其は打ち砕き、破壊せしモノ Vol.4_1

Destruction.4-1 ~其は全てをコワし、闇に帰すモノ~

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 その言葉にオレは、真の首に手を伸ばした。
 真が怯える顔を浮かべるのが、ゾクゾクする程楽しかった。
 自分と同じ顔で、自分では浮かべる事の無い表情。

「あ・・・なに・・・」

 真に構わずに、オレは真の首を握り潰した。もともとコイツは真の意思の一部だ。生きているものとは違う。それなのに、手から伝わる感触はやけに生々しく、破壊の衝動に愉悦さえ感じた。
 だらんと垂れた真の頭が、悲しそうな瞳でオレを見上げている。

「ひどいよ・・・。いたい・・・」

 オレは、ヤツの泣き言に笑みを浮かべた。確かに邪神の力を封じたのは凄いが、それもここに隠れているのが見付かるまでのことだ。封印にその力の大半を裂いている以上、オレの攻撃を防ぐ事は出来ない。簡単なことだった。

「お前も、オレの一部にしてやる。感謝しろ」

 オレは、右手を巨大な顎に変形させると、真の意思も、力を封じた箱も、全てを飲み込んだ。オレの中に、強大な力が満ちた。荒れ狂う嵐の海のように、圧倒的で絶望的な力だ。

「ははははっ!!」

 その力に、オレは悦び笑った。爽快だった。これなら神とでも戦える、地球を木っ端微塵に破壊する事だって可能だ。真の力は本当に邪神の力と相性が良い。そういう意味で、真に感謝しても良いくらいだ。

「待っていろ、EGW_X1!」

 オレは、意識の底で雄叫びを上げた。

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 沙姫は、身体と魂をゆっくりゆっくりと蝕まれていった。その全てを蝕まれた時、封印されていた邪神が復活する・・・そう認識していたが、沙姫にはどうする事も出来なかった。
 苦痛も無く、快感も無い。
 先程までは酷く近かったそれらは、今は酷く遠かった。
 まるで他人事のように、沙姫は自分が消えて行く様子を眺めていた。

「真ちゃんに・・・会いたいなぁ・・・」

 それまでまったく頭に浮かんではいなかったが、ふと思い付いたその考えは、瞬間的に確固たる願いとなった。

「会いたい・・・うん、会わなきゃ・・・」

 それは、生きていたいという思い。自らを鼓舞する為の言葉。

「まだ、死んだかなんて、判らないもの」

 そう言いながら、心のどこかで確信めいたものを感じていた。あんなに自己中心的な性格の魔王が、わたしの真ちゃんが、あっさり殺される訳が無い!
 心の中に想いが満ちて、それは力となって外に溢れた。
 自分を取り巻く邪神の意思が、沙姫の力に怯んだ。

「わたし、死んじゃう訳にはいかないの。真ちゃんに、会うから」

 それは、まるで確定した未来のように、凄く自然に、酷く明るく、沙姫は微笑みながら邪神に語り掛けた。沙姫の魂を鎧う聖性が、煌煌と世界を照らした。
 邪神の苦々しげに思う気配が、瘴気のような闇を生み出した。沙姫の心に、邪神の意識が接続された。

───貴様・・・何故、我を拒むか───

 常人ならば、その巨大な意思に抗すべくも無く、ひれ伏してしまうかも知れない。しかし、今の沙姫は、大事な事を思い出した・・・いわば生き足掻く者。まっすぐに正面を睨みながら、真っ向から圧力に抗っていた。

「もう一度真ちゃんに会うために、わたしはわたしを無くす訳にはいかないもの!」

 沙姫は、力を込めて叫んだ。すると、沙姫を包む空間の雰囲気が変わった。
 嘲笑うように。
 憐れむように。

───真という者は、消え失せたのに・・・か?───
───魔王という存在に、全て食らわれたぞ───
───絶望に嘆くが良い───
───諦観に溺れるが良い───
───貴様の恋焦がれる相手は、この世界から消え失せたぞ!───

 リアルな映像が、目の前に映し出された。
 真の首を握り潰す魔王。
 真を食らう魔王。
 力に溺れる魔王。
 優しさを感じられなくなった、魔王。
 沙姫は、その映像に抗する事も出来ず、心が絶望に染まるのを感じた。なぜか、それが真実だと判った・・・判って、しまった。自分が逢いたい人が、もう二度と逢えない事を、心の深い部分で納得してしまった。
 沙姫は、もう何も見たくないと、瞳を閉じた。何も考えたくは無いと、心を閉ざした。
 再び、邪神による浸蝕が始まった。もはや沙姫に、抗う術は何も無い。

- 6 -

 目の前に、EGW_X1の振るう闇の大剣が、圧倒的な質量を持って迫っていた。
 どうやら、オレの中での出来事は、一瞬にも満たない時間での出来事だったようだ。

「ははっ」

 オレは、笑いながら左手を突き出した。闇の大剣に触れた瞬間、オレの左手は飲み込まれるように消えて行く。苦痛は無い。それは今までとまったく同じ。しかし、今のオレなら違う結果を導き出せる・・・即ち、勝利を。

「はははっ!」

 オレは、目の前で動きを止めた闇の大剣を見ながら・・・その向こうで、無表情な中にもきょとんとした顔をしたEGW_X1を見ながら、哄笑した。圧倒的な力を揮うのが、こんなにも愉快だとは、想像も出来なかった。オレは、狂ったように笑い続ける。

───オマエは、こんなにも愉しかったのか?───
───相手をムシケラのように蹂躙するのが、こんなにも愉しかったのか?───

 オレは、EGW_X1に向かって、心の中で問い掛けた。
 この愉快な気分を長く感じたくて、大きく笑いながら。

 EGW_X1が、茫然と視線を下に向けた。闇の大剣を握る自分の手を・・・その手を下から押さえ付ける、何も無い空間から生えたオレの左手を。
 よろよろとEGW_X1が後ろに下がると、それに伴ってオレの左手が消えて行く。そして代りに、大剣に飲まれた左手が元に戻る。ついでに腹と右腕を修復して、五体満足な状態で立ち上がった。

「ははっ・・・理解出来ないって顔だよなぁ」

 無表情な中に、怯えにも似た感情を読み取って、オレは笑みを深くしながらEGW_X1に近付いた。EGW_X1が下がるが、それも無駄な足掻きだ。

「教えてやるよ。・・・オマエのワザは、触れた物を無に帰すんじゃないんだ・・・別の世界、別の次元、別の宇宙・・・ここじゃあないどこかに、触れた物をばらばらにばら撒き散らす・・・それがこの闇の正体さ。
 今のオレは、オマエに負けた時のオレじゃあない。・・・今のオレはこの闇を制御して、自分の好きな所に触れた物を飛ばすように作り変えられる・・・そういう事だ」

 今は、EGW_X1の揮う力の質が、完全に理解出来ていた。それどころか、外側から制御する事も容易だった。それは、EGW_X1が倒すべき敵ではなく、蹂躙すべき対象に変わったという事を意味している。

「ッ!」

 EGW_X1が最後の足掻きとばかりに、オレの心臓に向けて、闇の大剣を構えた。そのまま身体ごと突っ込んで来る。
 オレは嘲笑を浮かべて、愛しい相手を迎えるように両手を広げた。大剣が、オレの身体を貫く。振り返れば、背中から剣が突き抜けている。笑える光景だった。
 ダメージを感じさせないオレを見て、EGW_X1は絶望に剣を取り落とした。何の感触も残さず、オレの身体をすり抜けて落ちる剣。

「死ぬ前に、愉しませてやる。感謝するが良い」

 オレは虚空に手を伸ばし、EGW_X1に纏わり付く闇を剥ぎ取った。そこには、全裸で戦う術を無くしたEGW_X1が、酷く寂しげに立っているだけだった。

「わたしは・・・負けるのですか?」

 輝くような美しい裸身を隠す事無く、EGW_X1は呟いた。
 オレは、その下らない問いに、舌打ちをした。

「負けるんじゃない・・・負けたんだよ、オマエは」

 当たり前の事のように言って、オレは次の役者・・・サイズが近付くのを待ち受けた。サイズはEGW_X1がオレに敗れるとは考えもしていないのだろう、ゆっくりと近付いて来るのが感じられた。

「何をしている、EGW_X1ッ!早くそいつを滅ぼせっ!!」

 サイズが近付いて、最初に言った言葉がそれだった。信徒を殺されたのが腹に据えかねるのだろう、牧師然とした格好からは想像出来ないほど、その表情は怒りを表に出していた。

「どうした、EGW_X1ッ!」
「うるさい」

 がなるサイズに、オレは煩わしさを感じ、手を振った。忽然とそこに現れる、髪の毛よりも細い闇の針。それが全てサイズの身体を貫いた。

「え?」

 サイズは茫然と自分の身体を見下ろした。目に見えないほどの小さい穴が身体中を穿ち、じくじくと血が溢れ出していた。苦痛は無い。だが、待っているものは、絶対の死。命の涯、全ての終焉。
 サイズは脱力したように、がくりと跪いた。だが、まだ死なない。そういう場所を狙ったのだから。

「おとうさま・・・ッ!」

 EGW_X1が、今までに無いほど感情の篭もった声を上げた。
 ふん・・・それが本当なら、サイズは娘を犠牲にして邪神と融合させた・・・そういう類の外道なワケだ。
 オレは、EGW_X1を背後から捕まえると、自分の性器をジーンズから取り出した。

「きさ・・・ま・・・」

 サイズが、狂おしい様子で声を絞り出す。これからオレが何をしようとしているのか、気が付いたのだろう。オレは期待した通りの絶望と憎悪の顔が見れて、ニヤリと口の端を吊り上げた。

「あ、くぅッ!」

 濡れてもいない、EGW_X1のぴったりと閉じた秘所に、オレは遠慮無く突き入れた。EGW_X1にこういう言葉を使うのが正しいかは判らないが、感触から処女ではないというのが判った。苦痛か快楽か、EGW_X1が小さく呻く声が聞こえた。

「んぅ・・・ぁうん・・・」

 奥まで進めると、EGW_X1はどこか安心したような喘ぎを放った。まさか、これがオレの与える快楽の上限と勘違いしてもらっては困る。力を取り戻したオレは、他の存在に対する影響力は、計り知れないのだから。例えそれが、邪神の紛い物を相手にしているのであったとしても。

「あぐっ!!」

 オレは犬歯を伸ばすと、EGW_X1の首筋に突き立てた。背後からEGW_X1を拘束していた指も、先端を身体に抉り込ませた。邪神の身体ともなれば、これぐらいで死にはしない。あとは、挿入した男性器も随所から棘を伸ばした。思った通り、普通の人間であればショック死するほどの苦痛も、EGW_X1には悲鳴を我慢出来る程度の苦痛でしかなかったようだ。

「くく・・・。もっと別の悲鳴を、たっぷり上げさせてやる」

 オレはEGW_X1の耳元で予告すると、刺したままの犬歯、指先、膣内の棘から、大量に催淫液を分泌した。しかも、人間に使えば一瞬で廃人になるほどの純度で。体内に収まり切らない催淫液が、傷口を押し広げて溢れ出した。首筋から、腕から、脇腹から、胸から、秘所から、白濁した催淫液が滴り、EGW_X1の美しい肌を汚した。その瞬間、押さえ付けていたEGW_X1の身体が、跳ね上がるように痙攣した。

「え?・・・あ・・・ひッ・・・!!」

 身体中に注入された催淫液は、すぐに効果を発揮した。EGW_X1の身体を、ココロを、甘く官能に蕩かして行く。酷く破滅的で、だからこそ逃げられない・・・そんな麻薬にも似た、快楽。それは、強引に体内に注入された場所以外でも、素肌に触れていれば吸収されるようになっていた。まさに全身が性感帯となり、欲情に震えるようになる。
 オレに押さえ込まれながら、EGW_X1の身体が何度もビクビクと痙攣した。もう、十分に催淫液がその身を犯しているようだ。

「ほら、悦べ、喘げ、悶えろっ!」

 オレは、棘が生えたままのモノで、EGW_X1の膣内の抽送を開始した。内部の襞を引掻き、肉を傷付けながら、何度も何度も突き入れ、引き抜く。

「あぎぃぃっ!あ、うあああああっ!」

 獣のように、EGW_X1が吼える。しかし、それは苦痛だけでは無い。苦痛だけなら、溢れる血を押し流すように、愛液が溢れかえったりはしない。催淫液の効力が、気が狂うほどの激痛を、脳を焼き焦がすほどの快楽に転化しているのだ。
 EGW_X1の上体が崩れ、地面に両手を突く。腰だけが高く突き上げられ、オレが一突きする毎に、身体全体が前後に揺れる。

「くく」

 オレは目の前でふるふると震えるEGW_X1の白くまろやかな尻を見て、面白い事を思い付いた。早速実行に移すべく、右手を振り上げてその尻を平手で叩いた。パァン!と小気味良い音が響いた。

「ひぐっ!」

 ビクン、とEGW_X1の背中が波打つ。EGW_X1が歌う快楽の悲鳴を愉しみつつ、オレは何度も尻を叩いた。その都度震える身体。その都度締め付けをきつくする膣内。身体中から湧き上がる快楽に、EGW_X1は全身を熱く火照らせて、悦びの声を上げた。

「せっかく四つん這いになったんだ、そのまま前へ歩けよ」

 目の前、少し離れた場所に、サイズが跪き、こちらを見詰めている。視線だけでオレを殺そうとするかのように、ぎらぎらと殺意に満ちた目だ。全身が真っ赤に染まるほどに出血していながら、よくも気合がもつものだ。
 再度オレが尻を叩くと、EGW_X1の右手が持ちあがり、心持ち前に降ろされた。続いて足が動き、前へと進もうとする。

「ひうっ!ひゃんっ!」

 這う動作でオレの棘が余計に刺さり、それがEGW_X1に激しい快楽を刻み付ける。もう、頭の中で命令をちゃんと理解出来ているかも不明だ。もしかしたら、気持ち良いから這っているのかも知れない。
 のろのろと動くEGW_X1に、オレは何度も尻を打ち据えた。白い肌が赤く変わって行くのが、目に愉しい。2分ほども掛けて、やっと目的の場所に辿り着いた。

「お前の父親に、フェラしてやれよ。上手くイカせられたら、命は助けてやってもいいぞ」

 オレは、サイズの目の前でEGW_X1を貫いたまま、こいつらにとっては魅力的な提案を口にした。もちろん守る気は無いが、その過程を愉しむには丁度良い。でも、EGW_X1がまともに判断出来るかは判らないが。まぁその時はその時で、サイズが死ぬまでEGW_X1を嬲って、それから心を嬲るために、催淫液を解毒してやればいい。

「おと・・・う・・・さ、ま・・・」

 どうやら、何とか快楽に蕩けた頭でも、言葉は理解出来たようだった。EGW_X1は右手を伸ばすと、サイズの股間で手を動かした。まるで焦らしているのではないかと思うほどゆっくり、サイズの縮こまったモノを取り出した。EGW_X1の小さな手と較べても、サイズのそれは惨めなほど小さく見えた。

「んぁあ・・・」

 EGW_X1の柔らかそうな唇が開き、自ら顔を寄せて、サイズのものを咥えた。それは酷く倒錯的な光景だが、サイズが興奮するには至らなかったようだ。失血死ぎりぎりの人間なら、それが当たり前かも知れないが。

「んんぅん、ん、んふっ、ぅんんっ!」

 オレに子宮口まで深く抽送されながら、EGW_X1は必死に舌を躍らせた。唇の端から、ちゅびっ、ちゅくっ、という音が洩れる。しかし、当然死に掛けの男が勃起する訳も無く、EGW_X1の顔に、微かな焦りが浮かんだ。

「ぅぐぁ・・・」

 サイズの土気色の唇から、苦痛とも快楽とも判断のつかない呻き声が洩れた。目の端からは、悔し涙が流れている。それは、オレの心を楽しい気持ちで満たしてくれた。コイツはオレに、分不相応にもちょっかいを掛けてきたのだから、ただ殺すのでは面白く無い。少なくとも、不愉快な気分を払拭できるぐらいには役に立って貰わなければ、な。

「どうした、EGW_X1・・・そんな程度じゃあ、父親が死ぬ方が早そうだぞ」

 オレの嬲る言葉に、EGW_X1が口淫を再開した。同時にオレも、EGW_X1の腰を手で固定して、ごつごつと抽送を始める。一回子宮口を突く毎に、身体が戦慄く。一回入り口付近まで引き抜く毎に、棘に刺さる事も厭わず、膣壁が締め付け、絡まる。どちらも、EGW_X1にとっては身体が蕩けるほどの快楽だろう。
 EGW_X1の喘ぎが、オレとサイズの鼓膜を叩く。それでもEGW_X1はサイズのモノにフェラチオするのを止めなかった。その熱意が通じたのか、サイズのモノが硬度を増した。

「んふぅ、んぷぁっ、あ・・・あはっ・・・おとうさ・・・おっきく、なったぁ・・・うふ・・・あ・・・」

 嬉しそうに、EGW_X1が笑う。しかし、それはどこかココロの空虚さを感じさせる笑顔だった。もう、コワれてしまったのかも知れない。どうせ、最終的には滅ぼすつもりなのだから、それはそれで問題は無い。

「あはん・・・すてき・・・すてきです、おと・・・さま、の・・・ひゃあぁんっ!あふ、あぁん・・・」

 EGW_X1は口ではぁはぁと喘ぎながら、イヤらしい言葉を垂れ流す。既に、何が目的でフェラチオしているのかも、判らなくなっているようだった。
 EGW_X1の様子を見て、サイズの顔に絶望が広がった。

 ───ここまでか・・・───

 オレは、EGW_X1の腰を掴んでいた右手を離し、サイズの顔面に向けた。それで、自分が殺されるのが理解出来たのだろう。疲れ切った表情にどこか安堵の色を浮かべて、サイズは自ら目を閉じた。
 オレは、サイズの頭を衝撃波で吹飛ばした。内容物を盛大にぶちまけ、サイズの身体が後に倒れて行く。その瞬間、どういった肉体の作用か、EGW_X1の口から抜けたサイズのモノが、精液を大量に射精した。びゅくん、びゅくんと何度も噴き出したそれは、EGW_X1の顔や胸や髪の毛にべったりと貼り付き、汚した。

「あはっ!こんなにいっぱい・・・あぁん、すご・・・ひゃんっ、あ・・・あはぁっ!」

 EGW_X1は嬉しそうにサイズの精液を浴びると、舌で愛しそうに舐め取り、広げていった。その目は快楽に濁り、すでに正常な判断は出来なくなっているようだった。EGW_X1の狂態に、オレもそろそろ終わらせる事にする。

「あっ!はっ!つよ・・・つよいよぉっ!んっ!お、おとうさ・・・あひっ!!」

 オレの突き入れるリズムに、EGW_X1が切れ切れの嬌声を上げる。それはまるで、大好きな父親に犯されているようにも見える。EGW_X1の高まりに合わせて、オレは激しくぶちまけた。

「あっ、あつっ!は、ひゃんんぅ!あはっ、あははっ!ぁははははっ!」

 凶悪な程の絶頂に、EGW_X1は笑いとも悲鳴ともつかない声を上げた。身体が何度も痙攣し、仰け反る背中から、汗が飛び散った。そのままEGW_X1の腕から力が抜けて、地面に裸で倒れ込んだ。目を見開いたまま、唇を虚ろな悦びに開いたままで、身体を何度も痙攣させている。まるで、討ち捨てられた人形のように。

「これで終りだ。お前も死んで、オレの力になれ!」

 オレの右手が伸びて、EGW_X1の力の源たる心臓を抉り出した。身体とは繋がっていないのに、それはオレの手の中で、力強く鼓動を打ち続ける。ただ手に持っているだけで、力が流れ込んでくるようだった。オレは、EGW_X1の心臓を、ゆっくりと口に近付けた・・・。

- 跋 -

 時間は正午に近付いた頃の事。空は、分厚い雲に覆われていた。遠くからは、オレを祝福するように、激しい雷鳴が鳴り響く。

「くくく、随分と成熟したなぁ。思わず犯したくなるぜ」

 オレの視線の先に、まるで別人に生まれ変わったような沙姫が佇んでいた。一糸纏わず、シミひとつない肌を惜しげも無く晒している。掌に余るほどのボリュームの胸は、理想的なラインで、乳首がつんと上を向いている。くびれた腰から尻に掛かるラインも絶妙で、酷く色っぽくなっていた。放つ気配で気付かなかったら、別人として認識していただろう。目で見て同じ部分など、顔に微かに片鱗を残すのみで、それ以外はまったくの別人にしか見えない。
 ただ、半分閉じられた目は酷く虚ろで、まともな精神状態に無い事が伺えた。
 まるで、何かに絶望してしまったかのように。

「ねぇ・・・もう、まことちゃんはいなくなっちゃったんだね・・・」

 ぞっとするほどに、抑揚と感情の抜け落ちた声だ。人形のような無表情さといい、どこかEGW_X1に似ていた。
 それは、当然の事なのかも知れない。何しろ、恐らく沙姫は、邪神と融合したのだろうから。

「あぁ、全部がオレと混ざり合ってる。そういう意味じゃ、いなくなったな」

 この後に起こる事が予想出来るのに、オレはワザと素っ気無く答えた。思った通り、沙姫の放つ気が一気に高まる。オレはぞくぞくするような悦びを感じた。力のあるヤツを力で屈服させる快感・・・一度味わってしまうと、歯止めが利かなくなっていた。もう、何が目的でここまで来たのか、どうでも良くなっていた。

「どうして?どうしてまことちゃんはいなくなったのに、あなたが生きてるの?そんなのおかしいよね。おかしい・・・うん、おかしいよ・・・」

 おかしいのはお前の頭だと言ってやろうかと思ったが、オレはにやりと笑うにとどめた。どうやら沙姫は、邪神と融合した事と真がいなくなったという事から、精神に異常を来たしたらしい。憐れと言えない事も無いが、勝手に壊れるなら仕方が無い事でもある。

「おかしいよ・・・。う、ああああああああああああっ!!」

 突然、沙姫が自分の身体を抱き締めながら、悲鳴を上げた。苦痛に苛まれるかのように、身体を折り曲げる。すると、傷一つ無い背中を突き破るように、羽が生えてきた。
 左側には白い鳥の羽根と黒い鳥の羽根と蝙蝠のような羽根。
 右側には翼竜のような羽根と、蜻蛉のような羽根。
 数も形も、歪で異形だった。
 しかし、それが沙姫の武器なのだろうと言う事は、感じる力からも明白だった。
 それで良い。それでこそ、倒し甲斐があるというものだ。
 ゆらりと、沙姫が顔を上げる。どんよりと曇った目に、どこかぎらぎらとした光を湛えている。沙姫の中で、力が暴発しそうな程に高まるのが感じられる。

「さぁ、始めようか!!」

 オレは、喜悦の声を上げた。
 今、狂った神と狂った魔の織り成す、新たな闘いが始まる───。

< 終わり >

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