桜の園 第四話 桜花繚乱

第四話 桜花繚乱

 次第に赤く染められてゆく空を背景に、美しい女子大生――香織、が淫靡なオブジェを形作っていた。夕陽に照らし出された眩いばかりの白い肢体は惜し気もなくTの字形に開かれ、何ら隠すことなく総てを曝(さら)け出している。

 ヒロシはビデオカメラを構え、その姿をあらゆる角度からくまなく撮影した。

 充分に撮影したところでビデオカメラを回すのをやめたヒロシは香織に命令した。

「よし、もう脚を閉じて立っていいぞ」

「はい、御主人様」

 ヒロシは立ち上がった香織の首筋から背中にかけての汚れを手早く拭き取ってやった。投げ捨ててあった濃紺のシャツとブルージーンズ、そして靴を拾いあげて与え、着るように命令する。香織は下着のない素肌の上に直接着始めた。

 香織が服を着ている間に、ヒロシは彼女のバッグからボールペンとレポート用紙を取り出し、買い出しの品々を書き付けていった。

「香織、このメモに書かれている物を買ってこい。全部一つ残らずだ」

 ヒロシは服を着終わった香織にメモと戝布を手渡した。

「はい、御主人様。メモに書かれている物を全部一つ残らず買ってきます」

「出来る限り早く戻ってこい」

「はい、御主人様。出来る限り早く戻ってきます」

「よし、行け!」

 ヒロシの号令に香織は弾かれるように駆け出して行った。

 夕陽を浴びた香織の背中が雑木林の向こう側に消えるまで見送ったヒロシは、荷物の中から食料をはじめ当面必要になる物を選り分け始めた。

 荷物を担いだヒロシが桜の巨木の元に戻ったとき、薄暗がりの中で涼子はまだ祈り続けていた。

「どうか私をお守り下さい。守っていただけたらなんでもします。どうか私をお守り下さい。守っていただけたらなんでもします。どうか私をお守り下さい。守っていただけたらなんでもします……」

 お守り代わりに与えた安物のライターをしっかりと胸にかき抱き、硬く目を閉じ、か細い声を震わせながら念じている。必死に唱えているせいか、近づいてきたヒロシの気配に気づいていないようだった。

「もう大丈夫だよ」

 横に立って肩を軽く叩いてやると、涼子はびくっと体を震わせた。祈るのをやめヒロシの姿を確認すると、安堵のため息をついて全身の力を抜いた。

「狼は来たかい?」

「いいえ、来ませんでした」

 ヒロシは肩に担いでいたバッグとたたんで丸めたレモンイエローのシートを地面に降すと、涼子の隣に腰かけた。

「そのお守りの力はすごいだろう」

「はい、お陰で助かりました」

 涼子は微笑んだが、その顔には疲労の色を浮かべていた。長時間に渡って唱え続けていたためか声が少し嗄れている。

「喉が渇いているみたいだね。ちょっと待ってな」

 ヒロシはバッグの中を漁って缶ジュースを取り出した。

「ほら、飲ませてあげるね」

「あ……いいです。自分で飲めますから」

 涼子は缶ジュースを受け取ろうとして両手を差し出した。

「ダメ! 疲れているんだろ? だから僕が飲ませて上げるよ」

「でも……」

 拒む涼子の目の前でヒロシは指を鳴らした。とたんに涼子は両手を差し出したまま凍りついた。

 ヒロシは涼子の霞んだ顔に向かって語りかけた。

「涼子、君は僕の親切を拒めない」

「はい、御主人様。私は御主人様の親切を拒めません」

「そして僕に親切にされる度に僕を好きになってゆく」

「はい、御主人様。私は御主人様に親切にされる度に御主人様を好きになってゆきます」

「君は僕に嫌われたくない」

「はい、御主人様。私は御主人様に嫌われたくありません」

「そして、君は僕の指示に従わなくてはならない」

「はい、御主人様。私は御主人様の指示には従わなくてはなりません」

 ヒロシは満足の笑みを浮かべると再び指を鳴らした。

「ほら、飲ませてあげるから手を退けて」

「あの……はい……」

 暗示の力には逆らえず、涼子は両手を膝の上に降した。

 ヒロシは左手で涼子の背中を支え、右手に持った缶ジュースを赤い唇に近づけていった。

「ほら、口を開けて」

「はい……」

 飲み口を唇に当ててやり、缶をそっと傾けた。涼子は眼を閉じ、白い喉をこくこくと動かしながら注がれたジュースを飲み下してゆく。

「美味しい?」

 ジュースを飲み続けている涼子は返事をする代わりに小さく頭を上下させた。その姿が幼い少女のようでなんとも可愛らしい。

 中味を全部飲ませて缶を遠ざけた。

「ずいぶんと喉が渇いていたみたいだね」

 ヒロシが顔を覗き込んでにっこり微笑むと、涼子ははっとして顔を背けて俯いてしまった。その頬がほんのりと赤く染まっている。親切にされる度にヒロシを好きになる、という暗示がさっそく効き目を現したのだった。

「どうしたの?」

 ヒロシはわざと顔を近づけてみた。

「な、何でもありません……」

「そうかなあ、ずいぶんと顔が赤いけど……風邪でもひいたのかな?」

 ヒロシは涼子の前髮を掻き上げ、その額に掌を当てた。もうそれだけでぎくりと身を固くするのがなんとも初々しい。

「熱はないみたいだけど……これじゃあよく分からないなあ」

 そう呟くと、ヒロシは両手で涼子の両肩を掴んで引き寄せながら自分の頭をそっと突き出し、額と額を重ね合わせた。

「あっ……」

「動かないで」

 乙女の温もりを額に感じながら目の前の顔を見ると、涼子は恥じらいの色を浮かべながら閉じた長い睫毛をふるふると震わせていた。その可憐な表情にヒロシは見とれてしまった。胸の奥から甘酸っぱい感情が込み上げてきて心臟が高鳴ってしまう。まるで初恋の時のような甘く焦れったくなるような感覚にヒロシは痺れてしまった。

 ヒロシは思わずキスをしたくなる気持ちをぐっと抑えて額を離した。

「どうやら風邪はひいていないみたいだね」

「ええ……あの……ありがとうございます」

「お礼なんかいいよ。ところでお腹は減ってない?」

「ええ……少し」

「ちょっと待っていて」

 ヒロシはバッグの中を探ると、菓子パンを一個取り出してその袋を破った。

「さあ、食べさせてあげるからお口を開いて」

「でも……」

「はい、あーんして」

 言われた涼子はおずおずと唇を開いた。赤い唇の間に子栗鼠のような真珠色の前歯を覗かせている。ヒロシはパンを小さく千切ると、指先で摘まみ涼子の可愛らしい舌先に乗せてあげた。

「よく噛んで食べるんだよ」

「はい」

 先生に注意された小学生のように涼子は丹念に咀嚼して飲み込んだ。

「美味しい?」

「はい」

「じゃあ、もうひとつね」

 ヒロシは餌付けした雛にでもするように何度も千切ったパンを運んでいった。

 涼子はかなり空腹だったのだろう、すぐにヒロシが持っていたパンはなくなってしまった。

「美味しかった?」

「はい」

「ずいぶん慌てて食べたんだな。ほら、クリームが付いているよ」

 唇の端に付いていた白いクリームを指先で拭ってあげると、涼子は顔を赤らめながらもされるがままになっていた。ヒロシが拭ったクリームの付いた指先を舐めて微笑むと、涼子はますます顔を赤くする。

「そういえば、まだ君の名前を聞いていなかったね」

「あ……あの……高樹……高樹涼子です……」

「涼子ちゃんか……いい名前だね。歳はいくつ?」

「あの……十九です」

「じゃあ、大学生?」

「はい、今年一年です」

「涼子ちゃんはつき合っている人はいるの?」

「いいえ、そんな人いません……」

「じゃあ、好きな人はいないの?」

「それは……」

 涼子は口ごもった。好きな人は目の前にいるのだ。しかし、それを口にするのは恥ずかしくてたまらないようだった。

「いるんだね? 好きな人が」

 涼子はヒロシと眼を合そうともせず、俯いたままこくりと頷いた。

「そうか、好きな人がいるのか……でも、涼子ちゃんが誰か他の人のことが好きでも」

 一度言葉を区切るとヒロシは精いっぱいの笑顔を浮かべた。

「僕は君のことが大好きだよ」

 歯の浮くような台詞だったが、それを聞いた涼子は見ていて可笑しいくらいに狼狽した。額にうっすらと汗を浮かべ、何度も瞬きしながら唇を震わせる。その頬は火の点いたように真っ赤になっていた。

「でも好きな人が他にいるんじゃしょうがないなあ。僕は潔く諦めるよ」

「あの……違うんです。私の好きな人は……」

「好きな人は?」

 知っていてわざとらしく聞き返す。涼子は何度も何かを言いかけては躊躇(ためら)った。

「どうしたの? 言いたいことがあったら言ったほうがいいんじゃないかな。でないときっと後悔すると思うよ」

 涼子は俯いて唇を噛みしめて押し黙った。時々、形の良い眉を歪ませている。初対面の男性に自分の恋心を打ち明けてしまっていいものか迷っているようだった。

「勇気を出して言ってごらん」

 促された涼子は意を決したように顔を上げた。今にも泣きだしそうな顔をして懸命に言葉を紡ぎ出そうとする。

「あ……あの……私……」

 ヒロシは優しく頷いて涼子を促した。

「私……私の好きなのは……」

 涼子はすがりつくような眼差しをヒロシに向け、赤い唇を震わせた。

「私の好きなのは……あなたです!」

 魂まで吐き出すかのように言い切ると、涼子は両手で顔を覆って横を向いてしまった。小さな肩を震わせてすすり泣いている。自ら告白するという行為が相当恥ずかしかったからなのだろう、長い髮の間から覗く耳まで赤く染めていた。

「じゃあ、二人は両想いだったんだね」

 震える肩をヒロシが優しく撫でてやると、涼子は泣きながら小さく頷いた。

「さ、こっちを向いて」

 ヒロシは両手で涼子の肩を支えて自分に向かせた。

「涼子、泣いてる君より笑っている君の方が僕は好きだよ」

 涼子は顔を覆っていた両手を降した。しゃくりあげながらも一生懸命に笑顔を作ろうとするのがいじらしい。

「涼子、好きだよ」

 ヒロシは涼子の肩を抱しめると、ふいに唇を重ねていった。

「む……」

 突然の行為に涼子は抗う隙もなく唇を奪われてしまった。慌てて両腕を突っ張り抵抗しようとしたが、ヒロシに優しく唇を吸われ続けているうちにその抵抗も次第に弱まってゆく。

 ヒロシは乙女の切ない息づかいを感じながら唇を吸い続けた。あくまでも優しく柔らかく、しかし、丹念かつ入念に。

 舌先で閉じた前歯をこじ開けさらに奧へ進めても、涼子は僅かに抵抗しただけでおずおずと受け入れた。

 口蓋の奧で脅えるようにおののく可憐な舌を絡め取る。ねっとりと吸い上げた時、涼子の指からライターが滑り落ち下草の上に転がった。

 ヒロシは乙女の唇と柔らかな舌を心ゆくまで味わってから、やっと解放した。唇を離すと涼子は放心したように座りこんだ。肩を上下させながら速い呼吸を繰り返している。頬をほんのりと赤く染め、睫毛を軽く閉じて視線を傍らに落としている姿はなかなか艶(あで)やかに見えた。

「ちょっと待っててね」

 そう言うとヒロシはレモンイエローのシートを涼子の横に敷き始めた。皺の残らないように丁寧に広げ、四方の隅に重し代わりの小石を置く。

「あの……何をしているんですか?」

 その様子を見ていた涼子が不思議そうに訪ねた。

「今に分かるから待ってて」

 シートを敷き終わったヒロシは辺りを歩き回り、桜の木々の中から低い枝を探し出した。見事に花を散りばめている枝に手をかけ根元からへし折る。

「あっ……」

 枝が折れた瞬間、涼子は自分の腕が折られたかのように身をすくめた。

「どうしたの?」

「あの……なんだか……可哀想で……」

「可哀想って、桜の木が?」

 涼子はこくりと頷いた。

「涼子はロマンチストなんだなあ。まあ、そういうところが可愛くて好きなんだけどね」

 気障(きざ)な台詞に涼子ははにかんで眼を伏せた。そんな初心(うぶ)な反応を微笑ましく眺めながら、ヒロシは桜の枝を折る作業を続けた。

 やがて満開の花を貯えた数本の枝を両腕で抱えたヒロシが涼子の元に戻ってきた。

 ヒロシは一本の枝だけを残して地面に置き、その一本の枝をざわざわと振り、シートの上にピンクの花びらをまんべんなく散らしていった。

「ほら、こうすると綺麗だろう」

「え……ええ」

 涼子は何が起こるのか分からないまま曖昧に頷いた。

 さらに二本分の花びらを撒き散らせると、レモンイエローのシートは薄桃色の小さな花びらを敷き詰めた綺麗な花筵(はなむしろ)になっていた。

「さあ、涼子はこの上に座って」

 涼子を抱きかかえてシートの上に座らせると、ヒロシは彼女の頭上で桜の枝を振った。はらはらと舞い散った桜の花びらが涼子の頭と言わず肩と言わず全身に降り注ぐ。

「あっ……」

 降り注ぐ花びらのあまりの量に涼子は頭に両手を当てて身をすくめた。

「ほら、手を退けて」

 言われた通りに手を退けた頭の上にも花びらを舞い散らせる。

 枝を振る手を休めて涼子を見たヒロシは感嘆のため息をもらした。

 満身に薄桃色の花びらをまとい花筵の上に横坐る涼子の姿は、さながら花畑に棲む妖精のようだった。辺りはすでに陽が陰っていたが、薄暗がりの中に薄紅色のフェアリーの姿を目にも鮮やかに浮きあがらせている。

「綺麗だ……」

 ヒロシは本心からそう思った。

 長く艷やかな黒髮の上に散った花びらが、薄桃色のベールをまとっているかのような錯覚を起こさせた。涼子の服装が白づくめなので、ピンクの花びらの刺繍をほどこしたウェディングドレス姿の花嫁のようにも見える。

 自分の行為が思いがけない効果をあげたことに嬉しくなったヒロシは、涼子の座っているシートの周りを囲うように、まだ花びらの残っている枝を丹念に敷き詰め始めた。

「あの……なにをなさっているんですか?」

「床を作っているのさ」

「床……?」

「そう、初夜の床」

 初夜と聞いて涼子は目を見開いた。

「い、嫌っ!」

 自分を抱え込むように両腕を肩に回すと、にじり下がる。

「どうして? 僕逹はキスまでした仲じゃないか」

「で……でも……」

 ヒロシは涼子の前で片膝をつき顔を覗き込んだ。

「それに好き合った男女が一緒に寝るのはあたりまえじゃない」

「でも……でも……知り合ったばかりで……」

「知り合ったばかりじゃ寝てはいけないのかい?」

 ヒロシの問いかけに涼子は答えず、嫌々するように頭を振るばかりだった。

 命令すれば事は簡単だが、ヒロシはそうはしたくなかった。どうしても涼子の口からうんと言わせたかったのだ。

 ヒロシは辺りを捜し、落ちていたライターを拾い上げ、涼子の目の前に差し出した。

「涼子はさっきこのお守りに何てお願いしたのかな?」

「あの……どうか私をお守り下さい。守っていただけたらなんでもします……です」

「じゃあ、その言葉は嘘だったんだね?」

「う、嘘なんかじゃありません……」

「でも、なんでもするって言ってたくせにさせてくれないじゃないか」

「それは……」

 好きだとはいえ処女の身で見知らぬ男に抱かれるという抵抗感に涼子は口ごもった。

「僕は嘘をつく娘は嫌いだな」

 御主人様に嫌われたくないという暗示を与えてあった涼子は、その言葉にぴくりと身を震わせた。

「僕に嫌われたくないだろう?」

 その言葉がとどめだった。暗示に抗しきれない涼子は泣きそうになりながら唇を開き、絞り出すように返事をした。

「は……はい……」

「じゃあ、抱いてもいいんだね?」

 ヒロシの問いに涼子は涙を浮かべながら小さく頷いた。お嬢様育ちで異性と交際経験のない彼女にとって、それが精いっぱいの意思表示のようだった。

「ありがとう」

 ヒロシは笑顏で言うと紳士が淑女(レディ)にするように右手を差し出し、涼子の左手に添えた。そうしてその手をそっと引いて立ち上がらせる。

「脱がしてあげるね」

 ヒロシが白いブラウスの第一ボタンに手を伸ばすと、涼子は胸を両腕で覆い隠してしまった。

「どうしたの? まさか服を着たままするつもりじゃないだろう?」

 その言葉に涼子は力なく両腕を垂らした。

 邪魔するものがなくなったブラウスの上にヒロシが両手を這わせボタンを外しているあいだ、涼子は顔を背けて羞恥に耐えていた。

 ヒロシは白いプリーツスカートの中からブラウスの端を引っぱり出し、下までボタンを外した。ブラウスの前を左右にくつろげるとミルク色の肌と目に染みるように眩しい白いブラジャーが現われた。前に揉んでいて分かっていたことだが、涼子の乳房はスレンダーな体つきに似合わず結構な大きさだった。

「そのまま動かないでいてね」

 ヒロシは涼子の脇にかがみ込み、プリーツスカートのホックとボタンを外してゆく。

「あ……」

 涼子は恥ずかしげに身悶えた。しかし、その動きは作業の妨げになるほど大きなものではなく、小さく僅かに腰を捩る程度だった。

 ホックを外し終わったヒロシが手を離すと、プリーツスカートは涼子の腰から滑り落ち、シートの上にふわりと白い輪をつくった。

「あっ……」

 涼子は羞恥の悲鳴を洩らすと、胸を両腕で覆いながら太腿を捩り合わせた。今や彼女が身につけているものといえば腰を覆う小さな純白のショーツと靴だけとなった。

 どこかでこんな絵を見たような気がする、とヒロシは思った。それはイタリアの画家ボッティチェリの「ビーナスの誕生」だった。あれは確か海を舞台にしていて、ビーナスの足元にあるのは大きな貝殼だったような気がする。涼子は足元に落ちたプリーツスカートが形作った大きな白い薔薇の中心に立っている。絵とポーズも違うが、その清楚な半裸の姿は名画のビーナスに負けず劣らず美しい。

「後ろを向いてごらん」

 おずおずと背を向けた涼子の長い黒髮を掻き上げてやり、ブラジャーのホックを外しやすいように、白い肩越しに胸の方に垂らしてあげた。

 ブラジャーのホックを外しているあいだ、涼子は胸の前で両腕を交差させたまま背を曲げて俯いていた。

 ホックを外し終わったヒロシは髮を元に戻してあげると、涼子にこちらを向くように指示した。

「ほら、背筋を伸ばして、両手を降してごらん」

 言われるまま涼子は背を伸ばし、そろそろと両腕を降した。その動きに連れブラジャーが力なくずり下ってゆく。

「はい、そこでストップ! そのまま動かないで」

 お腹の辺りまで腕を降したところで動作を止めさせた。ブラジャーはカップの端が乳房の上部に頼りなく引っかかっているだけになっている。ヒロシは白い両肩のストラップを摘まみ、しなやかな両腕からブラジャーを抜き取った。

「あっ……」

 涼子は思わず裸の胸を覆うとしたが、ヒロシはそれを止めた。

「動かないで。そのまま両手を両脇に垂らしてごらん」

 羞恥と戦いながら言われたポーズを取った涼子は唇を固く結び、目を閉じた。

 ヒロシの眼の前にあられもなく剥き出しにされた乳房は、形といい大きさといい実に美しかった。その男心をくすぐる量感を持った膨らみの上に、絶妙なバランスで薄紅色の乳暈に縁どられた乳首が可愛らしく息づいている。

「さあ、ここに寝て」

 そう言うとヒロシは両手で掴んだ涼子の腕を引き下げ、シートの上に誘(いざな)った。

 ぎこちない動作でシートの上に腰を降した涼子は、恥ずかしげに太腿をすり合わせながら、両の掌で乳房を包み隠して背を横たえた。

「せっかく脱がしてあげたのに、隠しちゃだめだ」

 プリーツスカートを横に除けたヒロシは、乳房を隠す涼子の細い手首を掴んだ。

「ほら、その手を退けて」

 優しく諭すような口調だったが、掴んだ手首を引く手には思わず力が入ってしまう。

「あ……」

 ヒロシは乳房から引きはがした手を涼子の耳の脇あたりまで押しやった。

「あっ……いやっ」

 乳房を曝された恥ずかしさに、涼子は拘束された手を振りほどこうと身悶えした。

「そのまま動かないでね。動くと嫌いになっちゃうよ」

 そう念を押すと、暗示の通りに涼子はもがくのをやめた。両手を頭の横に置いたまま、顔を横に向け目を硬くつぶったまま、あまりの恥ずかしさにすすり泣く。

 ヒロシは涼子がおとなしくなったのを確認して、押さえていた手首を解放した。体を起こし、目の前に横たわっている涼子を上からしげしげと眺めてみた。

 涼子は香織の健康美に満ちあふれ引き締まった身躰に比べると柔らかく円(まろ)やかな感じがする体つきだった。

 爪先から膨ら脛へと続く脚がしなやかに伸びている。捩り合わせた太腿から腰にかけてのなめらかな曲線は実に魅惑的だ。柔らかそうなお腹に小さな縦長のお臍が可愛らしいアクセントを添えている。そして魅力的な膨らみを持った乳房が呼吸に合わせて恥ずかしそうに上下していた。仰向けになっているため僅かに扁平になってはいたが、それは見事な半円球の形状を保っていた。

 ヒロシは両手を伸ばすと、掌で下からすくい上げるように乳房を覆った。

「ん……」

 恥ずかしげに顔を仰け反らせた涼子の表情を眺めながら、ゆっくりと揉みあげてゆく。

 涼子の乳房は掌に吸いつくように滑かな肌触りをしていた。軽く力を入れただけで指先がどこまでも沈んで行くような柔らかさと、奧底から押し返してくるような弾力がある。

「あ……あ……あん……」

 乳房を揉む度に、涼子は頤を仰け反らせたまま、恥じらいながら呻き声を洩らし続ける。

 ヒロシは乳房を揉み続けながら、涼子の上に覆いかぶさった。そのまま向かって右の乳房の頂点に顔を近づけ、唇の上下で小さな乳首を挾み込む。

「うっ……」

 動くなと言われていた涼子は逃げることもできずに、頤を仰け反らせたまま呻くばかりだった。

 ヒロシは顎を突き出し、捕らえた乳首を唇の奧に包み込み、ゆっくりと吸い始めた。

「あんっ……」

 舌先で乳首の先端をそっと舐めあげると、涼子は上体を震わせながら細い喉首を曝した。

 ヒロシは乳首を吸い取りながら、舌で乳暈の細かくなめらかな凹凸を舐めあげた。たまに軽く歯をたてて乳首を甘噛みすると、涼子は硬直させた身を震わせる。

「うっ……あっ……ああ……」

 ヒロシが刺激を与える度に、涼子は切ない吐息を洩らしながらなよなよと頭を振り、腰を捩り続けた。そのうちに乳首は次第に尖り、ヒロシの唇の中で柔らかく膨らみ始めた。

 柔らかく甘い乳首の舌触りにヒロシは夢中になっていた。最初は優しかった乳房の扱いも、次第に強く荒々しいものに変わってゆく。乳首の根元に舌を押し当て、根こそぎ押し倒すかのように舐めあげ、乳房ごと吸い取るような勢いで乳首を吸い上げる。

「んっ……い、痛いっ! も、もうやめて!」

 助けを求めるような涼子の悲鳴は、乳房に心を奪われているヒロシの耳には入ってはいなかった。

 右の乳房に飽きると、今度は左の乳房にむしゃぶりついた。同じように激しく吸い、強引に舐める。

 両方の乳房の味をたっぷりと堪能して、ヒロシはやっと口を離した。

 涼子は荒い息をしながらぐったりとなっていた。赤味のさした頬に涙がひとすじ流れている。

「ごめんね。あんまり美味しいオッパイなんでつい夢中になっちゃった。次は優しくするから」

 そう言うとヒロシは涼子の腰を覆う純白のショーツの上端に両手をかけた。

「あっ! だ、だめっ!」

 涼子はせっぱ詰まった悲鳴をあげて、太腿を捩り合わせた。

 ヒロシはショーツをさっと剥き降したが、お尻の下で引っかかってしまった。それ以上は引っ張ってもショーツが伸びるだけで、どうしても進まない。

「ほら、お尻を上げてごらん。上げない娘は僕は嫌いだな」

「ああっ……いやっ!」

 涼子は抵抗の悲鳴をあげながら、暗示には逆らえず小さくブリッジするように腰を浮かせた。その隙間から滑らせるようにショーツを引くと、今度はするりと抜けた。そのまま一気に足首まで引き降ろす。

「ああっ! いやあっ!」

 なよなよともがく涼子の細い足首からショーツを抜き取り、ついでに白いサンダル風の靴も脱がしてしまう。これで涼子はなにひとつ身にまとわない全裸となった。

 背を丸めて必死に太腿を捩り合わせた涼子は、涙を浮かべながら哀願した。

「お願い……もうやめてっ……」

「さあ、脚を開いて」

「いやっ……もう、いやっ!」

「僕が嫌いになってもいいの?」

「ああっ……」

 涼子は絶え果てるように呻くと、閉じた膝を弛(ゆる)め始めた。

「ああっ……み、見ないで!」

 涼子は何度も苦し気に喘ぎながら膝立てた伸びやかな脚を恥心に震わせながら大きく開き、白く艷やかな内腿の付根を男の目に曝していった。

「そこでストップ! そのまま動かないで」

 大胆な角度に開脚した涼子をそのままにしておいて、ヒロシはバッグの中を探し始めた。

 仰向けに寝たまま顔だけを上げた涼子は、ヒロシがバッグから取り出した物を見て絶望的な悲鳴をあげた。

「あっ……そ、そんなのいやっ!」

 それは小型のデジタルカメラだった。最近発売されたばかりで、その大きさのわりにはかなりの高画質で撮影できるものだった。

「お、お願い! 撮らないで!」

「どうして? せっかくの記念じゃないか」

「でも! でもっ!」

「僕は好きな人の頼みもきいてくれない娘は嫌いだな」

「ああっ……」

 決め文句に涼子は苦悶した。葛藤に身を焦がしながら頭を捩る。

「ね、いいだろう?」

 涼子はぐったりと横を向いたまますすり泣き始めた。もう、返事をする気力も残っていないようだった。

「じゃあいいんだね?」

 ヒロシは涼子の返事を待たずに勝手にそう决めつけると、デジタルカメラを構えながら二、三歩下がった。

 辺りはかなり暗くなっていた。桜の木々の間から満月が姿を覗かせている。赤紫色の空にはちらほらと星が見え始めていた。

 ヒロシはデジタルカメラをフラッシュモードに設定すると、脚を広げた涼子の全身がフレームに入るようにアングルを決めシャッターを押した。フラッシュがたかれ、一瞬、涼子の裸体を輝かせる。

 ヒロシは何度も位置を変え、シャッターを押しまくった。その度にたかれたフラッシュが、恥心に嗚咽する清純な女子大生の裸体を白く浮び上らせた。

 二十枚ほど撮影したところで、ヒロシは涼子の脚の間にうずくまった。内腿の付根にレンズを向けシャッターを押す。眩しい光の中に、つやつやした恥毛に縁どられたコーラルピンクの女性器が鮮やかに照らし出された。

 ヒロシはデジタルカメラをシートの上に置くと、両手で涼子の両太腿を抱え込むようにして乳房の方へ折りたたみ、剥き出しになった女性器に首を伸ばして唇を押しつけた。

「あっ……」

 涼子は内腿を痙攣させながら、頤を仰け反らせた。

「初めてだと痛いだろうから、濡らしておいてあげるね」

 ヒロシは閉じ合わされた肉の境目に舌を這わせ、じっくりと舐めあげていった。ひと舐めごとに涼子は切なさと苦しさがない交ぜになった呻き声を洩らした。

「んっ……んっ……あっ……」

 繊毛をかき分けクリトリスを舐めあげたとき、涼子は苦痛の悲鳴を洩らした。

「あっ! いたっ!」

 女にとって最も敏感な箇所のはずだったが、快感よりも粘膜を直接刺激される苦痛の方が強いらしい。おそらくオナニーすらしたことがないのではなかろうか。

 ヒロシは矛先を変えクリトリスの周辺に重点を置いて舐め始めた。五、六回周辺を舐めては一度クリトリスの頭を舐める。舐めると言っても舌先を軽くつつくように押しつける程度だ。

「んっ……んっ……あっ……」

 何度か繰り返すうちに、涼子の反応に変化が現われた。クリトリスはその可愛らしい頭を徐々に持ち上げ始め、涼子の声も次第に切なく甘いものに変わってゆく。

「んっ……んっ……ああっ……あん……」

 涼子は無意識のうちに男の舌先をはねのけようと、お尻を浮かせ、ヒロシの頭を挾み込んだ太腿を嫌々をするようにくねらせた。その動きはすべやかな内腿の肉感でヒロシの頬を刺激し、舌をはねのけるどころかかえって喜ばせてしまう結果となった。

 ヒロシは乙女の温もりを両頬に感じながらさらに舐めあげていった。今度はクリトリスに這わせた舌を大胆に動かしてみる。

「んっ、ああっ……」

 涼子は内腿の付根を痙攣させ、腰を大きく振り動かした。硬く閉じ合わされていた女性器は、今やゆっくりと開花し始めうっすらと蜜さえ滲ませ始めている。

 さらに何度か刺激を与え続けてから、ヒロシは女性器から唇を離し、シートの上に置いておいたデジタルカメラを取りあげた。

 再び閉じかかった涼子の膝を手で押し開き、内腿の付け根の中心部にレンズを向ける。慎重にフレームを決めてフラッシュをたき、開花したコーラルピンクの花びらのアップをメモリに焼き付けた。

 ヒロシは涼子の処女花を収めたデジタルカメラを大事そうにシートの上に置き、手早く服とシャツを脱いだ。ズボンとトランクスは一緒に押し下げてしまう。

 股間の一物は期待感に膨れあがり隆々と天を向いていた。

 ヒロシは左腕で涼子の向かって左の太腿を抱え上げ、右手で握った一物を花びらの正面に向き合わせた。

「あっ!」

 ヒロシが何をしようとしているのかを知った涼子は最後の抵抗を見せた。

「お、お願いです。そ、そんなことしないで!」

 拘束された太腿を振りほどこうとするように必死で腰を振り、男の矛先をかわそうとする。しかし、暗示のためにその力は緩慢なものにしかならない。

 ヒロシは太腿を抱えた腕に力を込めて儚い抵抗を封じ込めると、腰を突き出して一物を花びらに押し当てた。

「んっ!」

 男が押し入ってくる痛みに涼子は顎を引き、内腿を緊張させた。とたんに花びらの内側に続く肉の隘路への入口が狭くなり、男のそれ以上の侵入を一時的にくい止めた。

 ヒロシは割った太腿を両脇に抱え込み直すと、涼子の上体に覆いかぶさるように背中を曲げた。そうしておいて反動をつけて思いきり腰を突き入れる。

「ああっ!」

 一物は肉の隘路をこじ開けて突入し、その勢いのままさらに奧へと突き進んだ。途中にあったわずかな粘膜の抵抗をも一気に押し破る。

「あーっ!」

 処女膜を引き裂かれた瞬間、涼子は激しく頤を仰け反らせ甲高い悲鳴をあげた。

 底まで到達させてヒロシはやっと一息ついた。

 刺し貫かれた激痛のために、涼子は仰け反ったまま荒い呼吸に乳房を波打たせ、陸に上がった魚のように唇をわななかせている。

 ヒロシは左腕で片方の太腿を抱え込んだまま、上体を涼子の胸の上にあずけ、右手で彼女の顔を自分の方に向かせた。

「痛かったかい?」

 涼子は閉じた睫毛に涙を滲ませながら荒い呼吸の合間に頷いた。

「ごめんね。これからは優しくするから」

 そう言ってゆっくりと注挿を始めた。

「んっ……んっ……ああっ」

 ヒロシは優しく抜き差ししているつもりだったが、涼子は処女の粘膜をこすりあげられる痛みに苦悶していた。注挿の度に花を散らしたシートの上をじりじりとずりあがってゆく。そのうちに桜の木の根元に後頭部をぶつけてしまった。

 鈍い音を聞いたヒロシは注挿をやめると、涼子の顔を覗き込んだ。

「おいおい、だいじょうぶかい? もう、しょうがないやつだなあ」

 苦笑したヒロシは涼子の太腿と肩を掴み、つながったまま膝でにじり下がって引きずり戻した。再びシートの中央に戻ったところで覆いかぶさり、右腕をくびれた腰の下に差し入れ、左腕を細い首の後ろに回して抱え込む。がっしりと固定しておいてから再び注挿を開始した。

「んっ!」

 ヒロシの胸の下で涼子は頭を振ってもがいたが、今度はずり上がることはできなかった。

「涼子、痛いかい?」

 言わずもがなの事を聞いてみる。

「ええ……だ、だから……もう……」

「そうか……でも、もう少しだから我慢してね」

「んんっ!」

 いくらお願いされても止めるつもりはなかった。これから処女の身躰をじっくりと楽しむつもりなのだ。すでに二度も射精していたので狭い腟内の締めつけにも充分に耐えられた。

 ヒロシは上体を起こすと涼子の両の膨ら脛を自分の両肩に担ぎ上げてみた。そのまま上体を前に倒し、涼子の身躰を折りたたんで行く。すると自然に涼子のお尻が持上り、さらに深くつながることが出来た。そのまま腰をゆっくりと前後させてゆく。

「くっ……あっ……あっ……」

 涼子は窮屈な体位のために苦しそうな呻き声をあげ続ける。それを心地好い音楽のように聞きながら、ヒロシは涼子の身躰を味わっていった。

 涼子の美しい肉体を二つ折りにしたまま両手を伸ばし、乳房を握り締め揉みあげる。乳首に吸いつき、ときに軽く歯を立ててみる。白い首筋から頬にかけてキスの雨を降らせ、耳をしゃぶり、耳たぶを甘噛みしてもみた。舌で睫毛を濡らす透明な涙をすくい取る。その間中、ヒロシは腰を動かし続けた。あくまで柔らかく優しくゆっくりと……、しかし、処女にしてあげているとは思えないほど長く執拗な性交だった。

 濃紺の空には満月が高々と上がっていた。その周りには宝石箱をぶちまけたように星々が煌めいている。

 ヒロシは月明かりに照らし出された涼子の顔をしげしげと眺めていた。

 なんと美しい顔だろうか……。

 長い黒髮を扇のように花筵の上に広げ、頭をなよなよと振りながら苦痛に眉をひそめている。ヒロシが深く押し入れる度に、長い睫毛を震わせ、細く甲高い呻き声を微かに開いた朱唇から洩らし続けていた。

 ヒロシは首をのばすと、唇を重ねた。

「む……」

 まるで恋人にでもするような優しく濃厚なキスだった。

 じっくりと吸ってから唇を離す。

「じゃ、行くよ」

 優しく微笑みかけると、涼子は脅えた瞳をヒロシに向けた。

「お、お願い……な、腟内(なか)には出さないで……」

「どうして?」

「だって……あ、赤ちゃんが出来たら……」

 そう言うと涼子は身を震わせた。

「妊娠するのが恐いの?」

 涼子はすがるような眼差しを向けたままこくりと頷いた。

 ヒロシはこれほどの美肉を前にして腟外射精をする気にはとてもなれなかった。

「腟内で出したからって必ず妊娠するとは限らないだろう?」

「でも……」

「それに、仮にそうなったとしても僕の赤ちゃんじゃだめなのかい?」

「ああっ……」

 涼子は苦し気に頭を振ると眉を歪ませて横を向いてしまった。もうどうしてよいのか分からないようだった。

 ヒロシは涼子の頬に唇を寄せながら囁いた。

「じゃあ、君が決めてくれ。僕のことが嫌いなら首を横に振ってくれ。そうすれば僕はこのまま君の前から消える。そうして二度と君の前に姿を現さない。僕のことが好きなら頷いてくれ。そうすれば腟内に出させてもらうよ」

 ヒロシは一度言葉を区切った。

「さあ、決めてくれ。僕のことが嫌い? それとも好き?」

「ああ……私……どうすれば……」

 わずか十九歳で、しかも初めてのセックスで妊娠するという決断はお嬢様育ちの涼子にとって酷だった。しかし、ヒロシのことを好きだという暗示は強力だった。

 涼子は泣き濡れた瞳をおずおずとヒロシに向け、しばし躊躇ってからこくりと頷いた。

「ありがとう」

 ヒロシは涼子の唇を再び吸い、ゆっくりと注挿を開始した。

「んっ……んっ……あんっ……」

 抜き差しを大きく深くしてゆくと涼子の喘ぎ声から硬さが消え、徐々に甘く切ないものへと変わっていった。覚悟を決めた身躰から余計な緊張がとれはじめ、ヒロシの動きに身を委ねるようになっていた。ただ、相変わらず硬く目を閉じ眉を歪ませているのは、初めての性交の痛みに耐えているからなのだろう。それでも涼子は拙くはあったが、好きな男のために健気に腰を揺らし始めた。

 二つ折りにされた窮屈な姿勢の涼子が、ぎこちないながらもリズムを合わせてくれたことにより、ヒロシの腰の動きは次第に大きなものになっていった。

 ヒロシの下腹の奧底から悦楽の波が押し寄せ、全身に広がって行く。

 ヒロシは涼子の身躰を二つ折りにしたまま抜き差しのピッチを速め、ストロークを力強くしていった。

「あっ……あっ……あっ」

 ヒロシの動きが早まるに連れ涼子の喘ぎ声の間隔が狭まってゆく。

 快感の頂点はもうすぐそこに迫っていた。

 ヒロシは両脇で太腿を抱え込んだまま両手を涼子の腰骨のあたりにあてがい、がっしりと固定した。息を詰め、大きく鋭く突き入れる。敏感な亀頭の先端が子宮口の柔肉に押し当ったと同時に、こらえにこらえていた精を解き放った。

「ああっ!」

 熱い迸りを腟内に打ちつけた瞬間、涼子は大きく仰け反った。跳ね上る太腿をヒロシは胸で押し戻し、股間を捩じり込むように押しつける。

 細かく痙攣しながら締めつけてくる処女の美肉の中で、怒張は歓喜の雄叫びをあげているかのようにびくびくと脈打ちながらのたうちまわり、とめどもなく精を放出していった。

 すでに二度も射精していたとは思えない程の量を注ぎ込んだヒロシは最後の一滴を放出すると、そのまま崩れ落ちるように涼子の胸の上に突っ伏した。

 涼子の肩に自分の顎を乗せ、ぐったりと体重を預ける。心地好い怠(だる)さに身を委ね、そのままじっとしていると、ヒロシの体重で押し潰された乳房が涼子の荒い呼吸に合わせて上下しているのが感じられた。

 涼子は泣いていた。

 処女を喪(うしな)い初めて男の精を浴びたショックからなのか、それとも好きな男に抱かれた喜びからなのか……。

 涼子の嗚咽を聞いているうちに、ヒロシの一物は再び硬さを取り戻していった。それは処女肉の柔肌をなごり惜しむかのようにゆっくりと鎌首をもたげ始めた。

 ヒロシは涼子の上体を抱えながら身を起こした。胡座をかき、その中に涼子のお尻がすっぽりと入るように位置を調節する。まだつながったままだったので自然と対面座位となった。

「もう一度……ね」

 そう言いながら涼子の上半身を抱しめる。

「あ……」

 涼子は軽く頤を仰け反らせただけで、抗いはしなかった。

「腰を動かしてごらん」

 涼子は恥じらいながらも腰を揺らせ始めたが、その動きは小さかった。

 体位に無理があるのだろうと考えたヒロシは涼子の腰を固定したまま脚を伸ばしてシートの上に仰臥した。

「ほら、これなら動けるだろう」

「ああっ……こ、こんなの……恥ずかしい……」

 涼子は怒張を呑み込んだままヒロシの腰に跨っていた。

「ほら、動いて」

 ヒロシは股間に力を入れ、柔肉の中で怒張をひくつかせた。

「あっ!」

「動いてごらん。無理しないでゆっくりでいいから」

 ヒロシに促され、涼子はそっとお尻を上下させ始めた。

「ん……んっ……んっ……」

 涼子はぎこちなく腰を振りながら、その度ごとに辛そうな呻きを洩らした。ヒロシの精と自らの破瓜の血で腟内は潤っているはずだが、経験の浅い肉壁にはまだ刺激が強すぎるのかも知れない。

「あっ……あっ……」

 粘膜をこすりあげられる度に涼子は切なく悶え、か細く呻いた。

 ヒロシは目の前で揺れ弾む乳房を両手ですくい取り、やわやわと揉んでゆく。

「あっ……あっ……あっ……」

 渓流を吹き渡る風に揺り動かされた桜の木々の梢枝が、大量の花びらを二人の上に舞い散らせた。

 ヒロシは乳房を揉みながら、涼子を見上げた。

 満天の星空から舞い落ちてくる無数の花びらを背に、端正な顔を苦痛に歪めながら長い黒髮を振り乱す美しい女子大生の白い裸体が月明かりに輝いている。その姿は花びらの中を遥か天空へと浮遊して行く天女のようだった。

 ヒロシは天に昇るような快感を味わいながら、再び美しい天女の腟内に精を解き放った。

< つづく >

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