ボクの『おにいちゃん』

1.頼りない保護者・・・

「おにいちゃん、いいかげんに起きてったら!」
全然起きようとしないおにいちゃん。しょうがない、いつものヤツだ。でも今日はいつもより気合が入っている。
「フライング・エルボー!」
「ぎょえ~!」
・・・
「げほげほっ・・・、いいかげん、それ、やめて、くれないか?」
おにいちゃんったら、いつものように涙目でボクに泣きついてくる。
「何言ってんの、ボクのほうがそう言いたいところだよ。なんで毎日一回で起きてくれないかなぁ」
「うぅ~、わかった、オレが悪かった。だけど、オレの出勤時間にはまだ間があるんだけど。ほら、オレってフレックスタイムだから、コアタイムに間に合えばいいんだし」
「はいはい。そう言って遅く出勤する割にはいつも早く帰って来るくせに。何の研究をしているんだか」
「今は記号の変化の影響の研究かな。それと、早く帰ってくるのは、まりっぺの保護者としての責任感からさ」
「その呼び方はやめてよ。ボクはまりか。今度からそう呼ばないと返事しないから」
「おっ、今日はいつも以上にこわいなぁ」
「あったりまえでしょ? 昨日はおにいちゃんのせいで気分が悪くなって、夢見も悪いし最悪なんだから」
「そうは言っても協力してくれるってちゃんと言っただろ、まり・・・か」
ギロってにらんだら、しぶしぶ呼びなおしたみたい。
「あんな気分の悪くなるものを見せられて、平気でいられるわけないでしょ? うねうね動く画像にかえるだかこうもりだかの鳴き声とか雷の音とかが聞こえてきちゃ、普通でいられるほうが変だよ」
「う~ん、自然の音がいいかなぁと思ったんだけど、だめかぁ。なあ、少しはリラックスとかしてない?」
「しないよっ! それより早く準備してよ」
そう言って無理やりおにいちゃんをベッドから引きずり出す。何だかまだぐずぐず言ってるみたい。
「なぁ、もう一度だけ協力・・・」
「おにいちゃんっ!」
「ふへ~い、わかったよ」
しぶしぶ準備を始めるおにいちゃん。それを確認してから部屋を出る。
「じゃあボクもう行くね。おにいちゃん、戸締り忘れずにね」
「おう」
こうして、いつものような(ちょっと過激だったかも知れない)朝の風景は終わり。
出がけにちょっと振り返ったらボクの家の表札が見えちゃった。
おとうさん、おかあさん、ボク、おにいちゃんの順に名前が並ぶ。ボクまでは同じ苗字、おにいちゃんだけが苗字が違う。
おにいちゃんが苗字が違うのは、後からボクの家に入ったから。おにいちゃんが高校のときにおじさんとおばさんが事故で亡くなってからずっと、ボクの家から大学に通っていた。
そして、今から1年ほど前にボクのおとうさんとおかあさんがやっぱり事故で・・・。
それから、おにいちゃんはボクの保護者になった。
おにいちゃんは、ボクの「おにいちゃん」。他の誰も「おにいちゃん」にはなれない。
ボクにとって「おにいちゃん」は、ずぼらでいつもボーっとしてて頼りない保護者で、でもいつもそばにいてくれる大切な家族だった。

2.なんだか・・・

夢、なのかなぁ。
なんだか周りに霧がかかったみたいに、うすいベールに包まれたみたいにぼんやりしている。
なんとなくボクの頭の中にもベールがかかっているみたいで、なんだかボーっとしてうまく考えがまとまらない。
ボク、なにをしようとしてたんだっけ?
・・・
あ、起こさなきゃならないんだ。
ふらふらと歩いていくと、何だか見たことのあるドアがあった。そっと中に入ってみたら、誰かが寝ているみたい。そう、この人を起こすんだ。
えっと、どうやるんだっけ?
そうそう、ズボンを下げて、トランクスも下げて、出てきたあそこを舐めたり手でしごいたりして起こすんだった。
あれ、なんで?
あ、そうか、ボクがこの人を大好きだからだよ。好きな人には気持ちよく起きてもらわなくっちゃいけないからね。
ボクは大好きなその人の寝顔を眺める。何故だか見えているのに見えていないみたいな不思議な感じ。目も鼻も口もみんな見えているのに誰だか分からない、でも、ボクの大好きな人。
ボクは大好きなその人のために、いつ頃からか「日課」となっている朝のおつとめを始めた・・・。

「あれ? きょうは早いんだね」
びっくり。いつものネボスケさんがきょうは早起きしているんだもん。
「おう、まりかか。ほれ、オレもたまには早く起きれるだろう?」
「偶然のくせにぃ。ま、いっかぁ。じゃあ久しぶりに一緒に朝ご飯だね」
「おう」
そうして一緒に食卓につく。久しぶりに一人じゃない朝食は楽しいなぁ。
たわいない話をしながら食事をしていて、突然ボクの動きが止まった。醤油を取ってもらおうとしておにいちゃんに呼びかけたとたんに。
「おにいちゃん」
どきん。心臓がはねた。耳まで一気に赤くなったみたい。だって、その言葉の意味は。
大好きな人。
うそ。そんなはず。だって。でも。
頭の中がぐるぐる回る。でも、どうしてもそれ以外の意味が思い出せない。
おにいちゃんは「おにいちゃん」で、それ以外の人じゃない。だから、おにいちゃんはボクの「大好きな人」。
頭の中で意味も無くそんなフレーズが繰り返されて。
気がつくと玄関前で表札を眺めていた。おにいちゃんに隣り合わせで、寄り添うようなボクの名前。何だか嬉しくて、ボーっとなっちゃった。
それから、いつの間にか通学路にいたり授業を受けたりしているボクがいた。でも、その周りにはいつも、あの夢の中のようにベールがかかっていた。おにいちゃんと一緒の時以外は。
おにいちゃんと遊園地に行った。ジェットコースターに乗った。カートで騒いだ。観覧車に乗った。二人でいるのが嬉しい。おにいちゃんって呼びかけるのが幸せ。なんでもない話をして笑い転げるのが楽しい。手をつなぐだけで心の中まであったかくなる。
おにいちゃんだけがボクの世界に現実感を与えてくれる、光を与えてくれる。
おにいちゃん。大好きな、愛しい人。

いつの間にか夢の中のその人の寝顔にもおにいちゃんの面影を重ねちゃうようになっちゃった。
そうして、気持ちよく起きてもらえるように、ますます熱心に頑張るようになったんだ。
きょうも気持ちよくなってね。

3.そうして・・・

「そろそろ今夜から・・・」
いつものように大好きな人に気持ちよく起きてもらうためにおつとめをしていると、顔がよくわからないその人がボクの頭を撫でながら何か言っている。聞こえているんだけど、何て言ってるのか意味がわからない。
また何か聞こえたような気がした。
あれ、ボク何してたんだっけ。
そうそう、いつものように飲んであげなくちゃ。大好きな人のだもんね。がんばろう。
「んっ、んっ」
心をこめて舐めて、吸ってあげる。あ、そろそろきそう。嬉しいなぁ。ボクで気持ちよくなってくれてるんだね。
「んぐ、んぐ、ごくっ」
あ~、幸せ。

その日も相変わらずおにいちゃんとじゃれあったりしながら、おにいちゃんを「おにいちゃん」って呼べる嬉しさを満喫してから学校に出かけたんだよね。

今度は夜みたい。ボクはまたふらふらとベールに包まれた世界を歩いていく。また、どこか見たことのあるドアがあった。ノックすると中から何か声が聞こえたみたいで、そっとドアを開けて中に入る。
いつもの人がそこに・・・。いつもの、ボクのご主人さま。
あれ? ご主人さまって?
えっと、ご主人さまって、ボクの所有者で、ボクはご主人さまの言うことなら何でもきくのが当然で、ご主人さまが喜ぶことがなにより嬉しいんだよね。だって、ボクはご主人さまが大好きだから。
あ、いけない、なんだかボーっとしてた。
ボクは慌ててご主人さまの前に跪いてご挨拶した。
「ご主人さま、ボクはご主人さまのしもべです。何でも喜んで仰るとおりにいたします」
ご主人さまは小さくうなずいてくださったみたい。う~っ、嬉しいよぉ。
さっそくご奉仕。ご主人様にご奉仕できるってホント嬉しくって、ボクは心の底から喜びと感謝をご主人様に捧げる。もちろんボクの手もお口も一所懸命動かして。
お口に出していただいたときなんて、感激で気が遠くなっちゃった。
それから、ボクがお口以外でもご奉仕できるようになるために、ご主人さまは次のところを身振りで示された。
それは、オシリ。
最初はボクの勘違いかなって思っちゃった。だって、そんなところでご主人さまにご奉仕する方法があるなんて知らなかったから。でも、ご主人さまに求められたら応じるのがボクのつとめ、そして喜び。ボクは喜んでご主人さまにオシリを差し出した。
ご主人さまにほぐしていただいてると、嬉しさと気持ちよさが心の底から体中一杯に広がっていく。もう、いつでもいいですよ、ご主人さま。
そうして、何か細い棒のような物がボクのオシリに入ってきて、中をゆっくりかき回しながら出入りする。こうして、いつかご主人さまにここでもご奉仕できるようにしてくださっているんだよね。はやくそうなるように、ボクも自分で練習しなくちゃ。
お腹の奥の方から感じる初めての感触を嬉しく思いながら、ふわふわした夢の中に入っていったんだ。

4.それから・・・

ボクはいつものように朝の身だしなみのチェックをしていた。髪よし、爪よし、制服よし、教科書よし、貞操帯よし、アナルプラグよし。
うん、いつものように完璧。るんるん気分で食堂に入って、さわやかに朝のあいさつだ。
「おはよう、おにいちゃん」
どきん。何だか以前にも感じたようなショックが体を駆け抜ける。
おにいちゃん。それはボクのご主人さま、ボクの一番大切な人って意味。
うそ。そんなはず。だって。でも。
まるでデジャブのように意味も無いフレーズが頭の中をかけめぐる。でも、どうしてもそれ以外の意味が思い出せない。
おにいちゃんは「おにいちゃん」で、それ以外の人じゃない。だから、おにいちゃんはボクの「ご主人さま」。
そう、ボクはおにいちゃんのしもべ、おにいちゃんに喜んでいただけるなら何だってする。
「さ、いつもの身だしなみチェックをするよ」
あ、いけない、またボーっとしてた。おにいちゃんの前なのに。
「はい、おにいちゃん(ご主人さま)」
そう言って、ボクはスカートをまくる。いつものようにしっかりとアナルプラグが納まった貞操帯。とてもきょう初めて自分で付けたなんて思えないでしょ? おにいちゃんはそれをまさぐって確認する。
「よし、いいぞ」
「ありがとう、おにいちゃん(ありがとうございます、ご主人さま)」
何だかボク自身の言葉が全て、別の響きでボクの心の中に届いてくる。それはとっても心地よくて、一瞬違和感があったような気がしたけどすぐに消えちゃった。
「それじゃぁ、お先に、おにいちゃん」
「おう、気をつけてな」
「は~い」
玄関を出てからまた振り返る。そこの表札を見て、何だか変な気がした。なんでボクの名前がおにいちゃんの上にあるんだろう。ご主人さまの下にあるのが当然でしょ? 作った人は変だと思わなかったのかなぁ。
そんなことを考えながらいつの間にかベールに包まれた町の中を歩いていた。

夜の夢でご主人さまに教えていただいた時から何日かが過ぎた。その間におにいちゃんにも手伝ってもらって、貞操帯を使ってのボクの自習の成果も出てきた。もう随分太いプラグでも大丈夫になったんだ。そろそろご奉仕できるかなぁ。えへっ、楽しみぃ~。

また、夜の夢の中。いつものようにご主人さまの前に跪いてご挨拶。
「ご主人さま、どうかきょうもボクにご奉仕させてください。よろしくお願いいたします」
きょうは何となく予感がする。ご主人さまにオシリでも初めてご奉仕できるんじゃないかなぁ。
お口でご奉仕していると、いつもはそのままボクにご褒美をくださるのに、きょうは最後までいただけなかった。ちょっと寂しかったけど、それがますます予感を強くする。
いつものようにオシリをプラグで可愛がっていただいて、きょうはとうとう頭の中が真っ白になっちゃった。気持ちよかったなぁ。
それから、とうとう・・・。予感どうりにご主人さまにオシリを求められた。もちろんボクに異論はないよ。それどころか、嬉しくってすっかり舞い上がっちゃった。
ご主人さまったら、何かぬるぬるするものをボクのオシリに塗りこんでるの。もうそれだけで気持ちよくって、またいきそうになった。あん、もう、早くボクにオシリでご奉仕させて、ご主人さま。
あっ、きた、入ってきてる、ご主人さまの熱くて固いアレが。
ゆっくりゆっくり、ボクの中がいっぱいになったところで、ご主人さまが大きな息を吐く。
ご主人さま、気持ちいいのかな? それともボクがまだ未熟だから気を使ってくださってるの? そんなの、いやだよ。ボク、ご主人さまに気持ちよくなっていただきたいんだもん。ご奉仕したいんだもん。
ボク、その気持ちをこめて、ゆっくり動き始めたんだ。そしたらご主人さまもいっしょに動き始めてくださったの。あっ、また、気持ちいい。
だめだめ、ボクが気持ちよくなってどうするの。ご主人さまに気持ちよくなってもらうんだからぁ。
ん~、が、頑張るもん。だから、だからご主人さま、ボクで気持ちよくなって!
どんどん熱くなるボクのからだ。頭の中も熱くなって、もう何もわからない。ボクで気持ちよくなってって、それだけを思いながら一所懸命体を動かし、いくのを我慢する。
でも、とうとう限界がやってきた。魂まで根こそぎ空に引き抜かれてしまうような、圧倒的な幸福感。ボク、いっちゃった。
薄れ行く意識の中で、待ち望んでいたご主人さまの喜びの証を体の奥に感じながら。

5.ご主人さま・・・

ふと気がつくとご主人さまがボクの横で頭を撫でてくれていた。ん~、幸せ。
それから、良く分からないけどご主人さまがボクに何か話しかけてくださったみたい。
急にボクの周りのもやもやしたベールのようなものが晴れていく。そして、あれほど見たかったご主人さまの顔が、はっきり見えるようになった。そこにあった顔は・・・。
「おにいちゃん?」
「そうだ」
あれ? 今は夢の中? それとも現実なの?
ボクの混乱を見透かしたように、おにいちゃんがボクに話し掛けた。
「夢じゃないよ」
えっと、そうすると夢の中でご主人さまに喜んで貰えるようにご奉仕してたのは夢じゃなくて、つまりボクは現実にご主人さまにご奉仕していたってことで・・・。
えっとえっと、それにおにいちゃんはボクのご主人さまで、ということはボクはおにいちゃんにちゃんとご奉仕できてたってこと?
ぐるぐる回る頭の中とは別に、ボクの心はもうすっかり結論を出していた。
「おにいちゃん、ボク、ちゃんとご奉仕できた?」
「ああ、よくがんばったな」
「嬉しい。ありがとう、おにいちゃん」
そう、ボクはおにいちゃんにご奉仕できたのが嬉しいの。ずっと前からおにいちゃんにご奉仕して喜んでいただくのがボクの望みだったんだから。
ご褒美のように頭を撫で続けているおにいちゃんに抱きつきながら、ボクはいつまでも喜びの余韻に浸っていた。

それからは、それまで以上に幸せな日々だった。相変わらずおにいちゃんと一緒でない時間は全然現実感がなかったけど、おにいちゃんと一緒の時間の密度が違うの。
おにいちゃんはいつでもどこでもボクにご奉仕を命じてくれる。朝でも昼でも、台所でもベランダでも、もちろん夜にベッドの上でも。それはお口でのご奉仕だったり胸だったりオシリだったり、それに、とっても恥ずかしいけどあそこを開いてボクの処女膜を見ていただくことだったり。
二人でお出かけの時も、映画館の中、お化け屋敷、デパートのトイレ、夜の公園・・・。
いつも、どんなときでも、おにいちゃんにご奉仕できるのが幸せ。それはずっと前から決まっていたこと。
当たり前。だっておにいちゃんはボクのご主人さまなんだから。

とうとうおにいちゃんに最後のところでご奉仕できる日がきた。それは、もしかしたら最初にご奉仕するべきところだったかもしれない。でも、おにいちゃんはボクの誕生日まで待っててくれたんだって。えへへぇ~。
誕生日の喜びとボクのバージンをおにいちゃんに捧げられる嬉しさ、二重の喜びではちきれそう。不安もちょっとはあったけど、それ以上に期待が膨らむの。
きょうはおにいちゃんの部屋じゃなくて、ボクの部屋。実はいろんな場所でおにいちゃんにご奉仕したけど、ボクの部屋では初めて。おにいちゃんの心遣いが嬉しい。
見慣れたボクの部屋で、一糸纏わぬ姿でおにいちゃんにご奉仕。お口でご奉仕している間におにいちゃんがボクのオシリを可愛がってくれる。気持ちよくって、もうそれだけでいっちゃいそう。
そして、ついにその瞬間がやってきた。
「いくぞ、まりか」
「はい、おにいちゃん」
熱い。硬い。オシリで慣れているはずなのに、全然違う感じがする。いつもと違うところに感じる圧倒的なおにいちゃんの存在感。
痛かったのかな? ううん、違う。嬉しかったの。これはそういう涙。
ずっと、ずっと、生まれる前から待ち望んでいた。ボクの運命の人。
おにいちゃん。ボクの、大好きなご主人さま。
「おにいちゃん、おにいちゃ~ん」
喜びとともにボクは、初めてなのにエクスタシーの階段を駆け上がって空高く投げ出された。

6.ボクのおにいちゃん

ん? 頭を撫でられている。おにいちゃんだ。薄目を開ける。
「おにいちゃん?」
「ん、ありがとう、まりか」
「え? やだなぁ、どうしたの、改まっちゃって、おにいちゃん」
「まりか。オレのこと好きか?」
「もちろん! 大好き、おにいちゃん」
「そうか」
それから、また頭を撫でられる。いつまでもこうしていたいなぁ。
「そろそろいいだろう、すまなかったな、まりか」
「え?」
「お前の記号は全て元に戻る」
おにいちゃんがそう言ったとたんに、ボクの中の全てが変わってしまった。違う、思い出したんだ。

あの日、おにいちゃんはまたボクにその装置を体験させた。今度のは気分が悪くならなかった。それどころかふわふわして気持ちいい。
おにいちゃんはボクに声をかけた。
「これからまりかの記号はオレの言ったとうりの意味になる。わかるな?」
記号って、言葉とか文字とかだよね。ボクは何を当然と思ったから、素直にうんって返事をした。
それからおにいちゃんはボクの記号に新しい意味をいくつか与えた。
おにいちゃんと一緒の時以外は現実感を感じない。「おにいちゃん」は「まりかの大好きな人」っていう意味。エッチなことをする時は、おにいちゃんが誰だかはっきりわからない。毎朝おにいちゃんを起こすのは大好きな人にフェラチオするってこと。それから、それから・・・。

「わかったか?」
「えっ? なに、おにいちゃん」
「オレはお前にひどいことをした。オレの欲望のままにお前を思うとおりに操っていたんだ。でも、もうこれ以上おまえにひどいことは・・・」
操られていた? ボクが?
そう言われて思い返してみる。でも、何もひどいことはされていないよ。全部ボクが望んだこと、だってあんなに幸せだったんだもん。
運命かどうかは知らないけど、ボクとおにいちゃんがこうして一緒にいることは必然だし。おにいちゃんと一緒にいられないと、ボク、全然幸せになれない。
「もしかして、おにいちゃんボクと別れるの?」
「お前が望めばな」
「いやっ、ボク、おにいちゃんと離れたくない! やっと、やっとおにいちゃんとひとつになれたのに」
「まりか」
「ボク、ずっと、ずっと幸せだったよ。ボク自身が気付かなかった望みもおにいちゃんにかなえてもらったばかりなのに。それなのに、それなのに・・・」
・・・
「いいのか、こんなオレでも」
「おにいちゃんじゃなきゃイヤなのっ」
「すまん」
「謝らないで。それより、ずっと一緒にいて欲しいの」
「まりか」
「おにいちゃんはイヤ? ボクと一緒にいるの」
「・・・お前さえよければ」
「じゃあ決まり。ずっとボクと一緒にいてね、おにいちゃん」
「あ・・・ああ」
「やったぁ。おにいちゃん、ありがとう」
よかったぁ。ホッとしたのと嬉しさで、ギュッておにいちゃんにしがみついちゃった。
ようやく納得してくれたのか、おにいちゃんもボクを抱き返してくれる。
えへへっ、おにいちゃん、だ~い好き。

こうして、晴れてボクとおにいちゃんは恋人同士になれたんだ。もう、それからは幸せいっぱい。
エッチもバリエーションが増えたんだよ。特にときどきおにいちゃんがボクの記号をちょっと変えて混乱させたままするときなんて、後から思い返してもドキドキもの。
でも、それは二人だけの秘密だよ。
「おにいちゃん」
声に出してみる。それは甘い響きをボクに感じさせる。
おにいちゃん。ときどきはボクのご主人さま、そして、
ボクの大好きな、ただひとりの人。

< おわり >

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