ドールメイカー・カンパニー2 (1)

(1)転落の軌跡

 早朝の校舎を1人の生徒がゆっくりと階段を登っていた。
 まだ授業が始まるまで1時間以上もある。
 校庭には朝練の生徒たちがいたが、校舎の中には他に人影は無かった。
 しかしその生徒は何故か毎朝この時間に独り登校して来ていた。
 そしていつものように最上階の5階に足を運び、その最奥に位置している一つの部屋に吸い込まれていったのだった。
 そこには『生徒会 会議室』と記されている。
 そしてその中は表記のとおり会議机と比較的高価な椅子が並べられていた。
 しかしその生徒はその椅子の間を縫うように通り抜けると、更に奥にある扉の前に向った。
 その扉は重厚な樫で出来ており、まるで企業の重役室の扉のような風格を漂わせている。
 生徒会長室だった。

 その生徒は扉の前に辿り着くとおもむろにポケットから電子キーを取り出し、その扉のスリットに差し込んだ。
 するとその頑丈な扉は、まるで王に傅(かしず)く衛兵のように、静かに道を譲ったのだった。

 扉の向うは、東側に向いた窓から射し込む朝日で光り輝いていた。
 しかし、その朝日を遮るように立っている人型のシルエットをその中に見つけると、その生徒は初めて表情を変えた。
 それまでの優等生の仮面の下から、嘲るような笑みがその口元に広がったのだ。
 そして悠然と部屋に足を踏み入れると、そのシルエットに向って言ったのだった。

「おはようございます・・・先生」

 すると、その声に答える、若い女性の声が生徒の耳に届いた。

「お、おはようございます・・・ご・・・ご主人様」

 そう言って、その女教師は、朝日の中に全裸の身体を晒し、屈辱と羞恥に頬を染めながらも、首輪に結びついたチェーンを差し出したのだった。

 まるで絵に描いたような・・・
 そんな表現が常についてまわる数少ない男が、黒岩健志だった。

 私立栄国学園高校の3年に在籍し、学年で常にトップ3に入る学力と、剣道部主将を務めた運動神経を兼ね備え、そのうえ生徒会長までこなし、同級生からも下級生からもそして教師からも絶大な信頼を得ていた。
学校というこの小さな社会においては、健志はただ一人最高のステイタスを手にしていたのだ。
 しかし、爽やかな笑顔と、元気な挨拶がトレードマークで仲間や下級生に慕われている健志の、この男の裏の顔を知る者は少なかった。

 違法すれすれ、いや場合によってはヤクザをさえ上回るようなあくどい金融業を足がかりに1代で財を成した祖父、そしてその黒い資金を背景に地元の基幹産業を買収し、更に鉄道や観光会社をも傘下に収め、この地方都市の実質的な舵取りまで行うようになった立志伝中の人物、黒岩剛を父に持ち、やがてはその王国を譲り受けるべく帝王学を叩き込まれている男だった。

 しかし地元の公立中学に通っていた頃の健志は、その家柄から教師達にこそ一目置かれていたが、高慢で高飛車な性格を知っているクラスメート達からは相手にされていなかった。成績もクラスの中でさえ下から数えた方が早かったのだ。

 それが変わったのは、推薦でこの高校に入学して以来のことだった。
 この学園は、父、剛が15年前に余技で設立した私立高校であり、当然ながら絶大な権力を握る理事長として現在も君臨している。
 そして、そこに入学した健志を待ち受けていたのは、予想もしていなかったような特別待遇だった。

 健志がテストさえ受けていれば・・・、いや、テストの教室に居さえすれば、どんな答案も魔法のように最高の評価となって戻ってくるのだ。
 数学の試験では殆ど解らず白紙に近い状態で出した答案が、戻ってきた時には綺麗に書き込まれていたりすることまであった。

 1学期の終わりに生まれて初めてAとBしかない通知表を受け取ると、その日の晩、健志は得意そうに剛にそれを報告した。

「オヤジ、どう?すっごいでしょ」

 その息子の成績表にチラッと視線を投げた剛は、しかしおもむろに健志の目をじっと覗き込むと、静かに口を開いたのだった。

「健志・・・わかるか?これが権力というものだ。やがてお前が引き継ぐ『黒岩』という権力がこれだ」

 父のその冷徹な声が耳に届いた途端、健志はまるで世界が反転するようなショックと、体中が震えるような感動を覚えた。
 脳裏に、おもねるような表情の教師達の顔が浮かぶ。

 (これが・・・『黒岩』の力なのか・・・。俺の、黒岩の力・・・)

「お前にはいずれ俺の全ての事業を引き継いでもらう。その最初の事業が、栄国学園の理事長の椅子だ。お前が大学を卒業したらすぐに譲ってやる。それをこの休み中に校長達に宣言しておいてやろう。ふふっ、1学期にBをつけた教師の態度がどう変わるか・・・。良く見ておくんだな」

 風格漂う父のその言葉に、健志はガクガクと頷くしかなかった。

「ただし・・・一つだけ覚えておきなさい。『人を引きつけ、人を切る。どちらも出来ねば全てを失う』。もう中学の頃のように素を晒すのは止めなさい。学校を味方につけろ。教師を、友人を引き付けろ。そして切れ。この3年間でそれだけ身につけられれば十分だ」

 剛はそれだけ言って静かに笑ったのだった。
 以来、それは健志の座右の銘となった。
 『人を引きつけ、人を切る。どちらも出来ねば全てを失う』

 そして剛の言葉どおり健志は世の中の仕組みを目の当たりにすることになった。
 2学期が始まって健志を取り巻く教師達の雰囲気が一変したのだ。
 1学期は腫れ物に触るかの態度で健志を扱ってきた教師達が、はっきりと健志の意思に恭順する態度を示すようになったのだ。
 それは、この学園の真の持ち主である剛の意思が明確に示された結果である。
 そして、健志の態度もそれに呼応するように変っていった。

 信賞必罰、飴と鞭・・・。
 あくまでも教師としてのプライドを保たせてやりながら、その上で健志は自分に対する尽し方で、教師にボーナスを与え、一方で減給、訓戒処分に処していった。
はるか年上の大人たちが、自分の方針に唯々諾々と従っていく姿を見ることは、健志にとってこの上ない快感だった。
 しかも表向きは品行方正なポーズを貫き、裏で大人たちを操る快感は格別だった。
 “黒岩”という権力に健志は酔いしれていた。

 剣道は子供の頃から唯一続けていた健志の特技だったため、早速剣道部を作らせた。
 無論主将は自分である。
 それが不自然で無いよう、教師達に未経験者ばかりを集めさせた。
 また、生徒会長に立候補すると公言した時は大騒ぎだった。
 まさか落選させるわけには行かない。
 教師達の陰日向に渉る応援と対立候補への圧力で2年生の春に圧倒的な得票差で当選を果した。

 全てが自分の思い通りになる・・・そう確信した健志の中で、欲望の芽は徐々にエスカレートしていった。

 そして丁度その頃のことだった・・・健志の耳にちょっとしたニュースが入ってきたのは。
 それは数学科の清水圭吾教諭と、国語科の安東京子教諭が結婚するというものだった。

 清水とはその時の健志の担任であり、1年の1学期に初めて健志の答案に回答を書き足してきたあの教師でもある。気弱な優男で、特に健志の前では担任というより御用聞きのような態度をとっていた。

 一方、安東京子もその当時健志のクラスに国語を教えていた教師だった。
 優しい笑顔と、小柄ながら均整のとれたスタイルで生徒達から姉のように親しまれている若い女教師であり、健志のお気に入りでもあった。まだ教師になって2年目ということもあり、他の教師ほど“黒岩”の名に神経質になっておらず、授業の後に気軽に雑談をすることもあった。

「ふ~ん・・・、清水と京子ちゃんが結婚ねぇ。全然釣り合わないじゃねえか」

 健志は面白く無さそうにそう呟いた。
 しかし次の瞬間、健志の目に妖しい光が生まれたのだった。

 夏休みを利用しての結婚式と新婚旅行。
 2人の教師は人生の春を満喫していた。
 そして新居は、特別に健志の計らいで半額の家賃で入居を許された学校のすぐ傍に建設された豪華マンションとなった。
 表向きは理事長の計らいであることになっていたが、清水には健志の口利きであることが伝えられている。
 2学期が始まると、清水は担任でありながら完全に健志の腰巾着となっていた。

 そして10月・・・
 計画は何の障害も無く淡々と推し進められ、健志は悠々とその成果を受け取りにやってきたのだった。

 ピンポ~ン・・・ピ~ンポ~ン・・・

 自宅に帰り着き、ソファで一息ついていた清水(旧姓、安東)京子は玄関の呼び鈴に驚いて立ち上がった。
 オートロックの呼び出し音ではない。玄関の外に誰かが来ているのだ。

「あ、はい。どなたでしょうか?」

 インターホンで誰何すると意外な応えが返ってきた。

「あ、先生。こんばんは。黒岩です、2Aの・・・。ちょっとオヤジから預かりモノが有るんだけど、今週は清水先生居ないじゃないですか。それで、帰り道だったんで持ってきちゃいました」

「え・・・黒岩くん?あ・・・ちょ・・ちょっと待ってね。すぐ開けるから」

 京子も当然夫の圭吾から健志の口利きの件は聞いている。
 そして近い将来、理事長になるという話も・・・。
 自分や夫の将来のためにも、くれぐれも粗相があってはならない。
 ここは学校ではないのだ。
 京子は少し緊張して玄関に向った。

「いやぁ、先生、すみません。上がり込んで紅茶までご馳走になっちゃって」

 健志は居間に通され、京子と向かい合って紅茶を啜っていた。

「あら、良いのよ。わざわざ届け物して貰っちゃったんだから」

 京子はにこやかに笑いながら、健志に話し掛けた。
 京子は学校から帰宅したばかりだったため、今日の授業で見かけたときの服装のままであった。
 健志はその格好を見て暗い欲望を更に募らせていた。

 そして京子が更に何か話し掛けようとした時、不意に遠くで電話が鳴った。

「あら。ちょっとごめんなさいね」

 そう言って席を外した。
 しかし、1分ほどですぐに再び姿を現した。

「早いですね。清水先生からですか?」
「え?ううん、間違い電話だったみたい。無言だったわ」
「そうですか。本当は清水先生に渡した方が良いと思ってたんですが」

 そう言って健志は傍らの包みを差し出した。

「これ、うちのオヤジからのプレゼントです。ビデオカメラって言ってました」
「え?ビデオ?どうして?」
「オヤジ、プレゼントするの好きなんですよ。これは、多分『早く子供を作って見せて欲しい』ていう意味だと思いますよ」
「ええ~っ?」

 突拍子もないことに京子は目を丸くした。

「ただ、先生、機械に弱そうだから、本当は清水先生に渡したかったんだけどね」

 そういって健志はウィンクした。

 それから健志は包装を解くと、簡単にビデオの使い方を説明した。
 京子は紅茶を飲みながら、学校とは反対に健志の講義を微笑みながら聞いていたのだが・・・

「あっ・・・」

 不意に京子の手から紅茶のカップが滑り、絨毯の上にゴトッと落ちた。
 慌ててそれを拾おうと手を伸ばしかけ、京子は自分の身体に異変が起きていることを悟った。
 指が・・いや腕全体が痺れて言う事を利かないのだ。

「あ・・・あぅ・・・」

 目の前で操作の説明をしている健志に異変を伝えようとしたが、舌までもつれてしまっている。
 身体が斜めに傾ぎ始めた。しかし京子にはもうそれを支える手段が無い。
 ゆっくりとテーブルの上に横倒しとなった。
 京子は視線を健志に向け、必死に目で訴えた。
 しかし明らかに異変が起きているのに、健志は表情一つ変えず説明を続けていた。

「・・・ですから、室内で撮影する時は、ホワイトバランスに気をつけてください。それじゃあ、座学はこれくらいにして、これから実際に撮ってみましょうか」

 そう言って京子の顔を覗き込む健志の表情を見て、京子は慄然とした。そして、遅まきながら健志の悪意を理解したのだった。

「先生、見かけより良い身体してるんですね」

 健志は京子を寝室に運ぶと、ダブルベッドの上に横たえ、ビデオカメラで撮影しながら1枚1枚服を脱がしていった。
 小柄で155センチ位しかないが、バストは意外にもハッキリと自己主張している。そして美乳といって良い形を保っていた。
 そして股間には思ったより濃い茂みがエッチそうに生い茂っていた。
 潤沢な資金で高校生でありながら風俗に通いなれている健志は、全裸に剥いた京子にも余裕で接している。
 そして、ビデオと一緒に持ってきたデジカメでそんな京子の身体を余すところ無く撮影していった。
 全裸で横たわっている全身写真、バストや局部のアップ、裏返して尻を上げたポーズ、そしてアヌスの拡大写真。それだけで無く、健志とのからみの写真もリモコンで撮影した。後から京子をオシッコポーズで持ち上げた写真、後から京子の局部を健志の両手が広げている写真、そして熱い口付けを交わしている写真・・・。
 生身の人形と化した京子は、健志の求めるあらゆるポーズで記録されていった。

「さあ、先生・・・。そろそろ記念写真もとり終わりましたから、本番を始めちゃいましょうか」

 写真撮影の合間に京子の肉襞に塗り込められた媚薬は、確実にその効果を発揮し始めていた。
 京子の意思には拘わらず、その肉体は徐々に火照り、股間は潤いを増し、そして胸の突起はピンク色に染まり硬く充血していた。

「や・・・や・め・・・・やぁ・・」

 健志が全裸となり京子の上にのしかかって行くと、ようやく痺れが弱まってきたのか、京子の口から微かな声が漏れた。

「先生、すこ~し遅かったですね。もう、頂いちゃいますからね」

 健志はそう言うと、京子の両足首を掴み、大きくVの字に広げた。そしてすっかり濡れて口を開いた肉襞の間に自らの肉棒を突き立てると、そのままズブズブと根元まで押し込んでいった。

「っく~~~~ンン・・・・」

 声にならない声が京子の口から漏れ出す。硬く瞑った目尻から涙が頬を伝った。
 しかし、健志がゆっくりと往復運動を開始すると、京子の股間から響くネチャッネチャという音は次第にそのボリュームを上げていった。
 そして、往復のリズムが徐々に早くなり二人の身体に汗が伝い落ちる頃になると、もう京子の口から漏れる声は拒絶と嫌悪の代わりに、肉体の絶頂を告げる喘ぎ声に代わっていた。

「はあっ・・・うん・・あん・・ああ・・・い・いくっ・・いきそうっ・・・はあっ・・・ああ」
「へへっ・・・いいぜ、京子っ・・・ははっ・・いけよっ・・・俺もたっぷり出してやるよ・・・ほらっ・・いけっ!!」

 健志はそう言って京子の腰を掴むと思いっきり突き上げ、そして何の遠慮も無しに腹の奥にたっぷりと注ぎ込んだのだった。

「あっ・・中はっ・・駄目!・・・だっ・・・あっ・あああああああああっ!っくぅ~~~うううううううっ!」

 京子は拒絶の言葉を吐きながらも、健志の下で全身を震わせ絶頂に達していった。

 その後、虚脱したようにベッドに横たわる京子を健志は再びカメラに収めた。
 身体の痺れがまだ少し残っている京子は健志の行動に逆らえない。
 仰向けで股を大きく開き、ベトベトに濡れた陰唇の間から白い粘液を垂らしている姿がデジカメに記録されていった。

「ど・・・どうして・・・こんなことを・・・」

 京子は虚ろな目で健志を見上げえ呟いた。

「どうしてって?決まってるじゃん、前から京子ちゃんのこと好きだったんだ。若い僕はその思いを押さえきれなかったってワケ」

 健志は自分だけ服装を整えながら、上機嫌に言った。
 言葉に真実味の欠片も無かった。

「ゆ・・・許さないから・・・。絶対に、許さないから・・・」

 ベッドの上から京子の低い声が漏れた。
 健志はその言葉を待っていたかのように、ニッと笑った。

「ふうん。許してくれないんだ・・・。で、どおするの?訴える?」
「当り前よっ!絶対に許さないわっ」
「そお、残念だね、せっかく結婚したばかりなのに、もう離婚ですか?」

 その言葉に京子はハッとなった。
 優しい夫の顔が浮かぶ。

「清水先生、がっかりでしょうね。結婚したばかりの女が、自分の生徒と淫行だなんてね」
「なっ、レイプじゃないっ!なにが淫行よっ」
「淫行ですよ、俺、17だもん。17才の生徒を部屋に引っ張り込んでセックスしたら、淫行っていうんですよ」
「だ、誰が引っ張り込んだのよっ!」
「勿論、京子ちゃんがさ。俺、そう証言するもん・・・」
「そんなこと・・・誰が信じるもんですかっ」
「信じるさ、俺のこと、誰だと思ってる?“黒岩”だぜ?俺は黒岩健志なんだぜっ!お前ら庶民と一緒にするんじゃねえっ!」

 健志は胸のうちの言葉を京子に叩きつけた。

「訴える?上等!やってみろよっ!オヤジは俺を守るためには手段は選ばねえぜ。お前が首になるだけじゃねェ。清水が路頭に迷うだけでもねェ。・・・俺、知ってるんだぜ、お前の親父、うちの系列の工場に勤めてるんだよな。それにお前の妹・・・慶子っていったっけ?○○町に住んでるんだよな。あの辺はうちの系列のサラ金があってさ、わりと気の短いオニイサンが暇してるんだよね。それから・・・そう5年前に実家は新築にしたんだよね。そのローンの借り先・・・調べてみるんだね」

 激昂した口調が一転して、余裕をもった言い回しに変わった。
 しかし、京子の受けた衝撃は甚大だった。

 全てを調べ尽くされていた・・・。

 京子の弱みを全て握った上でこの暴挙に出たのだ。
 京子はベッドの上で蒼白になり、自分の負けを知った。

「先生、京子センセ・・・。何もそんなに事を荒立てなくっても良いじゃない。時々、若い男と楽しめるんだからさ。それにね、勿論京子ちゃんには、それなりのプレゼントもあげるし。それに何より清水センセがさ、すっごく早く出世すると思うよ」

 健志はベッドの上に腰掛け、裸のまま呆然としている京子の肩を抱いて、その耳にそっと囁いた。
 その言葉に京子はゆっくりと反応した。

「・・・これからも・・・わたしを・・・抱くつもりなの・・・」

 健志はその問いには答えず、京子の頬にチュッとキスをして立ち上がった。

「今晩、一晩時間をあげるよ。話に乗るんなら、明日の朝7時に生徒会室に来ること。下着は着けずにね。断るんなら、明日中に色んなことが起こると思うよ、先生が訴える、訴えないに拘わらずネ」

 健志はそう言い残して、京子の部屋を立ち去った。
 それが昨年の出来事だった。

 無論、京子に断る道は残っていなかった。
 翌朝、生徒会室に来た京子は、自らの手でスカートを捲り上げさせられ、下着を着けていない裸の下半身を健志の目に晒した。そして、健志の校内妻になることを誓わされたのだった。
 そしてそれ以来、京子は毎日のように健志の肉棒に奉仕させられ、好きなときに好きなように好きな場所に精液を注がれ続けたのだった。

 朝学校に着いた途端、昼の食事の最中、放課後・・・。
 どんな時でも携帯にコールが入れば京子は生徒会室に行き、生徒会長専用に設けられた部屋で健志の前に跪くよう躾られた。
 健志はそんな京子を見るのだ大好きだった。
 生殺与奪の権を握った人妻くらい、健志に権力を実感させてくれるものは無かった。

「おはよう、京子。今日は口から始めてパイずりして、フィニッシュはマ○コにしようかな」

 登校してきたばかりの京子を呼びつけて、ソファにふんぞり返った健志がそんなことを言う。
「は・・はい・・・あなた・・。校内妻・・京子の・・お口と・・パイずりと・・オマ○コで楽しんでください」

 そして健志はその部屋の窓から悠々と校庭を見下ろしながら人妻の口を使い、また媚肉に注ぎ込んだりした。

 そしてやがて健志が3年に進級し選択授業が増えると、その行為は一層エスカレートした。
 まず自分の時間割を調整し、月曜日は1時間目を空きにし、木曜日は清水の数学がある6時間目の前の5時間目を空きにした。
 その一方、清水の役割に朝の校庭管理を入れさせた。運動部の朝練対応に学校側の管理者を置くよう生徒会長の健志が意見を出したのだ。すっかり腰巾着に成りきっている清水は一も二も無く賛成した。そして最初の1年目は、近くに住んでいる清水にその任を割り振らせたのだった。
 そして最後に京子には3年の授業以外は受け持たせないよう学年主任に根回しした後、多くなった空き時間に生徒会との橋渡し役として生徒会対策係りという役割分担を担わせたのだ。
 新学期を迎え発足したこの新しい役割分担の意味を知っているのは、健志と京子の二人だけだった。

「あなた、いってらっしゃい・・・」

 朝7時、京子は夫の清水圭吾をマンションの自室の玄関で送り出した。

「ああ、いってくるよ。ふわ~あぁぁぁ・・・。あ~、1時間も早いと眠いね」

 圭吾はそうぼやくと、朝錬の管理をするため京子より1時間早く出勤していった。
 しかし京子は夫が出て行き扉が閉まっても、その場を動かず虚ろな瞳で扉を見つめていた。
 すると、1分もしないうちに閉じた扉が京子の目の前で開いた。
 外の明るい日差しでシルエットになった男が、玄関に踏み込んでくる。
 圭吾ではない・・・明らかに一回り大きいその男は無論健志だった。
 京子は威圧されたようにその場に跪いた。
 そして健志が後ろ手に扉をロックすると、顔を見上げて口を開いた。

「おはようございます・・・あなた」

 健志はこの半年程ですっかり馴致しつくした人妻を、薄笑いを浮べて見下ろした。

「おはよう、京子。そして、おめでとう。今日からは“校内妻”だけではなく、この自宅でも俺に仕えさせてあげられるよ」
「あ・・・ありがとうございます・・・。むさくるしい自宅ですが・・・健志さまのご自由にお使いください」

 健志はその言葉に満足そうに頷くと京子を手招きした。
 そして当り前のようにその口を吸うと、両手でスカートをたくし上げ、下着をつけることを禁止している尻に指を這わせた。
 夫が出て行ってからまだ2分程度だ。
 おそらくエレベータで下に着いた頃だろう。
 それなのに京子は他の男の言いなりに口を与え、身体を自由にさせている。
 しかし京子はその背徳感に震えるほどの快感を感じる女にされてしまっていた。
 健志はスカートのホックを外し、下半身を丸裸にした。
 そして、その尻をぺちっと叩くと、奥の部屋に促した。

「おい、清水の見送りをしようぜ」

 無造作に京子の淫裂に指を埋めながら歩かせた健志は、居間にたどり着いてからそう言った。

「ベランダから見えるだろ?」
「は・・ん・・。見えます・・・」

 二人揃ってベランダに出た。しかし健志は見つかるとまずいので京子の後ろでしゃがみ、胸辺りまである目隠しを兼ねた手すりの陰から、下を見た。

 居た・・・

 下からは立っている京子の肩くらいまでしか見えない筈だ。
 健志はそう考えると、目の前に突き出されている京子の尻を開き、媚肉に舌を這わせながら言った。

「おい、手ぇ振って、声を掛けろよ。ほらっ!」

 健志の命令に、京子は逆らえない。

「あ・・・あなた~~っ!いってらっしゃ~~いっ!」

 すると下を歩く人影がクルッと振り返った。
 清水だ。ビックリしたように目を大きく開けた後、照れくさそうに小さく手を振り返している。
 そんな様子を健志はニタニタと笑いながら見ていた。
 片手は媚肉に埋め、片手は上半身の服に潜り込ませて乳房を揉みしだきながら・・・。

 この日を境に健志は京子の自宅までも進出していった。
 特に月曜日は1時間目の授業を入れていないため、土日の夫婦の性生活をじっくり聞きながらゆっくりと清水夫妻の寝室で、その妻の身体を味わい、朝風呂で身体を清めさせてから登校することが習慣となった。
 また木曜日は5時間目に生徒会室で京子をたっぷりと抱いた後、清水の授業を受けることにしていた。そして、授業が終了すると再び生徒会室に戻り、中で裸のまま待たせていた京子に夫の様子を聞かせながら再び自らの肉棒をその妻に埋め込んでいった。

 京子が清水圭吾と結婚してから8ヶ月、健志の校内妻になってから半年が過ぎていた。その間、若い健志には日曜日を除いて毎日のように抱かれ、また多い時には日に3度も注がれることがあった。一方、圭吾はあまりセックスが強くなく新婚だというのに週2回程度しか京子を求めてこなかった。
 このため今やその肉体は、夫の圭吾ではなく、完全に健志のモノに慣れきってしまっていた。
 夫の圭吾には触らせないどころか、見せることも無いアヌスを、健志の命じるまま、白昼の生徒会室で自ら広げるのだ。そして、健志のその日の気分でどの穴に注ぐのかを選ばせるのであった。
 最初は、危険日にも構わず中出ししてくる健志に「それじゃあ、代わりにケツを使えるようにしろ」と命令され、泣きながら差し出していたアヌスが、今では第3の性器として当り前のように使われていた。
 そしてその肉体に引き摺られるように、京子はいつの間にか心まで健志に隷従しきっていた。
 メイクも、服装も、アクセサリーも、そして下着の趣味まで、全て健志の好みどおりに変わっていった。

 全てが上手くいった。
 しかし、そのことが健志をかえって物足りない気持ちにさせていた。

 なにか・・・新しい刺激はないのか・・・

 そう思っている頃にそれは訪れたのだった。
 5月のゴールデンウィークが過ぎ、そろそろ中間試験の時期に差し掛かっていたが、健志はそんなものには何の興味も無かった。
 いつものように京子の家に行き、朝の濃いミルクを京子に注ぎ込み、ベッドでまどろんでいた。

「あの・・・あなた・・・」

 健志の耳もとで京子が小さく囁いた。

「ん~?なんだ?まだ時間あるだろ?」

 健志は片目だけ開けて、京子を見た。
 するといつになく、話したげな様子で健志を見つめている。

「ん?どうした、京子」

 健志は完全に主人気取りで京子の身体を引き寄せた。

「あん・・あの・・・わ・・わたし・・・できちゃったみたいなの・・・」
「ん~~?ガキかぁ?」

 京子の告白を健志はかるく聞き流した。
 京子は小さく頷いた。

「で?どっちの?」

 健志は平然と訊いた。
 しかし、京子は頭を振るだけだった。

「・・・わからない・・の」

 その答えに健志は暫し宙を見据え、何事かを考えていた。
 しかし、ほんの僅かな時間ののち健志の唇がニッと広がった。
 丁度、京子たちの結婚の話を聞いたときのように、妖しく暗い笑みが再び健志の顔に表れたのだった。
 京子は、不吉な思いに駆られながらも訊かずにはいられなかった。

「ど・・・どうすれば・・・」

 しかし健志の答えはあっさりとしていた。

「ま、とりあえず、オメデト。予定日はいつだい?」
「予定日って・・・う・・産んでいいの?」
「さあ、俺に訊くなよ。京子と圭吾の問題だろ?ふたりで話し合うんだね」
「あ・・・あなたの子かもしれないのよ?」
「ははは。大丈夫だって。俺も圭吾も同じB型だからさ。どっちのガキだってバレりゃしないよ」
「ほんとに・・・いいのね。生んでしまっても・・・」
「あぁ。勝手にしろ、勝手にネ」

 健志はもうこの話題に飽きたように、言い放った。
 そして、その代わりに2回戦を始めるため京子の身体に手を伸ばしていった。

「へへ、もう少ししたら腹のデカイ妊婦とセックスできるんだな。ちょっと面白そう。お前も体位とか研究しとけよ」

 そういって、まるで家畜を扱うように京子の尻をぺちぺちと叩いたのだった。

< つづく >

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