(3)調教
事務所のある市街地から車で1時間ほど北上したところにその村はあった。
山沿いの集落で、今は僅かな老人を除いて殆ど暮らす者もいない典型的な過疎の村である。
その村の中でも一番の山沿い、最も外れにある1軒の古い農家が数年前に買い取られていた。
『(有)野鳥生態観測所』という聞いたことも無いような会社だったが、当時は多少でも村に税金が入ってくるならと歓迎されたようである。
しかし蓋を開けてみれば、古い煉瓦造りの頑丈な納屋を観測用に改造したようだったが、肝心の会社の事務所は結局作られず、単なる出張所の一つに過ぎなかったのだ。
月のうち何度かやって来る男達に村の老人たちも最初は興味を示していたが、それもすぐに無くなった。
だから、その建物の所有権がいつの間にか『柏田物産』という会社に変わっている事に気付くものなど誰一人いなかったのである。
どんよりと曇っていた空からチラチラと白いものが舞い降り始めていた。
暖かい車内から一歩足を踏み出した途端、容赦ない北風が首筋を吹き抜ける。
神宮寺はチラッと空を見上げると、コートは羽織らず小走りに古ぼけた煉瓦造りの建物へ駆け込んでいった。
「よぉ、神宮寺。早ぇえな」
2重になっている頑丈な扉を開けると、石田が疲れた顔でソファから声を掛けた。
「おぅ、石田。なんだぁそのツラ?おめぇ徹夜かぁ?」
神宮寺は、充血した目で大あくびをしている石田にニヤッと笑いかけた。
「へへへへ。仮眠くらいしようと思ってたんだけどなぁ、奥のお姫様が寝かせてくれねぇんだ」
石田はそう言って、視線をチラッと後ろに向けた。
それを聞いて神宮寺の笑みが一層深くなる。
「それはそれは・・・。くくくっ、アンタの真珠入りで一晩中かい?幸せなこって。で、いい加減素直になりそうかい」
片方の眉を上げて問いかける神宮寺に、石田は天井を見上げながら答えた。
「そうだな、ま、素直っていやぁ素直だがな。もう、どっちかって言うと半分溶けかかってるぜ。急がねぇとぐずぐずに溶けて排水溝に流れちまいそうだ」
石田の説明に神宮寺の鼻息が荒くなる。
「へへぇ?そりゃあ好都合だ。雪で冷えちまった体をちょっくら暖めて貰うとするか。で、今は空いてるのか」
その問いに石田は一瞬記憶を探るように斜め上を見上げた。
「俺が戻って来た時には、若けえのが2人くらい居たがな。ま、とりあえず空いてる穴に突っ込んどきな」
神宮寺はその石田の答えにニンマリとしながら小さく肯くと、奥の隠し通路へ足を向けたのだった。
「えへへっ、おらぁっ!どうしたぁ、ああっ?締め付けが足りねぇぞっ、こらぁっ」
神宮寺が電子ロック付きの頑丈な扉を開け、監禁部屋の立ち並ぶ廊下に足を踏み入れると、一番奥の一室から肉を打つ湿った音と若い男の怒声が聞こえてきた。
(へへへ・・・やってるじゃねぇか)
神宮寺たち女衒のプロにとっては馴染みの音だが、とびっきりの獲物だとやはり血が騒いだ。
冷えたむき出しのコンクリートの通路を足音も高く進むと、中にあるもう1つの扉を開ける。
すると、そこには見慣れた、けれども見飽きることの無い光景が展開されていたのだった。
中央にベッドがある。
しかしそこに仰向けで横たわっているのは全身を日焼けで真っ黒にした男だった。
そしてその男の上に真っ白い肉塊が宙刷りになっていたのである。
後ろ手に縛られ両足も胡坐のような形で固定された女だ。
そしてその格好のまま天井の固定器具から頭が下になるように吊るされているのだ。
その頭の位置はちょうどベッドの高さになるように調整されており、なんとその寝そべった男は自分の股間にその顔を押し付け、好き勝手に上下に揺すっては女の口を性器代わりに使っていたのだった。
それだけでは無い。
この部屋には、更にもう一人男が居たのだ。
その男は女の後ろに立っている。
無論全裸だ。
そして、宙刷りにされた女の尻は、この男の股間にあうよう高さを調整されていた。
そして空中に浮かぶ女の尻を好き勝手に揺らしながら、その性器に我が物顔でペニスを突き入れていたのである。
先程聞こえた肉を打つ音は、この男の下腹部と女の尻がぶつかる音だった。
「おぅ、シッカリやってるかっ、おめぇらっ」
神宮寺は部屋に足を踏み入れながら、男たちに声を掛けた。
「あっ、神宮寺さん、どうもっす」
「おはようございます、ジンさん」
二人の男は、ぱっと顔を上げると神宮寺に挨拶をした。
二人ともまだ二十歳前後で、ビックリするくらい明るい顔つきをしていた。
どう見てもヤクザには見えない。
普通の学生がバイトをしているような雰囲気である。
神宮寺は少し俯いて苦笑を隠すと、宙刷りの女の傍らに膝をつき、顔にかかっている髪を払った。
すると、そこには開口器で強制的に口を開けられ、そこに太いペニスを咽まで差し込まれた蘭子の顔があったのだった。
しかし既に4日前の強気な瞳は無かった。
顔中が脂汗と掛けられたザーメンでギトギトにテカリ、口からはダラダラと涎が零れ落ちている。
そして、ペニスを突かれる度に咽の奥から“ガッ、グェ”と不気味な動物のような音を立てているのだ。
死んだようにドロンとした目は涙が乾き固まった目ヤニで見る影も無かった。
「へへへっ。どうしたぃ?お嬢さん、モーニング・セックスの味は。若けぇ男をたっぷり味わえて、満足かぁ」
神宮寺は蘭子の頬を突っつきながら話し掛けた。
しかし蘭子の瞳は虚ろなまま、それに気付く素振りも無かった。
「ちっ、気絶寸前か。おめぇら、出したきゃ良いぜ。ちょっと休憩を入れる」
その言葉に二人の若者は顔を輝かせた。
「う~しっ、んじゃ、とっとと出して、俺らもメシにすっか」
まるで小便でもするように二人はそう言うと、蘭子の体と頭をグッと掴み、思いっきり前後に、上下に振り出したのである。
空中でまるで嵐の小船のように揉みくちゃにされた蘭子は、やがて男たちが体を痙攣させて濃く粘り気のあるザーメンを思いっきり体内に注ぎ終わると、そのまま放り出されたのだった。
まるでティッシュを使い捨てるようである。
蘭子は、宙刷りにされたまま、口と性器から白い粘液をダラダラと垂らしながら、完全に失神した体をゆっくりと揺らしていたのだった。
*
あの日神宮寺によって気絶させられた蘭子は、目覚めたときにはこの遥かに離れた監禁専用アジトに連れ込まれていたのだ。
クスリの影響で微かに眩暈を感じていたが、緊張感がそれを押さえ込む。
そして蘭子は油断無く耳を澄まし、気配を探ってからゆっくりと瞼を上げたのだった。
見回したが、ベッド以外何も無い殺風景な部屋だった。
(誰も居ない・・・ようね)
それだけを確認し、ようやく蘭子はゆっくりと体を起こそうとした。
しかし腹に残る鈍い痛みに思わず顔を顰める。
そして無意識に腹に視線を向け、そこでようやく自分の姿に気付いたのである。
全ての服を剥ぎ取られ、素っ裸でベッドに寝かされていた自分の姿に・・・
屈辱に顔が紅潮した。
気を失っている間に、あの下品な男たちに体を晒していたかと思うと堪らなかった。
(この屈辱っ、まとめてお返しするからねっ!)
蘭子は唇を噛んで猫のように瞳に怒りを漲らせた。
しかし蘭子のその怒りを感じ取ったように、ちょうどその時、背後で扉が開く音がしたのである。
反射的に胸と股間を手で隠し、蘭子は振り向いた。
するとその扉から、さっきの男たちがゾロゾロと入ってきたのだった。
おそらく隠しカメラで蘭子を監視していたのだろう。
「お目覚めのようですな、お嬢さん」
荒木が代表して口を開いた。
しかし蘭子は返事もせずに、男たちを睨みつけていた。
(1,2,3・・・5人だけ・・ね。大丈夫、馬鹿きつねに暗示を解除されたからって油断しきってるわ。ふん、お生憎さま、一度落とした相手はもう道がついてるのよっ。一気に引きずり込んでやるわ)
そう決心すれば、蘭子に迷いは無くなった。
きつく睨んでいた視線を一瞬外すと、次の瞬間蘭子はベッドから降り立ち惜しげもなく自らの全裸を男たちの視線に晒したのだった。
咄嗟のことに全員の視線が蘭子の裸身に集中する。
そのタイミングで、蘭子はゆっくりと右手を持ち上げ、前方に一杯に伸ばしたのだった。
男たちは掌の動きに視線を奪われ、気付いたときにはその先にある蘭子の瞳を覗き込んでいたのだった。
誘うような、挑むような深い色合いの瞳が男たちの視線を絡めとっていく。
まるで吸い出されるように男たちの目から意思の光が薄れていく・・・
(掴んだっ!)
蘭子の瞳が豹のように光る。
(お前もっ、お前もお前もっ・・・そしてお前もねっ)
蘭子の魔眼が一瞬の虚を捉えたのだ。
あとはもう暗示の言葉を流し込むだけだった・・・
蘭子は完全な勝利にニンマリと微笑む。
そして落ちついて口を開いたのだった。
「・・・・・っ!」
(えっ?)
蘭子はキョトンとした。
今、一体何が起きたか全然判らなかった。
それは、まるで咽から隙間風が吹きぬけたようだった。
判らないが、でもとにかくもう一度繰り返すしかなかった。
「・・・・・・・・っ!!」
ひゅっという呼吸音だけが微かに蘭子の耳に届いた。
(なっ、何っ!ど、ど、どうなってるのっ!)
蘭子は一瞬でパニックになった。
ワケが判らないまま、大声で叫び声をあげた・・・・・・つもりだった。
しかし蘭子の咽から出たのは、ひゅ~っという“か細い”呼吸音だけだったのである。
(こっ・・・こ、声が・・・声がでないっ!!)
蘭子は咽に手を当てて、息の続く限り、何度も何度も声を出そうとした。
しかし、その努力は決して実ることは無かったのである。
信じられない事態に蘭子はしばし呆然となっていた。
しかし運命は容赦なくそんな蘭子を窮地へ追い込む。
慌てふためく蘭子を目にした男たちが、次々と我に返り出したのだった。
一瞬訳がわからず戸惑った表情をしていた男たちは、次の瞬間蘭子に驚愕の視線を向ける。
そして忽ち怒りを満面に表すと、蘭子に突進してきたのである。
「テェメエッ!ざけんじゃねぇぞっ、こらぁっ!!」
顔を鬼のように真っ赤にした神宮寺が蘭子に飛び掛る。
(いやっ!)
反射的に逃げようとした蘭子だったが、片手でその髪を鷲掴みにされた。
そしてグローブのような手で全く容赦のない往復ビンタを両頬に受けたのだった。
まるで棍棒で殴られたような衝撃に、蘭子はそれだけで気が遠くなりかける。
直接的な暴力にはまるで耐性が無いのだ。
「このっ馬鹿女がっ!てめぇのチンケな芸がいつまでも通用するかぁっ!」
「ヤクザを舐めんじゃねぇぞ、こらぁっ!」
「くそ生意気な目玉しやがってっ、抉ってやろうかっ!ああっ!」
男たちは次々と脅しの言葉を吐きながら、容赦なく蘭子を打ち据えた。
腹を殴り、乳房を殴り、股間を蹴上げた。
顎の骨が砕けそうなほどの力で鷲掴みにし、そのまま宙吊りにした。
床に引き倒しては、髪を掴んで引きずり上げた。
暴力のプロ達の手にかかった蘭子は、全裸に剥かれた真っ白な体をまるでピンボールの玉のように男たちの間で弾かれ続けたのだった。
「おい、ちったぁ身に沁みたかぁ、蘭子さんよぉ」
男たちの容赦ない暴力に、ぼろ雑巾のようにベッドに倒れ伏した蘭子は、そのまま両手を皮手錠で後ろ手に拘束されていた。
そしてその髪を神宮寺に掴ませ強制的に顔を上に向かせた荒木は、朦朧とした瞳を見下ろしながら言った。
「残念だったなぁ。せっかくいい腕してるのによぉ、声が出ないんじゃぁ催眠術を掛けようがねぇよなぁ」
荒木のその嘲るような言葉はゆっくりと蘭子の中に沁み込んでいく。
切れた唇が悔しそうに歪んだ。
「ま、所詮催眠なんてマヤカシが何度も通用するわけねぇんだ。俺らが本気になりゃこのザマって訳だ」
勝ち誇った荒木の言葉に蘭子のプライドが傷つく。
(声さえ出ればっ、お前たちなど、虫けら以下のヤクザなど、蹴散らせてやれるのにっ)
その悔しそうな表情が荒木の性欲を刺激した。
「へっへっへっ。お前さん、自分がどうなるのか判ってるか?」
荒木はそう言うと、神宮寺に命じて蘭子を仰向けにさせた。そして手の空いている横溝と清水に目配せをする。
すると二人はニヤッと笑い蘭子のベッドの両側に移動し、無防備だった蘭子の両足を掴み思いっきり広げたのだった。
女衒達の阿吽の呼吸というやつだ。
蘭子はハッとした表情で一瞬両足を閉じようと力を込めたが、それがまるで無駄な努力であると悟ると、諦めたように力を抜いた。
「ふふふっ、綺麗なピンクじゃねぇか」
荒木は無造作に蘭子の媚肉を割り開きながらそう言った。
そしてまだ濡れてもいない肉溝に、指をゆっくりと沈めていく。
「それに締りも良い。肌も綺麗だ」
荒木が蘭子の内股に舌を這わせると、おぞましさに蘭子の眉がきつく寄せられた。
「勿論、スタイルも抜群だし、何より美人だ」
蘭子を見下ろしながら優しげな口調でそう続けていた荒木は、しかし突然口調を一変させた。
「だがなっ、躾がなってねぇっ!」
そう言い放つと、首から抜き取ったネクタイで蘭子の腹をピシッと打ち据える。
「男に口ごたえするどころか、猿知恵搾って罠まで張ってやがるっ」
ヤクザは蛇のような目つきで蘭子を威圧した。
まんまと罠に嵌った蘭子は、しかし気力は少しも衰えていなかった。
生来の気の強い視線で対抗するようにその圧力を跳ね返す。
けれど、そんな蘭子に荒木は再び優しげな口調に戻って続けた。
「これじゃあ嫁の貰い手がねぇってもんだ」
そしてニンマリと微笑んだ顔を蘭子に近付けた。
「素材が良いのに、これじゃあんまりにも勿体ねぇ。そこでだ、この俺たちが手弁当でアンタを教育してやろうって訳だ。女の躾に関しちゃ、俺たちはプロだからね。安心して身を任せりゃいいぜ」
荒木はヤクザの本性を現した粘液質の表情で、蘭子にそう告げたのだった。
(能書ばっかりっ。バッカじゃない?)
声が出せない蘭子は、代わりに思いっきり蔑んだ視線で荒木を見詰めた。
しかし、そんな蘭子の反抗的な態度にも荒木の表情は変わらない。
いや、むしろより楽しそうな目つきになった。
「くっくっくっ。あぁ、そうだ。言い忘れてたよ、蘭子さん。俺たちの躾が十分に身について何処に出しても恥ずかしくない女になったらな、ちゃぁんとお披露目をしてやるからな。招待客の筆頭は、そうだなぁ・・・アンタのお友達にお願いするか?たしか“きつね”さんとは仲良しっ言ってたよなぁ」
荒木はそう言って鮫のように嘲笑った。
逆に蘭子は、その言葉に頭を殴られたような衝撃を受けた。
目を皿のように見開く。
(こっ、こんな奴等に捕まった姿を、アイツに見られるっ?じょ、冗談じゃないわっ!)
蘭子は一旦は観念して力を抜いた下肢を再び物凄い力で動かし、暴れだした。
しかし、無論大男のヤクザ達に固定された体の自由はそんなことでは回復できない。
忽ち前にも増した力で押さえ付けられてしまった。
「くっくっくっ。全く生きが良い牝だな。ま、1週間位は楽しませてくれると有り難いんだがな」
シャツのボタンを外しながら荒木が嬉しそうに言う。
「はははっ、いや、そりゃあちょっと酷でしょう。特製カクテルを奮発しますからねぇ、ま、もって3日ってとこだと思いますがねぇ」
一人手の空いていた石田が蘭子の顔を覗き込みながら言った。
いつの間にか注射器を手にしている。
そしてその注射器からピュッと飛び出した薬液が蘭子の顔に降り注いだ。
(媚薬・・・か、麻薬。多分両方ね。拙いわ、こういうときに限って対抗薬を打っていないっ)
正式な命令での潜入ではありえないのだが、蘭子は外された腹癒せに勝手に飛び出してきたのだ。
一旦守勢に立つと、余りにも向う見ずな暴挙であった。
しかも白神達を出し抜こうと、完全に行動は伏せてある。
バックアップなどあろう筈も無かった。
(耐えるしかない。耐えて、隙をついて・・・。必ず、必ず脱出してみせる。その時まで・・・私は耐えてみせるっ)
蘭子はそう決心すると、既に裸になり隆々とした肉棒を蘭子に見せ付けている荒木を無視して、胸のうちで自己暗示のワードを繰り返し唱えたのだった。
(逆らわず・・・力を抜いて・・・身を任せる・・・。流されず・・・溺れず・・・感覚を遮断して・・・)
言葉の流れに身を任せる・・・
目は開いているが何も見ず、耳は聞こえているが何も聞かない。
蘭子の意識は心の奥深くで丸くなり、その肉体だけをヤクザ達に明け渡したのだった。
遠い感覚の向こうで、微かにチクリとした痛みが腕に走る。
やがて体の奥から、熱い波動がうねり出した。
しかし蘭子はそれを押さえつけようとはしない。
まるで波乗りのようにその表面に漂い、身を任せた。
薬物には対抗しては駄目なのだ。
受け入れて、通り過ぎるのを待つだけだった。
そんな蘭子の様子を、荒木は見下ろしている。
そして驚いたように右目の眉が上がった。
「へぇ?ただの牝じゃねぇってか?こいつ薬の付き合い方を知ってやがる」
しかし、そういう荒木の口元には変わらぬ笑みがあった。
「確かにな。俺たちの所に独りで乗り込んでくるだけのことはあるぜ。でもな、蘭子さんよぉ」
蘭子の片足を広げながら、神宮寺は蘭子の乳房を片手でゆっくりと揉み込んだ。
無骨な手なのに、その指使いは繊細だった。
しっとりした肌の上を滑るように撫で、そして虚を突いたように指を強くめり込ませる。
すると蘭子の中で渦巻く熱いうねりが、まるで新たな火種を放り込まれたように燃え上がった。
静かな流れに生じる波紋は、イレギュラーであるが故に蘭子の気を乱す。
神宮寺のたったそれだけの愛撫に、蘭子の呼吸はリズムを変えるのだ。
「悪いけどよぉ、その程度の対策でどうにか成る半端モンじゃねぇんだ、このカクテルはよぉ」
男たちの下品な笑いが蘭子を嬲る。
そして、陵辱は始まったのだった・・・
既に臨戦状態の荒木がゆっくりと蘭子の上に圧し掛かっていった。
大きく割り広げられた下肢の間に、無防備に晒された胸の上に、荒木の体が密着する。
無反応な口に舌を押し込み、唾液を流し込む。
耳たぶを優しく噛み、そして囁く。
「ぶっといソーセージも、栄養たっぷりなミルクもこれから毎日飽きるほど食わせてやるぜ」
そして遠くを見詰める瞳に片頬で笑いかけながら、その肉棒を蘭子の体内にゆっくりと押し込んで行ったのだった。
荒木がこうして蘭子と繋がると、周りの男たちはようやくその手を離した。
そして置いてあるパイプ椅子に腰掛けて、2人の様子を見学し始めたのである。
見られながらのセックスも、仲間のセックスの見学も、男達にとっては慣れたものだった。
「おい、次だれが使う?」
タバコを取り出しながら、横溝が仲間を見回す。
「俺に姦らせてくれよ。今晩仕事が入っててあんまり時間がねぇんだ」
石田が横溝に向って言った。
「仕事ぉ?あぁ、例の取引か。何時からだ?」
蘭子の上で腰を使いながら、荒木が振り返る。
「9時っす。ただ移動もあるんで、ここにはあと2時間くらいしか居ねぇんですよ」
石田は二人の結合部分を覗き込みながら言った。
「2時間?さぁて、微妙なとこだな。今はじめたばっかりだしよ」
そう言いながら荒木は蘭子の背中に手を回し、繋がったまま蘭子を引き起こした。そして自分は代わりにベッドに仰向けになる。
両腕を拘束されたまま蘭子が荒木に跨っている姿勢だ。
荒木は自らの腰の律動でプルプルと震えている蘭子の柔らかい乳房に下から手を伸ばしゆっくりと揉み込んだあと、不意にその乳首に爪を立てるようにしながら下に引っ張った。
鋭い痛みが走った筈なのに蘭子の表情に変化はない。
ただノロノロと上体を屈め荒木の胸に預けた。
荒木はそうして自分にしがみ付かせるような体勢にした蘭子の背中に手を這わせると、そのまま下に手を滑らせ、蘭子の尻肉を大きく割り開いたのだった。
二人の結合部分も蘭子の尻の穴も丸見えである。
「なんだったら、こっち使ってるか?へへへっ、取引前に“ウン”がついて縁起が良いぜ」
荒木はニヤッと笑い、石田に蘭子の尻を向ける。
一方、話を振られた石田は、特に驚きもせず軽く肯いた。
「あぁ、いいっすか?初物なんで遠慮してたんですけど、荒木さんが良いんなら俺は勿論OKっすよ」
石田は荒木が突き上げている蘭子の尻に勝手に手を当てると、自分でもその肉を割って蘭子の尻の穴の具合を確かめた。
親指をあてがって、弾力を測っているのだ。
しかしこれまで一切の抵抗を示さなかった蘭子だが、この石田の指には反応した。
今までの茫洋とした表情を保ちながらも、指から逃れるように尻を振るのだ。
荒木のペニスもその度にギュッと締め付けられる。
(くっくっくっ。なんて判りやすい女なんだ。)
蘭子のその反応に気付いた荒木は、下から蘭子の体をガッシリと拘束し無言で石田に目配せをする。
その合図に石田もニンマリと口を曲げた。
そして親指の代わりに中指をあてがい、じわじわと奥へめり込ませるように力を加えていったのだった。
すると蘭子の尻の動きがみるみる激しくなる。
そして荒木の拘束を解こうと、上体まで思いっきり揺らしだすのだった。
自己催眠で感覚を鈍らせていても、自らのプライドだけは蓋をできない。
せっかく心の奥に避難した蘭子だったが、男達の排泄器官への陵辱だけは許容できなかった。
(駄目よぉ!あなた達、なんて非常識なのっ)
蘭子は大慌てで避難場所から這い出て来るしかなかったのだ。
その結果自らの手で暗示を解除することになったとしても・・・
「どぉ~したぁ、蘭子ぉ。ん?アヌスは嫌いか?」
先程までの遠くを見ているような視線は完全に消し飛び、荒木を必死で見詰めていた蘭子は、その言葉に夢中で肯いた。
「そうか、嫌いか・・・。しかしなぁ、石田はもうすぐ仕事で居なくなっちまうからな、時間がねぇんだ。お前がもっと積極的になってくれりゃあ、俺も一時間くらいでアイツと交代できるんだがな」
荒木は蘭子の締め付けを楽しみながら、余裕の表情でそう言った。
その提案に一瞬躊躇した蘭子だったが、再び蠢きだした石田の指に忽ち追い詰められ、夢中で肯くしか道は無くなっていた。
「へへへ、そうかい。じゃ、先ずはキッスからにするかぁ?恋人にするみたいに濃いやつを頼むぜ?」
簡単に蘭子を自分たちのペースに引きずり込んだ荒木は、口を斜めにして上気した蘭子の顔を見上げる。
しかし蘭子はそんな荒木の言葉に屈辱感を感じる暇も無かった。
自己暗示を解いたツケが、今物凄い勢いで蘭子を苛(さいな)んでいるのだ。
今までの反動が一気に全身の感覚器官を襲い、峻烈な快感が体中で暴れまわっている。
蘭子は自らの体の制御に全神経を集中させていたのだった。
(くぅぅぅうううんんんっ)
咽が正常なら思いっきり喘ぎ声を上げていただろう。
腕を拘束されていなかったら、自らの体を思いっきり抱きしめていただろう。
蘭子は自らを拘束する仕掛けに、この時だけは感謝した。
しかし蘭子のその上気した表情と、固く勃起した乳首、そして急に湿った音を立て始めた結合部分は隠しようがない。
女扱いのプロである女衒たちには蘭子の状態は手に取るように判っていた。
「おらぁ、キスはどうしたぁっ!」
体中を駆け巡る快感信号と必死に折り合いを付けようとしている蘭子に、荒木はわざと腰を上下に荒々しく振って催促をする。
するとそれだけで落ちつきかけた蘭子の呼吸が乱れ、背筋を仰け反らせた。
(いやぁっ、ダメ、待ってぇ)
体の中に差し込まれた男自身から信じられない快感が湧き上がると、それは腰の奥で弾け、そして背筋をビリビリと駆け上るのだ。
(ああっ、いけないっ、戦っちゃダメ・・・やり過ごすの・・・)
それには荒木の腰をこれ以上動かさせてはならない。
(はっ・・・早く、キスを・・・しないと)
蘭子は朦朧とした視線を投げて荒木の顔を確認すると、そのまま上体を前に倒した。
敏感な乳房が荒木の胸に擦れ、また新たな快感を生み出しかけている。
蘭子は激しく喘ぎながら、もう躊躇う余裕も無く荒木の口に自ら口を合わせたのだった。
自分の口内に蘭子の熱い舌が侵入してくる・・・
荒木はいい香のする呼気とともにその舌を思いっきり吸い上げ、自らの舌を絡ませていった。
両手は蘭子の首にまわし逃げられぬように固定をしながら、十分にその口を味わったのだった。
(へへへっ。生意気な女をこうやって落とす瞬間が最高だぜっ)
荒木はチュパッと音を立てて口を離すと、まるで魂まで吸い出されたような蘭子の表情を堪能する。
しかし無論、こんなことは始まりにすぎなかった。
蘭子が荒い息を吐いて呆然としている隙に、荒木はまたも腰を鋭く上下に振り出したのだ。
「さっ、休憩してる暇はねぇぜ。一時間以内に俺を逝かせられない時は、この穴を使うからな」
そういって荒木は蘭子の尻の穴に指をあてがう。
すると蘭子は反射的に尻をくねらせ、指の矛先を逸らす。
「ほらっ、さっさとしねぇかっ!」
荒木がそう言って蘭子の尻を鞭を当てるように叩くと、もう蘭子は自ら腰を動かすしか他に無かった。
(くっ・・・はぁぁあ・・・んっ・・・だっ、大丈夫っ・・・まだ、自分のペースの方が・・マシだわ)
蘭子は荒木の上で腰をゆっくりと使いながら、もう一度自己暗示を練り直そうとしていた。
無論、さっきまでのような深い状態には持っていけない。
しかし、このままではもう何分ももちそうにないのだ。
快感のレベルを至急下げる必要があった。
しかし女衒達の目は節穴ではない。
蘭子が気を逸らそうとしている事に気付くと、すぐにそのタイミングで腰を打ちつけ、あるいは乳房をギュッと鷲掴みその頂点のグミのような突起を荒々しく抓み上げる。
するとその度にそれまで整えてきた呼吸が乱れ、腰はうねり、快感の量が一気に跳ね上がるのだ。
(はあっ、な、何・・・いったい、どうなってるの・・・)
荒木の手管に翻弄され続けている蘭子は段々訳がわからなくなってきていた。
快感に耐えることが無意味に思えてくる。
(だっ・・・ダメよ、た、耐えちゃいけないんだわ・・・耐えれば耐えるだけ、思考が出来なくなる。んんっ、はぁ、いっ、一度、逝っちゃった方が・・・良いわ。すっきりさせてっ・・・んんっ、もう一度、立て直すのよ)
既に後戻りできないほど体をトロかせきってしまっている蘭子には、ヤクザ達の“カクテル”の本当の効果を推測することなど出来る筈もなかった。
俄かに腰の動きが激しくなってきた蘭子に対し、荒木は最初とまるで変わらぬ様子でベッドに仰向けになったまま両手を枕代わりに頭の下に置いて蘭子を見上げている。
「おっ、お嬢様はそろそろ“お逝きあそばせる”ようだぜ」
舎弟に運ばせたウィスキーグラスを手に神宮寺がニヤニヤと笑いながら、席を立った。
「どうっすか、荒木さん。具合は?」
清水も同じく立ち上がり、蘭子の乳房を勝手に揉み始める。
「あぁ、いい具合だぜ。締め方ももうチョイ鍛えれば商売モンになるぜ」
相変わらず涼しい顔で荒木は答える。
いつの間にか、4人ともベッドの周りに集まってきていた。
そして両側から清水と横溝がそれぞれ蘭子の乳房を搾り出すように揉みだした。
神宮寺はベッドに乗ると、蘭子の背後から腕を回し蘭子の顔を上に向かせたまま固定した。
そして最後の一人、石田は、ベッドから少し離れたところに立ち、デジカメを構えていたのだった。
「さ、お嬢様。準備できましたよ、しっかり“逝き顔”を撮ってあげますからね。あのカメラを見るんですよ」
神宮寺が蘭子の耳元でいやらしく囁く。
その声は朦朧としていた蘭子の脳にも届いた。
(しゃ、写真?い、嫌っ・・・だめぇっ・・・こんなの・・・んぁぁああっ・・・嫌よぉ)
蘭子は力を搾って男たちの企みから逃れようとするが、無論力で敵う筈も無い。
逆にベッドのスプリングを使って体を強制的に動かされる。
体の中で硬い楔が蘭子の抵抗を打ち砕く。
押さえきれない快感が、腰から全身に爆発的に広がっていった。
(いっ、嫌っ、こんなっ、ああんっ、んんんっ、いっちゃうぅ、いきたくない~っ、んぁぁああああっ、やめてっ、ああっ、いくっ、いくいくっ、イクイクイク、いくいくいくいくいくいくっ、んぁぁぁああああああああああああああああ~っ、っくぅぅううううううううううううううううっ!!!)
そして蘭子は遂に男達の腕の中で全身を痙攣させて、絶頂へ昇らされたのだった。
目をギュッと瞑った悔しそうな表情がやがて快感に染められ弛緩する。
そんな微妙な瞬間を逃さず、フラッシュが2度、3度と焚かれる。
そして蘭子は、4人の男のVサインとともに強制的に絶頂に昇らされた姿をカメラに記録されたのだった。
頭の中が真っ白になる・・・
蘭子はまさにその境地だった。
腰の中心で弾けた快感が、体中に、爪先にまで広がっているのだ。
何一つ自分の意思では動かせなかった。
この快感が退くまで、それに身を任せるしかないのだ。
しかし・・・
かつて無いほどの強烈な快感は、蘭子の予想を超えてそのレベルを維持し続けていた。
体中がふわふわと雲の上を漂っている。
そして、そんな中それは始まったのだった。
体の中にズンと衝撃が走る。
その途端、ついさっきの絶頂と同じ快感信号が全身を駆け巡ったのだ。
(ひゃぁっ!)
蘭子は口をパクパクさせる。
快楽の痙攣で、息さえ満足にできないのだ。
気が付けばいつの間にか蘭子はベッドに仰向けになり、大きく広げた両足を荒木が抱えて腰を使っていたのだ。
「やっと気が付いたのかい?男を逝かす前にテメェだけ気ぃ失っちまうとは、少しばかり勝手過ぎねぇか」
荒木のその言葉で、蘭子はようやく自分が失神していたことを理解したのだった。
しかし、体の火照りや今にもイキそうな切羽詰った感じは少しも軽減していないどころか、明らかに失神する前より増しているのだった。
(あぁっ、んぁあ・・・どうして・・・・あんっ、どうしてこんなっ、一回イッたのにっ・・・ぁぁああああっ、タマラナイッ!・・・また、またイッちゃいそう)
そんな動転した蘭子の表情をニヤニヤと観察しながら、荒木は口を開いた。
「ど~した、蘭子。まだ俺はイッテないぜ。ふふふっ、もうじき約束の1時間だがなぁ。石田もそろそろ待ちきれねぇってさ」
荒木はそう言って蘭子の顎を掴み、真っ赤に火照った顔を石田に向けたのだった。
蘭子の潤んだ視界に、既に全裸となった石田のたくましい体が映る。
股間の肉棒も既に勃起を始めていた。
(ぁぁぁああっ・・・だめ・・・やめてっ・・・いやなのっ)
蘭子は荒木にがっちりと押さえ付けられている体を精一杯揺すって、逃れようとした。
しかし荒木は涼しい顔で、リズム良く蘭子に肉棒を打ち付けている。
そして、荒木のペニスの先端が蘭子の子宮を突き上げる毎に、蘭子は逝かされ続けているのだった。
もう体に力も入らなかった。
既に石田は蘭子に添い寝するように横に居た。
そして蘭子の乳房をヤワヤワと揉んでいる。
もういつ尻の穴に手を伸ばされてもおかしくなかった。
こらえ切れず蘭子の目尻から涙が毀れた。
「おやおや、威勢の良い姐さんだったが、もう降参かい?」
荒木は腰を使いながら蘭子の頬に手を伸ばした。
そんな荒木に蘭子は涙を一杯に溜めた目で懇願した。
イ・ヤ・ナ・ノ・・・
声の出ない口でそう言っている。
そんな蘭子に荒木は呆れたように眉を上げた。
「そんなに嫌か?そうかい・・・」
荒木はすっかり罠に嵌っている蘭子に内心ほくそ笑みながら、渋い顔で提案を持ちかけた。
「そんなに嫌なら、ま、勘弁してやっても良いがな。しかしな、さっきも言ったとおり石田は時間がねぇんだ。ケツを使わさねぇんなら、こっちの穴で満足させてもらおうか」
そう言って荒木は蘭子の唇をそっと撫でたのだった。
蘭子のように徹底的に1つを嫌がれば、それを餌に何でも遣らせてしまうのがヤクザ達の常套手段だ。
無論、蘭子に断る道はもう無かった。
蘭子のような反抗的な女は普通調教の最終段階になるまで枷の無い口に入れることは無い。
それが、アヌスを引き合いに出すだけで初日から味わえるのだから、荒木達にとっても食指が動いた。
夢中で肯く蘭子に、荒木はニンマリと微笑むと、そこでようやく肉棒を蘭子の体内から引き抜いたのだった。
およそ1時間ぶりに外に出たペニスは、蘭子の分泌したどろどろの愛液が纏いつき、湯気がたっている。
「鍵」
横溝に短く命じた荒木は、全く力が入らない蘭子を軽々と裏返すと、受け取った鍵で手錠を開錠した。
そして再び前で施錠すると、続けてベッドサイドに置いてあった犬の首輪をとりそれを蘭子の首にしっかりと取り付けたのだった。
「起きろ」
荒木は首輪から伸びるリードを掴んで蘭子の首を引っ張りあげる。
いきなり気道を圧迫された蘭子は、咳き込みながら苦しそうに顔を上げた。
その目の前に荒木は割り込み、ベッドのヘッドボードに寄り掛かるように腰を下ろした。両足は前に投げ出している。
蘭子の目の前にどろどろのペニスを突き付けているのだ。
「さ、始めろ。言っとくがな、手ぇ抜きやがったら、そのままケツを使わせるぜ」
その荒木の言葉が終わらぬうちに、蘭子の尻は後ろから凄い力で引っ張りあげられた。
そして、蘭子が振り向くより前に、荒木とは違った感触の肉棒がズルリと胎内に侵入してきたのだった。
無論、石田である。
「うぉっ、よく練れてるぜ。流石は荒木さんだ」
大げさに驚いた顔をしている石田に荒木は苦笑する。
そして蘭子に短く命じた。
「ヤレ」
石田の力強いリズムが蘭子の脳を撹拌していた。
強烈な快感に思考力が麻痺している。
そこに与えられた荒木の言葉は、だから無条件に蘭子の中に沁み込んでいった。
まるで荒木の言葉が直接体を動かしているように、蘭子は無意識に顔を起こす。
そして霞のかかったような瞳で荒木のペニスを見詰めると、その唇をそっと押し当てていったのだった。
荒木は蘭子の口の中に消えていく自分の分身を眺めながら勝利感に酔っていた。
(へへへっ、催眠術師ってのはよっぽど特殊な牝かと思ってたが、そこいらのOLと変わんねぇじゃねぇか。今日のところはこのベッピンさんの口とマ○コで楽しませて貰うか。ケツは明日のお楽しみだな)
最初から蘭子の願いを叶える気などさらさら無い荒木は、そんなことを考えながら蘭子の頭を掴みゆっくりと自分のペースで上下させ始めたのだった。
…
こうして始まった本格的な陵辱は夜通し行われ、空がうっすらと明るくなりだした頃ようやく終わりを告げた。
その間、男たちは順番に交代していったが、蘭子はたった一人でその相手をしていたのである。
女衒達の手管と媚薬に完全に飲み込まれてしまった蘭子は、体力が尽きるまで男達の上で腰を振り、肉棒を締め上げ、熱い迸りを体の奥深くに受け続けていた。
最後の順番だった横溝が蘭子尻を抱え欲望を出し終えたときには、もう蘭子の意識は無かった。
口から泡を吹いたまま、この日何度目か判らない絶頂のあと失神していたのだ。
「っふぅ~~っ。これだけ輪姦された後にしちゃぁ、まずまずの締め付けだな。へへっ、掘り出し物かもな」
横溝は満足そうにそう呟くと、抱えていた尻からあっさりと手を離し、崩れ落ちる蘭子には見向きもせずに部屋を後にした。
そして蘭子は灯りの落ちた部屋で、まるで電池の切れた人形のように打ち捨てられていたのだった。
*
そして翌朝。
あれからまだ2時間程度しか経っていないのだが、蘭子は寒さと尿意で目を覚ました。
(あぁ・・・朝・・・なんだ・・・)
うっすらと開けた目に、天井のすぐ傍に開けられた明り取りから差し込む朝日が見える。
しかし、まだ体力は全く回復していなかった。
あと半日くらいは指一本動かしたくない気分である。
寝返りをうつだけでも体が重かった。
しかし、尿意はもう我慢できないほど差し迫っている。
考えてみれば昨日ここに来てからまだトイレに行っていないのだから当然だった。
蘭子はベッドからずり落ちるようにして床に膝をつき、そしてガクガクと震える足に精一杯力を入れてようやく立ち上がった。
すると途端に内股を“つぅ~っ”と液体が伝う。
(あっ、やだっ)
蘭子は一瞬失禁してしまったかと思い、反射的に股を手で押さえた。
しかしその指に付着したのは、ずっと粘度のある白い液体だった。
蘭子はそれに気付くと、片手で額を押さえて頭を小さく振った。
胸のうちには様々な思いが渦巻いている。
しかし、今はまだそれを考えるだけの気力が無かった。
(とにかく・・・トイレ)
蘭子はベッドに掴まり部屋を見渡したが、毛布1枚無かった。
ベッドのシーツを引き剥がそうかとも思ったが、それも億劫だった。
(ついさっきまで奴等に弄ばれていた体じゃない。今更恥ずかしがってもしょうがないわ)
蘭子は差し迫る欲求に背を押され、そのままの格好でドアをノックしたのだった。
(開けてっ、だれかっ、・・・お願い)
ふらふらの体をドアにもたれ掛けるようにして、必死に叩く。
すると、いきなりその扉が引き開けられ、蘭子はそのまま外に立つ男の胸に飛び込んでしまった。
「おおっとぉ。なんだい、アンタ。俺にも姦って貰いたいのか」
素っ裸で胸に飛び込んできた蘭子を受け止め、男はニヤッと笑う。
そして当たり前のように蘭子の乳房に手を伸ばしていた。
蘭子はもうそんな男に抗う気力も無かったが、しかしふとその顔を見上げると微かな驚きの色を浮かべた。
男は昨夜の幹部連中では無かったのだ。
ずっと若い、まさにチンピラという形容がピッタリの相手だった。
(こんな相手にまで・・・)
ようやく蘭子の中に屈辱が蘇ってくる。
しかし、生理的欲求はそれさえ後回しにするほど耐え難くなっていた。
蘭子は小さく足踏みしながら両手で下腹部を押さえ、声の出ない口で訴えた。
ト・イ・レッ
それを見た男の表情に理解の色が浮かぶ。
「あぁ、便所ね。で?どっち、小便?」
不躾な男の言葉だが蘭子はガクガクと肯いた。
その様子に男の口が微かに緩む。
「いいだろ。神宮寺さんから許可は貰ってるからな。ただし・・」
チンピラはそう言うと蘭子を押して部屋に戻させた。
「両手を後ろに回しな」
連れ出すための用心だろう。
蘭子は大人しく従う。
すると昨夜と同様に後ろ手に皮手錠を着けられたのだった。
しかしそれで蘭子が外に出ようとすると、チンピラはまだ首を横に振った。
「あせんなよ。次はこれ」
そういって蘭子に黒い皮製の拘束帯のようなものを見せた。
中心に何か突起がついている。
蘭子が戸惑っていると、不意に顎に痛みが走った。
チンピラが蘭子の顎の付根に右手をあてがい、思いっきり指をくい込ませているのだ。
蘭子の口が強制的に開けられる。
(いたいっ!)
声にならない悲鳴を上げた蘭子は、しかし次の瞬間その口の中に何かが押し込まれた。
そして凄い力で蘭子の口を覆ったチンピラは、そのまま頭の後ろでベルトのようなものを固定してしまったのだ。
「ほい、完成。見てみなよ」
そう言ってチンピラが差し出したピカピカのライターにはボールギャグで口を拘束された蘭子自身が映っていた。
(喋れないんだから、こんなにしないでもいいのに・・・)
蘭子はチンピラの荒っぽいこの遣り方に内心ため息を吐いていた。
しかし今は逆らうことは出来なかった。
機嫌を損ねれば、ここで漏らしてしまうことに成りかねないのだ。
男の為すがまま、従順に従うしかなかった。
「へへへっ、昨日きた時はえらく気取った女だったのによぉ。神宮寺さん達にたっぷり可愛がって貰ったら随分素直になったじゃねぇか」
軽薄そうな笑みを浮かべたチンピラはそう言って、蘭子の肩を抱いた。
「さぁて、それじゃアンタの便所へ連れて行ってやるぜ」
いやらしい手がわき腹を撫で回しているが、それでも蘭子はその言葉にホッとする。
そして男にもたれるようにしながらようやく監禁部屋から外に出たのだった。
廊下にも窓は無かったが、天井付近の明り取りは部屋のそれより大きく取られていた。
室内の明かりに慣れた目には、たとえ曇り空であってもその光が眩しく感じられる。
そしてその日差しの中、汚れたままの全裸を晒していることが蘭子は耐えがたかった。
昨夜からの荒淫の痕が体中にハッキリと残っているのだ。
少しでも隠そうと自然と前屈みになる。
すると、その罪人のような姿勢にまた自己嫌悪を感じた。
そんな蘭子をチンピラは面白そうに横目で見ていたが、やがて通路の突き当たりにあるドアの前まで来たとき、不意に立ち止まった。
「この向こうがアンタの便所なんだけどよ、どうだい?このドア開けて欲しい?」
好色そうな目つきのチンピラは、片手をドアノブに掛けたまま焦らす。
無論蘭子はガクガクと何度も肯く。
エアコンの無い通路は冷え切っていて、ホントに我慢の限界だったのだ。
「ふぅん、そうか。でもよ、せっかく連れてきてやった俺に何の礼もないんかぁ?」
その言葉に蘭子の眉が切なそうに寄る。
何を要求されても拒めないのだが、しかし今はホントに切羽詰っていたのだ。
「へへへっ、そんな顔すんなよ。別に今すぐアンタを頂こうって訳じゃねぇんだ。ただよ、ちょこっとアンタのアソコを見せて貰おうかなって思っただけだ」
チンピラは蘭子が断ることなど考えても居ない口ぶりで事も無げに言った。
「さ、そこにしゃがみなよ」
ドアの前を顎で指すチンピラに蘭子はしかし逆らえない。
後ろ手に拘束された不自由な体をゆっくりと沈めていく。
「お、見えてきた見えてきたっ」
顔を廊下に擦り付けるようにして蘭子の股間を見上げていたチンピラはそう言ってはしゃいだが、それで終わりではなかった。
「よっし、そのまま、動くなよ。こんどはケツの穴を見てやるぜ」
そう言って蘭子の背後に回ったのだ。
相変わらずアヌスには抵抗が強い蘭子だったが、見られるくらいは我慢しなければならない状況だった。
じっと目を瞑って耐えた。
しかし・・・
「ふふふっ、ば~かぁっ!オメェほんと間抜けな」
突然そう声を掛けると、チンピラは蘭子を背後から抱えあげたのだった。
丁度幼児におしっこをさせるような格好である。
いきなりの事に、蘭子は体を硬くした。
そして上体を捻って見上げる蘭子に、チンピラは厭らしい笑みを浮かべて言った。
「さっ、それじゃ便所へ行かせてやるぜ」
そしてチンピラは扉を大きく開け放ったのである。
その向こうに広がる光景・・・
それに気付いた時、蘭子の目は大きく見開かれた。
「いよぉ、蘭子。やっとお目覚めかぁ」
そう声を掛けたのは荒木である。
それだけではなかった。
昨夜蘭子を嬲った幹部連中がそこに勢揃いしていたのだ。
しかも、そこはトイレではなく、ゆったりとしたソファが置かれたロビーのような場所であった。
皆、仕立てのいい背広姿でドレスアップしており、そしてその正面には3脚で固定された一眼レフカメラが据えつけてある。
蘭子は一瞬で事態を察した。
そして、チンピラに抱えられたまま力の限り暴れだしたのだった。
「お~っ、意外と元気じゃねぇか。昨夜くらいじゃ少し物足りねぇってか?」
嬉しそうにニヤニヤと笑いながら神宮寺の巨体が近づいてくる。
そして暴れている右足をしっかりと掴んだのだった。
ほぼ同時に左足を横溝が押さえる。
「そうじゃねぇよ、ジンさん。男のエキスをタラフク吸い取って、元気が有り余ってるのさ」
横溝は神宮寺にニヤッと笑い掛けた。
そして3人がかりで拘束した蘭子をゆっくりと荒木の膝の上に降ろしたのだった。
神宮寺と横溝はそのまま荒木の隣に座る。
蘭子はまるで『土』の字のように足を左右に広げられたまま、ヤクザ達の膝の上に拘束されたのである。
荒木は後ろから蘭子の上体を固定しながら、その乳房をタプタプと揉み、そしてソファの後ろから清水が蘭子の顔を両手でガッシリと固定していた。
昨夜同様、男達の手で完全に身動きを封じられた蘭子は、全てをさらけ出したその姿勢でカメラと向き合っていたのである。
そして、足元には大きな金盥まで置かれていた。
(ヒドイ・・・こんな・・・酷いっ!)
蘭子は怒りで燃え上がりそうな視線で荒木を見上げた。
しかしヤクザの代貸しはそんな蘭子の視線を余裕で跳ね返す。
「ふふふっ。ようやく目が覚めたってツラだなぁ、蘭子さんよぉ。ま、そんな緊張することは無いぜ。これからお前さんは毎日こうやって見られながら小便するんだからな」
荒木は言葉で嬲りながら、同時に指を蘭子の媚肉に侵入させていた。
まるで蘭子の肉体の所有を宣言するような、我が物顔の行為である。
そしてギリギリまで切迫した尿意は、その指の軽い刺激でも決壊してしまいそうだった。
怒りの視線が、狼狽に揺れる。
「止めて欲しいか?」
荒木が不意にそう訊いた。
藁にも縋りそうな目で蘭子が反応する。
「昨日言ったろ?マインド・サーカスの奴等に牝奴隷となったお前の姿を見てもらうんだ。奴等の前で小便して、奴等のチンポを舐めるんだ。それが出来るんなら写真は勘弁してやっても良いぜ」
荒木の言葉に蘭子の記憶が蘇る。
脳裏にあの日の“きつね”くんの姿がハッキリと浮かんだ。
まるで少年のような元気のいい声が耳の奥に響く。
『わぁ、この人ホントにあの時の蘭子さん?うわぁ・・・ちょっと、引くなあ俺』
幻の“きつね”くんは顔を顰め汚いものを見るような目つきで後ずさりしていく。
(違うっ!私はっ、そんな女じゃないっ!私を、私をっ、そんな目で見ないでっ!)
蘭子はまるで悪夢を見たように頭を激しく振り、その幻を打ち払った。
それはプライドというには余りに強烈な忌避感である。
自分自身も気付いていない深い意識の底で、蘭子は“きつね”くんに何かを見たのだ。
そしてその『何か』が、蘭子に屈服を許さなかった。
その様子を見ていた荒木は、しかし大して落胆した様子も無く蘭子の耳元に優しげに囁いた。
「ふふふっ、ま、良いさ。何も急いで決断することもあるまい。俺たちゃアンタを気に入ったんだ。ここに居たきゃいつまででも置いておいてやるぜ」
周りのヤクザ達もその言葉にニッと頬を緩める。
しかし、無論それで終わりの訳はなかった。
「しかしなぁ・・・昨日みたいなサービスがいつまでもあると思うなよ。今日からはお前は単なる精液便所だからな。3つの穴使ってウチの若い衆の便所になるんだ。休みは無ぇ、ここに居る限りずっとだ」
言葉とは裏腹に荒木の目は蘭子に決断を迫っている。
しかし蘭子は肯けない、どうしてもそれだけは出来なかった。
そんな蘭子を荒木はクスッと嘲う。
そしてカメラの横にスタンバイしているさっきのチンピラを促した。
すぐにピントが調節され、そしてチンピラが肯く。
「じゃ、散々待たせちまったな。良いぜ、蘭子。たっぷりすると良いさ」
無論、それですぐに出来るものではない。
下半身はもうブルブルと震えているが、それでも蘭子は最後の足掻きを止められなかった。
するとその時、何の脈絡も無く神宮寺がポケットから何かを取り出したのである。
「荒木さん、栓抜きッス」
そう言って手渡したそれは、しかしどう見ても大きなスタンプだった。
10×5センチ程度の大きさのスタンプ、片面にはちゃんとゴムが張り付き、文字が彫ってある。
荒木はそれを無言で受け取り、そして続いて差し出されたスタンプ台を開けて丁寧に押し付けた。
「よぉしっ、それじゃ記念撮影だ。今年第1号の牝だぞ、みんな良い顔しろよっ。グラス持ったかぁ?」
荒木はそう言うと、手にしたスタンプを大きく上に差し上げた。
周りのヤクザ達は舎弟にシャンパンを注がせたグラスを片手に、荒木に注目する。
「今年の幸先いい出だしを祝ってっ・・・・乾杯っ!」
その掛け声と同時にスタンプを持った荒木の手が蘭子の下腹部に容赦なく振り下ろされたのだった。
(いやぁぁあああああああああああああっ!)
その殴られたような衝撃に蘭子の最後の我慢が遂に決壊したのだった。
初め、チョロチョロと流れ出はじめた水流は、すぐに勢いを増し、忽ち放物線を描いた。
そして真下に置かれた金盥に派手な音を立てて降り注ぎだしたのだった。
ヤクザ達はその音を合図に一斉に唱和した。
「乾杯っ」
そして目線まで差し上げたグラスとともに、その姿は眩いフラッシュに照らされ鮮明に記録されたのだった。
ダークスーツ姿で晴れやかに笑うヤクザ達の中心に、真っ白な素肌を晒した蘭子がまるで捉えられた動物のように写っている。
そしてその下腹部にはくっきりと朱文字で『牝奴隷』と判が押されていたのであった。
「へへへっ、いい写真が撮れたぜぇ。ま、精々頑張ることだな。お前が頑張れば頑張るほど、お前の記念写真が増えてくって寸法だ。ありがてぇだろぅ?マインド・サーカスにお前を売っ払う時の嫁入り道具に入れておいてやるぜ」
神宮寺は、止まらぬ放尿に目を閉じて耐えている蘭子に、悪魔のような計略を囁いたのだった。
その言葉に蘭子はビクッと反応する。
そして、まるで命を取られるような恐怖に満ちた視線で神宮寺の顔を見返したのである。
そんな蘭子に神宮寺は溜飲をさげたようにニンマリと微笑んで告げた。
「続いて・・・浣腸だぜ。ションベンのついでにケツの穴も掃除してやるぜ。綺麗にしとかないと俺達のチンポに糞がついちまうからなぁ」
何気ない口調で囁かれたその言葉は、しかし蘭子に落雷に撃たれたような衝撃を与えた。
周りのヤクザ達はニヤニヤと笑いながら尚も何か話しかけていたが、もう蘭子の耳には何も入らなかった。
(カンチョウ・・・ですって?こ、この・・・この私に・・・カメラの前で・・・)
意識がスッと遠のき掛けた。
誇り高い蘭子には決して容認できない事態だった。
(ダメ・・・それだけは・・・・そんな事されたら・・・・生きていけない・・・)
貧血を起こしたような脳にポツンと湧き上がったそのフレーズは、次の瞬間蘭子の体を乗っ取った。
発作的に口の中のボールギャグをあらん限りの力で噛みしめたのだ。
口中の異物を噛み砕き、そのまま舌を噛んで死んでしまおうとしたのだ。
しかし・・・
「ふふふっ・・・無駄無駄ぁ。そいつは特別製さ。アンタみたいに発作的に足掻く女は多いんだけどよ・・・死なせやしねぇぜ。俺達を舐めた償いは、生き地獄で贖ってもらうのさ」
全てを見透かしたような荒木の言葉が蘭子から発作的な気力を奪い去った。
(し・・・死ねないの・・・このまま、死ぬことも出来ずに・・・)
八方塞がり。
完全な袋小路に追い込まれた蘭子は、やがてその心を一つの方向へ、たった一つの微かな救いを求めて、進めていくことになるのである。
(ど・・・どんなことがあっても・・・絶対に・・・アイツにだけはっ・・・“きつね”にだけは知られたくないっ!たとえ、ヤクザに何をされても・・・奴隷にされても・・・・何を犠牲にしてもっ!)
蘭子の中の最後のプライドが遂にその決心をさせたのだった。
しかし、蘭子は気付いていなかった。
それがヤクザ達の描いたとおりのシナリオだったということを。
催眠という翼を折られた蘭子には、女衒達の手管に抗するだけの力は無かったのである。
< つづく >