盗心器

 私の名前は松戸博士。唯のさえない科学者だ。そう、昨日までは。

 私はようやく完成させた。長年研究を続けていた、その作品を。

 今まで誰にも見向きもされなかった私だが、これでノーベル賞も夢ではない。

「ふふふっ、はーっはははっ」

 う、いかん、これでは唯のマッドサイエンティストだ。

「さっそく実験してみよう」

 私は誰に聞かせるともなく呟いた。一人暮らしが長いせいか、つい独り言を言ってしまう。

 だが、この実験が成功すれば、それから先は一人でいることはなくなる。

 バラ色の未来がすぐそばまで来ている予感に、私の胸は高鳴った。

 私の開発した機械は、特定の電磁波により相手の気持ちをコントロールするというものだ。

 まあ、サブリミナルメッセージのようなものを電波で送りつけるだけのものだが、そう言ってしまうと身もふたもないんで、自分で「盗心器」と名付けた。

 これがなかなか使用条件が難しい。なにせ電波だけにどこでも飛んでいくから不特定多数に影響を及ぼす可能性が高いし、遠ければ効果が薄くなる。

 ちょっと厄介だったが、高指向性で極微弱な電波を発信することにより解決した。まあ、出力はある程度可変だが。

 あと、お得なものとしてロックオン機能を装備している。原理はちょっと明かせないが、思ったとおりに機能すれば大変な威力を発揮するだろう。

 実験対象の選定には結構時間がかかった。

 なにせ誰にも相手されない私のこと、近所で顔見知りの人に頼んだところで断られるのがオチだ。それどころか今まで以上に変な噂が立って、更に住みづらくなるのは想像にかたくない。

「くそっ、みんなで将来のノーベル賞科学者をバカにしやがって」

 つい怒りにまかせて無理解な周囲に対するグチをこぼしてしまう。

 待ってろよ、もう少しだ。

 それからしばらくして、ようやくターゲットが決定した。

 ある日、いつもの習慣で駅で見かけたかわいい女子校生に超小型盗聴器をしかけて会話を楽しんでいたら、どうやら一人暮らしらしいことがわかった。

 目がクリクリと大きく、少しタレ目気味だが愛嬌があり、肩までのショートボブの顔立ちがかわいく、性格も優しげでこちらの頼みをむげに断ることもなさそうだ。

 最初は手ごろなところから実験を開始したい私にとって、願ったりかなったりだ。

 さっそく住所を調べた私は、アンケート調査を装ってチャイムを押した。

 ピンポーン

「はーい」

 とたとたとた。

「どちらさまですか?」

「あ、私ある研究所の研究員なんですけど、今回私が試作しましたある装置につきまして、皆さんの率直なご意見を伺いたいと思いまして、こうして各家庭に聞き取り調査に回っています。もしよろしければ、ご協力いただけると嬉しいんですが」

 すると、しばらく考え込む雰囲気ではあったが、

“普段から優しい比奈子ちゃんならここは親切にするべきです”

 とメッセージを送ったら、あっけなく「どうぞ」と迎え入れてくれた。

 大丈夫か、比奈子ちゃん?あんまり簡単に人を信用すると痛い目にあうよ。

 自分でそう仕向けておきながらツッコミを入れる私であった。

「それで、どのようなものでしょうか?」

「あ、これです」

 私はさっきから手に持っていた「盗心器」を彼女に向けた。

「はあ。それでどんな機能があるんでしょうか」

「実は他人の思考を誘導することができるんです」

 ・・・・・・・・・。

 ああっ、しまった。慣れないもんだから、いきなり墓穴を掘ってしまったぁ。

「どんなふうに使うんでしょうか?」

 おおぉっ、ナイスぼけ。助かった。よし、このまま一気に目的達成だ。

「実はですね、これを目的の人物の方に向けて、私がしているマイクから命令をすると、 その人は必ず従うようになるんです。」

「はあ」

「百聞は一見にしかず、試してみましょう」

 彼女に向けて「盗心器」をセットしてから質問を開始した。

「あなたは川井比奈子さんですね?」

「はい」

 ピピッ。ここで「盗心器」がアラームを出した。ロックオン完了だ。デジタル液晶画面に現在選択中のロックオン対象として比奈子の名前が浮かび上がる。順調だ。

「このお名前で間違いないですね?」

「はい」

「あ、ちょっと機械を調節しますので、しばらくお待ちください」

 そう言って後ろを向いた私は、そのスキに大事なメッセージを送ることにした。

“比奈子ちゃんはこれから私のどんな質問にも正直に答えたくなります”

“質問に正直にこたえるほど嬉しさが募ります”

“そして、その喜びを与えてくれる私に対してどんどん信頼感が芽生えます”

“特に「はい」と答えた時に、その気持ちが強まります”

 さあて、これでどうなるかな?私は内心ほくそえみながら比奈子に向き直った。

「お待たせしました。それでは再開します」

「はい」

「あなたは3年生ですね?」

「はい」

「一人暮らしですね?」

「はい」

「恋人はいませんね?」

「はい」

「今までつきあった男性はいませんね?」

「はい」

 それまで普通に答えていた比奈子だが、少しずつ嬉しそうにしはじめた。よしよし、効いてるぞ。少し踏み込んだ質問をしてみるか。

「あなたはファーストキスを経験していませんね?」

「はい」

「あなたはバージンですね?」

 そう聞いたとたん、驚いたような感じで一瞬固まったようだ。

 しまった、効いていないのか?

 不安な気持ちを押し隠して彼女の顔をうかがうと、少し目をあちこちにさまよわせた後に、真っ赤になって下を向きながら消え入りそうな声で待っていた言葉を答えてくれた。

「・・・はい」

 やった。完全に効いている。私は「盗心器」の成功を確信した。

 きっと内心ではなんでこんな質問に答えなければならないかと疑問に思ったのだろう。だが「盗心器」により心を縛られた比奈子は、疑問の回答を得るよりは私に正直に答えることの喜びの方を選んだのだ。上目遣いにもじもじと私を見返す比奈子の態度に、彼女いない歴生まれてからずっとの私の心は有頂天になった。

 今すぐここで抱きしめてやりたい衝動を抑えつつ、私は質問を再開した。

「あなたはロマンチックな場所でのファーストキスを夢見ていますね?」

「はい」

「ロストバージンはクリスマスイブや自分の誕生日などのメモリアルデーがいいんですね?」

「はい」

 もじもじしながらもはっきりと言い切る比奈子。その表情には嫌悪感など全く見られず、少し恥ずかしそうだが喜びに溢れていた。

 そろそろいいだろう。時計を見ると少々時間が経っている。あまり長居をすると近所に不信がられる怖れがあるからな。

「以上でアンケートは終了です。私がお邪魔してから今までは何も変なことはなかったので疑問に思わないでください。それからこのことは私以外の誰にも話さないでください」

「はい」

「ご協力ありがとうございました。それではこれにて失礼いたします」

「お疲れ様でした。お役に立てて嬉しいです。お気をつけて」

 手作りの名刺を置いてきた私は、心から嬉しそうな笑顔の比奈子に見送られ、実験の大成功に上機嫌で家路についた。

 その日の晩、私は早速ロックオン機能を使ってみる事にした。

 相手の心に直接シンクロする回路で指示を出す。相手はそれを自分自身の考えだと信じて行動するのだ。

 対象者は現在一人しか表示されない。だが今はそれで十分だ。

 比奈子の名前の横に表示されるシンクロメーターの針が二本しか立っていない。少し弱いようだ。私は出力を調整してから「盗心器」を使って比奈子に指示を出した。

“比奈子ちゃんは自分の部屋で一人きりになったら私のところへ電話をする”

“私の声を聞くと嬉しい。そして私の顔を思い浮かべると幸せな気持ちになる”

“その幸せをもっと感じたくて、勇気を出して私をデートに誘う”

“デートを想像するとますます幸せになる。心の中は私で一杯になる”

 指示を出し終えた私は、いつものくせで独り言を言っていた。

「これで完璧だ。ロックオン機能がうまく働いてくれれば、な」

 期待と不安を胸に、電話機を見つめる私。我ながら健気だねぇ。科学者として実験の成否を固唾を飲んで見守っているなんて。えっ、違うって?そんなことはない、はずだが。

 しばらくすると比奈子から電話がかかってきた。よしよし、ロックオン機能もOKだ。

「もしもし、松戸です」

「あ、夜分すみません。私、川井比奈子です。今日お話させていただいた」

「ああ、比奈子ちゃんか。電話してくれて嬉しいよ。でも、急にどうしたの?」

 我ながら白々しい。こうして電話をかけてくるからには用件は決まっているのに。だが、彼女いない歴しか存在しない私には、当然ながらこんな経験ははじめてだ。

 私は努めて冷静に声を出そうとした。しかし、我ながらみっともないくらいに声が震えていた。

 ううっ、いかん。しっかりしろ。こんなことで挫けていたらノーベル賞の星は遠いぞ。

 私の内心の葛藤は、しばらくの沈黙の後に意を決したように話し出した比奈子の声で破られた。

「あの、私・・・あなたともっとお話したくて・・・」

「ああ、それで電話をくれたんだね」

「はい。それで急にこんなことをお願いしてご迷惑でしょうけど・・・明日、私と会っていただけませんか?」

 やった。完璧だ。こんなにうまくいくなんて、やっぱり私は天才だ。ああ、ノーベル賞も近いぞ。

 おっと、嬉しさに舞い上がってる場合じゃない。ちゃんと返事をしなくちゃね。

「えっ、それってデートのお誘い?うれしいなぁ」

「あ、違います。ううん、そうじゃなくて・・・いいんですか?」

「いいよ。そしたらどこへ行こうか?どこか行きたいところある?」

 比奈子は最近始めたという自転車で、近くの海へサイクリングに行きたいということだった。いいねぇ、健康的で。私が自転車を持っていればそうしたかったが、いかんせん、運動オンチの私にはムリだ。いいんだ、科学バカで。

 まあ、そういうわけで無難に遊園地でも行くことにした。自転車がダメなら近所の公園でお散歩でもと比奈子は言ったが、いくらなんでも初デートに公園でお昼寝はないだろう。そうは思いつつ、彼女のとぼけた一面も知ることができて嬉しかった。

 電話を終えてホッとした私は、思わずガッツポーズをしていた。

「よし、明日は初デートだ。生きてて良かった!」

 くうー、研究三昧だったからなぁ。これから一気に埋め合わせをするぞ!

 遊園地は楽しかった。比奈子はあんまり激しい乗り物は好まないようだったので、ゆったりした乗り物に乗ったり、アトラクションを見たりして過ごした。

 最後に夕暮れの観覧車に乗ったとき、なんとなくいい雰囲気になって彼女は目を閉じた。だが、私には別の思惑があったので、その場では抱きしめただけだった。

 帰り道、少し寂しそうにしている彼女に声をかけた。

「今から比奈子ちゃんの家に寄っていい?」

 彼女は驚いたように私を見て、それから嬉しそうな笑顔を見せて言った。

「はい」

 う~ん、かわいいなぁ。この後の私の思惑を考えると少し心が痛んだ。

 しかし、何事も最初が肝心。「盗心器」でどこまで出来るか確認しなければ。

 嬉しそうに私に寄り添いながら歩く彼女を見ながら決意を新たにするのだった。

「お邪魔します」

「どうぞ、おあがりください」

 その言葉に従って、比奈子の後に続いて部屋に入った。かなり少女趣味な部屋だ。パステルカラーで統一された部屋のそこここに、ぬいぐるみが転がっている。たまに何に使うかわからないものも置いてあるが。彼女に尋ねると

「通販で買ったものなんです。ちょっと失敗しちゃったみたい。えへっ」

 との答え。なるほど、通販っていうのは失敗することもあるのか。ひとつ賢くなったな。

 そうこうしているうちに、またしてもいい雰囲気になってきた。私は色んな意味を込めて比奈子に言った。

「シャワー使わせてもらえる?」

「えっ、・・・・・・はい」

 真っ赤になって俯きながら彼女は答えた。そして準備のために慌ててシャワールームに入っていった。

 彼女が戻ってきてからすぐに、私はシャワーに入った。そしてカラスの行水のように慌しく出てきた。心が逸ってゆっくりできなかったからだ。

 入れ違いに彼女がシャワールームに入っていった。恥ずかしそうに私と目をあわせないようにして。う~ん、かわいいなぁ。ういういしいねぇ。

 おっと、見とれている場合じゃない。今だ。私は「盗心器」で指示を出した。

“比奈子ちゃんは私の言葉に従うのが嬉しい”

“私の言葉に従うと幸せを感じる”

“だからもっと私に指示をしてほしくなる”

“どんな指示でも私の言葉なら喜んで実行する”

 さあて、楽しませてもらうとするか。

 それからしばらくして比奈子はシャワーからあがってきた。そして二人で彼女のベッドに腰掛けた。

「いいかい」

「・・・はい」

 それから後は言葉のいらない世界だった。本来は。

 だが、私には別の目的もある。先ほどの指示がどこまで有効か確認しなければ。

「それじゃあ、私のを舐めてくれるかい」

「えっ、何をですか?」

「フェラチオって知らない?」

「はい」

「もしかしてオナニーもしたことない?」

「えっ、あ、・・・はい」

 あらら、また真っ赤になって俯いてるよ。膝の上でもじもじと指を組み合わせたりして。

 なるほど、想像以上に純真無垢というわけか。こんなまっさらな娘を私色に染め上げることが出来るなんて。う~ん、役得役得。ついついニヤケてしまう。

 ここで今回のえっちの方針について、自分で再確認しておく。

 比奈子は全く何の経験もない。ロマンチックな場所でのファーストキスを夢見ていて、ロストバージンはメモリアルデーを望んでいる。彼女の希望を汲んで、今日はキスもロストバージンもなしだ。

 しかし、それでは私自身納まりがつかないから、やることはしっかりやってもらおう。そう、いきなりでは本来やってもらえないことも、今の彼女なら喜んでやってくれるはずだ。

 自分自身を納得させてから、私は比奈子に声をかけた。

「比奈子ちゃんは私の言うことならなんでも聞いてくれるかい?」

「はい」

「どんな恥ずかしいことでも、つらいことでも?」

「・・・はい」

「じゃあ、まず呼び方を決めよう。比奈子ちゃんは私のことを、二人きりの時は『ご主人様』と呼ぶように」

「はい」

「『ご主人様』だ」

「はい、ご主人様」

「私がご主人様ということは、比奈子ちゃんは私の奴隷だよ。奴隷になれて嬉しいかい?」

「はい、ご主人様、比奈子は嬉しいです」

 そう言って本当に嬉しそうに微笑む比奈子。

 こんなにうまくいくなんて、感激だ。頭に血が昇り過ぎてくらくらする。しっかりしろ。お楽しみはこれからじゃないか。頑張れ自分。

 気を取り直して、私は比奈子とのえっちを楽しむことに集中した。

「比奈子、ペニスはわかるか?」

「はい、ご主人様」

「ペニスを舐めたり、口の中に入れて愛撫したりして奉仕することがフェラチオだ」

「はい、ご主人様」

「それではやってみなさい」

「はい、ご主人様。ご奉仕いたします」

 そう言って比奈子はたどたどしいながら心を込めて私のペニスに奉仕を始めた。私は手の使い方、舌使い、スロートの仕方を指示しながら、彼女の熱心な奉仕を楽しんだ。

 こんな美少女に私のペニスを咥えさせているなんて、本当に夢のようだ。ショートボブの髪が私の腹や睾丸にこすれるたび、ぞくぞくするような快感が背骨を駆け抜ける。

 そのうちだんだん限界が近づいてきた。

 私だけが気持ちよくなっては、必死に奉仕してくれた比奈子に申し訳ないかな。

 そう思った私は比奈子に新たな指示を与えた。

「比奈子、私のペニスに奉仕できて嬉しいか?」

「ふぁひ、ごひゅひんはま」

「ムリに話さなくてもいいから。そのまま奉仕を続けながら聞きなさい。わかったら私の手を握りなさい」

 そう指示すると、小さな右手で私の左手を握り返してきた。

「お前は私に奉仕できて嬉しい。私が気持ちよくなることがお前の喜びだからだ。

 私がお前の奉仕で最高に気持ちよくなったら射精する。その時、おまえも最高の喜びを感じる。その喜びは快感だ。

 お前は私の射精を喉や口に感じ、それを飲み干すときに最高の快感を感じる。そして飲みながら快感の中でイッてしまう。わかるな?」

 またしても彼女が握り返してきた。その目は奉仕の喜びと快感への期待でうるんでいる。それを見て、私にも急速に限界が訪れた。

「よ、よし、イクぞ!全て飲み込め、比奈子」

 その瞬間、私はしびれるような快感の中で比奈子の喉の奥に射精した。ファーストキスもまだの無垢な彼女の口を、私の精液が汚していく。

 彼女は驚いたようだったがすぐに初めての口内射精をしっかり受け止めた。そしてちょっと不思議そうな顔をして、とまどいながらもゆっくりと飲み込んでゆく。その瞬間私の指示どおり初めてのエクスタシーに昇っていった。しかし何もかも初体験の彼女のこと、きっと何が起こったのか全く理解できていないだろう。

 しばらく二人で幸せな余韻に浸った後、私は彼女に話しかけた。

「気持ちよかったか、比奈子?」

 そう言われてはじめてさっきの状態が快感だったとわかった比奈子。しばらく自分に言い聞かせるように私の言葉をかみしめてから、恥ずかしそうにゆっくり返事をした。

「・・・はい、ご主人様」

「さ、奴隷の務めだ。私のペニスをお前の口できれいにしなさい」

「はい、ご主人様」

 すっかり奉仕の喜びに目覚めたのか、嬉しそうな表情で熱心に奉仕を開始する比奈子。その姿を見ているうちに、またしても力が漲ってくるのを私は感じていた。

 さて、今度はホンバンだ。だが今回のえっちの方針のこともある。そう、ロストバージンはしないというやつだ。だから別の方法が必要となる。

 とはいえ、既にどうするかは決めている。そう、比奈子のアナルを使うのだ。ロストバージンは彼女の希望どおりにする代わりに、アナルバージンをいただく。ちゃんと夢も希望も残しておくなんて、私はなんて優しいご主人様だろう。ちょっと違うかな?

「比奈子、今度はホンバンで私を楽しませなさい」

「はい、ご主人様」

「だが、私はお前の希望を以前に確認している。ロストバージンはメモリアルデーにというやつだ。そうだな?」

「はい、ご主人様」

「私はそれを尊重する。嬉しいか?」

「はい、ご主人様。ですが比奈子はご主人様の奴隷です。いつ私を使っていただいてもかまいません。よろしかったら今からでも」

 嬉しいことを言ってくれる。だがこれは少し問題もあるな。私はそれを指摘した。

「まあ待て。これは私が決めたことだ。それともお前は私の決定に不服があるか?」

「あっ。いいえ、ご主人様。申し訳ありませんでした」

 慌てて謝る比奈子。すっかり私に従順になっている。いい気分だ。

「よし。それではよく聞け。私は今からお前のアヌスを使ってアナルセックスをする。わかるか?」

「いいえ、ご主人様。私にはわかりません」

 やっぱりそうか。本当に何も知らないんだなぁ。きょとんとしているよ。嬉しくなってしまう。よしよし、まずは若葉マークのお嬢様にレクチャーからだ。

「そうか。アヌス、アナルとはお尻のことだ。これならわかるか?」

「はい、ご主人様」

「よし。それでは準備に移る。ローションか何かあるか?」

「はい、ご主人様。すぐに用意いたします」

 そう言ってどこからか縦長の小さなビンを持ってきた。

 これがローションか。初めて見るなぁ。これでいいんだろうか?まあ大丈夫だろう、本人が持ってきたのだから。

「よし、ベッドに上半身を預けてお尻を突き出しなさい」

「はい、ご主人様」

「お尻を自分の手で開きなさい」

「はい、ご主人様」

 私は目の前に展開された光景に興奮を隠せなかった。

 もっとも秘めやかな割れ目から慎ましやかなアヌスまで、自分の意思で曝している比奈子。その割れ目はさっきのエクスタシーの余韻で蜜をしたたらせている。私は息を飲んだ。

 しかし、今回の目標はそこではない。私はなけなしの自制心を総動員して割れ目から目をそらし、ローションを手にとってアヌスに塗りこめていった。

「力を抜きなさい。何も怖いことはないから」

「はい、ご主人様」

 そう言って私に身をまかせる比奈子。十分ほぐした後でつぷっと指を入れてみる。

「あっ」

 びっくりして身をよじる比奈子。その顔にはなんでこんな場所をというような不信の色があるようだ。いけない。すぐに対策を講じなければ。

「大丈夫、私にまかせなさい」

「はい、ご主人様」

「比奈子は私のものだから、私にされる何もかもが嬉しいね?」

「はい、ご主人様」

「嬉しいと気持ちいいだろう、私に触られると快感だね?」

「はい、ご主人様」

「ほら、こうやって指を抜き差しするとどんな感じだい?」

「ああっ、気持ちいいです、ご主人様」

「よしよし、比奈子はアヌスで感じる女の子だね?」

「はい、比奈子はアヌスで感じています、ご主人様」

 比奈子のアヌスはずいぶん柔らかくなってきた。そろそろいいだろう。

「それじゃあ比奈子のアナルバージンを貰うよ。嬉しいかい?」

「はい、嬉しいです、ご主人様」

 その言葉を聞いて、私はペニスを彼女のアヌスにあてがった。そして慎重に腰を送り出していく。比奈子はどうしていいかわからないといった風情だったが、従順に力を抜いて私の侵攻に耐えている。ローションの助けを借りて、ついに彼女のアヌスを征服した。

「ああぁっ」

 比奈子は大きな声をあげた。初めての異物感にとまどいが隠せないのかもしれない。それはそうだろう、今の今までそんな行為があることも知らなかった彼女なんだから。

 私はここぞとばかりに彼女に指示を与え、目くるめく官能の嵐を呼び覚ますことにした。

「比奈子は私を迎え入れることができて嬉しい」

「はい、比奈子はご主人様を迎え入れることができて嬉しいです」

「比奈子はフェラチオの時のように私を喜ばすことができて気持ちいい」

「はい、比奈子はご主人様を喜ばすことができて気持ちいいです」

「私の快感はお前の快感だ。お前はアナルで快感を感じ、私の射精とともにイッてしまう」

「ああぁっ、いいです、気持ちいいです、ご主人様ぁ。もっともっと、比奈子を使って気持ちよくなってくださいぃ」

 よし、うまくいった。私は初めてのセックス、それもアナルセックスをしているということに感激し、彼女とともにエクスタシーに向けて駆け上っていった。

「イクぞ、比奈子。たっぷりと受け取れ」

「ああぁっ、ご主人様ぁ。来て、来てください。比奈子もイク、イキます、イっちゃう、イク~!」

「うおおぉぉ~っ!」

「ああぁぁぁ~っ!」

 頭の中が真っ白に爆発したような凄まじい快感の中で、私と比奈子は同時にエクスタシーに達していた。

 ・・・・・・・・・。

 しばらく気絶していたのかもしれない。とにかく気持ちが良かった。気だるさの中でまどろんでいると、私の体の下でぐったりとなっていた比奈子が身じろぎした。

「気持ちよかったか、比奈子?」

 そう尋ねると、やっぱり恥ずかしそうに返事をした。

「・・・はい、ご主人様」

 そう答えて、私の体の下から抜け出す比奈子。

「ん、どうした?」

「後始末をいたします、ご主人様」

 そう言ってけなげに奉仕する比奈子を見ていると、またしても力が漲ってしまう。

 う~ん、猿か、私は。でも気持ちいいからいいか。

 そうしてまたしても比奈子に挑みかかっていく私だった。

 次の日は満ち足りた気分で目が覚めた。私の隣には、あんなに大変だったにもかかわらず幸せそうな顔で眠っている比奈子がいた。本当に安心しきっているようだ。

 その姿を眺めているうちに、私の中心にまた熱気が渦巻いてくるのを感じた。

 そっと彼女のお尻を撫で回し、そのすべすべした感触を楽しむ。それから柔らかな彼女の乳房をふにふにと揉んでみる。

「ん、あん」

 眠っていても感じるようだ。面白くなった私はさらにむにむにと揉みしだく。

「ああん、あっ」

 突然目を覚ました。まあ、あれだけやれば当然か。

 目覚めてから恥ずかしそうに、しかし気持ちよさそうに身を任せている比奈子に、私は声をかけた。

「おはよう、比奈子」

「あ、おはようございます、ご主人様」

 よしよし、洗脳は完璧だ。ここまでうまくいくとは望外だ。

 その喜びに、さらに体の中心に力が漲るのを感じた。

 それから比奈子はベッドから降りて私の足元に跪いた。自分がどんな身分で、どうすればいいかをしっかり把握しているようだ。

「さ、それでは朝の挨拶をしなさい」

「はい、ご主人様。それではどのようにすればよろしいでしょうか」

「うむ。ではまずフェラチオ奉仕から始めなさい」

「はい。ご奉仕させていただきます、ご主人様」

 一晩ですっかり上達した彼女のフェラチオに身を委ねながら私は考えた。

 やっぱりこいつは発表できないな。こんなおいしい話を他人にも与えるなんて真っ平だ。残念だがノーベル賞はあきらめよう。

 そう、もはやノーベル賞などどうでもいい。この装置を使えば気に入った女の子を誰でも自由にできるじゃないか。

 バラ色の未来を想像しながら、私は今日はじめての射精を比奈子の喉の奥に発射した。彼女もまた、嬉しそうに喉を鳴らして飲み込みながらエクスタシーに達していた。

 こうして私はノーベル賞をあきらめた。しかし、充実した毎日を送っている。

 これからも更に充実させていきたいものだ。

「ふふふっ、はーっはははっ」

 だから、それじゃあ唯のマッドサイエンティストだってば。まあ、もはや否定はできないけど。

< 盗心器2へ続く >

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