01. 発見
俺の名前は坂本健児、大手製薬会社の技術開発主任。
小心者で世渡りは上手くは無いが、研究開発での結果が幾つか評価されて同期の中じゃまあまあの出世だ。
だがそんな小市民的で孤独な俺の人生を変えるような事態が起こるなんてのは全く予想の外だった。
そいつを見つけたのは、朝早い公園。
いつものように出勤前のジョギングを終え、公園のベンチで休憩していた時だ。
背後の繁みから、小さな呻き声が聞こえてきた。
不審に思いながらも面倒が嫌いな俺はその場を立ち去ろうとしたんだが..その声の主が女である事に気づくと、好奇心を止められなかった。
意を決して静かに近づき、そっと覗いてみたそこには一人の女が倒れていた。それもとびきりのいい女だ。
女はどうやら強姦されたらしい。スーツのボタンは引きちぎられ乳房は露出し、捲り上げられたスカートの中には何も履いていない。そして真っ白な尻や太股には緑色の粘液が絡み付いていた。
最初俺は、それが犯人のザーメンに雑草の色素でも付着したのかと思っていたんだが...。
俺は辺りを見回し、そっと近づくとその女を介抱しようとして抱き起こす。(もっともあちこち視姦するのは忘れちゃいなかったが...)
「ちょっと君!大丈夫かい?」
しかし一向に女に意識は戻らない...いや意識はずっと有るようにも見えたが、よく判らないうわ言と喘ぎ声を時折漏らすだけだった。
警察に届けるか?それともこのまま置き去りにするか...?
面倒はごめんだがこれだけの良い女とこれっきりと言うのも寂しい気がする。
仕方なく俺は簡単に彼女の服装を整えると落ちていたコートをかぶせ、自分のマンションまで連れて帰った。
部屋に着くとまず会社に遅刻する旨を伝え、女のコートを脱がせた。
その後もかなり叩いたり揺すったりしたんだが状態は変わらない。
まるで無防備な彼女の肢体に俺はいけない欲望に囚われつつ”女の介抱をするんだ”と言う名目で破れた衣服を取り去り、その素晴らしい体を撫でさする様にティッシュで拭き取ってやった。
その時、職業柄とでも言おうか、ふと先ほどの緑色の粘液に興味が沸き、丁寧に採取するとガラス容器に密閉して保管しておいた。
だが俺の興味がそれに向いていたのはその時だけだ。
それは女の肌を撫でさする度に上がる女の妖しい喘ぎ声のせいだった。
俺の平凡な人生でこれだけの”おいしい”状況は二度と無いかもしれない...いや少なくとも今までは無かった。
そんな俺のつたない理性などが、早々に霧散してしまったとしても俺は自分を許してやりたい。
強姦されたかわいそうな女をさらに追い込む事に歯止めをかけるモノが徐々に薄まっていくと、次第に大胆に触り、嬲り、弄び始める。
そして、先程の緑色の液体をティッシュで拭き取っている時、鼻腔をくすぐるその甘い匂いを嗅ぐほどに情欲が高まり、肉棒の強度が増していくのが感じられた。
恐る恐る俺は彼女の唇に触れてみた。それだけで嬉しそうな吐息を吐き、体を震わせる彼女に対し、何故かこの人形が自分の物であるかの様な錯覚に陥ってしまった。
細かく荒い息づかいを押し止めるように口内を蹂躙し、すべすべと滑らかに滑る肌の全ての感触を掌に刻み込み、全身の毛穴から体液を吸出すかの様に舌と唇を這わせる。
そして柔らかに息づく淫裂に誘い込まれ血液を目一杯充満させた肉棒をあてがった時には、俺の頭の回路は一気にショートしてしまった。
気が付いた時にはもう、微かに嗚咽を漏らすだけのその人形に性欲の全てをぶつけ、めちゃくちゃに犯していた。
いったい何度彼女の中で果てた事だろう...いや中と言わず、顔と言わず、再び体中を大量のザーメンまみれにされてしまった女を眺め、俺は頭を抱えていた。
(まずい、まずいぞ!これって強姦になるんだろうか?この女に告訴されたら...脅されたり..会社にばれたら...俺はおしまいだ...)
しばらくは呆然と女を眺めていた俺だったが、半ば諦めに似た決意を固めると、女の体をさっきよりも丁寧に拭き取り始める。
それが終わるともう一度女に呼びかけ、尚も返事が無いのを確認し、先程の公園へと担いで戻る。
そして今度はもう少し丁寧に衣服を整えた姿でベンチに座らせると、逃げる様に走り去ってしまった。
その後、一応出勤はしたものの、その日は一日仕事になどなりはしない。
いつ警察が踏み込んで来るか?
彼女の身内ややくざなんかが連絡して来ないか?...頭からその事が離れない。
(やっぱり自分の家に運んだのはまずかったなぁ...)
しかしそれだけ悩んでいても時折彼女の美しい肢体が頭をよぎると、やっぱり股間は熱くなる...。
そんな恐々?とした日々がしばらく続いたが、一週間もすると次第に楽天的な考えが出来るようになってきた。
あの日仕事を終えた後、例の公園まですっ飛んで見に行ったのは言うまでもないし、ローカル新聞やニュースサイトをくまなく調べもしたが、それらしい痕跡は無かった。
(きっとあの時、彼女にははっきりとした意識は無かったんだ。今頃は気持ち良い夢でも見たと思っているに違いない。...くっ!そんなことならもっと楽しんどきゃ良かったぜ。惜しいことをしちまった)
そして一カ月もたつと、たまにあの女の体を思い描いてオナニーする位で普段は全く忘れてしまっていた。
ある日、部屋の掃除をしている時、あの時採取した緑色の粘液に気が付いた。
時間が経ってその粘性はやや失われていたが、蓋を開けると性欲を高めるあの甘い匂いが立ち込める。
俺はその物質に対して強烈な興味が湧いて来た。
(こいつは強烈な媚薬か、麻薬の一種じゃないだろうか?...。発見した状況からして違法な物かもしれないが、またあの時みたいに楽しめるか、いくらかの金には成るかもしれない...)
そんな、モノになるかどうかも分らない欲望の為に、それからの俺は毎日他の研究所員が帰るまで会社に残り、その物質の研究に明け暮れた。
だが3週間後にようやく出た結果はまさに驚くべき物だった。
ほとんどが数種類の既見の物質が合成された物だったのだが、一つだけ未見の蛋白質が含まれていた。その成分は自然界で採取出来得る物ではなく、人工的に作るにも未だその手法は発見されていない。
(つまりこの世の物では無いと言うことか?)
とは言え所詮は蛋白質だ、合成する事は出来なくとも培養して増やす事は出来る。
俺は適当な開発名を付け、極秘扱いにすると培養室に放り込んだ。
そいつは数週間後にはペットボトル1本分にまで増殖してくれた。
幾らかの動物実験の結果、どうもこいつは精神..特に性的な神経に干渉する事が分かった。いわゆる”媚薬”って奴だ。だが恐らくそんな生やさしいもんじゃないだろう...理性を持たない動物達は死ぬまで性交をやめようとはしなかったし、同じ生存本能である食欲や睡眠欲などをも遙かに凌駕している。
それらの実験結果から人に対する適正な分量を推測はしてみたのだが、摂取の仕方や部位によっても様々に変わるこいつの特性は予測が難しく、それを調べるにはもはや臨床しかない。
多少のリスクは伴ったが、その未知なる物への期待が膨らみきっていた俺はその液体をなんとか持ち帰り、これから始まる楽しい実験の計画を練ることにした。
< つづく >