第二章
「なんだ、これ。招待時間が深夜!?」
いつも利用している美容室から見慣れない手紙が届いた。
彼の名は加茂宮亜貴。去年の春、進学の為に上京してきた大学生だ。
それまで美容室なんて利用した事などなかったが駅前で配られているチケットさえ持っていけばたった千円札1枚でまともに仕上げてくれるので、貧乏学生である彼が毎回利用して常連になるのは当たり前と言えば当たり前であった。
手紙の内容は簡単に要約すると以下のようなものだった。
日ごろ利用している客限定で5千円の特別カットコースを用意した。
深夜ではあるが指定する日時に店に来てほしい。
また、来店の如何を問わず手紙の内容は内密にしてほしい。
いつも千円で済むのに、なんでわざわざ5倍の値段でカットしてもらわなければならないのか。しかもこんな深夜時間に。
合点が行かず、頭髪の伸び具合から見ても必要性がないと判断した亜貴だったが、内容が妙に気になった。
5千円という大金、特別と銘打たれたコース、深夜と言う時刻、内密と言う言葉に含まれる意味…。そのどれもが普通とは違う何かを感じずにいられない。
指定された日時は3日後。その3日間、亜貴は悩みに悩んで、結局無け無しの5千円札を財布に押し込むと深夜の街に足を向けた。
「いらっさい、いらっさーい」
「兄さん、どう?可愛い娘、いるよ!たったこれだけ!これだけで飲み放題、触り放題。どう!?」
「どうぞぉ~。割引券でーす。寄ってきませーん?」
5千円も持って深夜の街を歩くともなれば、こういう店に行くのが普通なんだろうなと思いながらも、亜貴は誘いをよけて駅から少し離れたビルに向かった。
普通の美容院ならこんな時間に営業しているわけがない。が、見上げると6階の窓から光が漏れているのが分かる。
亜貴は迷った末、ビルに入ってエレベーターのボタンを押した。
太陽光が射し込まないビルの中というせいもあって、6階に降り立つと普段と何ら雰囲気が違わない事が分かる。
いや、店の前に立つといきなり雰囲気が違う事があった。
オープンな感じをかもし出すはずの透明ガラスがはめられた入り口ドアがそこにはある。
その奥につい立が置かれていて、奥が見通せないのだ。
中の様子が分からないという事実は、亜貴の足を鈍らせるには十分だ。
せっかく来たけど帰ろう。そう思って踵を返そうとしたときだった。
カランカランと心地よい鈴の音が鳴る。
中からその様子をうかがっていたのか、一人の女性店員がドアを開けて亜貴に声を掛けた。
「加茂宮さまですよね?お待ちしてました。どうぞお入りください」
別段、店員が亜貴の顔を覚えていたなんて事はないだろう。
廊下の隅にある監視カメラとデーターベース入りのコンピューターがリンクしているのだ。
「あ、でも、あの…」
それとなく視線をつい立に向けると、店員は亜貴の躊躇の理由を理解したのか、笑顔を返してきた。
「大丈夫ですよ。損はさせません。取って食うなんて事もしませんから。もっとも、食って欲しいのなら別ですが」
さわやかな笑顔に似合わず、どきつい事をさらりと言ってのけた店員は、自分の身を端によけて亜貴に入店を促す。
その様子にあとへ引けなくなった亜貴は、意を決して足先を店に向け直した。
(ん!?)
入った瞬間、まるで時空が変わったかのような感覚にとらわれる。が、深く追求する前に受付の女性に伝票を差し出された。
「では、こちらにご記入下さい。…本日はカットのみでよろしいですね」
「ええ」
「それでは、お荷物とお召し物をお預かりします」
「はい」
……。
(あれ?)
パンツに手を掛けたはいいが、何かが違う気がする。
しかし店員は亜貴の衣類全てがカウンターに置かれるのをじっと待っている。
いや、これで良いんだろう、多分…。そう考えてパンツを下ろす。
股間に店員の視線を感じてさりげなく手で隠すが、それをどう受け取ったのか店員はくすりと笑った。
「では、奥の席でお待ち下さい」
そのとき初めてつい立の奥に入る事が出来た。
亜貴は思わずア然として立ち止まる。
人数は昼間の半分くらいだろうか。客も店員も10人ずつほど。
男女入り乱れてはいるが、いずれも若い。10代後半から20代と言ったところか。
驚くべきは、その誰もが一糸まとわぬ裸だと言う事だ。
しばらくそのままでいた亜貴ではあったが、よくよく考えれば自分もその中の一人であると気付き、それならば良いんだと空いている席に座った。
座ってからもきょろきょろと辺りを見まわす。
この美容院はこんなにいい場所だったろうか?
もしかして!亜貴はせわしなく動かしていた目をさらに激しく動かして、人を探し始めた。
しばらく前にインターンとして店員になったばかりの女性にほのかに好感を持ち始めていた亜貴は、その女性の存在を探し始めたのだ。
女性の胸につけられたネームプレートには宮原と書かれていた。
名前を話題にしたときに下の名前も教えてもらっている。下の名は恵美だ。
ショートカットのよく似合うボーイッシュな女性。
そのいで立ち、仕草ともに亜貴のストライクだったのだ。
もしかしたら彼女の裸体も見られるかもしれない。
なりふり構わず、立ち上がろうとしたその時。
「加茂宮、さま。こちらへどうぞ」
声を掛けられて振り向いた亜貴は言葉を失くした。
恋心と言うよりは憧れに近い存在で、卑猥な想像などしたことはなかった。
しかしそれでも見ることが出来るとなれば話は違う。
目の前に立つ、恵美の裸体を亜貴はじっと見つめた。
「加茂宮さま。どうぞ」
「は、はいっ…」
普通ならば座るべき椅子を指示されて終わりであろう、ホンの数メートルの誘導。
恵美の伸ばした腕に示された椅子へ向かおうとしたとき、亜貴にとっては信じられないことが発生した。
恵美が、さも当たり前のように腕にしがみついてきたのだ。
ナマの胸の感触が二の腕に当たる。
柔らかい中に1ヶ所だけ違う感覚。これは紛れもなく胸の先っぽではないのか。
思わず、ヒジを動かしてその感触をもっとしっかりと感じ取りたくなってしまう。
少し。ほんの少しだけ腕を上げてみると、ヒジが恵美の胸に深く埋もれた。
熱くはないが、冷たくもなく、さっぱりとした心地よい温度というのが一番しっくりと表現できる温度。
気持ちいい…。そう思った次の瞬間、亜貴はしまったと恵美の顔を見やった。
痴漢みたいなことをしたら、怒られて当然…。我に返った頭でそう考えて慌てたのだが、恵美は全く気にしている様子はない。
それどころか腕にぎゅっとしがみつき、手の甲に自分の手を添えて…。
(えっ、えっ、ええっ?)
気が付けば、亜貴の手は恵美の陰毛に触れていた。
それだけでも脅威なのに、恵美の手は亜貴の手を自らの股間に押しつけるのだ。
(そこは…)
思わず自分の手がどうなっているのかを確認したくて視線を下げようとしたが、それは恵美の言葉に遮られた。
「こちらへどうぞ」
すこし語尾を上げて、何かあったのか?とやさしく問い掛けるように。
じっと立ち止まっていたら変に思われて当然だろう。
亜貴は顔を真っ赤にして腕を硬直させたまま1歩目を前に出した。
どんなに硬直させていても、歩くと言う動作をするたびに手は恵美の股間に様々な当たり方をする。
そのたびに恵美の温かさと柔らかさを手の平に感じとって亜貴の股間が徐々に反応を始めてしまう。
ムクッ!
股間の異変に気付いた亜貴ははっとして腰を引き、自由に動かせる右手でそうっとイチモツを覆った。
こんなところで、恥ずかしい…。
大学生のわりにウブに類する亜貴は耳まで真っ赤になってうつむき加減で椅子へ向かった。
ふと見ると全裸の女性客が背もたれの倒された椅子に寝て男性店員に洗髪されていた。
身体のどこも隠していないのに顔だけをフェイスタオルで覆われている様が異様なほど卑猥に感じられる。
そんなものを見てさらに股間を反応させた亜貴はそのすぐ隣の椅子に到着して腰かけた。
やっと恵美の身体から腕が離されたが、イチモツはしばらく落ち着きそもうない。
何にしてもシャンプーコートを掛けてもらえば隠せるだろう。そう思ったとき隣の女性の姿を思い出した。
シャンプーコートなどまとっていなかったではないか。
思わず横を向いて確認すると確かに何もはおっていない。
と、がくっと椅子が動いた。
「失礼しまーす」
恵美が亜貴の座る椅子の背もたれのロックを外したのだ。
背もたれがゆっくりと倒れていく。
いつもの癖でひじ掛けに両腕を置いていた亜貴は際限なく後悔した。
それまで足の間に挟んでいたイチモツが限界を超えてピョンッと飛び跳ねたのだ。反動で腹にペチッと当たる。
椅子がほぼ水平状態になるとだらしなく裏筋をさらけ出す形でイチモツの動きも止まった。
「シャンプー入りまーす!」
「お願いしまーす」
恵美が元気に言い放つと、周りからおざなり的に返事がいくつか返ってくる。
直後、亜貴の顔にフェイスタオルが掛けられ、頭上でシャワーの音がする。
何も見えない方が気を落ち着けられるだろう、そう思った亜貴はあまりにも未熟だった。
ひじ掛けに置いた腕に何かが当たる。少し固いちぢれ毛の感触…。複雑な間接の集合体。これは…。
「熱くはないですか?」
なんでもないことのように、いつものように恵美が声を掛ける。
しかしそのセリフの主語は一体なんなのだろう。
考えをめぐらせた途端、亜貴はフェイスタオルの下で再び顔を真っ赤にさせた。
手に当たっているのは間違いない…間違いなく恵美の股間だ。
先ほど恵美の手の力で押しつけられてはいたが、それとはまた違う当てられ方にまたしても股間が反応してしまう。
見えない分、必要以上に妄想が掻き立てられてイチモツがビクビクと震える。
余りの恥ずかしさで気が遠くなったのか、血が海綿帯に行って貧血になってしまったのか、亜貴の意識がわずかながら薄らぐ。
まるでその時を待っていたかのように、謎の声が亜貴の脳裏に響いた。
「もっと大胆に。もっと激しく。彼女は君に触られるのを待っている。さあ、勇気を出して。腕をちょっと動かすだけでいい。簡単な事だ。さあ」
誰の声?自分ではないはず。亜貴は否定しようとするが、余りに心地よい声の響きに身体が勝手に動き出した。
動き出した右手が、左腕からその感触を奪うようにその間へ割りこむ。
それまでひじの少し上辺りで感じていた陰毛の感触を手の平で感じるようになれた。
陰毛だけではない。恥丘は元より、少し奥ばった大陰唇の感触まで撫でるように指を動かして感じ取る。
下から回すような手の当て方も良かったのか、さらに奥の方へも容易に指が伸ばせる。
軽く奥に入れただけでヒダが感じ取れ、軽く指を曲げただけで指先が潜ってしまう。
ピクリッ。
恵美の身体が震えたような気がした。
はっとした亜貴は慌てて指を抜いた。
ひじには偶然当たっていただけではないのか。いくらなんでもやり過ぎだったのではないか。
しかし恵美は相変わらず普通に洗髪を続けている。
許してもらえたのだろうか。良く分からない亜貴は、それ以上のことはしないほうがいいと手の動きを止めた。
間もなくして、頭上でシャワーの音がする。
もう終わり?早いな、と亜貴が思っていると恵美の身体が1歩洗面台よりに動いて、亜貴の右手首を濡れた手でぎゅっと握ったのだ。
やはり嫌がられた!?怒られる!!やっぱりやっちゃいけなかったんだ。ひじに当たっていただけでも気持ち良かったのに、もうこれで終わりだ…。
そう思ったのもつかの間、右手首を握った手は恵美の身体が動いた分を一緒に動かしてあっさりと離された。
再び手には股間の感触…。
驚いていると、今度は後頭部へ恵美の腕が回された。
右手の状態に驚きつつも、後頭部を洗うのだと気付いた亜貴は首に力を入れて頭を上げる手伝いをした。
すると顔面に2つの柔らかい感触。フェイスタオルのせいで見えなくてもそれがなんであるかは容易に理解出来る。
手には股間、顔には双胸の柔らかい感触を同時に味わう事になった亜貴はまたも意識が薄れ掛けた。今度は間違いなく、興奮でだ。
「どうだい、言った通りじゃないか。彼女は触られるのを待っているんだ。もっと大胆に触ってあげないと彼女が気の毒だよ」
言葉に促されるままに右手の指を動かす。
そうとも。恵美が自らあてがったのだ、遠慮する必要はない。
先ほどは第1関節も入れられなかったスリットにいきなり指2本を埋める。
筋肉の痙攣のような震えが感じられるが、決して嫌がっている様子ではない。
相手を感じさせるためと言うよりも、初めて触るそこを探検したいという感じで恵美の内部をまさぐる。
そんなに広くは感じられない、どちらかと言うと狭くてきつい内部は湿ってはいなくても熱く感じられる。
恵美は足を少し開いて入れられやすくしているが内部のきつさには余り関係がないようだ。
そろえて挿し入れた指を内部でVの字のように広げようとするが上手くいかない。
そう言えばスリットの上のほうに感じる部分があるはずと亜貴は思い出して親指でスリットの上辺りをまさぐってみた。
はっきりとは分からないが、あるポイントを触れるたびに恵美の動きが明かに乱れる。
亜貴はその部分を執拗に触ることにした。
しかし少々やりすぎたのか、全身を震わせて刺激に耐えていた恵美は立っている事すら辛くなってしまったようだ。
よろけながらも必死に膝に力を入れるのだが、そうすると腕にも一緒に力が入ってしまう。
亜貴の後頭部を押さえる腕にさらに力が入り、頭を押さえていると言うよりも抱きついているという感じになる。
つまり恵美の胸が亜貴の顔にさらに強く押し付けられる事になるわけだ。
(く、くるしい…)
ボリュームがあるが故だろう、双胸は亜貴の顔面を見事なまでに覆い尽くしてしまった。
それだけ強く押しつけていても洗髪している腕は止まる事なく動き、後頭部を洗い終えると頭を置いての洗髪に戻った。
最後にシャワーを掛けてざっと拭くと洗髪は終わりだ。
股間に指を入れられたままの恵美がフェイスフェイスタオルを外し、背もたれを起こす。
「どうぞ」
促されるまま今度はカット台へ。
先ほどと同様に恵美は亜貴の腕にしがみついているが、今度は亜貴も遠慮することなく股間と胸に手を当てている。
下腹部で反り返っているイチモツも気にはならない。
指し示されたカット台に亜貴が座ると、恵美は覗き込むように亜貴の正面に顔を出した。
「カットも引き続き、私が行ってもよろしいですか?」
「え?ええ」
インターンではなかったのか?インターンが客相手にカットしても良かったのか?いくつかの疑問が瞬時に生まれつつも、勢いのままにうなずくと恵美は嬉しそうに自分専用のカット用具を積んだカートを持ってきた。
「カット入りまーす!」
「お願いしまーす」
「いつものカットでよろしいですか?」
「はい。お願いします」
顧客データをコンピューターで管理しているだけに、常連のそれまでのカット指定はすぐに調べられるのだ。
わずかに震るえる恵美のはさみが亜貴の頭髪に通された…。
カット中は残念ながら恵美が椅子の背後に回ってしまう事が多くてあまり触る事が出来ない。
唯一触る事が出来るのは、サイドと前髪のカットのときに椅子の横へ来るときだけだ。
亜貴は手が届く限り、なんら臆することなく恵美の身体を触ったが、どうしても短時間しか触れない。
とは言っても鏡越しに恵美の裸体を見られるだけで興奮が高まる。
カットの間ずっとイチモツを立たせっぱなしにしていた亜貴は、実は恵美もまたチラチラとそのイチモツに視線を向けていた事に気付いていた。
最初の恥ずかしさはどこへやら、亜貴はどうぞ見てくれとばかりに股間に力を入れてイチモツを揺らしてサービスをしてやった。
「いかがですか?」
満足の行くカットが出来たのであろうか、恵美は二面鏡を開いて亜貴に後頭部を見せる。
「ええ、いいです」
客にオッケーを出された事で、ほっと一安心した恵美は、内緒話でもするかのように亜貴の耳に口を近づけた。
「ところで、この特別コースには最後にもう1つあるんですが、どうなさいますか?」
もう1つと言われても、あとに残るのはアフターシャンプーとブローだけだろう。それとも別の何かがあるのか?
…まだ何かある!?亜貴は目を大きく見開いた。
手紙に書かれていた特別コースがこれ程のものだとしたら、わざわざ耳打ちして聞かれるほどの最後の1つとは一体どんなものであろう?
「どんな内容なんです?」
「インターンである私にカットさせていただいたお礼…みたいなものです。ほら、あれをご覧下さい」
恵美が指し示した先ではやはりインターンの男性店員が女性客の前にひざまづいていて、今まさに剃毛をしている瞬間だった。
女性客は恥ずかしくないのかと思いきや、背後の机に両手を付いて空を仰ぐ表情は恍惚としている。
よく見ると恥ずかしいどころか女性客の片足は男性店員の股間に伸びており、足の指で器用にイチモツをこね回しているではないか。
ムダ毛処理の無料サービスと称して、本来美容師が客に向けてはならないカミソリを向けている…。これで料金を徴収すると言うのであれば美容師免許剥奪であろうが、サービスと言う事でまかり通すつもりなのだろう。
しかし盲腸炎でもないのに男である亜貴が剃毛されては、ガキのようになってしまいかねない。
恵美にイチモツをいじくり回されて股間のすべての毛を剃られると言う情景を思い浮かべるだけでにや付いてしまうが、後々のことを考えると躊躇してしまう。
それに気付いたのか、恵美がさらに耳打ちした。
「実は、各従業員ごと先着1名様に限り、お客様が従業員のムダ毛を処理する事が出来るんです」
驚いて恵美の顔を見る亜貴とは対照的に、はにかみながらも笑顔を返す恵美に小悪魔的な魅力を感じる。
恵美の剛毛に視線を移した亜貴は魔法が掛かったようにうなずいていた。
フロア中央の机にお尻を半分だけ引っ掛けるような形で恵美が座り、その前面、広げた足の間に椅子を置いて亜貴が座る。
剃毛の為に用意されたものはガード機能付きの髭剃りと、粉末から泡立てる本格的なクリームだ。
本来ならカミソリのほうが情緒がありそうだが、素人が扱うには難しすぎる。その代わりというわけではないが、クリームだけは本格的な物が用意されたのだった。
一昨年まで床屋に通っていた亜貴は粉末クリームの使い方をそれなりに理解していて、記憶を頼りに見よう見まねで準備を始めた。
器に粉末を入れて少し熱いかもしれないくらいのお湯を注ぎ、刷毛で茶道の家元よろしく泡立てていく。
しばらくするとしなやかで非常に柔らかい刷毛にきめの細かい泡がまとわりついてさらに柔らかな感触になった。
その刷毛を恵美の広げられた股間に当ててわしゃわしゃと塗っていく。
「ん…っ」
柔らかい刷毛で塗りつけられると、くすぐられているようなむずがゆさが股間を這う。
恵美は白くなっていく自分の股間に上気した視線を向けつつ、唇をかんで痒さを押し殺そうとした。
もともと肌の白さには自信のある恵美だったが、さすがに本当の白とは比較にならないなどと考えて気を逸らし、どうにか塗り終えるまで我慢することが出来たようだ。
恵美が見つめる中、亜貴の震える手とその震えをそのまま刃先に伝えられている髭剃りが真っ白い股間に近づいていく。
ゾリ…ッ!!
「くっ」
それが当たり前の事と心の底から思い込んでいる恵美も、さすがに他人に股間の剃毛を任せるというのは恐れを感じずにはいられない。
内ももに鳥肌を浮かせながら恵美は刃先の動きに視線を追従させる。
ゾリッ!
「ふうっ」
新品のせいか、刃が滑った跡には毛など少しも残っていない。
ヒダをつまみながら剃っている亜貴もまた、髭剃りの切れ味の良さに驚いている。
まずは簡単に剃れる恥丘。次いで大陰唇。
亜貴のぞんざいな刃の扱いを見るだけで手出しの出来ない恵美の瞳には恐怖の色が伺える。
刃が複雑な部分に近づくほど不安なようだ。
大またを開いたまま、今にもつるのではないかというほどに足の筋をピンと伸ばす。
しかしそれでも目視で確認できるうちはまだ良かったようだ。
陰毛は下の奥の方にまで生えていてそのままの格好では剃る事が不可能だったのだ。
肛門の周囲にまで生えている毛を剃ってもらうために恵美は自らの意思で机に寝転がった。
綺麗に剃ってもらわなければ、美容師としての腕が上達しない…。美容師の腕と剃毛されることの関連は見出せなくても、そう信じている恵美に恥ずかしさは二の次のようだ。
まるで赤ちゃんのオムツ替えのような格好で机に寝転がり、異性の客にシモをいじられる…。普通に考えればとんでもない事なのに恵美は恐怖をも押し隠してニコニコと身を委ねている。
肛門の中心に刃が当てられ、シワを広げるようにその刃が動く。あまりのおぞましさに一瞬だけ我れを取り戻しそうになるが、MCフィールドとして構築されているフロアで恵美の抗う術は何1つとして残っていない。
客に剃られているこの瞬間でさえ上達するための大事なプロセスであると信じ、肛門が広げられるような感覚にもじっと耐えて綺麗に剃られる事を心待ちにしている。
気が遠くなるような焦りと恐怖は、亜貴が手鏡を使って剃り終えたばかりの肛門を恵美に見せたことで終わりを迎えた。
「こんな感じでいいのかな?」
そんな事を聞かれても、良い悪いの基準など恵美には存在しない。ただ、無事に済んだと言う事実だけが恵美の精神に安堵感をもたらした。
「あ、有り難うございました。本当に有り難うございましたっ」
これでまた自分は美容師に向けてまた一つ、大きく前進する事が出来た。
そんな嬉しさから股間にわずかに残るクリームを拭くのも忘れて恵美は亜貴の手を取ってぶんぶんと振る。
あと残っているのは亜貴のアフターリンスとブローだ。
最初のときと同じように触っているだけなのに毛がないというだけで感触がまるで違う恵美の股間に驚きつつも、無事にブローまでのすべてを終わらせられた。
全裸で髪型だけがびしっと決まった亜貴の姿が鏡に映される。
と、水平よりも少し上向きに伸びるイチモツが妙に浮いている。
亜貴と恵美の視線が鏡の中のイチモツに向けられたとき、亜貴の脳裏に声が響いた。
「彼女のせいで、君の身体の憤りは収まりそうもないね。それを収まらせてくれるのは彼女だけじゃないのかな?彼女のほうから誘っていたんだ。最後は君から誘ってみてはどうだろう?」
同時に恵美にも。
「君に全てを任せてくれたお客様だ。大事にすると言う意味でも、常連客を確実に獲得すると言う意味でも、アフターケアを万全にしたほうが、今後の上達の良い糧になるよ」
2人の視線が鏡越しに絡み合う。
「あのっ」
「あのっ」
二人の声が期せずして重なった。が、互いに何を言わんとしているか、互いに何を求めているかが手に取るように分かる。言葉などもういらない。
手を取り合って観葉植物の陰に行くと2人は熱いキスを交わした。
「もう…我慢が出来ない。今まで経験がないのに…何をどうしたらいいかもよく分からないのに、君の身体がほしくて溜まらないんだ」
「大丈夫。大丈夫です。私が手取り足取り教えてあげます。だから…だから、あなたが綺麗に剃ってくれた私のアソコをあなたがまず試して…」
2人ともすでに裸なので、面倒なことは何もない。
口の回りが唾液でべちょべちょになるほど激しいキスをして、互いの身体を撫で回した。
恵美のスリットはずっといじられていたせいでそこそこ準備は出来ていたし、亜貴のイチモツも半立ち状態から奮い立たせるのに少しの間もいらない。
童貞の亜貴とは違って経験のある恵美は素直に騎乗位を選べば良いものを、自分の好みに合わせてバックからの交尾を選択した。
壁のほうを向いてお尻を突き出すように腰を曲げる。
その背後に立つ亜貴のイチモツを軽く掴んで先端を誘導した。
「ここ。ここに入れるんです。中出ししていいから、お願い。激しく…」
亀頭の先半分ほどをスリットにうずめさせ、後は腰を前に出すだけでいいと言う状態にまでして恵美は手を離した。
いっぱいいっぱいの童貞なら激しく動いて、熱く燃えたぎる身体の芯を発散させてくれることだろう。そう期待して、どんな衝撃にも耐えられるように両手を壁につけたのだ。
「行くよっ」
亜貴は勢いをつけるために少し腰を引いてからイチモツを突き出した。
「ぐぅうっ!?」
亜貴の突然の突き上げに恵美は目を白黒させた。
そんなバカな…。そこは…。
「ふああ…ぐっ、くっ!」
今まで経験のしたことのない鈍痛に歯を食いしばる。
しかしそんなことで痛みが消えることもない。
「こ、こんなにきついなんて。すごい。すごいよっ」
何も知らない亜貴は余りのきつさに感動して結合部など見ていやしない。
「ふああん…ぐっ、おおっ!」
突き上げられるときは2度と味わいたくないような鈍痛。しかし抜かれるときは開放感にも似た快感。中身が引きずり出されるような感覚に思わず締めるとその快感は倍増する。
その快感を得たいがために鈍痛を受け入れたくなってしまう。
まさにアメとムチ状態で、恵美は予想外の事態を受け入れつつあった。
予想外の事態…亜貴が腰を引いたりしなければ亜貴のイチモツは素直にスリットに入っただろう。なのに、わずかに引いたことで位置がずれてしまって、よりにもよってアナルを突き上げてしまったのだ。
さすがにアナルセックスの経験はなかった恵美だったが、普通のセックスの経験とあいまって思ったよりも気持ちいいものであると認識する結果となった。
慣れてくると突き上げてくる鈍痛もまた快感の1つになっていく。
勘違いしているとはこれっぽっちも思わない亜貴はひたすら腰を動かし、ほんの数分で果てた。
初めてでアナルにやったにしてはがんばったほうであろう。
イチモツがすぽんと抜かれるとすぐには閉じないアナルから白濁液が滴る。
しばらく快感の余韻に浸っていた恵美だったが、はっとして慌てて亜貴のイチモツをティッシュで拭いた。
自分の汚物がついているかもしれない。そう思っての処置だった。目で見る限りイチモツに色は付いていなかったが、白いティッシュにふき取るとやはり茶色い汚れが付着する。
ティッシュを何枚かをまとめて手に取り、見られたくない汚れを何度も何度も拭いて綺麗にした。そのティッシュは隠すように少し離れたゴミ箱に捨てる。
床面に直接ぺたんと座ってしばらく休み、さっきまでの情熱が不思議に思えるほど落ち着くと、恵美は亜貴を受付にまで誘導した。
本来ならつい立てまでであろうに、つい立てを抜けて受付前にまで付いていく。
そして受付の奥から亜貴の衣類を出すとそれを着る手伝いまでし始めた。
着衣を終え、料金を支払い終えた亜貴に最後の抱擁をした恵美は顔写真が付いた特別カットコース専用の会員証をそっと手渡す。
「次に私を指名してくださったら、もっといいことをしてあげます。だから絶対に指名してくださいね」
それだけ言うと頬に軽いキスをして恵美はつい立の向こうに消えていった。
それ以降、亜貴が隔月に行われる特別カットコースの常連になったことは言うまでもない。
< 第三章へつづく >