロティックな黒い下着が丸見えになる。振りつけも、いつものチア部のものとは違い、お尻を突き出して振って見せたり、二の腕で胸を寄せて乳房を強調したりといったセクシーポーズがふんだんに盛り込まれている。さらには床にお尻をついて、太ももを思い切り開いて見せつけてきた。僕は、夢中になってリンダちゃんのセクシーチアリーディングに見入る。口元から、よだれの筋が垂れ落ちる。

「エヘヘ。賢チャン、楽しんでくれているみたで、嬉しイ……でも、ここからが本番だヨ!?」

 リンダちゃんは一挙動で立ち上がると、ポンポンを投げ捨てる。そのまま、ベストの裾に手をかけると、勢いよくまくりあげた。黒いブラジャーに包まれたミルクタンクが思いっきり揺れて、コスチュームの上着が脱ぎ捨てられる。僕が唖然としていると、続けざまにプリーツスカートのホックまでも外して、脱ぎ落とす。あっという間に、下着姿になったリンダちゃんは、ポールダンサーのように背筋をそり返しながらクルクルと回転する。ピタッと動きを止めたかと思うと、前かがみになりながら、両腕を背に回す。パチンと音がするとブラのホックが外れ、ブルンと揺れながら巨大な乳球が解き放たれる。たわわ過ぎる二つの果実を見せつけるように胸を張ったリンダちゃんは、カウボーイが投げ縄を投げるように、クルクルとブラジャーを回して投げ捨てる。もはや、チアリーディングからストリップへと変貌したリンダちゃんのダンスは、とどめと言わんばかりに唯一残った黒のショーツへと手を伸ばす。絶妙にバランスを保ち、足をまっすぐにのばして、ゆっくりと見せつけるようにリンダちゃんは最後の一枚を脱いでいく。やがて、右手に握られたショーツもはらりと床に落としたら、全裸のまま締めのポーズを決めて見せた。

「賢チャン、どうだっタ?」

 ダンスが終わっても、ぼーっとリンダちゃんに見入っていた僕は、彼女が目の前に顔を寄せてきて、ようやく我に返る。

「うん! うん! 凄い良かったよ!!」

「アハ、嬉しいナ。賢チャンに喜んでもらおうと思って、昨夜は一晩中、振付を考えていたんだヨ?」

 リンダちゃんが、ご褒美をねだるように唇を突き出してきて、僕らはキスを交わす。激しい運動の後の荒い吐息が唇越しに伝わってくる。間近に見るリンダちゃんの額には、小粒の汗が浮かんでいた。お互いの唇の感触を味わうと、僕らは顔を離して各々の瞳を見つめ合う。自分の鼓動が、高鳴っているのを感じる。リンダちゃんが、視線を下ろすと顔を赤らめる。

「賢チャンの……おっきくなっていル」

 僕の股間では、痛々しいくらいに勃起したペニスが、強烈に自己主張していた。恥ずかしそうに言ったリンダちゃんの言葉を聞いて、僕は自分の性的昂奮と、当初の目的を思い出す。

「リンダちゃん、そろそろ……イイかな?」

 暗示をかけたリンダちゃんが逆らうことなんてあり得ないのに、僕は彼女に尋ねてしまう。リンダちゃんは恥ずかしそうに、それでいて嬉しそうに、はにかみながらうなずき返す。

「ウン。モチロン……」

「コンドームなら、持ってきたから……」

 パパが使っているものをこっそり拝借してきたのだ。僕が、カバンに手を伸ばそうとすると、リンダちゃんの手がそれを制する。

「賢チャン、待っテ?」

「……リンダちゃん?」

「……ワタシ、今日は大丈夫な日だかラ」

 リンダちゃんが、潤んだ瞳で僕をまっすぐに見つめてくる。

「お願イ。そのままで、セックスしヨ? 賢チャンの初めて、ありのままでもらいたいノ……」

 僕は生唾を飲み込んだ。催眠術の力とはいえ、僕とリンダちゃんは、熱愛に胸を焦がす恋人そのものだ。僕がうなずくのを見て、リンダちゃんの表情がほっとしたように緩む。

「シャワー浴びながら、しよウ。とっても、気持ちいいんだヨ……」

 僕はリンダちゃんに促されるまま、立ち上がり、制服を脱ぎ捨てた。

 シャワー室の個室にこもった僕とリンダちゃんは、お互いの身体を抱きしめて、再びキスをする。今度は、舌を絡ませ、唾液を交換するディープキスを交わす。

「ンン、アハァ……賢チャン……」

「ん、ちゅぱ……リンダちゃぁん……」

 早朝の体育館の一角にいやらしい水音が響く。テスト期間中の静寂が支配した体育館に、僕らの他に人はいない。リンダちゃんがシャワーのコックを捻ると、温かい湯の雫が降り注ぐ。僕は壁に背をあずけ、長身のリンダちゃんが半ば上からのしかかるような格好になる。

「いくヨ? 賢チャン」

 うっとりとした声で語りかけるリンダちゃんに、僕は身をゆだねる。リンダちゃんの腰が迫り、僕の肉棒が彼女の淫口に接吻する。思わずうめくような甘い律動が響き、僕の男根が学園のマドンナの聖域へと導かれていく。勃起した僕のペニスは人生で初めて女性器を貫き、リンダちゃんの内側に埋没した。

「あぁ、いいよぉ。リンダちゃぁん……」

 僕は、夢見心地でうめく。男根に直接伝わる、熱く、ぬめり、締めつけてくる女性の奥地の味わいは、夢に描いていた以上の官能を僕の全身にもたらしてくれる。目の前の美少女と一つにつながっていると言う実感も相まって、僕は激しくリンダちゃんを突き上げた。腰が跳ねるたびに、リンダちゃんの口から扇情的な吐息がこぼれる。

「ねえ、リンダちゃん、僕の声をよぉく聞いて?」

「アァ……ハィ……」

 僕がリンダちゃんの身体を抱きしめながらささやくと、彼女はそれだけで半催眠状態になる。

「リンダちゃん、あなたは僕と身体が触れると性感が敏感になります……僕と肌を触れていると、どんどん気持ち良くなっていきます……」

「……ハィ……賢チャンと、肌を触れると、キモチヨク……ア、アッ、アァッ!?」

 僕の暗示を受け入れたリンダちゃんは、断続的に感極まったような声を上げる。

「さらに……リンダちゃんは、おっぱいが特に弱いんだよね? おっぱいを僕に触られると、他の場所の何倍も気持ち良くなっちゃう!」

 僕は、目の前で牝牛のごとく揺れる巨大な白い果実にむしゃぶりついた。ピンク色の乳輪に吸いつき、じゅるじゅるとはしたない音を立てながら吸引する。途端、リンダちゃんが背筋をのけぞらせる。

「アァンッ! 賢チャン……ワタシ、もうダメェ!!」

 リンダちゃんが絶叫すると、彼女の秘裂の奥に急激な変化が訪れる。熱い愛液が溢れんばかりに分泌されて、僕の男根を咥えこむ肉壁が奥へ巻き込むように収縮する。リンダちゃんの内側の体温が一層高く増すのを感じた。

「リンダちゃん……僕も、イクッ!!」

 僕は、もはや我慢せずに、自分の煮詰まった欲望を解き放つ。陰のうがひっくり返ってしまうかと思うほどの開放感を味わい、リンダちゃんを内側から僕の色に染め上げていった。

 念願の童貞喪失を終えた僕は、人目を忍んでチアリーディング部の部室へと向かう。鍵は、部長でもあるリンダちゃんが持っているので、すんなりと入ることができた。大会のポスターが飾ってある以外はこじんまりとした地味な部屋だったが、一般的な男子の部室違って、散らかっておらず清潔だった。

「じゃ、リンダちゃん。お願い」

「ウン! わかっタ!!」

 僕は、カバンから数個の小型カメラを取り出すと、更衣室としても使われている部室のあちらこちらにセットしていく。もちろん、着替えの盗撮用だ。部活動がストップしているテスト期間中にセットしておこうと言う魂胆だった。部長であるリンダちゃんも、大好きなカレシである“僕のお願い”に喜んで協力してくれる。

「リンダちゃん、ありがとう。カメラの管理とメモリーの回収もお願いするね」

「モチロン。任せておいテ?」

 僕がさらに無茶な要求を追加しても、リンダちゃんは二つ返事で了承する。ただ、少しだけ照れたような笑みを浮かべる。

「タダ……その代わり、なんだけド……」

 リンダちゃんが僕の耳元にそっと唇を寄せる。

「ご褒美に、またワタシとセックスしてネ?」

 僕は、その場でリンダちゃんに抱きつきたくなる衝動を、どうにか呑み込んだ。

 教室の席に、リンダちゃんとの情交を何度も頭の中で反すうしているうちに、あっという間に昼休みになった。リンダちゃんの肉体を自由にもてあそべると思っただけで、顔のにやけが止まらない。さらに、テスト明けにはチアリーディング部の生着替えを撮影した動画まで手に入るはずだ。

 僕は昼食をとるため席を立つ。全てが、人知れず、僕の満足する方向に動いている。思わず口元にヘンな笑みが浮かび、すれ違った同級生に妙な目で見られてしまう。しまったなあ、と思いながら頭をかいた。それと同時に、携帯電話が陽気な音楽でメールの着信を告げる。差出人は清美ちゃんだった。僕は、メールの本文を開く。

『小野村くんへ。言われたとおりに手配しておきました。放課後、我が家でお待ちしています。鹿野清美』

 清美ちゃんとリンダちゃんを手に入れたけれど、僕はまだ満足したわけではない。次のターゲットは、すでに決めてある。清美ちゃんも、頼んでおいたお膳立てを上手くしてくれたみたいだ。

 焼きそばパンを購買部で買った僕は、一人食べながら放課後の計画に思いを巡らせた。

「おじゃましま~す!」

 真由の快活な声が、清美ちゃんの家の玄関に響く。放課後、僕と真由は清美ちゃんと一緒に彼女の自宅へと移動していた。

「ようこそ、我が家へ。どうぞ、上がってください」

 清美ちゃんは人数分のスリッパを用意すると、僕と真由を自分の部屋へ案内する。清美ちゃんの家は、二階建ての一戸建てだ。二階の一室が清美ちゃんの自室で、フローリングの床に敷かれたカーペットと、窓にかけられたカーテンは柔らかいパステル調の色で統一されていた。本棚は授業の参考書と文学小説が多くて、マンガの類はごくわずかだ。机の脇に飾られたクマとウサギのぬいぐるみが可愛らしい。

 今日は、清美ちゃんの両親が仕事で家を開けているため、友達を招いて一緒にテスト勉強をしようと言うことになっているのだ。清美ちゃんが、真由の他に招待したもう一人の友人……その娘が、僕のターゲットになる。もちろん、僕は招かれざる客と言うことになるのだけれど。

 そうこうしているうちに呼び鈴が響き、来客を告げる。

「ほら、お兄ちゃん! 早く隠れて!!」

 清美ちゃんが玄関に迎えに行き、その間に僕は真由によってクローゼットの中に押し込められる。戸の隙間からこっそりと部屋の様子をうかがうと、清美ちゃんが一人の女子を部屋に招いてきた。

「おじゃまするね。清美」

「うん、気にしないで。菜々子ちゃん」

「菜々子先輩。お久しぶりです~」

 三人の女子が挨拶をかわす。部屋に入ってきた、ショートカットヘアでメガネをかけた一見地味めな女の子……高橋菜々子ちゃんが、ターゲットだ。今回の清美ちゃんのお誘いも、菜々子ちゃんに催眠をかけるための罠にすぎない。そうとは知らずに、菜々子ちゃんは、真由や清美ちゃんとの会話に花を咲かせている。清美ちゃんは、気を利かせるように二人の友人にお茶とお菓子を勧めていた。

 清美ちゃんやリンダちゃんと比べると、確かに菜々子ちゃんは地味で男子からもほとんど注目されていない。ただ、僕は盗撮の経験から彼女が清美ちゃん以上に着やせするタイプで、見た目と反比例するようなグラマラスな肢体を持っていることを知っている。もちろん、ターゲットに選んだ理由はもう一つある。

 菜々子ちゃんは、学校では手品部の部長を務めている。とはいっても部員は彼女一人だけ。実は、菜々子ちゃんは、親友である清美ちゃんに頼んで部費を大目に回してもらい、個人的な趣味に使っているらしい。というのも菜々子ちゃんにはコスプレの趣味があって、部費を材料代に回して、衣装を自作していると言うのだ。

 この話は、清美ちゃんが教えてくれた情報だ。清美ちゃんから、コスプレイベントでの菜々子ちゃんの写真も見せてもらった。露出度の高いアニメやゲームの格好に扮した彼女は、学校での陰気な姿とは別人のように魅力と色気にあふれていた。それに、催眠術でイイナリにすれば、清美ちゃんやリンダちゃん用のエロコスチュームを作ってもらい、楽しむこともできる。

 僕はクローゼットの中から、友人以外には近寄りがたい雰囲気をまとった菜々子ちゃんを見つめる。打ち解けた友人同士が持つ落ちついた空気が部屋に満ちている。少しの間、三人の様子を観察すると、やがて菜々子ちゃんの様子に異常が現れる。

 真由が語る話題や清美ちゃんの受け応えに、曖昧な反応を示すようになる。頭がふらふらと前後に揺れた。まぶたがゆっくりと落ちて、菜々子ちゃんの身体は音もなく背後の本棚に寄りかかるように脱力する。

 僕は清美ちゃんに命じて、菜々子ちゃんのお茶に睡眠薬……以前ウチのママが不眠症を訴えていた時に処方してもらった薬の残り……を盛らせておいたのだ。真由が菜々子ちゃんに顔を近づけて様子を探り、安全を確認した清美ちゃんがジェスチャーで出てくるように僕へ合図を送る。僕は音を立てないように細心の注意を払い、クローゼットの戸を押し開く。

 真由と清美ちゃんが無言で見守る中、僕は菜々子ちゃんの正面に立つ。近くで見ると、丸い顔立ちにサラサラとしたショートヘアが、意識を失った無防備な表情とも相まって、素朴な魅力をたたえている。制服のスカートの端から見える太股はむっちりとした肉づきで、下半身だけ見ると年齢以上に色っぽい。普段はブレザーに隠れていて気が付かなかったが、至近距離で見ると胸のふくらみが窮屈そうにブラウスを内から押しているのが見てとれる。

「菜々子ちゃん、目を開けて……」

 僕がささやくと、菜々子ちゃんが半分だけまぶたを開いた。ほとんど眠っているようで、反応は鈍い。僕は、彼女の前に五円玉の振り子をぶら下げる。いままでやってきたように、彼女の目の前でゆっくりと左右に振り子を動かす。

「はい。菜々子ちゃん、振り子を良く見て? あなたの意識は、だんだんと吸い込まれていきます……身体は重くなって、動きません……耳は、僕の声しか聞こえません……」

 菜々子ちゃんは、ぼーっと半開きの眼で振り子を見つめている。

「菜々子ちゃん……僕の声が、あなたの心に染み込んでいく……あなたは、僕の言った通りに行動するようになっていく……」

 僕が次の暗示を口にすると、菜々子ちゃんの口元ももごもごと動く。と、突然、菜々子ちゃんが目を見開いた。彼女の視線は焦点が備わり、意志の力を感じさせる。

「え、これ……ちょっと! 何しているのよッ!?」

 菜々子ちゃんが大声を上げる。僕は、思わずのけぞった。催眠が、効いていない!?

「何なの一体……身体が動かない……あなた! なんで清美の部屋にいるの? 私に何をしたの!?」

 僕は、一瞬、色んな意味での危険を感じたが、催眠は全く効いていないわけではないようだ。少なくとも、身体の自由を奪うことには成功しているらしい。だが、彼女の精神には催眠の効果は及んでいない。菜々子ちゃんは、明らかな敵意をこめて僕をにらみつける。

「あなた……学校で評判の盗撮犯でしょ! 清美の部屋に潜り込んで、今度は何するつもりなの!?」

「ちょっと待ってよ、菜々子ちゃん……証拠のない言いがかりをされても……」

 菜々子ちゃんの怒声に、僕はしどろもどろで対応する。

「うるさい、あなたなんかが私の名前を呼ばないで!!」

 菜々子ちゃんは視線を動かして、真由と清美ちゃんが部屋にいることを確認する。

「清美! 身体が、動かないの。助けてよ……真由ちゃん。こいつ確か、あなたのお兄さんでしょ? 悪いけれど、ヘンなことしないよう説得して!」

 菜々子ちゃんは、僕の左右にいる二人に助けを求めた。後ずさる僕に変わって、真由と清美ちゃんが、菜々子ちゃんの前に出る。

「ごめんなさい。菜々子ちゃん……これ、小野村くんに言われてやったことなの……」

「菜々子先輩、すいません。でも……私たち、お兄ちゃんのイイナリだから、命令されると逆らえないんですぅ」

 真由と清美ちゃんが、菜々子ちゃんに申し訳なさそうに言った。初め、二人が何を言っているのか理解できず呆然としていた彼女は、言葉の意味を呑み込むと青ざめていく。

「ちょっと……待ってよ……二人とも、どういう意味? これ、どういう冗談!?」

 菜々子ちゃんのすがるような物言いに構う様子もなく、二人は僕のほうを振り返る。

「どうしましょう。小野村くん……菜々子ちゃんも私たちの仲間になってくれるのを楽しみにしていたんですけど……」

 清美ちゃんが、落胆したように肩を落とす。

「ん~そうだ! お兄ちゃん、清美先輩、私たちが気持ち良くなっていることを、菜々子先輩に見てもらうのはどうかな? 良さが分かれば、催眠にかかりたい、って思ってくれるかも……」

 真由が、明るい声で思い付きのアイデアを述べる。僕は、二人の様子を見て、わずかに平常心を取り戻す。菜々子ちゃんが正気を保ったままなのは大問題なのだけれども、良く考えてみれば、真由と清美ちゃんは僕の味方だ。菜々子ちゃんが誰かに今日のことを訴えたとしても、真由と清美ちゃんに僕に有利な証言をしてもらうという手は、もちろんある。それに、僕としてはあまり好まないんだけど……身体が動かなくなっている菜々子ちゃんの弱みを何か握って、黙っているように脅迫することだって可能なはずだ。

 そう考えると、真由の思いつきは良いアイデアとは思えないが、開き直って楽しむのは悪くないような気がしてくる。だいたい、こっちが催眠術で穏便に済ませようとしてあげたのに、勝手に目を覚まして一方的に罵ってくる菜々子ちゃんに怒りを覚えなくもない。僕は、少し意地悪く考えを巡らせる。

「そうだな……真由の言う通り、菜々子ちゃんにはセックスショーを見せてあげようかな。二人とも、いい?」

「はい。小野村くんの言う通りにします」

「私も、OKだよ。お兄ちゃん」

 僕の質問に、真由と清美ちゃんは迷うことなく首を縦に振る。

「ちょっと待ってよ……あなたたち、いったい何を話しているの……?」

 明らかに、怯え、狼狽した菜々子ちゃんの声が背後から聞こえるが、僕は無視を決め込む。僕はポケットから小箱を取り出し、封を開ける。中身は、コンドームだ。三人の女の子に囲まれているけれど、構うことなくズボンのチャックを下ろす。真由や清美ちゃんとの交合の予感に、男根は既に臨戦態勢だ。僕は、おもむろにコンドームを装着する。

「何をしているかって効いているのよッ! その、薄汚いモノをしまって、答えなさい!!」

 菜々子ちゃんが怒鳴り声が煩わしい。僕は、後ろを振り返る。

「コンドームって言ったら、セックスの他にないじゃないか。いくら僕だって、避妊ぐらいちゃんとするよ」

 前を向き直ると、真由と清美ちゃんが興奮気味の表情で僕の股間を見つめている。

「真由、清美ちゃん。明日から、基礎体温を測るようにしてよ。大丈夫な日は、ナマでセックスしよう?」

「あぁ、はい。します……小野村くんと……ゴムなしで……」

「ウフフ……お兄ちゃんの、中出しセックス、楽しみぃ~」

 真由と清美ちゃんのしぐさと表情は、もはや僕好みの淫女のものとなっている。僕は満足して頷いた。

「二人とも、スカートをめくってみて」

 二人は黙って僕の指示に従う。スカートがまくり上げられると、背後で菜々子ちゃんが息を呑む音が聞こえる。真由と清美ちゃんのスカートの下には、下着は見当たらず、淫行の予感に赤く染まった肉唇が丸見えになっている。彼女たちの女性器もまた、爛れた予感に透明な蜜で濡れ始めていて、それを見た僕の肉棒はますます硬さを増す。

「お願い、やめてよ……兄妹でするなんてヘンだよ! それに、清美には手を出さないで!! 二人とも、きっと初めてなんだよ!?」

 菜々子ちゃんが悲痛な叫びを上げる。

「うるさいなあ。菜々子ちゃん、しばらく静かにしていて。僕たちのセックスが終わるまで、しゃべるの禁止!」

 僕がそう言うと、菜々子ちゃんは苦しそうに口を紡ぎ、静かになる。やはり、身体をコントロールする暗示だけは有効らしい。

「よし、まずは真由から始めようかな?」

「うん! お兄ちゃん、私のヴァージンを奪ってね!!」

 僕は、真由に清美ちゃんのベッドに手をつかせて、お尻を僕のほうに突き出させる。むき出しになった小さく可愛らしいお尻を、誘うように振る様が僕の欲情をあおる。僕は、乱暴に真由の腰を掴んだ。

「行くぞ! 真由ッ!!」

 僕は、腰を突き出して、真由の内部へ侵入する。愛蜜を滴らせた秘所は、抵抗を感じさせずに僕を迎え入れる。ただ、リンダちゃんと比べて肉壁がきつく、締め付けが激しい。薄いゴムの膜越しでも、十分に肉の感触が生々しい。気を抜けば、すぐに欲望の濁液を絞り取られそうになってしまう。

「あッ……あぁッ……!」

 断続的なあえぎ声を上げる真由の身体を掴み、ペニスを奥へ奥へと突き入れる。やがて、先端に何かがぶつかるが、構わず前進した。

「ひぁ……ッ!!」

 真由が鋭い悲鳴を上げた。太股に垂れる愛液に、赤い血の筋がわずかに混ざる。真由の処女を奪いとった瞬間だった。

「んんッ……痛ぁッ!」

 痛みを感じているらしい真由の背にのしかかるような体勢をとって、僕は妹の目の前に五円玉の振り子をたらす。ゆっくり揺らしながら、真由の耳元に言葉をつぶやく。

「真由、良く聞くんだ……お前は、えっちなことが大好きな、ヘンタイイイナリ妹……そうだよな……」

「あぅ、ん……ッ。ぁ、私は……ヘンタイで、イイナリぃ!」

「だから、お前の処女喪失の痛みは、快感になる……真由は、処女膜を破られても気持ち良くなってしまうヘンタイなんだ」

「はぅ……あぁッ! はあぁッ!!」

 僕が言ったそばから、真由の声音が艶やかなものへと変わる。僕が腰の動きを再開すると、口角から唾液をたらし、理性が蕩けてしまったかのような表情を浮かべる。

「お兄ちゃん……私、もうッ……あぁんッ!!」

 真由が感極まった声を上げたかと思うと、膣壁がきゅっと締まる。内側がビクビクとけいれんした。しばし震え続けると、力尽きたかのようにベッドの上に倒れ込む。僕は、どうにか射精欲求に耐えきったペニスを真由の内から引き抜いた。

 僕は、深くため息をつくと、清美ちゃんのほうを振り返る。清美ちゃんは僕と目が合うと、ハッとしたように少しだけ目をそらす。

「次は、清美ちゃんの番だよ?」

「はい……小野村くん、私の……初めての人になってください……」

 清美ちゃんは子犬のような瞳で、伏し目がちに僕を見つめる。僕は、清美ちゃんに真由と同じような態勢を取らせた。清美ちゃんのお尻は、真由よりも成熟している。淫肉の花弁が、わずかに開き、僕の男根を待ちわびているようにすら見える。

「んーッ! んんーッ!!」

 声を封じられた菜々子ちゃんの、非難の視線を感じたが、清美ちゃんの蜜をたたえた果実を前にしてはどうでもいい。僕は、果肉を貪るために、肉の裂け目に肉棒をあてがう。真由での経験を活かし、今度はゆっくりと清美ちゃんの奥へと踏み込んでいく。

「ぁ……ッ!」

 清美ちゃんが小さくうめく。清美ちゃんの内側は『熱い』と言うよりは『温かい』と言うような感触だった。僕の分身を取り囲む肉壁は、ヴェールか何かのように優しく柔らかく僕の淫茎を包み込む。そのまま身を任せて同化してしまいたくなるような心地よさが伝わってくる。女神のような清美ちゃんの性格が、この場所に凝縮されたかのようだった。

「……んッ!」

 清美ちゃんは、弱く唇を噛んで耐える。僕のペニスの先端が、処女膜に触れようとしているらしい。

「清美ちゃん、大丈夫? 痛かったら、言ってね……」

「んぁ……私は、大丈夫、ですから……どうぞ、ヴァージンを、奪って下さい……ッ!」

 僕の身体が、勝手に清美ちゃんを突き上げる。清美ちゃんも一瞬だけ苦悶の声を上げるが、僕の行為を受け入れる。処女の鮮血をこぼしながら、清美ちゃんの花弁はより多量の蜜を分泌する。歓喜に震えるようにけいれんする肉壁が、僕の獣欲を昂ぶらせる。

「清美ちゃん! 清美ちゃんッ!!」

「あぁ、小野村くん! もっと……もっとぉ!!」

 僕と清美ちゃんは、一体になったかのように腰を打ちつけ合う。やがて、どちらかともなく、限界の時は近づいてくる。

「小野村くん……私、もう、あぅッ……限界ぃ……!!」

「ぼ、僕も……一緒に、イこうよ?」

「あぁ、はひぃ……あ! ぅあッ!?」

 清美ちゃんの肉壁が急に貪欲な引き締まりを見せ、僕の男根は同時に欲望のマグマを噴出させる。僕は、清美ちゃんの身体を背後から抱きしめて、同時絶頂の一体感に身を任せる。

 しばしの後、真由同様に脱力した清美ちゃんをそのままに、僕は立ちあがる。外側は二人の女の子の愛液と処女血で、内側は僕の精液でまみれたコンドームを外すと、無造作に床に放り投げた。半勃ちになったペニスを隠すこともせず、菜々子ちゃんのほうを仰ぎ見る。菜々子ちゃんは顔面蒼白となって、熱病に侵されたように小刻みに身を震わせていた。

「菜々子ちゃん。もう、しゃべってもいいよ」

 僕は、菜々子ちゃんの発言を許可する。威勢の良い罵詈雑言が飛んでくるかと思ったが、そんなことはなかった。

「あ……ぁ……そんな、清美が……清美が、汚されて……あぁッ!」

 菜々子ちゃんの瞳から、一筋の涙がこぼれた。恐ろしい事実から目をそらすように、言葉の断片を繰り返す。強気な心の壁は、見た限り完全に決壊しているようだった。僕は、ふと思いつき、五円玉振り子を握りしめて、菜々子ちゃんの目の前に立つ。

「さぁ、菜々子ちゃん……この振り子を見て?」

「イヤ……イヤなのに……うぅ……」

 菜々子ちゃんは、抵抗の言葉を口にしながら、視線は振り子の動きを追っている。

「ショックだったね……つらかった? でも、振り子に心をゆだねれば、痛みを忘れられるからね……」

 僕が、暗示の言葉を繰り返すと、菜々子ちゃんの瞳から意志の力が抜けていく。最後には、カクンと脱力する。

「菜々子ちゃん、あなたは今、僕の声だけが聞こえます……わかりますか……」

「あぁ……はい……」

 菜々子ちゃんがうなずいた。どうやら、完全なトランス状態に入ったようだ。催眠を拒んでいた彼女の強い抵抗心と平常心は、目前に異常行為を突きつけられることでひびが入ってしまったらしい。振り子を揺らし続けることで、菜々子ちゃんの心をさらに深い世界へ誘っていく。

「さあ、僕の声だけを聞いて……僕の声だけに従って……そうすれば、不安を忘れられる……」

「はい……従う……不安、忘れる……」

 菜々子ちゃんの反応をもう一度確かめて、催眠をかかり具合を確かめた僕は本題へと入る。

「菜々子ちゃん。清美ちゃんのことで、あんなに取り乱したのは、なぜ?」

 僕の質問に、菜々子ちゃんは答えない。

「質問に答えないと、さっきの不安と悲しみがよみがえります」

「あぁ……ごめんなさい……答える、から……」

 菜々子ちゃんは、抑揚のない声でいやいやと首を横に振る。僕は、振り子を操りながら、菜々子ちゃんの返答を待つ。

「私……清美のこと、好きだから……大好きだから、汚されるの……許せなくて……」

 途切れながらも、菜々子ちゃんが答えてくる。なるほど、なんとなく理由がわかった。菜々子ちゃんからは男嫌いなところを感じたけど、つまるところ、清美ちゃんに対してレズっ気が原因になっていたワケだ。同時に僕は、菜々子ちゃんへの暗示のアイデアを思いつく。

「さぁ、菜々子ちゃん。振り子を、良く見て。振り子の動きを、目で追って。菜々子ちゃんの意識は、振り子と僕の声の中に、どんどん呑み込まれていく……」

 自分の大切なものを奪われた悲しみから逃れようとする彼女は、僕の言葉に逆らえない。菜々子ちゃんを心を覆っていた拒絶の壁が、どろどろに溶けていく。戸惑いながらも徐々に呆けていく彼女の表情から、その様子が手に取るようにわかる。僕は振り子を揺らしながら、にやりとほくそ笑んだ。

< 続く >

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