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新楽地通り商店街。そこは首都圏の都心に程近い、繁華街とオフィス街の隙間。ぽっかりと空いたエアポケットのような場所に残る、昭和の味わいを漂わせた商店街だ。駅裏の、一本奥にあるせいで、町の人口のわりには人通りは多くない。再開発されて駅ビルやショッピングモールが立ち並ぶ駅前の賑わいと比べると、ずいぶんと寂しい。昼間からシャッターの下りた店は、駐車場の収入か何かで賄っているのだろうか、アーケードのおかげで日中も薄暗い、うらぶれた商店街だった。アーケードの柱には、「新楽地通り」という表示と、プラスチックの造花が飾られている。店の並びは玩具店、履物屋、お茶屋、空きテナント、スーツの仕立て、空きテナント、漬物屋、たこ焼き屋、立ち飲み屋、純喫茶、本屋、空きテナント、理髪店、学校の制服を扱う子供服屋、空きテナント、小さな神社、中華料理屋、クラブ、クリーニング店と続いていく。路地裏にはスナックの看板が立ち並び、雀荘、大人の玩具屋やDVD屋と続いて大き目の銭湯がある。その路地を抜けて一本隣の「スミレ通り商店街」は、若者向けの古着屋や小物屋が立ち並び、それなりに賑わっていた。うらぶれた雰囲気が立ち込めているのは、この街で新楽地通りの一帯だけだった。
「結局、場所が悪いよね。場所。土地柄が客層も決めちゃうしさ。そういう客筋と、この店の目指す方向性っていうのが、マッチしないんだよ。」
カウンターでビールを飲み干した後、奥住大樹が吐き出すように言う。椅子を立ってカウンターの中に入ると、そそくさとサーバーからビールを注いだ。遠慮することもない。自分の店だ。
「それは俺みたいに、何代も前からここで店を構えちゃってる奴の言い分でさ。ヒロキさんの場合は自分で選んでここでクラブ始めたんでしょ? それで繁盛しないからって、今になって場所のせいにするのってズルくない?」
カウンターに寄りかかってブーたれているのは川野辺翔平。大樹より4歳年下だが、若者同士、気が合って良く一緒にくだを巻いている。クラブ「ヘイジーハット」は3年前に大樹が開いた、アルコールと食事と大人の音楽を提供するクラブダイニングだが、商店街の昭和な雰囲気とは今一つ合わなかったのか、それとも大樹の商才の無さか、全く流行っていなかった。夜の10時から朝まで開いているはずだが、12時過ぎた段階で、客は近所の翔平と、隅っこで黙々と飲んでいる、小太りのオッサンの2人だけ。店内にDJブースとダンススペースはあるものの、半年前からプロのDJも雇っていない。人件費が無駄になるだけだからだ。
「今時、赤レンガ造りのクラブだもんねぇ、ちょっとコンセプトがわかりづらいよね。大体ここの商店街、飲み屋以外は8時過ぎるとシャッター下ろしちゃうでしょ? ここだけ夜のお店やってても、若者は足が向かないんじゃないかな? ・・・もっと気楽にやれそうな、ネットカフェとか漫画喫茶とかにして、お昼も店開いたら?」
翔平の遠慮ない提案に、大樹も腕組みして頷く。
「そうだよなぁ・・・。もともと生バンドも入れたり、レアなレコード回してたジャズ喫茶だったっていうから、スピーカーとか音響機材そのまま使わせてもらってクラブを始めたものの・・。俺、そこまで音楽にこだわりないしな・・・。いっそ、このへんの仰々しい機械、全部捨てちゃって、もっと違う商売始めるか?」
酒の勢いも手伝ってか、大樹が思い切って転業を口にする。2人で次の商売の話に無責任に盛り上がっていると、さっきから隅で飲んでいた、小太りなオッサンが近づいてきた。
「あ、お会計ですか?」
大樹が顔を上げると、パンチパーマで鼻の下に細いヒゲをチョロリと伸ばしたオッサンは、寂しそうな顔をして口を開いた。
「ねぇ、アンタたち。ここの機材、全部売っちゃうって本気なの? 結構な年代モノも混じってると思うんだけどさぁ」
オカマ口調だった。二重アゴでビールっ腹の、オッサンのオカマ。翔平と大樹が、無意識のうちに体を少し後ろに反らせた。
「い、いえ。その、酒の席の話ですから。すぐに全部売っぱらっちゃうって、本気で言ってるわけじゃ、ないんですよ。ただ、まあご覧の通りの客の入りなんで、このままいくと、手放さざるを得なくなりますよね。」
「ここの商店街、寂れてるわりには、テナント料とか色々高いんですよ。駅も近いし、土地代はそれなりですからね。アーケードの保全費とか、組合費で結構取られるんですよ。それなりに儲けを出していかないと、大樹さんみたいなテナントのお店は辛いですよ。」
オッサンのオカマに文句言われると思ったのか、翔平も助け舟を出す。翔平の家の銭湯は祖母の名義になっているのでテナント料はかかっていないが、懐が寂しいのは似たり寄ったり。大樹の店の経営状況は良く理解していた。
ムフーゥとオカマが、暑苦しそうなため息を漏らす。
「まぁ、不景気が長いから、どこも大変なんだけどねぇ。それにしても、ここのプリアンプ、アンプ、スピーカー、惜しいわぁ。先代の『エヴァンス』から引き継いでるんでしょう? 勿体無いわぁ」
『エヴァンス』というのは今の大樹のクラブが入る前、頑固な老人が経営していたジャズ喫茶の名前だった。このオカマは、その店の常連だったのだろうか? 今はDJブースと、カウンター裏のBGM用のCDラジカセを繋いでいるが、元々はプリメインアンプ、アンプ、そして冷蔵庫程の大きさもある、四つのスピーカーはジャズ喫茶から引き継いだものだった。開店当初は、最新のダンスミュージックを往年のスピーカーから流す、面白い音の出す店とコミュニティ誌やフリーペーパーで特集してもらったものだ。
「アンタたちみたいな若い男の子たちが、この商店街盛り上げてくれると嬉しいと思ってたんだけど。・・・ムフーゥ。結構、苦労してるみたいね。・・・いいわ、アタイが、ちょっとだけ力を貸そうかしら。アタイ、ショーデンっていうの。ショーデンさんって呼んでくれれば良いわよ。アタイの神通力で、ちょっとここのオーディオ機器、細工してあげちゃう。」
二重アゴのオカマが真顔でそう言ってくるので、大樹と翔平は悪い印象を与えないように笑って、そっとやり過ごそうとした。しかし、このオカマは構わずに口をへの字にすると、目を閉じて「フンッ」と一息漏らす。大量の汗が流れ出すとともに、ショーデンさんというオカマの額にあるホクロから、七色の光が照射され始めた。薄暗いクラブの店内が急に真昼のように輝き出す。大樹と翔平は抱き合って悲鳴を上げていた。
。。。
「いらっしゃいませー」
分厚いドアを押し開くと、薄暗い店内から景気のいい声が上がる。店の中はクラブというよりも、レトロな純喫茶のような雰囲気だったが、混んでいるようでもなかったので、カナとナナミは一瞬目線を交わした後で、店に入ることにした。
「あのー、この紙、スミレ通りの服屋さんに置いてあったんですけど、このクーポンって使えるんですか?」
「はいもちろん。今はサービス期間中ですから、女性はフリードリンク800円。クーポンがあれば1時間300円で料理もご自由にオーダー頂けますよ。」
背の高い、Tシャツの男性がニッコリと笑う。鷲尾七海が店内を見回すと、店内にはカウンターに若い男の人とパンチパーマのオジサンがいて、チラチラとこちらを伺っている他、テーブル席に男の人がパラパラ・・・。余り流行っていないから、こんな無謀なまでのサービスキャンペーンをしているのだろう。確かにこのお店の場所からいっても、普段の七海であったら立ち寄ることはなかったと思う。ショッピングに疲れた香奈がチラシに反応して、強引に七海を誘ったせいで二人はここにいる。アンティークな建物と薄暗い店内、そして流れるミッドテンポのR&B。七海は一杯何か飲んだら帰ろうと、香奈に言うつもりだったのだが、ソファーに腰掛けると不思議と落ち着いてきた。「クラブ」と言われると構えてしまうが、そんな浮ついた雰囲気でないのが、七海にも安心感を与えてくれる。メニューを見て香奈はカシスオレンジを、七海はアイスレモンテイーを頼んだ。
「ねぇ、このお店。最初に入ったときの印象よりも、・・なんか悪くないよね。」
対面に座った香奈が、七海を見ていう。
「う・・ん。最初は、すぐ帰ろうよってカナちんに言うつもりだったけど、・・・意外と・・好きかも・・・。なんでか、わからないんだけどね。」
七海と香奈は、見つめ合って苦笑する。ジュークボックス。DJブース。場違いな感じのする小型ミラーボール。さらに不似合いなアンティークっぽいスピーカー。若い彼女たちのセンスにピタッとくる要素が何もないはずなのに、香奈と七海はなぜかこの店がしっくり来ている。逆に気に入る要素を一生懸命探して、店内を見回しているのだが、今のところ納得の行く答えは見つからなかった。気にしないことにして、香奈と七海は大学の話や、サークルのカッコいい先輩の話、ドラマの話などをして盛り上がった。レモンティーを飲み終えると、七海はカルピスソーダを注文した。
。。。
「おい、意外と盛り上がってるみたいだよ。話が尽きないみたい。」
「うん。それはここから見ててもわかるよ。それにしてもやっぱり若い女の子って凄いね、あそこだけ輝いてるみたいだよ。・・・ショーデンさん。凄いよ、本当にうまくいってるみたい。」
「だからぁ、何度も言ったでしょ? アタイの神通力は本物だって。アンタたち、言っとくけど、あんまりアタイを疑うと、地獄行きよ?」
カウンターで秘かに盛り上がっているのは店主の大樹と常連の翔平、そしてショーデンさんという四十代半ばくらいに見えるオカマだった。ショーデンさんいわく、この店のオーディオ機器に特別な力を封じ込めたから、この店内には特殊な効果が現れる。かけようとしているCDの上に、油性ペンで『思い』や『感情』を書き込んでCDをかけると、その気分はBGMを通じて店内のお客さんたちに影響を与えるということだった。半信半疑だった奥住大樹も、額のホクロから光を放つオカマに逆らうのが恐ろしくて、とりあえず言われるままにサービスキャンペーンを始めた。すると「店が好きになって、楽しい気分」と書いたCDをかけるだけで、目に見えてお客さんの居つき方が変わったのだ。かかっている音楽は前と変わっていないのに、効果はてきめんだった。
「あの2人・・・。女子大生かな? ・・・久しぶりにあんなに可愛い子のお客さんが入ったんだから、・・・その、もうちょっと試してみない?」
翔平が、緊張した声で提案する。大樹が迷ってショーデンさんを見ると、小太りのオカマは「はは~ん」という表情で、チョビ髭を弄りながら含み笑いをしていた。
。。。
香奈の話はいつも面白い。大人びていて派手めの顔立ちに似合わず、気風のいい高倉香奈は、鷲尾七海をリードして楽しい笑い話を展開する。今日は特に七海のツボを的確に攻撃してくるようで、七海はテーブルに突っ伏して肩を震わせた。香奈の話題はいつもとそれほど変わらないように感じるのだが、なぜか、香奈が口にすること一つ一つが、面白くてしょうがない。七海は呼吸が苦しくなるほど笑って、ソファーの下で足をバタバタさせた。
「か・・・カナちん・・・、ちょっと飛ばし過ぎだってば・・・。ふぅ・・・、苦しい」
涙を拭きながら、七海が悶えるのを見て、香奈も嬉しそうだ。美形の顔が少しだけサディスティックに輝いた。
「ナナミが笑いすぎなんだってば。あ、だったら、こないだのキヨトとの話聞く? 私、キヨトとキスまで行ったっていう話は前にしたよね? でもね、その時、あいつ、すっごいキステクを披露するぜっていう顔で寄って来るの。もう自信過剰なの。そのくせ、ただ舌とかはげしく入れてくるだけで、なんか、全然自信持ってるほどうまくないの。」
「ちょ、ちょっとぉ、カナちん、さすがにきわどいってば。もう。酔いすぎじゃないの?」
いきなり話が過激になったので、七海は真っ赤な顔で悲鳴を上げる。よく男の人にモテて、恋愛上手な香奈と比べて、七海はそういった面には奥手だった。中学高校と、10回以上は男子に告白された七海だったが、全部お断りしてきた。臆病だったし、家も厳しかった。秘かに『鷲尾七海ファンクラブ』というものが出来ている、と高校時代に友達に聞かされたが、何だか怖くて、知らない振りをして通した。いつもは香奈もそんな七海の性格をよく理解していて、男女の生々しい話はそれとなく避けて話してくれるのだが、今日はなぜか容赦ない。リミッターが外れたみたいに暴走した。
「ナナミだって、酔ってるんじゃないの? さっきから、髪の毛ばっかり触って、仕種がなんか色っぽいよ。オジサン、興奮しちゃうぞ。」
香奈がふざけて言うのを否定しようと思って、七海はふと、自分の手の動きに気がつく。肩にかかる綺麗なストレートの黒髪に、指を入れて髪を弄ぶ。そんな仕種のまさに最中だったのだ。
「あ・・・、私も、ちょっと酔ったかな・・・? ・・ん? ・・・私、何にもお酒頼んでないよね? なんでだろ?」
アイスレモンティー、カルピス、コーラ。これまで七海が注文した飲み物の、どれにもアルコールなんて入っていないはずだった。それなのに、七海は今、確かに頭がボンヤリとして、芯のあたりがジワジワと痺れるように感じる。足腰に踏ん張りがききにくいような、むず痒いような感覚が走っていて、体全体が熱を持っている。足元を意識すると、さらに暑くなったような気がして、スカートの裾をパタパタとさせた。
「ん・・・ふぅ・・・あつい・・・な」
「あら、七海お嬢も、セクシーモードですか?」
香奈がまだふざけている。
「馬鹿なこと・・・言わないの・・」
裾をヒラヒラさせて風を入れていた足元が、ずいぶん緩んでいることに気がついて、ゆっくりと膝を揃える。テーブルの下の出来事なので、誰も気がついていないと思うが・・・、七海は潤んだ目で、数少ない客の様子を伺った。そのまま足を組む。
「で・・、何だったっけ? キヨト君の話でしょ? それからどうしたの?」
潤んだ目をボンヤリと半開きにして、七海が催促する。テーブルに両肘をついて、組んだ手の甲の上に細いアゴを乗せて、香奈の話に聞き入った。いつもより下世話な恋ばなにもグイグイ食いついてくる七海を少し意外に思いながらも、香奈の話もエスカレートする。2人で顔を寄せ合って、いつの間にか呼吸を荒くしながら、アダルトな話にのめりこむ。
「お飲み物の追加はよろしいですか?」
「ぎゃっ、・・・は、はい。あの、コロナビールもう一杯ください。」
「わたしは・・・コーラで。」
背の高い、店長らしい男が声をかけると、その存在に気がつかないほどアダルトトークに没頭していた香奈と、聞き入っていた七海がグラスを倒しそうになるほど驚いて座りなおす。二人ともどぎついトークを異性の店員に聞かれた恥ずかしさで、店員と目を合わせられない。特に内気な七海は、両手を口に当てたまま、真っ赤になって俯いていた。
「今、さっきのお兄さんに、聞かれてたかな?」
「もう・・・、カナちん・・・。恥ずかしいよ・・・。ふうっ・・暑い」
七海が、来ていた水色のカーディガンを脱いで、白いキャミソール1枚になった。ほっそりとした肩の白い肌が外気に晒される。少し気持ちが楽になったようで、七海が微笑んだ。
「暑い? ・・・そっか。・・・ま、私も一枚、脱ごっかな?」
香奈が、ベストから腕を抜き取り、シャツのボタンを3つ、4つと外していく。胸元から、ネイビーブルーのブラの生地が見えた。
「えー、カナちん、1枚じゃないじゃん。そのシャツ脱いだら、下着になっちゃうよ。」
心なしか、七海の口調が子供っぽく、あどけなく、そしてどこかねだるような甘い口調になっていた。目も潤んでいて、本当に酔っ払っているように見える。
「別に私は平気だよ。お店も暗いし、ほとんど人いないし・・・。七海みたいにウブじゃないもん」
「そんなこと言って・・・。私だって・・・、いつまでも子供じゃないよ?」
ボンヤリとした目で、寝言のように呟いた七海が、立ち上がってスカートのチャックに手をかける。チーっという音がすると、ファサッとスカートが床に落ちる。白いキャミの裾が下着の上にかかるが、ピンクのフェミニンなショーツの下の部分は隠しきれずに晒されていた。
「あら、七海、今夜は大胆ねー。じゃ、私も。」
香奈が負けじとシャツを完全に脱いで、上半身は紺のブラと銀色のネックレスだけの下着姿になる。迫力のある胸と、良く鍛えられた腹筋がメリハリのあるプロポーションを際立たせていた。そのままブラックジーンズのチャックにも手をかける。
「えぇーっ。カナちん、まだ脱いじゃうのー。・・・もう・・・じゃ、私だって・・・」
両手を前で交差させてキャミソールの裾を掴んだ七海が、口を少し不満げにすぼめながらも腕をあげて、ショーツを、おヘソを、白いお腹を見せながらキャミをめくっていく。
(カナちんだけが恥ずかしい格好になってたら、可哀想だから・・・)
頭の芯から痺れるような酩酊感の中で、ボンヤリと友達想いの性格を出す七海。それでも、そんな考えで覆い隠しきれないほど、心臓がバクバクと鼓動していた。七海と香奈は、下着以外は体に何も身につけていない姿となって、テーブルを挟んで向かい合っていた。他のお客の視線など、もう気にならない。解放感にうっとりとしながら、両手を自分の体のあちこちにそわせると、若い肌の感覚を楽しんだ。心地良いBGMは、しっとりとしたムードのAORに変わっている。無意識のうちにそのリズムに乗って体を揺らしつつ、仲良しの美女と美少女が向かい合って自分の体をサワサワとさすっていた。ソファーに寝転んで足を突き上げて、すねに両手を沿わせていく。2人だけの秘密の遊びに興じるように、香奈と七海は嬌声を上げた。
。。。
「おい、今、どうよ? さっきのエロ話、もっとエスカレートしてる感じかな?」
厨房から顔を出した大樹が、カウンターの翔平に問いかけるが、カウンターから体を捻って振り返っている翔平は、その姿勢のまま、大樹の方を向こうともしない。
「大樹さんは料理に集中。今、エロ話どころじゃないよ。」
「おわっ」
翔平の言葉を全て待つまでもなく、大樹はソファー席の若い女性客2人組を見て度胆を抜かれた。2人とも下着姿になって、音楽に合わせてユラユラ揺れつつ、自分の体をいやらしく撫でている。どちらも遠目にも人目を引く美人だったので、下着姿を拝めただけでも大樹と翔平は思わず両手を合わせた。
「ちょっと、感謝はこっちにしなさいよ。失礼ね。」
オカマのオッサンが小さくムクれて不平を漏らす。オッサンだけ、カウンターに向かってチビチビとビールを飲んでいた。
「大樹、料理の途中じゃないの?」
「いや・・・、厨房の勝手口で受け取ったデリバリーを、温めなおすだけだから、適当でいいんだ。」
「しけてるわね。だから流行んないのよ。」
ショーデンさんの文句も半分しか聞かず、大樹は食い入るようにピチピチの女子大生2人のセクシーショーをガン見していた。大樹も翔平も、恋人に恵まれない、女日照りの毎日を送っていたので、今にも目の前の人参に飛びつきそうな暴れ馬状態だった。カナちん、と呼ばれていた綺麗なお姉さん風の子は、ハーフみたいな顔立ちとモデルみたいなプロポーションでリズムに乗って全身を揺らしている。スラリと長い手足を使って音楽のバイブレーションを楽しみながら、ウェーブのかかった髪を振って緩く踊っている。ナナミと呼ばれていた美少女は、対照的に清楚なお嬢様風。少しぎこちなく、恥ずかしそうに両手を突き上げて、伸びをするみたいにした後で、腰をゆっくりとクネらせはじめる。白い肌をピンクに染めて、慣れない様子のスローダンスを見せる美少女は、アイドル顔負けの可愛いルックスだった。
「大樹さん。このCDも、ばっちり効いてるじゃん。やっぱりこの、ショーデンさんの神通力って・・・本物?」
「う・・うん。店で楽しく談笑くらいだった、全然ありえない話じゃないけど、あんな可愛い子たちの、この乱れっぷりは・・・さすがになぁ。」
『この店が好きになって、楽しく過ごす』と書かれたCDは機材の横に置かれていて、今CDラジカセの中に入っているのは『女性は楽しくエッチな気持ちになる。それを隠さない』と書かれたCD。さっきのBGMの時よりもエッチなトークに花を咲かせてもらって、盗み聞きでも出来れば御の字と思っていた大樹の予想をはるかに裏切って、このBGMは女の子たちをノセてしまっていた。ソファー席から少しはみ出てクルクル回りながら踊るカナ。少しだけ遠慮がちにソファーに乗って、体をクネクネさせているナナミ。どちらも楽しそうに下着姿でダンスをしている。だんだん、「クラブ」っぽくなってきた感はある。パラパラといる男性客も、目の保養を楽しんでいるようだ。
「大樹さん。」
「お、おう。」
皆まで言わずとも、翔平の求めていることは大樹にも痛いほどわかる。というか、ジーンズを押し上げる股間が実際に痛かった。カウンター裏で適当なCDを選ぶと、油性ペンを取って書き込む。
『女性たちはさらにノリノリになって、ダンスフロアで全裸で踊る。』
そう書き込んだCDをチェンジャーに入れて再生させると、アップテンポなハウスミュージックが店内に流れ始める。
。。
「わっ。・・・あはははっ・・・何これ? ・・・楽しいっ!」
音楽が切り替わると、高倉香奈が、さっきよりも過激に腰をグラインドさせながらテーブルから離れる。踊りながら、テーブルの置かれていない、壁際のオープンスペースに向かって進んでいく。
「ちょっ、ちょっと香奈ちゃん。待ってよ~・・・」
七海が、置いていかれないように、香奈を追いかける。それでもお尻を突き出して右に左にとプリプリ振りながらの移動なので、なかなか追いつけない。思い余った鷲尾七海は両手を背中に回して、ブラのホックに手をかける。パチンとホックを外して、思い切ってブラジャーを放り投げてしまうと、ずいぶん身軽になったような気がした。こぼれでた丸いオッパイが上下左右に跳ねるが、それもBGMのリズムと合うと、七海の気持ちを煽り立てる。楽しくて嬉しくて、もうまわりに見られようと、どうでもよくなっていた。
これまで電気も切られて誰も見向きしていなかったダンスフロアが、一気に華やぐ。小さなミラーボールも光が当たって回転を始めた。数少ないお客さんが手拍子を送ったりする。迫力のDカップを揺すって、香奈が客に投げキッスを返した。七海はまだ少し恥ずかしそうにモジモジしながらショーツを降ろしていたが、ハウスミュージックの音量がさらに一段と大きくなると、弾けるような笑顔で足首まで落ちたショーツを蹴り上げた。もう体が止まらない。激しくシェイクしてセクシーによじれて、髪を振り回して汗を振り乱して踊る。2人が嬌声を上げながら素っ裸で踊りまくっている間に、店内にはお客さんが増えてきたような気がする。最初は遠慮がちに。次第にダンスフロアの間近で、手拍子や指笛を吹いて、ルックス抜群の女子大生2人のヌードダンスを楽しんだ。そのグルーブ感が、また香奈と七海の踊りを過激にさせる。男性経験の無い七海が、足を大きく開いて、恥骨を突き出すように突き上げるように、激しく腰をグラインドさせる。香奈が、ボリュームある胸をブルンブルン揺すりながら、両手を大きく突き上げて手拍子を取る。ダンスの統一感よりもノリ重視で、男たちに愛嬌を振りまく2人のセクシーダンサー。その狂騒は、BGMが突然停止されると、一瞬にして掻き消された。
「・・・えっ・・なに?」
「や・・・いやぁっ!」
突然、後頭部から背中にかけて冷水をぶっ掛けられたかのように、香奈と七海は妖しい夢から、現実に引きずり戻される。最初何が起きたのかもよくわからず、踊りを止めて呆然と立ち尽くすと、お互いに目を合わせて、やがて自分の体を見下ろす。そして恥ずかしさに悲鳴を上げた。自分の体を抱きこむようにうずくまってしまう七海。香奈は壁の柱の裏に身を隠そうと逃げ込んだ。
(どうしてこんな・・・。ドリンクだけ飲んで帰るつもりだったのに、何があったの?)
七海がうずくまったまま、羞恥と恐怖で目に涙をためる。
「やだー・・、ちょっと、なんで?」
柱の影でしゃがみこんだ香奈も、ギャラリーのような男たちの様子を伺って、逃げるタイミングを探している。
。。
「ちょっと、大樹さん。いきなり停止はまずかったみたいだよ。彼女たち、正気に戻っちゃってる。」
「えぇっ・・・そうは言っても、次のCDに・・・。」
「とりあえず、今の、また再生!」
「お、おう。」
バタバタしているのはカウンター側も同じだった。次のCDに切り替えようと、強引にダンスミュージックを切った大樹に、翔平がダメ出しする。あせってリモコンを手に取ろうとして落としてしまった大樹は、ラジカセ本体の再生ボタンを押した。CDが回転する小さく高い機械音が流れて、再び、ハウスミュージックが大音量で店内に響く。
。。
「・・・イェーーーー!」
目に涙を浮かべたままの七海が満面の笑みを浮かべて、弾かれたように立ち上がると、両手でバンザイのポーズを取り、腰を左右に降り始める。まるで「サザエさん」のオープニングで猫のタマがするように、両手を上げたままで可愛いらしく腰を振る。柔らかいお尻の肉がプルプルと左右になびいた。ザワザワしはじめていたギャラリーたちが、再び喜んで手拍子をする。柱の影からは、リズムに合わせて足が突き出されたり、お尻が突き上げられたりする。すぐに香奈も飛び出してきて、七海の前に出る。香奈と七海。大学の親友同士で、裸のまま、ダンスホールの目立つ場所を取り合って踊り狂う。店内は再び狂乱の盛り上がりとなった。
ギャラリーの中から、勇気ある男が1人、自分もTシャツを脱いでフロアに踊り出る。七海は踊りながらも顔を強張らせるが、香奈が体を密着させて過激にくねる。やがて七海も負けじと男の背中にすがりついた。全裸の女子大生2人にサンドイッチされたかたちになった男は、調子に乗ってダブルピースで友人に写真を撮らせた。
。。
「うわぁ・・・、いつもと客層変わってきてるからか、馬鹿学生も来てるみたい。写真とか、まずいんじゃない、大樹さん。」
「お、おう。ちょっと盛り上がりすぎと思ったから、さっきCD換えようとしたんだよ。ちょっと待ってな。・・・またブツ切りになっちゃうけど、・・・もうしょうがない。」
「写真くらい、どうってことないわよ。後から皆に削除させればいいんでしょ?」
オカマは堂々としている。大樹も翔平も、ショーデンさんの頼りになる、ドッシリとした様子に、危うく惚れかけた。
「うし、ちょっとこの曲でクールダウンな。」
。。
独特のグルーブ感のあったハウスが、一瞬途切れる。携帯のフラッシュを浴びながら、笑顔で男と一緒にポーズを取っていた裸の美女たちが、また瞬間的に正気を取り戻して取り乱す。それでもすぐにスローテンポなウェストコースト・ジャズが流れ始めると、力が抜けたようにフラフラと、元いた席に戻っていく。今度はフロアを囲んでいた男性客たちも、上半身裸で調子に乗っていた若い男も、魂が抜けたような表情で、フラフラと席に戻っていった。
『席に戻って、まったりと楽しむ。女性は席でも静かに発情して男を待つ。誘われたり、求められたりしたら、断らずに全て受け入れる。』
そうペンで書き込みがされているCDが、高速回転している。
大樹と翔平が見つめ合って頷きあう。横のショーデンさんに視線をずらすと、オカマはかすかにアゴをしゃくれさせて、親指を突き上げて頷いた。
物分りのいいオカマのオッサンをカウンターに残して、大樹と翔平が、美女、美少女の寝そべるソファー席に駆け込む。そこでは申し訳程度に体に服を乗っけただけの、裸の美女たちがソファーでモジモジと内膝を擦り合わせていた。聡明そうな七海も、熱にうかされたように焦点の合わない目を宙に彷徨わせている。香奈は既に、手が股間のあたりに伸びていた。
「さあ、おいで」
「オジサンたちとイイことしませんか?」
両手を突き出して精一杯低めのイイ声をだした大樹と翔平。普段だったら香奈が歯牙にもかけないランクの男たちだったが、断るのもなんだか面倒臭い気がして、仕方なく体を起こすと、そのまま倒れこむように大樹の胸の中に飛び込んだ。七海はお姫様がナイトの手を取るように、差し出された翔平の手を取ると、小さくお辞儀して、この見知らぬ青年に寄りかかる。2人ともどうしようもなく体が疼いてしまっていたし、男の人の声で何か申し出られると断ることが出来ないような気がしていた。七海の頭の中ではかすかに、自分の理性が悲鳴を上げているのを感じ取ることが出来るのだが、ジンジンと腫れるように火照る体が、男の力強い筋肉の動きを、肌で感じたがっていた。
「こっちにいこうか」
翔平に手を取られると、七海は剥がれ落ちる服を取ることも出来ずに、大人しく着いていく。空席になっている隣のソファーに座らされると、唇を奪われた。ファーストキスを、余り格好いいとも言えない、知らない男の人に捧げてしまっていることを少し後悔したが、舌が入ってきた以上は、受け入れるしかなかった。さんざん踊って、疲れ果てていたからかもしれない。抵抗する気も起こらなかったのだ。
翔平は夢中になって、美少女の唇を貪った。白くて華奢な体つきとクリッとした目。長い睫毛。黒髪からはフローラルのシャンプーの匂いと、若い女子の汗の匂いとが混ざり合って香り立つ。細い腕に比べてしっかりボリュームのある胸の丸い曲線は優美で、触れると確かな感触を返しながら柔らかく指を包み込んだ。小ぶりな乳輪とピンクの乳首。若い美少女の清らかな体。両手で胸をムニムニと揉みしだくと、反射的に七海の手が、それを遮ろうと前に出た。
「駄目?」
目を見て聞くと、七海の目が泳ぐ。困った顔をしたまま、手をゆっくりと下ろしていく。
「だ・・・駄目じゃ・・ない・・です。」
「胸、揉んでいいんだね?」
「は・・・はい。・・・いいです。」
少し納得のいかないような顔をして、口をすぼめるが、自分を説き伏せるように何度か頷く。強く揉みしだいたり、口をつけて吸ったりすると、刺激が強すぎるのか、七海は声を漏らして手が前に出る。翔平の動きを遮ることはしないが、両手が、無防備な胸を守りたがっているみたいだった。
「ゆっくりと足を開いてみて。カエルさんの足みたいに、大開きにしてよ。」
「や・・・やぁぁ・・・。恥ずかしい。」
両手で口を覆って、足を『M』の字に開脚する七海。翔平が頭を下ろしていって間近で凝視すると、恥ずかしさと居たたまれなさに、体をモゾモゾと動かした。
「あれ? 嫌だったら、止めるよ?」
囁くと、うっすらと非難の色を目に浮かべながら、七海が答える。
「や・・・止めなくてもいいです。・・・嫌じゃ・・・すごく嫌では・・・ないです。」
「じゃあ、手が邪魔で、君の可愛い顔が見えないから、両手を組んで、頭の上に乗せておいてくれる? 股はおっぴろげたままで、ちょっと腰を浮かして、僕の顔に押しつける感じに腰を突き出してよ。」
「・・・うぅ・・・、こう・・・ですか? ・・・」
美人女子大生の、黒々とした陰毛から、沸き立つように女の匂いが翔平の鼻をくすぐる。鼻先をさらにヘアの中に押しつけると、ムァッと甘酸っぱい匂いが出てきた。舌を使うと敏感に両腿が震える。
「濡れてるね。」
顔を上げて、七海に報告すると、七海は情けない表情で顔を反らす。
「正直に教えてよ。濡れてない?」
「は・・・はい。濡れてます。・・・何だか、さっきから変なんです。」
「変って・・・どんな感じ? ちゃんと説明してくれる?」
翔平が少し意地悪く質問すると、七海は丁寧に、包み隠さず答えてくれる。
「ちょっと、その、排卵日前に体がむくんだり、体温が上がるみたいな、感じで、あと、なんだか満たされないような、切ない感じがズキズキするんです。・・・はぁ、私ってば、何でこんなことまで・・・。」
「発情して、男とヤリたくなってるってことじゃない?」
「そんな・・・、た・・・多分、そう・・です。やだ・・恥ずかしい・・。・」
絶対に伏しておきたい胸のうち、体の異常を、問われるがままに全て正直に答えてしまう。七海が抵抗しようとするたびに、頭の中に響くお店のBGMが、強くなるような気がした。一切の抵抗する意志を、音の魔力が麻痺させてしまう。まだ男性の経験がない七海なのに、どうしようもなく興奮して、男の要求を何でも受け入れてしまう自分を見ていた。
「だったら話が早いね。僕も七海ちゃんみたいな可愛い子ちゃんとヤリたくてしょうがないよ。さっさと、セックスしよっか。」
「えっ、セッ・・・そんな・・・、私たち・・たった今・・・その、はい・・・。いいですけど・・・、でも・・・」
今までの様子を全部見てきている翔平は、あくまで強気に攻めた。脳裏には親指を立ててアゴをしゃくれさせている、オカマの顔が浮かんでいる。
「駄目かな? ・・・セックス。」
ちょっとだけ泣きそうな顔をしつつも、翔平の目を見つめて、意を決して頷く七海。
「い・・い・・です。します。」
真正面から単刀直入に申し込まれると、断ることが出来なかった。落ち着く店内、洒落たインテリア、素敵な音楽。全てが完璧に整ったこの空間を、七海の拒絶が台無しにしてしまうようで申し訳ない気がする。ここで口に出された申し出は、全て七海が受け入れるしかないと思った。初めての大事な言葉。両手を頭で組んで、M字開脚の格好で言うことになるとは思いもしなかったが。
緊張気味に抱きつく翔平。頭の位置を下げてまた七海の股間に顔を近づけると、敏感な部分を口で愛撫する。しょっぱい液の中、舌でクリトリスの位置を探り当てて、吸い上げると、七海が弱々しく声をあげる。内腿が翔平の頭を挟み込むように持ち上がった。少し酸味のある膣の付近も丁寧に舌を入れると、弱い抵抗を見せた後で割れ目が舌を招き入れるように開く。熱い液体が翔平の口周りから両頬までべっとりとまとわりつく。一度頭を離して、ズボンとトランクスを同時に片手で降ろした翔平が、ソファーに膝立ちになって七海に近づいた。
「いくよ、七海ちゃん。」
「あっ・・あの、お願い。初めてだから・・・優しく・・・してください。」
紅潮した顔でお願いする七海が、逆に翔平の悪戯心をそそってしまう。
「えー。乱暴にするのは駄目?」
「ん・・・駄目じゃ・・・ないけど・・・。」
七海が全て受け入れてくれることを知っていて、翔平は逐一、質問責めにする。結局七海は、初結合のシーンを携帯のカメラで撮影させることまで了承させられてしまった。
翔平が固くいきりたったモノを手を沿わして方向を探る。思った場所よりも少しだけ下側についている七海の大事な場所を、亀頭の先でゆっくりとこじ開けていく。途中で繊維質のような抵抗を感じるが、腰を落としてグイっと押し入ると、七海が苦しそうに自分の指を噛んだ。裂けるように抵抗が無くなって、液体が内部の滑りを良くする。目をきつく閉じていた七海の表情からゆっくりと力が抜ける。翔平のモノが新鮮な内壁に包み込まれる。そのプツプツとした感触を楽しみながら、ピストン運動を激しくしていく。七海の呼吸が激しくなる。翔平の背中にしがみついて来た。さらにピストンを激しくすると、背中に爪を立てられる。構わずに荒っぽく突き立てると、七海の喘ぎ声が裏返る。
「ほら、もうすぐイクよ。中に出しちゃうよ。」
「な・・・なんでも・・あんっ・・・いいですぅっ・・・・」
どんな提案も受け入れてくれる、素直で前向きな美少女の体を、思う存分味わった翔平は、お言葉に甘えて遠慮なく、穢れの無い七海の内部に、溜まった精液をぶっ放した。色々感極まって涙をこぼしている七海に、涙を拭いて、撮影に協力してくれるようにお願いしてみる。これもしぶしぶ了解してくれた七海に、ソファーに座ってM字開脚のまま、笑顔でWピースをしてもらった。股間からは血と精液と愛液の混ざった、粘液を垂らしながら、少し困ったような笑顔で、七海はポーズを取る。普段だったら、死んでも嫌だと思うようなお願いだったが、いい音楽もかかっている、雰囲気のいいお店だったので、ムードを壊すわけにはいかなかった。
「うわー、画像で見ると、あらためて七海ちゃん可愛いね。アイドルにも中々いないよ。オッパイも綺麗だし、プロポーションもアソコの締め付けも最高。本当にエッチ出来てよかった。ありがとうね。」
「は・・・はぁ・・・。」
大満足で御礼をいう翔平に、七海は何かしっくりいかない思いを抱えながらも、軽く会釈をした。いざ、ことが終ると、自分が裸でいるのが恥ずかしくなって、両手で胸と股間を隠しながら、親友の香奈を探した。香奈は、少し離れたソファー席で、背もたれと背もたれに両足を大きく開いて置く形で、バックから店長に犯されていた。獣みたいに遠慮のかけらもない喘ぎ声を上げながら、後ろから激しく突きたてられている。それなのに、そのソファーでカクテルを飲んでいる男性客たちは、意外とまったりと談笑しているのが、シュールな光景だった。
。。。
高倉香奈と鷲尾七海がクラブ「ヘイジーハット」を出たのは12時過ぎ。終電にギリギリ間に合う時間だった。ほんの一杯、ショッピング後の休憩のために入った店だったはずなのだが、気がつくとずいぶん熱狂的に遊んでしまった。ふだん人前で踊ったりしない七海までも、香奈に誘われるままに少しだけフロアで踊ったことをおぼえている。あとはお酒と少し固くなったチキンリブを食べて談笑した。何の話をして2時間も過ごしたのかは、はっきりおぼえていないのだが、趣味のいい音楽がかかる、楽しいお店だったことだけはおぼえていた。
三日後の金曜日、香奈は七海を引っ張って、もう一度そのクラブへ行ってみた。前回よりも客が増えている。なにより女性比率が上がっていた。屈託無く談笑する香奈。それに対して七海は少しだけ警戒していた。人前で踊ったりするほどはしゃいだことはこれまでほとんどなかった七海にとっては、このクラブは少しだけ怪しい場所になっていたのだ。何よりカウンターで小太りのオジサンとビールを飲んでいる若者とすれ違う時、少し七海の心が疼いた。七海は、今夜もこのお店で絶対にお酒を飲まない、楽しくなっても無防備にはしゃがない、と心に決めた。
15分後、七海は手拍子の中、カウンターに上がって踊り狂っている自分に気がついた。来た時の、大人しめに品良くコーディネートされた服がない。ショーツ1枚とピチピチの白いTシャツ1枚のはしたない姿で、胸を揺すりながら大胆に踊っていた。乳首が立っているのがはっきり見えるほどの、生地の薄いTシャツは、汗で素肌が透けている。そのTシャツに、カウンター下から男たちがプラスチック製の水鉄砲で水をかけてくる。水がかかると、どんどん服が透けてしまうのだが、七海はそれを遮ることも出来なかった。踊りに没頭しているからだ。テンポの速いダンスミュージックのビート音にのって、手足が操られるように動き、腰を振り、胸を突き出してユサユサ振る。男の視線を感じると、股間がキュンキュンと感じた。何も考えられない。今の七海には自分の体を見せびらかしながら、カウンターから落ちないように踊るということしか、頭に浮かばなかった。カウンター・・・。横を見ると、真面目そうな容貌の眼鏡をかけたOLさんが、同じようにピチピチのTシャツとベージュのショーツ1枚の姿で嬉しそうに踊っていた。香奈を探すと、カウンター裏で店長さんにバックで犯されながら、頭の上で手拍子していた。
あまり勢いのない水鉄砲の水が、チョロチョロと七海の体に当てられる。くすぐったいような感覚が面白くて、七海は少し体の動きを抑えて、男たちの的を狙いやすくしてあげる。水はわかりやすく、七海の2つのオッパイと股間に集中する。Tシャツはべっとりと肌に貼りついて乳輪の色がはっきりわかるほど透け、ストライプのショーツも股間の陰毛どころか、割れ目までくっきり浮かび上がらせている。七海は少し困った笑顔のまま、セクシーポーズやヒーローのようなポーズをとって止まる。そのたびに、動いた乳首や股間の位置に水鉄砲が追いかけてきた。馬鹿馬鹿しいのだが、面白くて仕方が無い。かかっていた曲が終わりかけると、カウンターの若者が裏のラジカセの操作に走る。クリーム色の七海のブラジャーを頭にくくりつけている男。翔平だ。何か大事なことを思い出しかけて、動きを止めた七海の耳に、さらに激しいダンスミュージックが降り注ぐ。ラテンとヒップホップが入り混じった、陽気なナンバーだった。
(あ・・・この感じっ・・・。が・・・我慢できないっ・・)
「フォーーーーーッ!」
バネに弾かれるように、飛び上がって一声叫ぶと、七海が濡れそぼったTシャツの袖を掴んでペロンとめくり上げる。丸いオッパイがブルンと零れ出て、男たちの絶叫を呼んだ。両肩を前後に揺すってオッパイを惜しげもなく震わせると、Tシャツから頭を抜いて、男たちの中に放り投げる。横を見ると、真面目そうなお姉さんは襟元からTシャツを真っ二つに引き裂いていた。七海とお姉さんは先を競い合うようにショーツも一気に足首まで降ろすと、両足を抜いて、これも放り投げる。全裸になってさらにいい気持ちになった2人は、カウンターの上で跳ね回って踊り狂って、最後は男たちの熱狂の渦の中に、スーパーマンのような体勢でダイブした。カウンター裏で、バックで犯されながらも全裸になっていた香奈も、同時にダイブをしたが、誰もいない床へのダイブだったため、顔を打って鼻血を出してしまった。
男たちに無遠慮に体を触られたり、揉みしだかれたりしながら、七海と美人OLのお姉さんの体が、再びカウンターまで運び戻される。ギャラリーを見回すと、半分くらいは若い女性だった。みんな、半裸か全裸の状態で男と抱き合いながら、あるいは四方から触られながら、嬉しそうに踊っている。狂乱の最中で、七海は肩を叩かれた。
「七海ちゃん。楽しんでる?」
見覚えのある男の人。三日前は七海の処女を奪って、ついさっきは七海と野球拳をして、ブラジャーを「戦利品」として持っていってしまった、冴えない男の人だ。思い出した。ついさっき七海は、テーブルの上に立ってこの男と野球拳で盛り上がったが、8回連続でパーを出して全敗。すっぽんぽんになってしまったのだ。普段の七海だったらありえない行動なのに、香奈ともども、笑いころげて、脱衣ゲームにのめりこんだ。「風邪ひかないように」と店長の好意で貸してもらったTシャツも、さっきの『濡れT祭り』でずぶ濡れにして無くしてしまった。七海は無意識に自分の裸を男の目から隠そうとするが、男に呼び止められた直後に、BGMが切り替わったことに気がつく。ミッドテンポのフレンチポップス。男と目を合わせているうちに、胸がドキドキと高鳴り始めた。
「ちょっと2人っきりにならない?」
「はっ・・はいっ・・・なりますっ」
思わず右手をピンと挙手して、七海は翔平の言葉に従う。2人っきりになる・・・。七海には翔平の口にすることが最高のアイディアに思える。どうして自分で思いつけなかったんだろうか? 今、それをする以外に、他の選択肢なんかあり得ないというほど、翔平の言葉は名案に聞こえた。
10分後、七海はやっとの思いで翔平の一物を肛門に受け入れる。両手をカウンターについて、カウンター裏で痛みに耐えていた。全てが初めての経験で、本当は飛び上がるほど痛いのだが、アナルファックという輝かしいグッドアイディアを、痛みや恥ずかしさなんていう七海のちっぽけな私情でぶち壊してしまうわけにはいかなかった。懸命に笑顔を取り繕って、翔平のモノをお尻で咥え込む。彼の言葉を心から信じ込むと、何だかお尻の痛みも、喜びと感激に変わってくるように感じられた。今、自分は、お尻で男の人を受け入れている。そのことが誇らしくて、世界中に自慢したい気分だった。そんな七海と翔平がアナルファックに励む隣で、同じように香奈もお尻を攻められている。大樹と翔平の、後方開発競争が繰り広げられていた。
それから10分後、七海と香奈は競い合って翔平と大樹のモノをしゃぶる。アナルでのエクスタシー到達では七海に先を越された香奈が、フェラチオ競争では挽回しようと、大樹のモノを汚れも厭わず舐めまくる。七海も必死で翔平のモノを口いっぱいに頬張って愛撫するが、最近まで男を知らなかった七海が経験で遅れをとる。フェラ競争は香奈に軍配が上がった。夜更けまで狂騒が続く。香奈と七海は足腰立たなくなるまで踊り狂い、ハメられ狂って転げまわった。
。。。
日曜日の昼下がり、香奈と七海は喫茶店で会って、とりとめもないお喋りの時間を過ごす。
「七海、金曜の夜のこと、おぼえてる? 私、飲みすぎたのか、あんまり記憶にないんだよね。」
「あ・・・、私もー。カナちんが暴れてたことだけおぼえてるけど・・・。お店の迷惑にならなかったかなぁ?」
「何よ、私のことばっかり、アンタだって、結構ハジけて、踊ってたじゃん? いつものおしとやかな七海お嬢様からすると、結構な壊れっぷりだったと思うよ。」
「う・・・。おぼえてなくて、正解だったのかな・・・。それにしても、お酒は飲んでないと思うんだけど、あのお店行くと毎回、記憶がほとんど残ってないね。」
「私も、何食べたのか忘れちゃったけど、知らずに激辛料理とか頼んじゃってたのかな? ・・・実は翌日おトイレの時にかなりお尻が痛くてさ。」
「もうっ・・・。品の無いこと、言わないのっ。カナちんったら・・・。」
七海は顔を赤くしながらも、無意識のうちにティーカップを持っていない方の手を自分のお尻にやった。実は翌日お尻が痛んだのは、七海も同じだったのだ。
「だけどあのお店・・・。不思議だよね。毎回記憶なくなるくらいハジけちゃうって、結構危ないところに思えるけど・・・。何故かまた、行きたくなっちゃうもんねぇ。・・・あのお店の悪い噂とか、立てたくないし・・・それどころか・・・。」
「また・・、誰か、誘って行きたくなっちゃうよね。特に知り合いのなかから可愛い娘とか選りすぐって、連れて行きたくなっちゃう。」
七海が目を丸くして、香奈を指差す。
「そうっ! カナちんもおんなじこと思ってたんだ。不思議だねぇ~。」
「・・・ちなみに・・・、七海・・・。今夜とか、忙しいの?」
七海が眉をひそめる。香奈が口に出そうとしていることがありありと想像出来る。それでも口に出されてしまうと、七海はそれを断れないような気がしていた。
「・・・・う・・・、明日の・・・講義の予習がある・・には、あるけど・・・。別に、しなくても、大丈夫って言えば、大丈夫かな・・・。空いてるよ・・・。」
「行く? ・・・あの・・ヘイジーハットってお店」
香奈と七海がテーブル越しに顔を寄せ合う。七海が口元を紙ナプキンで拭った後で、眉をひそめた困り顔のまま、首を縦に振った。
。。。
「あれっ、大樹さん。せっかくの音響機材、換えちゃうの?」
翔平が目を丸くする。先日までCDラジカセに繋がれていたコード類が、見るからに新式のコンポに接続されている。せっかくショーデンさんに不思議な細工をしてもらった機材なのに。翔平の驚きを予想していた大樹は、自慢げに腕を組んだ。
「もったいない・・・って思うだろ? 色々試してみたらさ、ショーデンさんの変な細工、この音響システム全体にかかってるみたいなんだよ。だから、音源のCDラジカセだけ換えても、効果は変わらなかった。となると、このデジタルのオーディオファイルを操作できるプレーヤーの方が、断然便利っていうわけ。」
翔平も現代っ子なので、大樹の言っている意味をすぐに理解する。
「あっ、曲と曲をつなげたりも出来るってこと?」
すぐに思いつくのが曲同士のつながりだった。これまでのCDだと、ディスクを交換している間に店内のお客さんたちが正気に戻ってしまう。もっとも、時にはその素のリアクションも面白かったりしたのだが・・・。
「それだけじゃないぜ。二つ以上の音源を重ね合わせて保存したり出来るの。当然、何個でも効果を重ねることが出来る。・・・夢が広がるだろ?」
「うわ~。早く、色々試したい・・・。お店、早く開けられないの?」
「早く開けたって、お客さんが来なかったら、しょうがないぞ。」
たしなめようとする奥住大樹に、川野辺翔平はアゴで店の外を指し示す。通りに面した窓から、2人の女性らしいシルエットが、店内の様子を伺っていた。
「・・・え・・・、開店の何時間も前なのに、あの子達、並んでるの?」
「・・・どうやら、熱狂的な固定客を捕まえたみたいだね。このお店。」
翔平と大樹が顔を見合わせる。大樹が店のドアを開けると、一昨日の金曜夜にお店を散々盛り上げてくれた、美人女子大生コンビがお行儀良く並んでいた。もちろん、この子たちの体を隅から隅まで堪能させてもらったことを忘れたりはしない。思わず涎をこぼしそうになった。
。。。
『ヘイジーハット』のドアが開く。まだ準備中の時間帯のはずなので、香奈と七海は少し意外な気持ちで店内を覗き込んだ。
「君たち、こんな時間から待っててくれてるの?」
ドアを開けている、確かこのお店の店長さん・・・らしい男性が声をかけてくれる。店内には、常連らしい男性がカウンターからこちらを見ている。香奈と七海はなぜか、この2人を見ると顔が赤くなって俯いてしまった。どうしてそんな反応になるのか、自分たちでもよくわからない。
「あ・・はい。あの・・・ご迷惑でなかったら、開店まで並んでいようかと思ってたんですが・・・」
「そうなんだ・・・、まだ準備中なんだけど、色々とかける音楽とか調整してるから、外で待ってるくらいなら、店内に入ってる?」
「え・・・、いいんですか?」
香奈の顔が明るくなる。七海はお店の迷惑にならないか心配そうにしているが、それでも2人とも、内心嬉しくて仕方が無い。『可愛い女の子と連れ立って、お店にまた来たい』そんな想いが2人のなかで時間を追うほど強まっていて、制御出来ないくらいに膨れ上がっていたのだ。
店に早く入れてもらった鷲尾七海と高倉香奈。水しか出してもらっていないのに、音響チェックのために流れる音楽にノって早くも踊り始める。まだ開店時間にもならないうちに、見る間に2人はバナナの皮を剥くみたいに簡単に衣服をスルスル脱いでしまって、大樹と翔平に絡みつく。嬉しそうに踊りながら男たちと合体した七海と香奈は、5分後には熱い精を自分たちの体内でしっかりと受け止めた。服を着る間もなく、店長から出された紙に、二つ返事でサインをする。2人とも、今日からこのお店で働くことにしたのだ。なんの疑問も浮かばない。大好きなクラブを盛り上げて、お客さんたちに楽しんでもらう。それでお金まで(大学生の深夜アルバイトにしては多くは無いが)貰えるなんて、夢のような話に聞こえた。
こうして音響設備は強化されて、美人のウェイトレスが入って、フードも厨房で作られるようになった『ヘイジー・ハット』。閉店の危機から一転して、知る人ぞ知る、熱いナイトスポットとして生まれ変わることになる。パンチパーマでチョビヒゲのオカマは、店が繁盛しているのを確かめると、一杯だけビールを飲んで帰るようになっていった。大樹も翔平も、ショーデンさんにきちんと挨拶が出来ないほど忙しくしている。接客も、下半身も、大忙しの夜が続くのだった。
< -2-へ続く >