ドールメイカー・カンパニー (6)

(6) 催眠シナリオ ~収穫前~

 “きつね”くんが潜入を開始してから1ヶ月。本格的な個別調教を開始してからも既に3週間以上が経過していた。
 こと催眠技術に関して言えば、マインド・サーカスの中でさえ最高レベルの腕を有する“きつね”くんに、毎日、休み無く誘導されつづけた2人は、既に記憶や判断能力、さらには人間としての意識さえも完全に操られ、幾重にも張り巡らされた虚構の世界で生活させられているのだった・・・・。

「店長、帳簿チェックまだですか~。下、ちょっと人凄いんですけど・・・」

 ドアを叩く音とバイトの声で、誠はハッと目を覚ました。

「もうすぐだ!終わったらスグ降りるから、先に行ってろ!」
「店長~、でも、もう2時間も・・・」
「うるさいっ!!ごちゃごちゃ言っとらんで、仕事しろ!」
「・・・はい。わかりました・・・」

 階段を下りていく足音を聞きながら、誠はそっと息を吐いた。
 そして隣に添い寝している“ジェニーちゃん”人形に視線を向けた。
 誠の目には、タオルケットを胸まで引き上げた(生身の)ジェニーが、いつもの緑の瞳で彼を見上げているように映っている。
 そして2人のベッドから1メートルほど離れた場所に、ウンザリした顔で椅子に腰掛けた“きつね”くんが居た。

「いいの?あんな口きいて・・・」

 “きつね”くんは、女言葉で、しかし全く感情を込めずに呟いた。
 これまでの誘導で、『人形の世界』に居る限り、“きつね”くんの姿は目に入らず、声はジェニーちゃん人形の声として認識されるようになっている。

「良いんだ。所詮バイトだ。辞めたきゃ辞めればいい」

 誠は投げやりに応えた。

 あの日、誠はジェニーちゃん人形を相手にSEXをした。それまでの催眠面接で人形フェチを潜在意識に刷り込まれていた上、当日は更に催眠暗示でジェニーを生身の女と錯覚させ、そのうえ“きつね”くんがジェニーの声を演じて誘惑させることまでした。
 “きつね”くんが発した「来て・・・」の一言が、誠に最後の一線を越えさせたのだった。
 ジェニーちゃん人形の両足を広げさせてしたSEXはちょっと見もので、最初“きつね”くんは笑いを抑えるのに必死だったが、やがてそれにも飽き、今ではすっかり苦痛になっていた。

(なんで俺がこんなオヤジのオナニーを1日に2回も3回も見せられなきゃならないんだ!)

 一方、誠は最初のうちこそ映美のことを考え、後悔ばかりしていた。
 しかし、毎日やってきてはいつの間にか自分を見つめているジェニーの瞳にいつしか溺れていった。
 無論、映美が気付かないはずが無かった。
 毎日の入荷チェックが杜撰になり、帳簿は適当、客に喧嘩を売り、店の商品を漁る。最初こそ心配していたが、やがて本気で怒り、そして、この2階の1室を独断で夜勤者用の仮眠室に改造し、誠自らその部屋に篭るようになって、ついに諦めの境地に達したようだった。
 店はこの3週間、ほとんど映美一人で切り盛りしていた。

「いよいよ俺が見限られるのかな・・・」

 誠は自分でも最低だと自覚しているが、それでも、何か割り切れないものが胸の内にあった。もう決して見ることが出来ない妻の笑顔が微かに記憶の底から浮かびかけた。
 だが・・・

「奥様のもとに戻るの?」

 “きつね”くんの的確な一言がジェニーの口を借りて誠の頭に響き渡る。
 ハッと我に返りジェニーの瞳と視線を絡めただけで、誠の全ての思考は蒸発し、ジェニー以外どうでも良くなってしまった。

 ジェニー・・・

 やがて仮眠室の扉が開き、“きつね”くんが姿を現したが、それ以外に出てくる人影は無かった・・・

「副店長、済みません。やっぱ、ダメでした」

 映美はバイトの学生に誠を呼びに遣らせたけど、案の定・・・

「いいわ。別に期待してなかったし・・・。それより、こっちこそゴメンね、この忙しい時に頼んじゃって」
「あ、いいんです。副店長は、レジで手が離せなかったし。高橋さんは仕入れだし・・・。でも、俺が言うような事じゃないけど・・・、店長って、ちょっとまずいっしょ、あれじゃ」

(はあ~・・・。こんな先週入ったバイトにまで言われちゃった。)

 映美は今さらあの男に腹を立てても仕方が無いと思ったが、最近は自分の見る目の無さに腹が立っていた。

(むかむかむか!あ~もう、精神衛生上良くないわっ!)

 映美はチラッと時計を見上げた。もうすぐ午後1時。
 いつもよりちょっと早いけど、今日はもう上がりにして、早くレッスンに行くことにした。

「小林くん。私、今日はこれであがるわ。5時ごろに戻ってくるから後宜しくね」
「あ、はい。お疲れ様でした。これから勉強でしたっけ?大変ですね。体壊さないようにしてくださいね。この店、副店長で持ってるんだから・・・」
「あら、ありがと。でもご心配なく。スッゴク充実したレッスンだから、かえってエネルギーを貰って元気になっちゃうみたいなの」
「あ~、そういえば副店長って夕方からのほうがいつも元気ですね」
「でしょ!それじゃあ、あとでね」

 映美は元気一杯にレジを後にし、外出の支度をしに自宅へ戻っていった。
 レッスンについて考えるだけで、気持ちが浮き立って来る。

(早くオーナーに逢いたい!)

 ピンポーン

 映美はいつものレッスン場のベルを鳴らした。
 普通のマンションの1室であるが、映美には中に『サンサン・マート』の売り場そっくりなスペースが有るように見えているのだ。
 映美は毎日そこで“オーナー”から様々な特訓を受けていた。無論、それは映美の主観においてであるが・・・。
 もしここに客観の視点が有れば、それは特訓というより調教という言葉がよりふさわしいと気付くだろう。それもSMでいうところの調教ではなく、まさにサーカスにおける動物調教に、である。
 そして、その調教もほぼ終わりに近づいていた。新たに仕込むべき振る舞いはもう無い。今は全ての調教項目を繰り返し練習し、より洗練された動きとなるよう最終調整を行っている段階であった。

 ガチャっという鍵の外れる音がして扉が開き、いつものように“きつね”くんが顔を出した。

「こんにちは、水島くん。オーナー来てる?」

 映美は満面の笑顔で“きつね”くんに訊いた。既にその精神を完全に“きつね”くんの支配下に置かれている映美は、無意識に“きつね”くんに対し媚を売ってしまう。

「『人形の世界』・・・・」

 “きつね”くんは、映美を認めると、面倒くさげにそう呟いた。
 映美とは逆に“きつね”くんは、最初の人当たりの良さが影を潜め、どんどん無愛想になって来る。
 催眠誘導によりマスターとスレーブの関係が明確になるに従い、“きつね”くんもそれに影響されているようだ。
 すでに百回以上も使われているフレーズに映美は忽ち虚構世界に移行していった。

「あ、オーナー、こんにちは。今日も宜しくお願いします」

 映美は“きつね”くんにペコンとお辞儀した。
 “きつね”くんは、それには構わず、背を向けると無言で奥の部屋に向かった。
 映美は慌てて中に入ると、玄関の鍵をしっかり閉め、後について行く。
 そこは20畳ほどのガランとした洋屋だった。
 ダブルベッドが部屋の奥に設置され、手前には2人掛けのソファが置いてあるだけである。
 “きつね”くんは、自分だけソファに腰かけ、映美を目の前に立たせた。そして頬杖を突きながら思案した。

「さて、今日は何からするかな・・・」

 “きつね”くんは不躾な視線を映美の全身に注いでいるが、映美はぼんやりした視線を宙に漂わせたまま、まるでその視線に気付いていない。
 涼しげな薄手の黄色いワンピースを纏った映美の姿は良家の若奥様風であり、清楚な気品さえ漂っている。

(ふふ・・・、映美にはやっぱりこんな格好が一番だな)

 “きつね”くんはニヤリと笑うと、今日最初の命令を口にした。

「映美、お前は『便所』だ」

 気負いも何も無い、ごく普通の口調で“きつね”くんの口から発せられた言葉は、しかし映美にとっては『神』の言葉そのものだった。
 宙を漂っていた視線がすっと“きつね”くんの上に止まると共に、瞳の奥が輝きを増した。

「はい!私はオーナーの専用便所です」

 “きつね”くんの目を見つめながらニッコリと微笑み、映美は深くお辞儀をした。

「ふ~ん・・・、そうかい。それで、どんなことをしてくれるんだ?」

 “きつね”くんは、教師のように質問をした。

「はい、オーナーに溜まった精液の捨て場所として私の穴をお使いください」
「捨てられるのはザーメンだけ?」
「いいえ、勿論オーナーのオシッコの捨て場所にもご利用ください」
「そお。じゃあ、俺のチンポから出るものしか捨てられないんだ?」
「いいえ、とんでもございません。オーナーが排泄されるもの全てでございます。オーナーのウンチも私が受けます。お尻の穴も舐めて綺麗にします」

 映美は、一点の迷いも無くそう言い切った。
 “きつね”くんも頷きながら、その答えを当り前のように聞いている。
 実際、“きつね”くんの“調教”には全く妥協というものが無く、今映美が口にした事は殆ど全て実際に実行し、完全にやり遂げたものばかりである。
 ザーメンや小便を飲ませることなど全く日常的に行われており、特筆すべきものですらない。排便後のアヌスを舐めさせて清めることまで実際に行っている。
 依頼主の特別注文事項に挙がっている要求なので、“きつね”くんもあまり趣味ではなかったが、きっちりと刷り込んであるのだ。

「よし。それじゃあ、俺専用便器の点検をしてやるから、見せてみろ」
「はい。かしこまりました」

 映美はそう応えると、無造作にその場でワンピースのファスナを引き下ろした。
 残暑厳しいこの時期のため、下にはブラジャーとパンティ、そして“きつね”くんの趣味で着けさせているガーターベルトとストッキングだけである。無論、ブラジャーとパンティは直ぐにはずさせた。
 その格好で、映美は“待機”のポーズで指示を待った。足を肩幅より幾分大きめに開き、両手を頭の後ろで組んだ姿勢だ。
 “きつね”くんの視線は、まず股間に向けられる。そこには、つい数週間前まで黒々と茂っていた陰毛が綺麗に剃り落とされ、ツルツルになって割れ目を覗かせていた。
 既に夫の誠の“調教”もほぼ完成し、2人がSEXをする可能性は無くなったため、“きつね”くんが剃り落としたのだった。
 その丘に無造作に指を這わせ、“きつね”くんは剃り跡の確認をした。毎朝剃らしているので、手触りも良好だ。
 そのまま指を奥に移動し、すっかり慣れ親しんだクリトリス、大陰唇、小陰唇、膣と辿り、子宮口まで指で確認した。指を中で微妙に動かすと、それに呼応して膣の締め付けが増し、同時に驚くほど大量の粘液が忽ち指を濡らした。

「マ○コは使えそうだな。ケツは?」

 “きつね”くんは映美に指を沈めたまま、横柄に訊いた。

「はい、本日の排便の許可はまだ頂いておりませんでしたので、今は使用できません」
「ああ、そうだったな」

 “きつね”くんはうっかりしていたが、調教の一環で今週は映美の排便をコントロール下においているのだった。

「じゃあ、今から出しなさい」

 “きつね”くんは指を引き抜くと、鞄から紙皿を取り出し部屋の真中あたりに放り投げた。
 映美はそれを見てコックリと頷くと、その場所へすぐに移動し、無造作にしゃがみ込んだ。

「オーナー、御覧下さい」

 映美はそう言って、両手で逆ハート型の尻を押し広げ、アヌスが口を開けウンチが排泄される一部始終を“きつね”くんに見えるようにした。
 そこには人間としての恥じらいや躊躇いが一切無く、まさに犬猫並みの行いだった。
 フローリングの床に置かれた紙皿に映美の健康的なウンチがとぐろを巻いて排泄された。
 映美は出し終わると四つん這いで“きつね”くんの方を向き、指示を待った。顔のすぐ下には出したばかりのウンチが皿の上に乗っており、まるで“待て”と言われた犬が餌を前に我慢しているような図だ。
 “きつね”くんは、その構図が気に入ったのでデジカメで1枚撮影した。
 “きつね”くん自身はスカトロ趣味は無いので多少辟易はしているが、一人の慎みある人妻をここまで落とすことが出来たことに高ぶりを覚えていた。

「よ~し。映美、よくできました」
「有難うございます、オーナー。でも・・・、私、ただウンチをしただけですよ・・・」
「いや、いいんだ、映美。俺の前でウンチをした事を誉めているんだ」

(・・・? 変なの・・・。オーナーの前でウンチすることなんて、当り前のことなのに・・・)

 映美は小首を傾げていたが、とにかく誉められたので満足だった。
 “きつね”くんは、その後ウンチの後始末とアヌスの洗浄をさせてから一旦服を着させた。
 すると、忽ち元の清楚な人妻の雰囲気が戻ってくる。
 “きつね”くんはそんな映美の手をとり引き寄せると、その口を吸った。控えめに舌を絡ませてくるところが、初々しくて可愛い。“きつね”くんは長めの舌で映美の口中を思う存分味わい尽した。
 そして着衣のままベッドに連れて行き、仰向けに寝かした。“きつね”くん自身は下半身を裸になって映美の顔の両脇に膝をつき胸の上に腰を下ろす格好で、しゃがんだ。
 すると丁度ペニスが映美の口元に来る。

「さあ、口上を言って御覧」
「はい、オーナー。どうか専用便器の映美にオーナーのチンポを咥えさせてください。映美の口マ○コをオーナーのザーメン便器にお選びください」
「よし、許可する」

 “きつね”くんが短く応えると、映美の口が待ちかねたようにペニスを口に含んだ。そして頭を大きく前後に振り、たっぷりと唾液をまぶしながら本物のマ○コそっくりの締め付けを開始した。
 またそれと同時に空いている右手が“きつね”くんの睾丸を優しく愛撫し、左手は“きつね”くんのアヌスを刺激し始めた。

(う~ん・・・・気持ちいい~。)

 “きつね”くんは、映美の美しい顔を見下ろしながら自分の肉棒を自在に送り込めるこのポーズが気に入っている。自分自身も軽く腰を動かしながら映美への暗示を追加していった。

「映美のバックドア、オープンセサミ」

 キーワードを唱えると、映美はペニスを咥えたままトランス状態になった。

「映美、いまから俺のチンポは、お前の胃の中まで届く。お前は、口も喉も、食道も、そして胃まで犯されるのだ。そして、お前は内臓全てで感じるのだ。内臓全体でいってしまうのだ・・・」

 そうしておいて再び“きつね”くんは映美を目覚めさせた。
 映美はすぐに頭の動きを再開させたが、次の瞬間目を大きく見開いて、“きつね”くんに異状を訴えていた。
 “きつね”くんは、それを無視して、ゆっくりと大きく腰を使った。

「ふううう・・・・・んんんん・・・・・ああああああああ」

 映美の喉から言葉にならない呻き声が漏れ、それと同時に“きつね”くんが尻に敷いている映美の胸から微妙な痙攣が伝わってきた。胃と食道の痙攣である。何度も繰り返し暗示を与え調教してきたため、今では瞬く間に映美の体は“きつね”くんの暗示に反応してしまうのだ。
 “きつね”くんは映美の痙攣を感じながら、口マ○コを堪能していた。女優と見紛うばかりの美貌を見下ろしながら、その口に自分の肉棒を自在に突き入れているのだ。しかも一突きごとに相手は口と喉のみならず内臓まで悶え狂い絶頂を迎えている。歓喜の涙と大量の唾液で一突きごとに映美の顔からピチャピチャと湿った音が漏れていたが、すぐに“きつね”くんの背後からも同じような音がしだした。
 “きつね”くんは咥えさせたまま振り返り映美のスカートをぱっと捲り上げると、そこにはもうまるで用を成さなくなったびしょ濡れの下着が、映美の痙攣に合わせて振動しピチャピチャと音を出していた。

(いい反応だ・・・)

 “きつね”くんは、暗示を与えてから映美の体が反応するタイミングがぐっと短くなっていることに満足していた。

(ひとまず、これで完成ということにするかな・・・)

 映美を見下ろしながら腰の動きを早めつつ、“きつね”くんは最後のステップに思いを馳せていた。

< つづく >

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