人生改善委員会?

ワン!ワン!ワン!オゥ~ン!

 もうすぐ日付も変わろうかという真夜中に犬がけたたましく吠えている。
 いつもの哲夫なら『こんな真夜中に近所迷惑な!』と、嫌悪感露わな表情を見せるのだが今はそれどころではなかった。
 今その目はテレビに釘付けなのだ。
 22年連れ添った妻の旅行中なのを良い事に借りたアダルトビデオが左横に二本と今再生中の一本。
 下半身は何もはいておらず剥き出しになった男のシンボルは右手でしっかり握られていた。

「そんな馬鹿な!」

 そうつぶやくと哲夫はすっかり萎えてしまっているシンボルから手を離しビデオのリモコンを取る。

ウィィーン・・・・・・

 巻き戻す事20秒。
 もう一度再生ボタンを押してみる。
 ビデオのタイトルは『街で見かけたSEX大好き女子大生(大阪食い倒れ編)』
 画面にはこの手のビデオではお馴染みの若い女性がフェラチオをしている姿が映しだされる。
 哲夫にとっても見慣れた光景だ。
 しかし今、目の前で映っている画像だけは哲夫にとっては絶対認めたくない物だった。
 なぜならその女優が知っている人間だったからである。

「真奈美!」

 哲夫は、ぼそりと一人娘の名をつぶやいた。
 今テレビの画面に映っている女性がまさにそうなのである。

≪真奈美!なんて情けない事を≫

 哲夫はすっかり落胆している。
 犬の鳴き声も気にならない。
 ただひたすら画面に映る我が娘を見つめた。

ワンワンワンワン!ワンワンワンワン!

 静まりかえる哲夫とは対照的に外では犬の鳴き声が増えてきてかなり騒々しくなってきた。
 真夜中こんなに多くの犬が一斉に吠えるのはこの辺りでははっきり言って異常な事である。
 あちらこちらでドアや窓が開かれ様子を見ている人が増えてきた。
 しかしそんな事は今の哲夫にとってはどうでもいい事だ。
 フェラチオしながら『ぴょこぴんおいひい(ぽこちん美味しい)』などと言っている娘から目が離せないのだ。

コンコンコンコン!

 その時犬の鳴き声に混じり左側にある窓をノックする音が聞こえた。
 ここは二階。左側にある窓はベランダに通じており屋根をつたわないと侵入出来ない所だ。
 流石におかしいと思い顔だけを左に向ける。

「うわ~」

 思わず叫んだ哲夫の目に入ってきたのは三人組の男達だ。

「オナニー中失礼!」

 男達はそう叫ぶと窓を開け勝手に部屋に侵入してきた。
 哲夫の頭は当然ながら混乱してしまいどうしていいか分からなくなっている。
 ただその場にへたりこむだけである。

ドッドッドッドッドッ!

 階段を駆け上るけたたましい音が鳴り響きがっちりした体格をした男が部屋に入ってきた。

「電話線は全て切断し妨害電波の発信も完了しました」

 それを受けて哲夫の前に立っていた男が拡声器を使い「ご苦労イエロー」と叫ぶ。

「お前等いったいなんなんだ?」

 動揺している哲夫からやっと出た言葉を掻き消すように再び階段をけたたましく駆け上がる音が鳴り響く。

「娘は・・・・・・あぁぁぁぁぁぁ・・・・・眠らし・・・・・あ~~~」

「ご苦労!ピンク!パープル!」

 拡声器野郎の声にナース服に身をくるんだ虚ろな目をした女性とナイフを片手にした野獣がうなずく。

「お前等いったいなんなんだ?」

 哲夫はもう一度先程より大きな声で叫んだ。
 するとその言葉に反応して男5人女1人が一斉に哲夫と目を合わせ『我等人生改善委員会?』と叫んだ。

「『人生改善委員会?』だって?・・・・・・・・それは?」

 哲夫の問いに答える為拡声器を持った男が一歩前に出る。

「私は頼れる兄貴レッド!あなたの問いにお答えしよう」

 大きな黒いサングラスをかけているその男の額には『安保反対』の鉢巻きが巻かれている。

「私達はあなたのクソみたいな負け犬人生を素晴らしい物に変える為こんな汚い街にわざわざやって来た誠にありがたいボランティア団体だ!」

 拡声器野郎レッドは誇らしげだ。
 哲夫はズボンを穿く事も忘れ抗議する。

「こんな真夜中にいきなり人の家に土足で入ってきて何がボランティア団体だ!」

 即座にレッドと名乗る男の右に立っていた背広姿の男が散弾銃を哲夫の頭に押しつける。

「折角ボランティアに来てやったと言うのにそのえらそうな口のききかたは何だ!」

 「ひぃ~」と叫んだ哲夫を制してレッドが散弾銃男を説得する。

「やめろグリーン!そんな事をしなくても誠意はじゅうぶん通じているぞ!」

 グリーンと呼ばれる男は不服そうな顔をして散弾銃を哲夫の頭から離した。
 それを確認してからレッドは続けて哲夫に話しかける。

「すいませんお父様!彼は散弾銃を会社に持ち込んだというだけで不当解雇にあった本当に可哀想なやつなんですよ」

 哲夫は「あぁ!そうですか」と言うしかない。

「普段はリスなどの小動物をかわいがる良いやつで『少年の心を持ったサラリーマン!グリーン』と呼ばれています」

 何が優しいのかよく分からないがここは逆らわない方が良いと判断して哲夫は素直に頷く。

「そしてこちらがちょっと内気なナイスガイ!パープル」

 そう言って紹介されたのは先程からナイフの刃先を哲夫に向け『ぐるるるるる』と人間離れしたうなり声を上げている男である。

「そしてこちらはみんなの優しいお姉様!ピンク」

 ナース姿の彼女は自分の左腕に何やら怪しい液体を注射して口からは涎が流れ落ち目は完全に虚ろになっている。

「気が優しくて力持ち!体育会系イエロー!」

 タンクトップに身をくるんだひときわ大きな身体で腕立てふせなどをやっている。

「そして最後に家庭崩壊、自己破産なんかに負けるもんか!いつもにこにこ爽やかブラック!」

 異常に痩けた頬がその男の貧相さを一層引き立たせており無理に笑う姿は凄く痛々しい。

「我等人生改善委員会?」

 全て言い切り満足気なレッドに哲夫は恐る恐る口を挟む。

「あの~その『?』は、なんなんですか?」

 レッドは拡声器を使い大声で叫ぶ。

「中国の諺で『饅頭』という意味だ!」

 全く意味は分からないがその言葉と同時にグリーンは再び散弾銃を哲夫の頭に突きつけ『つまらない事を聞くな!』と脅しつけている。

「それにしてもあなたはラッキーだ!我々に任せていただければこれから先は不満の一つもない輝かしい未来が約束されてますよ」

 輝かしい未来なんてとんでもない。どう考えても最悪の状態だ。
 哲夫は散弾銃とナイフをに目をやった後、勇気を持って再度口を挟む。

「あの~別にとりたてて今の生活に不満なんか無いんですけど」

 ブラックは血が混ざった咳をしながら「そんな嘘だ~」などと言っている。

「お父さん!よく見なさい」

 レッドはテレビ画面に大写しされている哲夫の娘真奈美の裸体を指さす。

「現実から逃げては駄目だ!あなたの家庭は既に崩壊している。無茶苦茶だ!」

「む、娘には明日話しを聞いてみる。これは私達家族の問題だ!」

 哲夫の言葉を聞いたグリーンは散弾銃を更に強く突きつけ『聞いた風な口を叩くな!』と再度脅しつける。
 レッドは『まあまあ』と、グリーンをなだめながら散弾銃を哲夫の頭から離す。

「お父様!はっきり言ってこれは既に我々の問題だ!」

 『なんで?』という言葉を飲みこみ哲夫は首をかしげ訴えかける。

「まだ分かっていないようですね。 どうやらあなたには先に現実を知る事が大事なようだ」

 レッドの言葉と同時にバチバチという火花が散るような音がなり哲夫の意識はなくなっていく。
 音の正体はもちろんスタンガンである。

「う~ん」

 哲夫が目を覚ましたのは夕方の六時だった。
 自分の娘がアダルトビデオに出演していたのを見た後に更に大変な事があったような気がするがどうしても思いだせない。
 そんな時玄関のドアが開き妻の「ただいま!」という声が聞こえてきた。
 「おかえり」と言いながら一階に下りてみると旅行鞄からお土産などの荷物を取り出している妻とまだセットされていない炬燵に足を入れてテレビを見ている娘の姿があった。

「あ~疲れた! やっぱり家が一番ね」

 妻はありきたりの言葉を言った後、娘と哲夫に向かって笑顔を見せた。

「そんな事言って本当は家に帰ると鬱陶しい旦那が居て嫌だなとか思ってるんじゃないの?」

 哲夫のそんな冗談めかしの言葉に妻は「当然でしょ!」と笑顔で答えている。

「やっぱりそうか!実は俺もお前の居ない間に『久しぶりオナニーでもしようかな~』と思ってアダルトビデオ借りたんだけど昨晩抜きそこねちゃって本音のところでは『あと一日お前が居なければな~』なんて思っているんだよ」

 哲夫と妻はお互い顔を見合わせ笑い出す。

「あははは!おかしい。 それなら私もあと一日不倫旅行伸ばしたら良かったわ」

「な~んだ!今度の旅行は不倫目的か! そいつは傑作だ!あはははははは」

 二人の笑い声は更に大きくなっている。

「でもよくお前そんな事が堂々と言えるな~」

 笑顔で話す哲夫に妻も笑顔で返す。

「だって私達は、隠し事なしに何でも話せる明るい家族でしょ!」

 家族全員の脳裏に『そうだ!それが私達家族の良いところだ。だから何も隠してはいけないんだ!』という強い思いが浮かぶ。

「そう言えば真奈美!お前アダルトビデオに出演しただろ! 父さんは思わずお前で一発抜くところだったぞ!」

 テレビから目を離した真奈美がこちらを振り向く。

「あっ!見ちゃったの? 超うける! SEXはいつもしている事だしカメラに撮るだけでお金くれるって言うから真奈美思わずOKしちゃった」

「いつもって・・・・・そんなにお前はSEXばっかりしているのか」

「えぇ!もうバンバンよ」

 真奈美は無邪気な笑顔を見せながら答えている。

「な~んだ!真奈美はやりまんだったのか! お父さんはすっかり騙されたよ!」

 真奈美は舌をだし『えへへ!バレたか』と照れ笑いをし妻は『甘いわね!私達の娘よ。当たり前じゃない!』などと言っている。

「妻は不倫中で娘はSEX大好きのがばがば女か!流石のお父さんも参ったな~」

 その言葉にいち早く反応したのは娘である。

「あら!お父さんだって人の事言えないわよ。先週の水曜日に隣の駅前のラブホテルで一発やったでしょ」

 哲夫は驚き『なんでお前そんな事知っているんだ!』と声を上げる。

「実はお父さんと一発やった相手は私の友達よ」

「なに~!あのバキュームフェラの洋子ちゃんはお前の友達か!」

 『最低~』と言う真奈美に対し哲夫は『そうか?洋子ちゃんは最高って叫んでいたぞ』などと言っている。

「とにかく私今からバンバンSEXする為彼氏の所に行くね!」

 そう言って立ち上がった娘を見つめ妻も笑顔で話す。

「なら私も神崎さんの所に行ってもう一回やろうかしら」

 それを受けるように哲夫ももちろん笑顔で話す。

「私だけオナニーか!わりが合わないな~。洋子ちゃんに電話でもしてみるかな?」

 三人は声を合わせ『私達一家ボロボロね』と言って更に大きな声を張り上げ笑っている。

バチバチ!バチバチ!

 その時哲夫にとって聞き覚えのある音が室内に鳴り響き妻と娘はその場に倒れ落ちた。

「う~んまさに何処にでもある平均的な日本の中流家庭だ!」

 拡声器を通してそう叫んでいる男に哲夫は見覚えがあった。

「え~とあなたは?」

 思いだせそうで思いだせない。そんなもどかしい感情が哲夫を襲う。

「おっと失礼!」

 男はそう言うと『ブラック』と部屋の隅に居た貧相な男を呼び寄せた。

「あの~お宅達はいったい?」

 問いかける哲夫の耳元でブラックと呼ばれた男が何やら囁く。

「あ~あ~」

 その途端哲夫の頭に記憶がみるみる蘇ってくる。

「お前達は人生改善委員会!」

「違う!正確には『人生改善委員会?』だ!」

 完全に記憶が戻った哲夫はすっかりパニック状態に陥っている。

「お前等私達家族に何をやったんだ!」

 哲夫が叫んだ途端グリーンは例の如く散弾銃を頭に突きつけ『言葉に気をつけな』と脅している。
 レッドは口元を緩め微笑むとグリーンに散弾銃を離すように命じゆっくりとした口調で説明し始める。

「あなたに真実を見せる為、家族全員の方が素直になるちょっとした魔法をかけただけですよ」

 ブラックと呼ばれる男は満足そうに頷いている。

「これで全て分かったでしょ!あなたの家庭は既に崩壊している。新しい人生を歩むのです」

 哲夫は冷静に話すレッドと名乗る男と相変わらず刃先を向けているパープルと呼ばれる男を見つめた。

「妻と娘はやり直せる。私達はまだまだやり直せるんだ」

 自分が娘の友達と関係を持った事は完全に無視して哲夫は言い切っている。

ひっく!ひっく!

 その時パープルからしゃっくりをするよな音が漏れ哲夫は思わず顔を向ける。
 その目は完全に血走ってただごとではない。

「おいおい!この男大丈夫か?」

 自分の置かれた状況も忘れ叫ぶ哲夫にレッドは大きく頷いてから口を開いた。

「心配しなくても良いですよ!実はこのパープルはお宅の娘さんに一目惚れしたらしんですがこのとおりシャイなやつですからなかなか言い出せないんですよ」

 哲夫はその言葉を一瞬理解出来なかったがナイフを嘗めだしたパープルと娘を何度も見比べようやく理解して大きな声で叫んだ。

「駄目だー!絶対許さん!」

 その途端『うが~』と言う叫び声を発しパープルが哲夫に襲いかかる。
 同時にイエローはパープルを羽交い締めにして止めにかかる。

「ピンク!早くパープルにいつもの薬を」

 そう叫んだレッドの言葉に反応してナース姿のピンクは右手に持った鞄から注射器を取り出すとそれに白く濁った液体を注入する。
 そして完全に液体が入りきったのを確認してからおもむろに自分の左手に突き刺した。

「お前に打ってどうするんだ!」

 レッドの叫びも虚しくピンクは白目をむくとその場に倒れ込み泡を吹き出す。
 その間もパープルは羽交い締めにされながらも哲夫にナイフで襲いかかろうとしている。

「落ち着けパープル!」

 状況を冷静に見ていたグリーンはピンクの右手から注射器を取り上げると再び白い液体を注入しパープルに突き刺した。
 『うがぁ~』という唸り声と共に次第にパープルの身体から力が抜けていく。

「きぃぃぃぃ~」

 最後のうなり声を上げパープルは床に崩れ落ちる。
 哲夫の額には汗がびっしょり濡れている。

「お父様!いきなり愛する二人を引き裂くといったような非道い行為はどうかと思いますが」

 レッドの言葉に対しすぐに哲夫は反応する。

「どこが愛する二人だ!こいつはただの野獣じゃないか」

 レッドはブラックと目が合うと大きく頷き何かを訴えかける。
 分かったと言わんばかりにブラックは哲夫の娘真奈美に近づき耳元で何やら囁いだ。
 その時間30秒ほど。目覚めた真奈美は床に倒れているパープルに抱きつき叫び出した。

「愛しいパープル様!目を開けてください。あなたの忠実な雌奴隷真奈美です」

 パープルのズボンを脱がしビデオさながらに、カパッと音を立ててくわえこむ。

「ぺやぁぷるひゃまぴょぴょこぴんおいひい(パープル様のぽこちん美味しい)」

 哲夫はすぐに止めに入ろうとする。
 だが、いち早くグリーンの散弾銃が頭に突きつけられた。

「恋路の邪魔はさせねえぜ!」

 ドスのきいたグリーンの声が部屋中に鳴り響き哲夫の動きは完全に止まる。
 ブラックは『目出度い事です』などと言いながら微笑みレッドは気安く哲夫の肩を軽く叩いた。

「まさに純愛ですなぁ~。 きっとお嬢さんはパープルの男らしい一面に惚れたのでしょう」

 男らしいと言うより哲夫が言うように『ただの野獣』である。

「彼の人の良さは私が保証します。こんな素晴らしい息子が持てるなんて本当にあなたはラッキーだ!」

 今や不幸のどん底に叩き落とされた哲夫口を動かし何かを言おうとするがもはや言葉にならない。

「さぁ!新しい人生の始まりだ」

 そう言いながらにこやかに笑うレッドがこの時哲夫の見た最後の光景であった。
 背後から強い衝撃を与えられ哲夫の意識は彼方へと飛んでいった。

「う~ん!今日は誰にしようかな?」

 哲夫は娘の友達の裕子、洋子、弥生、由紀子の四人を前にしてつぶやいている。
 時が経つのは本当に早いもんで娘がパープルと学生結婚をしてもう一ヶ月が経つ。
 哲夫から見ても娘の婿はとっても立派な男である。
 言葉を話しているのはほとんど聞いた事がないが焦点の定まらないあの目を見ていると彼が素晴らしい人間だという事はすぐに分かる。
 今や娘も立派な雌奴隷。
 父親としてこんなに喜ばしい事はないと哲夫はいつも娘婿のパープルに感謝している。
 そして妻の身にもちょっとした変動があった。
 『たまには銭湯にでも行くわ』と言って家を出たきり帰って来ない。
 今日でちょうど10日目。正直ちょっと長い風呂だなと哲夫は感じ始めている。

「あ~ん!意地悪!早くおじさまのおちんちんぺろぺろ嘗めた~い!」

 バキュームフェラの洋子が腰をくねらせ迫ってくる。
 他の三人もそれに合わせるかのように『洋子ずる~い』などと言って抱きつく。
 若い娘達が哲夫にSEXをおねだりするなんて事は異常な光景に思えるがこれはここ最近ではいつもの事である。
 この娘達に共通しているのは娘と同じ大学に通っているという事だ。

「じゃぁ今日は弥生ちゃんで」

 そう言いながら哲夫は少し童顔の弥生を指さす。
 その瞬間弥生の顔には目一杯の笑顔が浮かぶ。
 だが、もちろん残りの三人は不満顔だ。

「ありえない!また弥生なの。たしかこの前の火曜日も弥生だったんじゃない」

「嘘でしょ~!折角バキュームフェラに磨きをかけて『スーパーバキュームフェラ』を修得したのに」

「う~ん悔しい!次もくるから絶対私を指名してくださいね。 今日もオナニーで我慢しようっと!」

 ことさら強くドアを閉めバタンと大きな音を残し三人が去っていく。
 哲夫はいつものようにその直後に鍵をしめ大きく深呼吸をひとつしている。
 奥の部屋では弥生が既に裸で布団に潜り込み『あ~ん!早くして!早くして!もうぐちょぐちょよ』と叫んでいる。
 哲夫の人生は見事に改善された。

 ハーレム生活が始まってから一年が過ぎたある日哲夫は滋賀県の琵琶湖沿いの道を車で走っていた。
 アクセルを限界まで踏みこんだその車からは当然ながら法定速度を軽く超えるスピードが出されている。

「やばい!遅刻だ」

 今日は哲夫にとって大事な日だった。
 しかし事が始まるにはまだ時間があると油断しいつものようにSEXを楽しんでいたのが災いしうっかり熟睡してしまったのだった。
 焦りながら右手に巻かれている時計を見る。目的地はもう目の前。なんとか間に合いそうだ。

キィィィィィィー

 大きな音を立てて車が急停車する。
 哲夫は、車を飛び降りるとその勢いのまま一軒家のドアを蹴破った。

ドカーン!

 その途端家の主が振り向き叫んだ。

「いったいなんなんでうか?」

 哲夫はにやりと笑い言い放つ。

「我等人生改善委員会?」

 時計の針は丁度0時を指していた。

< 完 >

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