幻市 第四章

第四章

 さあ、どこまで話したっけ。

 そうそう、友達が来てるさなか、僕が発作を起こしたんだったよね。大事な所なんだ。このあたりから大きな距離のあった《シンイチ》と《てん》の間が急速に近づき始める。

 《てん》に感情が芽生え始めた事はもう話したと思うけど、この頃、《シンイチ》に明らかに性欲が芽生え始めるんだ。

 《シンイチ》が急に痙攣し始めたんで、皆が慌てて《シンイチ》の名を呼ぶ。

「信一、大丈夫か?信一っ」

「東君、・・・東君っ」

 《シンイチ》はナントカ顔を上げる。正面に慌てた様子の忍が見える。《シンイチ》は「逃げてくれっ」と言おうとした。

 代わりに出たのは「あ゛・あ゛~あ゛~」。

 正面の忍が大きく仰け反りソファーの背にぶつかり崩れる。

 恵が立ち上がり両手を口に当てる。

「うわっ」

 良太がビックリして中腰になる。

「信一っ。一体・・・・」

 《てん》は隣で半分立ち上がっている良太に向けて波動砲を発射する。

あ゛~あ゛~

 良太がソファーの肘おきの上に座り込み、そのまま仰向けに床に落ちる。

「きゃああああっ」

 立ちすくんでいた恵が身を翻して逃げ出す。背後から後頭部に向けて波動砲。

あ゛~あ゛・あ゛~

 扉をに向かっていた恵が扉に衝突しドアノブにすがるようにして崩れ落ちる。

 《てん》は久しぶりの外界に喜びの声を上げた。「ヘフッ、やっだぁ」

椅子の背にもたれ大きく伸びをする。目の前には忍がチェックのスカートの裾を乱してソファーからずり落ちかけている。脇のソファーの肘おきに良太の足先が覗いている。ドアにすがりつくように恵が倒れている。

 《てん》はゆっくりと立ち上がった。

 まっすぐ恵に近づく。《てん》のお目当ては恵なんだ。恵を背中から抱き上げ、抱いたままソファーに戻る。恵の向きを変えて自分の膝にまたがらせると正面から抱きしめる。恵のしなやかな腰が折れそうにしなる。恵は目を見開いて抵抗もせずに抱かれている。

「恵っ。ファフッ」

 《てん》が恵の名を呼んでベトベトの口を恵の顔に押しつける。声も随分と自由になってきたようだ。

 黒のハイネックを脱がす。グニャッと崩れそうになる身体を器用に支えながら腕を抜き頭を抜き取る。もう一度抱き寄せると背中に手を回しブラを外す。細いウェストの上に大きな胸、今思い出しても中学生とは思えない胸が現れる。《てん》は弾力のある胸の間に顔を埋め喜びの声を上げた。

 センターテーブルの上に恵を下ろす。幅の狭いテーブルからはみ出した恵の頭をソファーからずれ落ちかけた忍の細い太腿が支えている。その構図を見て《てん》が愉快そうに笑う。恵の柔らかい腹に手をやりベルトを外すとコーデュロイのパンツを脱がす。ベージュのショーツと黒い薄手のハイソックスが現れた。《てん》が楽しむように少しずつショーツを下ろす。

「ファッ、ファフ」

 春の明るい日差しの下にさらけ出されたモノを見て感激の声を上げる。くっきりと形の良い眉毛と同じように形のはっきりとした陰毛は色が濃く輝いている。

 《てん》は上機嫌だ。細いながらも筋肉の付いた恵の片足を持ち上げるとハイソックスを脱がす。そして恵の足裏を噛み始めた。指から始まり柔らかい踵。まるで噛めば味が滲み出てくるように噛む。食いちぎる気はないのだろう、そう甘噛み・・・。まるでしがむようにアキレス腱、脹ら脛と足を遡っていく。膝の裏を過ぎ、内ももには明らかに 歯形がついたよ。「ファフ、ファフ」と声を上げながら口を動かす。

[編集部注]

 以後数分間の録音については、編集部の判断により、ここに表記することを省略します。理由についてはご賢察を頂きたい。

 《てん》は、はいていたチノパンを脱ぎ去るとゆっくりと恵の両腿を抱え上げた。

 《シンイチ》は射精の衝撃でよろめきソファーに座り込んで気がついた。目の前には女性の股間。恵だ。ああぁぁっ!!頭を抱える。

 目を開いたままソファーに崩れている忍が見える。(良太は?あぁ、いた。)良太もソファーに足をかけ目を見開いたまま倒れている。ソファーに座り込み大きな溜息をつく。

 目の前に恵の股間。テーブルの上に解剖を待つ蛙のように両腕両足を拡げて置かれている。濃い茂みの間から血の混じった精液があふれている。

(あぁ・・・・・又、・・・。でも、・・・でも、なんで恵なんだ?)恵が魅力的な少女なのは《シンイチ》も認めるが、タイプとしては男勝りで活動的な恵は《シンイチ》が苦手としているタイプだ。(なんで忍ではなく、恵なんだ?誰か別の意志が働いたようだ、何故だ?)

 《シンイチ》は立ち上がると忍び足で忍に近づく。うつむいている忍の顔を顎に手を当てそっと上向かす。忍が《シンイチ》を見上げる。薄く開いた唇の間から白い歯が覗いている。《シンイチ》は自分が唾液を飲み込む大きな音を聞いた。

 ずり落ちかけている忍を座り直させる。小柄な忍は軽い。その軽さが《シンイチ》をドキドキさせる。そっと横に座り忍の頭を抱き寄せる。艶のある髪の毛の良い香りが《シンイチ》の鼻をくすぐる。

 深く眠らせる。平和な顔で眠りに入った忍の小さな顔を上向かせる。白い陶器のようにきめ細かい肌。ニキビの跡を日焼けでごまかした恵の肌とは種類が違う。恵の健康的な肢体は躍動的な美しさだが、忍は未成熟な危うさの中に静的な美しさを持っていた。

 目の前のテーブルから恵が上体をはみ出させてのけぞっている。大きく見開いた眼が少し充血している。(恵をナントカしなくっちゃ)忍に優しく口づけをしてから《シンイチ》は立ち上がった。

 恵をテーブルに座らせ暗示をかけて一度深い眠りに導く。暗示の手際は数段上達していた。眼を覚まさせると立ち上がらせる。腿を伝って落ちる精液は既に透明になっている。微かに血が混じっている。どうやって処理してやればよいのか判らない。

 風呂場に連れて行く。恵が素直に従う。しゃがませてシャワーで下半身を洗ってやる。奥を洗って大丈夫なモノなのか?どこから出血しているのか解らない。それと妊娠・・・《シンイチ》はブルッと身震いした。中に入った物を出させなくちゃ。

 小便をさせてみる。黄色いしぶきが床を打つ。ダメだ、もっと奥の方だ。恵にシャワーを渡し自分で洗わせる。恵は指を使いながら器用に洗い流している。《シンイチ》も横にしゃがみ恵の大きなおっぱいをゆっくりと揉む。

 シャワーを終えた恵を拭いてやる。服を着せ良太と並んで立たせる。お似合いのカップルだ。二人にマネキンのようにポーズを取らせてみる。

 《シンイチ》は忍の横に腰掛けている。忍は《シンイチ》の首に抱きつき《シンイチ》の首筋、頬、唇にキスを繰り返している。「信一君、大好き」と呟いている。《シンイチ》が「眠れ」とささやく。忍が空気が抜けたように崩れ落ちる。

「忍。目を開けよう。・・・僕の声が聞こえるね」

 忍がうなずく。

「忍のうちは洋品店だろう?・・・返事は?」

「はい」

「いいかい?忍は洋品店の店員だ。お店は手伝ったことがあるかい?」

「うん、・・・ある」

「いい子だ。・・・さあ、ここはお店だ。お客さんが来たらちゃんと相手をするんだよ。お店にはあんまり商品が残ってないけど頑張って売るんだよ。絶対に客に怒られないようにね」

「うん」

「じゃあ立ってごらん。僕が忍のお尻を叩いたらお店番の始まりだ。僕が客だよ」

 忍が立ち上がる。その小さなお尻を叩く。

 忍がビクンとして《シンイチ》を見る。

「あっ、いらっしゃいませ」

 《シンイチ》に向き直ると店員の姿勢でお辞儀をする。

「何をお探しですか?」

「セーターを探しているんだけど」

「セーターでございますか?お客様がお召しになるんですか?」

「いや、ガールフレンドにプレゼントしたいんだ」

「どういったものを・・・」と言いかけて忍は周りを見回し商品がないので慌てる。

「えっ、えぇっと」

「セーターが欲しいんだ」

「えっ、あの、・・・すいません。ちょっとセーターは在庫を切らして・・・」

 《シンイチ》は「怒るよ」と呟く。忍が可哀想なほど慌てる。

「あ、あ、あの、」

「洋品店だろう、ここは」

「はいっ」

「ある物を持ってきなさい。・・・あのマネキンが来ているのを見せて貰おうか」

 恵を指さす。

「マネキン?・・・あ、はい」

 忍が慌てて恵に駆け寄る。背の高い恵に抱きつくようにして苦労しながらセーターの袖を恵の腕から引き抜く。

「やっぱりセーターはベージュが良いな」

「えっ?」

「君が着ているじゃないか?それは売り物じゃないの?」

「あっ、う、売り物です」

「じゃあ、それを貰おう」

 忍がセーターを脱ぐ。きれいに畳む。忍の体温の残ったセーターを受け取る。忍は下にグレーのボタンダウンのシャツを着ている。セーターの襟から覗いていたのはアスコットタイだった。

「ベージュのブラはある?」

「えっ、ブラジャーですか?」

「うん、ベージュの」

 忍がゴクッとつばを飲み、シャツのボタンの隙間から自分のブラの色を確認している。

「ベージュですか?」

「うん、セーターがベージュだから」

 恵がベージュのブラを着けているのに気がつく。さっき忍がセーターを脱がせかけたので恵は首にセーターを巻き付けた格好になっている。大きな胸を覆うベージュのブラが見える。

 忍が恵のブラを外す。大きなおっぱいがこぼれ出る。忍がおっぱいを見てギョッとする。そのマネキンらしくないおっぱいを見て不思議に思ったのだろう。おっぱいに手を伸ばして触ろうとする。やばい。

「店員さん」

「はい」

 忍が慌てて振り向く。

「同色のパンティがあったら持ってきてくれる?」

「はいっ」

 もう一度不思議そうにおっぱいを眺めてから恵のベルトに手をかける。パンツのホックを外して中を覗き込むと嬉しそうに振り向く。

「ありました」

 パンツのチャックを開けて膝まで引き下げる。恵のベージュのショーツが現れた。ショーツに指をかけると静かに下げる。「あっ」中から黒い毛が出てきて思わず手を引っ込める。マネキンの陰毛は予想していなかったようだ。

 《シンイチ》は楽しくなってクスクス笑う。でもあんまり調子に乗ったら危険だ。忍が気味悪そうに恵を見ている。

「ちょっとサイズが心配だなあ。先にブラを見せてくれるかい?」

「あっ、はい。・・・これですが・・・」

 ブラを持ってきながらもマネキンが気になるようだ。

「ううん、ちょっと大きすぎるなあ。もっと小さいのはないの?」

「えっとぉ、ベージュはこれ1サイズだけになります」

「他の色ならあるの?」

「え、あ、はい・・・いえ」

「あるの?ないの?」

「い、いえ、あるんですけど。白だけですし、とっても、ち、小さいし、あんまりかわいく・・・」

「それを見せてください」

 忍が泣きそうな顔で《シンイチ》を見る。微笑んでやる。忍が情けなさそうな顔で微笑む。シャツのボタンを外し始めた。《シンイチ》に背を向けてシャツを脱ぐ。細い肩、細い腕、細いウェストが現れる。真っ白い肌がちょっと鳥肌になっている。左腕で胸を隠しながら振り返ると右手でブラを差し出す。

「いいね。畳んでください」

 忍は一瞬の躊躇の後に左手を胸から外すとブラを畳み始めた。胸は小さい。まだ、大きくなり始めたところだ。首にはアスコットタイをしたままだ。

「商品を手に取ってみて良いかな?」

「はい、どうぞ」

 忍のチェックのスカートに手をかける。「えっ?」と忍が慌てて避けようとする。

「ちょっとこれを見たいんだ」

「はい」

 忍が身体を固くする。《シンイチ》がスカートを撫で回す。

「ウール100%かい」

「はい、そうです」

 忍のお尻は小さい。腰の発達も恵には遠く及ばない。両手で胸を隠して緊張している。サイドホックを外す。落ちそうになったスカートを忍が際どく掴む。

「うん、これも貰おう」

「はい、ただいま・・・」

 忍の息が荒い。決心をつけたのか、スカートからサッと足を抜くとスカートをテキパキと畳み《シンイチ》に差し出した。

「お待たせしました。お代は・・・」

 早く終わらせようとする忍の声を遮る。

「ちょっと待って・・・」

 紺色のパンストに手をかける。

「これも見せて貰っていいかい?」

 パンストの中の細い足が震えている。《シンイチ》はパンストの縁に指をかけるとゆっくりと引き下げる。現れた忍の太股に鳥肌がたって震えている。「ああぁっ」忍は両手で股間を押さえるとしゃがみ込んだ。

 涙目で《シンイチ》を見上げる。救いを求める眼で震えている。

(そろそろ限界かな)

「忍、・・・眠れ」

 しゃがみ込んでいた忍が横倒しに崩れる。

 倒れた小さな忍の身体を仰向けにする。バンザイをするように開いた腕の付け根に、まだ手入れをする習慣を持っていないのだろう、本人もまだ気がついていない産毛のような脇毛がうっすらと生え始めている。

 華奢な足を持ち上げて大人びたパンティストッキングと子供っぽいショーツを取り去る。霞むような薄い陰毛。陰毛の奥に肌色のスリットが見える。チョッピリ膨らんではいるが表にはほとんど何も現れていないただの皮膚の線だ。

 《シンイチ》は調子に乗って忍を裸にしてしまってから慌てる。

(僕は一体何をやっているんだ。・・・・・・・でも・・・・でも、僕が記憶できていないだけで、僕はこうやって野杖先生もおばさんも真純ちゃんも襲っちゃったんだ。僕は既に強姦魔だ。)《シンイチ》は居直るような決心を固めた。

(忍ちゃんを強姦したら、射精したと同時に一切の記憶を僕は又、失ってしまうんだろう。・・・きっと裸の忍を抱えて僕は眼を覚ます・・・その時、僕はどうするのだろう。又、慌てて後始末をするのだろうか?)

 《シンイチ》は《てん》という別人格を知らない。自分が強姦魔に変身して射精すると同時に強姦魔に変身した以降の記憶を失うのだと考えていた。

 忍の眼を覚まさせて立たせる。ソファーに腰掛けて眺める。忍はお腹がチョッピリ膨らんだ少女体型で《シンイチ》の前に立っている。

 《シンイチ》はそっとその股間に手を伸ばしクレバスをなぞってみる。乾いたクレバスは指の股の様に乾いて閉じている。到底、無理そうだ。

 《シンイチ》は拳を握って腕を伸ばし股で挟ませる。

「忍ちゃん、・・・お尻を前後に動かしてみよう」

 忍が無表情のまま腰をモジモジと動かす。乾いたクレバスが《シンイチ》の拳をこする。

「ほら、擦れると段々気持ちが良くなってくるよ。・・・もっと擦ってみよう」

 腰の動きが早まる。忍の表情に変化はない。機械的にお尻を動かす。

 ただ最初は単に前後していただけの動きが、クレバスが拳に当たるように調整し始めているようだ。

「段々気持ちよくなってきた。・・・そう、気持ちよくなってきた」

 忍の口が薄く開く。・・・まだクレバスは乾いたままだ。脱力していた忍の腕に力が入り始めている。

 忍がうつむいて眉をしかめる。《シンイチ》の親指の関節に狙いを付けて腰を動かしている。

「どんどん気持ちが良くなってくる」

 腰の動きが激しくなり忍の髪が乱れる。

 突然、忍が《シンイチ》の腕を掴む。《シンイチ》の拳をクレバスに引きつけ足で強く挟み込む。「うっ」という声が漏れる。

 忍が「あん、うっ」と声を出し、上体をかがめた。その拍子に《シンイチ》の親指の関節がクレバスを割った。身体の内側で分泌されていた大量の液体がクレバスを割って流れ出る。あっと思う間もなく《シンイチ》の拳が熱い液体に洗われる。

 《シンイチ》はびくっとして腕を引こうとするが忍は腕を放さない。《シンイチ》の腕を掴んで腰を振る。泣くような声を上げ続けている。《シンイチ》が拳ごと忍を引き寄せる。髪を振り乱しながら腰を振り泣いている忍を抱え上げ座っている膝元へ抱き上げる。忍の腕が《シンイチ》の首に抱きつき、腰が《シンイチ》の突起を求めて動く。

 《シンイチ》がその狭いクレバスに飲み込まれたとき忍が一際大きな声を放った。《シンイチ》も忍を受け止めるように腰を動かす。

(ああ、僕はもうすぐこの記憶を失うんだ。)

 《シンイチ》は忍の体内の温度を脳髄に刻みつけるように突き上げ、声を上げ、そして果てた。

 《シンイチ》は荒い息をつき回りを見渡した。

 静かな部屋の中、忍が《シンイチ》の上でぐったりと放心している。信一の下半身はびしょ濡れで分身はまだ忍の身体の中だ。

 部屋のはしには良太が反対側の壁を睨みながら立っている。その脇には恵が首にセーター、膝にショーツとスラックスをまとわりつかせ胸部と腹部を見せながら立っている。

(記憶が失われていない・・・僕は全てを覚えている。)忍が《シンイチ》の上からずり落ち横倒しになる。《シンイチ》は足を拡げたまま人形のように倒れている忍を茫然と見つめる

「東君、大丈夫?」

「信一、オマエ、大丈夫か」

「うん、すまん、すまん。・・・もう大丈夫だ」

 《シンイチ》は大きく深呼吸をしてみせた。

「もうっ、心配させんといてよ。・・・東君、急にせき込むし」

 恵が胸をなで下ろす。《シンイチ》の脳裏に恵の大きな胸の残像が蘇る。

「ああ、ビックリした。・・・東君、ホントにもうダイジョブなん?」

 立ち上がっていた忍が腰を下ろしながら《シンイチ》の顔を覗き込む。・・・カワイイ、・・・忍の白くて柔らかくて暖かい身体の感触が蘇る。

「ダイジョブ、ダイジョブ。・・・ゴメンな」

 3人の記憶に齟齬はない。大丈夫だ。打ち合わせが終わったつもりになっている3人を送り出す。《シンイチ》はホッと溜息をついた。

(何故、僕は今回に限って記憶を失わなかったのだろう。・・・3人が催眠状態に陥ったのはどのタイミングだったのだろう。)《シンイチ》は又、頭を抱えた。

 あっ、美紀ちゃん、電話が鳴ってる。アイツからかな。よしっ。

あ゛・あ゛~

 美紀ちゃん、電話を取るんだ。そしていつものように会話するんだ。アイツだったら家に来させるんだ。今日はどうしても家に来て欲しい。表では食事したくない。手料理を食べさせたい。見せたい物がある・・・って。

 行け、行くんだ。どうした?

 ホラ、電話が切れちゃったじゃないか、早く行かないから。

 あっ、そうか。足と手を縛られてるつもりになってるんだったっけ。

 君の足は縛られていない。手も縛られていない。自由に動ける。猿轡もない。

 あっ、又、鳴ってる。行くんだ。

[編集部注:約2分30秒に亘り音源が遠ざかり録音解析不能。]

 はい、良くできました。

 美紀ちゃん、ソファーに座ろう。

 又、縛られてるつもりになって貰おうかな。

 はいっ、手を後ろに回して・・・そう、君の手はストッキングで縛られている。君の足首も同じように縛られている。自分ではほどけない。

 君の口には猿轡・・・・あっ、そうだ。その前にちょっと手伝って貰おうかな。猿轡は無し。

 僕は半日に一回、抜いておかないとダメなんだ。僕の中の何かが暴れ出したら困るから。

 美紀、口を開こう。・・・そう。これから君の口に入ってくる物を大事にしゃぶるんだ。歯を立てたらダメだよ。唇と舌でしごくんだ。いいね。

 うん、そうだ。・・・上手だ。・・・むっ。・・・ははっ・・・そう。

 うっうっ、ううむっ。

 はい、もう良いよ。良くできました。

 おっとぅ、上を向いて・・・そう、飲み込もう。

 ああ、口の回りについちゃったね。拭いてあげ・・・あぁ、舌で舐め取ってごらん・・・そう、左側も・・・うん、もう大丈夫だ。

 付き合ってる時だってこんな事してくれなかったのにね。今日の美紀ちゃんはサービス満点だ。しょうがないよね・・・今日は、美紀ちゃん、駄目な日なんだし口でしかできないんだから。

 じゃあ、又、猿轡をしました。美紀ちゃんはしゃべれません。僕が「はい」と言ったら美紀ちゃんはもとの美紀ちゃんに戻ります。

 はいっ。

 そんな悲しそうな眼で僕を見ないで・・・のどは渇かないかい?

 ・・・大丈夫?それなら良い。さっきから僕ばっかり飲んでるから・・・。

 まあ、君もジュースを飲んだけどね。ふふっ。

 えっ?・・・秘密。ふふっ。

< 第五章へ続く >

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