プロローグ 父は知らない。 物心ついた頃にはもういなかったから。 母に尋ねるといつも少し困ったような顔をしていた。 だから私はそれ以上何も聞けなかった。 それでも良かった。 美しい母と私より少し背の高い姉。
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蒼い月の夜に 第一話
第一話 透き通った湖の水面にきらきらと眩しく朝日が反射する。 もう夏だというのにその水は冷たく、気持ちよかった。 黒く短い髪を洗い、ゆったりと水面に浮く。 私たちの復讐の帰り道。 あの屋敷から三日ほど街道に沿っ
もっと読む人形の館
「じゃあ、今日の授業はここまで」 退屈な授業の終わりを告げる鈴が鳴り、担任である初老の教師がそのままホームルームを続ける。 それを適当に聞き流し、僕はぼんやりと斜め前の席の女子を眺めていた。 二ノ宮 縁。それが彼女
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