第二話
ハァ・・・俺の名前は桐坂陽介だ。
まあこの話を読んでいる人は前の話を読んでくれた人達だろうから、自己紹介は必要ないと思うが一応するか。
えーと玉聖学園に通う事になっている二年生だ。
ハァ・・・取り敢えず礼を先に言おう、こんなのを読んでくれて有り難う。
え?何でそんな溜め息ばかりついてるのかって?
今日は月曜日・・・そう月曜日なんだ。
ハァ・・・今日は玉聖に転入する、最初の日なんだ。
フツーならもっと喜ぶべきだろう・・・
俺も人生薔薇色のウハウハだと思っていたよ。
ブルーな訳をさっさと教えろ?
・・・そうせかさないでくれ・・・・・・世の中には言いたい事と言いたくない事があるのさ。
「陽介ー熱は測ったの?」
母の声が聞こえた。
これで理由は分かっただろう?
そう、俺は風邪でダウンしているのだ。
目が醒めてこの事実を悟ったとき、今日という薔薇色の未来が音を立てて崩れていくのを感じた。
うううっ・・・あんまりだ・・・ま、まさか転校初日からつまずくなんて・・・
幸い、転入は明日からってコトになったらしいが・・・ううっ・・・
今の状態、まるで小説みたいだと思っていたのだが・・・
そ、それにしたってどんな厳しい小説でもいきなりコケるなんて事無いのに・・・
やっぱりアレか?昨日調子に乗りすぎたからか?
昨日は色々と勉強したからか?
えっちに関して勉強したからなあ・・・
亜美っていう実験台もとい(汗)相手も得た事もあって・・・
誰だ?本当は頭が悪いんじゃないかって思っている人は?
失敬だな・・・て前にも言ったような・・・
と、取り敢えず昨日の事を説明しよう。
十二時になるまで亜美としていた俺は、眠い目を擦りながらも六時に起きて昨日例の露天商に会った場所にまで出掛けた。
まだ来てないかな~と思ってたら・・・そこに居た。
「よお、やはり来たな桐坂陽介君」
な、何故俺の名前を?
「ふ・・・それは企業秘密だ」
ああっ!また読みやがったな~ってコイツまさか一晩中待ってたのか(汗)?
「それも企業秘密だな」
・・・(汗)もういいや・・・それよりも例の香水を・・・
「ん?ああ一万円でいいぞ」
そ、そうか・・・一万円をさっさと渡す。
「じゃあ使用説明をしよう」
・・・さむ・・・
「!今のはギャグじゃないぞ」
いいから早く説明しろよ。
「く・・・何か昨日と立場が変わってるような・・・。まあいい、コイツを一日一回吹き付けるだけだ」
それは昨日の時点で分かってんだよ・・・いちいち声に出す必要はあるまい。
「そしてどんなに早くても遅くてもその日限りで効果は消える」
それも分かってるって・・・もしかして他に無いとか?
「いいや、今からが肝心の点だ。この香水には『タブー』が存在する。一つは昨日も言ったように血の繋がった両親・兄弟・子供には効かない。そしてこれを試す事も許されない。
そしてもう一つ・・・一日に二度使用してはいけないのだ」
そんなの簡単じゃないか。
「甘いぞ。君にだけ適用される事じゃない。例え落ちた拍子でも、誰かが使ったとしてもタブーを破ったされ『恐ろしい事』が起きる」
つ、つまり・・・『二度噴射ボタンが押された』だけで俺はヤバイのか・・・?
「そういう事になるな」
一度使った日は誰にも触らせてはいけない・・・か。
結構難しいかも?
「だがその見返りは大きいぞ~」
そうだよな~多少のリスクはしょうがないくらいのメリットがあるもんな。
「そうそう、女の体はもう君のものだぞ~」
うんうん・・・ん?コイツまるで悪徳商法みたいな薦め方するな・・・まさかあれは囮?
「読心能力のある悪徳商法の人間がどこの世界にいる?」
それもそうなんだけどな、でも買うのは効果が無い偽物だったりして・・・
「全く疑り深い奴だな。せっかくお買い得価格なのに・・・大体、初回からサービスする奴がいると思うか?」
そうやって食いつかせてから暴利を貪ろうって寸法だな。
「しつこいな~。そこまで言うと君には売らんぞ」
ふん、そう言って脅迫しておいて・・・で、でもやっぱり欲しいな。
「だったらたったのいィちまぁんえぇんだ!」
「その言い方は止めろ!」
気色悪いから、さっさと一万円を払った。
「何だその気色悪いって言い方は?」
・・・コイツ本当はお笑い芸人なんじゃないか?
「失敬だな。俺は闇の露天商だ!」
闇の、なんて言ってる割にやたらと陽気なクセに。
「うぐ・・・いちいちうるさい奴だな~。だったら何か?もしもしそこの貴方って話かけられた方が良かったのか?」
お、思いっ切り気味悪い声を出しやがって。
「んじゃ俺は次の所に行くから」
と手をあげ、スタスタと立ち去ろうとした後ろから
「これって何回分?」
と一番肝心な点を聞いた。
・・・あわや聞きそびれるところだったな。
「あ~それなら半年分だよ。大事に頑張って使えよ♪」
そう言い残してやたらと陽気な自称『闇の露天商』は去って行った。
俺も帰るか。
誰にも見つからないようにベットに戻った。
取り敢えず、効果が切れるとどうなるか亜美で試してみよう。
だが、それよりも先にやらねばならない事がある。
セックスに関する知識を増やす事だ。
う~ん・・・どちらを先にやるべきか・・・
いや待てよ?亜美とすれば練習になるし、ひょっとしたら勉強になる事もあるかも?
よし、そうと決まれば『思い立ったが吉日』ってヤツだな。
今日は日曜日だから時間はたっぷりある・・・亜美に予定が無い限り。
でもな~まだ七時にさえなってないし・・・昨日アイツに『せっかち過ぎる』って言われたばっかりだしなぁ。
起きてるかだけでも確認するか。
そ~っとドアを開け(昨日と全く同じ)、部屋に侵入。
すーすー寝息を立ててる亜美の顔が目に入ってくる。
こうやって見てるとかなり可愛いんだけどな。
兄馬鹿かもしれないが、芸能人レベルには達していると思う。
現にしょっちゅうラブレターを貰ったり、告白されたりしているみたいだし。
非公認ファン倶楽部なるものもあるとかないとか・・・今考えると結構手を出すには結構ヤバイ相手だったかも・・・(汗)。
しかし・・・亜美も嫌がってなかったし(途中から、だが)・・・あれだけ乱れてたんだし・・・
にしても、あんなに乱れるなんてなあ・・・
女は見た目じゃないってか?(これは差別かな?)
正直、亜美に好きだとか付き合ってとか言われると困ると思う・・・今更ながら。
なら手を出すなって言われそうなんだが、・・・人間欲望は別格なんだ。
俺は部屋を出る事にした。
こんな状況を見られたら、クソ親父に何を言われるか分かったもんじゃない。
一気に時間がとんで今は七時・・・う・・・何か緊張してきたなぁ・・・
いや?興奮か?興奮だよな?で、でも今更こんな気分になるなんて・・・
て言うか、早く起きてこいよ。
よ~し先に飯を食うか。
亜美を喰うのはいつでも・・・ってこれじゃあ親父ギャグだな。
台所に行く。
「母さん・・・」
飯って言いかけて俺はハタと気付いた。
今言ってたら母さんに『命令』した事になるのかな?
亜美はともかく、母さんはちょっとヤバイよな・・・。
「なあに?」
俺の声が途中で止まったのが不思議だったらしく、首を傾げながらこっちを向いた。
「いや・・・何でも」
「そう、もうすぐ出来るから待っててね」
「うん」
ふ~不覚にも一瞬見とれてしまった。
何やってんだ・・・俺。
にしてもこの人はあのクソ親父の何処がいいんだろ?
・・・養ってくれるからだったりして。
いや、幾らなんでもそれはないよな。
「母さん、クソ親父は?」
俺の言い方に苦笑しながらも、ちゃんと答えてくれた。
「ゴルフに行ったわ」
「もう?」
まだ七時になったばかりだぞ・・・何考えてんだ、あのクソヤロー。
「今度こそ優勝するって張り切ってたわ」
う・・・まるで俺の心を見透かしたかのような台詞。
流石はあのクソ親父と今のところ上手くやってるだけの事はある。
俺はさっさと切り上げる事にした。
実は俺はこの母親が苦手なのだ・・・邪な事を考えている時は特に。
俺は部屋に戻ると【性技の全て】と書かれた本を取り出した。
こんな恥ずかしい本なんて買えるわけが無い、当然借りたのだ。
貸してくれた友達はかなりアブナイ奴だったが悪い奴じゃなかった。
もっとも、既に引っ越したので当分返せそうにないが。
いわゆる、借りパチというやつである。
まぁ結局使ったのだから、今度会ったら文句の一つや二つ聞いてやろう。
さてページを開くといきなりえっちシーンである(当たり前だが)。
初めて見た時はかなり興奮したのに、今はさほどでもない。
やはり実物の方が勝るという訳か。
皆さんには分からないだろうが、かなり生々しいモノも多いがやはり亜美の敵じゃないんだなグフフ・・・てこれじゃあ俺はアブナイ人だ(汗)。
さて次の描写は・・・此処から先は例え十八歳以上の人であっても言えないな。
色々妄想し、ベンキョウした俺はノックの音に気付いた。
「お兄ちゃん入るよ」
返事も待たず入ってくるのは二人いるが、こんな言い方は一人しかいない。
俺は慌てて本を隠した。
もちろんベットの下などではない、本棚の上に置いた。
こういう風にした方が余計な詮索をされない方が多いのである。
「ちょっと話があるんだけど?」
思った通り、亜美の関心を引かなかった。
「何だよ?」
入って来るなりベットに座った妹に聞く。
「昨日の事なんだけど・・・」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら言う。
そんな顔と態度をしていたらメチャクチャ可愛いぞお前。
ファン倶楽部の奴ならきっと誰でも襲い掛かるに違いない・・・ぶっ飛ばされる為に。
我ながらよくあんな決断を下せたもんだと感心したくなる。
この顔で空手と柔道が黒帯なんだから反則だ。
いや待て確か・・・‘恥ずかしそう’なんだよな?怒りに燃えてないって事は少なくとも俺は入院しなくてもいいよな?
「別に怒ってないから」
うんそれは分かったよ、たった今だが。
「でも・・・いきなりされるのはちょっと」
「そ、そうだな悪かったよ。ゴメン」
ここは素直に謝る。
下手したら怒らせるかもしれないのだ・・・香水をつけてない今はマズイ。
「お兄ちゃんの事、好きだったから別にいいんだけど」
「ふ~ん・・・え゛?」
そ、そういうオチになるか?世の中分からん、て言うかそれなら香水の意味って最初から無かったんじゃ・・・
「で、でもね」
慌てたように言う亜美。
そんな亜美の可愛いな・・・俺ってもしかして妹への思いに目覚めた?
「やっぱり兄妹だし、結婚とかはいけないと思うの」
俺もそう思う、て言うか(何か多いなこの言葉)最初からそんな気はなかった・・・何て後難を考えると口が裂けても言えない。
「だからせっくすふれんどって事でどう?」
「え・・・・・・」
またしても意外な言葉。
「い、いいのか?」
うろたえる俺に対して
「自分から手を出したクセに」
と呆れたように反論してきた。
結局その日は二人のすいーとたいむって事になり、予定を聞く必要なぞ無かった。
香水よ・・・今日はお前の出番はなさそうだ。
「お兄ちゃん!」
あれ?亜美の声がする?
「お兄ちゃんってば!」
おかしいな・・・亜美は今俺の下で喘いでいるのに・・・
「いてててててて!!!」
耳に痛みを感じ飛び起きた制服を着た亜美が睨んでるのが見えた。
「何時まで寝てるのよ?」
「何時までって・・・」
時計を見ると午後七時だった・・・俺は寝ていたのか?
「可愛い妹が起こしに来たんだからね」
そう言いながらパニクッてる俺に腕を絡めて来た。
コイツこんな性格だったっけ?
「早くご飯を食べなよ」
頬にチュッとしながら出て行った。
スキンシップなんて一体何年ぶりか・・・これも香水の御利益か?
流石に病人としようとは思わなかったらしいな。
よ~し・・・風邪をさっさと治して、明日こそは・・・!
俺は服を着て、台所に向かった。
< つづく >
う~む・・・今回もギャグのノリですね。まあこの話のほとんどはこんな感じでしょう。
実はまだ掲示板を読んでないんです(大汗)。従ってどれだけの方に読んでいただいたか、非常に不安なんですが、読まれた方はきっと『最初は順調で最後に・・・』と考えられる方が多いと思うんです。
そこで自分本来のひねくれ根性で今回コケさせました(笑)。
たまにはひねりもいれてみようと思ったわけです。
後何回出来るか分かりませんが・・・
まぁ打ち切りにならない事を祈ります。