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帝都を離れた富士の樹海に佇む洋館から漏れる若い女の悲鳴。哀れ拉致された篠宮探偵の助手、服部紀子はその地下に幽閉され、厳しい拷問にかけられていました。狂人五十面相はその名の示す通り残酷な狂人です。目的のためとあれば、女子供も誘拐し、情け容赦なく拷問にかけ、聞きだしたい秘密を探るのです。今宵は篠宮探偵の可愛い助手が、その生贄となってしまったのです。
レンガ造りの冷たい室内。帝都貴族の姫君に扮した高貴なドレスは引きちぎられ、乙女はシルク地の白いパンティ一貫に剥かれ、手首足首を鋼鉄製の枷に繋ぎ止められ、X字に固定されて、五十面相の配下、『五十面相倶楽部』の面々に鞭打たれておりました。
「さぁ、吐けッ、ホンモノの近衛之宮寧子はどこにいる? どこに逃がしたのだ!?」
五十面相によく似た仮面をつけた二人の男が、大の字に縛られた裸同然の紀子に、交互に鞭を飛ばすのです。
ひゅっ、ビシーッ!!
「ああッ!! い、言うものですかぁ~~ッ!!」
しゅっ、バシーッ!!
「ううッ!! し、死んでも申すものですかぁ~~ッ!!」
黒い鞭は情け容赦なく、蛇の様なしつこさで、紀子の柔肌を襲い続けます。その都度、紀子のチャーミングな貌が苦痛に歪みます。次第に腫れ上がってゆく白い肌。
「ああッ、ああぁッ、せ、責めたければ、いくらでも責めればいいわッ、でも、わたくしはどんな目に遭わされても何も申しませんッ、ああぁぁ~~~ッ!!」
紀子はどこまでも勇敢で気丈です。
(嗚呼、耐えなくてはッ、耐え忍ばなくってはッ。そうですよね、篠宮先生)
実のところ、紀子自身は近衛之宮寧子嬢がどこに身を隠しているか、知りません。篠宮探偵と帝都警察の一部の面々しか知らないトップシークレットなのです。しかし、今は、自分が秘密を握っていると信じ込ませ、五十面相の詮索の魔手が篠宮先生に及ばないように精一杯時間を稼ぐことを決意する紀子です。
「ああ・・・」
鞭の痛みについに観念した様子の紀子は、鎖に繋がれた半裸の肉体を前のめりに倒し、カクンと項を垂れます。その姿はどこか艶めかしく、18歳の少女でありながら成熟したレディの肉体美をいかんなく醸し出します。
「水ッ」
失神しかかった美少女探偵助手に容赦なく冷水が浴びせられ、その豊かな胸の膨らみや、なだらかな女体のラインにも水滴が滑り落ち、その美しさを際立たせます。パンティに張り付く陰毛もどこか卑猥です。その様子を眺めていた五十面相は拷問を続けようとする部下を制止します。
「フフフ、もうよい。この娘はいくら責め苛んでも口を開きそうにない。それよりももっといい方法がある・・・」
稀代の大怪盗は何やら怪しげな戦術を思いついた様子です。
囚われの少女探偵助手が清純な性格を表すような純白のパンティ一丁で、大の字に鎖で縛られているという状況は何ら変わりません。その紀子の顎の下で五十面相の部下は、和紙の上にばらまいた奇妙な粉を蝋燭で炙り始めたのです。
「さあ名探偵の小娘助手。五十面相様に存分に可愛がってもらうがいい」
やがて、紀子は鼻腔を突く、甘い香りに急速に意識を取り戻しました。脳天に突き刺さる様なずんずんという重い衝撃と同時に、大きな乳房の奥で心臓がバクンバクンと高鳴り始めたではないですか。
「あ、ああんッ・・・なんですの、これは・・・?」
チャーミングな美少女フェイス左右に捩って、その煙を吸うまいと抗いますが、五十面相倶楽部の配下達は愉しむように紀子の顏を押さえつけ、その通った鼻筋に紫色の煙を差向けます。
「五十面相の心操術、【貞操の炙り】の始まりだ。大陸から仕入れた媚薬を炙った魔の煙を吸えば、たちまち人格も性格も、そして性感までも変えられてゆく。君もその餌食となるのだよ」
稀代の大怪盗は心から愉しげに仮面の下で嗤い声を漏らします。
「そ、そんなことが、あるものですかぁッ」
紀子は縛られた肉体を捩って叫びますが、そのうら若き肉体の熱りは増すばかりで、留まるところを知りません。
< 続く >