妹のように、恋人のように

― プロローグ ―

「たーかっひろっ♪」

 屈託なく、彼女がオレに笑い掛ける。

「だぁいすき・・・だよっ」

 どこか照れくさそうに、顔を少しだけ赤らめて。
 にしししし、なんておちゃらけて笑いながら。

「オレもだぞ」

 オレの返事に、葉月は嬉しそうに目を細める。

「ずっといっしょにいようねー」

 オレの手に自分の手を重ねて、葉月が歌うように言う。

「おー、とうぜんなぁ」
「あははっ、なんかてきとーだー」

 葉月は、幸せそうに笑った。

― 1 ―

「隆宏、朝だぞぉ。朝ごあん、出来てるぞぉ。おーきーろーっ」

 ベッドでぬくぬくと寝ていると、身体を揺さぶるのと同時にそんな声が聞こえた。可愛らしい声なのに、言葉遣いがぞんざいなせいでオレ的評価で70点。残念。またのチャレンジをお待ちしてます。

「たーかーひーろーっ!寝直しちゃだめぇー!ふとんに潜るなーっ!」

 う。
 これ以上がんばると、もれなくご近所様の冷たい視線を頂けそうだ。
 頼む、もう少しボリュームをおとしてくれ。出来ればオレがご機嫌な眠りに戻れるくらい。

「朝ごあん、冷めちゃうよぉ。ほら、今なら目の保養付きっ!豪華だよ興奮だよ朝ごあん3杯はイケちゃうよっ」

 豪華だの興奮だの朝ごはん3杯だのはともかく、世間体に負けて目を開ける。
 コイツが来てるって事は、今日は日曜日のはず。
 あぁ、安楽な眠りよさようなら。
 恋しい思いを振り切ると、そこには見慣れたコイツの顔。
 オレに覆いかぶさるように、にやにやと覗き込んでいる。
 そのせいで、肩甲骨までありそうなさらさらの黒髪がオレの顔にかかる寸前だ。きっとコイツのことだから、もう少ししてオレが目を覚まさなかったら、髪の毛で鼻の穴をくすぐるとかするに違いない。キケンだ。
 オレの目が開いたのを確認して、普通にしてれば結構イケる顔が、ふにゃりと笑み崩れる。

「ほらほら、隆宏の好きそうな格好だぞぉ。は・だ・か・ワイシャツ♪」

 膝立ちで脚を開いて、両手を後頭部に回して胸を強調したポーズをとる。
 ワイシャツの裾から覗いた白と水色の縞々パンツ。
 胸の谷間まで豪快に開いた胸元。
 朝の光にワイシャツが透けて、浮かび出る華奢な身体のライン。
 ブラをしていないため、控えめにワイシャツを押し上げる胸の先端。
 ・・・やっぱ、胸が薄いな。
 あともう少しあれば、胸元の表現が『豪快』から『色っぽく』に変わるのに。

「どうよ隆宏、朝からこんな格好で起こされたら、すっごく元気になっちゃうでしょ?とくに下半身の一箇所が」

 にやにやと笑いながら、オレの下半身を見てやがる。

「あほ。最初の頃ならともかく、今はそれぐらいじゃあな。第一、色気というには胸が足りないだろ。大きすぎるのもアレだけど、今のお前は少なすぎだ。・・・そういや、何で胸が育たないんだ、お前は?」

 オレがあんなにしょっちゅう揉んでるってのに。

「突然真顔で、何聞いてるのよ!」

 オレの視線から胸を隠すように、両手でワイシャツの上から押さえて身体を捻る。
 ちょっと不機嫌ダゾ☆って表情をしたので、この話題は終わらせた方が良さそうだ。
 ベッドから降りて、ぽんと頭を軽く撫でる。

「朝ご飯、食べようぜ。せっかく作ってくれたんだしな」

 途端にころりと変わる表情。

「うん!」

 朝食は、ボリュームたっぷりのかに玉丼だった。
 中華でも構わないが、朝からこのチョイスは何事か。微妙に脂ぎっしゅな香りが、オレの胃を痙攣させるかのよう。
 目の前でばくばくと食べ続けるこいつ――オレの恋人の葉月だ――が、なんだかとても遠い存在に思えてしょうがない。例えて言うなら、火星人とか異次元人とか。

「ほらほら、美味しくできたでしょっ。この食感なんてもぉ・・・絶品?」

 間を空けて、身体を感動に打ち震わせながら、本気で言い切りやがった。まぁ、美味しいのは否定しないが。

「別に朝から中華でもいいけど、せめてかゆ系にするとかは考えなかった訳?」

 レンゲでかに玉を突きながら、どんよりとした口調で責めてみる。うぅ、食が進まねぇ。これはスクランブルエッグなんだ、載せてるのはトーストだ、そう思えオレ。

「だって、食べたかったんだもー」

 すげぇ。反省の意思が1ミクロンも無ぇ。
 まぁ、葉月が楽しそうだからいいか、なんて思うからこういう事になる訳だけど・・・まぁいい。朝はご飯ものの方が力が出るって言うし、がんばれオレ。

「ごちそうさん」
「お粗末さまー」

 なにかが咽喉元まで上がってきてる気がするが、なんとか完食。すごいぞ、オレ。すごいぞ、人間の身体。
 がんばった自分を褒め称えていると、葉月がオレを注視しているのに気が付いた。両手の指を胸の前で組み合わせて、目をキラキラさせてるところを見ると、どうやらご褒美とかご褒美とかご褒美が欲しいらしい。たぶん。なんかのRPGみたいに、仲間にして欲しい訳では無いと――自信は無いけど――思う。

「ね、今日はどうする?」

 ああ、そういう事ね。

「別に決めてないけど。葉月のしたい事があったらそれでいいぞ」

 惰眠を貪るってのが一番だけどな。

「じゃ、家の中でいちゃいちゃしてようよ。いちゃいちゃとテレビ見たり、いちゃいちゃとごろごろしたり、いちゃいちゃとお話するのっ」

 きゃーとか言いながら、両手で頬を押さえて身悶える葉月。いや、オレの方が身悶えたい。第一オレのキャラじゃないし。理解しれ、それぐらい。

「じゃ、先に食器だけ洗っちゃうね。そのあとでいちゃいちゃだからねっ。逃げたらダメだよ。やくそくっ」

 いつ約束した。ってか、オレが逃げるかもって程度には、オレを理解してる訳ね。
 悔しいから、裸ワイシャツのまま流しで洗い物をする葉月を後ろから視姦する。きゅっと締まった腰とか、まろやかな尻のラインとか。姿勢を変える度にふりふりと尻を振るのは、オレを誘惑してるのか天然か。
 まぁいい、いちゃいちゃしてやろう。オレ式で。

「はーづーきー」

 意識して低い声を出して見る。手はホラー映画風にだらんと突き出して、指先だけでわきわきと。後は捕獲して食べるだけ。

「えへへ、だめだよぉ。まだ洗い物が終わってないんだからぁ♪って、なんだか新婚さんみたいだぁ♪」

 なんだその期待に満ち満ちた言葉は。しかも、さっきよりも尻を突き出してるし。言葉と行動が噛み合ってないぞ。
 仕方なく、お望みのままに尻をがしっ!と掴む。ワイシャツ越しに、その柔らかさが伝わってくる。なんとなく楽しくなって、もにゅもにゅと揉んだ。

「ひゃうっ!な、なんで隆宏はそっちからいくかなーっ」

 顔を赤らめて振り返る葉月。その手には何も無く、流しも綺麗になってる。
 考えて見れば、どんぶり二つにレンゲが二つ。洗い物にそんなに時間が掛かる訳も無いか。おーけい、了解だ。この照れと期待に目をキラキラさせてるお嬢さんは、台所ぷれいがお望みという事だなそうだなそう決めた。

「誘惑したのは、お前だろう?」
「・・・ぷふっ」

 思いっきりクールな口調で言ったら、2秒だけ我慢してから堪えきれずに吹きやがった。まぢむかついた。ってか泣かす。
 オレは後ろから葉月に密着すると、両手を葉月のわきの下を通して顔の前にまわした。もちろん手のひらを見せるようにして、わきわきとした動きは継続中。

「・・・あ」

 それだけで葉月はこれからオレが何をするか、察したらしい。もう遅いけどな。

「だめぇ。それ、頭がヘンになったみたいになっちゃうんだもん」

 少しだけかすれた声。でも、手に吸い寄せられたように凝視する目とか、抵抗する様子がないとことかは、まるで期待してるように見える。いや、期待してるようにしか見えない。

「だめだ。ちゃんとご褒美をあげなくちゃな。オレの順調にもたれつつある胃がそう言ってるし。・・・この手は『魔法の手』だ」
「あ・・・」

 後催眠暗示のキーワードを聞いて、葉月がとろんとした声をあげた。オレからみるとただのすけべな手付きというだけだが、葉月にはピンク色の淡い光に包まれてるように見えるはずだ。ついでに、その効果も思い出してるに違いない。
 葉月が期待と興奮に息を荒げ、脚をもじもじとし始めた頃合で、オレは両手を葉月の胸へと向かわせた。葉月は両手を流しの端について、泣き出す寸前みたいに濡れた目でオレの手の動きを追っている。
 まずは白いワイシャツを内側から押し上げている、ふたつの頂点から。軽く手のひらの中心部でワイシャツの上からそこに触れると、乳首が硬く勃起しているのが感じられた。

「ひゃふっ!あ、やぁああ・・・」

 柔らかく捏ねるように、手のひらでコリコリとした感触を愉しむ。葉月が自分から胸を押し付けようとしても、わざとその分手を遠ざける。気持ち良さと焦れったさに、葉月の表情が歪む。

「やっ!さわって、さわってよぉ!」

 やっと素直になったご褒美に、ワイシャツのボタンを外して、それまでとは逆にぎゅっと胸を直接揉んだ。乳首を指で挟むようにして、強弱を付ける。少し強めだが、暗示の効果で激しい快感しか感じないはずだ。

「あっ!あああっ!!」

 びくん、と身体を仰け反らせ、葉月は胸から身体中に広がる快感に身を任せる。後催眠暗示のせいで、オレの手で触れられた場所が、まるで神経が剥き出しになったように感じてしまうのだ。
 まるで葉月の胸を楽器のように、自由に、激しく揉む。それにあわせるように、葉月が快感の悲鳴を上げ続ける。
 オレの鼻を、どこか甘い匂いがくすぐった。興奮した葉月の匂いだ。もっと嗅ぎたくなって、オレは葉月の耳の付け根に舌を這わせて大きく呼吸する。それだけで葉月は鋭く息を吸うような声を上げて、細い身体を震わせた。

「むねっ!むねだけなのにっ!き、きちゃうっ!」

 ちゃんと呼吸が出来ているのか心配になるほど、顔を赤くして悶えている。受ける快感が激しすぎて、脚がガクガクと笑っているのが葉月の肩越しに見えた。もちろん、その脚を伝う白濁した液も。

「きちゃうって、なにがさ?」

 判っていても聞く。これはやはり、男女間では必要な作法だと思う。当然、胸を揉みしだく手の動きは継続中。この張りがあるのに蕩けるような柔らかさという矛盾めいた感触は、どれだけ触っても飽きがこない。成長の跡が見られないのがひたすら不思議だが。

「いやっ!だめっ、だめなのっ!あ、あっ、あっ、ひああっ!」

 乳首を強めに摘むと、葉月は全身を震わせて、激しく絶頂に達した。胸に置いたオレの手が、そのまま葉月を支える役を担った。葉月は半分意識をなくしたように、ほとんど脱力している。

「はぁあ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 葉月は呼吸が落ち着くにつれ、身体に力が入るようになったようだった。両手で流しの端に掴まり直し、なんとか自分の力で立ち上がった。それからオレの方に振り返ると、泣き濡れたような眼でオレを睨みつけた。

「なんてことするかなぁっ!」

 いや、甘えるとかはにかむとか照れるとか、そういう反応を期待するオレが馬鹿なのか?イッた直後に怒鳴るとは、コイツはいったいどういう了見か。あまりの出来事に、思わず「むぅ」と唸ってしまった。

「ご要望の通り、いちゃいちゃしたと思うけど?・・・はっ!まさかれいぷごっこなんてマニアックなのがしたかったとかっ!」
「違うっ!」

 大声を出したからだろう、葉月はぜひぜひと荒い呼吸を吐くと、振り返ってオレの胸倉を掴んだ。

「わたしは!隆宏といっしょにイキたかったの!ひとりでイッちゃったら、さみしいじゃないかぁっ!」

 いくら家の中とは言え、そんな事を大声でいわれたひにゃ、淋しいよりも恥ずかしいんですけど。
 仕方ないから、目の前の困ったちゃんの唇をキスで塞いだ。オレがそうするのは予想済みだったのか、舌は葉月の方から入れてきた。どこか甘く感じる唾液と共に、口の中が葉月の舌で犯される。

「んふ、ん、むぅ、あむ」

 喘ぎを漏らしながら、葉月は離れようとしない。オレの舌に絡み、歯茎の裏側を擦り、オレの唾液を吸い、逆にオレの口の中に唾液を送り込む。ツンと頭の中が痺れるような快感に、オレの身体も熱くなってきた。
 息苦しくなってきたのを契機に、唇を離した。葉月の口から突き出された舌は、まだそこにオレの舌があるかのようにくねっていた。
 オレはしゃがんで、両手で葉月のパンツを下ろした。よくもまぁと思うほどに、パンツは愛液でぐちょぐちょになっていた。葉月の片足だけ脱がすと、パンツをもう片方の足首に纏わりつかせたままで手を離した。ワイシャツが床に放り投げられたところを見ると、葉月は自分から脱ぎ捨てたらしい。
 顔を上げると、目の前に葉月の息づく秘所がある。さらに顔を上げると、興奮で蕩けたような顔で、葉月がオレを見下ろしている。オレはにやりと笑みを浮かべて、両手を葉月の秘所に向かわせた。

「や、それだめっ・・・」

 嫌がる言葉を口にしながら、葉月は抵抗をしない。抵抗するには、この手に与えられる快感の記憶が強すぎるのだろう。だってほら、オレは何も言っていないのに、葉月は自分から脚を開いて、腰を流しに預けてる。触って欲しがってるというのが、言葉よりも雄弁に伝わる姿だ。

「ほら、ここにも魔法を掛けるぞぉ」
「ひぅっ、だ、だめだよぉ」

 怯えたような声を出しながら、葉月は誘うかのように腰を振る。ひくひくと震える葉月の入り口も、オレの指を待ちわびているようにしか見えない。オレは遠慮する事無く、右手の中指を膣へ挿入し、左手の親指を愛液で湿らせてからクリトリスを触れた。

「ひぁあっ!はっ!あああああっ!!」

 ビクンと、葉月の身体が跳ねる。
 ひくひくと、葉月がオレの指を締める。
 2度目の、激しい絶頂。けど、休む暇なんてあげない。オレは強くなりすぎないように、左手の親指がクリトリスに触れるか触れないかという微妙さの愛撫を始める。右手の中指は、手首から捻るようにしながら、前後に抽送を始めた。

「ああっ!」
「ひ、んっ!」
「はひっ!んくっ!」

 途切れる事の無い嬌声。押さえきれない絶頂。まるで楽器のように、オレは葉月を演奏する。つられるようにオレの興奮も高まり、抑えが利かなくなる。
 少し強めにクリトリスを押し付ける。逃げるように引かれる葉月の腰を追いかけて、右手の中指がぐりぐりと膣内を掻き混ぜる。

「やぁっ、きて・・・はやく、きてよぉ!もぉ、がまんできないのぉ!」

 泣き出す寸前のような声で、とうとう我慢できなくなった葉月が懇願した。もう少しイキまくる姿を見たかったが、実のところオレも限界に近い。急いで服を脱ぎ捨てると、腰の位置を合わせるようにして立ち上がった。

「入れるぞ」

 オレの宣言に、葉月は潤んだ目でオレを嬉しそうに見詰めて、何度も首を縦に振った。オレは腰を進め、ぬるぬるでぐにゅぐにゅした葉月の中に自分のモノを挿入した。何度も味わった感触なのに、慣れる事の無い快感にオレの頭が沸騰しそうになる。

「あっ、あっ・・・はいる、はいってくるよぉ・・・たかひろのでいっぱいだよぉ・・・ふぁあ・・・こすれちゃう・・・」

 まるでうわ言のように葉月が震える声で呟くと、両手でオレの身体にしがみついた。それだけの動きで葉月の中のオレのモノが擦れ、腰が砕けそうになるほどの快感を生んだ。

「ああっ、まほうにかかったあそこが、すごいことにぃ・・・なっちゃったよぉ・・・」

 まだ効果のある暗示が、葉月の身体中を敏感にしているのだろう。何度も身体を震わせ、途切れる事無く小さな絶頂を繰り返す。その都度オレのモノをきゅっと締め付けるので、オレも堪えるのが一苦労だ。
 オレは片手を流し台に、もう片手を葉月の背中に回して、腰を動かし始めた。激しく濡れている葉月の中は、けれど擦れる感触を損なう事も無く、オレのモノを咥え続けている。外に出すまいと、奥へ引き込もうと、まったく別のイキモノのように蠢き、快感を搾り出す。

「すごっ!すごいよぉっ!たかひ、たかひろぉ!ひあっ!へんにっ、へんになるっ!あ、ふああっ!!」

 葉月が今まで以上に激しい絶頂に向かって昂ぶっていく。甘い香りの汗を流し、苦しんでいるとも笑っているともとれる不思議な表情で。
 今日、大丈夫な日だよな。
 なんて悠長な事を考えていられたのは、そこまで。あとはオレにも制御出来ないほどの快楽に押し流された。

「くっ」
「ひ、ああああああああっ!!」

 一番奥で、全てを出し尽くす勢いで射精した。それが葉月にとっても最後の一撃になったらしく、がくがくと身体を震わせながら悲鳴を上げる。

「あああああっ・・・あ・・・」

 ふつり、とスイッチが切れるように、葉月が失神した。オレは葉月を支えながら、数m先のソファーまで運ぶ余裕も無く、フローリングの床にワイシャツを広げて横たえた。ついでにオレも、葉月の横に自分の服を敷いて寝転がる。それだけで意識が暖かい闇へとどこまでも落ちていった。

― 2 ―

「なんで・・・なんで葉月は私にあってくれないんですか!?」

 今にも泣きそうな顔で、三原秋子がオレを睨んでいる。にこやかな顔で本を読むのが好きな図書委員って感じの子なのに、今は消えない傷の痛みに顔を歪めているように見える。

「わりぃ・・・」

 オレの、ただ謝っただけという響きの言葉に、三原はくっ、と唇を噛んだ。
 どれだけ葉月の事を心配しているのか、イヤというほどに伝わってきて、辛い。
 三原の横にいる裕が、オレと三原の顔をキョロキョロと心配そうに見ている。オレとはもう数年来の親友であるコイツは、優しさと気の弱さからこういう空気に弱い。

「別に、隆宏さんに謝って欲しい訳じゃないんです。でも、葉月が・・・親友の葉月が私にも会ってくれないなんて、今までなかったから・・・」

 悔しそうに言って、三原は俯いた。
 正直、三原が葉月をの事を思ってくれるのは、すごくありがたいと思う。
 けど、オレは葉月がそうした理由に心当たりがあって、しかも口にしてはいけない事だから、どうしてもうまく三原をごまかせない。結果、三原までも傷付くのは理不尽で、酷い話だと思う。

「確かにご両親の事はショックだと思います。けど、もうあれから3ヶ月にもなるんです。今のまま葉月が身体を壊しちゃったら、それこそご両親が・・・」

 三原の袖をつん、と摘んだ裕の指に、三原は言い過ぎた事を後悔するように言葉を止めた。裕は少しだけほっとしたように、三原を見詰めた。
 ああ、ほんとにコイツらイイヤツだ。
 裕だっておぼっちゃん然としてるのに、本当に大事な所で間違わずに動けるし、三原だって人の気持ちを思い遣る事が出来るヤツだ。
 オレと葉月が、裕と三原のようだったら良かったのにな。
 そんなのムリだけど。絶対に。

「いまはいろいろあって、葉月には余裕が無いだけだと思う。もう少しだけ・・・待っててくれないか。で、葉月の方から会いにいったら、普通に接してやって欲しいんだ。こっちから要求するばっかりで悪いんだけど・・・」

 三原がオレの心の奥まで貫くような目付きで、キッとオレを見上げた。
 言いたい事は山ほどあるんだろうけど、それでも言葉を飲むとオレに小さく頭を下げた。

「判りました。葉月の事をお願いします。それと・・・待ってるって、伝言をお願いします。ずっと、待ってるって」
「ありがとう。必ず伝えるよ」

 それは、たった2日前の出来事。
 オレは暖かいまどろみの中、ふと思い出してた。

― 3 ―

 ぷに。
 意識が戻ると、一番最初に感じたのは、何やらブタの鼻っぽく鼻の先端を押し上げられる感覚。いや、それをやられて意識が戻ったんだろう、多分。もちろんそんな事をするのはここにはたった一人で。

「何してる」

 意図してるのより、少し低めの声が出た。

「隆宏が目を覚まさないから、隆宏で遊んでたの。いっしょにする?」

 何を?
 酷く違和感を感じるお誘いだ。

「オレが葉月の鼻をブタっ鼻にして・・・面白いのか?」

 いや、SMでそういう道具があるって聞いた事があるけど、オレの趣味とは果てしなく限りなく右斜め上だと思うがどうだろう。
 それとも、葉月がそっち方向に目覚めたとか。う、オレは自分の趣味と主義と主張を押し殺してお付き合いしなきゃならないのか、もしかして。判った、おーけーだ。ロウソクと縄ぐらいまでは譲歩する。

「まさかぁ。するのはわたしと隆宏で、されるのは隆宏だけだよ。面白いかはわからないけど、ちょっとしたガクジュツテキきょーみってヤツだよね」

 なんだそりゃ。多分それ、用法を間違ってる。何がガクジュツテキきょーみか。
 そんなんでオレの疲れた身体を癒す為の睡眠を邪魔しやがりますですか。ってか、元気だなオマエ。

「まぁいいけど・・・いや、やっぱよくないからその鼻を押し上げる指を離せばか。・・・取敢えずここじゃなくて、あっちのソファーで横にならないか?ここじゃあ身体も休まらないしな」

 居間のソファーは、結構大きめでふかふかの革張りだ。密着すれば、二人で横になるのも出来る。
 重い身体をのそのそと立たせて、キッチンから居間へと足を運ぶ。後ろから足音の代わりに葉月の歓声が聞こえて、いやな予感とともに振り返った。

「わー、ほらほら、いっぱい出したねぇ。すっごーい♪」

 見れば、膝立ちで脚を開いて、アソコを指で開いている葉月。
 どろどろと、白濁した液体――オレの精液だ――が糸を引いて床にたれている。その量は確かに多目だが、そんな歓声を上げるようなものじゃないと思うのだけどどうだろうか。

「あー、ティッシュ持ってくるから、わざわざそんなの出すの、やめれ」
「だって、こんなに入ってるとは思わなかったもー。びっくり?」

 オレがティッシュの箱を持って戻ると、葉月はまだその行為を続けていた。何が気に入ったのやら。
 ただ、顔がさっきよりも赤い。どうやら、息む事で搾り出そうとしているみたいだった。一瞬、チューブのねりわさびという単語が脳裏に浮かんだ。

「んぅ、んーっ」

 葉月が唸ると、それが葉月の中でどのような動きを伴ったのか、ぱたっ、ぱたっと精液が溢れて滴った。そのまま茶色いフローリングの上に、たれて溜まる。

「うふふ、ほら、こんなにいっぱい♪」

 赤らんだ顔と、少し汗をかいた身体。床にはさっきまで葉月の中にあった精液。それを全裸で行っているのだから、なんて言うかエロい。エロすぎる。
 他の男が見たら、一瞬で強姦魔にクラスチェンジしちゃうぐらいに。
 その気が無かったオレが、一瞬でその気になっちまったみたいに。
 やばい、完全にスイッチはいっちゃったよ、オレ。

「なに、たかひ・・・きゃっ♪」

 葉月は言葉の途中でオレの股間に目を止め、嬉しそうな悲鳴を上げた。
 なんでそこからチェックするかな。いいんだけど。

「もぉ、隆宏のえっち♪もう一回、する?する?」

 二度も聞くな。しかもすげぇ嬉しそうだし。
 オレは葉月の小柄な身体を抱き上げて、キッチンから居間へと脚を運んだ。そっと葉月をソファーに下ろすと、葉月は悪戯っぽく微笑みながら、オレを揶揄するように見上げて手を伸ばした。

「不思議だよねぇ。あんなに出したのに、こんなにカチカチなんだもん。ね、舐めてあげるね」
「いいよ、汚れてるし」

 さっき葉月の中で果ててから、拭ってすらいない。
 さすがにそれは悪い気がした。

「だいじょび。もーまんたい♪じゃ、するね」

 葉月は「あ~、んっ」とか食べ物を食べさせる時の、日本中でやたらと有名な声を出して、オレの先端部分をかぷっと咥えた。舌でオレの弱い所を突っつきながら、じゅるるるるとはしたなくも吸引する。舌で先端をほじくるような動きをすると、オレの身体を鮮烈な快感が貫いた。

「ふぃもふぃひい?」

 もごもごと葉月が問う。今のオレには言葉の響きすら快感だ。オレの表情を読んだのか、葉月は満足そうにフェラチオを続けた。

「さんきゅ、これ以上したら、出しちゃいそうだ。もういい」
「だしても・・・いいんだよ?」

 根元を軽く握って上下に擦り、葉月はにししししと笑いながら言った。目をきゅっと細めて、オレの反応を楽しんでいる。

「出すなら口よりも、こっちのがいいな」

 オレは手を伸ばして、葉月の秘所を指で弄くる。既に溢れていた愛液が、指先に絡み付いてぬちゃぬちゃと音を立てた。
 膣の入り口を割って中指の第一関節を入れると、葉月が小さく呻いて身体をビクンと震わせた。陶酔したような表情が、快感による反応だとオレに教えてくれる。気を良くしたオレは、くちゅくちゅという淫らな音と、葉月の反応を愉しみながら、指をさらに深く挿入した。

「あ、はっ、はふ、ひ、ああっ」

 オレのモノにすがるように両手で掴まりながら、葉月は小さく喘ぎ続けた。唇の端から垂れた涎が、ひどくいやらしい印象をオレに与える。小刻みに膣の腹側の感触が違う所を擦ると、葉月は「あ、あ、あ、あ、あ、あ」と断続的に嬌声を上げた。

「締めると、指が動かせないぞ」

 ひくひくと締め付ける感触を指に得て、オレは言葉でいじめるように葉月に囁いた。わざと指の動きを止めて、葉月の反応を覗き見る。

「し、しめてるかなんて、は、わか、わかんなっ、くぅっ」

 突然指を止められたからだろうか、葉月は辛そうにそれだけ言うと、自分から腰をくいくいと小さく動かした。けど、オレは腰の動きに指を合わせているから、実際にはそれほどの快感は得られないだろう。

「ね、ゆびっ!ゆび、うごかしてよぉ!」

 半分泣きそうな表情で、葉月が懇願した。
 まるで自分がいじめっこになったような感覚に、心のどこかでぞくりとした感覚を覚えた。やばい、なんだかすげぇ愉しい。
 オレは葉月の耳元に口を近付けた。

「ゆびで・・・いいのか?」
「ふぇ?」

 低い声で囁くと、葉月が惚けたような表情でオレを見上げた。にやりと笑い掛けながら、オレは再度口を開いた。

「オマエが握ってるの・・・入れて欲しくないか?」

 そう、さっきから葉月はオレのモノを両手で握りっぱなしだった。それなのに指でして欲しがるなんて、葉月をいじめたくなるのも当然だろう。うん、オレは悪くない。

「ああっ!いれ、いれてっ、たかひろのぉ、いれてっ!」

 切羽詰った口調で言うと、両足をM字に折り曲げて自分で抱え込んだ。そうすると濡れてぐちょぐちょになったアソコも、どこか触って欲しがってるようにひくひくとしてるお尻の穴も、全部が晒されることになる。

「そんな格好で入れて欲しがるなんて、葉月はやらしいな」

 そう言いながら、オレのモノの先端で葉月の入り口を擦った。それだけで葉月の身体がひくんと反応する。

「んっ!じっ、じらさないでっ!ひあっ、あっ、おかしっ!おかしくっ、なっちゃっ、ああっ!や・・・やらしい・・・わたしに・・・い、いれてっ!!はやくぅ!!」

 そりゃ大変だ。
 オレは角度を調整すると、腰をゆっくりと進めた。先端から根元まで、破裂しそうなほどに大きくなったモノが、ゆっくりと葉月の中に入り込む。「あっ、はっ、はふっ」と喘ぎ混じりの速い呼吸をする葉月に合わせて、葉月の中が収縮する。オレをイカせるために、まるで絞りたてているかのような動きを見せる。

「ひあっ、あっ、あっ、くぅっ!!」

 一番奥、コツンと当たる感触と共に、葉月の中がヒクヒクっと連続で痙攣した。高い悲鳴を上げて、葉月が頭を仰け反らせる。挿入しただけで、絶頂に達したらしい。
 でも、オレはまだだし。
 うんうんと一人で納得し、オレはゆっくりと抽送を開始した。

「ひ!」

 葉月がビクっ!と顔を起こした。

「だめっ!い、イったあとは、びんかんだからっ!ひ、ひゃうっ!」

 悩乱したように暴れる葉月を押さえて、オレは自分でも最高にイイ笑顔と思える表情を作ってみせた。いわゆる爽やかさんな感じに仕上がったと思う。これであと、キラーン☆と歯が光れば完璧だろう。

「ヤダ♪」

 抗議の声を上げる葉月を完璧に無視して、一気に腰の動きをトップギアにいれる。葉月の悲鳴と一緒に、オレの中の快感が加速する。唇を噛み締めないと、すぐにでもイってしまいそうだった。
 
「ひっ!ひあっ!こ、こわれちゃうっ!アソコ、こわれちゃうよぉっ!」

 葉月が泣き叫ぶ。けど、経験的にまだ大丈夫だ。どちらかというと、オレの方がもたないんじゃないかと不安になる。葉月の中は、ひくひくとオレのモノを絞り立てているし、その蠕動はまるで何枚もの舌でねぶられているようですらある。

「あ、あひっ、あー、は、あー」

 葉月の反応が変わってきた。どこか虚ろな目付きになり、全体的に微笑んでいるような、蕩けた表情をしている。半分開いた口からは涎が頬を伝い、どこを見ているか判然としない目からは歓喜の涙が溢れている。
 快感が葉月の限界を超えて、イキっぱなしの状態になったらしい。全身が弛緩し、葉月のアソコだけが別のイキモノのようにオレを責め立てる。

「あは・・・すご・・・すごいよぉ・・・いいの・・・すごく、いいよぉ・・・」

 虚ろに呟く葉月の耳元で、オレは限界が来た事を告げる。

「もう、オレもイク。そうしたら、今まで以上に凄い快感を感じる。今まで以上に深くイクんだ」

 まるで暗示を掛けるように。
 聞いているのか・・・それとも意識があるのかも判然としない葉月を相手に、オレは臨界点を突破したモノを一番深い場所に突き入れた。身体の中の精液を全て叩き付けるような感覚とともに、何度も葉月の中に射精する。

「あ゛、ひっ!」

 葉月が本日最後の絶頂に達した。半分白目を剥きながら、苦痛に耐えるように歯を噛み締めている。仰け反ったまま葉月はひくひくと痙攣し、それから急に全身が軟体動物になったみたいに弛緩した。

「ふぅ」

 葉月の中からオレのモノを引き抜くと、オレは疲れのあまり溜息を吐いた。だらしなく開かれた葉月の脚の付け根から、今出したばかりの精液が溢れるのが見えたが・・・綺麗にするだけの体力が無かった。
 オレは葉月の邪魔にならないように、ソファーに身体を投げ出した。いつの間にか、葉月はすやすやと安らかな表情で眠っていた。オレは葉月の寝息を聞きながら、意識が闇に吸い込まれるように眠りへと引き込まれた。
 欠けたる所の無い、完璧ないちゃいちゃっぷりに自分自身で満足しながら・・・。

― 4 ―

「・・・ちゃん・・・おにいちゃん・・・朝だよ、おきて・・・」

 慎み深い、下品な大声とはまったく無縁な声で、オレは朝の訪れを得る。
 この声は、オレの妹、葉月のものだ。
 声と一緒にゆさゆさと身体を揺するのも、どこかもどかしいほどに柔らかい力でだった。けど、これはこれでずっとしてもらいたい気がしないでもない。オレを起こすという目的からすると、逆効果だぞ葉月。

「ね、学校に遅れちゃうよ?おにいちゃん、おきて」

 なんだかその困ったような口調で、オレが葉月を苛めてるような錯覚を覚えた。しかたなく目を開けて、葉月に笑いかける。

「おはよ。今日も可愛いな、葉月は」
「えっ、あっ・・・え、えとっ・・・」

 しょっちゅう誉めているのに、葉月はいつまでたっても慣れる様子がない。
 今も恥ずかしさと嬉しさの混ざり合った顔でパニくってる。兄バカだとは思うが、この表情も可愛くて、オレの心のアルバムに大事にしまいこむ。
 オレは上半身を起こすと、まだ頬を赤らめている葉月に素早く目覚めのキスをした。葉月の「ひゃっ」という声を聞きながら、やっと眠気が取れてきたと感じた。

「さて、面倒だけど学校に行くか」

 未練を振り切って、オレは立ち上がった。

「あ、あれっ?」

 朝食を食べている最中、葉月が驚いたような声を上げた。
 顔を上げてみると、手の甲でごしごしと目元を擦っている。けど、後から後から流れる涙は、とめどなく頬を濡らしていた。
 またか・・・。
 オレは箸を置くと、手を伸ばして葉月の頭を撫でた。抱き締めたりとか、過度のスキンシップは逆効果と今までの経験から予測済みだ。
 葉月の涙が止まったのは、2,3分後のことだった。笑顔でごまかそうとするみたいに、葉月は小さく笑った。けど、赤くなった目元が笑顔を台無しにしてる。

「ごめんね、おにいちゃん。昨日の記憶が幸せ過ぎて、なんだか嬉しくて涙がでちゃった。へんだよね、わたしってば」

 うそつき。
 オレは、葉月が時々夜中に声を殺して泣いてるの、知ってるんだぞ。
 お前が不登校を始めたの、オレ達が始めて一つになってからだし。
 その涙が幸せで流れたものか、オレに判らないはずがないじゃないか。
 ・・・けど、そう口に出来るはずもない。
 求めてきたのは葉月。
 けど、受け入れたのはオレだ。
 それは、親父とお袋が飛行機の墜落事故で亡くなったと連絡を受けた日の夜の事。
 それは、それまで仲の良い兄妹という幻で隠していた思いを、お互いに隠しきれなくなった日の夜の事。
 近親相姦。
 恐ろしいほどに甘美な麻薬。
 だけど、オレほどには強くない葉月は・・・その麻薬を受け止めるほどには強くは無い葉月は、その瞬間から少しずつ壊れていった。オレを好きになったから、罰が当たったのだ、と。何もかもを自分のせいにして。
 だから催眠術を齧っていたオレは、葉月の心の苦痛を軽減するために、葉月の中に『血の繋がっていない恋人の葉月』という人格を構築した。せめてオレの事を好きでいる自分を嫌わなくていいように。せめて、オレのコトを嫌いになれない自分を嫌わなくていいように。
 本当は葉月の不安や苦痛を直接的に取り除きたかったのだけど、それをしなかったのは葉月自身の要望で叶わなかったからだ。
 幸せな幻に逃げたくないという葉月の思いから、その人格で苦痛を忘れられるのは、日曜日――安息日――だけとなった。
 葉月がオレの事を嫌いになるか、血の絆なんて笑い飛ばせるぐらいに強くなれれば良かったのに。
 オレと葉月が恋に落ちるなんて、生まれた時から決まってた事なんだから。
 オレにとって葉月は、誰よりも近い異性で。
 葉月にとってオレは、誰よりも近い異性で。
 ほら、恋に落ちないはずがない。
 なのに、葉月はオレのその言葉を聞いても、儚く透き通った笑みを浮かべるばかりで。
 ばか・・・だな・・・。葉月・・・。

― エピローグ ―

「たーかっひろっ♪」

 屈託なく、彼女がオレに笑い掛ける。

「だぁいすき・・・だよっ」

 どこか照れくさそうに、顔を少しだけ赤らめて。
 にしししし、なんておちゃらけて笑いながら。
 ひどく、幸せそうに。

「オレもだぞ」

 オレの返事に、嬉しそうに目を細める葉月が、胸が痛くなるほどに、切ない。

「ずっといっしょにいようねー」

 オレの手に自分の手を重ねて、葉月が歌うように言う。
 安息日ごとに、繰り返されてきたやくそく。

「おー、とうぜんなぁ」
「あははっ、なんかてきとーだー」

 葉月が笑う。
 葉月が、笑う。
 幸せそうに、笑う。

 たとえ偽りでも、葉月が泣かなくていいのなら・・・。
 たとえ偽りでも、葉月が笑えるのなら・・・。
 これからもオレは、虚構に満ちた安息日を、偽りの葉月とともに演じ続ける。
 そして、オレはどちらの葉月も愛していこう。
 妹のように。
 恋人のように。
 いつまでも――

< おわり >

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