帝国軍特別女子収容所 FILE 4

FILE 4

「ジェイムズ=マクファーだな?」
 俺は目の前の椅子に鎖で縛り付けられた男を見る。
 サハ地区のナンバー2かナンバー3の地位にあると言われる男だ。
「……」
 男は無言でこちらを見返してくる。
 ずんぐりした男だった。日焼けした丸太のような腕。本当は逆三角形なのに、顎の筋肉が発達しているせいで丸く見える顔。
 詰め物したかのように張り出した胸筋の中央に、エミリアと同じ傷があった。
「エミリア=エルセランを捕まえた。本人は自分がサハ地区のリーダーだと言っているが、他の者がサハ地区のリーダーはお前だと言っている。どういうことかな? これは」
 俺の言葉に瞳が動いた。そしてニヤリと笑う。
「俺がリーダーだって?」
 野太い声だ。
「そうだ。違うのか?」
「ふん。さあ、どうかな?」

 拷問されてあちこち血がにじんでいるが、まるで意に介していないようである。
 拷問死に「レジスタンスの美学」を感じるような男だ。自白剤が使えない今、尋問は時間の無駄だろう。

「ああ、自己紹介しておこう。俺は通称アルファ。階級は中尉。一応尋問官の1人だが、今までお前さんを相手にしてきた人間とは系統が違う。あっちは拷問専門。俺は洗脳屋だ」
「洗脳?」
 ジェイムズの顔が嘲笑に歪んだ。
「俺を洗脳でもするのか?」
「いや、それは意味がなさそうだ」
 意外とこういう自分に自信があるタイプがやり易かったりするのだが、今のところこの男を洗脳しても使い道がない。
「ふん。だろうよ」
 どういう意味で取ったのか、ジェイムズは馬鹿にしたように笑った。
「レジスタンスの中で、エミリアはどういう位置づけだったんだ? 広告塔だという奴もいるし、女にリーダーは無理だから、別の人間がいつもサポートについていたと言う奴もいる。お前の意見を聞きたいね」
「なんで俺が」
「他の奴らが、お前がリーダーだって言うからさ」
 いぶかしげに俺を見上げるジェイムズ。
「本当に言ったのか?」
「嘘ついてどうする? まぁ、もともと帝国は、女の地区リーダーなんて信じてなかった。女にリーダーが勤まるわけないからな。突発的な事態でも男の方が冷静だし、だいたい腕相撲ひとつ取っても、男の方が強い」
 俺が肩をすくめると、ジェイムズもニヤリと笑う。
 しかし、何も言う素振りはない。
「だから『レジスタンスの地区リーダーに女がついた』という情報を受けて、みんなびっくりした。そんなことでうまくいくのか、ってな。おかげでそれなりに興味があったんだが、話を聞く限り、女じゃやっぱり無理な点が多かったみたいだな」
「まぁ、限界はあるだろうな」
 ジェイムズがうなづく。やっと食いついてきた。

「でも本人は自分がリーダーだと言い切ってたぞ? ジェイムズは冷静じゃない。食堂だかどこだかで喧嘩したとか」
 ジェイムズが顔色を変える。
「あの女がそんなこと言ったのか?」
「喧嘩したんだろ?」
「……昔だ」
 悔しそうにジェイムズは答えた。
「じゃあ、エミリアを悪く言えんな」
「……」
 顎の筋肉が盛り上がる。物凄い力で、歯を食いしばっているに違いない。
「あまりエミリアと仲が良くなさそうだな? やっぱりリーダーは男に限るか?」
「当たり前だ。なんで男が女の下でやらなきゃいけない」
――そうそう。
 俺は内心うなづいた。最初にこちらが示した答えを、相手に言わせる。『思考操作』の典型だ。

「そこまで言うなよ。なんだかんだ言いつつ、お前もリーダーだと認めてたんだろ?」
「認めてなんかいない。組織のために眼をつむっただけだ」
「他の人間もそうだったのかな?」
「そうだろうな。あえて言わなかったが」
 鼻を鳴らして答える。
「しかし彼女は自分がリーダーだと言い張ってたぞ?」
「それが馬鹿なんだ。帝国相手に自分がリーダーだとバラしてどうする? 後先考えないのも程がある」
「そうだな。リーダーだ、リーダーだと言い張るのも変だと思ったよ」
「自分で認められてないのが、わかってたんだろ。情けない話だ」
「なるほど」
 俺は周囲に気を配ってから、声を潜めて言った。
「ここだけの話、そっちはそっちで大変だな。意外と」
「使えないリーダーだと苦労するぜ」
 苦笑し合ってから、俺は尋問室を出た。細工は流々である。

「アルファ。将軍が呼んでおられた」
 廊下に出たところで、将軍付きの事務官に呼び止められた。
「ただちに出頭しろ」
「了解」
 なにごとだ、と司令官室に赴く。ドアをノックしてから入ると、ワッツ将軍は立って窓の外を見ていた。
「出頭しました。将軍」
「リノ地区を抑えた」
「それは何よりです」
「レジスタンスは全員射殺した」
「……できれば捕虜を取って欲しかったですね」
 俺は落胆して肩を落とす。エミリアの持つ情報だけで、レジスタンスを潰すのはおそらく無理だろう。
「捕虜はいる。だが、その捕虜が問題でな」
「と、おっしゃいますと?」
「セシル=トレクスだ。歌姫の」
「……は? あのセシルですか?」
「そうだ」
 ワッツ将軍は振り向いた。苦い顔をしている。
「俺、首都の公演を見に行きましたよ」
「わしもだ。サインも持っとる」
――うわ。気色悪っ。
「問題は有名人過ぎることだ。セシルがレジスタンスに参加していることがわかったら、逆にレジスタンスに参加する馬鹿者が増える可能性がある」
「きっとそうでしょうねぇ」
 エミリアとセシルがいると知れば、俺も思わず参加したくなりそうだ。
「しかもレジスタンスではないということになったら、帝国の権威は地に落ちる……」
――え? レジスタンスではない?
「ちょっと待ってください。レジスタンスでない可能性があるんですか?」
「レジスタンスの拠点であることを知らなかったそうだ。大学の友人に誘われて、たまたま行っただけだと言ってる。確認したら、確かにレジスタンスに中に同じ大学のものがいた。それもレジスタンスに参加して数週間という若造が」
 なるほど、と俺は感心する。そういう言い訳が立つように仕組まれてたんだろう。
「セシルがレジスタンスなら、連絡員として最適ですね。しょっちゅう公演で全国を飛び回っているし、他国にも行ってる」
「そうだ。たまたま訪れた場所が拠点で、たまたま急襲の時に居合わせたなんて、偶然が過ぎる。しかし痛めつけて、それを外で放言されたら帝国の沽券に関わる」

 女・子供も容赦しないと言っても、限度はある。帝国の臣民にも人気のある歌姫を、簡単には拷問できない。だいたい本人が否定しているのなら、レジスタンスである証拠探しから始める必要がある。
 そんな面倒くさいことに関わってる暇はない。何日か形だけの尋問をして、証拠不十分で釈放するのが現実的な判断だろう。もちろんその後は、保安隊の厳しい監視をつけることになるが。

「そこで1週間の期限で、お前が尋問しろ。レジスタンスである証拠を見つけ出せ」
「え? ちょっと待ってください……」
「もっとも、証拠があってもなくても、期限が来たら釈放するがな」
「だったら俺でなくても……」
「レジスタンスの連絡員なら、暗号を知ってる可能性が高い。それがわかれば、レジスタンスの拠点全てを一掃することも可能だ」
「そうかもしれませんが、1週間では……」
「これは命令だ。1週間でできなかったら、責任を取ってもらう」
 ワッツ将軍は聞く耳持たずに言った。
「将軍……」
「命令の撤回はしない。早く取り掛かれ」
「エミリアの洗脳がまだです」
「ちんたらやってるお前が悪い。忘れてるようだから言ってやるが、2ヵ月後には『開放式』があるんだぞ」
――それはお前の問題だろーが。
 とにかく下手にセシルなんて大物を捕まえてしまったお陰で、責任を取らせるスケープゴートが必要になったわけだ。
 で、責任をなすりつけられる、尋問官のはぐれ者が目の前にいたということだろう。

「わかりました。なんとか1週間でやってみます」
 とりあえずそう答えるしかない。ワッツは「よろしい」と鷹揚にうなずいた。
「ところで、将軍。『開放式』の序列に、第9軍があるのを気付いてましたか?」
「当たり前だ」
「親衛隊も1軍から4軍まで全部来るみたいですね」
「そうだったかな」
「これはたぶん『開放式』で何かあれば、第9軍はその場ですぐ、蹂躙戦を展開するつもりだと思いますよ」
 俺は世間話をするかのように続ける。
「親衛隊も大総帥の面目を保つために行動するんでしょうな」
 傍目からわかるほど、ワッツはギクリとした。
「まさか親衛隊が、その場で処断するわけはなかろう」
「1軍から4軍まで連れて来て、そのまま帰るわけにはいかないんじゃないですか? ただでさえ軍部と親衛隊は仲が悪いのに、9軍は戦闘行動で、親衛隊だけ何もしないというわけにいかないでしょう」

 本来、親衛隊は大総帥を護衛するためだけの部隊である。しかし今では、大総帥の手足となって暗殺や拷問、そして軍内部の粛清も行うようになっていた。そのため軍上層部と軋轢が極めて深刻になっている。
 任務の失敗を、親衛隊がその場で処断する。ありえることであった。

「お前が情報を引き出せば、そんなことにはならん」
 急に噴出した汗を拭きながら、ワッツは反論する。
「もちろんそうですけど、例の自治区の件、考えてもいいかもしれませんよ」
「自治区?」
「ほら、この国の人間をレジスタンスの標的になってもらうってヤツです。言うこと聞く奴に自治委員会の委員長に祭り上げてね」
「あの話か」
 ワッツは思案するように答えた。
「見た目だけでも、自治権を取り戻せるなら話に乗る人間はいます。そして条件として、レジスタンスのリーダーの首を差し出させるんですよ。間違いなくレジスタンスは分裂しますね」
「うむ……」
 狡猾な光を宿し始めたワッツの顔から視線を逸らさず、俺は付け加えた。
「そうなれば、とりあえずは『開放式』を乗り切ることができる。もちろん軍政監部も同じことを考えているでしょうけど……」
「もちろん考えてる。余計な口を出すな」
「申し訳ありません」
 俺は謝罪して、司令官室を退出した。

「エミリア、尋問の時間だ」
 独房の1つで、俺は声をかけた。簡易ベッドの上でじっと何かを考えていたエミリアが、ちらっと視線を寄こしてから立ち上がる。
「手を」
 エミリアが伸ばした手に手錠をつけた。
「どこに連れて行くの?」
「昨日の特別尋問室だ」
「ああ、あそこ」
 ほっとしたような表情になるエミリア。
「今日のメニューはパスタだ。おいしいぞ」
「なんか、すごく楽しそうね」
「そうだな。確かに楽しいかも」
 呆れるエミリア。俺は歩きながら唐突に付け加える。
「そうそう、今日はどうするエミリア? やっぱり嫌か?」
「……ごめんなさい。よく聞こえなかったわ」
 聞こえていたくせに。身体が緊張したのが見なくてもわかる。
「今日はどうする? やっぱり嫌か?」
「……」
 答えがない。俺は無視して歩いた。
「……どうせ、嫌だと言ってもするんでしょう?」
 そう来たか。もし最初からそれを言えば、「その通り」と答えたかもしれないが、聞き返すほど迷ってるのがわかってる。
 俺は賭けに出た。
「わからんぞ。ひょっとすると思い通りになるかもしれん。嫌かどうか言ってみろ」
「……もし、嫌だと言わなかったら、どうする気なの?」
――いまさら、どうするもないだろうに。……いや、待てよ?
 昨日、言葉の選択を間違って、エミリアを怒らせた。あれは「嫌」と言えるだけの不快感だったに違いない。
――なるほど。きっかけが欲しいのか。
 つまり、昨日はセックスを受け入れる理由を探していたが、今日は断る理由を探してるのだ。エミリアはあと少しで崩れる。
 特別尋問室の前まで来て、俺は鍵を開ける。
「わかった。中でゆっくり説明する」
「え、でも……」
「なんだ?」
「いえ……」
 今まで外に漏れないという、この部屋を理由に許してきた。中に入ると、ますます「嫌」と言えない心理的状況になる。

 ガチャン。
 特別尋問室の鉄の重いドアが閉まると、エミリアは「うーん…」と伸びをした。その間に俺はドアに鍵を掛ける。
「独房のベッドが物凄く寝にくいのよ。肩が凝っちゃったわ」
 手足を動かして、身体をほぐしている。深刻な状況から目を逸らす、一種の『逃避行動』だ。
 ベッドのフレームの手錠を引っ張り出す。
「服を脱いでくれ」
「え? でも……」
「この部屋の規則だ。もし嫌ならまた独房に戻す」
 エミリアは渋々といった感じで「わかったわ」と答えてから、顔を逸らして脱ぎ出した。
「ねぇ。昨日も聞いたけど、ちゃんとした尋問しなくていいわけ? 毎日エッチなことばっかりで」
「『テオ=ルッシュの居場所はどこだ?』なんて聞いたら、教えてくれるのか?」
「教えるわけないでしょ」
「じゃあ、聞いてもしょうがない」
 そっけない言葉に、エミリアは複雑な表情だ。
「さて、パスタを食いながら話そう」
 手錠をはめてから、俺は用意しておいた皿を2つ出す。
「そうそう。ジェイムズ=マクファーって男を捕まえたよ。ずいぶん乱暴なヤツだなぁ」
「尋問官が殴られでもした?」
「それに近いことがあった。イノシシみたいなヤツで、押さえ込むのに3人がかりだよ」
 パスタをつつきながら、エミリアはクスクス笑う。
「彼に拷問は効かないわよ。レジスタンスになるために生まれてきたような男だから」
「そんな感じだな。拷問をしたのに効かなくて、こっちが困る顔を見たくてたまらないって雰囲気だった」
「眼に浮かぶわ」
 えらく楽しそうにエミリアは笑う。
「その様子じゃそっちでも問題児だったみたいだな。よっぽど苦労したんだろう?」
「誇りが高いのよ。作戦でも1人で暴走することも何度かあってね。それを咎めてもわかってくれないし。レジスタンスは軍隊と違うから、命令で縛るのも限界があるの」
「なるほど。よくわかる」
 うなずいてから俺は付け加えた。
「でも誇りのおかげで命令を聞かなかったのか? たとえば、君が女だったからとか」
 エミリアの表情がピクッと反応した。
「……私の前は、リーダーが男だったけど、その時も同じ調子だったわ。あれは死ぬまで変わらないわね」
「そうか。死ぬまでか。確かに頭固そうだもんな」
「本当よ」
 顔は笑顔だが、心から笑っている感じではなかった。
「いくらなんでも女だから命令を聞かないなんてことは、ありえんか」
「もちろんよ。いろいろ問題もあったけど、そこまで腐ってないわ」
――腐る、ね。
「今日は、俺も食うかな」
 用意しておいたパスタを俺も食べる。
「昨日のピラフもこれも、俺が作ったんだ。うん、なかなかだな」
「作った? 自分で?」
「そう。趣味なんだ、料理が」
 俺はパスタを手早く胃に押し込みながら言う。ちなみに真実である。
「やっぱりこういう仕事をやってると、普通の生活ってのを思い出したくなるのさ。俺にとって『普通の生活』の象徴が、手作り料理ってわけだ。変なヤツだと思うだろ?」
「そんなことないわ。料理を作るなんて素晴らしい趣味じゃない。それに凄く美味しいわよ。独房で出る食事と比べ物にならないもの」
「仲間の尋問官に言ったら、変なヤツだと笑われたよ」
「笑う方がおかしいわ。帝国にはマトモな奴がいないわね」
「ま、これは俺の趣味だから、人に理解されなくてもいいんだがな」
 エミリアの緊張がほぐれてきた。頃合である。

「それじゃ何をするか説明する。まずディープキスだ。身体の芯が熱くなるほど、たっぷりする」
 ベッドに並んで腰掛け、俺は言いながらエミリアの顔に手を伸ばした。顔を近づけたがキスはしない。
 そのまま目を覗き込んだまま、言葉を続ける。エミリアの目が条件反射のように潤み始めた。
「そして今日は背中を愛撫してやる」
「背中?」
「そう、背中。人間の目は前にしかついてないだろ? だから後ろがガラ空きだ。そのせいか背中はかなり敏感にできてる。ここを、まず撫でるように手を這わし……」
 俺はエミリアの背中に手を回した。触るか触らないという微妙なタッチ。
 エミリアがみじろぐ。軽く指が触れた。瞬間、ピクンと反応する。
 かなり敏感になっている証拠だ。
「そして舌で優しく愛撫する。背筋を舐め上げると、頭のてっぺんまで電気を受けたように感じるはずだ。同時に胸を愛撫し、手のひらの中で乳首を転がすように刺激する」
 俺はまた手を動かし、乳首に触れるか触れないかの位置で止めた。
 チラチラとその手を見ているエミリア。少しずつ息が荒くなってきた。同時に乳首もピンと立ち上がってくる。
「今度は首筋から下へ、舌を這わせていく。背筋を通り、腰を通り、、尾てい骨を通り、尻を通ってお前の淫らな肉を舐める……」
 不意にエミリアが身体を動かし、手が乳首に当たる。
「ああっ!!」
 仰け反って喘ぐエミリア。倒れそうになるのを背中に回した手で支える。
「しっかりしろ」
「はあぁぁ、ふうぅぅ、はあぁぁ……」
 首筋が官能のピンク色に染まり、呼吸も熱く早い。もうかなり欲情しているのがわかる。
「これから本番なんだから、ちゃんと聞いてろよ」
 俺はそれから30分近くたっぷりと耳元で説明を続けた。

「後ろから挿入したまま、乳首とクリトリスを同時に攻める3点攻めで……」
「……もう、いい。もうわかったから……」
 エミリアがついに崩れた。
「いいってことは、嫌だってことか?」
 顔を落としたまま、かすかに首を振るエミリア。
「嫌か、欲しいか、はっきり言え」
「いじわる。わかってる癖に……」
 泣きそうな表情で文句を言う。
「ちゃんと言うんだ、エミリア」
「……」
 唇を噛み締めていたが、ふぅと一息つく。そして明らかに媚がある眼で、上目遣いに見上げてきた。
「ほしいの。とっても欲しい……」

「嫌ってほど、イかせてやる」
 その言葉を聞いて、期待で頬を赤らめるエミリア。
 正直、話してる間に俺もかなり欲情してしまった。おかげで手に力が入りすぎて、服をうまく脱げない。
 するとエミリアが手を伸ばして手伝ってくれた。
「すまんな」
「いいから、早く……」
 完全に欲情して、眼が爛々と輝いている。俺が裸になると同時に、しがみつくようにしてエミリアからキスをしてきた。
「ん。んちゅ……」
 キス。ディープキス。そして愛撫。
 さすがにセックス慣れしてきたのか、エミリアの動きにも、ぎこちないところはない。
 それどころか「あぁ、そこ……。そう、いぃ……」と自分から愛撫を求めてくる。
「自分を解放するんだ。昨日よりももっと。そうすれば、もっともっと気持ちよくなる」
「ふあぁぁぁ、あっはぁぁぁ、ああ、ホントにすごいぃ……」
 硬くとがったクリトリスを包皮の上から刺激してやった。
「ああぁっっ!! そこっ!! ダメ、そこっ!! くっはあぁっっ!!」
「ダメじゃない。まだまだだ。ほらもっと解放して!」
「あっっ!! イクっっ!! もうイクっっ!!」
「ダメダメ。我慢する、我慢する」
「そ、そんなあぁっっ!!」
 乳首を甘噛みしながら、もう片方の淫乳をもみ上げる。
「いぃぃ、イクぅあぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」
 ビーンと身体が伸び上がった。俺はその身体を抱きしめながら、刺激を続ける。
「あぁぁぁ、もうイッちゃったぁぁぁ……」
 蕩けた顔に、淫らな笑みが浮かぶ。
「入れるぞ。エミリア」
 こっちも限界に来ていたので、すぐにずぶずぶと緩みきった女陰に肉棒を突きこんでいく。
「ああっっ!! 入ってきた、入ってきたぁっっ!!!」
「そうだ。今のお前ならわかるはずだ。さあ、どんな感じか言ってみろ」
「みっちり、みっちりきてるぅ」
「なにが、みっちりなんだ?」
「あれ、あれがぁ……」
 さすがに抵抗があるらしい。頭のいい女ほど、卑猥な言葉を言わせると、燃え上がる傾向がある。
 俺は耳に口を寄せて囁いた。
「さあ、言って。エミリア」
「ああ、でもぉ……」
「自分を解放するんだ。この部屋の中のことは誰にもわからない」
 呪文のように耳元で繰り返す。涎を垂らしながら、エミリアは悶えた。
「ああ、アソコぉ……」
「アソコじゃないだろ?」
「あはぁぁ、……んちん……」
「聞こえないぞ。もっとはっきり言って」
「おち……ちん……」
「エミリア、ここでやめたいのか?」
 俺は抜こうとする動作をした。
「ま、待って! ちゃんと言う。言うからぁ」
 慌ててエミリアはしがみついてくる。
「おちんちん、おちんちんが入ってるのぉ……」
「どこに入ってる?」
「ああ、もう勘弁してぇ」
「ダメだ。自分を解放して言うんだ」
 俺はゆるゆる動きながら、質問を続ける。今まで散々「イクって言え」という命令に従ってきたから、抵抗も少ないはずだ。
「……んこぉ……」
「エミリア、終わりにしたいのか?」
「あぁぁ……」
 エミリアはキスをしてきた。たっぷり唾液を溜めて、流し込む。
 コクコクと喉を鳴らして飲んだ後、俺の耳元に口を近づけて小さい声でささやいた。
「おまんこ……」
 俺は苦笑した。
「2人しかしないんだぞ。ここには」
「だってぇ……」
 うねうねと身体を悶えさせるエミリア。妙に可愛い。
「まぁ、いいだろ」
 俺は本格的に動き始めた。
 パンパンと肉がぶつかる音が部屋に響く。
「あっあっあっあっ、凄いの来るっ! 凄いの来るっ! 凄いのっ、来ちゃうぅっっっ!!!!」
「くっ、いいぞっ、エミリア! もっと解放して感じるんだ!」
 俺の方の快感も急速に高まってきた。
「そうだっ!! 女を解放しろ!! もっと解放しろ!!」
「くああぁぁっっっ!!! いいっ!! 感じるっっ!! 凄い感じるうぅっっっ!!!!」
 ぐっちゅ! ずっちゅ! ぬっちゅ! ぐっちゅ!
「昨日より気持ちいいかっ!? エミリアっ!?」
「気持ちイイっっ!! 昨日より気持ちいいっっ!!」
 まるでスポーツをするように汗を飛び散らせて、身体をぶつけあう。
 エミリアの目は白目を剥き出し、舌を垂らして完全に快楽の海に没入している。
「あはぁっっっ!!! ダメもうっっっ!! イキたいっっ!! イかせてっっっ!!!」
「もうちょっと我慢だ! 我慢しろっ! エミリアっ!」
「かはぁぁっっっ!!! お願いぃっっっ!!! おねあいぃぃっっっ!!! おああぁぁっっっ!!!」
「よしっ!! そろそろいくぞっ!! エミリアっっ!!!」
 クリトリスに指を這わせて、激しく動かした。
「イキああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!」
 凄まじい勢いでペニスを吸い込まれた!
「くうぅっっっ!!!」
 俺は全てを解き放って、精液を放った。
 どくどくどくどくどくどくどくどくっっっ!!!
「おがああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!」
 野獣のような叫び声を上げて、エミリアは絶頂した。

 余韻でフラフラしてるエミリアにシャワーを浴びせ、手錠を掛ける。
 俺もかなり本気で感じてしまって力が抜けそうだが、頬をひっぱたいて気合を入れ直す。今日の本番がこれからなのだ。
「女を解放すると、凄いだろう?」
「ええ。本当に毎日毎日気持ち良くなってくの。このままいったらどうなるのか、心配になるくらい」
「今まで認めてなかったものを、取り返してるだけだ。心配するな」
 俺の言葉に、うっとりとエミリアはうなずく。

 来たときと同じく、エミリアを独房に連れて行く。
 しかし途中で立ち止まった。
「エミリア。さっきのこと覚えてるか? ジェイムズを信じてるって言葉」
「もちろんよ」
 エミリアは即答する。
「『命令を聞かなかったのは、君が女だったからじゃない』。君はそういったが、それを確認する勇気はあるか?」
「確認する勇気?」
 俺の言葉に首をかしげるエミリア。
「そこのジェイムズの尋問室に行って、それを確認するんだ」
「なんで、わざわざそんなことを……」
「俺は、君がジェイムズを疑ってると思うからさ」
「バカバカしい」
 エミリアは不機嫌な顔で否定する。
「本当に信頼してるか?」
「してるわよ。いったい何を言わせたいわけ?」
「疑ってる、って言わせたい」
「言わないわよ」
 本気で気分を害しつつある。
「じゃあ、ちょっと寄ってみるか」
 俺は逃げないようにエミリアの腰に手を回して、ジェイムズの尋問室に誘導した。
 ほんの少し、表情に不安な影が出ている。

 今日のジェイムズの尋問は、俺の指示で帝国憲章のテープの聴取に切り替えてあった。
「偉大なる大総帥の『開放政策』は、全地域の平和と経済の安定のために……」
 とかなんとか、延々聞かせる物凄い内容である。

 時間通りなら、そろそろテープが切れるころだ。
 俺は先にドアを開け、テープの音を確認した。エミリアはドアの影になってジェイムズからは見えない。
 テープは切れてる。完璧だ。
 ジェイムズは暇そうに椅子に腰掛けてたが、俺の姿を見てニヤッと笑った。
「尋問は楽勝みたいだな」
「くだらねぇゴタク馬鹿みたいに流しやがって。あれが尋問かよ」
 バカにし切った態度だ。完全に緊張感が切れてる。
「さっき質問し忘れたことが、あるんだが」
 俺はドアに半分身体を入れて言った。エミリアを引っ張り、声の聞こえる位置まで誘導する。
「自分と女とじゃ、どっちがリーダーにふさわしいと思う?」
「俺に決まってる。女はリーダーにはなれねぇよ」
 即答した。
「なんですって!?」
 エミリアが風のように尋問室に飛び込んだ。
「エ、エミリア?」
 さすがに慌てるジェイムズ。
「もう1度、言ってみなさい。ジェイムズ!」
 エミリアの剣幕に一瞬血の気が引くジェイムズ。思えば2日前、あの炎のような怒りを受けてたのは俺だったのだ。
 だがしかし、ジェイムズはゆっくりとふてぶてしい表情に変化する。
「……へっ! 自分がリーダーだったと本気で思ってんかよ? 他の奴らも、みんなお前をリーダーだなんて思ってなかったぜ! 使えない奴だ、女のリーダーはダメだってみんな思ってたんだよっ!!」
――素晴らしい。完璧すぎだよ、ジェイムズ。
 バシィっっ!!
 次の瞬間、エミリアは凄まじい勢いでジェイムズを張り飛ばした。
 手錠をつけてるから、両手で払う感じのビンタである。全身の力を込められて、相当痛かったはずだ。
 だが、ジェイムズは満面の笑みで顔を戻す。
「なんだ、いまのは? ひょっとしてぶたれたのか俺? 帝国の尋問官に殴り方教わって来いっ! このデカ乳おんなっ!!」
「で、デカ乳っ!?」
「胸ばっかりデカくっても、戦闘じゃ役に立たねぇんだよっっ!!!!」
「こ、このっ……」
 怒りでブルブル震えているエミリア。

――終わりだ。これ以上は必要ない。
 俺は急いで、エミリアを後ろから羽交い絞めにした。
「ようし。そこまでだ。帰るぞ、エミリア」
「ま、待って! このバカに! この愚か者に! このっ! このっっ!!」
 ばたばた力づくで暴れるエミリアを、引きずり出す。
「今はダメだ。エミリア! あきらめろ!」
「何をあきらめるのっ!? ふざけないでっ!! あいつ女はダメだってっ!! 胸がおっきぃのだって気にしてたのにっっ!!!」
「それでも今はダメだ! とにかく帰るんだっ!」
「いやっっ!!! 帰らないっっっ!!!!」
「エミリアっっっ!!!!」 
 暴れまくるエミリア。
 しかし、さきほどまでいた特別尋問室まで引きずって行って、「がちゃん」とドアが閉まると、突然泣き出した。
 スイッチが入ったように号泣である。

「どうして? どうしてよぉ……。わたし、こんなに頑張って……こんなに……こんなに……」
 ベッドに突っ伏して泣いてるエミリアから、手錠をはずす。
「悔しい……悔しいよぉ……」
 髪を優しく撫でる。
「これから作ればいいのさ。完璧なレジスタンスを。俺も力を貸すよ」
「できるわけないわ、そんなの……」
「エミリア、負けを認めるのか?」
 俺は強引にエミリアの顔を上げさせた。
「そんな女じゃないだろう、君は。胸の傷を思い出せ。君は、今のレジスタンスに必要な人間なんだ。完璧なレジスタンスを作れるのは君しかいないんだから」
 エミリアは涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げる。
「ホントにそう思う?」
「思うさ。最初から俺は言ってたろ? 君ほど純粋なレジスタンスはいないって」
「アルファ……」
 初めて名前を呼んで、エミリアはキスを求めてきた。
 当然応えてあげる。

 それから、さきほど抱き合ったベッドで、もう1度激しく求め合った。
「ああっっ!!! なんか当たってるっっ!!! なんか当たってるうぅぅっっっ!!!」
「気持ちイイかっ!? エミリアっ! 気持ちイイかっ!?」
「気持ちイイっっ!! めちゃくちゃ気持ちイイぃのぉおおお!!!」
「どこが気持ちイイんだっ!? ちゃんと言えっ! どこが気持ちイイんだっ!?」
「おまんこおぉぉっっっ!!! おまんこ気持ちイイぃっっっ!!! ああぁぁっっっ!!! おまんこ最高おぉぉっっっ!!!」

< つづく >

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