ジュエルエンジェル 第五話

第五話 「ルビーの章」

 尽きることなく立ち上る湯気が辺りを薄く覆う。
 禍々しい紋様が彫り込まれた円柱に囲われた、丸い石造りの浴槽にはたっぷりと湯がたたえられている。
 そこは幻界城の、幹部が個人で所有する専用の浴場のうちの一つである。(幹部クラスになると、こういった広大な個人のエリアを与えられるのだ)
 その浴場の中で、全裸のゲルバを前後から挟み込むようにして同じく全裸のガードとランサーが自らの身体を使ってゲルバを清めていた。
「ゲルバ様、次は誰を堕とす御予定ですか?」
 豊かな胸をスポンジ代わりに背中にこすりつけながらランサーが尋ねる。
「私とガードの連携なら誰にも負けません。すぐにでも倒し、洗脳薬を飲ませて連れてきますが」
「そうね。みんなにも早くゲルバ様の性処理人形になってもらわなくちゃ」
 ゲルバの胸板に身体を擦りつけ、上下運動をくり返して泡立てているガードもランサーの言葉に賛同した。
 ゲルバの胴体を清めると二人は今度は手足をこすりはじめた。
 ガードはゲルバの太腿を胸の谷間に挟み、ランサーはゲルバの腕をまたぐと腰を動かして内腿でこする。
 熱心に奉仕を務めながらも、二人は意味ありげにゲルバに視線を送り言葉を待つ。
「なに、そうあせることもない。趣向を凝らしてじっくり楽しむつもりじゃよ」
「まあ、うふふふ。ゲルバ様ったら」
「お戯れが好きですね・・・ふふっ」
 クスクスと実に楽しげに笑いながら二人はゲルバに泡を塗りたくっていく。
 と、そこに下級戦闘員が浴場に入ってきた。
「ゲルバ様、失礼いたします」
「ゲルバ様は今、見ての通り湯浴みの最中でいらっしゃる。場をわきまえてくれ」
 ランサーが眉をひそめると、戦闘員は慌てて身を正した。
「す、すみません!お楽しみのところ、お邪魔しました」
「かまわん。・・・で、何の用じゃ?」
 戦闘員の視線などまるで問題でないように奉仕し続けるガードとランサーに身をまかせたまま、ゲルバは顔だけ戦闘員に向ける。
「はっ。頼まれていた研究資料を全てゲルバ様の私室に運び込んでおきましたので、ご報告にあがりました」
「おお、そうか。ご苦労じゃったな」
「はっ。では、失礼しました」
 戦闘員は敬礼をすると浴場から退出した。
「ゲルバ様、研究資料とは?」
 顔をにやつかせるゲルバを見て、ガードが尋ねる。
「この前死んだザイバの遺品じゃよ。ヤツは人造生物の研究をしとったから、興味深い研究資料が多くてな。処分される前に譲ってもらったんじゃ」
 答えるゲルバの脳裏に、ふと次の手が浮かんできた。
 先ほど宣言したとおりの、趣向をこらした、クモの糸のように絡みつく堕落への罠が。
「オマエたち、ジュエルエンジェルの中で性体験をそれなりにこなしているヤツはおるか?」
「何か名案が浮かびましたか?ゲルバ様」
 ランサーが目を輝かせる。
「うむ。ザイバの造った生物兵器のなかに、面白いのがあったのを思い出したわい」

 ゲルバが作戦の概要を教えると、ガードとランサーはそれは面白いと乗り気になった。
「なるほど。それは確かに、セックスの経験がある人間の方が効果が期待できますね」
 納得するランサーの隣で、ガードが作戦の実行に向けて思案を巡らせる。
「人手がいるわね。・・・そうだわ。ゲルバ様、人員確保はわたしにおまかせください」
「ひひ、いいじゃろう」
「その後はランサー、あなたも協力してくれる?」
「ああ、もちろん」
「それじゃあ、準備しなくちゃね」
 善は急げとばかりに立ちがろうとするガードをゲルバが呼び止める。
「待て待て。作戦も大切じゃが、まずワシの身体を清めることが先じゃろう?」
「あ、そうでした。まだ肝心の部分をお洗いしてませんでしたね」
 自分の慌て者ぶりに苦笑しながらガードはゲルバのペ○スを握った。
「そうだぞガード。ここはゲルバ様の大切なところなのだから、隅々まできちんと洗わないと」
 ランサーもそう言って、陰嚢を手のひらに収める。
 二人は手についた泡をローション代わりにしてペ○スを揉みほぐしはじめた。
 コシュ・・・コシュ・・・クチュチュ・・・。
 指を繊細に動かして全体をこすりあげながら、ゲルバの顔にキスの嵐を降らせる。
 その余すところのない愛撫に肉棒はどんどん反応して首をもたげていく。
「ひひ、出すぞ」
「はい、ゲルバ様」
 ガードとランサーは手を先端部に移動させ、互いの手を重ねて亀頭を包み込むとグニュグニュとこねくりまわした。
 ビクッと肉棒が反応し、吐き出された白濁液が指と指の隙間からこぼれ落ちていく。
 二人は指先で粘液を楽しそうに弄びながら口に運んで味わうのだった。

「ねえ、待ってよ~!」
 整然と街路樹が立ち並ぶ、見た目にも小綺麗な新興住宅地の交差点に女の子独特の高い声が響いた。
 学校帰りであろう、談笑しながら歩いていた学生たちは何事かと足を止める。
 赤に変わろうとする信号にあせりながら、一人の女の子が横断歩道を走り抜けていった。
 流行ブランドのシャツを重ね着して、ミニスカートをはいた快活そうな少女だ。
 服装といい、シャギーに金髪というその頭といい、今時の若い子という言葉が似合いそうな出で立ちである。
 名前は天崎沙羅(あまさき さら)。
 彼女は今、ある人物を追いかけるのに必死だった。
「待ってってば、雅!桜庭雅(さくらば みやび)さ~ん!」
「大声を出さないでくださいな。恥ずかしい人ですわね」
 そのなりふりかまわず叫ぶ様にうんざりとした表情で、前を歩いていたセーラー服姿の少女が振り返る。
 広い額にヘアバンドが特徴的で、ツリ目気味の顔からは自信と高圧さが滲み出ている。
 茶色がかった長い髪をかきあげる仕草からは確かな気品が感じられた。
「一体何の用ですの」
「いや、だから~。玲香と奈津子が行方不明みたいなんだってば!」
 ようやく立ち止まった雅にむかって、沙羅はわたわたと手を動かして訴えかける。
「行方不明?」
「そー。玲香も奈津子も、ここ数日家に帰ってないみたいで・・・」
「あら、そう」
 興味なさげにそう言うと雅は踵を返してまた歩き出す。
 沙羅は慌てて雅の前に回り込んだ。
「ちょっとちょっとぉ、何よその態度は!?」
 憤慨する沙羅とは裏腹に、雅は落ち着き払っている。
 仲間が行方不明かもしれないというのに、平静でいられるということが沙羅には信じられなかった。
 根が単純で感情に流されやすい性格ゆえ、ついつい語気を荒げて叫んでしまう。
「アンタ、仲間のことが心配じゃないのっ!」
 噛みつかんばかりの沙羅の勢いもどこ吹く風といった様子で、雅はまた優雅に髪をかきあげると口を開いた。
「なら聞きますけど。それにはディスタリオンが関わっているという確信を持ってますの?」
「えっ?う・・・ん、それはちょっと・・・わかんないけど」
 突然の質問にしどろもどろになる沙羅。
 雅はフン、と鼻で笑うと吐き捨てるように言った。
「どうせ家出か何かでしょう。ふらふらとしてる人間にはよくあることですわ」
「なっ・・・!なんで仲間のことをそんな風に言えるわけ!?」
「―――この際だから言っておきますけど、天崎さん」
 雅は心底不機嫌そうに顔を歪ませ、沙羅を睨む。
「ワタクシはね、プライベートでまであなた方とお付き合いしたくはありませんの。効率よく戦うための義理の関係でしかありませんわ。それにしても、どうしてあなたがこの街にいらっしゃいますの?確かあなたの家は二駅は先のはずだと思いましたけど」
「今度この街でバイトすることになったのよ!たまたまアンタを見かけたから相談しただけっ!」
 次から次へと飛び出してくる暴言に怒りが爆発寸前の沙羅は、まともな思考が出来ずにどうでもいい質問の方に答えてしまう。
 完全に向うのペースに入っていることに全く気付いていない。
「大学に進学もせずに・・・程度が知れますわね。これだからお付き合いしたくないんですわ。こちらの品位まで下がってしまいそうですもの」
 そういって雅がちらつかせる胸の校章は、大企業の社長や医者、弁護士や政治家などの子息や令嬢しか入学できないことで有名な、須磨寺学園のものだ。
 この学園に入れば将来は約束されたも同然といわれるほどであり、その校章は社会的にも立派な格付けとして通用する。
 雅の高飛車な態度と人を見下すような物言いを支える自信は、そこに集約されているのだ。
「ワタクシの評判まで落としかねないので、以後道ばたで会っても話しかけないようお願い致しますわ」
 皮肉たっぷりに笑顔で会釈をすると、雅はさっさと歩き去ってしまった。
「・・・・・・こ・・・この・・・アホンダラ―――っ!!」
 口をパクパクさせることしかできなかった沙羅がようやく絶叫したときには、雅の姿はアリよりも小さくなってしまっていた。
 ギリギリと周りに聞こえるほどの歯ぎしりをすると、沙羅はすぐ脇の街路樹に思いっきり蹴りをかます。
「あ~っ、むかつくむかつくむかつく!あのクソ女、お嬢様だからって調子づいてんじゃねえ―――っ!!」
 その後、怯えた学生たちが警察を呼んでくるまで沙羅は絶叫しながら街路樹を蹴り続けるのであった。

 淡い金色の夕日が射し込む体育館の中で、レオタード姿の少女たちが無言で後片づけをしている。
 部活の時間も終わりを迎え、ようやく帰宅時間が来たというのに皆どこか浮かない表情だ。
 「あの、幸村先輩」
 タオルで汗を拭う幸村浅子(ゆきむら あさこ)のところへ、いつも三人一組でいる新入生がやってくる。
 その表情はとても暗い。
 「ん、どうしたの?」
 できるだけ明るく声をかけてみたつもりだったが、浅子の声もどこか力の抜けたものだった。
 ―――どうしたの、か。なんて白々しいのだろう、と浅子は心の中でため息をつく。
 彼女たちが―――いや、新体操部全体が気にかけていることは今一つしかない。
 「須藤先輩・・・まだ具合が悪いんですか?」
 浅子の予想通りの質問を新入生達は口にした。
 浅子は部の中でも最も玲香と親しい。玲香のファンの部員達が聞きにくるのは当然のことといえた。
 「須藤さん、ずいぶんひどいみたいね」
 「お見舞いに行かなくてもいいんでしょうかあ?」
 片づけを終えた他の部員達も浅子の周りに集まり話に加わってくる。
 「ん~・・・そうみたいだね。まだちょっと、ね」
 曖昧に答えながら浅子は罪悪感を感じていた。
 実は浅子は、玲香が行方不明だということを知っているのだ。
 だが、あえて部員や同級生達には体調を崩して休んでいるのだと嘘を教えている。
 警察も事件とは見ていないようだし、不用意に話して事が大きくなってはいけないと思ったからだ。
 ここ五日ほどの部の様子を見ていると、自分の判断は正しかったと浅子は思った。
 体調を崩していることにしてもここまで暗くなるのだ。もし本当のことを話したら、どれほどの動揺が広がることだろう。
 (玲香・・・みんな、アンタのこと心配してんだよ。どこにいるのよ・・・)
 沈痛な面持ちで黙りこくった浅子を見て、後輩の一人がためらいがちに声をかける。
「浅子先輩?」
「ああ、うん・・・なんでもない。なんでもないよ」
 悟られてはまずいと作り笑いでごまかしながら、浅子はつとめて明るく呼びかけた。
「大丈夫、玲香はすぐに戻ってくるから。それより後片づけも終わったんだし、早く着替えよ。アタシもう汗びっしょりで気持ちわる~いの」
 そのおどけた言い方に、部員達に笑顔が戻る。
「そうよね。ただの風邪かもしれないし、私たちが必要以上に悩んでも仕方ないわ」
「ねえねえ、玲香が休んでいる今日のうちに、みんなでお好み焼きでも食べに行こうか」
「うわ。先輩、それってすごい意地悪ですよぉ」
 今度は他の部員がおどけてみせ、みんなが笑い声をあげる。
 肩の力が抜けたのか、皆それぞれ近い者同士と歩きながら談笑をはじめた。
 どうにか本来の部の雰囲気に戻りそうだと安堵しつつ浅子は一足先に更衣室に入る。すると、
「お疲れ様、浅子。今日も頑張ってたみたいね」
 耳慣れた、それでいて予想だにしなかった声が放たれる。
 テーブルの上に足を組んで腰掛け浅子を見据える制服姿の人物。それは行方不明のはずの玲香だった。
「れっ、玲香!?」
 素っ頓狂な浅子の叫び声を聞いて他の部員達も更衣室になだれ込んでくる。
 その勢いに押し出されるようにして、浅子は玲香の前に歩み出た。
 しかしまだ状況が把握できずに言葉に詰まってしまう。
 玲香はそんな浅子の反応を楽しむようにしてニヤニヤと笑みを浮かべるだけだ。
 しばしの沈黙の後、浅子の後ろにかたまっている部員の一人がついに声をかけた。
「須藤先輩、もう体調は良くなったんですか?」
「体調?ええ、絶好調よ。―――そうか、浅子はわたしが体調を崩してるってことにしてたのね」
 部員達の間に驚きの声が上がる。
「ええっ!?玲香、具合が悪かったんじゃなかったの?」
「どういうことですか!?」
 次々と沸き起こる疑問の声に更衣室内が一気に騒がしくなる。
 その時点でようやく思考がまとまった浅子が、玲香の肩をやや乱暴につかんだ。
「ちょっと玲香、アンタ一体今までどこにいたのよ!?」
「心配かけちゃったみたいね。ごめんね、浅子」
「何ニヤニヤしてるのよ。みんなにも言うべきことがあるでしょ?」
 笑みを絶やさないまましれっと言う玲香を見て、浅子は苛立った。
 ・・・同時に、不可解な印象をも受ける。浅子の知っている玲香ならこんな態度は絶対にとらない。
 笑い顔もどこかざらつくようないやらしさがあり、不快になる。
 確かにそこにいるのは玲香なのだが、まるで中身が別物にすり替わってしまったような―――。
 しかしごくありきたりな学生である浅子には、玲香の身に何が起こったなどわかるはずもないのだった。
「みんなに?・・・そうね、言うべきことがあるわ」
 玲香が立ち上がると徐々に騒がしかった室内が落ち着いてくる。
 完全に騒ぎが収まるのを待つと、玲香はよく通る声で宣言した。
「みんなには今から、ドスケベな人形奴隷になってもらうわ」
 その場にいた誰もが、玲香の言葉の意味と、そしてそれを玲香が言ったのだということを理解するのにしばし時間を費やした。皆、困惑した顔で目配せをしている。
 やがて浅子が乾いた笑いを漏らした。
「ははは・・・ちょっと玲香、アンタ何言ってんの?」
「あら浅子、わたしは本気よ?性処理用の玩具として生まれ変わってほしいの」
「い、いい加減にしてよ!玲香、アンタ一体どうしちゃったわけ!?」
 ついに浅子は耐えきれなくなって金切り声をあげる。感情が高ぶってるせいかその声は涙混じりだ。
 玲香はそんな浅子の叫びにも動じる様子もなく、テーブルに無造作に置いてあったガラス瓶を手に持つ。そして床にそれを叩きつけるように投げ捨てた。
 ガシャン、とガラス瓶は驚くほどあっけなく砕け散り、中に入っていた紫色の液体が周囲に飛び散る。
 そして瞬く間に気化して紫色のスモークとなり更衣室全体を覆い尽くした。
「うふふっ。わたしもね、オマ○コに精液を注がれることに幸福を感じる人形奴隷になったのよ」
 不思議なことに、もうもうと立ちこめる煙の中からは悲鳴の一つも聞こえない。
 そして数分たつと煙は徐々に色を失って幻のように消え去り、その場にへたり込んだり床に転がる部員達の姿が現れた。
 全員頬を真っ赤にし、身体を小刻みに震わせながら荒い呼吸をしている。何人かはすでに股間や胸に手が伸びていた。
「どう?身体が火照ってすごくエッチな気分でしょ?」
「・・・れ・・・いか・・・何を・・・したの・・・?」
 玲香の足下に座り込んでいた浅子が、だらしなく緩んだ口元から涎を垂らしながら虚ろな目で顔を上げる。
「わたしのご主人様特製の媚薬を使ったの。すごい効き目よね、みんな一瞬で力が入らなくなっちゃったみたいだもの」
 玲香はしゃがみこんで浅子を抱き寄せると涎を舌で舐めとっていき、そのまま唇を奪った。
 目を白黒させる浅子の口内に舌を滑り込ませ、しつこく絡ませる。そして同時に自分の唾液を大量に送り込んでいった。
 その唾液を飲んだ浅子が咳きこみ、二人の唾液が混ざり合ったものがダラダラと床にこぼれ落ちる。
 苦しそうなその様子を気にも止めず、玲香は思うがままに口内を蹂躙していく。
 新体操部の人気エース二人が濃厚なキスを交わす姿を見て、部員達の興奮は一気に高まった。
「ああっ・・・玲香先輩、すごい・・・!」
「アタシ、もうがまんできないぃ・・・ああん、ひゃあん」
 その淫靡な空気に当てられて、部員達は本格的にオナニーを始めだす。
 ある者は大きく開脚して秘部をしきりに指でこすり、またある者は尻を突き上げて床に這いつくばり、ロッカーの角に股間を押しつける。
 嬌声が何重にも重なり合い、途切れることのないコーラスとなって耳を侵していった。
「じゅるるっ・・・ん、ぷはぁ♪ふふ、浅子ったらキスしただけでとろけちゃいそうね」
「あ、ああ・・・っ。もう、もう・・・やめ・・・てぇ・・・」
 すっかり身体から力が抜けきった浅子はそれでもなんとか懇願する。
「だーめ。もっともっと、頭がおかしくなるくらいに気持ちよくなってもらわなくちゃ」
 無慈悲にそう言うと玲香は浅子の両足に手をやり、グイッと大きく開かせる。
 その股間はぐっしょりと湿り、レオタードに丸いシミを作っていた。玲香が指を押しつけると愛液が多量に滲み出てくる。
「こんなに濡らしちゃって・・・感じちゃったのね」
「・・・そ、そん・・・なこと・・・」
「うそ。びしょびしょにしちゃってるくせに・・・ほら、いくらでもあふれてくるわ」
 グチャグチャと秘部をかき回し、玲香は愛液のたっぷりとついた指を口に含む。
「ちゅぷっ・・・。こんなにエッチな味のお汁を出すんだもの、本当はもっとしてほしいんでしょ?」
 用具室から拝借してきたのであろう新体操用のバトンを手に取ると、玲香は浅子の前でそれをちらつかせる。    
 その意図を読みとった浅子の顔が途端に青ざめた。
「ま、まさか・・・いやぁ、ダメぇ!!」
「怖がらなくていいわ。アソコにぶちこまれるのって最高の感覚よ?」
 バトンをレオタードの中に潜り込ませると、玲香はすっかり口を開いた入り口に押し当てる。
「やめてぇ!それだけは許して、お願い!」
 浅子は必死に身をよじって玲香から逃れようとするが、あっさりと押さえ込まれてしまう。
「えい!」
 ズニュウウウウッ!
 抵抗も虚しく、バトンが深々と陰部に突き刺さった。
「っ!!あ、ああああああああ!!!」
 大きく目を見開き浅子は絶叫する。
 玲香はまるで幼児がお気に入りのオモチャで遊ぶかのごとく、全く気遣いもなしに乱暴にバトンを出し入れし始めた。
 高速でピストンをくり返すたびに、ジュプジュプと愛液が飛び散り浅子の太腿を濡らしていく。
「クスクスッ・・・ずいぶんスムーズに動くわね。そういえば浅子、春頃まで彼氏がいたっけ。セックスの経験があったの・・・ね!」
「ひうぅっ!!」
 膣壁をえぐるようにバトンを動かすと浅子の腰がビクンとはねる。
「ふふふ、今のよかったみたいね」
「うはあ・・・ち、ちっともよく・・・なんかあ、ひうっ!」
 浅子の言葉を遮るように、玲香はさらにバトンで膣内をこねくりまわした。
 そして同時に型くずれのしていない柔らかな胸を揉みながら首筋に舌を這わせる。
 その感触の一つ一つが耐え難い快感となって身体を駆けめぐり、浅子の理性を削ぎ落としていく。
 やがて浅子の口元が徐々に緩みはじめ、うっすらと笑みが浮かび始めた。
 抵抗も弱くなり、与えられる刺激に身体を震わせる受動的なものへと変わっていく。
「んあっ、あふう・・・っあ、ああぁあぁ・・・」
「さあ浅子、今の気持ちを正直に言ってみて」
 玲香は囁きながらすっかり肥大したクリト○スをつねった。
「くあああっ!んはっ、き、気持ちいいぃっ!」
 己が放った言葉を認めてしまった浅子はついに理性の防壁を完全に崩壊させてしまった。
 高らかに喘ぎ声をあげ、腰を懸命にくねらせて自らバトンを膣内に招き入れる。
「気持ちいいっ!気持ちいいよ、玲香!もっと・・・もっとしてえ!」
 叫び声に近い嬌声をあげながら浅子は玲香の顔に顔をぶつけ、唇を貪る。玲香は満足げな顔でそれに応えた。
 先ほどよりもさらに激しく情熱的なキスがかわされる。
 互いの舌を求めて絡ませあい、唾液を啜り、口内を犯して支配感に酔いしれる。
 本能に赴くままの野性的なキスを終えると、浅子の動きが一層激しさを増した。
「ああっ・・・んあぁ、ふひゃあ!だ、だめ、イク、イッちゃううう!」
「イッていいのよ。快楽を心の底から受け入れるの」
 バトンの動きに回転がかかり、膣壁をますます深くえぐりながら浅子を絶頂へと導いていく。
「さあ、わたしの虜になるの!」
「なるう!玲香の虜に・・・なるう!あ、あ・・・ああああぁぁあああっ!!」
 文字通り身も心も玲香に委ねて浅子はエクスタシーを迎えた。白く濁った愛液が噴き出し、バトンがずるりと抜け落ちる。
 浅子の目はすでに光を失い、だらしない笑みを浮かべながら虚空を見つめていた。
「かわいかったわよ、浅子♪」
「んんっ・・・んふ、あははははぁ・・・」
 玲香が頬に口づけるとビクビクと身を震わせて喜びの声をあげる。
 もはや浅子は完全に玲香に依存する人形と化していた。
「ふっ・・・はああぁ・・・。須藤せんぱぁい・・・」
「先輩、お願いします・・・。わたしたちも、浅子先輩みたいに・・・」
「わたしたちを、かわいがってくださあい・・・。あっ、ああっ・・・」
 玲香を慕っていたあの新入生三人組が浅子に羨望の眼差しを向けながらにじり寄ってくる。
 他の部員達も、オナニーに励みながらも玲香に情欲に燃えた視線を送る。
 玲香はいつも彼女たちに向けていたままの慈愛のこもった笑顔で頷くと、三人の秘所を順番にいじくっていく。
「もうこんなにグチョグチョにして・・・しょうがない子たちね」
 指にねっとりとまとわりつく蜜を見せつけると、三人はもじもじと恥ずかしがりながらも嬉しそうに目を細めた。
「それじゃあ、あなたたちにもバトンをあげる。お尻をこっちにむけて」
 三人はその言葉に素直に従い、尻を玲香の鼻先に突きだしてじれったそうにくねらせる。
 レオタードをたくし寄せて秘部を露出させると、玲香はそこに顔を埋めてチュウチュウと吸い付く。
 そして滴る蜜を舌に乗せ、ヒクヒクと収縮をくり返すアナルに擦りつけた。
「あなたたちにはお尻の穴にプレゼントしてあげる」
 そう言うと玲香は新たに三つのバトンを取り出し、柄を三人のアナルに射し込んで順番に持ち替えながらかき回していく。
 新入生たちはバトンが直腸に届くたびに口から涎を飛び散らして嬌声をあげる。
 憧れの先輩が自分の尻を犯しているというその異常事態に、三人の興奮は頭を白く焼き尽くすほどに高まっていた。
「はぁああああ!すごいですうっ!バトンいいのぉ!」
「もっとっ!もっとお尻につっこんでください、せんぱぁい!」
「ふあ、あああぁ~!須藤先輩が、お尻めちゃくちゃにしてるう!ふあ、ふあああああん!」
「うふふふふ。―――浅子、わたしのおま○こ舐めてくれない?さすがにもうグチョグチョになっちゃって」
 空いた手でやさしく頭を撫でながら囁く玲香。すると焦点の定まらなかった浅子の目に生気が戻る。
 しかし、その瞳は淫欲に染まり異様なオーラを発していた。
「―――うん、わかった・・・。いっぱい舐めてあげる・・・」
 ブンブンと大きく首を振ると浅子は玲香のスカートの中に顔を潜らせる。
 そして母親の乳房を求める子犬のように、夢中になってパンティごしに蜜壺をむさぼりはじめた。
 玲香は悦楽にトロンとまぶたを垂らしながら浅子の顔に股間を押しつけ、後輩達を責め続ける。
 やがてその様子を傍観していた他の部員たちも、一人、また一人と玲香の元へ集まってくる。
「あん、ずるい。先輩、アタシにもしてくださあい・・・」
「玲香・・・わ、わたしにも、バトンちょうだい・・・」
 理性を蕩けさせられた獲物たちは、自ら狩人へと身を差し出す。
 玲香は舌なめずりをしてそれを迎え入れた。

 人のまばらなホームを抜けて駅を出ると、これまた閑散とした街並みが目の前に広がる。
 時間は夜の十時半。バブルの影響でベッドタウンになりそこねた町は、この時間にはすでに眠りにつこうとしている。
 ほとんどの店がシャッターの降ろした商店街を抜け、沙羅は家路を辿る。
「はあ・・・。時給はいいんだけど、毎日こんなんじゃなあ・・・」
 そうひとりごち、沙羅は深くため息をついた。
 人が少ないこの町は、家賃も安いがバイトの時給も同様にすこぶる安い。
 仕方がないので近隣の大きな街でバイトすることにしたのだが、時間帯が問題だった。
 夜更かしが当たり前の現代っ子である沙羅にとって、十時半など夜の始まりに過ぎないのだが―――。
 ふと立ち止まって耳をすます。・・・遠くの方でかすかに自動車が走る音が聞こえ、すぐに途切れる。
 残るのは静寂と、街灯の冷たい光だけ。
 ―――この人気のない中を毎日歩かなければならいのかと思うと、気が滅入ってくるのだった。
「ままならないもんよねえ。・・・にしても、まさか雅のヤツに出会うなんて。あ~、思い出すだけで胸くそ悪くなる!」
 再度ため息をつく沙羅は、今度は悪態をつくことで気を紛らわし始めた。
 そのとき、シュッと風を切る音が耳に届いた。考えるよりも早く、沙羅は反射的に身をかがめる。
 戦士として死線をくぐるうちに自然と身に付いた動作だ。
 沙羅の頭があった場所をダガーの刃が掠めていった。顔を上げると、避けられたことに驚いた様子の下級戦闘員の姿が目に入る。
「ディスタリオン・・・!ここしばらく大人しくしてると思ったらっ!」
 体を起こす勢いを利用して戦闘員を突き飛ばすと、沙羅は拳を突き出して低く笑い声を漏らした。
「―――ちょうどいいわ。苛ついてたとこだし、憂さ晴らしさせてもらうからね!」
 沙羅が手を天に掲げると、紅の閃光が放たれて体を包み込み結晶化する。
 そして結晶を拳で粉砕して飛び出してきた沙羅の姿は、すでにジュエルエンジェルとしての戦闘服姿となっていた。
 燃えるような真紅のヘアバンドに、同じく紅色を主としたレザーグローブ。動きやすさを重視してか、甲冑は簡略化されている。
「ルビーの戦士、ジュエルナックル!さあ覚悟は―――って、ちょっとちょっとぉ!」
 もうお約束となった決めポーズをとろうとしたナックルは素っ頓狂な声をあげた。
 戦闘員が情けなくも背中を向け、あたふたと逃げだしはじめたのだ。
「人を襲っといて何よそれは?アンタやる気あるのお!?」
 大声で非難するが戦闘員はお構いなしにどんどん遠ざかっていく。
 軽く舌打ちをすると、ナックルはその後を追いかけ始めた。

 地面をあらかたほじくり返した後そのまま放置され、半ば資材置き場と化した原っぱ。
 再開発の予定もない町ではよく見かける場所である。
 町中に点在するその原っぱのなかでもとりわけ資材に埋もれた一角に戦闘員は逃げ込んだ。
 ナックルも続いて中に入り込む。
 高く積み上げられた資材と資材の隙間が通路となってさながら迷路のようになっている。
 何度も横道に入って姿をくらまそうとする戦闘員をどうにか追い続けていくと、視界が開ける。
 資材でぐるりと囲まれたホールのような広い空間にナックルは飛び出した。そして目を丸くする。
 なんとそこには、ざっと数えても二十を超える戦闘員がそこで待ち構えていた。先ほどまで逃げていた戦闘員も、その中に加わり戦闘態勢に入っている。
「―――っとと!あちゃ~、もしかしてまんまとひっかかっちゃったかな」
 頭をかくナックルの耳に、聞き覚えのある声が届く。
「そうだ。私が招待した」
 戦闘員たちの後ろ、鉄骨の山に腰掛けていた人影が立ち上がる。それは他でもない、ジュエルランサーだった。
「な、奈津子・・・ランサー!?一体今までどこに・・・ま、いっか。とにかく今はここの連中片付けるよ!」
「いや、それはできない相談だな」
 口元に笑みを浮かべながらランサーは小さく首を振る。
「今の私はディスタリオンなのだから」
「・・・・・・はえ!?」
 ランサーの言葉を理解しきれず、ナックルの口から妙な声が漏れる。
 しばらく沈黙が場を支配した。
「・・・あのさ。今なんて言った?」
「私はディスタリオンとなった、と言ったのだ」
「そんな冗談言うキャラだったっけ?アンタって」
「冗談は苦手だ。だから・・・」
 ランサーはふわりと跳躍し、戦闘員たちの手前に着地する。
「・・・私は真実、ディスタリオンの僕となったのだ」
「な、そ、その格好!」
 ランサーの全身像を間近で確認したナックルは、顔をしかめ赤面した。
 そのコスチュームは普段のランサーとなんら変わりのないものだったが、要所要所がとんでもないことになっていたのだ。
 胸元は大きくずり下げられ、薄い乳輪と乳首が半分顔をのぞかせている。
 また、スーツの股間部はかなり食い込みの角度を増していてギリギリ割れ目を隠しているといった有様だ。
 あの食い込みようでは、後ろ側はほとんど紐のようになっていて尻が丸見えに違いない。
「卑猥な格好だろう?私の主も気に入ってくれてな、ふふ、チ○ポでたっぷりと膣内をかき回していただいた」
 誇らしげに言うランサーを見て、ナックルの顔つきが変わる。
 迷いがなく、相手を見据える鋭い眼差し―――戦場に立つ戦士の顔に。
「ディスタリオンになったってのはホントみたいね。『チ○ポ』なんて言葉は正気の奈津子なら絶対に言わない!」
「だったら?」
「操られてるのか何なのか知らないけど、一発ぶん殴ってこっちに連れ戻す!」
 そう言い放つとナックルはランサーに向かって突撃する。
 その行く手を阻むように戦闘員たちが襲い掛かってきた。一番手がダガーを突き出してくる。
 最小限の動きでダガーの軌道から身体をずらし、ナックルは突き出されたその手首をがっしりとつかむ。
「おぉりゃあ~っ!」
 そして片腕で軽々と持ち上げると気合の入った叫び声とともに投げ飛ばした。
 ものすごい勢いで吹っ飛んだ戦闘員は、コンテナに叩きつられトマトのように血をぶちまける。
 続けざまに襲い掛かってきた二番手も、ダガーを振るう間もなくアッパーで顎を砕かれ崩れ落ちた。
 ジュエルナックルに与えられた能力―――それは、真紅のグローブから生まれ出る怪力である。その気になれば大型トラックですら持ち上げることが可能だ。
 あまり女戦士らしからぬ力ではあるが、細かいことの苦手な沙羅の性分に実によく合い、その威力を十二分に発揮していた。
「ほらほらぁ、次!そこ、逃げるな腰抜け~!」
 片っ端からちぎっては投げ、ちぎっては投げをくり返すナックル。
 阿鼻叫喚の叫び声が響き渡り、戦闘員の数がみるみるうちに減っていく。
 とても正義の戦士が戦っているとは思えないほどの惨状が繰り広げられていた。
「うおりゃあ!」
「ひ、ひいいいい!!」
 すっかり逃げ腰になった戦闘員を追いかけ、ナックルは顔面パンチをお見舞いしようとする。
 拳が振り下ろされようとしたそのとき、一閃の斬撃がナックルの腕を掠めた。
「・・・!痛っ」
 予想外の攻撃にバランスが崩れ、ナックルのパンチは空振りに終わる。
 身を引くと、そこにはランサーの槍が突き出されていた。
「悪いが、これ以上戦闘員を減らされるわけにはいかないのでな」
「ランサー・・・まさか本気で攻撃してくるなんてね!」
 躊躇を感じられないランサーを見てナックルは唇をかみ締める。
 その腕からは血が流れ落ちていた。
「一発だけじゃ目を覚ましそうにないわね。往復ビンタ決定!」
「それは遠慮しておきたいな。オマエの相手はこいつにしてもらうことにしよう」
 そう言ってランサーが槍を手に持ち直す。
 すると長く伸びたランサーの影が盛り上がり、人型のシルエットをした半透明の物体に変化した。
 男とも女ともつかない漠然とした体型。その体表面はまるで水面のようにゆらゆらと複雑に波打っている。
 顔もツルリとしたのっぺらぼうで、まるでマネキンのようだ。
「ディストスライム、ナックルを倒せ」
「・・・・・・」
 淡々とランサーが命ずると、ディストスライムと呼ばれたその怪人は返事ひとつせずに(口がないので当然ではあるが)ナックルに襲い掛かった。
「わわっ!」
 その異様さにしばし呆然としていたナックルは慌てて攻撃を回避する。
 身体全体を押し倒すようにして振り下ろされたディストスライムの両手が地面にめり込んだ。
「・・・・・・」
 のっそりと身体を起こし、ディストスライムはまたナックルの方へ向き直る。
 その意思を感じられない機械的な動きに、ナックルは薄ら寒いものを感じた。
「うう、なんかキモい奴。さっさと倒させてもらっちゃうから!」
 ナックルは防御をとろうともせずに突っ立っているディストスライムのボディに、連続でパンチを打ち込む。
 最後の一撃を全力で放つと、拳が深くめり込んだ。
「どうだ!」
 勝利を確信した顔で怪人の顔を見上げるナックル。
 ―――ディストスライムの両手が今にも振り下ろされるようとしているのがその目に映る。
「えっ、ウソ!?」
 とっさに腕を交差させて攻撃を受け止める。鈍い衝撃が走り、身体がビリビリと震えた。
「なんで・・・立っていられるのよ!?」
 全力で振り下ろされた腕を押し返し、もう一度連続パンチを叩き込む。
 しかしディストスライムは微動だにしない。
「ふふふ、無駄だぞナックル。オマエとは相性の悪い怪人だ」
 高みの見物を決め込んでいたランサーが声をかける。
「そいつはどんな衝撃も無効化する。何発打ち込んでも意味がない」
「・・・・・・ふ~ん、それなら!」
 ディストスライムから離れるとナックルはコンテナに駆け寄る。
 そしてわずかな出っ張りに手をかけて持ち上げると、ディストスライムにむかって投げ下ろした。
「ふん!おおおおりゃあああ!」
 けたたましい地響きとともにコンテナがディストスライムを押し潰す。
 パンパンと手を払いながら、ナックルは不敵な笑みを浮かべた。
「どうだあ!パンチが効かないならぶっ潰しちゃえばいいのよ!」
「相変わらず無茶な真似をするな」
 そう言ってランサーは苦笑する。彼女からは余裕が満ち溢れていた。
「・・・?アンタの出した怪人はもう死んだわよ?」
「いや、ディストスライムはここからが本番なのだ」
 そのとき、ナックルのふとともに何やら冷たくゾワリとした感覚が走った。
 驚いて目を落とすと、握りこぶしほどの大きさをした半透明の塊がへばりついている。
 それはディストスライムの千切れとんだ体の一部だった。
 ナックルが払いのけようとするよりも早くその塊は足を這い上がり、股間にぴったりと張り付いた。
「ちょ、ちょっと!どこに・・・・・・あ、あああぁあ!?」
 突然ナックルは嬌声を上げて膝をつく。
 スライムの張り付いた股間部がジリジリと焼けつくように熱を帯び始めたのだ。
 そして同時に、我慢しきれないくらいのむず痒さが体を襲う。
「んっ、は・・・何これえ・・・」
 内腿をもじもじとこすり合わせ、ナックルはその痒みを消し去ろうとする。
 しかし中途半端な刺激は逆にその感覚を増大させる手助けとなってしまう。
 熱が徐々に上半身へと上っていき、やがて身体全体を覆った。
「う・・・うあ、あは・・・」
 視界がぼんやりとかすみ、吐く息が自然と荒くなる。口からよだれが垂れはじめていることにナックルは気付かない。
 (だ、ダメ!早くどうにかしないとアタシおかしくなっちゃう!)
 スライムを引き剥がそうとナックルは手を伸ばす。
 が、その手はズブリと何の抵抗もなくスライムの中に入っていってしまう。
「えっ!?」
 驚きの声を上げ、ナックルは何度もスライムを握ろうとする。
 しかしまるで水を掴むかのように、感触はあるのに手応えがまったくないのだった。
「そ、そんな・・・!」
 今にも泣き出しそうな顔をしながら、ナックルはスライムを剥がそうと無駄な努力を繰り返す。
 その間にも身体の中に熱とむず痒さが蓄積されていく。
 彼女には、その感覚が何を意味するのかがよくわかっていた。
(こんな、こんなすごいのに飲まれちゃったら・・・アタシ帰ってこれなくなっちゃう!)
 焦れば焦るほど思考が乱れ、無意味に同じ動作を繰り返すだけで時間が過ぎていく。
 やがてナックルの身体がブルブルと震えだし―――そして、限界を迎えた。
「んっはあああああ!アタシもうダメぇぇっ―――!!」
 理性を振りほどくように叫び声を上げると、ナックルはスライムに指を突き入れそのまま秘所をまさぐりはじめた。
 両手を使い、膣内を滅茶苦茶にかき回す。
「あひゃあ、やっぱりぃ。すごい、ものすごく気持ちいい~!いやあ、手が止まんないよ~!!」
 ナックルは舌を突き出し惚けた顔で地面を転げ回りながら、壊れた機械のように股間に当てられた手をせわしなく動かし続ける。
 その目にはもう何も映ってはいなかった。
「ディストスライムはゲルバ様の媚薬を素材にして造り上げた人造生物だ。効果はテキメンだろう?」
 のた打ちまわるナックルに楽しそうに声をかけると、ランサーは携帯電話を取り出し登録してある番号を呼び出す。
 しばらく呼び出し音が続いた後、複数のあえぎ声が電話の向こうから聞こえてきた。
『・・・はい、もしもし。ランサー?』
「ガード、こちらはもう終わった。そちらの首尾はどうだ?」
『うふふ、こっちももうとっくに完了してるわ。みんなすっかり淫乱になっちゃって・・・今楽しんでるところだったの』
 甘い響きのするガードの声に混じり、淫欲にとり憑かれた少女たちの声が聞こえてくる。
『せんぱぁい、先輩の美味しい唾液流し込んでください』
『ほらほら玲香、おっきいのが入っていくよ』
「ふふふ、ずいぶん楽しそうだな。私もそっちに行くから、混ぜてもらってかまわないか?」
『くちゅ、あふ・・・。ええ、大歓迎よ。みんなでたっぷりとおもてなししてあげる。・・・ああん、浅子のバトン太くていい!』
「では、すぐに行く」
 電話を切るとランサーはもう一度ナックルに声をかける。
「じゃあ私はこれで帰らせてもらう。まあ、しばらくの間楽しんでくれ」
 それだけ言い残すと、ランサーは振り返ることなくその場を去ってしまった。
 静まり返った闇の中で、ナックルのあえぐ声だけが悲しく響きわたった。

< 続く >

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