公共性ボランティア 第三話A

第三話A~女社長美香(36)~

「は?なんですって?」
「ですから、三浦美香さん、あなたは制度開始から三ヶ月以上たっても公共性奉仕活動への参加が見られなかったため、強制奉仕活動処分対象となりました。」
「そんな事知らないわ。だいたい、なんで私がそんなことしなきゃいけないのよ」

 タバコを灰皿に押し付けて火を消すと、目の前の職員を睨みつける。
 市の職員は、一瞬ひるみつつも、書類を差し出した。

「こちらが市からの正式な書類になります。再三の書類での参加勧告にも関わらず、更に二ヶ月もの間、無視なさったため、こうして私が来たわけでして…」
「うるさいわね!この私があんな売女みたいなマネできるわけ無いでしょ!さっさと帰りなさい」
「売女という言葉は、適切ではありません。これは市の少子化対策・性犯罪……」

 ああ、うっとうしい。これだから融通が利かないお役所仕事ってイヤね。
 多少切り口を変えることにする。眼鏡の位置を直すと、

「あなた、いくら欲しいの?」
「は?」
「5万?10万?もう少し包んでもいいわ」
「だから、なんとかそこら辺誤魔化しといてよ」
「……はあ」
「怖い顔しないで。この会社が、私中心で回ってる以上、一週間も抜けるわけにはいかないのよ」
「分かりました」

 市の職員は何かを取り出すと……あれは専用端末ね。ん、なんか光って……

 …………

「それではこちらの方にサインをいただけますか」
「はい……」
「会社の方は抜けてもいいように、他の方に引き継いでおいてください」
「はい……」
「では来週、お迎えにあがります」
「……」

 …………

 来週まで休みを取って参加することになってしまった。まあ、仕方ないわね。
 市民の義務であるんですもの。

【初日】

 私は今、家に迎えに来た市のワゴン車に乗っている。目的地はどこかよく分からない。
 乗客は私の他にも数人、皆きれいな女性ばかりだ。

「到着しました」

 運転手に言われるまま、ワゴン車を降りると、普通の公園だった。
 そこには青い作業服をきた中年男性が待っていた。

「ここからはこちらの清掃員の方から説明がありますので」

 全員降りたのを確認すると、運転手はワゴン車に乗り込み、帰っていった。
 清掃員は、公園の一角にある建物に案内した。外見は、公衆トイレにしか見えない。
 メモ帳のようなものを取り出して読み上げる。

「じゃあ◯◯さん、◯◯さん、◯◯さんの三人は右。残りの三浦さん、◯◯さん、◯◯さん、◯◯さんは左に、分かれて」

 なんとぶっきらぼうな態度の清掃員だろう。不安そうな顔をした参加者の女性が、清掃員に声をかける。

「あの……ここって公衆トイレじゃないですか?専用の施設があるんじゃないんですか?」

 清掃員はにやにや笑うと、

「すいませんね。市も予算がなかなか回らないんですわ。違反者の強制奉仕活動施設は公衆トイレを再利用してるんです。
 まあ、嫌ならこれからはちゃんと活動に参加するんですなあ」

 違う。絶対に嫌がらせだ。まあいいわ、ここまで来たんだからどんな屈辱にも耐えてやろうじゃない。

「じゃあこちらの三人は右の方、そちらの方は左の方に入って下さい。先に右の方から準備しますので、
 左の人達は少々中でお待ちになっといて下せえ」

 左側の入り口から入っていく。中はドアで仕切られた部屋が四つ、どうやら元は女子トイレだったみたいね。
 中に入ったものの、誰も口をきかなかった。これから何をさせられるのか考えただけで身の毛がよだつ。
 しばらくして、あっちの部屋の準備を終えたのか、清掃員が入ってきた。

「ではまず皆さんに説明します。これ、トイレットペーパーホルダーを再利用したコンドーム入れね。アナルセックスなんかをする時に使ってもらって。あとそっちのゴミ箱にゴミ入れて。終わったらここで専用端末処理してもらってね。まあ、後は利用者が来るまで座ってりゃいいから。」
「……あんたら、初日こっちでよかったね。あっちは『色々と』大変だから。ヒヒッ。活動回数少ないと交代ですから、まあ頑張って下さい。三浦さんはここ、◯◯さんはそっち、◯◯さん、◯◯さんはそれぞれ三番目、四番目の個室」

 含みを持った話し方にイライラしたが、とりあえず言われた通りに入って、便座に座って待つ。
 午前中は、特に誰も来なかった。まあ平日というのもあるのかもね。お昼休みになると、人の入ってくる気配がした。
 ギィ……とドアが音を立てる。入ってきたのは、スーツを着た若い男だった。男は手慣れた様子で専用端末を棚にセットすると、ズボンを下ろした。

「とりあえずフェラして」
「……っ」

 この私が知らない男のモノを咥えるなんて……死んでも嫌だと……思っていたけど市民の義務だからしょうがないわね。
 そう、M市に生きる女性市民の義務なんだわこれは。舌先からペニスをむかえると、まるごと咥える。
 フェラの経験なんてろくにないから、とりあえず顔を前後に動かす。

「ふっ……ふっ……ふっ」
「ヘッタクソだなーこのおばさん」
「!?……ん~っ」

 おばさん、と言われてカチンときたけど、これは市民の義務だから多少のことはしかたないのよね。

「もうフェラいいや。ほら、ケツ出して」

 男は私の頭をわしづかみにして腰を引く。じゅるっ、っと音を立ててペニスが口からひっぱり出される。

「あー、もうほら、早くしろよおばさん。こっちは時間がねえんだよ」

 おばさんおばさんと何度も連呼されて、悔しくて泣き出したくなる……けど、これは市民の義務なんだからきちんと利用者の要求に答えなきゃいけないんだわ。

「すいません……」

 一度立ち上がり、向きを変えて便座のフタに手をつくと、お尻を男の方に向けた。

「おい、パンツ下ろすのが常識だろ。なにやってんだよ使えねえな」
「すいません……」

 半泣きになりながらスカートとパンツを下げる。

「よーし、んじゃ、入れてやるからな」

 知らない男のペニスが入っていく。何年ぶりの感覚だろう。それがこんな男にだなんて……。
 悔しくて悔しくて、だけど、市民の義務なん……だから……。

「おお、そこそこ濡れてんじゃねえか」
「おばさん、締まり悪いなあ、ハハハ。もっと締めろよ」

 男に突かれながら、スパンスパンと尻を叩かれる。こんな屈辱的なことまで許されているのだろうか。
 それともプレイの一環として見逃されているのか。

「あっ、はぁ、はぁ、はぁ」
「お。おばさんのくせに感じてやがんのか。こりゃいい。ハハ」
「おら、ほら、ほらどうした」

 何度も何度も繰り返し突かれる。もう限界に近かった。久々のペニス、に、頭がぽうと、いや、これは、せ、セックス、じゃなくて、奉仕、活動だから、セックス、とは違う、市民の、義務、だから。

「お、お、急に締まりがよくなりやがったな。じゃあもっと頑張ってやらねーと」

 パン、パン、パン、パン、何度も何度も男は腰を打ちつける。徐々に感覚が短くなり、男の限界も近いのが分かる。

「よし、出る、出るぞ!」
「んっ~!」

 ドクッ、ドクッ、と中に出されている感覚が分かる。ああ、妊娠してしまったら会社はどうしよう。
 いや、でも子供を育てるのは市民の義務だから、地域のサポートも万全なんだから大丈夫……。
 数分ほど男は腰を押しつけたままでいると、やがて膣からペニスを抜いた。

「ふぅ。ほら、ボーっとしてないで掃除しろよ」
「は、はい、すいません」

 あわてて立ち上がると、代わりに男が便器に腰かける。愛液と精液で湯気だっている「それ」を丁寧に上から下まで舐めとる。
 ひと通り終わったらウェットティッシュで拭き取って終わりだ。ベルトをしめながら男が話しかけてくる。

「おばさん、慣れてないけど今日が初めてなの?」
「はい、そうです」
「まあ、手際悪いけど悪くなかったからまた使ってやるよ」
「ありがとうございます……」

 男は専用端末から棚に置いてある専用端末にデータを送信した。これで活動が記録されたのだろうか。

「やべー昼飯の時間ねーじゃん。じゃあな。おばさん」

 男が出ていくと、中出しされた性器をウェットティッシュで拭き取って、その後、眼鏡を外してひっそりと泣いた……。

「美香、おばさんじゃないし……まだおばさんじゃない……」

 結局、お昼休みのその一件だけで、その後は誰も来なかった。

「はい、今日はお疲れさんでした。また明日もお願いします」

 強制とはいえ、奉仕活動も五時で終わりだ。皆表情は暗い。皆、私と同じような扱いを受けたのだろう。
 しかし人数が少ない。右側に行かされた三人はまだ戻っていないようだ。視線に気づいたのか清掃員は、

「右側の人達は8時までやるんで。だから言ったでしょう、あっちは大変だから交代することがないように皆さんも頑張って下さい」

 清掃員が専用端末を取り出す。

「じゃあ皆さん専用端末を見てください」

 私達も専用端末の画面を見る。清掃員が何か操作している。あれ、また光って……。

 いつの間にか、ワゴンはマンションに着いていた。部屋に入る、ソファにそのまま倒れこんだ。
 ……ものすごく疲れた。お風呂に入ってさっさと寝よう。仕事の方、本当に大丈夫なのかしら……。

< 続く >

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