オイディプスの食卓 第23話

第23話 鵬零時

 いつものように花純さんと登校して、いつものように真面目に授業を受ける。
 早く家に帰りたいってことばかり考えてしまう。やりたいことが次から次へと頭に浮かぶ。
 少し前まではそんな風に思ったこともなかったんだけど、最近の僕は家にべったりだ。
 卒業したら引きこもりになろうかな。そういう生き方も悪くないなって、近頃は思うんだ。

「蓮って最近付き合い悪いよなー」
「え?」

 いつの間にか、悪友が黒川の席に座っていた。
 まるっきり気配を感じなかったので驚いた。
 悪友は、そんな僕の顔を見て笑う。

「ひひっ、メンゴメンゴ。驚かしちゃった?」
「いや、メンゴって……まあ、普通に驚いたけど。どうしたの?」
「だからさ、最近お前って放課後付き合わないじゃん。なんかあんの?」
「えっと、いや、特別何かあるってわけじゃないけど。君の方こそ最近黒川のことばっかりだし」
「あー、まあ、そりゃ確かに俺も悪いか。俺って恋に盲目だからな」
「逆だよ。君は眼から入る情報以外に恋してないよ。少しは眼を閉じて考えてよ」
「ていうかさ、俺もそれでちょっとした事件あっちゃって」
「事件?」
「俺、また黒川に会ったんだよね」

 いつものストーキング話かと僕はため息をつく。
 一途なのは結構だけど、どうも彼の話はピントがずれている気がしてしょうがない。
 家出しておかしなコスプレにはまっているような女子と恋愛なんてしても、おかしなことにしかならないと思うんだけど。

「今度はもっと接近できたんだ。また黒川の後ろ姿を見かけてさ。なんていうか、その前に予感もあったんだ。あ、黒川が近くにいるって。この先にいるって俺には直感できたんだよね。ディスティニー的な何かで」
「いや、その予感は運命じゃなく科学的に説明できると思う。つまり君は、たとえば黒いものを見ただけでも黒川を連想して興奮しちゃうようなただの変態なんだよ」
「まあ、確かに現段階では俺がただの変態である感はいなめねぇけどさ。でも本当に黒川はいたわけよ。だからお前ももうちょっと真面目に聞いて欲しいわけよ。俺はまた路地で黒川を見つけた。そしてこないだと同じように声をかけたんだ」

 雨も降ってないのに黒いレインコートと長靴。それも前と同じだった。名前を呼ぶと彼女は消える。「消える」と彼は表現したけど、僕はこの悪友の話を半分くらいしか信じていない。
 人が消えるなんてことは、トリックでもなきゃただの錯覚だと思ってる。
 
「でも、黒川は消えるんだよ。前にも言ったろ。消えるというより、逃げる。目に追えない速さで」
「その話、どのへんからウソなの?」
「いやウソじゃねぇ。ウソなんてつけねぇよ。俺のじいちゃん、ゼペットさんだぜ」
「ウソじゃん」
「もうそういうのいいから、真面目に聞いてくれって」

 悪友はもうニヤニヤと笑ってはいなかった。
 らしくない真顔を寄せて、机に身を乗り出す。そして、唇の端を上げる。

「今度は俺も追いついた。黒川を逃がさなかった。といっても捕まえたわけじゃないけど。上にいるって、俺は直感した。なんていうか、彼女の匂いがわかったんだ。雨と金属と花を混ぜたような匂い。それが黒川の匂いだ。ビルの屋上。つまり真上だ。彼女は一瞬でそこに移ったんだと、俺にはわかった」

 そして見上げると、同じように自分を見下ろしている黒川と目が合った。
 写真の彼女より、少しだけ大人びた顔。すげぇ美少女だったと悪友は言った。性格きつそうだけど、めっちゃ好みの顔だったって。

「しかも笑ったんだよ、黒川。俺と目が合って笑った。ほんのちょっとだったけど。絶対あれ、笑ったんだって」

 興奮気味に悪友はまくしたてる。
 僕は話についていけずに、ちょっと困ってしまう。
 地上からビルの上に一瞬で駆け上がったっていうのか。カッパ着て長靴履いてる不登校の中1女子が。
 もちろんトリックだという説明はいくらでも出来る。例えば彼が最初に見かけた後ろ姿が黒川本人だったっていう保証はないわけだし。
 ただ、そんなトリックまで用意する理由は彼女にはない。必然性もない。だけど、中二病の人って、意味もなくそんなことをするから中二病なのだとも言えるし。
 つまりこの話、いかにも中二病っぽいラノベか何かにしたいんなら、黒川にミニスカ履かせて、変な形をしたナイフか大剣あたりを握らせるくらいのビジュアルも加えないといけないよなって僕は思うんだけど。

「で、その、黒川とは何か話したの?」

 唇が曲がっちゃいそうなのを堪えて、悪友に話を合わせる。
 彼は、唇を曲げて答えた。

「いや。その前に邪魔が入った。もう一人、黒川と一緒にいるって噂になってたイケメンロングコート。多分あいつだと思うんだけど」
「多分って?」
「顔見れなかったし。俺、喉にナイフ押し当てられてたから」

 黒川のいた場所を見上げていたら、突然、喉に冷たいものを感じて口を塞がれていた。
 革手袋をした背の高い男に後ろから押さえつけられている。と、完全に動きを封じられてからようやく気づいたそうだ。
 自分の心臓が跳ね上がる音しか聞こえなかった。殺されると思うと息が乱れた。後ろの男はびくとも動かず、何も言わない。白刃を押し当てているだけだ。
 逃げようとしても無駄だ。男の匂いがそう言っている。自分はここで死ぬんだって、それだけは確実に思えた。
 そして、その男は唐突に口を開く。
 拍子抜けするほど軽く、ゆったりした口調で。

 ―――なんだ、子どもか。
 ―――残念だな。俺は18才未満は殺せないんだよ。くそみたいな規制のせいで。

 ぷらんとナイフが喉を離れる。死の拘束からの解放。
 でも、声なんて出せない。全身が震えていた。ナイフが怖かったからじゃない。この男の声を聞いたせいだ。
 男からは、死の匂いしかしなかった。死神と喋ってるみたいだった。
 もしもオフランドから“アサシン”を連れてきたら、きっとこんな感じだろうなっていうくらいの。

 ―――目を閉じて、3つ数えて、おうちに帰りな。
 ―――いつまでもこんなとこウロチョロしてたら、18才まで育てるぞ?

 
 そして、悪友は言われたとおりに目を閉じ、3つ数えた。
 だけど数え終わっても、しばらくは動く気になれなかったそうだ。
 
 ちなみにアサシンとは、オフランドでは上級職に分類される難解なジョブだけど、なりたがるプレイヤーは少ない。
 戦闘中のスピードは遅く、防御力も紙ぺらで、通常攻撃も戦士系では最弱レベルだ。
 スキルの“暗殺”はボス級でも一撃で倒せるほど強力だけど、決定確率が低く、気が遠くなるほどスキルレベル上げないと実戦では使えない。しかもモンスターのウィークポイントまで接近しないといけないから、重装備の戦士系がガードになるか、あるいはスピードのあるプレイヤーが囮になるかして、隙を作ってやらないといけない。
 味方に犠牲を強いるわがままな戦法しか使えないジョブだ。興味本位でジョブチェンジしてみても、長続きする者はいない。アサシンを極めるような変わり者は、オフランドでも数えるほどだとか。そりゃ味方にまで嫌われるんだもの、よほど中二力が強くないとメンタル的に無理だろう。
 ちなみにPKの現場においては、逆にあまりにも凶悪なジョブなので、アサシンだけのPK規制もいくつかあるらしい。
 数々の困難や嫌われっぷりを耐え抜き、スキルを最後まで極めたアサシンは、自分に向けられた他プレイヤーの“スキル”や“アイテム”ですら殺せる。つまり、どんな攻撃も通じない無敵のPKerだ。
 規制で縛っておかないと、たった1人のアサシンでオフランドは滅ぶとまで言われてるとか言われてないとか、誰かが言ってた気がする。

 悪友は、しばらくそのまま固まっていた。
 びっしょり汗で濡れた背中に冷たい風を感じて、ようやく男がいなくなっていることを実感して、目を開けた。
 路地は、最初から誰もいなかったみたいに静まりかえっていたそうだ。

「……ところで死の匂いって具体的にはどんなの? 葬式帰りみたいな匂い?」
「まあ、そこはあんましツッコむなよ。意地悪なやつだな」

 ひひっ、と照れくさそうに笑って悪友は椅子をギコギコ鳴らす。
 僕は朝っぱらから聞かされる妄想話にうんざりして肩をすくめる。

「まあ、そんな感じで殺されかけたりもしたけどフラグも進んだから。次、黒川に会ったときはいよいよエッチイベントに突入だな」

 わけのわからないこと言って、いつものように悪友は下品に笑う。
 こいつの妄想癖は今に始まったことじゃないけど、いよいよキマってきたなぁって感じがする。中二病もプロの域に達しつつあると。

「で、今日もみんなで黒川探しに行くの?」
「いや、もう俺1人で十分だ。探すまでもねぇよ」

 そう言って彼は、鼻の下をゴシゴシ擦る。

「黒川の“匂い”は、もう覚えたからな」

 オフランドでの彼のジョブは、“狩人”だった。
 僕はそのことに気づかずに、彼の話を聞き流してしまっていた。
 だいぶ後になってから、それを後悔することになる。

 学校から帰ると、メイド服姿の睦都美さんが廊下にモップをかけていた。
 スカートが短くなっている。それだけで王様になった気分になれた。

「ただいま」
「おかえりなさい、蓮さん」

 淡々と挨拶を返して、睦都美さんは掃除に戻る。綾子さんは出かけていないようだった。
 着替えてからもう一度廊下に出る。睦都美さんはチラリと僕を見て掃除を続ける。そのまま、じっと自分を観察している僕を不思議に思ったのか、もう一度顔を上げて「何か?」と尋ねる。
 きれいな人だと思って見ていた。短いスカートも、少し品がない感じだけど似合っていないわけじゃない。
 スタイルも顔も抜群のメイドさん。不幸な過去を背負った家政婦さん。
 僕はこの人も、父さんから奪おうと思う。

「『メイド人形が欲しい』」

 何か口を開きかけたまま、睦都美さんは動きを止めた。
 彼女の意思を奪うのは簡単だし、体も思うままだった。
 僕は睦都美さんをそのまま彼女の部屋へ連れて行く。そして『PB』のプレートをかけて扉を閉めた。
 これでもう彼女は僕のものだと、決めるのは簡単な話だ。
 催眠術というのはつくづく便利なのもので、彼女に『私の主は蓮さんです』とひとこと言わせ、それを重しを乗せて心からの誓いになるまで心の底に沈めてやることもおそらく数分で出来上がる作業だった。
 でも、僕はあえてそれをしない。
 家の主になるということは、他のみんなを支配することではなく、僕自身を支配者に育て上げることを言うんだ。
 貧弱なお坊ちゃまのまま睦都美さんを支配したとしても、父さんには勝てないだろう。メスを奪い合うというこの動物的なゲーム以前に、僕は社会的実力によって父さんに負けている。女は間違いなく僕は選ばない。催眠術で勝ってもそれは真の勝利じゃない。父さんを超えるために僕が身につけなければならないこととは何か。
 男としての強さを証明する。
 男として勝っていることを証言させる。
 父さんとセックスと労働関係だけで結ばれているこの女性に、僕の方を選ばせることで僕は父さんを超えるんだ。男として生まれたからには、誰だって父を超える最強を目指すものなんだ。バキみたいに。

「睦都美さん。あなたにもう一つ、人形の体を与えます」

 人形としてではなく1人の女性として睦都美さんを抱く。
 ただし、僕は睦都美さんをレイプするつもりはないし、かといって催眠術で心を支配するつもりもない。
 セックスの判定をしてもらうだけだ。
 僕と父さんのどちらのセックスを選び、どちらを主として選ぶのかを訊いてみるだけだ。
 もちろん、僕のセックスは催眠術によるチートを含むけど。それが僕という男の技能なんだからね。

「あなたに与える新しい人形の名前は、『セックス人形』だ。僕が『セックス人形が欲しい』というと、あなたの体にスイッチが入って人形になる。僕にセックスをさせる体になる。心では抵抗できても体は僕に抵抗できない。僕に乱暴してはいけない。何をされても拒むことはできない。あなたの体は僕の人形になる。セックス人形。それがあなたの新しい名前」

 睦都美さんの胸に触れる。
 ふに、と指が下着の感触ごと肌に沈んでいく。

「意識はある。現状も認識できる。ただ、抵抗ができない。セックス人形。よぉく覚えて。あなたはこれからセックス人形になる。僕のことを憎んでも恐れてもいい。それはあなたの心が決めることだから。でも、体は僕に逆らえない。助けを呼ぶこともできない。セックス人形。物わかりのいい睦都美さんならもう僕の言うことを理解できてるよね? セックス人形はあなたの真実を表す名前。真名だよ。睦都美さん、あなたはセックス人形だ。生まれたときからセックス人形だ。わかるよね? 自分のことだってもうわかりましたよね?」

 彼女の過去をえぐることに胸が痛む。
 でも、彼女の過去も一緒に抱いて生きる家族になるんだ。目を逸らしたりしない。
 メイド服の胸元を引き下げる。彼女の白い下着が露わになる。
 僕はそれを持ち上げて肌を晒した。
 桃のように並ぶ双丘とその先っぽの蕾を、手の中でこね回した。

「睦都美さん、人形化を解除しますよ―――『もうおしまい』」

 パチパチっと睦都美さんのまぶたが動く。
 そして、自分の剥き出しの胸を僕に揉まれていることを知って、驚愕の顔をする。

「な、何をしているんですかっ。離してください!」

 僕の手を乱暴に払い除け、慌てて服を直しながら睦都美さんは僕を睨みつける。戸惑いと怒りの混じった、普段の睦都美さんでは滅多に見られない感情を剥き出しにしている。
 無理やり体を触られれば誰だって怒る。睦都美さんだって、いくら何でも怒る。
 だからこそ、僕の催眠術の効果を試せるんだけど。

「睦都美さん……僕は、『セックス人形が欲しい』」

 パチパチっと、また睦都美さんのまぶたが動いた。
 そして、みるみる顔が赤くなっていく。

「な、何を言っているんですが、蓮さん。お父様に報告しますよ。ここ……私の部屋です。出て行ってください」

 さすが睦都美さんは取り乱しても声は冷静だ。
 でも、僕は確信していた。彼女はもう僕の『セックス人形』だ。さっきまでの彼女とは違う。彼女の言語脳が僕の言葉を理解した瞬間、先に僕の暗示が彼女を支配し、その後で耳慣れない単語の理解と感情が反応して顔を赤くした。
 彼女の冷静さの奥には、無意識下ですでに支配完了している人形の彼女がいる。
 僕は、彼女の体に手を伸ばす。

「や、やめてください、大声を出しますよ!」
 
 今度は、腕を掴んでも払い除けられることはなかった。細い腕が僕の手の中で強ばったけど、それだけだった。

「大声を出しても構いませんよ。助けを呼んでみたらどうです?」
「あ……あ、あ……」

 自分の腕を掴む僕の手と、扉の方を交互に見ながら、睦都美さんの顔は徐々に青ざめていく。
 この手を振り払うこと。そして大きな声を出して家の誰かに助けを呼ぶこと。
 簡単なことが出来ない自分に、愕然としているようだった。

「全部、告白しますね。僕は今までに何度もあなたを抱いていた。ただし、記憶には残らない形で。でも今日からは違う。あなたに知っててもらいたいんだ。僕がどうやってあなたを抱くのか」
「な……なんのことですか、いったい。蓮さん、しっかりしてください!」
「あなたにもすぐわかるよ……『メイド人形が欲しい』」

 睦都美さんがぴたりと動きと止める。
 色の落ちた瞳でぼんやりと僕を見つめている。

「よく聞いて。僕の話を記憶に留めて。そして今の自分の状態も。あなたは人形。とても気持ちのいい状態だ。そして、これまでに自分に与えられてきた命令も思い出した。誰があなたをそんな風にしたのか思い出して」

 人形の睦都美さんの表情は動かない。
 どれほど心が乱れてようとも。
 僕は彼女の頬を撫でる。胸を撫でる。心地よい肌触りはいつもの睦都美さんのもの。僕のお人形さん。
 
「思い出しましたか? あなたにはたくさんフェラチオしてもらいました。キッチンで手コキしてもらったこともありましたっけ。メイドオナホ、最高でしたよ。あなたの口から聞く『メイドオナホ』の響き、僕好きだな。コスプレごっこも、今のメイド服姿も大好きですよ。全部、僕が命令してあなたにやらせました。自分の服装、おかしいと思ったことなかったでしょ? ミニスカメイド服を着て働いている自分を、変だと思ったことあります? あなたは、僕の命令は何でも聞いてしまうんですよ。僕には逆らえない体なんです」

 乳首を口に咥えてこりこり弄ぶ。
 反応の良い彼女はもうそこを固くしこらせ、程よい弾力で僕の唇に抵抗している。

「でも気持ちいいでしょ? 人形になるのは快感でしょ? これからはもっと楽しみましょう。僕の言いなり人形である自分を、もっと楽しんでください。僕はあなたの快楽だ」

 胸の谷間をぺろりと舐める。少し塩気を感じた。自分の顔を挟むようにして睦都美さんの胸を揉み上げ、顔を離す。

「『もうおしまい』……睦都美さん、人形解除だ」

 パチクリとまぶたを数回瞬かせる。
 そして睦都美さんの顔が驚愕と絶望に歪んでいた。

「いやっ……いやあぁぁぁぁぁッ」

 自分の着ている服と、はだけた胸と、頭の中で蘇る今までの痴態。
 睦都美さんは頭を抱えて小さな悲鳴を上げた。

「睦都美さん、こっちへ来て」
「いやっ、やめてください、蓮さん! お願いします!」

 弱々しく首を振ることしかできない睦都美さんを、僕はベッドのそばまで連れて行く。
 そして、彼女を跪かせてズボンを下ろした。

「いやっ!」

 睦都美さんは顔を背けて目をつむる。
 僕のオチンチンはとっくに固くそそり立っており、先っぽからは透明な液体を滲みだしていた。
 興奮していた。素の睦都美さんを犯そうとしていることに。

「睦都美さん、思い出してますよね。あなたはこれを何度もしゃぶってくれている。とても気持ちよかったですよ。またしゃぶってもらえますか?」
「いやっ! ダメです、蓮さん、どうしてこんな……」
「『フェラチオメイドA』」
「……い、やっ、やあっ!?」

 嫌がりながらも睦都美さんの手は僕の太ももを支え、舌はペニスに向かって伸びてくる。
 僕の決めたキーワードは、とっくに彼女の体を支配し、意思を行動で縛っている。

「どうして、私、こんな……れろ、れろ、れろ、れるれるれるれる」

 舌で舐めること3回、舌を回すこと4回。
 優秀なお人形さんである彼女はメンタルに関係なく正確に僕の指示した動作を反復する。
 僕のフェラチオメイド。僕のお人形。

「やだ、体が勝手に……んっ、んっ、んっ、んっ、んっ」
「フェラチオメイドCとA」
「いや、です、やめ……んっ、ふぅっ、れる、えっ、れる、ダメ、ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅく、ちゅ、ちゅっ、あむ、んっ、蓮さん、お願いです、んんっ、んっ、んっ、もう、れろ、れろ、やめ、れる、んっ、やめてください、ちゅる、れろ、んっ、ちゅぶ、んっ、ちゅぶ、ちゅ、ちゅぶっ」
「フェラチオメイドBCE」
「れろ、んっ、もうやだ、んっ、れろ、んっ、やめ……っ、じゅぶ、んぶ、ちゅぶ、んんんっ! ちゅぶ、んぶ、んっ、んふっ、えっ、んっ、んっ、ふぅっ、れる、えっ、れる、ちゅぷっ、ちゅっ、ちゅく、ちゅ、ちゅっ、あむ、んっ、んんっ、んっ、んっ、れろ、れろ、れる、んっ、ちゅる、れろ、んっ、ちゅぶ、んっ、ちゅぶ、、ちゅ、ちゅぶっ」

 正確に、そして的確に僕の性感帯を刺激してフェラチオしてくれる睦都美さん。
 涙目になりながらも僕のを深く咥えこみ、舌も柔軟に僕のペニスの周りを這い回る。
 泣きながら、僕の教えたとおりの奉仕をする睦都美さんの姿は嗜虐心を煽った。
 これが理知的でクールでとっつきにくいと思っていた彼女の裏の顔。
 男に屈し、オンナをさらけ出したときのこの弱々しさのギャップと美しさは、どうしたってオスを喜ばせてしまうだろう。これを知った男たちが彼女にハマっていった気持ちもよくわかる。
 僕も男だった。彼女を屈服させ、支配したいという欲望が抑えきれないくらいに湧き上がっていた。
 
「ベッドへ上がって」
「いやっ! それはいけません、蓮さん!」
「いいから、早く」
「きゃあ!?」

 髪を掴んで彼女を立たせ、ベッドの上に転がす。
 睦都美さんは驚いた顔をしていた。僕も自分の乱暴な振る舞いに驚いた。
 でも、そのくらい睦都美さんは僕を興奮させていた。

「蓮さん、落ち着いてください。私……付き合っている男性がいます」

 的外れな説得をしようとする睦都美さんに僕は冷笑で返す。
 彼女はもうそれで悟ったようだ。ますます顔色を青くしていく。

「もちろん知っていますよ。付き合っている男性というのは、あなたをペットにしている人のことですよね? 知らないはずないじゃないですか。僕はその息子なのに」
「こ、このことを知られてはただでは済みませんよ、あなたも!」
「ご心配なく。僕らのしていることは絶対に知られることはありません。あなたが、今まで僕にされている行為を知らなかったのと同じです」
「やっ!?」

 スカートの中に手を入れて下着を脱がせていく。
 睦都美さんは必死でスカートを押さえつけるけど、抵抗にはなっていない。彼女の白い下着を剥ぎ取り、放り投げた。そして両足を広げて押さえつけた。

「やめて……やめてください……」

 まだあまり濡れていない睦都美さんのアソコ。
 というより、すでに濡れ始めているアソコだ。
 やっぱり犯され慣れている。抵抗するよりも受け入れる準備の方が上手いんだ。これまでの不幸な人生がそういう自己防衛的な反応を素早くさせてきたんだろう。
 かわいそうな睦都美さん。
 でも、そのことにますます僕は興奮している。

「もう濡れてる。僕を受け入れてくれているんですね?」
「違います! そんなことありません!」
「でも体は僕に見つめられるだけで反応している。あなたはスケベなんだ。頭の中ではもう僕に犯されることを想像しているんでしょ? あなたの『付き合っている男性』の息子に犯されるところを。そして濡れている。興奮している。これから起こる自分の不幸に……酔っている」
「やめて!」

 挿入の瞬間、彼女は自分の顔を隠した。
 でもその指の隙間から、ほんの一瞬だけ表情が愉悦に歪むのを僕は見逃さなかった。
 男に犯される屈辱を快楽にする自分を見せたくなかったんだろう。
 中学生の男の子なんかに。

「どうして……どうして、あなたみたいな子どもに……ッ!」

 怒りと悔しさに涙ぐみ、睦都美さんは唇を噛む。
 僕はゆっくりと抽挿を開始する。かすかに軋むベッドの音。睦都美さんのソコは僕を拒むように硬く締まり、それは僕に強い快楽を与えることになる。

「いいかげんにして……ッ、こ、子どものくせに、なんてことしてくれるのよ……ッ、あとで、覚えてなさいよ……んっ、んっ……」

 どれだけ敵意を剥き出しにしても、助けを呼ぶことも抵抗もできない。
 メイド服を着た大人の女性をレイプしている。犯される睦都美さんを見下ろしている。目の前にある光景はますます僕の快楽を高め、興奮させていく。

「んっ、んっ……さっさと終わらせてよ……ッ」

 この楽しみを、僕一人で独占するのはあまりにもわがままだ。
 それに、僕の目的は睦都美さんを僕のセックスの虜にすることだからね。
 僕は――父さんから彼女を寝取るために抱いているんだ。

「『メイド人形が欲しい』」
「んっ」

 ぷつんと糸が切れたように、睦都美さんのきつい表情が消える。
 替わりに現れたのはいつもの人形顔。うつろで、感情の見えないマネキンみたいな睦都美さんだ。
 膣の締めつけが弱くなり、ぐちゅぐちゅと緩い水音を立てる。彼女のきれいな顔が僕の腰の動きに合わせて前後に揺れている。
 おっぱいも、弾んでいる。
 人形メイドの睦都美さんだ。

「まったく、憎まれ口ばかりですね。僕のメイド人形のくせにそんな生意気なこと言うなんて、ちょっと幻滅だな」
「んっ、ふっ、んっ、ふっ」
「僕が欲しいのは素直できれいで真心のこもったご奉仕のできるお人形だ。反抗的な子は花純さんだけで十分です。反抗的なお人形には、お仕置きしてしまいますよ」
「んっ、ふっ、んっ、ふっ、んっ」
「というわけで――ーこれからお人形さんの改造手術を始めます」

 僕は、睦都美さんのおっぱいを握りしめる。
 むにゅっと心地よい弾力と、ちょっと固くなってくる乳首の感触。僕はその乳首を摘まんで、スイッチのように前後左右に動かす。

「ここに『快楽レバー』を付けましょう。いいですか? 僕が今、摘まんでいるのが『快楽レバー』だ。あなたのエッチな神経にこれを繋げた。その使い方も説明してあげましょう」

 睦都美さんの乳首を両手で摘まむ。
 そしてそれを動かしていく。

「まずはこれを上に動かすと……」

 睦都美さんのおっぱいを顔の方へ引っ張っていった。
 肌がぴんと張って乳首も伸びていく。

「おっぱいで感じる快楽が鋭敏になる。乳首がすごく敏感になり、その快楽が膣の中まで響く」

 次に僕はおっぱいを下の方向、お腹へ向けて伸ばす。

「こっちへ引くと、おっぱいの刺激がクリトリスへ伝わる。この引っ張れる刺激がクリトリスのものに、直接触られているように感じる」

 おっぱいを左右へ、ぐりぐりと揺らす。

「こうすると、膣の奥をシャッフルされたように感じる。太いペニスが一度に何本も入って、子宮をぐりぐりされる感触だ。想像してみて。すごい感覚だろう?」

 次に、僕は乳首を思いきり引っ張った。
 ぴんと睦都美さんのおっぱいが尖り、肌も伸びていく。

「これをすると、全身が敏感になる。肌に触れる感触が、直接、快楽神経に触れて刺激しているように感じられる。エッチな感覚のむきだしだ。何をされても気持ちいい。息が吹きかけられただけでも気持ちいい。そのまま膣をピストンされると――天国に昇った気持ちになる」

 最後に僕は、乳首をくりくりと指で揉む。
 グミをつぶすみたいに気持ちいい感触だ。

「これでリセットだ。強くなりすぎた快感がゆっくり波を引いていく。排泄にも似た安心感と開放感。乳首をくりくりされることで、全身がほぐれてリラックスできる」

 刺激だけが快楽じゃない。
 快楽を抜いてあげるのもまた快楽だ。
 睦都美さんの改造をここでいったん終えて、僕はメイド人形を解除する。

「んんっ! や、やめてってば……ッ」

 意識を取り戻した睦都美さんが、膣に再び力を込めて、僕に挿入されている感覚に眉をしかめ、反抗的な目で僕を睨む。
 快楽を感じていないわけじゃないくせに。
 僕は彼女のおっぱいを握った。
 
「いきますよ」
「え、なに……あっ、えっ、な、なにっ!?」

 乳首を顔方向へ押す。
 びくっ。
 睦都美さんの体が反応して、痙攣する。僕は人差し指と親指で摘まんだまま、おっぱいを優しく手のひらで撫でる。

「やっ、やあっ!」

 びくびくっ。
 膣の中まで震わせて、睦都美さんの体は軽く仰け反った。

「どうしました? ずいぶんおっぱいが感じやすいんですね?」
「ち、違っ、あっ、だめ、撫でちゃだめ、乳首、摘まむのダメ……あっ!」

 親指の腹で乳首の先端を軽く擦る。それだけで睦都美さんはギュッと膣を締めつけて反応した。
 僕の快楽レバーは順調に機能している。次に僕は、乳首を僕の方へ向けて引き下げる。

「くうぅぅぅッ!」

 睦都美さんはますます膣を締めつけ、腰を震わせる。
 胸への愛撫がクリトリスへの刺激となり、髪をかきむしるようにしてベッドの上で悶える。
 すごく色っぽい。乱れる睦都美さんはやっぱりきれいだ。
 腰の抽挿を再開する。胸、クリトリス、膣。三点同時に与えられる刺激に睦都美さんは仰け反って声を上げた。

「あぁぁぁぁんッ!」

 ギシギシとベッドを軋ませて睦都美さんとセックスをする。
 乳首を離して胸ごと揉みしだき、先端のこりこりを手のひらで転がす。すでにスイッチの入った状態の睦都美さんはいちいち大きな声を出して悶え、きゅんきゅんと膣から液体を溢れさせている。

「感じているんですね、睦都美さん。僕とのセックスを楽しんでくれているんだ」
「やぁっ、違うの、私、そんな、あぁっ、だめ、乳首こりこりされたら、あぁっ、腰、浮いちゃうっ、感じたく、ないのに、あっ、あっ、あっ!」
「感じたくないのに、感じちゃうんだ? すごくエッチな体なんですね。じゃあ、こうしたらどう?」

 おっぱいを左右に振る。
 睦都美さんの膣圧がこれまで以上にきつくなり、白目を剥いて反り返った。

「あ、あぁぁっッ!? だ、だめっ! きつい、それ! ダメ……ダメ、ですぅ!」

 巨大なペニスたちに膣内をかき回される。
 男には想像もつかない刺激を彼女は想像し、そして悲鳴を上げる。
 肌に汗が浮かび、恐怖の色が表情に浮かんでいた。
 僕は、次に乳首を引っ張る。

「いい……ッ、ああぁぁあぁぁッ!?」

 睦都美さんの手足がぴんと伸びる。
 全身の緊張が肌を紅潮させ、ますます膣の締めつけが強くなる。
 僕は、そんな彼女の首筋を舐めてみた。

「あぁぁぁぁッ!?」

 今の睦都美さんの肌は快楽神経の剥き出し。
 ぷしっと結合部から潮を飛ばして、膣を激しく痙攣させる。

「らめ、らめて、それ、あぁぁぁぁッ! や、やぁ、あぁぁぁぁッ!? あひ、や、や、や、あぁぁぁぁッ!? は、はぁ、は……あぁぁぁっ!? やめっ、やめて、狂う、狂っちゃいまふ、あっ、あぁぁぁッ!?」

 首筋へのキス。おっぱいへの舌。耳たぶへの吐息。何をしてもイッてしまう。目が合うだけで快楽に震える。
 全身が性感帯で中枢神経。もちろん気持ちよすぎて狂っちゃうなんてことはない。全て睦都美さんの想像力が作り上げた安全な範囲の快楽だ。
 ただし、彼女の想像しうる限界の快楽。
 それはこれまでのセックスを凌駕する体験だ。

「どう、睦都美さん? 僕のセックスはどう感じる? 今までにこんなセックスをした男はいた?」
「あ、あぁ……あぁ……」
「僕はあなたをこれくらい愛してあげられる。何とも思ってない女性にここまでしませんよ。睦都美さん。僕はあなたが欲しいんだ」
「あぁ、あ、あ……あぁぁぁぁッ!?」
「イッて。もっとたくさん気持ちよくなって。僕に抱かれたこと忘れられなくなるまでイッて。僕、がんばるから」
「だめ、らめ、あっ、あぁぁぁぁッ!」
「びしょびしょだね、もう。こんなに乱れてくれて嬉しいよ。またしよう。何度でもしようよ。いっぱい抱くよ。睦都美さんが、僕のことしか考えられなくなるまで」
「やめて、もう、あぁぁぁッ! あ、あっ……あぁぁぁぁッ! 死ぬ、死んじゃう……ッ」
「睦都美さん」
「あっ、あっ、やめ、おっぱい、だめ、だめです、もう、私、私、私……」
「僕のメイド人形になってよ」
「あぁぁああぁぁぁぁぁッ!?」

 膣内射精した。
 子宮に僕の精液を注がれる感触に、睦都美さんはひときわ大きな悲鳴をあげ、全身をびくびく痙攣させた。
 僕も同じようにペニスを脈動させながら、何度も何度も僕は彼女の中に射精する。僕という男を彼女の人生に刻みつけるように。
 睦都美さんの美しい肌が朱がかって汗を浮かべる。まるで彼女の細胞が変質していく様のようで、僕は精液で染まっていく彼女を妄想して愉快な気持ちになった。
 徐々に体から緊張が抜けて柔らかくなっていき、僕も吐き出しきったペニスを彼女の中から抜いた。
 どろりと睦都美さんの股間から僕の精液が溢れていく。緩んでしまった小陰唇が、わななくように震えていた。

「あ……あぁ……」

 睦都美さんも顔を歪めて泣き出す。
 中学生に膣出しされてしまったことに絶望でもしているんだろうか。
 でも、気にすることはない。
 僕らはいずれ家族になるんだから。
 彼女が本格的に泣き出す前に、僕はコインを鳴らした。

 ―――キィン!
 
「睦都美さん、あなたは今、僕の精液を子宮を開いて受け入れました。それで生まれる子は女の子です。睦都美さんによく似た可愛い女の子。想像して。強く願って。あなたが産むのは女の子。幸せに育つ女の子。幸せに育つあなた自身です。想像して。願って。とても可愛い女の子を産んで幸せに育てる自分を」

 無表情な睦都美さんの耳元に何度も囁く。
 彼女にそっくりの美人な女の子が生まれることを僕も強く願う。
 願えばきっと叶うはず。母親の力を僕は信じる。

「あなたの子どもは絶対に幸せになる。あなたの分も幸せになるし、絶対にしてみせる。だから、女の子だ。絶対に女の子だ」

 そして、次のことも考えて僕は彼女に指示をする。

「睦都美さん、『セックス人形』でいた間の記憶をあなたは忘れる。廊下で掃除していたときに時間が戻る。あなたは僕に犯された記憶にフタをする。次に僕が『セックス人形が欲しい』というまで思い出せない。時間は、廊下で掃除していたときまで巻き戻る」

 セックス人形というもう一つの顔は、彼女にはまだ伏せておく。
 僕は父さんから睦都美さんを奪う。でも、それがいつかは彼女に選ばせる。セックスで選ばせる。
 彼女が僕のセックスに屈服し、僕を主と認めるまでセックスをする。
 それが、セックスに支配されてきた彼女の人生を支配するということだ。
 お金の力でも権力でもなく、彼女の本能に僕を認めさせるんだ。
 僕は、正しい手段で彼女の家族になる。

「――おかえりなさい、蓮さん」

 玄関に立つ僕を振り返り、睦都美さんはいつものメイド服と無表情で僕を迎える。
 短いメイドスカートには少しシワが目立つけど、彼女がそれを気にする様子はなかった。記憶は完全にねじ伏せられ、時間も状態も『掃除していただけ』と誤認されている。
 たとえ、その太ももに僕の精液の跡がまだ残っていたとしても。
 
「ただいま、睦都美さん」

 またすぐにでもセックス人形の彼女に会いたい。
 僕の下で泣きわめく彼女の姿態を思い出して、股間がうずうずする。

< 続く >

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