男の子の夜が怖くなる 続 第五夜

続 第五夜

 伊久代の部屋で待っていた、奈美佳のところに、伊久代が戻ってきた。しかも、奈美佳があこがれていた利佐矢をつれてきたのである。
「さ、ほら、彼をつれてきたわ」
「えっ?」
「奈美佳のことも、言っておいたわ。彼、つきあってくれるって」
「ええっ?」
 利佐矢が、伊久代につれられて部屋に入り、奈美佳のすわっていたソファーに近づいてきた。伊久代に襲われて吸血鬼になっているとも知らず、奈美佳は利佐矢に対し、いつもの交差点で見かけた時と同じように、胸をときめかせ続けていたのである。
「はじめまして、奈美佳ちゃんっていうのね。ぼくは利佐矢、よろしく」
「は、はい」
 伊久代に自分の部屋の便所で襲われた時に半裸だった利佐矢は、もちろんその後に私服を着ていたが、髪形はそのままで、左右の前髪を後ろでとめたふたつの白いリボンとそこからほかの髪といっしょに背中へおろしていた三つ編みにしていた髪は、奈美佳のほうからは最初はほとんど見えなかったが、利佐矢がソファーにすわる時に少し首を動かした時に、だんだん奈美佳にもわかってくるようになった。女の子みたいと一瞬思った奈美佳だが、色白の肌に美しくおろされた黒髪と、きっちり編まれている三つ編みの髪にますます恍惚感を抱いてしまうのであった。
「おほほ。奈美佳、かたくなってるわね。じゃあ、あたしは、外へ行ってふたりきりにしてあげるから」
「あっ、伊久代」
 すばやく伊久代は玄関を出て扉を閉めた。その扉の前で背中を向けて口に手を当てながら、不気味に笑い続けていた。
「うふふふふ。奈美佳ももうすぐ…」
 伊久代の部屋でふたりきりになると、まず利佐矢が着ていた服のポケットから数枚の写真を取り出し、奈美佳に渡した。
「これ、ぼくの写真、ずっと持っているといいよ」
「まあ、どうもありがとう、こんなにきれいな長い髪の毛なんですね。わあー、三つ編みの写真も」
 1枚は、とくになにもヘア小物をつけずに、前後に髪の毛を分けておろしている写真だった。2番目に耳もとに太めの白いゴムを巻いたツイン・テールの髪形の写真があり、3番目に二本の三つ編みにまとめて前に垂らした写真があった。奈美佳はどの写真にも、しばらく魅入っていた。利佐矢はそうした奈美佳のおかっぱの頭をなではじめて声をふたたびかけた。
「奈美佳ちゃんは、髪の毛を長くしないの?」
「わたし?似合わないと思うから」
「そんなことないよ。女の子なら髪を伸ばさなきゃ。伸びたら、たがいに髪の毛を結びあえば、そのまま結婚できると言われてるんだって」
「えっ?結婚なんて、まだ…」
「ふふふふ」
「あの…」
「なあに」
「わたしの髪の毛さわったから、わたしもお返しにさわりたいけど」
「どうぞ」
 奈美佳は急に緊張感がとけたようになって、あこがれの利佐矢の長い髪の毛に左手の指をからめはじめた。奈美佳の左側に利佐矢がすわっていたが、奈美佳はさらに三つ編みをしている髪の編み目もなではじめた。
「でも、男の方なのに、どうしてこんな髪の毛長くしてるんですか?ご両親の方とか先生やお友達には、いろいろ言われないんですか」
「ふふふ、父も母も長い髪の毛が好きで、たとえ男の子が生まれても髪の毛を長くさせようとしていたんだ。もう、ものごころついていた時に肩ぐらいまであって三つ編みもよくしてたし、自分も気に入ってずっと長くしたいと思ってたから、女の子みたいと言われても抵抗なかった」
「短くしようと思ったこと、ないんですか」
「絶対ないよ、この髪の毛がないとさびしいからね。ある長い髪の毛の女性タレントにあこがれているから、その人みたいになりたいと思って」
「そんな、男の人でなくて、女の子に生まれたらよかったんじゃないですか」
「ふふふ、おしゃべりな子は口から生まれたと言われるけれど、ぼくは髪の毛から生まれたようなものさ、長い髪の姿になるために生まれてきたといったらいいのかも」
 しばらくすると、利佐矢はとつぜん奈美佳のもういっぽうの手首を、自分の左手で握って引っぱりはじめた。
「あっ、急になにをするの?」
「女の子に髪の毛さわられると興奮してくるの。ほら、ここ」
 利佐矢が握った奈美佳の手首を近づかせた所は、自分の性器がふくらんだ股のあたりだった。
「やだ、離して」
「もう、逃げられないよ。君は」
 利佐矢の目が赤く光りだし、口が大きく裂けてきてなかから牙が現われていた。
「きゃあーっ!」
 奈美佳の悲鳴は、玄関の扉を背にしていた伊久代にも聞こえていた。あいかわらず片手を口にあてながら不気味に笑い続けていたのだった。
「うふふふふ」
 長い黒髪をはげしく揺らせながら、利佐矢は奈美佳の首に噛みついて血を吸い続けていた。奈美佳の肩にも、利佐矢の三つ編みにしていたかたほうの前髪がぱらっとかかって、奈美佳の背中を編まれた利佐矢の髪の毛がまるで蛇がはうようにおろされていた。
 それにしても、利佐矢も、決して好きではない女の子に襲われ、また好きでもない女の子を襲っているのは、吸血鬼になったための心変わりもあるようである。

 伊久代は、マンション内にある玄関にしばらく立っていたが、玄関をあけようとする者がいたため、いったん少し横に場所を移していた。出てきたのは、利佐矢によって吸血鬼にされたばかりの奈美佳だった。
「うう、くくく、血、血がほしい」
 奈美佳は伊久代のほうにも顔を向けずに、すぐにエレベーターのほうに向かっていったのであった。
「どうやら、彼は襲ったようね。うふふふ、お楽しみはこれからよ」
 伊久代はすぐに玄関の扉を閉めて鍵をかけ、自分の部屋にいた利佐矢の姿を見つけた。伊久代が戻ってきたのに気づいた利佐矢は驚いたように顔をあげた。
「はっ」
「うふふふふ、奈美佳の血を吸って女の子を吸血鬼にした味はどうだったかしら。こんどはまたあたしの番よ」
「あの、そろそろぼくも自分の家に戻らなければ」
「なに言ってるのよ。もう、あなたもひとり女の子を襲っているんだから、このまま帰すわけにはいかないわ。やっぱり、あなたはほんとうはいやらしい心を持っていたことがよくわかったわ。自分のおちんちんに、奈美佳の手をさわらせたんですって?許せないわ。復讐を受けるのよ」
 利佐矢はますます驚いて、伊久代の攻勢にたじたじとなっていた。この場は逃げることができないと思うしかなかった。
「いったい、ぼくをどうする気なの?また、血を吸うの」
「うふふふ、血はあとでいいわ。ちょっと、楽しいことをしてあげる。女の子に慣れていないあなたのために、女の子のことをいろいろ教えてあげるわ」
 伊久代は、そう言いながらはいていたスカートのホックをはずし始めた。利佐矢は、顔をそむけようとしたが、その時、伊久代はすぐに目を光らせて利佐矢の目に光線を当てたのであった。
「ううっ」
「ふふふふ、目はそらさせないわ。あたしのストリップをたっぷり見てもらうのよ。ほんとうは見たいくせに、自分がエッチなことを隠そうとしてわざと見たがらないふりをしているの、わかるわよ」
「ああっ」
「うっふふふ、おちんちん立ってきてるわ。もう、いっそのこと、あなたもぜんぶ見せてしまえばいいわ」
「く、くるしい」
 伊久代の当てた光線で、利佐矢は身体をほとんど動かすことができなくなり、スカートをぬいだ伊久代は利佐矢に近づいて、利佐矢のベルトをはずし、ズボン、さらにトランクスを脱がせてしまった。とうとう利佐矢の立った性器が露骨に現われてしまった。伊久代はすぐに利佐矢の性器に噛みつき、いわゆるフェラチオを始めたのだった。
「うふふふ、ちゅばっ、ちゅばっ」
「やだ、やめて」
「うふふふふ、その言葉はうそね。ほんとうは、気持ちいいくせに、いやだと言ってるのよ」
「出したら、汚れてしまいます」
「わかってるじゃない、あなた、日頃から女の子と想像エッチとかしてたんでしょ。うふふふ、でも、あなたも女の子にはやさしくしようといつも思っていたのがわかったわ。ここはあたしの部屋よ。たっぷり楽しんでいってもらうわ」
 伊久代は、いったん利佐矢の性器を離したが、着ていた服や下着もみな脱いで、とうとう全裸になってしまった。そして、利佐矢の着ていたものもみな脱がせてやはり全裸にしてしまったのである。もちろん、利佐矢の背中にはお尻に届くほどある長い黒髪と両サイドにリボンがつけられたままの三つ編みに結った前髪がおろされている。その髪ごとわしづかみにして伊久代は利佐矢をベッドの上に倒してしまった。
「いたい、うう」
「うふふふ、やっぱり女の子みたいにもだえてるわね。でも、しっかりおちんちんが立ってるし、あたしはほら、このとおりれっきとした女の子よ」
 ベッドの上に仰向けになった利佐矢の身体の上に、伊久代はまたがって、利佐矢の首のところに陰部をあててきたのであった。
「ああ、ああん…」
「おほほほ、髪の毛汚れないようにしておくわ」
 伊久代はまた利佐矢の長い髪の毛を三つ編みにしている前髪ごとわしづかみにしながら、股で利佐矢の首をはさみ始めた。
「うう、うう」
「うふふふ、あたしももう、髪の毛は切らないわ。奈美佳も髪を伸ばすし。こんど、あなた好みの長い髪の毛の女の子、連れてきてあげる。うふふふ、そう思い出したら、あなたもこうふんしてきたようね、ほら、おちんちんがまた立って、こんどこそ精液出て来たわよ」
 事実、利佐矢の性器がぼっきして、精液がびちゃーっと大量に飛び出していた。
 こうして、男の子が好きでもない女の子に襲われる地獄絵が、この部屋に展開されたのであった。

< つづく >

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