第1部 第5話 シトリー
魔導院に数ある塔の一室。本ばかりで、何の飾りもない殺風景な部屋の中で魔導書を読み耽る、黒のローブに身を包んだひとりの少女。
年の頃は、17、8といったところだろうか。やや短めの灰色の髪が落ち着いた雰囲気を持たせ、実際の年齢よりも大人びて見える。その青い瞳が魔導書の文字を追って動く。
「……!」
部屋のドアをノックする音に、本を読むのを止めて振り返る。そして、一度指を鳴らすと、軋んだ音を立てて少しドアが開く。そこから顔を覗かせたのは、魔導長付きの秘書官だった。
「リディア様。ピュラ様がお呼びです。頼みたいことがあるので、執務室まで来るようにとのことです」
少女は、黙ったまま頷く。
それは、良く言えば若年ながらも実力のある魔導師らしい威厳のある、だが、悪く言えば愛想のない態度。
少女は、読んでいた本を閉じると立ち上がり、部屋を出る。そして、塔の長い螺旋階段を降りていった。
* * *
魔導院。ピュラの執務室。
部屋のドアをノックする音がした。
来たか。
シトリーは、入り口の方を見る。
すでに足許には、ピュラと、一匹の黒猫が力なく体を横たえていた。
ドアがゆっくりと開いて入ってきたのは、灰色の髪の少女。ローブを纏っているのでよくわからないが、線の細い印象を受ける。
少女は、シトリーの姿を見ると、一瞬怯えた表情を見せた。
だがすぐに、シトリーの足許に視線が釘付けになる。そこにあったのは、横たわる魔導長ピュラの姿。それに、彼女が最近使い魔にした、エミリアという名の黒猫も、そのすぐ横でぐったりと倒れている。
驚いたように立ちつくす少女の目の前で、ピュラが弱々しく頭を上げた。
「だめ、早く逃げなさい、リディア。きゃああっ!」
「黙れ」
シトリーは、冷たく言い放つとピュラの頭を踏みつける。
「!!」
少女の目が吊り上がり、なにやら声にならない叫びをあげたような気がした。
次の瞬間、シトリーは周囲の空間が歪むような感覚に襲われる。
* * *
そして、気付いたときにはもう、見知らぬ場所にいた。
何もない、茫漠とした空間。足許には、なにやら無機質な物質を踏みつけているような感触があるが、乳白色の靄のようなものが立ちこめているのでよくはわからない。
「貴様!」
その、怒りに満ちた、鋭い声がした先を見ると、灰色の髪の少女が、その青色の瞳を怒りに燃え上がらせてこちらを睨み付けていた。
なるほどな。これがその精神世界というわけか。
シトリーは、少女の方に一歩踏み出そうとする。すると。
「動くな!」
少女のその声で、体が動かなくなった。
「な、これは!?」
うろたえるシトリーを見て、少女が勝ち誇ったように告げる。
「ここは、わたしの心の中の世界、わたしだけの王国。だから、ここではすべてがわたしの思うままなのよ!」
それにしては何もないところだな。
シトリーがそう思う暇もあらばこそ。
少女が手を振り上げると、下からいくつもの蔓のようなものが飛び出して、シトリーを縛り上げ、宙に吊り下げる。
「う、うわっ!」
さすがに、それにはシトリーも少し驚く。
「ピュラ様を襲うなんて、赦さないわ!」
少女が、睨み殺さんばかりにシトリーを見据える。
そして、にやりと、残忍そうな笑みを浮かべた。
「さあ、どうしてくれようかしら。こうして、このまま絞め殺して欲しい?」
「ぐああああっ!」
シトリーの首と手足を縛る蔓が絞まり、その口から苦しげな声が漏れる。
「それとも」
「ぐふっ!」
もう1本、別な蔓が伸びてきて、シトリーの肩に突き刺さる。
「こうして、1本ずつ体を串刺しにされるのがいいかしら?」
そう叫んだ少女は、狂気じみた笑みすら浮かべていた。
こいつ、可愛らしい顔してなんてことしやがる!たしかに、気性の激しいところがあるって言ってたけど、そういうレベルじゃないだろうが!
おい、ピュラ!ピュラ!?
シトリーは、苦痛に顔を歪めながらピュラに呼びかけるが、何の返事もない。
そんなシトリーをよそに、少女は口許を歪めて笑いながら話し続ける。
「それとも、そのままわたしの魔法の的にしてあげましょうか?いいこと。ここにいるのはあなたの精神体だけど、この世界で精神体が死ねば、現実のあなたの体も死ぬことになるのよ」
指をこちらに向けてそう言い放つ少女の表情は、冷酷な魔女そのものであった。
なにが自分の殻に閉じこもって他人と言葉を交わさないだと?自分の世界の中だとこんなにも饒舌じゃないか!
それに、なんだ?その、悪魔の僕ですらうすら寒くなるほどの冷酷な視線は?
……頼むぞ、ピュラ。おまえだけが頼りだからな。
少女のその振る舞いに戸惑いながら、内心ひとりごちるシトリー。
だが、少女はそんな余裕も与えない。
「ピュラ様に害をなす者は、このわたしが決して赦さないわ!」
少女がそう叫ぶと、ピシッと音を立てて1本の蔓がシトリーを鞭のように打ち据えた。
「くうっ!」
蔓で打たれた場所が赤く腫れ、痛みに顔を顰めるシトリー。反対に、少女はいかにも嬉しげに微笑む。
「さあ、自分のしたことの愚かさを思い知りなさい!」
サディスティックな笑みを浮かべ、少女はシトリーを鞭打ち続ける。
「さあ、どうしてピュラ様を襲ったの?おまえの狙いは何なの?」
しばらくして、ようやく蔓による打擲が止んだ。
ボロボロになったシトリーの姿に完全に勝ち誇り、問い詰めてくる少女。
「くっ、くっくっくっ。ぐふっ!」
敢えて、余裕を見せるように笑い声をあげたシトリーに、もう1本蔓が突き刺さる。
「な、何がおかしいの!?」
「ふ、ふふふ。ぐはっ!」
さらに数本の蔓が伸びてシトリーを鞭打つ。
「そ、その、気味の悪い笑いを止めなさい!でないと本当に殺すわよ!」
「がはっ!ぐふっ!ぐっ!」
自分の優位を馬鹿にされたと思ったのか、怒りに声を震わせ、ムキになって蔓を操り続ける少女。
ビシッ、ビシッと乾いた音が響き、打たれた手足が、顔が、次々と赤く腫れあがる。
そうして、ようやく蔓の動きが少し収まった。
「答えなさい!おまえは何者なの!?」
「いや失礼。そういえば、自己紹介がまだだったね。僕の名はシトリー。悪魔だよ」
「あ、悪魔ですって!?」
「ああ、そうだ。もっとも、きみたち魔導師に召喚されるようなちゃちな奴らとは違って、僕は上級悪魔だ。だから、この程度のことで死ぬと思うのか?」
そう言って、余裕の表情を見せるシトリー。
だが、それは精一杯の強がり。
おそらく、今の攻撃が続けば、自分の精神は滅してしまうだろう。
しかし、それを悟られてはならない。だいいち、ピュラが定位転換の魔法を発動させる前にゲームオーバーになったのでは目も当てられない。
その正体を知り、驚いた表情でシトリーを見つめる少女。だが、それもほんの僅かな間で、すぐに少女は不敵な笑みを浮かべる。
「そうか、上級悪魔か。だったら、その存在ごと滅してやる」
「なんだと!?」
「言っただろう。この世界はわたしの王国。すべてはわたしの思い通りになる、と。それは時の流れとて同じこと。この世界では、現実世界で10分経つ間に、おまえだけ100年の時を進めることができる。いくら上級悪魔といえども、5000年も時間を進めれば滅してしまうのではないか?それとも、同じだけ時間を遡らせると、おまえの存在自体がなかったことになるかもしれないな」
ちょっと待て!それだけのことができるなら、なぜ相手の心に直接干渉しない!?
改めて、少女の力への違和感がわき上がってくる。
別に、5000年ぐらいでは滅しはしないが、同じことを1万年もされるとさすがに厄介だ。もっとも、計算では、現実世界で15時間はかかるから、その前にピュラがなんとかするだろうが。
そんなことを考えていたとき、シトリーの体を縛めていた蔓が消え、その体が下に落ちた。
「なに!?なぜ勝手に蔓が?」
何が起きたのか理解できず、呆けたように立ちつくす少女。その一瞬の隙をシトリーは見逃さない。
「動くな!」
強く念じながらそう言い放つ。
「なっ、どうして?」
体を動かすことができない少女の様子に、ようやく余裕を取り戻してシトリーは立ち上がる。
この時、何が起きていたのか。
こちらは、現実世界。ピュラの執務室。
床に倒れているふたりの男女は、シトリーとリディアだ。
ピュラが、両手をそれぞれの頭に伸ばして目を閉じ、集中して定位転換の術式を維持していた。
本来、リディアのこの力は、発動している間は体が無防備になるため、護衛が付いていなければ使ってはならないもの。
だが、敬愛するピュラが倒された姿に逆上して、リディアは思わず力を使ってしまったのだ。また、そこが魔導院の中であり、他に敵がいないように見えたのも彼女に力を使わせた理由のひとつだろう。
ましてや、当のピュラが自分の敵となっているなどと、リディアが想像するはずもなかった。
そして、話はリディアの精神世界に戻る。
シトリーが、さっき少女が操っていた蔓のようなものをイメージすると、下から数本の蔓が立ち上がってゆらゆらと揺れはじめる。
なるほど、扱い方はこうするのか。
シトリーは、にやつきながら何度も頷く。そして、再びイメージしながら念ずると、蔓が少女に襲いかかり、縛り上げる。
「ど、どういうことなの!?」
「言っただろう。僕は上級悪魔だって。ましてや、おまえの師匠の魔導長を倒したんだからな。おまえなんかの術が通じるわけがないだろう」
と、余裕綽々のシトリー。もちろん、当の魔導長が外部から定位転換の魔法で干渉していることなどはおくびにも出さない。
「そ、そんなはずは!?」
「だったら、きみの力で、今の状況をなんとかしてみたらどうなんだい?」
少女は、蔓を解こうともがいているが、どうにもできない様子だ。
そして、シトリーが念じると、さっき少女の攻撃で傷つけられた傷が見る見る癒えていき、襤褸切れのようになっていたローブも元に戻る。
「さあ、これで形勢逆転だ」
「なっ、何をする気なの!?」
シトリーが余裕の笑みを浮かべて一歩踏み出すと、少女が怯えた表情を見せる。
「おやおや、さっきまでの元気はどこに行ったのかな?心配しなくても、僕はきみみたいに暴力的な行為は好きじゃないからね。なに、こういうことをするのさ」
下から、また数本の蔓が伸びてきて、吊り下げられている少女のローブを引き裂く。
手足を縛られたまま露わになった少女の肢体。当初のイメージ通り、その線は細く、まるで、陽に当たったことがないかのように真っ白だった。
「くっ、なんて卑劣な真似を!」
それでも、気丈にそう吐き捨ててシトリーを睨みつける少女。
「うん?きみがさっきまでしていたことは卑劣ではないのかい?」
わざとらしく肩をすくめるシトリー。
その間も、1本の触手が伸び、その秘所を隠していた布にかかる。
「いやああっ、そこはっ、だめえっ!」
少女は体をねじってなんとか抗おうとするが、あっけなく布は剥ぎ取られてあられもない姿を曝し出す。
「こ、こんなことをして、ただで済むと!ああっ!いやああああっ!」
裸にされながらも強がりを言おうとした少女に、一斉に蔓が襲いかかる。
あるものはその小さな乳房に巻き付き、あるものはふとももを這い、あるものは腰に巻き付いて、ほとんど茂みらしいもののない少女の秘所を窺う。
「いやあっ、こんなの、気持ちわるいっ!やめて、やめてえっ!」
顔をしかめ、精一杯体をばたつかせてもがく少女。
本当なら、この蔓から媚薬か催淫薬が出てきて欲しいんだけどな。
嫌がる少女の姿を眺めながら、シトリーはそんなことを考える。
いや、本当はやろうとすればできるのかもしれないが、おそらく、この能力の性質上、薬の製造や分泌まで、その仕組みを細かくイメージしなければならないのだろう。ピュラの定位転換の魔法で自分が使えるようになっているとはいえ、もともと他人の能力だ。まだ使い慣れているわけではないし、そんな細かい作業ができるかどうかは不安だ。
それよりも。
本当に心に干渉できないのか、少し実験してみるか。
シトリーは、少女に向かって、今されていることを嬉しく思うように念じてみる。
「いやああっ、やめてええっ!気持ちわるいっ!こんなの、いやああああっ!」
やっぱりだめか。
少女の様子に何の変化もないことを確認すると、シトリーはやり方を変えることにする。
この蔓に触れられると、とても気持ちよく感じる。
今度は、そう念じてみる。
すると、それまで嫌がって暴れていた少女の動きが止まった。
「えっ?いやっ、なに?」
自分の体に何が起きたのか理解できないといった表情の少女。
なるほど、こっちは効くわけか。
シトリーは、心中頷くと、少女に絡みついた蔓の動きを激しくさせていく。
それに合わせるように、少女の体が、ビクン、と震えた。
「いやっ、なにっ、この感じは?いったい、どういうことなのっ?ああっ、いあああああっ!」
さっきまでの、明らかに嫌がる素振りではない、むしろ、戸惑いを浮かべつつ少女は体を悶えさせる。
嬉しいと思う感情はだめで、気持ちいいと感じる感覚はいいのか。
それにしても、その差はけっこう微妙じゃないか。いったい、どうしてこんな違いが?
考えれば考えるほど、この少女の能力に疑問が生じてくる。
まあ、とにかく今はこいつを屈服させることが先決だな。
そう考え直すと、蔓に触れられれば触れられるほど気持ちよくなる、と念じていく。
「はああああっ!こんなのっ、絶対におかしいのにっ!なんでっ!?ああっ、気持ちっ、気持ちいいよううっ!」
体を悶えさせながら、少女がはっきりと快感を口にした。
これは、意外と早くけりがつきそうだな。
シトリーは、快感に身をよじる少女を眺めながら蔓を操っていく。
少女の胸の、ささやかなふくらみに巻き付いた蔓をきつく絞るようにさせて、その先端で乳首を弄る。
また別な蔓は、尻から腰へ、さらには腹へと這い回る。両足に巻き付いた蔓が、螺旋状にふとももを這い上がっていく。
その蔓の動きのひとつひとつが強烈な快感をもたらすのだろう。少女の体がビクビクと間断なく震え続ける。
「いやああっ!らめえっ、もうっ、やめれえええっ!」
必死で叫ぶ少女の呂律は回らなくなり、その声は、どこか官能的な響きすら帯びていた。
いつしか、その大きく広げさせられた両足の間から、噴き出すように蜜を溢れさせている。
「らめええっ、こんなの、らめなのに、きもち、いいいいぃっ!」
ボロボロと涙を流しながら快感に飲まれていく少女。
そこにはもう、さっきまでの残忍で冷酷な雰囲気は微塵も感じられない。
「あああああっ!いあああああっ、らめええええっ!」
蔓のもたらす快感に、吊り下げられたままの体勢でピクンと少女の体が跳ねる。
その時、1本の蔓が少女の秘所に潜り込み、、真っ赤に充血した肉芽に巻き付いた。
「ひぐうっ!あがああああああっ!」
ただでさえ、蔓によって快感を感じさせられるようになっているところへ最も敏感なところを刺激されて、少女が体を反らせて固まった。
「あ、がっ、が、あああぁ」
大きく見開かれていた少女の瞳がせわしなく動いたかと思うと、頭ががくりと垂れて動かなくなる。
もう終わりか。
シトリーは、蔓を操って少女の体を自分の目の前に持ってこさせる。そして、ぐったりと項垂れたその額に指を伸ばした。
「うわああっ!?」
「きゃあああ!」
少女の額に触れようとした瞬間、バチバチッと火花が散ってシトリーの指が弾き返された。
「なにっ!?いったい、なにを、したのっ!?」
そのショックで意識の戻った少女が、まだ大きく喘ぎながらも鋭い視線を向けてくる。
それを言いたいのはこっちの方だ。
自分の力を弾き返す少女の抵抗力。その強固さはピュラの時の比ではない。
これは殻が固いなんてもんじゃないぞ。こんなの、どうやってこじ開けろっていうんだ?
シトリーは、少女には答えずに考え込む。
一方、少女も少し回復したのか、蔓を解こうと手足をばたつかせて喚く。
「離しなさい!離しなさいったら!この卑劣な悪魔が!」
まだまだ元気そうだな。
目の前でヒステリックに喚く少女の様子を呆気にとられて眺めるシトリー。
とにかく、なんとかしてこいつを屈服させなきゃならないってことか。
シトリーは、念を送って少女を縛めていた蔓を解く。
「えっ?」
まさか、本当に解放されるとは思っていなかったのか、少女は一瞬きょとんとして立ちつくす。
そこへすかさず、シトリーは次の念を送り込んだ。
「ええっ!?いやっ、なんなの!?」
戸惑いの声をあげる少女の手が、自分に胸に、そして、もう片方の手が股間へと伸びていく。
「やっ、どうして?やめっ、やめなさいっ!あ、あああっ!」
うろたえて自分の手を叱りつける少女。だが、手の指はそれにかまわず、一度達して充分に湿った己の裂け目の中に入っていく。
ほら、そうやって自分でやっているととても気持ちよく感じる。
シトリーがさらに念を送ると、少女の体がピクンと震えた。
「うあああっ!だめっ、そんなのっ!ああでもっ、気持ちいいっ!あふううっ!」
「ふうん、こうやって人に見られている前でそんなことをして感じるとはよほどいやらしいんだな」
「ち、違うっ!これはっ、おまえがやらせて!ああっ、くうううっ!」
少女はシトリーの言葉に反論しようとするが、途中から完全に嬌声になって言葉にならない。
その両足が内股になってぶるぶる震え始めるが、それでも両手は自分への愛撫を止めようとしない。
さあ、もっと激しく。そうすればどんどん気持ちよくなれる。
「あっ、あああっ!ふああああああっ!」
ずぶずぶと、少女の指が秘裂の奥深く入っていく。
甲高い叫びと共に少女の膝が折れ、這うような姿勢になった。
手をつけないため、両膝と、頭と肩で体を支えながら、己の秘所と乳房を弄り続けている。
「いい格好じゃないか。どうだい、僕の下僕にならないか?おまえみたいないやらしい女なら大歓迎なんだがな」
「だ、誰がおまえなんかの下僕に!ああっ、うああああっ!」
少女は必死に抵抗しようとするが、自分の手がもたらす快感に妨げられる。
「わかっただろう。もう、ここではおまえの力は通じない。全ては僕の思いのままだ」
「だからといって、おまえの下僕になんかっ!あっ、うああああっ!」
「やれやれ、強情だな。それじゃ仕方ない。もっと気持ちよくなってもらおうか」
「な!?いやっ、やめてっ!もうこれ以上はっ!うああああああああっ!」
念を送ると、高まりすぎた快感に、少女の両ももと両腕がぎゅっと、絞られるように締まり、体が固まる。そのまま、バランスを崩して体が横倒しになる。
「ほら、強くクリトリスをつまんでごらん。すごく気持ちいいから。そして、もう片方の手で乳首もつまんで。クリトリスと乳首の両方をコリコリと弄るんだ。」
「ひぎいいいいっ!あうっ!もうっ、やめれええええっ!おっ、おねらいっ!あううっ、ふああああっ!」
シトリーが送った念の通りに少女の手が動き、狂わんばかりに体が跳ね動く。
そして、また呂律が回らなくなっている。どうやら、感じすぎると舌足らずになるタイプらしい。
「どうだい?そろそろ僕に屈する気になったか?」
「あぐうっ、ぐううっ、ひぐあああああっ!」
シトリーの問いに、少女からはまともな返事は返ってこない。
体を何度も大きく震わせながら、それでもはっきりと首を横に振る。
「本当に強情なやつだな。とりあえず、もう一度イってもらおうか」
「んぐ!?あふうううっ!いぎあああああっ!」
シトリーが、さらに快感が高まるように念を送ると、少女の体がきゅうっ、と海老反りになった。
「あううっ、うっ、あっ、あああっ」
そのまま、体の力が抜けても、まだ両手は気怠げに自分への愛撫を続けていた。
シトリーが念を送って両手の動きを止めさせると、少女は手足を投げ出してぐったりと体を横たえる。肩で大きく息をしている以外に、動く気配はない。
「そろそろ屈してくれないかな。いい加減にしないと壊れてしまうよ」
少女を見下ろしながら声をかけても、返事は返ってこない。
「それとも、もう壊れてしまったのかな?」
「ク、クククク」
不意に、少女の口から低い笑い声が漏れてきた。
そして、シトリーを見上げたその目。決して壊れても、正気を失ってもいない。むしろ、勝利を確信したようなその輝き。
「くっ、くはははっ!どうぞ。壊したいのならやってみなさいよ!」
「なんだと?」
「ここからの出方はわたししか知らないはずよ。いくらおまえが力のある悪魔でも、自力でここから出ることはできないでしょう。だから、わたしを壊してしまえば、おまえがここから出る術は失われる。そうなれば、おまえはずっとここに閉じ込められたまま。精神を失ってしまえば、いくら悪魔でもその体は朽ちていくことになる。いいえ。その前に誰かがおまえの体を発見して適切に処理するでしょうけど」
なんてこった。差し違え覚悟か。
シトリーは一瞬顔をしかめるが、できるだけ平静を装う。
「ふん。どうして僕がここから出られないと思う?このくらいいつでも出られるさ」
シトリーも余裕たっぷりに言い放つ。
外にピュラがいる以上、体が処分されることはないだろう。だが、それでも、ここから出られなくなるのは面倒だ。
「だったら、どうして今顔をしかめたの?どうやら、切り札は私の手にあるみたいね」
足元を見透かしたように少女も余裕の笑みを見せる。
「仕方ないな。だったらお望み通り壊してやろうじゃないか」
もちろんそれははったりだ。壊してしまってここから出られる保証はないし、だいいち、目的はこの少女を屈服させることなのだから、壊してしまっては元も子もない。
シトリーが念じると、再び蔓が少女を縛り、吊り下げる。
「ふふん。また同じことをする気?案外芸がないのね」
「さて、それはどうかな?」
再び念じると、1本の蔓が、いきり立ったペニスほどの太さに膨れ上がった。
そして、それが少女の股間に向かってじわじわと近づいていく。
「そ、それで何を!?」
「そんなの決まっているだろう。こうするのさ」
蛇が鎌首をもたげるような姿勢でいったん止まった蔓が、まるで獲物に食らいつくような速さで襲いかかり、その秘所に突き刺さる。
「ああっ!うはあああっ!」
まるで、妖魔の触手さながらに蔓が少女の陰部から潜り込む。
その苦痛に、少女は髪を振り乱して叫ぶ。
「困ったな。もっと気持ちよくなってもらわないと」
「あうう!ああっ!?ふあああああっ!」
再び念じると、たちまち、苦しそうな少女の声に艶が混じり始める。
「あっ、あんっ、んああああっ!」
「くっくっくっ。いい声を出すじゃないか」
ぐちゃっ、ぐちゃっ、と湿った音を立てて蔓が少女の体を出入りしていく。
その体を悩ましげにくねらせはじめ、大きく開かれた股間から、ボタボタと蜜が滴り落ちる。
もう、2度も絶頂に達せられた体は、快感に素直に反応するようなっていた。
「どうだい?僕の下僕になればこの快感をいつでも与えてあげようじゃないか」
「なっ、何度も言わせないでっ!だ、誰がおまえの下僕になんかっ!あっ、あああっ!」
身をよじらせながらも、少女は気丈にシトリーの言葉を拒む。
「そうかい。どうやら、まだ快感が足りないようだね。じゃあ、そいつをもっと太くしてあげようか」
「そっ、そんな!あう!?きっ、きついっ!苦しいいいっ!ひぐあああああっ!」
シトリーの念に合わせて、少女を貫く蔓が一回り大きくなる。そして、少女は再び苦しそうな表情になった。
「苦しくなんかないだろう?ほら、太くなった分、さっきよりも気持ちいいはずだよ」
「そんなわけっ、あるはずが!ふあ!?ひあああああっ!」
ビクン、と大きく体を震わせると、愕然とした表情を浮かべる少女。
「いああああっ!おかしいよっ!こんなのが気持ちいいなんてっ、おかしいのにいいいいっ!」
少女は叫びながら何度も大きく頭を振り、体をよじらせる。蔓に吊り下げられた体がそれに合わせて大きく揺れている。
「だ、だめよ!こんなのに負けたらだめっ!ああっ、んくううううっ!」
「ふーん、まだ余裕があるみたいだね。じゃあ、もっと太くしてみようか」
シトリーのその言葉に、少女の瞳に怯えた色が宿る。
「だめえっ!そんなの無理っ!お願いっ、やめてええええっ!」
「無理じゃないさ。だって、それが太くなればなるほど気持ちよくなれるんだから」
にやつきながらそう言って念を送ると、蔓が一気に太さを増す。
「あっ、ぐっ、がああっ!」
少女の目が大きく見開かれ、獣の咆哮のような叫び声があがった。
その股間を出入りしている蔓は、すでに少女の腕くらいの太さになり、それが中に入り込むたびに少女の下腹部が異様な形に膨らむ。
「きみはその太いのでお腹の中をかき回されるのが気持ちいいんだろう?」
「あぐっ、かはっ!ぎっ、ぎもぢいいっ!おなかのなかっ、ぐちゃぐちゃにかきまわされて、ぎもぢいいいいいっ!」
シトリーが、止めとばかりに念を送ると、少女は、その、すでに蔓とは呼べない太さのものを受け入れながら快感に悶えはじめる。
「あ゛っ、やっ、らめっ!もうらめえええっ!ぎもぢいいのっ、とまらないいいいいっ!ふっ、ふああああっ!」
口から涎をだらだら流しながら、呂律の回らない声で喘ぐ少女。
その体が何度も踊るように跳ねるのは、快感に打ち震えているのか、それとも、極太の蔓が挿入される勢いのせいなのか。それとも、その両方であろうか。
「あへ、ふああ、らめええぇ……もう、わらし、おかしくなっちゃう。あ、ふあああぁ」
極太の蔓の犯され続ける少女の瞳から光が失せはじめ、快感に喘ぐ声も弱々しくなっていく。
そして、その瞳から完全に光が失せようとした最後の瞬間。
「これれ、わらしの、かち、よ」
一瞬だけ瞳の輝きが戻り、そうひと言だけ言うと、少女はぐったりとして動かなくなった。
……本当に強情な奴だな
蔓を操って少女の体を降ろし、蔓を緩めてその場に横たわらせる。
開かれたままのその瞳は何も映していない。
だが、まだ壊してはいない。完全に意識を失っただけだ。もちろん、目を覚まさせて再び陵辱することもできる、少女が本当に壊れてしまうまで。だが、それは本意ではない。
シトリーは、少女の額に指を伸ばす。
また、バチッと火花が散ってシトリーの指は弾き返された。少女の体が小さく震えて反応するが、意識が戻る気配はない。
まいったな。ここまで痛めつけてもまだ僕の力を跳ね返すのか。
さすがのシトリーも、しばしの間途方に暮れる。
このまま快感を与え続けても、屈服する前に壊してしまうだろう。おそらく、苦痛でやってみても同じことに違いない。
なにか、こいつの弱点はないのか?
考え込んでいたシトリーは、ピュラの話を思い出す。
この少女の心を、ここまで頑なにさせたのは、人への恐怖心と不信感の故。そしてそれは、人の優しさに飢えた心の裏返し。
だからこそ、ピュラをはじめとする、ごく僅かの、心を開いた相手に固執し、さっきのように感情を激発させる。
きっと、それがこの少女の弱点となりうる。
だが、それをまともに突いたのでは、さっきのように感情を暴発させるだけだ。
だったらどうすれば?
腕を組んで少女を見下ろすシトリー。ふと、この少女がさっき言った言葉を思い出した。
(「この世界では、現実世界で10分経つ間に、おまえだけ100年の時間を進めることができる」)
そして、続けて少女は言った。その逆も然りと。
10分で100年か。だったらかなり慎重に加減しないといけないな。
シトリーは注意深く少女に念を送る。すると、少女の体が光りに包まれた。
そして、気付くとシトリーの前には、しゃがみ込んで泣きじゃくっている、小さな女の子の姿があった。
おそらく、4歳か5歳くらいであろうか。その、灰色の髪は間違いなくあの少女だ。だが、さっき陵辱した時に裸にしたはずなのに、ちゃんと服を着ている。それも、魔導師のローブではなく、普通の子供の格好だ。
これは?そうか。さっきまでの状態から、体と精神の時間を退行させたのではなく、この少女の人生そのものを巻き戻したということか。
そこまで考えて、シトリーの胸に再び違和感がこみ上げてくる。
これだけのことができながら、なぜ心に干渉できない?
この世界に存在しているのは精神体。いわば、心そのものだ。それなのに心を操ることができず、物質的な操作、せいぜいできても感覚までしか操作できないのは不自然すぎる。
それは、こいつが心を操ろうなどと考えたことがないからか。それとも、ひょっとしたら、この力はまだ未完成なのではないだろうか?
それに、さっきこいつが見せた嗜虐性も気になる。
だが、今はそれよりも。
最初は、少女を抵抗の弱い年齢に退行させてから、自分の力で暗示を仕込むつもりだったが、これならこれでやりようがある。
少女の生きてきた記憶の中に、深く僕の存在を刻み込んでやろうじゃないか。
「どうして泣いているんだい?お嬢ちゃん?」
少女に優しく声をかけると、今初めてその存在に気付いたという風に見上げてきた。
だが、怯えたように立ち上がると表情を強ばらせて後ずさりを始める。
「そんなに怖がらないで。僕は怪しい者じゃないから」
できる限り柔らかい笑顔を作るが、少女は怯えたまま後ずさり続ける。
「困ったな。あ、そうだ!」
ふと思いついて念じると、シトリーの手にお菓子が現れた。
少女は、驚いたようにポカンと口を開き、シトリーの手のお菓子を眺めている。
ふーん、こんなことまでできるのか。だったら、その気になれば、ここを豪華な王国にすることも可能だろうな。
妙に感心しながらも、シトリーは笑顔を作ったままで少女にお菓子を差し出す。
「ほら、お腹は空いていないかい?」
それでもなお、怯えた表情でシトリーの顔とお菓子を見比べ、逡巡する少女。
だが、やはりお腹が空いていたのか、少女は近寄ってきて、シトリーの手からお菓子をつかみ取る。
「どうだい、おいしいかい?」
お菓子にかじりついた少女に声をかけると、黙ったまま頷いた。
「そうか、それは良かった。僕の名はシトリー。君の名前は?」
笑顔でそう問いかけても、少女からの返事はない。
「ああ、別に答えたくなかったら言わなくてもいいから」
「……リディア」
それは小さな、本当に小さな声だった。
「そうか。リディアちゃんか」
そう言って微笑むと、シトリーはその場に座り込む。
すると、少女もちょこんと座り込んだ。
そして、小さな声で少女がポツリポツリと話を始めた。
「ふーん、村の子供たちにいじめられたのか。可哀想に」
「うん。でも、こどもだけじゃなくて、おとなもそう」
「ひどい。どうしてなんだい?」
「……いっちゃうと、きっとおじちゃんもわたしのこときらいになるから」
そう言って表情を曇らせる少女。
おじちゃんか。そんな年には見えないようにしてると思うんだけどな。
まあ、こんな子供からしたら充分おじちゃんか。
シトリーは、内心苦笑いしつつも表情には出さない。
「そんなことないよ」
「でも」
泣きそうな顔で見上げてくる少女に向かって、シトリーは微笑みで返す。
「大丈夫だよ。僕はリディアちゃんのことを嫌ったりしないから」
「ほんとうに?」
「本当だよ」
少女は、まだ不安そうな顔をしながらも、ゆっくりと口を開く。もちろん、少女の口から語られたことは、シトリーもピュラから聞いて知っていたのだが。
「あのね、わたしは”とりかえこ”だってむらのみんながいうの。むらのなかでわたしだけこんな、はいいろのかみで、あおいめだから。だから、わたしはまもののこどもなんだって」
「なんだ。そんなことはないよ。リディアちゃんは普通の子供じゃないか」
「そうなの?」
「そうだとも。きっと、この村の人は外のことは良く知らないんだな。この国には、きみみたいな人はいっぱいいるよ」
「ほんとう?」
「ああ。だって、僕もほら、目はこうやって金色だろ。こんな目の人は村にいるかい?」
「ううん。いない」
少女は、ぷるぷると首を横に振る。
「そうだろ。それだったら、僕も悪魔の子供になるじゃないか」
「でも、むらのひとは、わたしがいるとわるいことがおこるって。むらでなにかわるいことがあると、わたしのせいだっていうの」
「なんてひどいことを言うんだろう。そんなことあるわけないじゃないか」
「だって」
「それとも、本当にきみが何かしたのかい?」
そう言われると、また少女は泣きそうになって、ぶるんぶるんと頭を振る。
「じゃあ何も心配要らないよ。きみは何も悪くないから」
そう言って、シトリーは少女の頭を優しく撫でてやる。
「ありがとう、シトリーのおじちゃん」
「うれしいな。僕の名前を呼んでくれるんだね」
シトリーが笑うと、少女も初めて笑顔を見せた。
そうやって、もう少しの間話をしていると、再び少女が表情を曇らせる。
「あ、そろそろおうちにかえらなくちゃ」
暗い表情でそう言うと、少女は立ち上がる。自分の家ですら、少女にとって居心地は良くないのだろう。
「ねえ。おじちゃんはどこにすんでいるの?」
「うーん。僕はこの国のあっちこっちを旅しているからねぇ」
「じゃあ、もうあえないの?」
「いや、またきっときみに会いに来るよ」
「ほんとうに?」
「ああ、約束するよ」
シトリーがそう言うと、少女は弾けるような笑顔を見せた。
そして、手を振って向こうに振り向いた少女に向かって、シトリーは念を送って少女の時間を少しだけ進める。
すると、目の前に、またしゃがみ込んで泣いている少女の姿があった。
「リディアちゃん」
「あっ、シトリーのおじちゃん!」
声をかけると、少女が泣き腫らした顔で見上げてきた。
「おじちゃん!あいたかったよう!」
立ち上がると、少女はシトリーに抱きつく。
「どうしたんだい?またいじめられたのかい?」
「うん。うん。」
シトリーにしがみついて泣きじゃくりながら、少女は何度も頷く。
少女が泣きやむのを待ってから、シトリーはまたお菓子を出してやる。
そして、優しく少女の話し相手になってやるのだった。
それから、シトリーは慎重に時間を進め、数カ月おきに少女に会う。
いつ会っても少女は泣きじゃくっていた。シトリーはそんな少女にお菓子を与え、慰め、話し相手になってやる。
そうやって、自分に関する記憶を、少女の中に丹念に刷り込んでいった。
そんなことを何度も繰り返した後。
少女が、いつもよりも激しく泣いていた。
「リディアちゃん?」
「ああっ!シトリーのおじちゃああん!」
声をかけるなり、しがみついてきて激しく泣きじゃくる少女。
「なんだい!?何があったんだい?」
「むらのこが、わたしをいじめていたこが、かわでおぼれちゃったの!」
「なんだって!?」
もちろん、その話も知っているが、シトリーはわざと驚いてみせる。
「それで、むらのみんながわたしのせいだって!」
「そんな!?どうして?」
「わからない!なにもおぼえていないの!でも、きがついたらめのまえでそのこがながされてて!」
「落ち着くんだ、リディア。よく考えてごらん。きみがそんなことするはずないだろ?」
「わからない!わからないのっ!」
「大丈夫。僕は信じてるよ。きみがやったんじゃないって」
「おじちゃん!おじちゃああああん!」
シトリーの腕の中で激しく泣き続ける少女。
結局、少女はシトリーに抱かれたまま、泣き疲れて眠ってしまったのだった。
そして、今度は少しだけ時間を進める。
もちろん、少女は、まだ泣いていた。
「シトリーのおじちゃん!こんなにすぐにあいきにてくれるなんて!」
「ああ。この前あんなことがあったから心配になってね」
「ううっ!あ、ありがとう、おじちゃん!」
腕を広げると、少女は泣きながらその中に飛び込んできた。
「それでね。わたし、みやこの、まどういん、ていうところにつれていかれるみたいなの」
しばらくして、ようやく泣きやんだ少女がぽつり、ぽつりを話し始める。
「きっと、みやこでもまたいじめられるのかな、わたし」
「そんなことはないよ」
「どうして?」
「初めて会ったときに言っただろう。この国にはきみみたいな人はいっぱいいるって。都は、人が沢山いるところだから、髪や目の色が違うだけでいじめられたりしないよ」
「そうか。そうなんだ」
「それに、魔導院ていうところにはきみをいじめたりなんかする人はいないはずだよ」
「ほんとうに?」
「本当だとも。それとも、僕の言うことが信じられないのかい?」
「ううん」
シトリーの言葉に、慌てて首を振る少女。
「だから、安心して都に行くといいよ」
「うん。ありがとう、おじちゃん」
少女は、ようやく笑顔を見せたのだった。
そして、次は1年近く間隔を開ける。
今度は、少女は泣いていなかった。しかし、やはり沈んだ表情なのには変わりはなかった。
「リディアちゃん」
「あっ!シトリーのおじちゃん!すごいひさしぶり!わたし、とってもあいたかったんだから!」
そう言って、少女が抱きついてきた。
「ごめんごめん。ちょっと忙しくてね。どうだい?こっちには慣れたかい?」
「うん……」
なぜか、浮かない顔の少女。
「どうしたんだい?またいじめられてるの?」
「ううん」
「そうだろう。ここには、きみをいじめるような人はいないはずだから。あ、でも、だったらどうして?」
「わたし、こわいの」
「怖い?何が?」
「ここのひとたちはみんなとってもしんせつにしてくれる。まどうちょうのピュラさまはほんとうにやさしいひと。でも、わたしやっぱりこわい。またいじめられるんじゃないかって。シトリーのおじちゃんじゃないひととおはなしするのがこわいの」
そう言って不安を口にする少女。シトリーは、その頭をポンポンと優しく叩く。
「もう、本当に心配性だな、リディアちゃんは」
「でも」
「ここにはきみをいじめる人はいない。だから、安心していいんだよ」
「でも」
「きみも言ってたじゃないか。ここの人はみんな親切だって。それにピュラ様だ。あの人は本当に優しい人で、あの人の言うことを聞いていれば間違いはないから」
「でも」
「さっきから、でも、ばっかりじゃないか。いいかい。今まで僕が言ったことで、間違っていたことがあるかい?」
「ううん」
「そうだろう。だから、安心するんだよ。僕も、もう少しいっぱい会いに来るようにするから」
「ほんとう!?」
シトリーのその言葉が、少女を一番喜ばせた。
「ああ。本当だとも。だから、きみはピュラ様の言うことをよく聞くんだよ」
「うん!」
少女がシトリーに見せる、屈託のない笑顔。それは、完全にシトリーのことを信頼している笑顔であった。
そして、次に時間を進めたときには少女の雰囲気が少し変わっていた。
「あっ、きてくれたんだね、シトリーのおじさま!」
「どうしたんだい、おじさまだなんて?」
「ピュラさまがいっていたの。めうえのひとには、けいしょうをつけなさい、って」
「そうかそうか。偉いなリディアちゃんは。そうやってピュラ様の言うことをちゃんと聞くんだよ」
「ふふふ!おじさまって、ピュラさまのことをよくしってるのね!」
「うん、まあね」
「わかった!おじさまもまどうしなんでしょ?」
「どうして?」
「だって、むかし、わたしがもっとちっちゃかったころ、おじさまはよくおかしをだしてくれてたじゃない。それも、なにもないところから。あれって、ぜったいにまほうだっておもうの!それに、おじさまのそのふく、まどうしのローブですもの!」
そう。シトリーの着ている服は、元の姿に戻ったときにピュラが羽織らせた魔導師のローブだった。
「はははっ、そうかそうか。そうだね。じゃあ、リディア、きみには言っておこうか」
「なあに、おじさま?」
「実はね、僕はピュラのご主人様なんだよ」
「えええ!でも、ピュラさまのごしゅじんさまは、おうさまじゃないの?」
「それは、それが仕事だからだよ。でも、ピュラの本当のご主人様は僕なんだ」
「そうだったの?だったら、もっとはやくいってくれてたら、わたし、あんなにふあんなきもちにならなかったのに!」
驚いて目を丸くする少女に向かって、シトリーは指を1本立てて、内緒だという仕草をする。
「ごめんごめん。でもね、このことは誰にも言っちゃいけないよ。僕がピュラのご主人様だっていうことは、内緒にしておかなくちゃいけないんだ。そう。ピュラにも言ってはいけないよ」
「ピュラさまにも?」
「ああ。だけど、いつかきっと、ピュラの方から話してくれると思うから。その時まで、このことは僕ときみだけの秘密ってことにしておいてくれないかな」
「うん!」
シトリーのことを信頼しきっている少女は、その言葉を疑うと言うことを知らない。
繰り返し記憶の中に刷り込まれ、いつしか、少女の中でシトリーの存在はかけがえのないものになっていた。現実の世界でピュラがそうであったように。いや、それ以上と言っていい。
それに、この世界で経験したことは、少女にとって現実に経験したのと同じことになるはずだという確信がシトリーにはあった。
それからは、時間を進めるたびに、少女は笑顔でシトリーを迎えるようになった。
ピュラから習った新しい魔法のこと。親友がひとりできたこと。その親友はこの国の王女で、ゆくゆくは女王として即位するはずの人であること。そういった話を、嬉しそうに話す少女。
そこには、かつての泣いてばかりいた子供の姿はない。むろん、敵意を剥き出しにしてシトリーを襲った魔導師の姿は影も形もあるはずはなかった。
ピュラの話の通りならば、少女がこうやって心を開くのは、ピュラとクラウディア、そして、今ではシトリーも加わったが、それだけで、他の人間には、口もほとんど聞かないはずだった。だが、シトリーの前で嬉しそうに話をする少女は、そんな素振りすら見せなかった。
そして、少女が思春期さしかかったある時。
「あ、おじさま!」
嬉しそうにシトリーに駆け寄る少女。
だが、不意に立ち止まると、その表情が曇る。
「どうしたんだい、リディア?」
彼女は、少し思い詰めた様子であったが、すぐに唇を引き結んで顔を上げる。
「ねえ。おじさまって、いったい何者なの?」
おずおずと、そう切り出す。
「ん、どういうことだい?」
「だって、おじさま、わたしとはじめて会ったときからぜんぜん変わらないし、年もとらないんですもの。わたし、思うの。おじさまはふつうの人じゃないんだって」
そう言うと、リディアはすこしだけ拗ねたような顔をする。
「ねえ。教えて、おじさま。わたし、なにを言われてもおどろかないから」
真剣な眼差しで見つめてくる少女。
「そうだね。そろそろ、本当のことを言わないといけない時だろうね」
シトリーも、真剣な表情を作ってリディアを見つめる。
リディアが、黙ったままゴクリと唾を飲むのがわかった。
「じつは、僕は悪魔なんだ」
「おじさまが、悪魔?」
さすがに、彼女は動揺を隠せない。
「今まで隠していてごめん。でも、昔の、いつもいじめられて泣いていたきみにこのことを話すわけにはいかなかったんだ」
「わたしに、いつも優しくしてくれたおじさまが、悪魔だなんて。じゃあ、わたし、やっぱり悪魔の子だったの?」
「ああ」
もちろん、その証拠は何もない。ただ、シトリーには確信めいたものがあった。
リディアの、その魔力の大きさと精神力の強さ、そしてなにより、シトリーをいたぶったときに見せた残虐さ。
おそらく、魔法に長けた古の種族というのは、魔の血を受け継ぐ者。
太古の昔、まだ神も魔もなく、皆が地上で暮らしていた時代があったという。
やがて、正義と秩序に属する者が天界を開き、悪と混沌に属する者を魔界に追いやったのだそうだ。
もちろん、そんな時代のことはシトリーも知らないし、彼のように、途中で天界から魔界に堕ちた者には確かめようもない。
だが、現在もかなりの種類の魔物や妖精が地上に残っているように、本来魔界に属するはずの者も少しは地上に残ったのに違いない。そして、人間と交わり、子孫を残した。
リディアはおそらく、その末裔。そして、彼女は魔の血を強く受け継いだ。
たとえそうでなくても、リディアを悪に引きずり込むためには、自分を悪魔の子だと思いこませる必要があった。
「そうか。そうだったんだ……」
そう、寂しそうに彼女は呟く。
「今まで嘘をついていてごめん。でも、きみは僕にとって大切な仲間だから放っておくわけにはいかなかったんだ」
「大切な、仲間……。あっ、でも、おじさまはピュラさまのご主人さまだって!だったら、ピュラさまも悪魔なの?」
「いや、ピュラはただの人間だ。魔力は図抜けてるけどね。あいつはいわば、僕の下僕、いや、使い魔といったところかな」
「ピュラさまが、使い魔?」
「ああ。だから、きみをここに連れてこさせたのも、僕がピュラに命じたんだ。あのままあの村にいたのではきみのためにならない。だから、ピュラに命令してここに保護させたんだ」
話の筋を通すために、物語を作っていくシトリー。それでも、リディアはショックを隠せない。
「そうか。わたしが悪魔の子だから。だからわたしはいじめられたんだ。やっぱり、悪いのはわたしだったんだ」
「いいや。それは違う」
シトリーは語気を強めて言う。
「え、おじさま?」
「きみが悪いんじゃない。きみをいじめたやつが悪いんだ」
「でも、わたしは悪魔の子で、だから、いじめられて当然で」
「それは、人間たちの理屈だろう、リディア」
「そ、それは」
「だいいち、なんで悪魔の子だからといって、きみがいじめられなくちゃいけないんだ?」
「それは、やっぱり悪魔は人間にとって良くない者だから」
「じゃあ、きみは何か悪いことをしたのかい?それが原因でいじめられていたのかい?」
「ううん」
「だろ。悪魔の子だからって、何もしていないのに酷い目に遭わされるのは理不尽だと思わないか?」
「うん」
「だから、悪いのはきみじゃない。人間の方なんだよ」
「そう、なの?」
「そうさ。そもそも、人間は悪魔に仕えるべきなんだよ。だから、ピュラのように賢くて、真実のわかる人間は悪魔の僕に仕えているんだ」
「そうだったんだ」
「いいかいリディア。悪魔としての誇りを持つんだ」
「悪魔としての、誇り……」
反芻するように、シトリーの言葉を繰り返す少女。その頬にうっすらと赤みが差し、夢見るような眼差しになる。
「僕たちは、人間を本来あるべき姿、悪魔に仕えるものに変えていかなければならない。そうすれば、もう誰もきみをいじめなくなる」
「だれも、わたしを、いじめない」
うっとりとした表情で、リディアはシトリーの話に聞き入る。
「だからリディア。きみの力を僕のために使ってくれないか?僕は、これからこの世界を僕たち悪魔のための世界に変えようと思う。そのために、きみの力が必要なんだよ」
「悪魔のための、世界。そのために、わたしの、力が、必要」
なにか、歌でも歌うように少女は呟く。
「もうわかったかい、リディア。悪いのはきみではなく、周囲の人間なんだよ。だから、きみをいじめたような悪い人間には制裁を加え、この世界を変えなきゃいけないんだ。だから、僕についてきてくれ」
「あ!はい!」
「うん、いい返事だ。ありがとう、リディア」
「あ……」
抱きしめてやると、少女は驚いたように体をすくめる。
シトリーは、その顔を見つめ、自分の顔を近づけていく。
彼女も目を瞑って、顔を近づけてくる。
「ん、んふ」
はじめは、優しく唇を重ね合わせる。
「んっ、んむっ!?」
リディアの口の中にシトリーが舌を挿し込むと、腕の中でその体がビクッと震えた。
僕と舌を絡ませているととても気持ちよく感じる。
すかさず、リディアに向かって念を送る。
「んんんっ!んむーっ!」
すると、閉じていたその目が大きく開かれた。
「んっ、んむむっ!んくっ、んんっ!」
濃厚な口づけを交わし、舌を絡ませる。それだけのことなのに、シトリーの腕の中で少女が、その細い体を何度も震わせる。
大きく見開かれていたその目が、トロンと緩んでいく。
「んくっ!あふううぅ」
長い口づけを終えると、ふたりの間を透明な糸が引く。
大きく息をつき、紅潮した顔でシトリーを見上げる少女の瞳は蕩けて潤んでいた。
「キスがこんなに気持ちいいなんて、わたし、知らなかった」
「それは、きみの中の悪魔の血が、僕を求めているからだよ」
もちろん、それはシトリーがそう感じるように念を送ったからだ。それも、もともとはこの少女の力だというのに。
シトリーは、もうその力をかなり自在に操れるようになっていた。
「わたしが、おじさまを求めて?」
「そうだよ、リディア。きみの心も体も、僕のものになりたがっている。だから気持ちがいいんだ」
「そうなんだ」
「ああ。そして、僕もきみが欲しい。きみを、僕の下僕にしたいんだ」
「わたしを、おじさまの下僕に?」
「それとも、僕の下僕になるのは嫌かな?」
そう言って見つめると、彼女はふるふると首を振る。
「ううん、ぜんぜん、いやじゃない」
「ありがとう、リディア。じゃあ、僕と一緒に、愚かな人間たちに制裁を加え、世界を変えていこうじゃないか。悪魔らしくね」
「悪魔らしく……。はい!」
大きく頷いてリディアが見せた笑顔。その瞳には、シトリーを縛り、嬲っていたときの残忍な光が宿っていた。
「じゃあ、これからきみを僕の下僕にするよ」
「うん」
シトリーは、手を伸ばすと少女の服を脱がせていく。この世界でリディアの裸体を見るのは二度目。だが、さっき陵辱したときよりも少しばかり未発達なその体。ただでさえふくよかとはいえない胸のふくらみも、よりささやかなものになっている。
恥ずかしそうに睫毛を伏せる少女の体に、念を送りながら手を伸ばす。もちろん、その念は彼女の体の感度を上げるためのもの。そして、シトリーに触られ、されることは全て気持ちよく感じるようにさせるもの。
シトリーの手がその細い肩に触れると、リディアはぎゅっと目を瞑って体を震わせる。
そのまま、肩に手をかけてその体をくるりと回転させ、背後から抱きしめた。
「んんっ、あああああっ!」
そうやって体を密着させただけなのに、その口から堪えかねたような甘い声が漏れた。
そして、今度は両手でその胸の小さなふくらみを包み込む。
「あっ、ふわああああっ!おっ、おじさまっ!」
感度を高められた体には、たったそれだけでも刺激が強すぎたのだろう。
「あふっ、ひあっ、あっ、ああーっ!」
両手を動かしてその柔らかなふくらみを揉むと、少女は切なそうに喘ぎ始める。
「んっ、んふうっ、ああっ!あ?おじさま!?」
片手で乳房を揉み続けながら、もう片方の手を胸から下へ降ろしていき、その秘裂へとかける。
「ああっ、やだっ、そこはっ、恥ずかしいっ!あああっ!」
恥じらいを見せながらも、シトリーのなすがままに任せる少女。
その襞をシトリーの指がめくり、中に潜り込む。
「あうんっ、すごいいっ!ああっ、すごくっ、きもちっ、いいのっ!ああっ、おじさまあぁ!」
裂け目に挿し込んだ指を動かすと、体を密着させた少女の筋肉がビクビクと震えるのが伝わってくる。
リディアが、快感を口にしながら大きく頭を振ると、その灰色の髪がシトリーの目の前でばさばさと揺れる。
「あんっ、うふうっ、あ、はあんっ、ああっ!」
少し内股になって快感に身をよじる少女。
その裂け目からは、早くも湿った音が響き、中に挿し込んだシトリーの指に、ねっとりと温かい感触がまとわりつく。
リディアの体は、熱でもあるかのように熱く、そのうなじから、ほのかに湯気が上がっていた
「あふ、ううん、あっ、お、おじさまぁ!」
胸を揉んでいた手をリディアの顎にかけて、その顔をこちらに向かせる。振り向いた少女の目尻は緩み、瞳がふるふると潤んで揺れていた。頬は紅潮し、こちらにかかるその吐息は燃えるように熱い。
今、ここにいるのは、早熟の女魔導師でもなく、悪魔の子でもない。ただ、快感に身も心も蕩けさせたひとりの少女。
シトリーが顔を近づけて舌を伸ばすと、彼女も舌を伸ばしてシトリーの舌に絡めさせてくる。
「あふ、んん、んふっ、んっ」
顔を寄せ合い、熱心に舌を絡めるふたり。
シトリーが、リディアの灰色の髪を掻き上げるようにしてその頭を抱くと、彼女も腕を伸ばしてシトリーの頭を掻き抱く。
そして、互いの顔をいっそう近づけ、その間で、独立した生き物が交尾するように、舌と舌が互いを求めて絡み合っていた。
「んふっ、ちゅ、んんっ!」
絡め合った舌と、少女の股間に伸ばしたシトリーの指が動くたびに、上と下からくちゅ、と、湿った音がする。
「あふ、んん!?ふあああああっ!」
シトリーが、指でクリトリスを弾くと、堪らずに少女が舌を離して頭を仰け反らせる。
「あっ、はあああああんっ!おっ、おじさまあああっ!」
クリトリスを指先でつまむと、少女が体を震わせて切なそうに叫ぶ。
もう、その裂け目からは、溢れ出した蜜がぼたぼたと滴り落ちていくのがわかる。
「んん、あ、あふうううぅ」
そこでいったん愛撫をやめると、再び少女の体を回転させて、互いに向き合う格好になる。
そして、シトリーはおもむろにローブを脱ぎ始める。
「あ……」
裸をさらけ出したシトリーの、屹立した股間のものに少女の目が釘付けになる。
彼女に向かって、シトリーは優しく語りかける。
「いいかい、リディア。これがきみの中に入ったら、きみは僕の下僕になるんだよ」
「あ、それが、わたしの、中に?」
目の前の肉棒を見つめるリディア。
ふと、その顔に戸惑いの表情が浮かんだ。
「やっぱり、僕の下僕になるのは嫌かな?」
「あ、いや、そんな」
肉棒と、シトリーの顔を交互に眺め、しばしの間逡巡する少女。
その表情に、怯えが混じったような気がした。
その様子に、シトリーは肩を落とし、寂しげに呟く。
「そうだよね。誰かの下僕になるのが嬉しいはずはないよね。ごめん」
「ちがうのっ!」
そう短く叫ぶと、リディアが抱きついてきた。
「はじめてのことだからちょっと戸惑っていただけ!ごめんなさい。おじさまを悲しませるつもりはなかったの!」
リディアは、目に一杯に涙を溜めてこちらを見上げている。
「じゃあ、僕の下僕になってくれるのかい?」
その言葉に、少女は黙って頷く。
「ありがとう!リディア」
「あっ、ああっ、おじさまっ!」
抱きしめると、それだけで感じてしまったのか、その細い体がビクビクと震えた。
「じゃあ、いくよ」
いったんその体を離してそう言うと、緊張した面持ちで少女も頷き返す。
その体を抱き寄せると、片手を添えて肉棒をその秘裂に宛う。
「んっ、んくうううううっ!」
肉棒が挿し込まれた瞬間、少女は苦しげに息を吐く。だが、それも束の間のことだった。
「あっ、あああっ!きもちいいっ、きもちいいのっ!」
それが、シトリーにされることを全て気持ちよく感じるようにさせられているからなのか、それとも現実の体ではなく精神体であるからなのか、少女はすぐに快感を口にしはじめる。
「あんっ、おじさまのっ、おちんちんがっ、わたしのなかに、はいってるううううっ!それがっ、あああっ、すごいっ、きもちいいのおおおおっ!」
シトリーが腰を動かし始めると、リディアはその首にしがみついてきた。
そして、体をより密着させると、自分から腰を動かし始める。
「んふうっ、おじさまっ、おじさまあっ!」
首筋にしがみつくようにして、シトリーの耳元で喘ぐリディア。はぁはぁと、その熱い吐息が耳にかかる。
やがて、足に力が入らなくなってきたのか、膝ががくがくと震えだした。
ふむ、このままじゃしんどいな。よし。
シトリーが念じると、下から、机くらいの大きさの台がせり上がってくる。
「あ、あんっ!」
少女の体を抱え上げると、尻をその上に乗せてやる。
「あっ、ああっ、おっ、おくまでっ、ふああああっ!」
両手を使って少女の両足を大きく広げさせて、思い切り腰を打ちつける。すると、一突きごとに少女の体がぐっと反り返る。
「あっ、んっ、きもちっ、いいっ!あっ、はんっ!」
シトリーが力強く腰を打ちつける度に、少女の口から短い喘ぎ声がこぼれる。
快楽の波に飲まれてまともに息ができないのか、喘いでいる口から苦しげに舌を出し、酸素を求めて時折ヒュッ、と喉が鳴る。
「ああっ、おじさまっ、きもちっ、よすぎてっ、わらしっ、へんになっちゃううっ!あっ、ああああっ!」
いきなり、リディアの両足がシトリーの腰を挟むように巻き付き、ぎゅう、と肉棒を締め付けてきた。
呂律が回らなくなっているのは、絶頂が近づいている証拠だ。
そろそろ頃合いと見て、シトリーは下から突き上げるように角度を変え、腰の動きを一気に速める。
「はううううっ!ひあっ、らめえっ!そんなのっ、しゅごしゅぎるうううっ!」
絶叫と共に、リディアがしがみついてきた。シトリーの動きに合わせて、その体が上下に激しく跳ねる。
「さあっ、リディア!僕の全てを受けとめて、そして、僕の下僕になるんだ!」
シトリーも叫びながら、一気に腰を突き上げる。
「はひいいいいいっ!なりましゅうううっ!わらしっ、おじさまのっ、げぼぐにっ、なりましゅうううううっ!」
射精と同時に、隷属の言葉を口にしながら少女も絶頂に達する。
「あっ、あああっ、んっ、ふあああぁ……」
シトリーにしがみついて体を固まらせたまま、まさに、精液を全て受けとめる少女。
その体から力が抜けて、ぐったりとシトリーにもたれかかる。
「リディア、リディア」
「ん、あ、おじさま」
しばらくしてから、シトリーの呼びかけにようやく少女は目を開く。、
「大丈夫かい、リディア?」
「うん」
シトリーの言葉に、彼女はぼんやりと頷く。
「ええっと、わたし……。あっ」
ようやくさっきまでのことを思い出したのか、リディアは頬を赤らめる。
「そうか、わたし、おじさまの下僕になったのよね」
「そうだよ、リディア」
「それで、わたしは何をすればいいの?」
「そうだな。人間どもを僕たち悪魔に仕える奴隷にする手伝いをしてもらおうかな」
そう言って笑ったシトリーの笑顔は、それまでの優しい微笑みではなく、まさに悪魔の笑みそのもの。
「どうだい、すばらしいだろう?」
「はい、おじさま」
そう答えて笑みを返すリディアも、冷たく残忍な、悪魔的な笑みを浮かべていた。
「でも、その前に僕たちも帰らないとね」
「え?どこに?」
「だって、ここはきみの世界だろう?」
「あ、ホントだ。いつの間に?」
不思議そうに周囲を見回すリディア。なぜ、自分たちがここにいるのか全く思い出せないようだ。
「さあ、早く戻ろう。そして、きみが僕の下僕になったことをピュラに教えてあげないとね」
「はい!」
シトリーの言葉に元気良く返事をすると、少女は目を閉じた。
* * *
ピュラの執務室。
リディアが力を発動させてから、すでに3時間は経とうとしていた。
シトリーとリディアの頭に手を当てて、定位転換の魔法を維持するピュラの額に、うっすらと汗が浮かんでいた。
「ん、んん」
不意にリディアが呻き声を上げ、ピュラはふたりの頭から手を離す。
すると、ふたりの目がほぼ同時に開き、むくりと体を起こした。
「大丈夫ですか、おじさま?あ、ピュラさま」
リディアは、まずシトリーを見て、次にピュラの顔を見る。
なぜ、自分がピュラの部屋にいるのか分からない様子であったが、はっとした表情でピュラに向かって口を開く。
「ひどいです、ピュラさま!どうしてシトリーのおじさまがピュラさまのご主人さまだって教えてくれなかったんですか!?」
「ご、ごめんなさい。あなたがもっと大きくなってから教えようと思っていたのよ」
咄嗟にそう言い繕うピュラ。早速、シトリーに念話を送ってくる。
(いったい、どういうことですか?それに、話し方がなんだか幼くなっているようですが)
(ああ。少し手こずってな。結局、小さな頃に遡らせて、僕の記憶を刷り込んだんだ。で、たぶん14、5歳くらいのところで出てきたから、精神年齢がそこで止まっているんだろう)
(そうなのですか。まあ、この子は早熟で、そのくらいの頃には今と変わらない実力を備えていましたけど。下手をすると、教えた魔法が使えなくなっているところですよ)
(すまん。というか、おまえの立てた見通しが甘すぎなんだよ。一時はどうなることかと思ったぞ)
(も、申し訳ございません)
(まあ、結果オーライだからいいけどな)
まったく、魔導院がらみはいつもそれだ。
シトリーは、内心ひとりごちる。
「そうだ!ピュラさま!」
いきなり、リディアが大きな声をあげた。
「どうしたの?」
「わたしも、シトリーのおじさまの下僕になったんですよ!」
「そう。これであなたも私たちの仲間ね」
そう言って、ピュラは目を細める。
「え?わたし、たち?」
不思議そうに首を傾げるリディア。
「そうよ、リディアちゃん」
そう言って、控えの間から入ってきたのはアンナだ。
「え?アンナさん?」
リディアは、シンシアのもとで学問を習っていたときに、アンナと面識があった。いや、今のリディアの精神年齢だと、まさにシンシアの所に通っているくらいだろうか。
そのアンナがどうしてここにいるのか考えている様子だ。
「あ、もしかしてアンナさんも?」
「そうよ、私もシトリー様の下僕なのよ」
そう言って、アンナはにこりと微笑む。と、そこへ、
「はーい!あたしもだよっ、リディアちゃん!」
突然姿を現した、猫耳の少女。
「きゃ!だれっ!?」
「えーっ!エミリアよエミリア。名前は知ってるでしょ。黒猫のエミリア。その姿の時は何度も見てるじゃないの!」
「……だれですか?」
「ちょ、ちょっと、リディアちゃん!?」
エミリアが唇を尖らせる。
「おい、エミリアエミリア」
シトリーが、エミリアを呼び寄せて耳打ちする。
今のリディアの精神年齢は、14、5歳で止まっている。おそらく、記憶もそこで止まっているだろう。当然、現実世界で最近起こった出来事である黒猫のエミリアのことなど、彼女が覚えているわけがない。
「もう、仕方ないわね。じゃあ、改めて自己紹介といきますか。あたしはエミリア。悪魔で、んでもってシトリーの下僕ね」
「あっ、はじめまして!よろしくおねがいします!」
リディアは、怯える様子もなくペコリと頭を下げる。
初めての相手だが、今の彼女には、相手が悪魔の方が、人間よりもよほど親しみが持てるようだ。
「今ここにいるのは、みんなシトリー様の下僕なのよ。」
ピュラが、そう言ってリディアの頭を撫でる。
「まあ、これにもう何人かいるけどな。ところで、ピュラ、どのくらい時間が経ってる?」
「3時間を少し越えたところです」
「そうか。アンナ、まだ時間はあるな?」
「はい」
「よし。じゃあ、リディア。もう一度きみを抱いてやろう」
「おじさま?」
「さっきは、おまえの世界だったから、今度は、ここで、現実の体で僕と交わって、それで、晴れて僕の下僕として一人前になるんだ」
「は、はいっ!」
恥ずかしそうに顔を赤らめて俯くリディア。その背後から、ピュラが優しく肩を抱く。
「良かったわね、リディア」
「ピュラさま。ああっ!?ピュラさま?」
ピュラが、手際よくリディアのローブを脱がせていく。
そして、現実世界では初めて見るリディアの裸体。精神世界で最初に見たのと同じ、だいぶ大人になりかけの体。色白で、細くすらっとした肢体。その胸の、控えめなふくらみ。
少し恥じらいを見せながらも、シトリーを見つめるその瞳は期待に満ちていた。
「可愛らしいわよ。ふふ、それでは準備を始めましょうか」
そう言って、ピュラがその首筋に舌を這わせる。
「あっ、あんっ、ピュラさま!」
切なげな声をあげるリディア。
そのうなじに、そして首筋へとピュラは舌を這わせていく。
「ああっ、ピュラさまぁ!」
リディアが、ピュラに抱かれたままへなへなとへたり込む。
「ふふふっ!それじゃあたしもお手伝いしちゃおうかなっ!」
エミリアがにやつきながらリディアの足を抱え、そのふとももを舐めはじめた。
「あああっ、ふあっ!」
甘く切なげな喘ぎ声の漏れる中、ぴちゃぴちゃと、淫らに湿った音が響く。
「んふ、れろ、リディアも大きくなったわね。ここに来た頃は、ここなんかぺったんこだったのに」
「ああんっ、あっ、ピュラさまぁ!あっ、はああぁ!」
ピュラが、その、控えめな大きさの乳房を掴み、乳首をこりっとつまむ。すると、リディアが、はぁはぁと熱い吐息を漏らして身をよじる。
「そっ、そんな、ふたりで、いっぺんにっ!んん!?んむむっ?」
抗議の声をあげようとしたリディアの口を、アンナの唇が塞ぐ。
「んぐっ、んむむ、んふ、むふうううぅ」
一瞬驚いて目を大きく開くリディア。だが、すぐに瞳をトロンと蕩けさせて口づけに集中し始める。
「んん、んむ、ん、あふ、ふう。リディアちゃんの唇、おいしい」
「ふああぁ。アンナ、さぁん」
「こっちはどんな味がするのかしら?」
アンナは、リディアの乳房に口を寄せると、その先端を口に含む。
「あ、ふあああっ!」
片方の乳房をピュラの手で、もう片方をアンナの口で愛撫され、リディアは身をよじらせる。
と、そこへ。
「ひあっ、んあああああっ!」
ふとももを舐めていたエミリアの舌が、リディアの裂け目の襞をめくる。すると、リディアががくっと首を仰け反らせる。
「ぴちゃ、んふ、すごい。リディアちゃんのここ、もうこんなにぐしょぐしょだよ」
「あああっ、だめえっ!こんなのっ、わたしっ、おかしくなっちゃう!」
「いいのよ、おかしくなっても。シトリー様の下僕になるということはそういうことなんだから」
「ふわあぁ、ピュラさまあぁ」
リディアのトロンとした瞳は、何を映しているのかぼんやりと宙を見つめ、はぁはぁと大きく肩で息をしている。
さっき精神世界で女になったとはいえ、現実の体はまだ純潔なままだし、経験も全くないと言っていい。それが3人にいやらしく責めたてられたのではひとたまりもない。
「ああっ、らめっ、らめえっ!きもちっ、きもちいいいいいっ!ひああああっ!」
その呂律が回らなくなり、裂け目からは、ぶしゅっ、と潮が噴き出す。
「すっご!まるで噴水みたい!」
顔についた愛液を舐め取ると、エミリアは再びリディアの股間に頭を埋める。
ピュラとアンナの愛撫も次第に激しくなっていき、
「ああっ、らめえっ!わらしっ、もうらめええええっ!」
リディアの体がぐっと弓なりなったかと思うと、ビクビクッと大きく震える。そして、盛大に裂け目から噴き出した愛液がエミリアの顔に降り注ぐ。
「すごい、すごいよぉ、リディアちゃん!」
思わず感嘆の声をあげるエミリア。
「これで準備は万端ね。リディアちゃん」
「では、いよいよシトリー様にしてもらいましょうね」
アンナとピュラに両側から支えられて、シトリーの前に立つリディア。
もうすでに、シトリーもローブを脱ぎ、床の上に座って待ち構えていた。
リディアの瞳は小刻みに震え、どこを見ているのかわからない。その全身はほのかな桃色に染まり、まだ絶頂が去っていないのか、時々体をビクンと震わせている。そのふとももからは、だらだらと愛液が流れ落ちていた。
「こちらにおいで、リディア」
呼びかけると、その瞳がぼんやりとシトリーを捉え、ふらふらと歩み寄ってくる。
そして、シトリーの足を跨ぐようにして立つと、その肩に手をかけた。
「さっきと違って、今度は少し痛いかもしれないけど、我慢するんだよ」
その言葉が聞こえているのかいないのか、リディアはゆっくりと腰を沈める。
誰に教わったわけでもないのに、片手を伸ばして肉棒を掴み、自分の秘裂に宛ったのは、目覚めはじめた彼女の中の牝の為せる業であろうか。
そして、そのまま体を沈めて肉棒を己の中に招き入れる。
「んぐっ、くうううううっ!」
リディアが、苦しげに呻く。
「大丈夫かい、リディア?」
「はぐっ、くうううっ!らっ、らいりょうぶれすっ!んくううううっ!」
もうすでに回らない舌でそう言いながらも、さすがに苦痛の表情を隠せない。
だが、覚醒した女としての性がそうさせるのか、さっき精神世界で体を交わらせた記憶がそうさせるのか、ゆっくりと体を動かしはじめる。
「くうっ、くはあっ、あっ、んくううっ!」
痛みに耐えるようにぎこちなく腰を揺するリディア。だが、そのぎこちなさも、そう長くは続かなかった。
「ぐっ、んくっ、ああっ、あっ!?あああっ、はああああっ!ぎっ、ぎもぢっ、いいっ、れすうううっ!」
一度大きく体を震わせると、今度はスムーズに体を動かしはじめる。
「んんっ、しゅ、しゅごいのおおおっ!おじさまのっ、いっふぁいに、かんじれっ、はうっ、ぎもぢいいのっ、どまらないいいいいっ!」
おそらく、さっきピュラたちよってイってしまった感覚がまだ続いたままだったのだろう。繰り返す絶頂の波に体が震え、肉棒を締め付ける。
「あっ、はあっ、あんっ、ひぐっ、んっ、ひあああっ!」
シトリーの体にしがみつき、肉棒を深く飲み込んだまま、激しく腰をくねらせる少女。
その膣内がもたらす快感は、華奢な体格からは想像もできない気持ちよさだ。
「あっ、はんっ、うんっ、あんっ、あっ、はんんんっ!」
今度は、体を跳ねさせるように上下に大きく動かしていく。
まるで、快感の波に堪えきれずに、性急に射精を促しているようだ。肉棒にまとわりつく襞が、堪らないほどの愉悦をもたらす。
くうっ!これほどとは!
リディアの、完全に花開いた女としての快感に、さすがのシトリーも驚きを隠せない。容赦なく精液を搾り取ろうとするリディアの激しさに、否応なく限界に達せられてしまう。
「ふあああっ!くらさいっ!おじさまのっ、あのあづいのっ、くらさいいいいいっ!」
止めとばかりに締め付けられて、シトリーは堪らず精を放つ。
「ああああっ、あづいいいいぃ!」
リディアが体を反らせて固まる。その中に注がれる、シトリーの精。だが。
「ぐあ!?うあああああああ!」
異様な感覚に襲われてシトリーは呻く。
まるで、精液ごと魔力をごっそりと吸い取られるような感覚。こんなことは今までになかったことだ。
「シトリー様!」
「どうされたのですか!?」
異変に気付いたアンナとピュラが慌てて駆け寄ってくる。
「い、いや、大丈夫だ」
ふたりを手で制するシトリー。実際、射精が収まるのに合わせて、異様な感覚も弱くなっていっている。少し頭がクラクラするが、このくらいなら大丈夫だろう。
だが、今度は。
「え?リディアちゃん?」
皆の見ている前で、体を硬直させて精液を受けとめていたリディアの、その灰色の髪が紫に染まり、大きく見開かれた青い瞳が、シトリーと同じ金色に変わる。そして、耳の先が鋭く尖っていく。
だが、その体から力が抜けるのと同時に、ふっ、と元の姿に戻る。
ぐったりと気を失っているのは、以前と変わらない灰色の髪の少女。
「ねえ。いったいどういうことなの、シトリー?」
茫然とした顔で、エミリアがシトリーに訊ねる。
「おそらく、僕の推測が正しければ、ピュラの言う、魔法に長けた古の種族というのは、魔と人間が交わって生まれた種族なんだ。長い時間の中で混血が進み、血は薄れていったが、リディアは先祖帰りで魔の血を濃く受け継いだ。その、リディアの中の魔の血が、僕の魔の気を求めたんだろう」
「そ、それって?」
「ああ。リディアの中に注がれた僕の魔の気が、魔の血と反応して、リディアの中に本来あった魔が呼び覚まされたんだ。いわば、新たな魔族の誕生だな」
「で、でも、すぐに元に戻ったし!?」
「うん。たぶん、まだ完全には覚醒してないんだろう。これも推測だが、リディアの精神世界に入ってみて、この能力はまだ未完成だと思ったんだ。きっと、魔として覚醒していくにつれて、その力も完全なものになっていくんだろう」
「そうなんだ」
「まあ、あくまでも僕の予想ではあるけどね。そうだ、ピュラ」
「はい。なんでしょうか?」
「今言ったように、、これからリディアに変化があるかもしれない。その時のフォローを頼む。特に、周囲に不審を持たれないように」
「はい。かしこまりました」
「ついでに、こいつの精神年齢と、現実のギャプもできるだけ違和感がないように埋めておいてくれないか?」
「はい。できる限りのことはやってみます」
「じゃあ、そろそろ帰る準備を始めるか」
「でも、大丈夫なのですか、シトリー様?」
「大丈夫だ。魔力をごっそり持っていかれたが、しばらく休んでいれば回復する性質のものだし」
体を気遣うピュラに、シトリーはそう答える。
「ん、んん……」
その時、床に横たえられて気を失っていたリディアが目を開いた。
「あ、おじさまぁ」
ぼんやりとシトリーを見て、ふやけた声を出した。
「気付いたか、リディア」
「ん、はいいいぃ」
「これでおまえも立派な僕の下僕だ」
「はい」
「良かったわね、リディア。これであなたも本当に私たちの仲間よ」
「ありがとうございます。ピュラさま」
リディアは、まずシトリーの顔を見て、そして、自分を見守るピュラ、アンナ、エミリアの顔を見回すと、幸せそうに微笑んだ。
* * *
「えええっ!?おじさま!?」
再び、エミリアの手で少女の姿に戻ったシトリーを見て、リディアが素っ頓狂な声をあげる。
「そんな!おじさまが女の子に!?」
「そんなに騒ぐんじゃない」
リディアは可愛らしい女の子の声にたしなめられる。
「だいいち、メタモルフォーゼくらい魔導師でもできるだろうが」
「でもっ」
「この姿の方が怪しまれなくて済むんだ。だから、都にいる間はこの姿になることにしている」
「そ、そうだったの?」
「それに、悪魔だということがばれたらどういう目に遭うか、おまえならよくわかるだろうが」
「あっ!ごめんなさい、おじさま」
「わかればいいんだよ。それと、この姿の時はシトレアって呼ぶんだぞ。おじさまなんてもっての外だからな」
「は、はい」
「ああ、それとリディア」
「なに、おじさ……あ!シ、シトレア、ちゃん?」
少し戸惑いながらも、シトレア、と少女を呼ぶリディア。
「早速だが、おまえにやってもらいたい仕事がある。幻術を使う仕事だ。それを、人間どもを陥れる手始めにする」
「はい!」
そう返事をすると、リディアはニヤリと冷酷な笑みを浮かべる。
「少し準備が必要だから、始めるのは、そうだな、5日後にする。エミリア、おまえにも手伝ってもらうからな」
「うん、わかった」
「ピュラには、連絡係を頼む」
「かしこまりました」
軽く頷くエミリアと、頭を下げるピュラ。そして、一堂を満足そうに眺めると、少女はアンナに声をかける。
「よし、じゃあそろそろ帰るぞ」
「はい」
来たときのように、少女はアンナに手を引かれて出ていく。
その日、アンナとシトレアは、夕刻までには教会に帰ることができたのだった。
< 続く >