第一話
「くそ……!ここにもない……。まいった……」
黒井雄介は、夕暮れの公園の茂みの中を掻き分けていた。目的は自分の財布。あれにはお金だけでなく、定期など、生活の必需品が詰まっているため必死になって探す。
普通なら、警察に届けるべきだが、それはできない。
「ちくしょう!なんで恭太に絡んだだけで、こんな目にあうんだ!」
自分のはれた頬をさすりながら、雄介は、木の幹を蹴る。
黒井雄介は、不良と言われる学生だ。否、精確にいうとなんちゃって不良と言った方がただしい。漫画や小説に出てくるような無法者のようなものではない。ただの柄の悪い奴だ。
学校に言っても、真面目に授業を受けないが、授業妨害もしない。かつあげや喧嘩はするが、弱そうな奴とか、こっちに人数が多いときにしかしない。
不良をやってる理由も、真面目で規則正しいことはかっこ悪いと言い張り、型破りなほうが男らしくてもてると勘違いしてるからだ。
そんな雄介が、休日の人が少ない公園で、同じクラスの神谷恭太を見かけ、絡むのはごく自然な流れだ。
神谷恭太は、クラスの中、否学校でもトップレベルの美形だ。どちらかと言うと、かっこいいというより、かわいいといった大人しい男子だ。
おまけに家がかなりの名家で、物腰も柔らかく気品があり、やさしい。なのでかなりもてる。特に上級生に人気がある。なので、雄介たち不良にとっては格好の獲物だった。
恭太は、顔はいいが運動は苦手。けんかなんてしたこともないだろう。ちょっと脅せば、いつもどおり、おこずかいを手に入れられる。別にお金は困ってないが、これはゲーム。
みちでであった雑魚敵を倒して、経験値とG(お金)を手に入れる。
案の定、声をかけると、恭太はビビッて声が震えている。楽勝と思った瞬間、背中から衝撃が襲う。
そしてそのまま、自販機横のゴミ箱にぶつかり、中に入っていたゴミをぶちまけながら倒れた。
「しつれい。だが、君は道の真ん中にいるべきではない。なのでふさわしい場所にどいてもらった。だが、ちょっと力加減を間違えてしまったな。ゴミをゴミ箱に入れようとしたのに逆に汚してしまうとは……」
「いってぇ~!!なにすん……だ……げ!ヒナト!」
起き上がると、雄介に蹴りをくわえた足を下ろし、腕を組んでいる金髪の女が立っていた。
ヒナト・グレゴリー。フランス人と日本人のハーフで雄介と恭介のクラスの委員長。身長は小学生と言われてもおかしくはないほど小さいが、態度はとてつもなく大きい。
「ほう。最近のゴミはしゃべるのか。しらなかったよ」
ヒナトは腕を組んでえらそうに倒れた雄介を見下ろす。否見下すと言ったほうが精確だろう。雄介に対しての侮蔑と怒りが目に宿っている。
「恭太も!こんなゴミを怖がるな。なさけないぞ。どうせこいつらは見かけだけなんだから!」
「だ……だって。そりゃあヒナトにとってはそうかもしれないけど……」
ヒナトは、助けた恭太にも声を上げる。これがヒナト・グレゴリーだ。外見はかわいらしいのに、男勝りでえらそう。性格もまじめで、規則違反を何より嫌っている。
正義感も強く、リーダシップもあり、面倒見もいい。おまけに、父親が外国で有名なデザイナーで母親が、地元の名家のうえ有名な華道家で市長というサラブレットだ。
成績も優秀でスポーツも得意。おまけに、親譲りの美形となれば、一般生徒や先生には人気者。唯一の欠点は体の発育が小学生ぐらいで止まっていることぐらいだが、あまりマイナスになっていない(一部ではプラスとなってる)。
だが、雄介たち不良にとっては天敵にも等しい。何せ、こっちのやることを目の敵にし、邪魔をし、脅してもひるまず、実力行使に出ようものなら、得意の古武術で返り討ち。
親の権力でも完全に負けて手の出しようがないのだ。だからできることは、陰口をたたくことぐらい。だが、当の本人は負け犬の遠吠えにしか思ってらず、最近は逆にそれを使って馬鹿にされる。
「な……なんで、お前が……」
「別に、幼馴染と買い物に行くことが不自然か?待ち合わせの時間に来て見れば、珍しいしゃべるゴミがいたのでな。つい、足でゴミ箱に入れてしまった。手で触るのはいやでね」
そういうと、転がっていた空き瓶を蹴り上げて浮かせ、手でつかみ、流れるような動きでそれを雄介に投げつける。それは見事に顔面に当たり、おきかけていた雄介は、今度は植え込みのほうに倒れる。
「よし!あたった!さあこれでこりたろ。さっさとどっかにいくと言い。出ないと、的にする。昨日お前たちが、恭太を的に同じことをしていたな。面白いと騒いでいたが……」
「ち……ちくしょう!」
雄介は痛む頬を押さえながら、逃げた。それでも後ろからゴミが飛んでくる。
「ヒナト!もういいよ!それにゴミをちらかしちゃあ!」
「ええい!邪魔するな。お前をいじめてたゴミだぞ!ああいうゴミはゴミ箱に入れてもリサイクルもされん!だから、私が処理して何が悪い!」
振り返ると、恭太が缶を持って振りかぶってるヒナトを、押さえ、そのことにたいし怒られていた。
この二人は周囲からは付き合ってると言われている。同い年で親が知り合い(恭太の父親がヒナトの母の部下)。ぞくに言う幼馴染だ。
ただ付き合うと言うより、恭太がヒナトのしりに敷かれていると言ったほうが正しい。
ヒナトと恭太の性格にくわえ、親の関係により幼いころから一緒にいればこのような関係になっても不思議はない。綺麗な言い方をすれば、姫と執事。雄介たちはご主人様とペットの関係と思ってる。
いつもどおりのやり取りをみて、いつもは、二人特有のいちゃつきを見せ付けられむかついていたが、今は、これ幸いと逃げ出した。
ある程度逃げて、ほっとしたのもつかの間、財布がなくなっていたのに気がついた。きっとあの時落としたのだろう。すぐさま戻りたかったがヒナトがいる。
二人が絶対にいないであろう時間になって公園に行き、財布を捜し、今に至るというわけだ。
明るいならもっと見つかりやすいのだが、今は暗がり。そして財布の色は黒。吹っ飛ばされた場所を探し回ったが、見つからない。
拾われて警察に届けられた可能性もあるが、それはまずい。今警察に行けば、この顔のことを聞かれる。
馬鹿正直に、『かつあげしようとして、蹴っ飛ばされビンを当てられました』なんていえるはずがない。たとえごまかしても、親に連絡がいく可能性が高くまずい。
なんちゃって不良の彼に親と本格的に喧嘩をする度胸と覚悟があるわけがない。
そういうわけで、雄介は、日がしずみ、街灯がつき始めた公園で、財布を探し回っていた。
「これも全部、ヒナトと恭太のせいだ!」
絡んだのは雄介なので、自業自得なのだが、そんな正論に納得するような輩が不良になるわけがない。
なので、まさに負け犬の遠吠えのごとく、この場にいないヒナトたちに恨みをはいていた。
「はあ……。しかしどうする?財布がないと帰れない。かといって友達にはヒナトにやられたってばれたくねえし、親にはもっとばれたくねえ。最近夜遊びしすぎて、やばいし……」
「はあ……。まいったなあ。まさか携帯落としてなくすなんて。まずい……。別に無くても問題ないやって思ってたけど、いざなくすとこんなに不便だなんて……」
ふと、愚痴をつぶやくと、同じように困った声が聞こえてきた。振り返ると、自販機のそこをごそごそあさってる男がいた。
眼鏡をかけてよれよれのコートを着た、真面目そうな青年だ。
(……だれだかしらねえが、あいつも大変そうだな。わかるぜ。当たり前に持ってたものがなくなって困るって気持ち……)
いつもなら、相手の困ってる様子を見て馬鹿にしながら笑うか、暇つぶしで絡んで遊ぼうかと思うところだが、今は同じ困った者同志。財布と携帯なくしたものは違うが、妙な親近感を雄介は抱いた。だから、つい声をかけてしまった。
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「いや~。たすかったよ」
「いえ。みつかってよかったっすね」
雄介と男は、ベンチに座って、休んでいた。雄介はコーヒー。男は緑茶だ。男の手には、携帯が握られている。
話しかけた雄介が、男の携帯番号を教えてもらいかけて、音を鳴らし、見つけたのだ。
「君が、いなかったら見つからなかったよ。最近は公衆電話もないからね」
「そうっすね。はあ、あとは俺の財布か……。でもこれは音でないからな……」
お礼とばかりにおごってもらったコーヒーを飲みながら、つぶやく。不良なら、お金がなければかつあげすればいいじゃない。
と思うところだが、所詮、なんちゃって不良。おまけに今は一人だ。怖くてできない。
隣にいる男にたかる気も起きなかった。困った者同志の連帯感がまだ尾を引いてるのか、それとも男の雰囲気のせいか。なんというか、危害を加えようという気が起きない。
悪い人ではなさそうなので、携帯の恩を理由に、少しだけお金を貸してもらおうかと考え出した。
「まあ、そうだね。でも大丈夫。これがあればすぐに見つけられるよ」
「は?」
男が見せたのはさっき探していた携帯だ。それでどう財布が見つかるのがわからない。だが、男は気にせず、携帯を操作する。
「お礼だよ。君の話だと、この近くで落としたんだよね。時間は3時ごろ……。よし!つながった」
すると、携帯の画面が切り替わる。テレビで見たような画像が流れてる。警察特番などでよく見る警備カメラの画像だ。おまけにそれは、見慣れてるこの公園の画像だ。
「ほら。あそこの自販機。最近は良くついてるんだ。その管理会社のサーバーに入り込んで録画画像を見てるんだよ」
男が指差した自販機の上には確かに防犯カメラがついてる。おまけに画像は、雄介が恭太にからむところ。ヒナトに吹っ飛ばされる映像が流れてきた。
(すげえ!これ本物だ!なんだ?このひと?携帯でこんなことできるだなんて)
驚いて、声が出ない間も、画像が流れる。やがて、ヒナトが逃げる君にゴミを投げつけ、それを恭太がとめ、怒られてるところになった。ここまでは雄介は知ってる。
すると、二人は、散らばったゴミを片付け始めた。精確にはヒナトが、恭太に指示を出して片付けさせてる。すると、恭太が何かを見つけ、ヒナトに渡す。それは雄介の財布だった。
「なになに。『これは財布?中に学生証があるぞ……。何だ。あのゴミのか。しょうがない。明日学校で返してやるか』だって。この子が持ってるみたいだね」
「え?何でヒナトの奴がいってることがわかるんですか?」
画像は警備カメラなので、映像は出るが、音は出ない。
「読唇術。唇の動きで見たの。こつさえわかれば結構簡単にできる技なんだよ。この子。ヒナトって言うんだね。かわいいけどきつい性格そう」
「そう。そうなんですよ。と言うか俺の財布あいつが持ってるのか……どうしよう。明日って」
取り替えそうとしても無駄だ。返り討ちにあう。明日になれば戻ると言うが、今夜は確実に戻らない。おまけに、あのヒナトのことだ。
返すときぼろくそに罵るだろう。普通の生徒ならヒナトは優しいが、不良に対しては容赦がない。大勢の生徒の前で、無様な姿を晒したことをしゃべるはずだ。
「別に、明日じゃなくても、今連絡すればいいんじゃないか?」
「だめっすよ。あいつの怖さ知らないからそんなこといえるんですよ」
雄介は、いつしか男に敬意を持って話しかけていた。なんちゃって不良の彼は、強者にはたてつかず、好かれようとする。この男は見かけはさえないが、只者ではない。
そう直感で感じた。
雄介は、今までヒナトに合わされたひどい目を話し出す。それを聞いた男は、興味深そうにうなづき、携帯に写ってるヒナトの顔を見る。
「ふむふむ……。面白そうな素材。顔も悪くない。……この子でいいか。」
「?」
「ああ……。こっちの事情だよ。それより、財布の件。私に任せてくれないかな?携帯のお礼もしたいし」
「え?ああ……。それはかまわないっすよ。俺は財布さえもどれば……」
「いやいや。財布はおまけ。もっといいものさ。お礼は。なんせ、携帯だけでなく、いい素材にめぐり合わせてくれたからね」
「は?」
男は、そういうと、携帯をどこかにかけ始めた。
「もしもし。私。急な命令で悪いんだけど、今から送る写真の男をさらってきてくれる?今すぐ」
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雄介の目の前に、ぐるぐる巻きに縛られ、目隠しにヘッドフォンがつけられた恭太が転がっていた。いや精確には、座っていたベンチの後ろにある木から降ってきた
「命令どおりにさらってきました。処置も終わっています。ざ……」
「ストップ!私の名前は言わないこと。一般人がそばにいるからね」
「す!すいません!そばにいるのでてっきり協力者かと……ああ。私ってばなんてミスを……。お仕置!お仕置してください!!このダメなメス犬に!!」
木の上から女の声が聞こえる。この女が恭太をさらってきたのであろう。だが姿が見えない。背の高い木のうえにいるせいだ。暗闇と葉のせいで姿を確認できない。
「あ~。そだね。じゃあ!ハウス!今は忙しいから……」
「は!はい!急いで戻って待っています!今後このようなミスをしないようきつめで!」
そういうと、木の枝が揺れ、声がしなくなった。
「う~ん。使いやすいから、ああいう性格に設定したけど、やりすぎちゃったかな。最近はお仕置目当てで、どうでもいいときにミスするようになってるし……」
雄介は、どう反応していいか困った。只者ではないとは感じていたが、想像を超えている。只者ではないどころかやばめだ。
男の概観は変っていないのに、雰囲気が違う。先輩にクラブで紹介されたヤクザとコネがある人が発した種類の感じ。
ただし、目の前の男が発するほうがより、研ぎ澄まされ鋭利だ。
「あ……あなたは誰なんですか……?」
「……好奇心旺盛なんだね。聞かないほうがいい。たぶん聞いたら、今日だけじゃなくずっとおうちに帰れなくなるよ。でもまあ仕方が無いか。わけわからないだろうし。一応役職からドクターって呼ばれる。医者って意味じゃないよ。医者まがいのこともするけどね」
男は、笑っているが、雄介は笑う気になれなかった。
「さてと、それじゃあはじめようか」
そういうと、ドクターは、地面に転がってる恭太の写真を携帯で撮って、メールをした.そして、どこかに電話する。
「やあ。はじめまして。ヒナト・グレゴリーちゃん。メールでもわかるように恭太君は我々が捕まえている。それを踏まえて。今から、君たちが待ち合わせした公園まで来てくれるかな?携帯はきらずに。20分で」
『貴様は誰だ!何の目的で!』
携帯から、ヒナトの怒号が聞こえる。大事な恭太をさらわれたのだ。当然の反応であろう。だが男は、飄々と話しかける。
「おやおや。そんなおしゃべりしててもいいのかな?今いる場所から公園まで、20分以内は大変だと思うけど?なに、全速力で寄り道をしなければ大丈夫なはずさ。ただ、すこしでも遅れたら、彼どうなるかな?」
『!!くそ!……この卑怯者!覚悟してろ!』
そのあと携帯からは、ハアハアと息遣いや、人が走る音が聞こえている。ヒナトは、走ってここにくるようだ。
「がんばって~。あ、ちゃんと携帯は耳につけてね。問いかけに返事をしなかったら、どこかに連絡してると判断して、恭太君がひどい目にあうので」
『!!わかった……』
「まあ、そんなにしょっちゅうかけないから、走るのに集中しなさい。じゃ!」
彼はそういうと、保留ボタンを押し、笑う。
「これでよし。彼女の性格からして素直に言うこと聞くだろうしね」
「あ……あの……大丈夫なんですか?あいつ、かなり強いですよ」
雄介は、恐る恐る話しかける。ヒナトは身体は小さいが、かなり強い。対してドクターといったこの男は、そっちの方面で強い感じはなかった。
おまけに恭太をさらわれ、ヒナトは怒ってる。
「ああ。大丈夫だよ。こっちにつくころにはね。君は……そうだね。恭太君を支えて座らせてやってくれ。目隠しもとっていいよ。かわりにこれ!」
ドクターは、恭太の口にテープを貼り付け、しゃべれなくする。雄介は、大人しく言うとおりにする。ふと、怯えてる恭太と目が合った。
(俺も怖いよ!でも……いまさらな……。ここで逃げ出すのも怖いし、ヒナトにぼこられるのもこわい!……ああ。なんでこんなことに……)
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「はあ……はぁ……。ようやくついた。……お前……覚悟はいいな?どうやら、そこのゴミの知り合いのようだが、私はこんなことをする悪党に手加減する情けは持たないし主義でな」
ヒナトは、男の後ろのベンチで恭太を捕まえてる雄介と、自販機にもたれかかってるドクターをにらみつける。
「いや……俺は別に財布さえ……」
財布さえ戻ればいいと言い訳をしようとしたが、ドクターが手を上げそれを止める。
「ああ、問題ないよ。それと勘違いしてるようだが、別に私は彼に頼まれたわけじゃない。私がしようとしてることに関係はない。たまたまさ。いうなれば見学者?」
「……」
「その証拠に、彼には恭太君に手を出させない。それから、べつに恭太君を人質として使うつもりもない。君をおびき出すための餌だからね。もう用はない」
「……。信じられんな。人をさらう悪党の台詞なんて」
「信じなくてもいいよ。ただ、私は嘘つかないことで有名なんだけどね。ホントにもう用済み。君が私を痛めつけたかったらするといい。できればだけど」
飄々とした態度にヒナトは、不気味さと怒りを感じた。
(……どういうことだ?あいつらが私に対する恨みで恭太をさらって、おびき出したとおもっていたのに。いるのは知らない優男が一人……。見たところ強くはなさそうだが……。不気味だ。ええい!臆するな!周りにあいつら以外の気配はない。おまけにあいつは恭太からはなれてる。あいつに襲い掛かると見せかけ、あのゴミを倒し、恭太を助けてから対処だ!)
てっきり、ゴミの仲間が、大勢待ち受けてると考えていたが、これは好機と考えた。あの男が恭太からは慣れている今しか助けられない。
余裕を見せて、自販機にもたれかかり、お茶を飲んでるが、隙がない。恭太と言う、気がかりがいる中では戦いたくない。
「……なかなかの自身だな。だが、私を女となめてると痛い目をみるぞ。お言葉にあまえてさせてもらうとしよう」
そういうとヒナトは、構える。見た目はドクターに向かっているが、意識は、雄介にむいている。
当の雄介は、そんな意図に気がつかず、ヒナトとドクターを交互におろおろとみている。
(やっぱり、ゴミだな。見かけだけだ。いつもは軽めで済ませてたが、今日は容赦なくうち込ませもらおう)
雄介が、男に目をそらした瞬間、ヒナトは、雄介に襲いかかる。
「もらった!」
「え!?」
雄介は、何が起こったかわからなかった。なぜかヒナトがこっちに向かってる。怒りながら笑みを浮かべこっちに来ているのだ。
それがまるでスローモーションのように見えている。
(ああ……。もしかしてこれって走馬灯じゃなくて……死ぬ間際にみえる刻の世界……)
今日はついていない。財布なんてこだわらず、素直に怒られれば死なずにすんだのに。そんな後悔の念で一杯の中、目の前にペットボトルが飛んできた。
ドクターが持っていたお茶のボトルを、雄介とヒナトの間に投げつけたのだ。刻の世界に入っていた雄介は、その様子がはっきりわかった。
(助けてくれたのはありがたいですけど、外れてますよ。それ)
そのペットボトルが、地面に当たる軌道、いやその瞬間が見えた。ヒナトにあたるならまだしも、地面に当たるだけなら、ヒナトはそのまま殴りかかってくるだろう。
何かを悟ったのか、冷静に事態を受け止める雄介は次の瞬間信じられないものを見る。
「ひ!!」
こっちに向かっていたヒナトが、いきなり頭を抱えてうずくまったのだ。別にペットボトルがあたったからではない。むしろ目の前に叩きつけられたのに。
「あれ?」
「え……。な……なんで?」
雄介はなにがおこったかわからない。ヒナトも同様に困惑していた。男がペットボトルを投げたのはわかっていた。
ただ、それは自分に当たる軌道ではなかったため、無視して突っ込むつもりだったのに、急に怖くなり思わず身をかがめてしまったのだ。
(な……何してるんだ!私は!絶好のチャンスを!まだ!まだ間に合う!今すぐたって、あのゴミを倒して、恭太を救う!……だめ!なんで?!怖い!足がすくむ!いったいどうしたというのだ!)
じゃりっと足音がする。いつの間にか、男がヒナトのすぐそばまで近寄ってきていた。構えてもいない。ただ微笑んでいる。なのに怖い。
「どうしたんだい?私みたいな悪党に容赦はしないんじゃないのかな?遠慮なく懲らしめてもいいんだよ。できるなら」
「う……あ……。お前……いったい……」
何者だ?と言おうとしているのに声が出なかった。恐怖のほかに、すごくいけないことをしていると言う罪悪感まで出てきた。
そう、父や母など目上の人に接するようにしなくてはいけない。そんな思いで一杯だった。
(なんで?!こんなあったこともない!ゴミとつるむような男に!)
「ね?大丈夫だったでしょ?」
男は微笑みながら、振り返り雄介を見る。声をかけられて、ようやく雄介は、命の危機を乗り越えたことを実感し、刻の世界から帰還する。
「は!あ……はい……。」
(なんで?なにしたんだ?ただペットボトル投げつけただけだろ?それをあんなに怖がって。あんなヒナトみたことねえ)
雄介が知ってるヒナトは恐れをしらないはずだった。相手が強そうな不良だろうが、先生だろうが、間違ってると思ったときは臆せず立ちふさがる。
小さい身体なのに大きな態度で突っかかるのだ。まるでそうすることが当たり前のように。
だが今のヒナトは、外見相応、いや過剰なまでに怖がってる。まるで暴力に耐性がないひ弱ながり勉が、不良に絡まれた時のように、怖がってる。それどころか泣きかけてる。
「それじゃあ続きをしますか」
そういうと男は、懐からMDプ○レイヤーをヒナトの前にほおりなげる。
「ヒナトちゃんは、それを耳につけて、聞きなさい。終わるまで15分くらいかかるから。……ちょっと暇だね。暇つぶしに、恭太君の下半身を丸出しにして踊ってもらおうか?この前、雄介君がそれをさせようとしてたんだよね?雄介君。悪いんだけど、恭太が服脱ぐの手伝ってあげて。縄きって」
確かに、雄介は恭太をいじめるために、そんなことをさせようとした。当然やる前にヒナトに止められたが。いや、叩き潰された。
(な……!やっぱりこいつも、ゴミと同類だ!カスだ!こんな奴に、怯える必要はどこにもない!)
ヒナトが怒りを覚えると、恐怖が少し晴れた。体の振るえが止まる。
「や……やめろ!恭太にひどいことさせるな!」
(まってろ!恭太!今すぐ助けてやる!)
ヒナトにとって恭太は、いつも、いやこれからそばにいてくれる心が休まる男子だ。男として父親の次に好きな男子だ。
確かにちょっと頼りないところもあるが、幼いころからずっと一緒にいた。会った時から気が弱く、自分が守ってやらないとといつも思っている。
友達から『彼氏?』と言われて、照れて否定はしたが、本心ではちょっと嬉しかった。
そんな、恭太が、いじめられようとしている。
(わけのわからない恐怖に震えている場合か!ヒナト!)
自分を奮いたたせ、立ち上がろうとする。
「ヒナトちゃん。早く!そうだ。恭太君は君の彼氏なんだよね。君から命令してくれないか?」
(な!そんなことできるか!私が、恭太をいじめるなど!)
ヒナトが、男をにらみつけると男は、ぶんっとこぶしを振り上げた。殴る動作ではない。今から殴りつけるぞと言う威嚇のための大げさな動作だ。
実際、あの動作のあと、殴られても力がこもらず、そこまで痛くない。何より、振りが大きい分、よけやすい。まったく恐れる必要がない動きだ。
だが、そんな動作を見た瞬間、ヒナトの態度は一変する。
「ひゃあ!やめて!わかりました!はい!恭太!お前すぐに脱いで踊るんだ!」
立ち上がりかけていた、ヒナトはすぐ腰を落とし、地面に落ちているイヤホンを耳にはめ、再生する。その手は奮え、目は涙目だ。
ただ、恭太荷命令する口調はいつもどおりだった。
(な……なんで?!あんなの怖くないはずなのにすっごく怖い!あれをくらうのはいや!何が何でも避けたい!大事な恭太でもいじめて助かるならそれでいいって思うなんて!!いったい私はどうなってしまったんだ!?)
ヒナトはもう完全に泣いていた。恐怖と情けない気持ちで一杯になっていた。理不尽な暴力に屈するだけじゃなく、大事な恭太を苛める手助けもした。
それはヒナトにとって、もっとも恥ずべき行為のはずなのに、ほっと安心したのだ。これで自分は助かったと。
「ね?いったとおりだろ?さあ、恭太くんの縄をほどいてあげるといい」
男は笑いながら、雄介に話しかける。それを見て雄介は思った。悪魔と言うのはこんな顔をしているんではないだろうかと。
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「恭太!そうじゃない!こうだ!まったく!運動オンチはまったく治っていないな!」
「ご……ごめん。ヒナト。でも、運動オンチって治るもんじゃないし……」
「口答えをするな!恭太は私の言うことを聞いてればいいんだ!」
「ごめん!わかったよ。ヒナト。うう……」
「まったく……。ど……どうだろう?私の指導で少しは見れる者になったと思うのだが……」
恭太とヒナトは、ベンチに座ってる、男と雄介の目の前で踊っていた。恭太にいたっては下半身丸出しだ。
情けない泣き顔で必死に腰を振ってチンポを揺らしている。そのチンポはとてつもなく小さかった。金玉はそれなりなのにチンポは親指ほど。
子供でもまだ大きいものがあるだろう。自分の一番の欠点。しかもそれを大好きなヒナトの命令で晒してるのだ。当然と言えば当然だ。
「ちいさいね」
男は、恭太の粗末な物を見て、つぶやく。面白いどころか興味すらわいていないようだ。
「ああ!そうだな!すまない!恭太のこれは、子供のころから全然変っていないんだ。まったく。幼馴染として恥ずかしい!ほら!恭太!お前も男だろ!おおきくしてみろ!」
「ええ!む……無理だよ……。恥ずかしいよ」
「無理でも何でもするんだ!でないと私が怒られるだろう!ほら!私のパンツだ!これでどうだ!」
ヒナトは顔を真っ赤にして、スカートを少したくし上げる。そこから白のかわいらしい下着が顔を出す。
(ああ!私はいったいなんてことを!こんな往来で下着を見せるだなんて!でも!こうしないと又怒られる!いやだ!怖い!恥ずかしいとか情けないなんていくらでもしてもいい!)
「う~ん。更新率50%。まだまだだね」
「あ……あの……いったいなにしたんですか?」
雄介は隣に座ってる、ドクターと言われる男に話しかけた。正直話しかけるのは怖かった。だが聞かずにいられなかった。
あのヒナトが、こんなみっともない姿をさせてるのはこの男が原因だ。
「ああ……簡単な刷り込み?いや改造……洗脳っていたほうがいいかな?ヒナトちゃんがこっちにくるまで電話の保留音に混ぜておいたんだ。『暴力にあっさり、屈する』って簡単なのね」
洗脳?聞いたことはあるが実際に見たことがない。雄介は混乱した。
「で、今はより、強力でしっかりとしたものをいろいろ入れているの。本格的な改造前の下ごしらえってところかな。……信じられないって顔してるね?」
「あ……いえ。そんなことは」
嘘だ。信じられない。だが、ヒナトの変貌はそれなら説明がつく。洗脳など本当にできるのなら。
「まあ、言われてもわかんないよね。でも本当だよ。今ならこんなこともできる。ヒナトちゃん。君は彼の財布もってるね?ダメだよ?人の財布を盗っちゃ」
「え!ああ!ちがいます!私はそんなことしない。これだって、明日かえすつもりだったんですから!ほら!これはお前のだろ!私が拾っておいてやったんだ!」
そういって、雄介に財布を渡す。ヒナトは男には敬語を使っているが、雄介にはいつもの高慢な態度で話す。だが、それは必死さがあふれ、無様を通り越して笑いそうになった。
「おやおや、財布だけかえすって、それだけでいいのかな?それプラス何か渡すべきでは?」
「あ!はい!そうです!おい!恭太!お前の財布をあげるぞ!かまわないな!もしも足りなければ、私のもやるから!ナ?これで許してくれ!うう~」
ヒナトは震えながら、頭を下げて、財布を雄介に差し出す。
(ああ……私はいったい何してるんだ。こんな奴に頭下げて!でもこうしなくちゃいけない!それ以外考えられない。この音楽を聴くたびにどんどんひどくなる!)
ヒナトの耳にはクラシックでもないポップでもない。知らない音楽が耳に入ってきてる。それを聞くたびに、どんどん、情けなく、恐怖が湧き出てくる。
言うことを聞かないといけない。怒らせてはいけない。そればかりを考えてしまう。
「ね?すごいだろ?君も何か言うといい。嫌がったら殴る振りをするだけで大抵の命令はきくよ。できるだけえらそうにすると、なおいい」
「あ……は……はい」
雄介はおそるそる命令する。安全は確保されているみたいだが、今まで散々ヒナトにやっつけられた経験があるため、妙にビビッてしまう。
だが、反面、わくわくしていた。もし本当なら、今まで散々悔しい思いをさせられたヒナトに仕返しできるからだ。
「じゃあ……土下座!土下座だよ。誠意を見せるなら土下座。それとお前らだけの財布じゃ足りねえ。俺がドンだけ困ったと思うんだ!金目のもの全部出せ!」
雄介は、持ってるボキャブラリの中から搾り出してしゃべった。いつも以上に大げさな脅し文句だ。隣にいるドクターと言う男の期待にこたえなくてはいけない。
そんな思いから出た台詞だった。その言葉を聞いたヒナトは、いつもなら怒るはずが、雄介の想像以上の行動をする。
「わ!わかった!土下座だな。お安い御用だ。お金だって財布だけじゃない。好きなだけやろう!そうだ!この服!これは父上の新作で日本ではまだ売ってない。高価だぞ!」
そういうと、ヒナトはいそいそと服を脱いで、下着姿となり、脱いだ服を綺麗にたたんで、上に財布を置き差し出し、土下座をする
「こ……これでいいか?もし、足りないなら下着も売るぞ!巷ではそういう店があると聞いた!場所は知らないが恭太に調べさせるから!あ!恭太!見るな!こんな姿見るな!目をつぶれ!うう。何でこんなことに……」
「あ!うん!わかった」
恭太は、素直にヒナトの言うことを聞いて、目をつぶっている。それでも裸踊りはやめないが。
「……あのヒナトが……ほんとに……すげえ。ナあ、今どんな気分なんだ?ヒナト」
雄介は、ふるえながら土下座してるヒナトの頭をぐりぐり踏む。
「ひ!ああ!わかった!言う!だからやめて!踏まないでくれ!恥ずかしい!そして情けない気持ちで一杯だ!正直言うと怖くて漏らしそうなんだ!いや!もう漏れちゃう!いやだ!あ!あ!ああぁあぁ……」
ヒナトと叫び声と共に、股間から液体が漏れ出し、水溜りを作っていく。本当に漏らしてしまったようだ。
「ああ……やってしまった……いい年をして……はしたない……。見るな!見るな!見ないでくれ!いやぁ!見ないで……うああぁ」
ぐずぐずと鼻水をすすりながら泣いている。土下座をしていてわからない。雄介は背筋がぞくぞくした。
(あのヒナトが!こんなみっともない姿で!それを俺が!いや精確にはあの人の力なんだけど……)
雄介は気持ちよくなり、ついヒナトの頭を踏んでいる足に力をこめる。
「ひい!やめろ!許して!今までしてきたこと全部謝るから!やめてくれ!乱暴しないでくれ!なんでもする!恭太もいっしょにあやまれ!ああ!」
「え!?ヒナト……。うん。ごめんなさい!だからもうヒナトを許してあげて!」
雄介の頭には、今までヒナトにされてきたことがよみがえってきた。まだ足りない。無様なおもらしすがたを見ても、今までされたことは全部チャラにできない。
もっとひどい目にあわせないと!そういう野望がむくむくとわきあがってきた。
「あ…あの……。もっとひどいことしていいですか?たとえば写真をとるとか……?」
おそるおそる、そばで、携帯を見てるドクターに話しかける。この人の機嫌は損ねられない。自分が勝手にやって怒らせたら大変だ。だから、確認を取った。
「え?……ふ~む。更新率が上がってる。これならまかせてもいいかな?いいよ。その写真もばら撒きたかったらばら撒いてもいい。ただ、その結果についての責任は君が追うこと」
「は…ハイ!わかりました!」
許しを得た雄介は、ヒナトに更なる命令を与える。
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「こ……これでいいか?」
「ああ、ばっちりだぜ」
「そ……そうか!よかった。ああぁあ」
ヒナトは顔を真っ赤にして、雄介の携帯の前で股をを広げていた。
雄介は『みっともない格好をして、降参宣言をしろ。写真で証拠を取って残すから』。
そういうと、ヒナトは、いちもにもなく言うとおりにし、今に至る。
下着も脱いですっぽんぽんになり、腰まで伸びた金髪のストレートヘアを頭のてっぺんでパイナップルのように無様に束ねている。
おなかにはマジックで「負けお漏らし女」と書かれていた。
パシャ!
シャッター音が響く。それにあわせて、ヒナトは身体を震わせる。
「ああ……とられた……。もう。もういいだろ?許してくれ」
「はあ?!まだ序の口だろ。もっと一杯取らないと、合成だって信じてもらえないじゃないか。まだわからないか?」
雄介は、ヒナトの無様なちょんまげをぐいぐいひっぱる。
「ひい!ああ!やめて!わかった!わかったから!」
そういって、次から次と屈辱的なポーズをとらせる。犬のまね、土下座、頭からジュースをかけられて馬鹿みたいに笑っている顔。
学生証をそばに貼り付けてのおまんこUPのもとられた。
(すげえ!洗脳ってすげえ!)
ヒナトは、どんな屈辱的なポーズでもちょっと脅せば素直に従った。今までのえらそうなヒナトが嘘のようだった。
一番笑ったのが、ヒナト自身に恭太をコーディネートさせたときだ。最初は嫌がったが、ケツをたたくとみっともない声を上げて泣き出した。
「ひいぃい!ああ~ん!痛い!やめて!わかった!やる!だからやめて!」
「最初からそういえ!いいか!もし、適当にやったらぼこぼこにするからな!」
「ぐす!わ……わかった。私以上に惨めにするからゆるしてくれ」
そういってヒナトは、恭太の服を全部脱がせ、自分のお漏らしパンツを頭にかぶせ、おなかに「ミニチンポ男」と落書きをした。
「ひ……ヒナト……。こんなの恥ずかしすぎるよ……。みじめだよ」
「我慢しろ!私だって恥ずかしいんだから!」
(すまない。恭太!私だって助けてやりたい。でもそんなことしたら、怒られる。機嫌を損ねる。お前が惨めな目にあえば、あいつらの機嫌もよくなる!仕方が無いんだ!)
いつも、恭太を守っていた、ヒナトが泣きながら、恭太を虐めてる。
「おい!なんかつらそうだな?いやなのか?」
「え!?いや!そんなことない!楽しい!ほら!恭太!もっと惨めに泣け!この素チン!ミニソーセージ!悔しかったら大きくなれ!」
そういってマジックで、恭太のチンポの先を塗りつぶす。
「いた!強いよ!ヒナト!ひどい!ううぅ……」
「な?楽しそうだろう?お前達がよくいじめて気持ちがわかる。これは楽しいな!」
雄介はその姿を動画で録画していた。完全にヒナトは今までと違っている。これが洗脳。すごい。
「だろ?よし!ヒナト。その素チンを蹴り上げてその上で降伏宣言しろ!」
「え!?あああ……。わかった!は!」
ヒナトはひざを、恭太の股間にぶち当てる。当然、恭太は、声にならない悲鳴を上げて倒れる。
「jだいj9f8えう9qw!!!!!」
うずくまる恭太に片足を乗せてヒナトは宣言する。
「私、ヒナト・グレゴリーと素チン恭太は、黒井雄介に負けたことをここに宣言する!普段はえらそうにしているが、実際はあっさり負けて、お漏らしをして、裸になって降参したのだ!」
ヒナトが、止めとばかりに恭太の金玉を踏み潰す。体育祭で宣誓したときのように凛としてるが、やってるのはみっともない負け宣言だ。
「洋服と財布を差し出して何とか許してもらった。その寛大な処置に、私は心ばかりの御礼をしたい。何でも私のはおなペットとして人気があるらしい。そこで、そのおかずとして私のまんこを提供させていただく!私のお漏らしマンコで存分にしてくれ!」
そういうと、ヒナトは手で自分のマンコを広げた。
(ああ!私は何をしてるんだ?こんなはしたないこと!やめるんだ!でもでも!しないと怒られる!殴られる!それに比べたら、恥ずかしいとか惨めなんてまったく気にならない。それどころか心地いい!一体どうしてしまったんだ!?)
「あは!あは!いやいや!たくさんの人の役に立つことを想像して、気持ちよくなってしまったよ。こんなときはチンポが恋しくなる!そうだ!私のおまんこでオナニーする人はぜひ!そのそそり立ったチンポを写真でとって送ってくれ!アドレスは○○_2@○○.○pだ!それをおかずに私もオナニーする!知らないだろうが私は一日1回は必ずオナニーするオナニストでね。お礼に私のオナニー姿を返信しよう!ははは!」
「おいおい。そんなこと指示してないぜ」
確かに前半は雄介が指示した。だが、後半は違う。
「ああ。すまない!ついつい気分が乗ってやってしまったよ。まったくとんでもない変態だ。いけなかったか?みっともなくて、よろこんでもらえると思ったのだが?」
「いや……まあ、悪くはないし。と言うか配信されるの決定なのか?てっきり自分と恭太の無様な姿を晒すのはやめてくれというかとおもってたけど?」
「なに?しないのか?それは困る!これでしばらくオナニーのおかずには困らないと思ったのに!無様な姿?まあ確かに未発達でみっともないが、中身は成熟した自慢の濡れマンコだ!むしろ誇りだよ」
おかしい。ヒナトはこんな性格ではない。やりすぎたか?そばにいる男をチラッと見る。怒ってるのでもなく難しい顔もしていない。むしろ楽しそうにしてる。
「問題は……ないみたいだな。あ!録画が切れた」
携帯動画の録画時間が超えてしまったのだ。その瞬間、又、ヒナトの様子が一変する。
「むしろ引き伸ばして、飾りたいぐら……あああああ!わたしは!なんて!なんてことを!は!おい!もう送ってしまったのか!?やめてくれ!そんなことされたら私と恭太は破滅だ!!」
「え!?あ?」
ヒナトの変貌振りに、雄介は混乱する。そんな雄介に助け舟が来た。
「ああ。大丈夫。君の命令をこなしたから、元に戻っただけさ。『降伏宣言を記録する』って解釈してね。録画が終わったから正気にもどったの。いい具合に更新されている。あらかじめ調整した設定もうまく取り込んでるみたいだしね。良し良し」
「い……いったいなにしてるんですか?あ……いえ!これは好奇心じゃなくて、独り言で……」
さっき、余計なことを聞くのはまずいと釘を刺されたのについ聞いてしまった。まずい。
「……。まあ気になるよね。思った以上にいい結果が出たし、ちょっとは話してもいいかな?ただし、この話は他言無用だよ」
雄介は無言でうなずく。
「私はとある秘密組織の一員。その組織は世界征服を目標としている。一般的には悪の秘密組織ってとこかな?担当は兵器開発など組織の力の強化さ。まあ武器だけじゃなくいろいろ開発してるけどね」
「……」
唐突過ぎて、ついていけない。馬鹿にされてると思ってもいいが、さっきの技術を見て嘘だと完全に思えなかった。
「で今開発してるのが、マゾロイドってやつ」
「マゾロイド?」
聞きなれない単語だ。
「そう。戦闘用アンドロイドとか、決戦用アンドロイドとかいろいろあるけど、今開発してるマゾロイドは性的奴隷アンドロイド。用は慰み者だね。部下は『肉便器』って言ってた」
用は、ダッチワイフみたいなものなのかな?超高級品の。そんな想像を雄介はした。
(それにしても、悪の秘密結社が作るようなものなのか?)
「あ~。そんなもの必要?ってかおしてるね。意外と必要なんだよ。戦闘員のストレス解消とか、スポンサー獲得とか。普通の人間じゃあ耐えられない。だから改造して作るのさ。心も身体も。今はいろいろ試してるところ。ヒナトちゃんたちには、その初期プログラムを処置した。惨めに扱われて喜んだり、自分から楽しんで変態行為するようにね。そうしないと精神が壊れるから」
「ふ!ふざけるな!そんな非人道的なこと!」
さっきまで、自分のしたことに驚愕していたヒナトが怒りの声を上げる
「ん?ああ。更新したプログラムにいろいろ情報を入れてたから、何されたか理解したんだね。今催眠にかかっていていろいろされてるって。まあ、今は元の性格完全に消していないからこういうこともあるか」
「いい加減にしろ!私が何をした!こんなひどいことを!おまけにマゾロイド!?そんなふざけたものにされてたまるか!こんなことしてどうなると思う」
ヒナトの怒りにドクターは涼しい顔して答える。
「地獄に落ちるんじゃないかな?でもそれが何か?なんせ悪の秘密結社だからね。そのくらいのこと覚悟しないとやっていけない。それに君たちを選んだのは特に意味はない。たまたま目に付いて、いい素材だったからさ。いやはや……運が良かった。いや?君たちにとっては運がなかったというべきかな?」
「!!……!!」
(な…なんだ?この男!本気だ!あのゴミみたいないい加減なきもちじゃない。父上や師匠と同じ。しっかりとした意思を持ってる!なのになんてまがまがしい!ほんとに人間か!?)
ヒナトは今度こそ本当に恐怖した。町や学校にいる不良や、ニュースで聞く犯罪者ではない。本当の悪と言うものを始めて目にした。
雄介も同様だった。なんちゃってとは違う。こうやってそばにいて話して、無事なことが奇跡に思えた。そんな二人の恐怖を、恭太の悲鳴がかき消した。
「!!あ!ああ!痛い!あそこが痛い!!!」
「な!恭太!いったいどうした!?」
「ヒナト!痛い!あそこがすっごい痛い!なんで?」
「ああ。そろそろ限界かな?」
「何だ?いったい恭太になにをした?」
「かれにはさらって来るときに、プログラムを入れてるの。マゾロイド用に性欲を増進するのと反乱防止の奴。あと射精抑制ね。これは、ある行為に対してしか勃起、射精できなくなるってやつ。それが限界なんだよ。このまま行けば破裂かな?」
怖いことをさらっと笑いながら、男は言う。
「そ!そんな!そんなことしたら恭太が死んでしまう!」
「ああ。大丈夫だよ。そんなことになっても、たぶんショック死にしか見えないから。不幸な事故。私になんら影響はない。と言うか、うち男が多いから、男のマゾロイドはいらなかったな。反省反省」
男は、恭太が死ぬことはどうでも良いと言った態度で笑いながら話し続ける。
一方、雄介は恐怖と共にあこがれた。これが本物。なんちゃってとは全然違う。自分より全然弱そうなのに、とてつもないことをしている。
「!!頼む!私は大人しくする!言うことも聞く!だから恭太を助けてやってくれ!お金が必要なら、何とか工面する!!マゾロイドでも何でもしてもいい!だから助けてくれ!!」
(いやだ!いやだ!恭太!恭太が死ぬなんていやだ!)
普段尻にしいたり、きつい言い方をしているが、ヒナトは恭太が好きなのだ。それが死ぬなんて耐えられない。
「う~ん。そんなに助けたい?」
「助けたい!決まっている!!」
「それじゃあ、特別に射精、勃起のコードを教えてあげよう。ただ、私はこの結果の報告書作るのに忙しいから、自分でやってね」
「ああ!ありがとう!それでいい!私ができることならなんでもする!!」
(なんだよ……普段は違うと言いながらやっぱり好きなんじゃねえか……)
雄介は、自分を無視して、恭太のために必死になってるヒナトを冷めた目でみていた。
さっきのみっともない姿を見て、ちょっとだけかわいそうと思ったが、そんな気も失せた。
(まあ、この画像があればいいか。これをネタにして、こいつらから金をたかれるし。これからはでかい顔されないし)
ここから先は自分はかかわれない。かかわったらまずいと言う雰囲気を感じちょっとだけ寂しい気分になりながら自分の携帯を眺める。
だが、どうやら、ドクターのお礼はこれで終わりではなかったようだ。一瞬、君を見たあと、ウインクをして、ヒナトに話しかける。
「かれの興奮するコードは一つ。大好きな人のSEXだよ。大好きな人とじゃない。大好きな人が楽しそうにSEXしてる姿を見て興奮するようになる。一応、マゾロイドとして、罵られたり、馬鹿にされたりしても興奮するけどあくまで補助だね」
「え……」
ヒナトはその言葉を聞いて、顔面蒼白になる。
「寝取られっていうのかな?ああ、サービスとして教えておくけど、恭太君の大好きな人は君。ヒナトちゃんだよ。心を解析させておいた結果。よかったね。もしほかの人が好きなら手遅れだったよ。ここまでつれてくるなんて間に合わない」
ドクターは笑いながらヒナトのそばを離れる。ヒナトはそのまま、泣き声をあげるわけでもなく、崩れ落ちる。
「うそ……。そんな……恭太を助けるために恭太以外とSEX……いや……。でもしないと恭太が死ぬ……」
ドクターは、呆然としてる雄介の肩を叩いてベンチに座ってしまった。
「後は、君の好きにするといい。できるだけひどい目にあわせてほしいな。いいデータがほしいから」
「あ……」
雄介は、どう反応していいかわからなかった。目の前に気が抜けてへたりこんでるヒナトと、股間を押さえて悶えてる恭太。
「おいおい。なんて顔をしてるんだい?こういうときは笑うといい。君が散々悔しい思いをしてきた者を、好きにできるんだよ。圧倒的有利な立場で。何を戸惑う?君がしたいことをするといい?それともあんな体を好きにしても興奮しないたちかな?」
雄介は、何も言わなかった。代わりに、ズボンを膨らませる。そして、へたり込んでるヒナトの無様なちょんまげをひっぱった。
「いた!な……なにをする!?」
「おいおい。そんな口の聞き方をしていいのか?あの人は忙しいからお前らのことに手が回らないんだぞ?つまりお前の恭太を助けられるのは今ここで俺だけじゃないのか?口の聞き方考えたほうが利口だと思うぞ」
それを聞いたヒナトは、みっともない泣き顔で絶望的な表情をした。
(しらなかったぜ。かわいいとは思ってたけど、こいつ泣き顔が一番興奮するじゃねえか!!)
そう思うと、雄介はいまだ裸で震えているヒナトに、不気味な笑みを見せた。
< 続く >