EDEN 3rd 第四章

第4章

─ 1 ─

 ぼくは、どんなにがんばっても赦される事の無い、最悪な罪をこの胸に抱えている。
 ぼくが、ぼくの意思でやった事だ。
 言い訳なんて、欠片も思い付かない。
 それどころか、言い訳を言うだけの資格すらも、ない。
 だから、ぼくは──。

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 ぼくは、右手に少しだけ力を込めた。
 ぼくの手の中には、かなたの左手がすっぽりと包み込まれている。ぼくの手が少しだけ汗ばんでいるのが恥ずかしいのに、かなたは手を離すのを許してくれない。まるで何かの罰ゲームみたいに、かなたと手を繋いだまま、ぼくは館への道を歩く。

「大丈夫ですよ、雄一さん」

 かなたがぼくを見上げて、安心させるように微笑んだ。

「椎名さんは、頭がとってもいいんです。感情だけに流されて、何もかもを壊しちゃうようなことは、しませんから」

 そう・・・ぼく達が出した結論は、椎名さんが冷静になる頃を見計らって、今のかなた達の想いを理解してもらう・・・それだけだった。
 考えて見れば、ぼく達が抱えている問題は全て、目にも見えず、形にも出来ない最たるもの・・・こころとか、たましいの問題なのだった。それは、理解するのも、理解してもらうのも、酷く困難だと思う。だとしたら、『誠意ある行動』・・・それ以外には解決の手段は無いと思う。
 問題は、彼女が激昂して、夜のお泊りを止めて帰ってしまうのでは無いかという事だ。せっかくの機会なのだから、せめてそれは成功させたい。かなたの言葉は、その事を危惧しているぼくを、安心させる為のものだ。

「うん・・・そうだといいね」

 ぼくは祈るような気持ちでそう答えた。
 それと、問題はもう一つある。椎名さんに確認したいけど、今は無理だろう。
 『EDEN』の事、だ。
 なぜ椎名さんが『EDEN』を・・・『EDEN』の効能を知っていたのか・・・。
 『EDEN』は確かに地下室に置いておいた。けど、祖父の研究資料関係は全て、金庫の中にしまってある。ただ見つけただけでは、あの結論には辿り着けないと思う。

「はぁ・・・」

 ぼくは溜息を吐いた。問題が山積みで、今にも潰されそうだ。ぼく一人だけだったら、確実にそうなっていたと思う。それが贖罪だと言うのなら、仕方の無い事だとも思う。けれど・・・。
 ちろりと、隣でうっとりと微笑むかなたを見下ろした。
 ぼくが一人ではないという、確実な実感。

「まぁ、がんばってみるさ」

 ぼくの言葉に、かなたが笑みを深くした。

─ 2 ─

 夕飯は、とても美味しかった・・・ように思う。ただ、あたしの舌はそれを感じ取る事が出来なかった。せっかくかなたが作ってくれたというのに、いろんなイミで最低だ。それでも、腹立ちは治まりつつあった。本当に時間っていうのは良い薬だと思う。寿命に限りのある人間ににとって、かなり口に苦くはあっても。
 落ち着いてくると同時に、かなり思考が暗くなってしまった。
 それも仕方が無い事だろう。あたしはオンナノコが好きで、好きなコは恋人がいて、その恋人は変な薬でそのコの心を操って、んでその薬であたしまで犠牲者に・・・あ、考えれば考える程落ち込む。一体、なんなんだ、この状況は。
 あたしは溜息を吐くと、便器から立ち上がった。
 用を足すでも無く、ただ一人になりたいが為だったけど、こうしてるのも限度というものがあるだろう。だいたい、一人でいればいるほど、思考ルーチンが澱んで行くのもサイテーだ。偽装の為に未使用の便器に水を流すと、あたしは手を洗ってトイレを出た。

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「ね、裕美ちゃん、お風呂にみんなで入ってから、宴会しよーよ、宴会っ!」

 あたしを見つけると、友香が興奮した顔で近付いてきて、元気にそう言った。元気さにあてられてクラクラしながら、あぁそう言えば、友香はこういうイベントが好きなんだった・・・なんて、思い出してた。

 ──みんなでお風呂──

 ふと、その単語が頭の中で木霊した。丁寧にエコーが重なる。
 ちょっとだけ、あの温泉の中の痴態を思い出して、顔が自然と赤くなるのが感じられた。あの時の友香は、信じられないくらいに綺麗だった。今までの陰鬱な気分を吹き飛ばすに足るイベントじゃないだろうか。我ながら現金な話だとは思うけど・・・うわぁお。

「嬉しそうだけど、そんなに宴会が楽しみ?あ、でもぼくもっ!直子ちゃんがワインとカクテルで、勇輝ちゃんが日本酒を持ってきてくれたんだ!かなたちゃんもツマミを作るって言ってたし、もう、興奮しちゃうよね!」
「え?あっ、ああ、凄く楽しみだね。うん、本当に」

 さすがに友香と一緒のお風呂に興奮してただなんて、言える訳が無い。思わずあせってしまったけど、なんとか誤魔化した。・・・と、思う。
 友香がにやにやとチェシャ猫のよう笑いながら、下からあたしを見上げる。そんな表情にも、あたしはどきどきしてしまった。

「ほ・ん・とー?」

 少し意地の悪い問いに、あたしは首をぶんぶんふって肯定した。この想いは、絶対に知られてはいけないから。友香は、「ん~?」とか疑問の声を上げながら、あたしの周りを一周する。その接近具合に嬉しさと緊張が混ざり合う。

「本当っ。なにしろあたしは、お酒の味が判る女子高生だからね。神名や直子と飲むのも、別に今回が初めてって訳でも無いし」

 あたしの言い訳に、友香はくすくすと笑う。本当は気付かれてるんじゃないかと、心に焦りが生まれるけど・・・まぁ大丈夫のはずと、自分で信じてみる。

「じゃ、行こう!」

 友香があたしの手を取って歩き出す。初めて握った友香の手は、思っていたよりも小さくて華奢だった。

 ・
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 ・

 お風呂はあたし達5人で入っても、狭さを意識しないぐらい不必要に広かった。どれくらい広いかというと、5人が同時に湯船に浸かっても、まったく狭いと感じないくらいだ。ここまでくると、個人宅という認識の方が間違っているんじゃないかという気すらしてくる。直子の家に行った事が無かったら、絶対に許容出来なかったろうと思う。
 あまり深くない湯船に、気が付くと5人が並んだ状態でゆったりと浸かっていた。あたしが左端で、かなた、神名、友香、直子の順番だ。友香と直子はなにやら丸めた両手でお湯を圧迫し、上にお湯を吹き上げるという遊びをしているけど・・・楽しいのか、アレ?
 まあ、ぬるめのお湯が、身体をじわじわと溶かすようで、些細な疑問もどうでも良くなってくる。ただ、隣にいるかなたの事を、少しだけ意識した。

「・・・今、アイツの事を騒ぎ立てる気は無いから、安心していいよ」
「・・・ん・・・ありがとう・・・」

 あたしが小声で言うと、かなたは小さく応じた。恐らくはかなたも緊張していたのだろう、あたしの言葉に安堵の気配が漂ってくるようだった。神名が一瞬こちらを見たけど、何かを察したのか、すぐに視線を逸らしたのがあたしの視界の隅に写った。

「・・・二人とも・・・それで幸せなのか?」

 あたしの問いは、当然かなたと友香の二人の事だ。アイツなんて、地獄に堕ちたって気にするつもりは無い。

「三人とも、とっても幸せよ。どんな始まり方でも、今までの生活は私達の意思だもの」

 迷いも無く、かなたは自分の言葉を証明するように、幸せそうに微笑んだ。その眩しさに、あたしは思わず顔を逸らした。

「・・・ふぅん・・・」

 あたしは溜息にも似た声をあげた。何て言っていいか判らずに。
 だってこんな顔をされたら、アイツの事を責めるあたしが、まるで悪者みたいじゃないか。

─ 3 ─

「それではー、かんぱーい♪」

 沙隠路さんのゆるゆるとした掛け声で、6つのグラスが掲げられた。中身は全てアルコールだ。色とりどりの液体が、天井のライトの光を受けて、キラキラと光る。
 そう、色とりどり・・・まさに、そうとしか表現出来ない状態だ。原因を作ったのは、当たり前のように沙隠路さんだけど。
 今回神名さんが持って来たのは、醸造用アルコールを使用していない、本当の日本酒というものらしい。道場の関係者から貰ったものだと言っていたけど、それは、まぁ、良い。問題は沙隠路さんで、白ワインに赤ワイン、テキーラにウイスキーに各種カクテルと、ずいぶん沢山を持ってきていた。どうやって、という方法論は置いておくとしても、その量は驚異的で、恐らくはこの倍の人数でも呑み切れないと思う。
 さて、種類も豊富で色鮮やかなお酒が目の前あったとして、女の子達はどうしたか。その結果がコレで、全員別々のお酒を試してみる事になったのだ。まぁ、カラフルなグラスでやる乾杯は、結構良い雰囲気を作ってくれたとは思う。何しろ、食事時は不機嫌そうだった椎名さんが、今はどこか柔らかい雰囲気を纏っているのだから。

「これー、あまーいー」

 沙隠路さんのグラスには、白っぽい液体が入っている。どぶろくは無いから、多分カルーアミルクとか、そんなヤツだろう。

「あ、美味しいです」

 かなたが早くも上気した頬を押さえながら、どこか艶然とした笑顔で言う。ぼくの視線に気が付くと、ふふ、と小さく笑った。

「明日から、ちょっとダイエットしなきゃ、ですね」

 かなたの悪戯めいた言葉に、他のコ達がいっせいにブーイングの声を上げた。でも、本気で嫌がっていない証拠に、すぐにみんな笑顔になった。
 ぼくも笑いながら、かなたが用意してくれたツマミ──ノンオイルのサラダを口に入れた。野菜の味を活かしたさっぱりした味が、口の中のアルコールの残り香を駆逐する。

「この日本酒はずいぶんとフルーティーで口当たりがいいよ。ゆーみもどうだい?」
「あたしはそんなにおやじっぽいのはやだ」
「注しつ注されつ、っていうのがしたいんだけどな、ボクは」
「一人でやってろ」
「あぁ、ボクはこんなにゆーみの事が好きなのに、こんなに些細な願いすら叶わないのか・・・」
「黙れ」

 租借したサラダを飲み込みながら、今の椎名さんと神名さんの会話は、記憶から抹消した方がいいんだろうと思った。でも、お互いに遠慮の無い会話は、裏を返せば限られた相手としか出来ないのだから、それはそれで仲の良い証拠という気もする。

「あ、わたしぃ、ゆーいちさんにー、おしゃくするー」

 沙隠路さんが微妙にふらふらしながらぼくの所に来た。これは、お酒に酔ったからなのか、彼女の基本仕様なのか、ぼくは少しだけ判断に苦しんだ。幸せそうな笑顔や語尾の延びた口調は、いつも通りなのだけど。

「ぼくもぼくもっ。ゆーいちさん、これおいしーよー」

 友香まで来た。友香は、一目で飲み過ぎと判る表情で、けらけらと笑っている。

「わっ!ちょっと!」

 ぼくが空のグラスを差し出すと、二人が同時にお酌してくれた。まったく種類の違うお酒を同時に。赤ワインとカクテルが目の前で混合されるのをみて、ぼくは二人が完璧に酔っ払っている事を確信した。
 ぶどうのすっぱさを孕んだ香りと、オレンジ色のなんとかフィズの甘い香りが、絶妙なほど微妙な匂いとなってぼくの鼻をくすぐる。やっぱり、飲まなきゃいけないんだろうな、コレ・・・。ぼくは、期待に目を輝かせている友香と沙隠路さんにとほほな笑みを返して、その名状し難い液体を嚥下した。
 宴会は、続く。ぼくの心に一抹の不安を残して・・・。

 ・
 ・
 ・

 どれくらい時間が経っただろうか。宴会は既に混沌の様相を帯びていた。
 かなたと友香は見事に撃沈。テレビの前のソファーに座って、二人は顔を寄せ合うように眠っている。紅い頬や、無邪気な寝顔が可愛らしい。残った4人も結構キテいて、いつのまにか床の上で車座に座り、お酒を飲み続けている。ぼくは頭の中にウレタンが詰まったような気分を味わいながら、グラスの中に入っている不思議な色のカクテルを口に運んでいる。沙隠路さんは終始笑っているし、椎名さんは何やら目が据わっている。神名さんだけが普通に見えたけど、ぼくは時たま誰もいない場所に話し掛けている神名さんを目撃している。やっぱり変かも。

「あー、そろそろかなぁ?」

 不意に沙隠路さんが、誰にともなく呟いた。くすくすと機嫌よさそうな笑顔が、酷く艶然に映えて見える。

「何が?」
「うんー、お薬が効いてくるのがー。えへへへー」

 ずくん、と・・・身体の中を不思議な感覚が走った。苦痛でも無く、快感でも無く、例えていうなら熱の塊にも似たなにか、それが時間が経つほどに身体の中で大きくなっていく。

「・・・くすり?」

 ぼくは茫然と聞き返した。頭が熱に浮かされたように、どんどん訳が判らなくなっていく気がする。気分が悪い訳じゃ無いけど、視界が歪んで見える。運動した訳でも無いのに、胸がどきどきして、呼吸が苦しい。

「うん、おうちにあったー、びやくー。みんなのお酒に混ぜたねー。えへへへー」
「ふぅん、びやく・・・媚薬!?」

 やっと頭の中で文字が変換された。ぼくは驚愕しながら、目の前でくねくねと照れる沙隠路さんに、何も言えずに口だけをぱくぱくとさせた。

「わたしー、ゆーいちさんとぉ、えっちするのーっ」

 それはもう嬉しそうに、沙隠路さんは高らかに宣言した。

─ 4 ─

 ぼくは、あまりの事に思考が硬直してしまっていた。

 ──イッタイコノコハナニヲイッテイルンダロウ──

 まるで脳死したように水平な抑揚で、頭の中にそんな言葉が浮かぶ。ぼくのひきつった顔を見ながら、沙隠路さんはやたら嬉しそうにくねくねと身体を揺すっている。ぼくは、まともに動かなくなりつつある身体で、なんとか逃げ出そうとした。実際、もうかなりあそこが熱くなってきてるし。これ以上いたら、自分から襲い掛かってしまいそうで怖い。

「ねぇ、二人とも『お願い』~。ゆういちさんをつかまえてー、服を脱がすの手伝ってー」

 沙隠路さんが椎名さんと神名さんの方を向いて甘えたような口調で言うと、突然二人の動きが止まった。それからどこか申し訳無さそうな顔をしながら、歩いてきてぼくの両腕を捕まえた。

「なっ、なにをして・・・」
「ごめん、ボクたち直子に逆らえないんだ」
「同じく」

 ぼくの右腕を押さえた神名さんと、左腕を押さえた椎名さんがそれぞれ答える。本気で抗えば逃げられるかも知れないけど、もうぼくの身体は火が点いたよう、どうしようもなくなっていた。だから、ぼくの服を脱がす為に手を伸ばした沙隠路さんを、ただ見詰めるだけしか出来なかった。

「わー、おとこの人のって、こんなになるんだー。すごぉいー」

 ぼくの服を全て──トランクスも含めて、本当に全部──脱がす時だって、沙隠路さんには一瞬の躊躇も無かった。それどころか、破裂するのではないかと思うほどにいきり立ったぼくのものを見ても、沙隠路さんは嫌悪感は見せなかった。指先でぼくのものをつんつんと触れて、その度にぼくが反応するのを嬉しそうに見ている。沙隠路さんは椎名さんと神名さんに言ってぼくを横たえた。もう、ぼくには抵抗する気が無くなっていた。頭の中ががぱんぱんに腫れたみたいになって、思考がまとまらない。

「えへへー、恥ずかしいけどー、わたしも脱ぐねー」

 そう言って、沙隠路さんはピンク色のパジャマを脱ぎ始めた。さすがに恥ずかしそうだったけど、後ろを向いたりせずに、ぼくに全てが見えるように脱いでいく。もしかしたら、ぼくを強引に脱がせた事に対する謝意の表れかも知れなかい。
 ピンクのパジャマの下には、フリルでふわふわに飾られた、高価そうな下着があった。可愛らしいデザインの下着は、沙隠路さんの魅力的な身体を、いっそう引き立てている。そこで一回沙隠路さんは手を止めると、くるりとモデルのように回って見せた。

「ねー、この下着ー、可愛い?ゆーいちさん?」

 悪戯っぽく笑いながら聞く沙隠路さんに、ぼくは横たわったままで頷いた。ぼくの熱っぽい視線に気が付いたのか、酷く無邪気に、凄く嬉しそうに沙隠路さんは微笑んだ。

「えへへ、うれしー。でも、これも脱いじゃうねー」

 沙隠路さんはぼくを魅了するように艶然と見詰めながら、ブラの肩紐を片方ずつずらし、前屈みになって背中のホックを外した。片方の手でブラのカップをを押さえながら、姿勢を正す。
 ぼくは、次の瞬間を期待して、つい喉を鳴らしてしまった。かなた達に悪いと思う気持ちも、だんだんと薄れて、頭の片隅からも消え去っていく。

「えいっ」

 沙隠路さんは自分に言い聞かせるように掛け声を上げて、自らの胸を晒した。驚いた事に、今まで見た中で一番大きい胸だ。しかも、重力に負けずに垂れない事や、ピンク色のつんと立った乳首が、ぼくの視線を釘付けて離さない。
 沙隠路さんはそれで止まらず、さらにショーツの端に手を掛ける。脇からするすると裏返していくようにして、片足ずつ通して脱ぎ去る。この位置からだと、沙隠路さんの秘所が、ぬめりを帯びて、てらてらと濡れているのが見えた。

「じゃ、じゃあー・・・しつれいしますー」

 沙隠路さんがぼくに覆い被さると、ぼくを上から覗き込んだ。逆光で翳る沙隠路さんの顔で、なぜか瞳だけがきらきらと輝いていて、息がかかりそうなほど近い場所から、凝っとぼくを見詰めている。そこに浮かんでいるのは、歓喜と・・・少しばかりの罪悪感と思ったのは、ぼくの気のせいだっただろうか。

「本当は、いっちゃだめなのー・・・でもぉ・・・」

 沙隠路さんが、まるで吐息に埋もれてしまいそうなほど、小さな声で囁いた。目の前の瞳が、感情の大きさを示すように揺れている。でも、それがぼくにはとても美しく思えた。

「すき」

 ぼくの口の中に仕舞い込むように、沙隠路さんは口付けと同時に口にした。見開いたままのぼくの目は、沙隠路さんの閉じた瞼の端に、涙の光を捉えた。ぼくは、流されるままに目を閉じた。

 ・
 ・
 ・

「あ、ふたりともありがとー。もう、自由にしててもいーよー」

 唇を触れ合わせるだけの口付けを暫くしてから、沙隠路さんは顔を上げて椎名さんと神名さんにお礼を言った。そう、まだ二人はぼくの両腕を押さえたままだった。もうぼくが逃げないと判ったからだろう、椎名さんと神名さんはぼくを自由にすると、申し合わせたようにそれほど離れていない壁際へ行った。

「じゃあー、お待たせしましたー。つづき、しましょーねー」

 沙隠路さんは身体を起こすと、膝立ちで後ろに下がった。ふくよかな胸が、身体に合わせてふるふると揺れている。そのままぼくのモノの上まで来ると、それを手に取って自分の秘所と位置を合わせる。

「ちょ、ちょっと、沙隠路さん・・・」

 前戯も無しに挿入しようとする沙隠路さんに、ぼくは慌てて声を掛けた。もう入れたくて入れたくて身体が破裂しそうだけど、さすがにそれはまずい気がした。

「ありがとー。でもー、もう濡れてるから、だいじょうぶだと思うのー」

 そう微笑んで、ゆっくりと腰を下ろしていく。濡れて、でも硬い感じのする粘膜がぼくの先端に触れる。まるで初めてのようなきつさが、気持ち良さとも苦痛ともつかない感覚をぼくに与えてくる。意識しないままに、ぼくは小さく呻いた。

「んぅっ、くぅ・・・ん・・・。あとぉ、もうすこしー」

 沙隠路さんの声にも、苦痛にも似た響きの声が混じる。そこで初めてぼくは、沙隠路さんが初めてという可能性に気が付いた。

「沙隠路さん、まさか・・・」

 ぼくの声に、沙隠路さんが笑みを浮かべた。苦痛の汗が珠となって頬を伝っているのに、その笑みは本当に幸せそうに輝いていた。

「えへへー。痛くても・・・だいじょうぶなのー。ゆーいちさんだから、だいじょーぶー」

 いつもの明るくて、問題など何も無いとでも言うような口調で、沙隠路さんはほのぼのと笑う。正直、ぼくはそう言われてかなりドキドキしてしまった。酷くストレートに、ぼくに対する想いを隠す事無く飛び込んでくる沙隠路さんに、ときめいてしまった。

「まいったな・・・」

 呟きながら、心の中でかなたと友香に謝る。

「ふえっ?・・・んっ」

 ぼくは両手を伸ばして、沙隠路さんの身体を引き寄せた。驚いて変な声を出すその唇に、ぼくの唇を寄せる。リップを塗っているのか、少し甘い味のする唇に、触れ合うだけのキスをした。沙隠路さんの”初めて”が、良い思い出になるように。

「ん・・・んふ・・・ぁ、む・・・ふ・・・」

 沙隠路さんから、甘い喘ぎが漏れた。最初に驚いた風だった沙隠路さんも、今は自分から積極的に唇を合わせてくる。ただ知識が無いのか、自分から舌を差し込む事は無かった。
 暫く結合したまま抱き合ってキスを繰り返すと、だいぶ沙隠路さんの緊張が取れてきたように感じられた。最初は痛いほどにキツかった秘所も、馴染んでぼくのモノに優しく絡みついている。そろそろいいかと、ぼくは薬の影響でかうまく動かない身体を・・・腰を、動かした。

「ひゃぅっ!あ、んっ!」

 沙隠路さんが、可愛らしい悲鳴を上げた。そこに苦痛の色が無い事を確認すると、ぼくはゆっくりと抽送を開始した。身体もまともに動かないし、ストロークも短めだ。

「んぁあ、は、んーっ・・・くぅ・・・んっ・・・ひゃっ・・・」

 沙隠路さんが、嬌声を上げた。まだ膣から受ける快感に慣れていないからか、どこか戸惑ったような表情を浮かべている。それでもぼくの動きに合わせるように、小さく腰を動かし始めた。
 ぼくのモノから伝わる、濡れた粘膜の感触。まるで小さい手が沢山あるみたいに、熱く絡み付いて擦り上げる。

「なんでぇ・・・いいよぉ・・・あたまー、へんにぃ・・・なっちゃ・・・」

 熱に浮かされたように、沙隠路さんがうわ言めいた口調で呟く。これだけ感じているならと、ぼくは腕を折り曲げて、沙隠路さんの胸を鷲掴みした。少しだけ強めに揉みしだき、その動きに親指で乳首を刺激する動きを混ぜ合わせる。

「んぁっ!ひゃふ!ん!ああっ!」

 沙隠路さんの喘ぎが大きくなる。ぼくは手を止めると、自分でも意地悪いと判る笑みを浮かべながら、沙隠路さんの耳元に口を寄せた。

「痛かった?」

 ぼくの言葉に、沙隠路さんが首をふるふると振る。

「・・・もっと・・・もっとして欲しいのー。もっと強くても・・・いいからー。・・・なんかー、きちゃいそうなのー」

 沙隠路さんが顔を上げて、懇願するようにぼくを見詰める。上気した頬に涙の伝った跡が残っていて、ぼくを酷くどきどきとさせる。ぼくは一つ頷くと、今度はもう少し強く、胸をこねた。人差し指と親指で乳首を挟んだり、付け根を掻いたり、押し潰したりする。その都度きゅっと膣が締め付けるのが、どれほど沙隠路さんが感じているかを教えてくれる。

「あっ、あっ!あは、あ、ああっ!んふっ!ん、うぁあっ!」

 沙隠路さんの喘ぎ混じりの呼吸が、かなり切羽詰ったものになった。沙隠路さんは、まるで何かに集中するように、ぎゅっと目を閉じている。それは、絶頂を迎える女の子の顔だった。ぼくは、不自由な姿勢のままで、腰の突き上げを強くした。もっとも、沙隠路さんの為という事もあるけど、ぼく自身がもう我慢出来ないからだった。

「あっ!ゆういちさん、くるっ!き、きちゃうっ!!あ、あああああっ!」

 その瞬間の膣の締め付けに、ぼくも抗し切れずに精を放った。射精は何度も繰り返されて、びゅくんびゅくんと撃ち出す度に、ぼくの身体を信じられないような快感が走りぬけた。いつもと違うそれは、薬のせいなのかも知れない。

「ふあ・・・あついですー・・・」

 吐息でそっと包み込んだような沙隠路さんの言葉に、ぼくは荒い息で応えた。

─ 5 ─

 ぼくの鼓膜を、くすくすと笑う声が震わせた。まるで生活の一部と言ってもいいぐらいに馴染んだ声。それが二人分。

「ん・・・」

 どうやらぼくは寝てしまっていたらしい。胡乱な頭で今の状況を把握しようとして、周りを見渡して・・・愕然とした。
 ぼくから少し離れた所でぐったりと・・・でも幸せそうに目をつぶっている、全裸の沙隠路さん。
 壁際にもたれて、なにやらシテいるらしい、椎名さんと神名さん。
 そして、ぼくの顔を覗き込むように左右に添い寝している、かなたと友香。当たり前のように全裸で、その綺麗な肌を余す事無く晒している。二人とも酷く欲情しているような、艶やかな表情でくすくすと小さく笑っている。ぼくの目覚めに気が付いて、その笑みを深くする様子は、凄く淫靡に感じられた。

「雄一さん、先に直子ちゃんとしちゃうなんて、ずるいですよ」
「そーそー。ぼくたち、もう待ちきれないよぉ」

 二人は四つん這いになると、ぼくの頬に二人同時にキスをした。そのまま申し合わせたかのように、頬から首筋へ、首筋から胸へ、胸から脇腹へ、脇腹から下腹部へと、ねっとりと舌を這わせた。時折所有印を押すみたいにキスマークを残して、確実にぼくの性感を高めて行った。
 二人の舌がぼくのモノの付け根に到達した。いつの間にかいきり立ったそれは、薬の影響が残っているのか、少しの刺激でも貪欲に欲していた。例えかなたの吐息、友香の喘ぎでも、それを快感と捉えて悦びに打ち震えるだろう。

「二人とも、お尻をこっちに向けて」

 されるだけだと心苦しいので、そう二人に声を掛ける。二人は嬉しそうに腰を振りながら、今までぼくの身体に対して横から舌を伸ばしていた姿勢から、お尻をぼくの方に向ける姿勢になった。二人ともやっぱり薬を飲まされていたようで、普通では考えられないほどの愛液が、白濁して滴っていた。何もしていないのに、物欲しげに秘所がひくついていた。凄く綺麗で、凄くいやらしい光景だ。不思議な事に、ぼくは何度見ても見飽きる事が無い。

「指、入れるよ」

 ぼくはそう宣言すると、左右の人差し指と中指をいっぺんに挿入した。

「ひぅっ!」
「きゃふ!」

 ぼくの下腹部から、同時に起こる鋭くて短い悲鳴。何度もいろいろして来ただけあって、苦痛の色は無い。それどころか、まだ指を動かしてもいないのに、酷く艶めかしいうねうねとした動きで、二人とも小さく腰を揺すっている。いつも以上に感じているように思えるのは、やっぱり薬の影響なんだろう。
 ぼくは、二人のお腹側の膣壁・・・すこし感触の違うそこを、指の腹でぐりぐりと擦った。とたんに快楽の悲鳴を上げて仰け反る二人。たったこれだけの動きで、まるで絶頂に達したように、何度も痙攣して指を締め上げてくる。とろとろの愛液が溢れて、ぼくの手首までを濡らした。

「んぅあ・・・はぁ・・・ん、んむ・・・」
「あはぁ、ん・・・ぼ、ぼくも・・・ぺちゃ・・・」

 快感に酔い痴れる二人が、それでもぼくのモノに唇と舌で奉仕を始めた。ぬめっとした感触に先端を包まれ、少しざらついた舌が裏筋を舐め上げる。どっちが何をどうしているかも判らず、ただぼくのツボをついた攻撃に、呻き声を堪えるのに必死だった。

「あくっ、ひ・・・んむ・・・あ・・・とけちゃ・・・うぅっ!」

 人差し指と中指で交互に擦り上げると、かなたがそれこそ蕩けそうな声をあげた。それでも必死に舌を伸ばして、仕返しとばかりにぼくのモノに反撃する。

「そんなにしちゃ・・・あっ・・・だめだよぉ・・・ごほーし、できなく・・・んぅっ!・・・なっちゃうよぉ・・・」

 2本の指をまとめて抜き差しすると、友香は腰を高く突き上げるようにして振った。甘えるような口調は、逆にもっとして欲しいとねだっているように聞こえた。
 ぼくの目の前で煽情的に揺れる二つのお尻。とめどなく溢れる嬌声。ぼくの敏感になったモノを舐め上げる2枚の舌。熱い体温。荒い呼吸。淫靡な空気。全てがぼくの性感を刺激していた。

─ 6 ─

「ゆか・・・かなた・・・」

 あたしの視線の先で、友香とかなたががアイツのモノに舌を這わせている。この位置だと見辛いけど、同時にアイツに大事な所を弄られているようだ。3人のイヤラシイ声が、部屋中に満ちている。
 ぞくん、と電気のような鋭い快感が走り、あたしは声を堪える為に歯を噛み締めた。
 ちゅく、ぐちゅ、と濡れた音が、あたしの恥ずかしい所から響いてくる。大きな快感と、もっと大きな快感が波となって、あたしの頭を馬鹿に作り変えてしまったみたいだった。
 あたしはパジャマを半分脱いだ状態で、壁にもたれて座っている。あたしに横から抱きつくようにして、神名がいろいろしてる。濡れた音も、神名の指があたしの身体で奏でたものだ。

「あぁ・・・なんで・・・?」

 あたしの目は、友香とかなたから離れない。でも、意識の半分は自分の中に湧き上がる快感を追い掛けている。神名の右手の中指が、第一関節までをアソコに入れて、抜き差ししたり、ぐりぐりとこねるようにしている。親指は同時にクリトリスを突付いていて、時々強く押してくるのが痛くて気持ち良くて、押さえ切れない悲鳴を上げる原因になっている。

「あ、はぁ・・・ん・・・ひゃんっ・・・」

 あたしの控えめな胸の先端を、神名が舐めている。自分にだって同じものがあるだろうに、酷く熱心に・・・いっそ情熱的と言ってもいいぐらいに、舐めてくる。最初感じていた舌のぬめぬめした感触は、今はとても熱く、ぞくぞくするほど気持ち良い感覚を掘り起こしている。身体中に力が入らなくて、あたしはただ神名のしたいようにさせている。もし自由に動けたとしても、自分から神名の頭を抱きしめてしまうかも知れない。薬のせいか、馬鹿になった頭が・・・敏感になった身体が・・・快感を素直に享受している。

「愛してるよ、ゆーみ。ボクにもっと可愛い声を聞かせて」
「んんっ・・・は、はずかし・・・ああっ!」

 どこかまだ残っている羞恥が、えっちな声を出さないようにがんばってる。でも、そんな意地だって神名の前では儚いものだった。神名が右手の指を躍らせる───さっきよりも深い所に指を入れられたみたいだけど、もうどうされているかなんて判らなかった───それだけで大きな声が漏れてしまう。

「綺麗だよ、ゆーみ。とってもステキだ」

 神名が陶酔したような表情で、あたしに目線を合わせて呟いた。あたしの心に、言われて喜ぶ心と、そんなはずが無いのにって否定する心が同時に生まれる。矛盾してるけど、いまの馬鹿になってるあたしは、そんなふうに頭がぐちゃぐちゃになってた。

「本当に・・・」

 神名が目を閉じて、唇を寄せてきた。後ろは壁で、身体も上手く動かなくて、どこかそんな言い訳めいた事を考えながら、あたしは神名の唇を受け止めた。甘く柔らかい唇があたしの唇を啄ばむように挟んで吸う。もの凄い快感っていう訳じゃあ無いのに、どんどん身体から力が抜けていく・・・そんなキスだった。
 にゅるんと、神名の舌があたしの唇を割って侵入する。濡れてぬめぬめとした感触なのに、嫌悪感は微塵も感じなかった。ぽーっとなった頭で、ただ神名をあるがままに受け止めて感じていた。

「んふっ、ん、んむ、あ・・・あむ」
「ふ、ぅんっ、ん・・・あふ・・・あ、あん」

 あたしの口と神名の口から、吐息にも似てもっと熱いものが漏れる。神名のと混ざり合って、あたしの鼓膜を小さく振るわせる。

「ゆーみの身体、もっと見せて・・・」

 もう、腕を通して肩に引っ掛かっただけのパジャマの上を、するりと神名が脱がしてくれた。自分も脱ぐと、神名はそれをシーツ代わりに床にしいて、あたしをそこに横たえる。お姫様みたいに扱われて、あたしはこそばゆく感じて神名から顔を逸らした。あたしの視界の外で、神名がくく、と喉の奥で嬉しそうに笑うのが聞こえた。
 今度は神名はあたしの足の方にまわって、パジャマのズボンとショーツを脱がした。酷く濡れているそこが晒されると判っているのに、さっきのキスのせいで、どうでもいいという気分が強くなってた。それどころか、早く見て欲しいとか、えっちな事をして欲しいとか、そんな期待が胸の奥で疼いてる。

「綺麗だ・・・」

 思わずといった口調で、感極まったように神名が呟いた。さっき感じた否定は今度は生まれず、あたしは素直に笑顔を浮かべた。

「神名だって、同じのがあるんだよ」

 あたしの言葉に、神名は笑顔で首を左右に振った。手を伸ばしてあたしの身体をなぞるように、胸の付け根から脇腹、腰、太腿と、まるで羽毛のように繊細なタッチで触る。あたしの背中に、ぞくぞくと淡い快感が走り抜ける。

「ボクのとは、違うよ。他の誰とも、決定的に違う。この世界にたった一つの、椎名祐美っていう奇跡にも似た具現だよ。見た目だけじゃない、その輝くような魂も含めて、椎名祐美なんだ。・・・ボクの大切な、大好きな、椎名祐美っていう人間なんだ・・・。ただの一部分だって、誰かと同じものなんてありはしないんだよ」

 ───何恥ずかしい事言ってるんだよっ───

 そういつものあたしだったらツッコんでたんだろうけど、今はなんだかその恥ずかしい告白にも似た言葉に、心を揺り動かされている自分がいる。それは薬のせいかも知れなかったし、今までの愛撫にテンションが高くなっているからかも知れなかったし、そうでなければ神名の目が驚くほど真剣だったからかも知れない。
 しょうがないなぁとあたしは思いながら、神名の顔に左右の手を添えて、自分の顔に引き寄せた。もちろん大した力はいれてなかったけど、神名はあたしの意思を察して、自分から動いてくれる。あたしはそのまま神名の顔を抱き寄せて、軽くキスした。

「あたしは、友香達が好きなんだぞ・・・」
「うん、知ってる」

 あたしの言葉に、どこか余裕めいた笑みを浮かべて、神名が首肯する。それがなんだか悔しくて、あたしはつん、とそっぽを向いた。

「でも、神名がえっちな事をしたいなら、今はしてもいいよ」

 これはきっと、直子の媚薬のせいだ。身体が切なくなって、だからこんなに人の肌の暖かさが欲しくなってるんだ。近くにいるのが神名だったから・・・ただ、それだけ。

「ゆーみは強情だねぇ。でも、そういう所も好きだよ。ううん、ゆーみの全部が、かな」

 神名は酷く優しい目であたしを見詰めると、あたしに覆い被さってきた。あたしは両手を広げて、身体の力を抜いた。きめ細かな、熱く潤った肌を全身に感じて、あたしは妖しい気分が加速する。

─ 7 ─

「しっかえっししっかえっしたーのしーいなー♪」

 どこか調子外れな友香の声で、ぼくは意識を取り戻した。かなたと友香に攻められ、こちらからも指でやり返してるうちに、またぼくは意識を無くしてたらしい。沙隠路さんの使った薬は、効果が大きい代わりに感度が良くなり過ぎて、すぐに気絶してしまうという欠点がありそうだ。というか、ここまで何度も気絶すると、副作用が無いかと心配になる。
 ぼくはふらふらとする頭を振りながら身体を起こした。

「あ、ゆーいちさん、目が覚めた?」

 友香が満面の笑みを浮かべながら、ぼくにぶんぶんと手を振った。ちなみに振ったのは左手で、右手は透き通るような白い肌の上で、複雑にして精緻な動きを見せている。

「あん、雄一さんは少しそのまま、休んでいて下さいね。それからまたがんばってもらいますから。こっちの準備は、その分丹念にしておきますね」

 熱に浮かされたように、酷く淫靡な調子でそう口にしたのは、かなただった。友香のように手は振らず、両手をぞんぶんに動かしている。
 ぼくはあまりの事に、目を見張った。二人が何に対して手を蠢かしているか・・・いや、何かではなくて、誰かだ。

「ああっ!もう、もうだめーっ。これいじょーされたらー、へんにぃ・・・なっちゃ・・・ふぁああんっ!」
「だぁめー♪ぼくたちが寝てる間に、ゆーいちさんとシチゃうんだもん。もっともっと、お仕置きしてあ・げ・る♪」
「そうよぉ。たぁーっぷり、なおこちゃんを泣かせちゃうんだからぁ。うふふ」

 そう、かなたと友香が手を蠢かしているのは、沙隠路さんの身体・・・特に敏感な部分だった。ぼくに沙隠路さんの全てを見せつけるように、全裸の二人は全裸の沙隠路さんの足を開かせ、自らの足を絡めるようにして押さえ付けている。
 沙隠路さんを挟むように左に友香、右にかなたが陣取り、親密に肩を組むようにしている。しかし、掌は肩を通り越して、沙隠路さんの胸をやや乱暴にこねくり回している。二人の指が、沙隠路さんの双丘を思うがままに陵辱する様子は、目が離せなくなるほどにいやらしかった。
 それだけではない。かなたの右手は沙隠路さんの右腿の内側を撫で摩り、直接秘所に触れている訳でもないのに、しとどに濡れさせている。先ほどぼくを受け入れたそこは、既に入り口を微かに開いて、膣壁での刺激を待ち侘びているようだった。

「ぅふあああ・・・だめー、からだぁ、せつないのぉ・・・ね、さわってー・・・もどかしくてー、おかしくなっちゃうぅ・・・」

 どれほど焦らされていたのか、沙隠路さんが身体をぴくぴくと痙攣させながら、上手く舌がまわってないような口調で懇願した。薬のせいもあるのだろうけど、まさに発情したという表現が相応しいほどに昂ぶっている。

「ひあっ・・・は、ゆーいちさ・・・とっ・・・シタのはぁ・・・あっ・・・ごめんなさ、するからー・・・してぇ・・・ね?・・・してぇー」

 ぽろぽろと涙を流しながら、沙隠路さんがうわ言のように呟いた。見開いた目も白目勝ちになり、かなりアブナい感じがした。

「なおこちゃんの胸、いいなぁー。ね、こんなにしても気持ちいーい?」

 友香は沙隠路さんの言葉を無視して、胸を捏ね上げる右手に力を入れた。5人の中で一番大きい胸が、むにゅ、という感じに形を変えていく。極限までぴんと大きくなった胸の先端が時々友香の指で触れるのか、その都度沙隠路さんの身体が快感に跳ねた。

「ひゃふっ!ん・・・ぁゃあっ、はんっ」
「うふふ、そう・・・いいんだぁ。こんなえっちな胸、ぼくも欲しいなぁ」

 友香が酷く嗜虐的な光を瞳に浮かべて、沙隠路さんを攻めている。そして、普通なら苦痛でしかないだろうそれを全て受け止め、快楽として貪る沙隠路さん。ぼくには到底出来そうも無い淫靡な攻めに、止めるのも忘れて見入ってしまった。

「ねー、ゆかちゃあん、ひっ、あ・・・あはっ・・・ほしい・・・ほんとにほしいのー」

 まるで幼い女の子のように、舌足らずな口調で懇願する沙隠路さんに、友香はチェシャ猫のように意地の悪い笑みを浮かべて見せた。空いていた左手で沙隠路さんの脇腹を刺激しながら、もったいぶった動きで秘所に向かう。

「どう、しよっかなー」

 焦らすように抑揚を付けながら言うと、友香の指は沙隠路さんの大事な所を掠めるように、するりと太腿の方に行ってしまう。沙隠路さんの腰が、指を追い掛けるように突き上げられた。

「いやっ!それ、いやあっ!さわってーっ!」

 何度も触ってと声を上げながら、している時そのままの動きで腰をふるふると蠢かす。かなたがやり過ぎちゃった、という微苦笑を浮かべて、沙隠路さんの耳元に赤い唇を寄せた。

「ね、雄一さんにシテ欲しい?」

 囁くようなかなたの問いに、沙隠路さんはぶんぶんと頷く。その必死な様子に、かなたは友香と顔を見合わせて、しょうがないなぁという笑みを浮かべた。かなたは唇を沙隠路さんの頬に寄せて、「今日だけ、ですからね・・・」と呟きながら、軽くちゅっと音を立てて口付けた。

「雄一さん、直子ちゃんにしてあげて下さい。ええ、それはもうがっつんがっつんに」

 なんだか微妙にかなたが怒ってるような気がするのは・・・やっぱり気のせいじゃないんだろう。そういえば、ぼくに向ける笑顔が、いつもと同じ微笑みなのに、受ける印象はバナナで釘が打てそうなほどにサムい。きっとぼくの肌に浮かんだ鳥肌は、生存本能の上げる警鐘に違いないと思った。

「・・・かなた?」

 恐る恐るぼくが聞くと、かなたはにっこりと微笑みを浮かべて、沙隠路さんの右腿を持ち上げた。友香もそれに合わせて左の腿を持ち上げる。Mの形に開かれた足が、秘所もお尻の穴も、全て晒していた。

「・・・だって、しょうがないじゃないですか」

 一転して少し拗ねたように言うと、かなたはぼくに手を差し伸べた。ぼくは誘われるがままに立ち上がり、沙隠路さんの脚の間に膝をついた。

「あー、ゆーいちさんだー。えへへ、うれしー」

 顔を涙やら涎やらでくしゃくしゃにしたままで、沙隠路さんが微笑んだ。いろいろ汚れてるにもかかわらず、それでも沙隠路さんの笑顔は可愛らしく輝いている。

 ───やっぱ、キスはまずいよね───

 ぼくは、前戯の必要の無いほどにどろどろに蕩けた場所にぼくのモノをあてがうと、ゆっくりと沈めていった。今日初めて自分以外を受け入れたというのに、そこには既に苦痛の残滓も恐怖の欠片も無く、悦びのままにぼくを迎え入れた。それどころか、奥へ奥へと引きずり込むような感触さえ覚えて、ぼくはぞくりと背中を震わせた。

「ふやぁあああ、くる、はいってくるのぉー」

 歓喜に身体を打ち震わせて、沙隠路さんが大きく喘いだ。身体を仰け反らせた拍子にふるふると揺れた胸が、まるでぼくを誘っているようだ。ぼくは暗示に掛けられたようにふらふらと、沙隠路さんの胸を揉みしだいた。凄く柔らかいのに、内側から指を跳ね返すような弾力があって、それが指に心地良い。

「ひゃふっ!あ、あはっ」

 それまでとは違う、鋭い沙隠路さんの悲鳴があがって、ぼくは驚いて手を胸から離した。思わず力を込め過ぎたんじゃないかと、申し訳ない気持ちで沙隠路さんの顔に目を向けた。でも、そこにあったのは想像していた苦痛に歪んだ沙隠路さんの顔ではなくて、悦びに蕩けきった虚ろな表情だった。どうしてやめちゃうんだろうかと、そうぼくに問い掛けるように見上げている。

「痛く、なかった?」

 ぼくが恐る恐る聞くと、沙隠路さんの顔がふわっとほころんだ。

「えへへぇ。うん、いたくないのー。きもちよくてー、あたまがまっしろなのー」

 頬を赤く染めて一生懸命に言う沙隠路さんに、ぼくは笑みを返した。だったらいいやなんて不埒にも思いながら、右手をもう一度その魅惑の胸に伸ばして・・・友香の手に叩き落された。ぼくはきょとんとして、へ?と間抜けな声を上げた。

「胸は禁止っ!こっちはぼくたちがするから、ゆーいちさんは触っちゃダメっ」

 怒ったように言う友香と、それに同意するように頷くかなた。なんだかなーとか不思議に思いながら、ふと面白い事を思い付いた。周りの様子を確認すると、椎名さんと神名さんは裸で本格的に絡み合ってるし、目の前の沙隠路さんは快楽のあまり何も耳に入ってこない様子だ。
 ぼくはかなたと友香の頭をぼくの方に引き寄せて、二人以外には聞こえないように絶対の言葉を囁いた。

「ね、二人とも『催眠状態』になって」

 途端に茫とした表情で脱力する二人。ぼくは沙隠路さんに気付かれないうちに、急いで暗示を埋め込んだ。

「かなたと友香が揉んでいるのは、二人のクリトリスだよ。沙隠路さんがイクまで、これはずっとクリトリスのままだ。強くしても、ぜんぜん痛くなくて、気持ち良さだけが伝わってくるよ。それに、何度イっても、気持ち良過ぎて手を離す事が出来ない。一緒に楽しもう。それじゃあ、3つ数えると意識が戻るよ。1,2,3、はいっ」

 瞬間、二人の顔が快楽に歪んだ。かなたは「んっ!」と押し殺したような鋭い悲鳴を上げると、身体を仰け反らせた。見る間に乳首が硬くなるのが判る。友香も同様で、それまで強めに胸を弄んでいた関係から、凄い快感を感じているようだ。身体中がおこりに罹ったように、がくがくと震えている。

「うあああっ、ひっ、ああああっ!」
「んふっ、はぁ・・・あくっ!」
「やぁん!あ、あーっ!」

 三人が、まるで楽器のように美しく喘ぎを奏でる。ぼくも堪らなくなって、腰の動きを強めにした。沙隠路さんの中はとても狭くて、でもそれはぼくを拒む狭さじゃなくて、切ないほどにしがみついてくるような狭さだ。上のざらざらとした感触の部分や、複雑な形の襞が、酷く熱くぼくを締め付ける。気を付けないと、ぼくの方が先に達してしまいそうだった。
 ぼくはふと思い付いて、腰の動きを止めた。別に沙隠路さんを焦らす為じゃ無くて、もうちょっと沙隠路さんに積極的に参加してもらおうと思っての事だ。案の定、沙隠路さんは切なそうに、もどかしげにぼくを見上げた。

「んっ、あ・・・ああ・・・な・・・なんでー・・・?」

 今もかなたと友香の胸を攻める動きは止まってはいないけど、もうそれだけじゃ足りないぐらいに身体が求めてるんだろう。沙隠路さんは半分泣きそうな顔で涙ぐんでいる。

「ほら、一人だけ気持ち良くしてもらってちゃ、だめでしょう?」

 ぼくはそう意地悪く言うと、沙隠路さんの右手を取って、かなたの熱く潤んだ秘所に導いた。上から手を添えて、中指が挿入されるように動かした。かなたがぴくんと反応するのに気を良くして、次に左手を友香の秘所へと導く。今度は沙隠路さんが自分から友香の秘所に指を差し込むのを見て、ぼくは沙隠路さんの耳元に口を寄せた。

「そう、そうやって指を動かして。かなたと友香も、気持ち良くしてあげるんだよ。そうしたら、もっといっぱい突いてあげる」
「ほ・・・ほんと?わたしー、がんばるねー」

 まるで主人を見つけた子犬のような嬉しそうな顔で、沙隠路さんがぼくの言葉に頷いた。それからまるで二人の中の感触確かめるように、目を閉じて慎重に動かし始める。途端に二人の身体がなよなよと蠢き、一層喘ぎが大きくなった。何しろ、クリトリスと膣を同時に弄っているようなものなのだから、気持ち良くてたまらなくてもしょうがない。
 ぼくは艶めかしく絡まりあい、快楽に蕩ける3人を見て、感じる興奮のままに抽送を再開した。焦らされていたせいか、沙隠路さんの中の締め付けが、さっきよりもきつく感じる。まるで神経を直接刺激されるような快感に、ぼくは呻き声を漏らした。

─ 8 ─

 あたしは、友香とかなたがまた催眠暗示を掛けられたのを見た。アイツは気付かれないと思ったのか、小声だったらばれないと思ったのか・・・それでもやった事に変わりは無い。
 目の前で、くたりと脱力する二人。アイツが何かを言うと、直子の胸を揉む事で自分も感じるようにされたのか、自分自身には触れていないのに激しく乱れている。

 ───でも、気持ち良さそうだ──

 ただ、強制的に快楽を感じさせられているだけではない───それなら積極的に暗示を受け入れはしないだろう───その様子は、アイツに対する信頼と、パートナーとして快楽を共有するスタンスのように思えた。
 そう、友香やかなたはあたしが好きになったぐらいのコなんだから、考え無しな馬鹿ではない。ちゃんとした意思も持っているし、嫌な事には抵抗ぐらいはするだろう。それが、今の様子ではまったく負の感情は感じられない。
 だったら、それが意味するのはたった一つだ。

 ───今の状況を、二人は認めて受け入れている───

 ああ・・・。
 あたしは溜息と共に深く納得していた。今まで、絶対に認めたく無かった事。
 例え普通と違う始まり方でも、今は3人がああして寄り添って生きていくのは、とても自然で当たり前の事なのだと・・・。
 その認識は、酷く辛かったけど。
 と、あたしの目尻を、神名が指で撫でた。それが濡れている事で、初めてあたしは自分が泣いている事に気が付いた。

「今はいいから・・・今は、泣いてもいいから。だから、落ち着いたらボクの方も見て欲しいな。ボクは、どんなときでもゆーみがだいすきだよ」

 まったく・・・。あたしは思わず笑ってしまいそうになった。こいつはこいつで、えっちしてる最中に相手が他のやつを見てても、怒りもしないんだから。しょうがないから、あたしは神名をぎゅっと抱きしめた。女性らしいきめ細かい肌の向こうに、しなやかな筋肉が息づいているのが感じられた。

「ばーか」

 参った。まさかあたしが、こんなにも甘い響きで「ばか」なんて言えるとは思わなかった。神名がきょとんとした顔であたしを見詰めるのを、笑顔で返した。振られた後みたいに酷く高いテンションのままに、あたしはもう一度神名の耳元にささやいた。

「ばーか」

 ついでに耳に息を吹きかけてやる。ぎゅっと抱き締めた身体が、ぴくんと反応するのが楽しい。考えてみれば、2回ともこいつにいいように攻められてたけど、攻めるのも楽しいんじゃないかって・・・ナニカに目覚めそうだ。

「んっ」

 あたしは噛み付くように神名にキスすると、神名を押さえ付けるように身体の位置を変えた。身体を起こすと、神名の汗に照り輝く様子が見えた。まるで少年のように引き締まった身体で、でも男には持ち得ないラインが、まるで彫刻の像のように芸術的に見える。胸の先端の硬い蕾が、自分は女であると言う事を主張しているようだ。

「えっと・・・」

 あたしは神名の右足を持ち上げると、自分の大事な場所と神名のそれが触れ合うように、腰を前に進めた。まるでお互いの脚で相手の身体を挟みあうようなその体勢は、思ったよりも強い刺激を返してきた。

「くぅあっ!」
「ゆーみぃ・・・ふくっ!」

 あたしと神名は、同時に仰け反った。舌で舐められるのとも、指で弄られるのとも、まったく違う快感が背中を走り抜ける。
 例えていうなら、擦りあったそこからだんだん身体が混ざり合うような、蕩けて一つになってしまいそうな、そんな快感だ。気が付くとあたしは、神名の脚を抱かかえながら、必死に腰を振りたくってた。

「ゆー・・・みぃ・・・そんな、つ・・・つよ・・・」
「かみなぁ・・・だめっ・・・だめぇえっ」

 もう、訳も判らずにあそこを擦りつける。目の前が何度もちかちかして、神名の喘ぎ声と、自分たちの間から聞こえるぐちゃっとかぬちっとかいう卑猥な音と、触れ合った場所が融けてしまいそうな快感だけが全てになる。
 他には何もいらない。
 なんにもいらない。
 あたしと神名は、圧倒的なほどの絶頂が近付いて来るのを感じながら、ただひたすらに快楽の渦に巻き込まれていった。

 ・
 ・
 ・

 部屋の隅で、椎名さんと神名さんの行為も、クライマックスを迎えようとしていた。まるで一つになりたいと願っているかのように、お互いの身体を少しでも近くに感じようと、身体を擦りつけ合っている。汗にまみれて、相手の名を呼びながら繰り返す行為は、酷く神聖で性別を超えた愛を感じさせた。一瞬羨ましいと思ってしまって、ぼくはその考えを払拭するように、かなたと友香を見下ろした。

「あっ、ああっ、また・・・イッちゃうっ!ひあっ!すごっ・・・ゆういちさんっ!!」
「んふっ・・・ひゃ・・・あ、ああっ!ゆういちさんっ、ゆういちさんっ!!」

 激しい快楽にどうしようもなくなると、二人はぼくの名前を呼ぶ。助けてくれるのはぼくだけだと信じているように。

「あと・・・もうちょっとだよっ」

 ぼくは、3人に宣言する。実際、目の前で繰り広げられる痴態に、別の生き物のようにぼくに絡み付く沙隠路さんの膣に、もうぼくは我慢の限界を迎えようとしていた。沙隠路さんの様子も切迫していて、あと少しの刺激で絶頂に辿り着きそうだ。かなたと友香は、沙隠路さんがイクと自動的に達するはずだ。

「くぅううっ!」

 ぼくは、まだ回数を重ねてはいないというのに、沙隠路さんへの配慮も忘れて突きまくった。沙隠路さんもぎこちないながらもそれに応じて、一番奥・・・子宮の入り口までコツコツと当たった。それがまた新しい快楽となって、沙隠路さんに快楽の悲鳴を上げさせる。

「ひぁっ!もう、もうダメぇっ!イク、イクのぉっ!ゆーいちさ・・・イ、イクぅっ!!」

 沙隠路さんが腰を浮かせるようにして、より深くぼくを受け入れて、そのまま絶頂に達した。何度も何度も大きな波がぶり返すようで、痙攣しているみたいに全身ががくがくと震えている。それを契機に、ぼくとかなたと友香は同時に絶頂に駆け上った。

「ゆういちさっ・・・ぼく、イクよっ!イクっ!!」
「わたしもっ!い、いっちゃ、ああああっ!!」

 かなたと友香が、秘所に沙隠路さんの指を咥えたままで身体を仰け反らせる。ぼくももう我慢せずに、大量の精液を沙隠路さんの中に注ぎ込んだ。腰が砕けるかと思うほどの射精の快楽が、ぼくの全てを焼き尽くした。

「ひゃっ!ま、またきちゃうのー・・・だめっ、だめだめぇっ!」

 ぼくの精液で、またも沙隠路さんが絶頂に達する。ぴんっと身体を伸ばすと、まるで電池が切れたみたいに、突然沙隠路さんは気絶した。ぼくは一瞬びっくりしたけど、沙隠路さんの呼吸がゆっくり落ち着いて行くのが確認できて、安心してへたりこんだ。かなたと友香も疲労から寝てしまったみたいだし、ぼくがみんなの後始末をしなきゃいけないのに・・・そう思いながら、ぼくの意識は優しい暗闇に飲み込まれていった。
 どこか遠くで、椎名さんと神名さんのイク時の悲鳴が聞こえた気がしたけど・・・もうぼくの身体はほとんど動かなかった。

< 続く >

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