彼と彼女のせかいせーふく2 後編のいち

後編のいち

 和む。
 素肌にYシャツ1枚のひんぬーの少女が隣で眠る。
 そしてその少女の抱き枕と化している俺。
 素晴らしい。
 ぷに萌え? とか。
 でも暑苦しくね? とか。
 疑問系が形作る二律背反な心境。美しい国始まったなインジャパン。
 どうやら俺にはそういう性癖があるらしい。新たな発見だ。
 びば俺。
 レベルアップおめ、俺。
 このたび見つかった俺にはっぴーばーすでー。みんな、新しいお友達だよ。古い俺達、仲良くしてやってくれ。
 でも。
 ぶっちゃけ。
 ロリコンが許されるのって中学生までだよね?

「イィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 エコー
 エコー
 エコー
 素晴らしい肺活量。

「ーーーーーーハァァァァ!」

 振動にガラス窓が割れた。
 素晴らしい俺の音響兵器。
 素っ裸にトランクス一枚という漢気溢れる姿で布団を蹴り飛ばす。全裸で自分に抱きついている少女を投げ飛ばし空中で一回転させた。
 ぽすん、とユミカのちんまい身体がベッドに投げ出される。

「何でお前がここにいるんじゃユミカ。うぬぁ大和撫子というものが何たるかを知らんのか、ん? 茶髪に染めた巫女に出会った際に抱いた殺意を思い出させおって売女め。恥を知れ!」
「んー?」

 目をこすりこすり、ユミカが起き上がる。ろり。ぷに。そして美少女。くっきりとした柳眉。高くも低くもない、すらりとした鼻筋。
 子猫のように大きな瞳が、寝起きの半覚醒の状態でこちらを見ている。
 Yシャツごしに推察される胸板は薄く、ブラはしていないため2つの頂が見えた。
 前髪は定規で測ったように眉の手前で切り取られ、後ろ髪は肩までしかない。ややもすれば美少年にも見える歳とヘアスタイルだった。
 だが、恐ろしく整っている。もう4、5年もすれば間違いなく美女へと変わるだろう。そういう期待を抱かせるほど、綺麗な顔の造詣だった。
 目をこすり、少女は起き上がった。俺に視線を向け、俺が誰だか認識するため、俺を見つめること数秒。
 ベッドから床に降り、正座して三つ指をつく。

「おはようございます、ゴシュジンサマ。今日もユミカをいっぱい可愛がってください」

 深く、頭を垂れた。

「何だその挨拶は」
「奴隷の挨拶」
「誰が、誰の?」

 ユミカは男を指差し、そして自分の胸に手を置いた。

「男の人に初めてを捧げて膣内射精されて妊娠した女の子はその人の奴隷になるんだよね」
「そりゃどこの宇宙人の話だ」
「世界征服をもくろむ悪の組織のしたっぱの……」
「いい。皆まで言うな。だいたいお前を妊娠させた覚えはない」
「毎日お口にあんなに一杯飲ませてくれたのに」
「口と子宮は違うわボケ。それともお前はなめっくの星の人か。口から卵を吐くのか、ん?」
「ぱぱー」
「鬱陶しいわ!」
「……ユミカ、いらない子?」

 甘えて抱きつくのを振り払うと、ユミカは捨てられた子犬のようなまなこで問いかけてくる。

「いらん」

 即答する俺。

「……」

 無言でうなだれるユミカ。
 その瞳が、みるみるうちに潤んでいく。

 くすっ♪

 くすくすくす。

 クスクスクスクスクスクス。

 泣くぞ。

 絶対泣くぞ。

 すぐ泣くぞ。

 ほーら泣くぞ。

 けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ! 

 良心や愛情を俺に期待していたのか、馬鹿者め。それは我が恋人、御門専用だ。
 何しろ俺は美奈の兄だからな。
 ユミカは枕を取って俺に投げつけた。

「優のへちゃむくれ。三毛猫になっちゃえ!」
「冗談だ、嘘だ。お前は必要な子だからそう拗ねるな」

 頭を撫でてやるとぱっと笑顔に変わった。こういう切り替えの早さは見た目そのままの子供だ。いや、下手をすれば精神年齢は肉体よりも若いかもしれない。何しろこのガキ、生後一週間しか経っていない。
 ユミカはホムンクルスだった。人間ではない。俺の妹、マッドなサイエンティスト美奈によって創られた。
 とはいえ俺のような変態紳士よりかは社会適応性と常識をわきまえているらしい。”てにをは”などの基本的な解析能力と一般常識が予め脳内にインプットされているとのこと。
 そしてその製造目的はというと。
 俺専用、性奴隷。
 すごく手の込んだ嫌がらせですね、マイシスター。
 解説していて殺意が沸いてきた。
 ちなみにユミカは、定期的に俺の精液を摂取しなければ死ぬ。そういう風に作られたらしい。
 というわけで俺は不本意ながら恋人がある身分で浮気をし、毎日毎夜フェラチオ奉仕をさせている。
 ああ、緊急避難だ。俺は無実なんだ。あと貧乳はステータスだ。希少価値だ。

「本当? ユミカ、必要な子?」
「うむ」
「なら朝のご奉仕をしてもいい?」
「だからといって極端から極端へ動くんじゃあない」

 Yシャツのボタンに手をかける少女に、俺はストップをかけた。

***

「強敵だった……」

 俺はげっそりとしてテーブルに突っ伏した。
 おかしい。俺はキチガイ取り扱い乙種免許を持っているのに、何故これほど疲れているのだろう。

「さすが私達の娘ですわ、よしよし」
「わーい、ママ大好きー」

 ラスボス、もとい我が妹がユミカの頭を撫でた。

「まて」 

 俺は、ばっ、と手のひらを前に向けた。もちろん気功弾を打つためではないし、打てもしない。

「まて、なにかおかしい。きっとこれは孔明の罠だ!」
「お兄様、ネタが腐ってますわ」
「だまらっしゃい、悪の元凶が」
「パパ、どうしたの?」
「オホホホ、気にしたら負けよ。あと目をあわせちゃいけません」
「はーい」

 ……。
 かつて。
 これほど馬鹿にされたことをはあっただろうか。
 屈辱でこめかみに血管が浮いているのが分かる。……いや、落ち着け。クールにいこうぜ。素数はまだ数えなくていい。
 落ち着いて落ち着いて。
 落ち着いて飯を食べよう。トーストとサラダを食す。
 いいものを発見した。
 朝食のおやつ、ピーナツ。
 俺はそれを一掴み、手にとって――
 鼻の穴に装填した。

「ふんっ!!」

 ぴゅっ(空気銃の音)

 鼻水の塩味が効いた黄色い弾丸が噴出した。
 狙いは美奈の面。外す。
 再装填、発射。ユミカも狙う。
 阿鼻叫喚。
 地獄絵図。
 七転八倒。
 涙目で逃げ惑うユミカ、けたたましく笑って弾丸をティッシュで処理する美奈。
 なんて和気藹々とした修羅場だろう。
 だが少し飽きてきた。
 加えてちょうど弾丸も残り2発となった。俺はダブルカノンをぶっ放すと紳士らしくティッシュをとり、鼻を拭いた。ちーん。
 良い子は真似しちゃいけません。

「このくらいにしておくか。ユミカ。ちとそこに座りなさい。お前もだ、美奈」
「はーい」
「あらあら何でしょう。さんぴぃのお誘いですかお兄様?」

 ユミカが逆さにしたみかん箱のダンボールに座る。そこにはマジックでユミカ専用椅子と書いてある。美奈は椅子に座る。俺も座る。

「これより倉木家大陣営裁判を発議する。今日の議題:俺様の貞操の危機について! 検察官および裁判官、俺。書記、美奈。被告人、ユミカ」

 高らかに宣言し、俺は握った拳をテーブルに置いた。

「ユミカ。お前、どういう風の吹き回しで俺に抱かれたいとかほざくんだ、ん?」
「ユミカちんはパパのこと大好きだからだよ。何ていうかね、毎朝布団にもぐりこんで隙があったらその股間の二号さんをちょんぎって首飾りにして毎日ご奉仕したいくらいすき」
「ダウト」
「え゛ー」
「裁判長、発言よろしいでしょうか。検察官の発言を許可します。被告人はキチガイなので発言能力がございません、裁判長はどう思われますか。検察官の発言を正当と認めます。……よろしい仕方ない、俺様の奥義を見せてやろう」

 俺は股間をまさぐり、ビッグマグナム優先生(推定最大長14.5cm)の隣にある3次元ポケットをいじった。男には色々な隠し場所がある。
 ほどなくして目的のモノが見つかった。
 タコ糸にくくりつけられた5円玉。
 20年前にはやったような、催眠術であなたはだんだんねむくなーるというアレだ。

「いいか、この糸に垂らされている硬貨をじっとみろ。そうだ、じっとだ。揺らすぞ。ゆらーり、ゆらーり、ゆらーり……。これからお前は俺に対して嘘がつけなくなる。その口はあらゆる虚実の中から真実を選び、いかなる理由があろうとも俺を欺くことができない」

 俺は呪文を唱え振り子のように五円玉を揺らす。もちろんはったりだ。俺様は魔術師でも催眠術師でもない。
 だから当然、奇術のタネを仕込む。
 右手に取り出しますは手のひら大の無針注射器。
 中には”じはくざい”なんて名前の素敵な液体が入っている。
 ちなみに俺、こう見えて医学部に所属する大学生の筆頭。研修のレベルは人体解剖を何度か経験した程度。何を隠そうこの倉木 優、そこそこのえりぃぃとでござる。
 ユミカは言われたとおりに目の前で揺れる小銭を凝視していた。
 その視界の死角から、注射器を腕にあてがう。
 薬を注入した。無針式なのでほとんど痛みはない。
 ユミカの身体が、一瞬すくんだ。目がどろりとにごる。判断力を失った視線はまっすぐ、揺れる小銭を見つづけていた。
 俺は5円玉を揺らす。
 揺らす。
 揺らす。
 ユミカの頭が揺れる。
 ゆれる。
 ゆれる……。

「ユミカは俺にうそがつけない」

 その台詞だけを単調に繰り返す。
 ユミカの虚ろな瞳は、ぼんやりと揺れる硬貨に向いている。
 その、小さな唇が開いた。

「ユミカは、うそがつけない……」

 焦点は虚ろ、声も虚ろ。ぼんやりと硬貨を見つめながら、ユミカが言った。
 ちなみにこの薬の効果時間は30分程度。使いすぎると脳障害が起こるので適量厳守。かつて、俺や妹もお互いにぶち込みあったことがあり、やばいラインは身をもってわきまえている。
 俺は妹を見た。
 哂っている。こ好奇心をかきたてられたのか、止めようというそぶりはない。
 当たり前か。
 性奴隷などといってユミカを差し出した張本人が、この程度の状況を止める理由がない。

「これからいくつか質問をする。ユミカは俺に嘘がつけないので、正直に答えるしかない。いいな」
「うん」

 ユミカがうなずく。
 まずは嘘をついていないか判別するため、俺はセクハラの質問をする。趣味と実益。だが決して俺はロリコンではない。

「今日のパンツの色は何色だ?」
「……はいてません」
「ぶっ。何でだ」
「奴隷に下着は必要ありませんから」

 そういうと、ユミカは。
 己のスカートの端を指でつまみ、ゆっくりとめくり上げた。
 無毛の割れ目を俺に見せ付ける。
 そこは少し濡れていた。
 俺はロリコンではない。ないのだが、正直をいうと今の光景にはぐっとくるものがある。
 下半身の衝動を我慢しつつ俺は尋問を続けた。

「お前は俺のことが好きなのか?」
「うん、好き」
「俺とセックスしたいと思ってるのか?」
「セックス……って?」
「おま、ちょっと前に俺にねだったばかりだろう。俺様の股間の紳士をお前の下の穴に挿入することだ」
「ああ。うん、思うよ」
「フェラチオは好きか? 口で俺のアレを舐める行為のことだが」
「うん。ユウも、ユウの精液だいすきだから」
「いつから好きになった?」
「美奈ちんに頭をいじくられてから」
「……。どういじくられた?」
「へんなゴムの吸盤を頭にいくつもつけられて、腕に何本もお薬を注射された」
「どんな感じがした?」
「ぽわーって頭がぐるぐるして、気持ちよかった。でも怖かった。それから優のことを考えると変な気分になっておまたが濡れるの。初めてもらった優の精液の味を思い出して胸がきゅーってなったの。そしたら優のことが頭に浮かんで胸がどきどきして胸がどきどきして優のことが頭に浮かんで浮かんでうかんでうかんでうかんで……」

 言葉のろれつがまわっていない。瞳は虚空を見上げ、危ない薬をキメたときのようにぶつぶつと意味不明の言葉を口走っている。
 自白剤の影響か。
 否。
 幼少期に美奈や俺自身の身体で何度も試した(試された)が、今のような症状が出たことは一度もなかった。

「うかんですきになってゆうのことがすきになってなってなって……」

 どさりと、ユミカが崩れ落ちた。
 目は閉じ、意識を失っていた。俺はその首筋に指を当て、脈をとる。
 嗚呼。
 死んだ。

***

 嘘だ。コメディで人が死ぬものか。俺の目が黒いうちはこの家庭から死人は出すつもりはない。
 と、いいますか。
 よく見ると美奈の手にも注射器が握られておりまして。
 麻酔薬(はぁと)なんてマジックで書かれたポリ袋をもう片方の手に持っているじゃあございませんか。

「中々楽しいことをしくさってくれますね、マイシスター」
「あらお兄様、何のことですか?」

 とぼける妹を無視し、俺は気絶したユミカの頬を叩く。血色はいい。呼吸を確かめる。こちらも問題はない。
 ぐったりした身体を持ち上げ、その背を壁にあずけさせる。救急車を呼ばないのは美奈をそれなりに信頼しているためだ。人殺しをするほど馬鹿ではない、と。
 美奈は相変わらずのふざけた笑顔をしていた。

「命に別状を与えるような薬じゃないだろうな?」
「ベンゾジアゼピン系のお薬をポカリスエットに溶かして注射しただけですわ」
「ハルシオンか」
「いえーす。流石ですわね分かりづらく言いましたのに」
「ナニ考えているんだてめー」
「天才の思考は凡人には理解できませんわ」
「阿呆。理解できるかできないかは問題じゃねーだろ。自分がやっていることがわかってるのか。お前はユミカという名の人造人間をつくって、性奴隷という名目で俺にあてがった。ユミカは定期的に精液を与えなければ死ぬようなつくりになっている。この状況がどれだけおかしいか分かってるのか!」
「知ってますわ。それで?」

 あっけらかんと答える。コーヒーをすすり、美味ですわ、なんてほざく。
 そこには何の罪悪感も感じられない。

「こいつの頭をいじくったと自白したが事実か?」
「事実ですわ。お兄様への思慕のインストールと、新鮮な精液を飲むと御主人様と認識して従順になるようにプログラムし直しましたの。ああ、精液を欲しがるというプログラムは生存のための防御機構ですわ。飲むのをやめたら干からびて死にますもの。何しろ――」

 美奈は言葉を切って、激怒のきわみにある俺を見返す。
 瞳には、狂気の輝きがあった。

「実験用のホムンクルスですから」
「いい加減にしろよ、ん?」

 俺は美奈の顎を親指と人差し指ではさむ。
 美奈は笑みを崩さぬまま、俺を見返す。

「殺人と人体実験以外何をしてもいいと言った覚えはあるが、必要ならてめーの研究成果もろとも地下の設備一式素手でぶち壊すぞ」
「オホホホホホホ、怖いですわ」

 美奈は満面の笑みをたたえていた。だがその目は笑っていなかった。
 互いの身体から殺気が立ち昇り、部屋に渦巻く。
 怖いのはお前のほうだ。
 俺は思うが、口には出さない。
 お互いの気が交じり合い、ぐにゃりと空間が捻じ曲がる。
 しばしのにらみ合いの果てに、美奈が矛を収めた。
 視線と間合いを外し、殺気も収め、無防備にテーブルの空になった皿を抱える。立ち上がり、くるりと俺に背を向けた。

「朝食のお代わりいりますか、お兄様?」
「いらん。話をはぐらかすな」
「お兄様にシリアスは似合いませんわ」

 美奈に逃げだそうというそぶりはない。
 台所でかちゃかちゃと食器を動かしていた。こぽこぽと、コーヒーをカップに注がれる音が聞こえる。
 図らずも、振り上げたこぶしの下ろす間を外され、怒気を殺がれる形になった。

「けっ。必要ならなんにでもなってやるわ」
「あら。あの子に情が移りましたか?」

 2人前のコーヒーを持ち、美奈がその片方を俺に手渡す。砂糖とミルクの入ったお子様風味。俺はブラックは好まない。味は分からんがあの色が苦手だ。

「多少はな。だいたい他人に性奴隷をあてがわれても迷惑なだけだ。欲しけりゃ自分で調達する」
「御門お姉さまのように……?」

 音が。
 空気が凍りつく音が、聞こえた。
 俺の眼光に気づいて、美奈の顔がひきつった。

「美奈よ」

 俺自身が驚くほど、冷たい声。
 右腕を高らかに上げ――
 美奈の首を掴み、締めていた。
 美奈の体が、床から浮いている。美奈がもがきばたばたと足が動く。

「お前は俺の女を侮辱した」

 か。

 ひゅ。

 美奈の口から、息とも声ともつかぬ音が漏れる。
 意識を失う寸前で、俺は腕の力を緩め美奈を降ろした。

「次に同じことを言えば殺す」
「けほっ、……はぁ、はぁ…。はい、分かりました」
「よろしい。では命令だ。ユミカを洗脳するような真似をやめろ。それと俺の精液がないと死ぬなんて設定もなんとかしろ」
「前向きに善処します」

***

 事態は踊る、されど進まず。
 このたびのユミカの件。
 洗脳するような真似をやめろ、と指令したわけだが。
 なるほど俺は洗脳を解け、とは言った覚えはない。
 加えて何が洗脳なのか、何をもって洗脳を解除したのかというと、非常にあいまいだ。
 というわけでユミカは相変わらず俺を慕った状態のまま。
 俺のあずかり知らぬ水面下で、事態は抜き差しならない状態へと移行していた。

***

 翌日。
 うすぼんやりとした頭で目を覚ますと、隣には小娘がいた。
 裸にYシャツを着けている。
 この状況について一言、感想を述べさせてもらおう。

『わたくし、きれいな女の人の手を見ると股間のおにんにんがその……恥ずかしながら、”う゛ぉっき”、してしまいましてね』

 by爆弾魔。

 察して欲しい、俺の動揺ぶりを。
 その小娘は美奈ではなかった。あいつよりもやや若い。外見から判断するに高校生くらいか?
 少女は目を開けていた。至近距離で俺を見ている。
 髪は短い。瞳がぱっちりと大きく、眉は大きく弧を描き柔和そうな印象を与える。小高い鼻のしたにある小さな唇は、しっとりと濡れて媚惑的だった。
 俺を確認すると同時ににこりと笑み、ほっそりとした繊手を俺に、というか俺の股間に優しく絡めた。

「おはようございます、御主人様」

 花が綻ぶような微笑み。
 童顔だ。屈託なく笑うその姿はしごく可愛らしい。照れているのか、頬にかすかに朱がさしていた。ところがその手はいやらしく俺のモノをいじっている。
 手馴れた娼婦のような動き。
 それが……
 それが俺の急所を握っておるわけでございます。絶体絶命。
 その力加減は強くもなく弱くもない絶妙の味わい。
 竿を握り、上下させる。半勃起していた俺様のモノはすぐさま臨戦態勢に入ってしまう。
 はっきりいって屈辱だ。俺がこんな小娘の手で、手で……。
 うむ。
 気持ちいいのでよしとする。

「わけがねーだろ。うぬぁ何者だ!?」
「ユミカれす」
「……。ぐっどもーにんぐ」

 何ともいえぬ顔でユミカを見返した。不可解だ。何でこいつは成長しているんだ。
 まずい。
 非常にまずい。
 ストライクだ。
 形のいいおわんがたの胸、短く切られた髪型はボーイッシュでありながら顔つきは美少女、まさしく俺の好み。
 超ストライク。ボーナス問題に加えてチャンスタイムなので倍率ドン。得点は倍の倍で4倍になります。さらにここでスーパーひとし君人形登場でさらに3倍。これで100万の超人強度が1200万パウアー。

「わけがわからんわ!」
「ん?」
「なんでもない。脳内で軽くマスターベーションにふけっていた」
「朝のせーえき、もらっていい?」
「ないと死ぬんだろう?」
「違うよ。わたしがしたいから、するの」

 ため息をつき、俺は力を抜く。
 それを承認と受け取ったのだろう。
 ユミカは俺の頬にキスをすると、身体をするするとスライドさせた。
 ユミカの頬が、俺の首筋から胸板をすべり、俺の下腹部にたどりつく。すりすりと頬をよせる。ぷにぷにとした柔らかい頬の感触。心地よい。

「ふぅ……」

 頬を赤く染めたユミカが、ゆるりと息を吐く。
 俺のモノが、至近距離からの風にさらされる。
 ぴく、と反応した。ユミカがびっくりしたように身体を硬直させる。

「ちゅっ……」

 亀頭にキスをされた。ちゅ、ちゅと何度も。
 そうするうちに俺の将軍様はむくむくと大きくなり、半立ちから一人前に成長した。
 ユミカはおっかなびっくりな手つきで、しかしときおり手馴れた娼婦のように淫らな顔で笑う。
 はむ……、と小さな唇を大きくあけた。
 ぬるりと、俺のモノが柔らかくぬらつく口腔に包まれる。
 じゅぽ、じゅる、という唾液をかき混ぜる音がした。口腔で女の舌が動き、俺のモノは柔らかく締められながら刺激される。
 ぞくぞくする………。
 俺の背中、腰骨から首筋へ、生暖かくて心地よいものが這う。それは快楽という名の生き物だった。
 思わず腰を突き出した。不意に喉を突き上げられ、ユミカが苦しげにうめく。
 それでも俺のモノを口に含んだまま、ユミカは奉仕を続けた。
 俺はユミカを見下ろす。ユミカが俺を見上げる。

「きもひいいれふか?」

 じゅ、ちゅと舌をいやらしく動かしながら、ユミカが聞く。
 俺はうむ、とうなずく。
 正直、出そうだった。
 生身の女を使った自慰行為。しかも相手は、俺の好みをほぼ完璧な形で満たしている。
 彼女の容姿に、声に、口腔の生暖かい感触と締め付けに。
 俺は興奮し、腰がくだけそうなほどの快楽に酔いしれる。
 手を伸ばし、ユミカの髪を撫でた。
 ん、んっとうめきともあえぎともつかぬ声をたて、ユミカは口腔奉仕を続ける。
 限界が近いことを察したのだろうか。
 深く、喉の奥にまで俺のモノがくわえられた。
 じゅるじゅる、という音が、じゅぽじゅぽという音に変わる。
 俺のペニスとユミカの唇との隙間から、唾液と先走りの混じった液体が垂れる。

「うあ……」

 俺の声が漏れた。やばい、本当にやばい。
 腰が浮く。
 俺のモノから溢れた先走りを、ユミカの舌先がくすぐる。うねうねと程よく締め付けるユミカの口腔に、俺のモノがびくびくと何度もはねる。

「口を離さないとむせるぞ」

 上ずった声で紳士らしく警告する。

「んっ……ふ……ひもひいいんだね………じゅる、ちゅ、じゅるるる……」

 ユミカは口をはなすどころか、より熱心に激しく奉仕を続けた。
 じゅるじゅるという淫らな水音が大きく、いやらしく響く。
 くわえたまま喋られ、舌がうねうねと動いて気持ちいい。
 頭のおくが白くにごる。出そうだ。出したい。
 俺の我慢を見透かしているのか、いないのか。ユミカが上目遣いで俺を見る。
 苦しげにしながら、嬉しそうにもしている。御主人様と慕う相手に奉仕しているからか。
 出る。

「くっ」

 びゅ、びゅ、びゅっと、肉棒が爆ぜる。
 ユミカの喉奥のおくにまで精液が大量の精液が飛散した。
 すさまじく気持ちよかった。
 ユミカへの気遣いも忘れたまま、俺は本能のままに腰をつきあげる。喉を犯し、女がむせるのも構わず射精をする。
 一滴残らず出せるように、気づくと俺はユミカの頭をつかみ、腰を振っていた。

「けほっ、けほっ」

 腰を抜く。ユミカはむせ返り、俺の出した白濁をその小さな唇から吐き出す。
 湧き上がる罪悪感と共に、いびつな支配欲が満たされる。

「ごめん、こぼしちゃった」
「口を離せばいいものを。顔を汚されたくなかったのか?」

 ユミカは首を振った。
 床にこぼれたモノを舌でなめとる。その顔は火照って、瞳は欲情して濡れていた。

「……ユウ」
「ん?」
「ありがと。ユミカを”使って”くれて」

 そういって、ユミカは。
 俺のモノに舌を這わせ、精液の残滓を残らずなめとった。








 ぬるりときたぜ。
 リーチ(1)一発(1)巫女巫女(2)ナース(2)
 御無礼、ハネ満です。

「……なるほどそうきましたか。怒々利亜さん、座亜盆さん、やっておしまいなさい」

 気分で言ってみて配下の2名が脳内から出てくれないことに気づく。そんな家庭の風景。
 朝食をとるため居間に入る。いつもならばそこにいるはずの我が妹が今日はいなかった。
 変わりに書き起きがひとつ。ユミカに読まれないためか、マリネラ語というマニアックな言語で手紙がしたためられていた。

『お兄様ゑ
 実験データの処理をするためしばらく研究室に引き篭もります、はぁと。ユミカですが、ご要望どおり精液なしで稼動するように調整したところ副作用で成長してしまいました。ついでに性欲処理の機能を改良しておきましたので存分に”使って”くださいまし。
 オホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホ』

 読んでからくしゃりと、俺は手紙をまるめた。

”朝のせーえき、もらっていい?”
”ないと死ぬんだろう?”
”違うよ。わたしがしたいから、するの”

 朝の会話を思い出す。だまされた。というよりも、勘違いを利用されたというべきか。ユミカは確かに嘘をついてない。

「ごはんつくるね」

 ユミカはいそいそと服を脱ぎ、素肌にエプロンを羽織った。そのままの破廉恥な姿で朝食を作る。俺の目を意識してか、ふりふりとお尻を揺らす姿が何とも扇情的だ。
 ごきゅ、と俺の喉が鳴る。――まるで童貞に立ち戻ったときのように、俺のアレが高ぶっている。
 ユミカは露出の多い格好を好んで身に着け、終始俺を誘惑した。
 裸エプロンで朝食を作り、作り終えた後に俺の膝の上に乗ろうとする。ノーパンでふりふり揺れるお尻はヴィジュアル的にもぐっとくるものがある。

「犯されたいのかね、ユミカ」

 あまりに目の毒だからそう牽制したら。

「いいよ、優がしたかったら……いつでも」

 直球で返された。
 俺の視線を意識し、恥じらいに頬を染めながらいう美少女。
 前みたくロリだったらそれほどでもなかったのだが。
 成長した今のユミカの容姿。
 誘惑しながらはにかむしぐさ。俺に怒られてしゅんとなるときの表情。
 全てがストライク。

 おにんにんがヴぉっきしちゃったお☆

「キモいよリョーマくん!」

 がんっ。
 がんっ。
 がんっ。
 俺は床に土下座し頭を打ち付ける。
 いかん。
 非常にいかん。
 じぃえんとるみぃあんとしての俺様のアイデンティティが崩壊の危機。

「やばい理性が飛ぶところだった。危ない危ない……」

 既に別方向に飛んでいる気がするがキニシナイ。
 だが。抵抗勢力の圧力は烈火の如し!
 よろしい、ならば戦争だ!

「脳内会議召集、ジェントル俺のターン!」
『俺には御門という恋人がいる。しかもユミカが俺を好きなのは洗脳されているからだ、本当に俺が好きってわけじゃない。耐えろ、耐えるんだ』
「現実派俺のターン!」
『据え膳食わねばなんとやらっていうしいいんじゃね? だいたいユミカだって幸せそうだしこのまま永遠に洗脳されたままで無問題っしょ。それとも洗脳とやらを解いて自己満足に浸るかい、このエロ野郎』
「ずっと俺のターン!」
『おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい、yeah!』

 えー。
 協議の結果。
 賛成271対反対262。
 僅差でアヘン戦争は勃発しましたとさ。

 その日の夜。
 俺はユミカの柔らかな肢体を堪能した。

 そして、翌日。

 目を覚まし、身じろぎする。違和感があった。腰を上手く動かせない。
 股間が妙に気持ちいい。
 俺のモノが勃起している。その勃起したモノを、生暖かく柔らかい肉が締め付けていた。
 それは、ユミカの膣肉。
 繋がったまま眠ってしまったのだろう。
 くっく、と、俺は笑った。
 腰は痺れるほどに甘いが、声色はとてつもなく苦い。
 快楽に溺れ、ずいぶんとただれた夜をすごしたものだ。
 俺が腰を引くと、連動して俺の肉棒が繋がっているユミカの膣内を刺激することになる。
 ぐじゅ、と音がした。
 ごぽりと、半分乾きかけた俺の精液とユミカの愛液の分泌物が、隙間からこぼれる。

「んぅ、ふ……ふぁぁ……」

 ひく、とユミカの長いまつげが震えた。
 引きぬく動きに感じたらしい。
 まつげといっしょに身体もまたびく、びくと震える。軽く達したようだ。
 俺を柔らかく包み込む肉がゆるゆると蠕動し、俺の肉棒をひきとどめるかのように締め付ける。
 俺はモノを再びユミカの中へ突き入れたい欲望をこらえながら、ユミカの中から抜いた。
 手を伸ばし、ユミカのちんまい鼻をつまむ。

「ふがっ」
「おはようユミカ君」
「ほはよーございまり、ごじゅじんさま」

 ユミカは眠そうにしぱしぱと目をこする。
 はふぅ、と息を吐き出した。俺に鼻をつままれたまま。
 頬が赤い。先ほどまで繋がっており、軽くイったせいだろうか。
 目ざとく勃起している俺のモノを見つける。

「あ、お掃除しますね」
「……うむ」

 ユミカの口調は、散らかった部屋に入り込んだ熟練の家政婦のようだった。まるでそうするのが当然であるがのように言う。
 2秒迷った後、俺はそのまま欲情に流されることにした。

***

 ユミカとぐだぐだのただれた関係を維持したまま、一週間がすぎた。
 ところが問題がひとつ。
 ユミカを抱く以前から、俺には恋人がいる。
 このままではまずいと考え、俺は恋人に、ユミカのことを包み隠さず喋った。
 そして――










 俺は女と、少女を抱いている。

 一人は葵 御門という。俺の恋人で、葵コンツェルンの総帥の孫娘。
 生粋のお嬢様で、俺が学園生時代からのクラスメイトだった。学部は違うが、今は同じ大学に通っている。
 大和撫子を象徴するような長く、黒い髪は俺の好みの通り、ポニーテイルに結わえられていた。

 もう一人はユミカ。苗字はない。俺専用の性奴隷という触れ込みでつくられた。
 短く切られた髪に、端正な顔立ち。瞳がぱっちりと大きく、大きく弧を描く眉は柔和な印象を見るものに与える。
 胸が膨らんでいなければ、美少年とも見れるくらいなほど。
 2人が身に着けているのは下着とハイソックスだけ。しかもそれは、身体の大切な部分を隠すということを放棄したものだった。
 御門は純白を、ユミカは藍色のものをつけている。
 ブラは胸を強調するように下から支え、本来胸を覆うはずの布地は胸先の頂を強調するかのようにぱっくりと縦に裂けていた。
 下も同様だ。複雑なレース地のそれはほとんど紐状で、大切なところを隠すための布がない。
 男の目を、欲望を高めるための下着。ショーツをつけたまま繋がることができるタイプのものだった。
 まだ触ってすらいないのに、ふたりとも秘めやかな部分が濡れ、てらてらと光っている。
 半透明の愛液の一部が太股をつたって垂れ、ガーターベルトに釣られたハイソックスを変色させていた。

 くちゅ、つ、ちゅちゅちゅ……。
 つ、じゅるるる……ちゅ、ちゅ、ちゅっ。

 俺のモノに舌を這わせ、水音が淫らに鳴る。
 年頃の男ならば誰もが羨むような美女と美少女が、揃ってひざまずき、俺のモノに奉仕していた。
 ユミカは顔を火照らせ、熱心に俺のタマの部分に舌を這わせている。
 先走りや唾液の混じった液体が少女の顔を汚し、俺の陰毛が口はしに付着するのがなんともなまめかしい。
 御門も同様に俺のサオに奉仕していた。処女の頃からたっぷりと仕込んだ舌使いを駆使し、俺の先端からカリの部分を念入りに舐めあげる。
 何故かは分からないが、御門にとって俺の体液は媚薬と同じらしい。
 まだ触ってすらいない太股は俺のモノに奉仕するだけで溢れるほどに濡れ、時折たまらなそうに息を吐く。
 俺の先走りを旨そうに舌でつつき、味わいながら飲み下す。
 御門は太股をすり合わせていた。
 御門の白魚のような手がふるえ、何度もそこに触ろうとして葛藤した挙句に離れる動きを繰り返した。
 自慰をするな、と俺が命じたとおりに。

「優さん……」

 御門が、みじろぎする。息が荒い。
 限界が近いのだろうか。
 御門はめったに自分からねだらない。
 羞恥心が強いのもあるが、プライドが高いためだ。高慢ではないが自分の芯は通す。そういう強さを持っている。
 だから俺は、御門を気に入っている。
 そしてそんな女をいじめて、いじめて、屈服するようにおねだりをさせるのがなんともたまらない。

「優さん……」

 俺の先走りを舐めながら、御門が身をよじる。
 吐息が、驚くほどに熱い。

「どうしてほしいんだ?」

 分かっているのに、俺は聞く。
 御門は首を振った。馬のしっぽのように束ねられた髪の毛がゆれる。
 熱っぽい目で、高く反りたった俺のモノを見ている。
 俺はふ、と鼻で笑い、ユミカに声をかけた。

「ユミカ、四つんばいになれ」
「はいっ」

 弾んだ声で応え、犬のように這う。俺に尻をむけ、ふりふりと揺らす。太股を覆う藍色のハイソックスは垂れた愛液で薄黒く変色していた。
 ユミカの入り口は薄桃色をしている。
 まだほとんど使っていないのだろう、肉ヒダの露出もわずかで、少女から大人になりかけた微妙な年頃を象徴しているかのようだった。
 ひくりと、ユミカの菊門がふるえる。
 股間はすでにぐっしょりだ。
 御門と同じく、俺のモノを舐めるだけで感じてしまったのだろう。
 前の”首輪”の影響だろうか。御門が感じると、連動してユミカにもその感じが来るらしい。
 全てをさらけだしながら、ユミカは従順に這う。
 顔は欲情と羞恥とがない交ぜになった、複雑な表情をしていた。
 そのうち尻尾もつけてやろうか、と考えて苦笑する。随分とやりたい放題の鬼畜になったものだ。
 御門が絶望的な顔をした。だが、俺の行為に意を唱える真似はせず、物欲しそうに俺のモノを見つめている。
 その頬に、俺はキスをする。
 御門が嬉しそう笑ったのもつかの間。
 俺はユミカの腰を掴み、その膣内に分身をつきいれた。

「はぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 じゅく、じゅる……と、ユミカの膣が震える。奥につきれただけで達したらしい。
 俺は尻に力を入れて、射精の欲求を耐えた。ユミカもきもちいいだろうが、俺もきもちいい。
 油断すれば出してしまいそうになるほどに。
 ユミカが淫乱だからというよりも、俺専用に作られ調整されたその身体はとてつもなく相性がよかった。
 ともあれ相性で言えば、御門も遜色がない。
 ユミカのそれは俺の情報を読み取って生長し、俺専用に特化するタイプ。
 使えば使うほどに相性が良くなり、俺のモノに深い快楽を与えてくれる。
 対して御門は、全ての男をとろかせるほどの名器を最初から備えている。
 そして御門のそれも使うほど性器はこなれ、具合がよくなる。だがそれを味わうのはもちろん俺だけで、御門も俺以外の男は眼中にない。
 俺はコンドームを使わない。
 ホムンクルスのユミカには生殖能力を備えていない。そしてすでに婚約している御門とは親公認の仲。
 いまさら出来ても結婚の時期が早まるだけと、腹はくくっている。
 ゴムごしではない生の肉の感触が、たまらなく心地よい。

「ずるい……ユミカばかり……」

 御門が背中から俺にすがりつき、ちゅ、ちゅっと頬にキスの雨を降らす。
 自分を忘れないで、と主張しながらも俺がユミカを攻める行為の邪魔をしない。
 本当にいい女だ。
 俺はその胸に手を載せ、固く尖った胸の先を親指と人差し指でつまんだ。
 ダイヤルのつまみをひねるように圧迫し、くすぐる。

「あっ……は、…はひ……ぃ…」

 御門が頤をそらす。
 肩が、びく、びくとふるえた。
 何度も抱き、何度も愛撫したその身体は俺の一挙一動に面白いほどに反応し、どこもかしこも性感帯であるかのような反応を返す。
 御門の胸が好きだった。
 もちろん形のいい鎖骨も、わき腹も強い意志をともす瞳の光も全て好きだが、その中でも胸は御門の身体での好きな部分ベスト3には入る。
 御門の胸はかなり大きい。それでいながら、まるで重力を無視するかのように張りがよく、形がいい。
 カップサイズは忘れたが、ゆさりという擬音が似合う。対してユミカはふるりといったところか。ともあれやや固めのユミカの胸も俺のストライクゾーンに入っている。
 俺に抱かれてから、少し成長したらしい。
 俺はユミカの中に入ったまま、しばし御門の唇を吸う。
 口腔を犯し、俺の唾を送り込む。

「ちゅ……く、ちゅ…は、……ゆうさ………ゆうさん……あ…ちゅ、ちゅ」

 マーキングするように。この身体も、この胸もこの唇も俺のモノであることを示すように。
 御門は従順に、というよりむしろ進んで俺の行為を受け入れる。俺の舌に自分の舌を絡め、まるで甘露であるかのように俺の唾を嚥下する。
 ぽたり、ぽたりと、俺たちの口端から唾液がこぼれる。
 何度もしている行為なのに、手を置いた胸からは激しい心臓の音が聞こえた。
 その一方で――

「は、あは……ユウ、すご……あたしまた、あ、あ、あ、はぁぁぁ!」

 犬のように這い、俺に犯されているユミカの小さい身体が揺れる。
 四つんばいの体勢を維持するのも難しいのか、既に手のひらではなく肘をついていた。尻は高く掲げたまま、肉棒で支えられているように奥を突き上げられていた。
 がく、がくとユミカが頭を振る。
 子宮がうねり、まるで無数のミミズのように俺のモノに絡まってくる。特に引き抜く時の感触が心地いい。奥に誘導するようにカリの裏をくすぐる。
 このまま出してもよかったが、あえて引き抜いた。

 ふえ……? と、ユミカが腰砕けで這ったまま、こちらを見る。
 疑問の視線をなげるユミカを放置し、御門の頬に手を当てた。唇に耳をよせ、耳朶を甘くかみながら御門にささやく。 

「そんな……」
「欲しくないのか? いやならまた、ユミカに入れるだけだけど」
「……ずるい……」

 ふらふらと夢遊病者のような足取りで動き、御門はユミカの隣に這う。
 羞恥心やプライドよりも、さんざんおあずけされた後の欲求がうわまわったらしい。
 ようやく俺のモノを入れてもらえる、と。
 女と少女が、俺の目の前で犬のように這う。
 たまらなく淫靡な光景だった。
 ひく、ひくと御門の膣肉がふるえている。今まで何度も抱いたそこは、いまだ型崩れがなく美しさを保ちながら成熟をしている。
 御門の腰をつかんだ。
 亀頭を先端にあてがうだけで、御門はたまらなげに身をよじり、抑えきれぬあえぎを出す。
 すでに十分すぎるほどに濡れたそこに俺のモノを素股の要領で往復させる。御門が身じろぎし、こちらを向いた。

 早く、ください――。

 視線が、表情が、懇願している。俺はうなずいて。
 ぐちゅ、と……。
 一気に貫いた。

「………っ!」

 羞恥のためか、御門は自分の指をくわえ声を殺す。
 俺は何の宣言もないまま、あっけないほどすぐに快楽に導かれるままに欲望をぶちまけた。
 ばしゃ、ばしゃ、と膣奥に何度も白濁を注ぐ。
 他の女で勃起し、本命の女を孕ませるためだけに突き入れる。そんな倒錯したシチュエーションに、射精した俺のモノは半萎えになることもなく固さを保っている。
 もちろん、これで終わるはずがない。
 御門の膣内は、たっぷりと注ぎ込んだ精液と愛液で凄まじくすべりがよい。それでありながら強く俺を締め付けてくる。しかも単純に圧迫するだけではない、まるで膣ヒダの1つ1つが意志を持つように俺の物をくすぐり、うねり、また俺の射精を懇願するように快楽を与えてくれる。
 確実に子供ができるように。
 俺は手のひらをあげ、御門の尻を打った。

「はっ!」

 御門が甲高い声をあげた。
 ぱしっといい音がする。苦痛を与えるためではないので、音は大きいがそれほど痛みはしないうち方。
 俺の嗜好どおりマゾ奴隷へと調教した御門の身体は、その痛みを快楽として受け止める。続けて打ち下ろすと、快楽を訴えるように膣がきゅっきゅっと断続的に締まる。
 御門は俺の成すがまま、這いつくばって尻を差し出し、俺に犯される。
 気持ちよさに頭が振るえ、ポニーテールがゆれる。
 そうして達しそうになる寸前で、俺は御門の中から引き抜いた。
 あえぎながら、御門がうらめしそうにこちらを見る。その視線に人の悪い笑みを返し、俺はユミカの腰を掴んだ。 

「あ、ユウのがはいってくる……は、あ、………ふあぁ、いいよ、いいよぉぉ! しゅご、しゅごいの……ユウのおちんちん、おっきくて……しゅごい…………あ、あ、あ……だめ、そんなに奥をついたら……あ、あふぅ、らめ……」

 身も世もなく、ユミカが大きな声で淫語を口にする。本人も何を言っているのかほとんど認識していないのだろう。
 目をつむり、快楽に崩れそうになる身体を必死にささえながら俺のモノに蹂躙される。
 女を犯している。
 その実感が、平均以上どころか最高の女を2人も犯しているという認識が俺を駆り立てる。
 ユミカが首を振る。小さく何度も達しながら、迫り来る大きな波に翻弄されようとしている。
 俺はころあいを見計らい、生殺しの状態で引き抜くとまた御門の中に突き入れた。
 鶯の谷渡り。
 複数の女を這わせ、その膣に肉棒を交互についていく。

「あっ……すごっ……! すごい、ゆうさん……は、あはぁ……好き、すきぃ、ゆうさんのすき……きもちい、いい、あ………だめっ、いっちゃ、わたしまた、いっちゃ……あ、は、はあぁ!」

 声を抑えることもきれず、御門が叫ぶ。俺は競りあがる射精をこらえながら、御門の膣内からモノを引き抜いてまた発育途上のユミカの膣へと入れる。
 そうやって何度も2人を犯し、3、4回えぐっては抜いてを繰り返す。
 また、だしたくなってきた。
 俺は荒い息をつきながら、欲望を解放する。

「出すぞ!」

 宣言して、ユミカの膣奥、子宮口にまで肉棒を挿入する。

 どく、どくっ、どくっと。

 それまでの前戯でさんざん出したにもかかわらず、濃厚な精液がユミカの中を蹂躙する。
 身体をがく、がく、とふるわせて同時にユミカも達していた。
 注ぎ込んだ精液を一滴も逃すまいとするような、すさまじい締め付け。
 御門もまた俺の指で子宮を広げられながら、いく、いくと何度もうわごとのように繰り返す。
 俺は射精しながらすばやく抜き、御門の膣にも同じように注ぎ込んだ。

「はぁ……」
「ふぁ……ゆう……」

 御門とユミカはくたり、と崩れおちた。
 荒く息をつき、呼吸を整える。
 だが、しばらく休んだ後に、女たちはのろのろと立ち上がる。
 後始末のご奉仕のために。
 半分萎えた俺のモノの上を、小さく柔らかな唇と舌がすべる。
 御門と弓かは競うように精液と愛液の混じった液体を飲み、時折女同士でキスをする。
 萎える暇などない。
 この美女と美少女は、俺の恋人と奴隷はすぐさま俺を復活させ、また欲望に濡れた視線を投げかける。
 そうして何度も抱きあって。
 俺たちは、泥のように眠りに堕ちた。

***

 御門とユミカ、それに俺とのさんぴぃをした。
 そのいきさつを説明するなら、成り行きとしかいいようがない。

 話は変わるが自宅警備員には童貞が多いらしい。
 対して良家で超大金持ちのお嬢様と美少女をはべらせている俺。
 うむ。
 なんという格差社会。
 まぁ御門に関して言えば、金や地位に対して惚れたわけでもないのだが。

「はぁ……」 

 コトが終わってしばらく後。御門がため息をついた。ちなみにユミカは健やかに眠っている。

「どうした?」
「自己嫌悪してるんですっ。優さんに抗議するつもりがきがついたら抱かれていた私に! しかもそれが幸せだと思ってこんな関係でもいいかなって納得しそうな自分に!」

 大声にびっくりして、ユミカがおきた。俺と目が合う。
 寝てるふりをしろ、と俺は視線で言った。
 うい、とユミカがうなずいて目を閉じた。
 俺は御門に手を伸ばす。
 激昂したまま、御門が何かをのたまった。それを無視して有無をいわさず、このお姫様を抱きしめる。
 御門が心底嫌そうな拒絶に顔をゆがめても、手でふりはらわれそうになっても構わない。
 結局のところ、御門はすでに俺の虜で、俺のそばから離れることはできない。
 そのことを知っているから。

「お前が一番だよ、愛してる」

 俺は歯の浮くような台詞を言う。御門は泣きながら笑うという芸当をしながら、俺のわき腹をつねった。
 俺の胸に顔をうずめる。
 数分が経った。
 御門のぬくもりが心地よい。
 やがて。
 御門が、顔を上げた。

「うそつき」

 そう言うと、俺の弁解をさえぎるようにキスをした。

***

 こんな退廃的な日が、続けばいいと思っていた。
 だが、水面下で動いた事態が表に現れ、いやおうなしに俺とユミカは巻き込まれることになる。
 倉木 雄の名の下に。
 さらに次の日。
 目を覚ますと、ユミカが消えていた。
 代わりに置かれた、美奈の手紙と共に。

『実験のためユミカを解剖します。あしからず』

< つづく >

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